紗夜のBはBitchのB!   作:黒マメファナ

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Tの苦悩/求めるものと望むもの

 燐子がうきうきしてる。すごく楽しそうで、まるで通り道に満開の花でも咲いているような印象がある。それを俺が察することはできなかったけれど……右手にある大きな袋が見えた。

 

「陽太さんとショッピング、とても……楽しみです」

 

 見た感じはあんまり変わらないんだけどな、実はめちゃくちゃ楽しそうだ。もし燐子に尻尾があったならブンブンと高速で揺れてるのを幻視するくらい。ただ俺も燐子の感情の機微に気づけるようになったのはそんなに前のことじゃないからなぁ。

 

「ショッピングなのに……それ最初から持ってなかった?」

「こ、これは……今日のとっておき、です」

 

 その言葉にそこはかとないエロさを感じてしまった俺は末期な気がする。丁度文具店で目の前に末期と同じような言葉のサインペンを見てしまいちょっとツボに入ってるからちょっと待って。

 

「……陽太さん」

「ん、どうしたの?」

「これ……陽太さん、です」

「……めちゃくちゃキラキラした目で何言ってるのかな?」

 

 燐子が手に持っていたのは極太。いや陽太さんじゃないです。シュッシュじゃないから! やめなさいこんなところで! 

 機嫌がいいといちいち単語が刺激的なのもまた燐子の特徴でもある。ロクでもねぇな俺のカノジョ。ところで俺極太なの? いや他人と比べたことなんて、特にその……勃起、しちゃいましてね、の時のサイズなんてもってのほかだからそこんとこ実は気になってるんですけど。

 

「大きさ……は、問題、ないです」

「え?」

「氷川さんに、教わってませんか……? 大きいときもちいは別だと」

「いやそりゃ教えてもらったけど」

 

 紗夜からも確かに大きさは関係なくて、逆に大きすぎると女性の方が大変だってのは教えてもらったけど、それでも、いやだからこそ極太って言われると逆に気になっちゃうんだよ。みんなの負担になってたらどうしようってさ。

 

「……童貞、まだまだ抜けませんね」

「うっ、これも童貞ムーブなのか……」

「わたし……陽太さんとのセックス、とても、とろけている自覚が、ありました……けど、それでも不安……ですか」

「いや、不安ってほどじゃ」

「いいんですよ……? 童貞をヌいてあげるのもまた……カノジョの役目……ですから」

 

 おかしいなぁ。童貞感が抜けないって話してたのに童貞をヌくのニュアンスが果てしなくおかしなことになってる気がするんだけどなぁ? 俺の気のせい?

 ただそこで、すっと燐子が俺の腕を抱き込んできた。ことでそれが気のせいではないことが証明された。誘ってますねコレは。童貞だったら勘違いしそうだったって回避できたけど残念ながら今はもう俺は燐子のカレシだしね。

 

「えっと……ホテル、いく?」

「……はい、いっぱいシましょう……ね?」

 

 天使のフェイスと天使ボイス、放つ言葉は悪魔のよう。いったいどうしたら俺はこの悪魔(カノジョ)に抗えるのだろうか。いや絶対に抗えまい。  

 なにせ燐子はビッチだからね。名誉童貞たる俺に勝ち目なんて最初からあるわけない。敗北の少年ですよ。

 だからそろそろ抗うのはやめて、燐子の満足に向き合うとしようね。

 

「──すっきり、しました……ふふ」

「よ、よかったね……」

 

 搾り取られた。そりゃもうしっぽりと。なにせ右手に持っていた袋の正体は俺の高校の制服だったからね。ついつい、そりゃあついついテンションが上がってしまったんですよ。ホテルに向かう途中で雨に降られちゃったのは予想外だったけど、服を乾かす間、というのもいいスパイスだったんじゃないかと思うんだ。

 

「と、ところで……その制服どこで手に入れたの?」

「……秘密、です」

「言うと思った」

「合法ですから……大丈夫です、よ」

 

 いや他校のはずの燐子がピッタリ似合う制服持ってたら違法を疑いますけど。いや逆にピッタリだから安心できるのか? ちょっとわからなくなってきた。常識が壊れそうだよ。まぁこのビッチさんがたはいつだって俺の中の童貞常識を壊してきてるからね。

 

「そう、いえば」

「はいはい」

「タイクーンさんは、その後大丈夫そうですか?」

 

 あーあいつな。死んだよ、とっくの昔にな。

 現在コラボに向けてああでもないこうでもないって悩みに悩んでるところ。あんまり状態がいいとは思えないってトーマが言ってたけど。タイクーンは一体なんでこんなに苦戦してるんだろう。そうやって悩んでいると燐子にふふと笑われてしまった。なんか面白いこといった覚えはないんだけど。

 

「いえ、勝者の余裕……かなと」

「勝者の?」

 

 俺どっちかというと敗北者だと思ってた。夜の相手が、選り取り見取り三人いるのに? と首を傾げられた。ああそういう意味? そういう意味だったら確実に勝ち組だね。それが羨ましいのかと驚いてしまうけど。

 なんでかって、確かに男の理想であるとは言えるけどそれ以上に一人ひとりにちゃんと俺は彼女たちが満足するくらいの愛情をあげられているのかと思うとね。

 

「……もちろん、あなたはこうして、わたしを必要としてくれます」

「必要」

「同じだけ、あげる必要……なんてないんです……わたしが望むものはただひとつ、ですから……」

「自分が俺であること……だね」

 

 合言葉を口ずさむと燐子は、満開の微笑みではい、と俺にキスをした。

 ──白金燐子が求めるもの、それは同一であることというちょっと怖いことだ。燐子は俺、二人って単位じゃなくて俺と燐子でひとつの単位としてを求める。欠けられない半身ってことだ。

 

「それを陽太さんは、あっさり叶えて、くれました……これ以上、あなたからもらったら、わたしは息ができなくなって……だめになってしまいます」

「燐子……」

「でも、セックスはもっとほしい……から、もう一回……シたいです」

「そ、その格好で普通ってできるの?」

 

 なにせ制服だからねまだ。時間はあるとはいえさ、普通ってなにって感じだよ? 今の燐子のブレザーじゃなくてカッターシャツで、はちきれんばかりの果実とその先端にある突起ががたゆんと主張してくる。着替えた時にはもうブラ着けてなかったもんね。そして下はところどころ破れたタイツと、その先は布がズレてるんだからね。

 

「……嫌ですか?」

「嫌じゃないけど」

「なら……襲ってくださいね。わたしは、愛されるだけじゃ……足りませんから。奪われて、あなたのモノだと、わたしに刻み付けて……犯しつくして、もらわないと」

 

 やっぱり燐子は過激だ。過激に、苛烈に、支配を求めてくる。ドMに見せかけて実は俺を操って悦に浸ってるんじゃないかと最近思うこともあるくらい、いつも燐子に手綱を握られてるもんね。

 

「どうぞ……なにもかも、陽太さんの思うがままです……♡」

「なら……もう一回だね」

「はい……」

 

 燐子とは、こうやって蕩けるような一日を過ごすことが多い。そんな甘く溶けてしまいそうな日はいつだって、燐子の微笑みを望んで頭を悩ませているんだよね。どんなプレイかな、みたいなのだけど。

 

「……ん? これじゃないか?」

「んぅ……なにが、ですか……?」

「ああごめん、起こしちゃった?」

「いえ……少し前に、目を覚ましました、から」

 

 結局あのあとヒートアップしすぎた俺と燐子はホテルを出て燐子の部屋に直行していた。それこそお互い意識を手放すくらいの激しい求め合いを回想していたら唐突にわかったことが、閃いたことがあった。

 ──タイクーンはなにかを気にして、それで必要以上に迷子になってるんじゃないかな? その疑問に、燐子は正解、かもしれませんねと微笑んだ。その相手は、誰なんだろう。決まってますよ、と燐子が続けた声と名前に、俺は驚きの声をあげることになった。

 

 

 

 

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