紗夜のBはBitchのB!   作:黒マメファナ

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二人のR/裸のままで

 身の上語りは、あんまり好きじゃないんだけど、ついつい、全てを伝えてしまった。主観だし、きっとあの子にも色々考えがあって、その方がいいから俺を構ってたんだろうなって、今なら思うけど、なんだかめちゃくちゃ悪者にしちゃった気分だ。

 

「……その子は、今は?」

「最後の話に出てきたヤツと付き合ってるよ。あの子にしては長く持ちこたえてる方らしい」

 

 そもそも、付き合う前から、それこそ俺の話に出てきた頃にはとっくに、身体の関係は出来ていたことを、ランスが教えてくれた。つか調べてくれたっぽくて、そこを言わないところもランスらしいというか、なんというか。

 

「カンベさんは、そんなにも……傷だらけだったのね」

「やめてよ」

 

 確かにそうだったよ。傷だらけで、ベースすら手が止まった。だけど、そんな時、俺の音楽を褒めてくれて、俺に迫ってきて童貞を奪おうとしてきたヒトがいた。

 たったそれだけだけど、下を向いてたはずが、いつの間にか前を向かされていたんだから。

 

「出逢ったタイミングは、最高だった、ということね」

「まぁ……ね」

「そして、カンベさんが私を拒絶する理由も、知ることができたわ」

 

 そりゃよかった。根本から理解できないってのも、もちろんあるんだけど、なによりも失恋した相手がビッチだったことが、原因なんだよな、やっぱり。我ながら女々しい。でも、話していて、紗夜さんは違うんだってことも、思うわけで。

 

「紗夜さん」

「はい」

「最近、シてる?」

「いいえ」

 

 そうだよね。そもそもRoseliaの練習が休みの合間に予定を入れてただけで、その時間は今、俺に費やしてるから。

 

「他のヒトに抱かれながらカンベさんのハジメテの女になれる、なんて甘い覚悟はしていないわ」

「俺、恋人がセフレ作ってるのも許せないんだけど」

「それはセフレの分まで、マンネリ化しない程度に」

 

 週何回でしょうねそれ。そもそも男性側がイクのを一回として、一回で足りますかね? 

 まぁ、紗夜さんみたいなヒト相手で一回で済むほど、性欲がないわけじゃないけど。

 

「……カンベさん、私……」

「紗夜さん」

 

 仰向けになった俺に、紗夜さんは顔を近づけてくる。ゆっくり、唇を触れ合わせるために、ゆっくりと近づいていく。

 

「……ひ、氷川……さん……!」

「し、白金さんっ?」

 

 あと少し、というタイミングで、燐子さんがやってきた。生徒会の仕事が終わったみたいで、まだメガネを掛けてる。うん、燐子さんがメガネ掛けるとそういうプレイの一環にしか見えない。紗夜さんもだけど。

 

「抜け駆けは……ダメ、です……」

 

 必死の形相の燐子さん。このヒトはこのヒトで本気なんだなぁ、って思えるようになったあたり、大分染まってきてるな。気をつけよう。ただ、こうなるとまた二人で喧嘩とかされると見てて気持ちのいいものじゃないんだけど。

 

「わかりました」

「は?」

 

 なんでそこで素直に引き下がるの? 俺、なんか気持ち的には紗夜さんと付き合ってもいいのかもって思い始めたのに? そこ台無しにする? 

 

「私が複数の女性に手を出すことを拒絶すると?」

「あ、無理ですね、ですよね」

「……わたしも、氷川さんの、次でいいですから……」

 

 そこは自分は複数の男に抱かれても、恋人には自分だけでいてほしいって思ってほしかった。確かに俺だってまだ煮えきれてないところあるからね? そこも悪かったんだろうけど、それはそれ、これはこれだよね? 

 

「そ、そもそも……俺、燐子さんとはもうあれっきりのつもりで、傷つけたのに……」

「カンベさんの嘘は……優しすぎます。きっと、傷ついたことが、あるから……ですよね?」

 

 くしゃ、と頭を撫でられ、わたしは大丈夫です、なんて言われて、嘘もない心を見せられて、俺は胸が苦しくなった。

 

「……それに、カンベさん、言ってくれましたよね? 二人のままで、って」

「……言った?」

「うわ言のように、だけれど」

 

 あー、あれ、口に出てたんだな。うわ、最悪。恥ずかしいんだけど。

 でも、俺なんかのために自分を曲げるくらいなら、そのままでいいと思うのは本音だ。俺は、そのままの二人といるのが、楽しいと思えたんだから。

 

「だから……わたしは前と、変わらずに……カンベさんに、えっちな誘惑を、します……」

 

 後ろに小さく、もうキスもしちゃいましたし、と付け加えて頬を染める燐子さん。風邪が感染(うつ)ってても知らないからね。

 

「どうかしら? ココでハジメテ……というのも忘れられない体験では?」

「あの、一応健康体ではないので勘弁して」

「それじゃあ……今日のところは引き下がるとしましょう」

「お大事に、してくださいね……カンベさん」

 

 これでいいのかなんて、俺にはわからない。だって未だにどうしてこんな美人で魅力的なヒトたちが俺を構ってくれてるのか、まるで理解できないから。でも、理解できるできない以前に、そもそも二人はハッキリと、俺を好意的に見てくれる。それを否定するのは、間違ってる気がしたから。

 もう、この二人に鎧はいらない。武装しなくても、この二人は俺を傷つけたりしないって、わかったから。

 

「ありがとう、二人とも」

「はい」

「……また、何かあれば」

 

 素直な気持ちで接していればいい。まだまだ童貞を彼女たちで卒業するつもりなんてないけど。

 そこは強気でいかなきゃね。俺にはちゃんとした理想があるんだから。

 

「あ、今回のお礼は、デート一回ずつ、ということで手を打ちます」

「は? ま、まって! デート!?」

「……楽しみに、してますね」

「詳細は追って連絡しますので、それでは失礼します」

 

 いや紗夜さんの言葉が事務的すぎて冗談かと思うんだけど。でも冗談じゃないことは、母さんが迎えに来てくれて家のベッドに寝転んだ後で、嫌というほど思い知った。

 

「日取りと行先……か」

 

 燐子さんからは映画と、彼女がハマってるオンラインゲームのコラボカフェ、こっちはあこちゃん同伴なので割かし安心。映画はあこちゃんを間に置いてコラボカフェじゃ多分おしゃべりすればクリアだ。問題になる要素は薄い。

 問題は紗夜さん。あろうことか、テーマパークでの一日デートを要求してきた。

 

「チケット等の費用は私持ちで構いませんので……か」

 

 いや、俺そういうとこ行ったことないんだけど。不安すぎる。しかも紗夜さんと、夜まで二人きり……事件の予感しかしないんだけど。

 ──肝心の日程は、文化祭準備が落ち着いてから、ということになった。最悪12月になるかも、と。

 

「三ヶ月後かぁ……気が早いな」

 

 まずは、文化祭だな。タイクーンたちも盛り上がってるし、目の前のイベントに集中しよう。

 しかも、文化祭イベントにはAfterglowや、もしかしたらRoseliaが出てくるかも、ということらしい。ゲストは他にもバンドや漫才も来るらしいけど有志の方が豪華ってどうなの。

 でも、いい機会だよ。同じステージに立ったことのないRoseliaと、同じステージに立てる。

 それは、突っぱねられた前回への雪辱を果たすための機会だからな。

 

 

 

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