夢の国、それは隣県にある恐らく日本一のテーマパーク。言葉通り来る人々に夢を与える場所であり、世界観やキャラクターの設定などが本格的過ぎて別世界にやってきたように感じる場所でもある。
二つあるテーマパークのうち、今回は冒険とイマジネーションがテーマの海へとやってきた。理由は二つ。
一つは雰囲気がいいから。景色のよくてフォトスポットが多いってこと。デートには最適だよなってことでトーマとリサと花音が話していた。
「というわけで各自解散、適宜連絡してくからスマホは確認できるようにね!」
「……結局あなたがデートしたかっただけでは?」
言っちゃダメだよ紗夜。最近はホラ、割と練習詰めでコッチもデートできてないじゃん? 多分パーッと発散したかったんだよ。まぁ残念ながらあこちゃんがついてきてしまってはいるけど。
「友希那さんたちの……行方は気になりますが」
「うん。私たちは私たちで楽しもうよ。折角来たんだしさ」
「ええ、それには同感です……が」
紗夜がじとっと俺を見る。俺を見ないでくれ。こんな道行く人が二度見をしてしまうような残念な俺の姿を見ないでくれ。
いつものように腕にくっつこうとする花音と燐子にサンドイッチされてるからね。あのねこの子たち俺が離れてって言っても離れないんだ。
「デートだもん」
「デート……ですから」
「さ、紗夜~」
「私に助けばかり求めないで」
「ダメだよ。紗夜ちゃん空いてる場所なくて拗ねちゃってるもん」
なんでそれがわかるならあなたは離れてはくれないんでしょうか? 言わなくとも知ってますとも花音。自分も離れたくないんだよね? デートだもんね?
因みに燐子も離れる気はないようでより一層自分のFサイズを押し付けてくる。紗夜はため息をついて歩きにくいのだからやめなさいと二人にイライラの口調でぶつけた。
「紗夜」
「……陽太」
「おいで」
三人は結局俺への独占欲とかそういうのがあるから、三人同時に不満なく公平にしてあげることなんてできない。どうしても我慢してくれる紗夜に甘えちゃって、我慢できない燐子ばかりを甘やかしてしまう。いつもだったらみんな予定とかあるから別々になったり交代して付き合っていけるけど、こうして全員が揃うとどうしてもうまくいかないもんだ。
──そういう時はどうするか、実は俺はランスにそのヒントをもらっていた。
「もともと優柔不断でわがままだからそうなってるんじゃんか」
「うん」
「だからさ、そういう時はカンベのわがまま一つで案外なんとかなるよ、試してみ?」
そのヒントを信じて、俺はちょっとイライラの募っていた紗夜を呼んで手を繋いだ。ごめんね花音というと私は背中にくっついてるからいいよとほほ笑んでくれる。こういう時はできる女なのカッコいいよね花音、流石花音。後でいっぱい褒めとこ。
「あの……わたし……ごめん、なさい……」
「ああうん、大丈夫」
「……大丈夫じゃないわ」
「紗夜……?」
「私はいつも我慢してばかりで、いいえ、甘えるのが苦手な私にも問題あるのですが、それでも白金さんは我慢しなさすぎです」
「……はい」
腕に抱き着きながらふんすと怒り顔の紗夜。でも口許緩んでるなこいつ。かわいいから後でいっぱい甘やかしとこ。
そんな残念であり、いきなりこんな状態で大丈夫かなと思うところもあるけどらしいと言えばそうなのかな。
「あのごめんね花音」
「んー?」
「この状態、歩けない。というか燐子と紗夜も」
「それは当然ね」
当然ねじゃないです。なんだこのポンコツ。しぶしぶと言った様子で二人が離れて、ここでようやく夢の国へと進めるようになった。長かったなここまでおい。
三人が適度に離れながら、先導するのは花音。唯一ここに来たことがあるらしき彼女がまず提案したのはポップコーンを買うというものだった。
「ポップコーン……ですか?」
「うん。コッチはすごく味の種類があってね」
味が場所で違うらしくマップを広げてどれがいい? と訊ねてくる。いやここは二種類くらい買ったほうがいいでしょ。俺と紗夜は甘いものよりジャンキーな方が好きで、花音と燐子は甘いもの好きだし。
「……二つ、買いましょうか」
「そうね。陽太はどれにするの?」
「んー、このペッパー気になる」
「燐子ちゃんは?」
「わたしは……ストロベリー、でしょうか」
ストロベリーって、そんなのもあるんだ。他にも映画館で見かけるようなキャラメル、チョコレートなんてものもあって、ホントにバリエーション豊かなんだなぁ。
色々悩みつつもお互いの食べたい味の間に行きたいアトラクションがあるらしく、燐子が最後まで名残惜しそうにしていたが別れることにした。
「さて、ようやく落ち着けるわね」
「よかったね紗夜」
「ええ」
はぁ、とても素敵な笑顔ですこと。まぁでも紗夜はここまで結構我慢していたところも多かったし、ヨーロッパ風の幻想的な風景を歩いていくことにする。
なんだか歩いているだけでもわくわくするし楽しいね。テーマパークってこういうところはホントすごいと思う。
「なんだか旅行に来た気分ね」
「確かにね」
「陽太と遠くへ旅行……いいわね、いつかしてみたいわ」
「そうだねぇ」
手を繋いで、ゆっくり空気感を楽しんでいく。
──それにしても、こうしてると大人数で来たなんて思わないレベルだよね。普通にデートしちゃってるけど、道わかるの? と紗夜に問いかけるとマップを取り出して任せてと言われた。任せます。
「ねぇ陽太」
「ん?」
「いつも、私のことも考えてくれているってわかったら……少し、嬉しかった」
そんなこと考えてたの? 俺だってさ、甲斐性なしだけどランスに訊いたり、花音に相談のってもらったりして頑張ってるんだから。断れなかった責任ってやつだよ。紗夜のことも、燐子のことも、花音のことも……童貞みたいな意見だけど、セックスした以上俺はなんとか幸せでいてほしいって責任だって感じてるんだから。
「童貞ね」
「言うと思った」
「けど、最近はそんな陽太だから好きになったのかもって思えるから不思議ね」
聞いた? 全国の童貞さんにも希望があるかもしれない。ちょっとみんなモテたいって理由でバンドやろうぜ!
冗談だけど、紗夜がそうやって笑ってくれるならあの高校三年生の間に起きたことは大きな意味を持ってるってことだよね。
「でも、悪いと思うなら……」
「ん?」
「今夜は私のために空けておいて」
んなっ、とちょっと距離を取ろうとするけどガッチリ腕を掴まれてしまい逃げ場がない。あの、あのね? いくら経験しても俺が童貞だってわかっててやってるでしょそれ! 紗夜の声に耳元で囁かれちゃうとビクってなるんだよ。
「ふふ、とか言って、今日は激しいの期待してるわね♪」
「あの……ここ公共、はもう今更か」
今更よって開き直らないでねといいながらそんなこんなで二人で買ったブラックペッパーのポップコーンはいい感じのスパイスで、でもやっぱりどこか甘い雰囲気がするのは紗夜がとっても楽しそうだからだよね。
──というかこれからアトラクションなにに乗るの?
「知りたい?」
「……絶叫?」
「さぁ?」
「ちょっと」
俺絶叫ダメなんだってばと言うとくすくすと笑われた。白金さんもダメだから大丈夫よと付け加えられ俺はほっと安心した。どうやら花音のお得意海の生き物が登場する映画をモチーフにしたアトラクションがあるらしく、クラゲも出てくるんだよおって合流した後でうきうき顔の本人に言われた。
ん? 座って鑑賞ってことはまた席で揉めないでね?
「わたしが……譲ります……」
「うん、ありがと燐子ちゃん♪」
まじで? あの燐子が? 花音は離れていた間に一体どんな魔法を使ったの? 紗夜もびっくりした表情で見ていたけど、まぁまぁ、こういうのは三番目の私に任せてとかわいらしくウィンクをされた。やっぱり花音は後でめいっぱい褒めておこうと思う。ついでにちゃんと我慢できた燐子もね。そう言ったら陽太も中々できるようになってきたわねと苦笑いされてしまったけれど。