紗夜のBはBitchのB!   作:黒マメファナ

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Dは惑う/小さな問題

「ふーんなるほどねぇ」

「あ、ちゃんと伝わりました?」

「うん、まだセックスもできない童貞くんの分際で贅沢言ってることは伝わったよぉ」

 

 いきなり毒を吐かれた。美鈴の話で迷いに迷って相談相手に選び、それじゃあ喫茶店でと待ち合わせをした相手は松原花音さん。童貞(DT)食いで、DサイズのD×Dビッチさん。いつもはほんわか優しくて、時には肉食系女子なのに今日は毒タイプ持ちだった。草食系で笑いの種になる俺は草タイプなので効果抜群です。あと冷たいのも効果抜群です。草タイプは弱点が多すぎるのは問題だよね。

 

「そもそもさぁ、なんでフった相手に別れたこと電話してくるの? カンベくんに隙があったからじゃなくて?」

「……それは、実は事情がありまして」

 

 もしもね、これが実はの事情がなかったら即紗夜に相談してるよ。でもその事情があったから紗夜じゃなくて花音さんにしているのであって、あ、決して浮気ではありませんので紗夜には言いつけないでね。後で今日の喫茶店のお相手の話と一緒にするから。

 ──ということで、寒い風を吹かせた夜にまで時間を巻き戻すことにするよ。

 

『カレシと……別れちゃった』

「え……そう、なんだ」

 

 反応にも困るって。だって相手にはもうフられていて、以前は好意があったことを聞かされているとはいえもう俺も美鈴にもそんな気持ちはないことは確認済みだった。なのに突然涙交じりにそんなこと言われてしまえば俺は戸惑ってしまう。

 そもそもなんで俺に電話掛けてきたんだろう、それが気になっていると。美鈴はごめんと間をおいて謝罪してきた。

 

『電話掛ける相手……間違えた』

「あ、そっか……なるほど」

 

 つい最近美鈴から電話あったばっかりだったことをそこでようやく思い出した。内容はライブのチケットがあるかどうかだった。友人にファンがいるらしくその話を紗夜に聞かれながらした記憶がよみがえった。あの時の紗夜は氷タイプだった。やっぱり効果抜群。

 

「えっと……電話、切ったほうがいい?」

『……突然、別れるって言われた』

「そっか」

 

 あ、続けるんだとは言わなかった俺を褒めてほしい。前までの俺なら平然と口にしてた、やったぜ俺成長してるよ。

 成長してる原因は間違いなく夜が名前に入ってるくせに好きという名の太陽光を浴びせてくる恋人のせいだけど。女性は、ましてや俺に寄ってくる悪い虫タイプさんは基本的に同意と同情を以てすれば結構愚痴とかを満足できるらしい。そういう時に俺に必要なのは解決法を考えることじゃなくて聴いて、相槌を打つこと、と教わった。悪い虫タイプさんで真っ先に恋人の顔を見てしまったことには謝罪した。どっちも効果抜群だよ。

 

『意味わかんない、ちゃんと構ってたし、お金だって貢いでたのに』

「あ、構って貢ぐの美鈴の方なんだ」

『……うざ』

 

 あ、つい。まだまだ修行が足りぬようです紗夜せんせー。でもそれって、あんまり仲良くはなかったけど男の方に問題があるのでは? と考えていた。

 多分そいつ飽きたし卒業したから新しい女見つけただけだと思う。ランスがそんなようなこと言ってた気がするよ。

 というかこう恋愛方面の話を聞かされること自体が初めてだから今更なんだけど、俺と美鈴って本当に恋愛観が違うんだな。

 

「ごめん、口が滑った」

『だろうね、カンベだもんね』

「それで諦められるのはちょっとなぁ」

『それをなんとかするのは、ウチじゃないから』

「そりゃそうだね」

 

 すると、美鈴ははぁ、とため息をついてきた。なんだよと思ったけどやっぱり涙交じりの声で、少し静かにしておく。

 すると美鈴はやっぱりそうなんだ、と妙な納得をしてきた。

 

「なんの話?」

『……やっぱ本命いたんじゃん。今付き合ってるんでしょ?』

「えっ……なんで」

『バレないと思った? ウチは結構カンベのこと、見てるから』

 

 わかりやすいよとまで言われ俺は言葉を失った。確かに紗夜とは卒業前に付き合い始めたけど、それにしたって態度だけでバレてたとは。紗夜せんせー、今度その辺も伝授していただきたいです。浮かれ野郎にはなりたくないんです。

 

『でもうまく隠せてたよ、カンベにしては』

「褒めてない」

『貶してるもん。片想いかと思ってたのに、付き合ってたなんてわからなかったけど』

 

 三学期始まってから見てたといわれたけどそりゃそうだ。その時は紗夜からの猛攻を避けながら勉強とベースにかかりきりだったんだから。正直紗夜を相手にしてる時間も余裕もなかったんだけどね。

 

『ごめん……今外ってことは、カノジョ送ってた?』

「美鈴ってすごいな」

『ナメんな。ウチはそういう力で男を引っかけてきたんだから』

 

 気づいてあげられる力ってことか。確かにこう先回りされると気分がいいのは事実だよね。特にそこまでされると俺みたいな童貞は気があるのかとすら思えるくらいだ。美鈴の距離が近いってのと合わせると特に男受けがしそうなコンボだ。

 

「まぁ、でもアレだよ。逆に俺は安全だから、またなんかあったら話聞けるってことで……あ、メッセージでもいいから」

『……そんな気も回せるんだ、カンベのくせに』

 

 ん? 気を回したって、なんのこと? 俺は紗夜に怒られる理由を作りたくないだけですけどね? だから紗夜にもちゃんとこのことを伝えるつもりだし、電話じゃなくてメッセージの方が拘束されなくてありがたいから言っただけなんだけど、美鈴はプラスの解釈をしてくれたらしい。ごめん、俺全然美鈴に気を回せてないや。

 

『でも言ったなら、ちゃんとウチの話聞いてね?』

「わかった、じゃあね」

『うん』

 

 ──というのが先日夜にあった出来事でありました。とスカイブルーのおねーさんに包み隠さず全部話した。これ、紗夜にどうやって話せばいいかなという相談付きで。すると花音さんは改めて冒頭と同じことを口にしてきた。

 

「童貞くんのくせに変なことばっかり考える」

「うんひどくない?」

「ひどいのはカンベくんでしょ?」

 

 激しい理不尽を感じた。俺のどこがひどいの、優しく地雷を踏まないように頑張ったのにそんなことを言われないといけないなんて、と俺が勝手に憤慨していると、花音さんは呆れ交じりにこれだから童貞くんは、ともう一回童貞って言いやがった。

 

「もうそれは浮気だよぉ」

「えっ?」

「紗夜ちゃんに言ったら絶対怒るから、覚悟した方がいいよ?」

「待って」

「私は待っても紗夜ちゃんは待ってくれないと思うなぁ」

 

 そんなバカな。いくら紗夜といえど、たったそれだけのことで怒るなんてことがあるのか。俺は美鈴のことなんとも思ってないのに? 

 そう問いかけると花音さんはまるで自分が浮気されたかのようにそういうのがダメなんだよ? と認識の甘い俺に厳しい言葉を向けてくれた。

 

「カンベくんはもう、紗夜ちゃんのカレシなんでしょ?」

「……うん」

「だったら、前以上に紗夜ちゃんに対して誠実でいなくちゃダメだよ。具体的に言うと、私より先に紗夜ちゃんにこのことを伝えるべきだよ」

「そう、なんだ」

 

 俺自身もあんまり話の整理がついてなかったせいでひとまず花音さんに相談に乗ってもらったとこなんだけど、それがダメなことらしい。紗夜を信じてるなら、紗夜に信じてほしいなら、それ相応の対応をしなくちゃいけないのか、とつぶやくと花音さんはダージリンを飲みながら微笑んだ。

 

「うん……ふふ」

「なんでそんな笑うの? まだ貶すの?」

「ううん、私もカンベくんのこと好きだってこと、忘れちゃった?」

「……う」

 

 忘れてはいませんとも。でも最近セフレさんと仲直りしたって聞いてじゃあ俺はもういらねぇなとか思って油断していただけです。そんな股間に悪い顔をしないでほしい。最近特に出番を渋ってるせいで堪え性なくウォーミングアップし始めるから。

 

「そんなカンベくんには罰ゲームです」

「なに?」

「はい」

「……はっ、ちょ、まって!?」

 

 スマホにメッセージが送られると、そこにはかわいい系の花音さんには似つかわしくないような……けどとても似合っているようにも見える、水色で、レースとストライプが黒の下着姿のご本人様が……言いにくいんだけど、なんともエロい表情で写っていた。ベッドの上で脚をM字に開いて、なんかピンク色の紐みたいなのが伸びてるんですがあのその。よく見たら太ももにリモコンが括り付けられてた。

 

「感想は?」

「ええ……」

「オカズになりそう?」

「そりゃあ……ってしませんから! すぐ消すから!」

「ダメ。罰ゲームだから、保存してそれでヌいてね?」

 

 あ、花音さんってそういうの好きなんだと思わされた。さすが童貞キラー。徐々にこうやって短絡的にエロい姿を見せて、身体的接触でその姿を思い起こさせて、そうして何気ないお誘いで堕とすって手法だね。紗夜が要注意と言っていたパターンですね。

 

「ちなみにヌいたって報告したらどうなりますか?」

「私のオカズの種になるかな?」

「最低」

「カノジョさん以外の知り合いのえっちな画像でシちゃうようなヒトに言われたくないよぉ」

「いや最低ですねほんとに!」

 

 そうしてその日は紗夜に、このことを含めて全部洗いざらいしゃべって電話越しに謝罪した。花音さんの予想通りに、紗夜はなんで私じゃなくて松原さんに頼るのよと怒られた。ごめん、今日Roseliaの練習あるし、迷惑かなと。

 ──そして最後の罰ゲームに関しては。

 

「それは許せないので、また夜に電話をしたいのですが、よろしいですか?」

「うん……って待ってなにする気?」

「以前言った、アレを実行する日が来ましたね、それなら松原さんの罰ゲームをしても、ヤキモチを妬く程度で許します」

 

 その日は紗夜の悩ましい嬌声をイヤホン越しにたっぷりと聞かされることとなった。電話でもセックスはできますよという言葉の通り、童貞は電話越しと自分の右手とはいえカノジョである紗夜にたっぷり搾り取られることになった。

 ところで、ここまで計算ずくだったら、本当に花音さんは恐ろしいビッチさんだと思う。もうあのあどけない笑顔もえへへとかはにかむ姿も全部黒く見える。さすが悪女属性持ちは一味違うよね。

 しかも後で見たらボイスメッセージまで追加されていて、画像と一緒にどうぞ♡ と文章が添えられていた。中身? 聞く? ここから先は18歳以上立ち入り禁止なのでごめんなさい。一応ギリギリレーティングの線は越えないように頑張ってるんです勘弁してください。俺の周りはセックスに知識と能力の有り余ってる女性しかいらっしゃらないようなので。

 

 

 

 

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