童貞卒業、処女喪失、二つの意味にプラスマイナスの言葉の差はあれど、意味するところは一つ。そしてその一度しかないものを客観的に観測することは不可能であり、特にその相手が自分でない場合は他者との経験があるわけで。童貞的にはそれが気にならないかと言われるとめっちゃ気にするしめっちゃもにょる。なにせ童貞だからね!
「自慢げに言ってるけど、もう童貞じゃないあなたがもにょっても説得力ないわよ」
「まぁまぁ……心は童貞さんなわけだし?」
「……初心を、忘れない……と考えれば、擁護も、できます……」
おいこらそこのビッチーズ、特に下二人、俺を罵るのはやめるのだ。特に燐子の無理くり擁護は逆に俺にダメージ与えることを知ってほしい。いやわざとだったらこの際尊敬するけどさ。
──じゃなくて、本題はですね。俺、なんだかんだスルーしてきたけどみんなのルーツが知りたいわけよ。
「まさか今更、過去の男に嫉妬とは、堕ちたわね陽太も」
「ふふ……いいよ、もっとして♡ 私はぜーんぶ、受け止めてあげるからあ♡」
「……
うーん三人揃ってスリーアウト。ただまぁ呆れ顔をしてらっしゃる紗夜に関しては昨年の文化祭準備の際に日菜さんから教えてもらっちゃったからなぁ。まぁそれは紗夜どころかみんな知ってる事実だからいいとして、俺が知らないのは燐子と花音の二人なんだよね。花音は絶対覚えてるだろうって確信があるけど、燐子はワンチャン記憶になさそう。
「うんうん、バッチリ覚えてるよお……カレシじゃなかったけどね?」
「うーんアウト」
「……憶えて、ます……だって、陽太さん……だから」
「その自己申告はもういいって、じゃあ
「……はい」
燐子はゆっくりと何かを思い出すように語り始める。どうやら、というか当たり前ながら三人でも初体験の話は共有していなかったらしく、紗夜も花音もちょっとだけ興味深そうにその言葉に聞き入る。三人ともビッチとか言いつつ毛色が違うからなぁ。というか燐子は初体験マジでオフパコなのか。さすがに初体験くらいは……と思ったけど忘れてた、この子とんでもない人見知りだったんだ。今じゃ知り合い多くてそんな様子も見せないからなぁ。
「それは……わたしの、ゲームのフレンドさんが……即売会で本を出す、と教えてくれたのが……始まりでした」
「即売会……なにか性的なものを?」
「紗夜……」
「紗夜ちゃん……さすがにそれは」
まぁ紗夜だしオタクイベントとは無縁でしょうね。そもそも俺も無縁なので人のことは言えませんが。でも
──当時の燐子、中学二年生の秋口の燐子はちょうど、コスプレに興味を持っている時期だった。当時から服を自作するくらいには裁縫が得意で、引っ込み思案で人見知りな自分を変えたいと思っていた彼女は、その誘いを千載一遇の好機と捉えていた。
「コスプレ……ですか?」
『そうそう、りんりんちゃん興味あるんでしょ? よかったらコスしてウチの売り子やってくれないかな? あ、もちろんエロじゃないから!』
「……ん、っと……」
そしてその頃の燐子はちょうど自撮り用の裏アカ、ベルで撮影する服のワンパターンとマンネリを感じていたところだったらしい。
──ちょっとまって、待て待て、なんだ自撮り用の裏アカってこら。はい、回想中断、なんかとんでも新事実出てきたぞ。あの高校の時に消した自撮りアカ、この時からあったんかい!
「……小学校、五年生……から」
「ふえぇ……燐子ちゃんってやっぱり真性のビッチだよね……」
「かも……しれませんね……」
「否定して」
いいねがほしいとかの承認欲求というよりは、自分を見てほしい、引っ込み思案で人見知りで誰かの視線が怖かった彼女が変わろうとしたファーストステップだったんだろう。果てしなく間違えてるような気もするけど。まぁまぁそれは置いといて、そんな自撮りのパターンを増やすために、そして自分じゃない自分を作り出せば変われるんじゃないか、と感じて燐子はその誘いに乗った。
「結果として……人気サークルの、かわいいレイヤーとして、わたしは……たくさんの人に、見られました……それこそ、性的な目で」
「……それは、厳しいですね」
いやいや紗夜さん、違うんだよ。燐子はそうじゃない。俺は燐子をよく知ってる、それはそれはもうめちゃくちゃよく知ってる。表向きは彼女は自分に向けられる視線が苦手、としてるけど。あれは単純に自分が見られるのが不快な時ももちろんあるだろうけど、燐子の本質は
「はい……陽太さんの言う通り、わたしは……とても、興奮、してました……はしたないから……普段は、嫌、なんですけど……」
コスプレをして自分が自分じゃない感覚に酔っていたのだろう。彼女はその興奮のままカメラに向かってポーズを取り、愛想を振りまいて、もう既に育っていた女性としての暴力的なまでのフェロモンを撒き散らしていった。
──そして、事件はその帰りに起こった。
「お疲れさまりんりんちゃん」
「はい……! あの、誘って、いただいて……ありがとう……ございました」
「いやいや……ところでさ、りんりんちゃん?」
「……っ、な、なんですか……っや」
「これ、なに……?」
そうやってフレンドで、ゲーム友達だと思っていた男に電車内でスカートの中をまさぐられ見られる興奮覚めやらぬまま独りで慰めることもできなかったそこを……ってこら、はいおしまい。詳細に語るのはやめてね燐子。それ以上描写したら大変なことになる。主にR18指定がついちゃうから。その燐子が手伝ったサークルの同人誌と同じようにクリーンに全年齢でいこうね。
「……そのまま、ホテルにつれて行かれて、ハジメテ作ったコスプレ衣装は……わたしの初代、ウィザードは、白濁に、汚されました」
「わざわざそういう言い方しないで」
「それで、どうだった?」
「……とても、よかったです……性的な視線を、これでもかってくらいにぶつけられて……ハジメテなのに、何回も、イキました……」
「語らんでいいんだって!」
まぁこれだからなぁ燐子は。本人がそれを嫌だとか辛いとか思ってなかったら俺は全然いいと思うよ。だから初体験がそのまま辛い過去に直結する紗夜には訊かないし。燐子はそれ以来、『Rin-Rin』だとまずいからベルという名前でコスプレ衣装で、時には素顔のまま自分の作った服でオフパコをし続けていた、と。
「じゃあ次は私だね?」
「本番描写はナシでお願い」
「前戯はあり?」
「ふざけんな」
思わずガチでツッコミを入れてしまったものの、花音はくすくすと笑ってそれじゃあとまるで恋する乙女の表情で自分の初体験と初恋を同時に語りだした。やっぱり花音は初恋と初体験セットなんだね。
──それは中学一年生の頃に遡るらしい。彼女は当時小学生の頃同級生だった男子に卒業の際告白されて付き合っていた。キスも済ませて、いざお泊りでおうちデートをしようという時だった、ってマセすぎでしょ。
「ふぇえ……そうだよ、ゴムしないと……!」
「そ、そっか……ご、ごめん、そういうの買ってなくて」
「ううん……大丈夫、また今度……ね?」
「わかった」
なるほどね、男の方には突っ込むという知識しかないからその日は普通に添い寝をしただけだったと。うんうん、まだ子どもでかわいいね男子は……あれ、じゃあ初体験とは。まって、なんか流れ変わってない? 花音はその俺の疑問にとんでもなく嬉しそうな顔をして答えてきた。
「その子にはお兄さんがいてね……高校生だったかなぁ」
「あ……なるほど……」
「トイレ行きたくなっちゃってね、夜中に出て、トイレから戻ってきたところで部屋の前通ったら……ね?」
「それ強姦じゃないですか」
「うん、そうだね。でもちゃんとゴムはしてくれたし」
あっさりだ。まさかエグい系の話だとは思わなくて俺も燐子もちょっと神妙な顔をしていたけれど、そこで終わらないのが花音だった。花音はそこで初体験をして、処女を奪われて、そしてその後約束通りカレシともセックスを済ませた。だけど、花音はそこでどうしても思ってしまうんだ。
「ものたりない、お兄さんとのえっちのほうが気持ちいいなあ……って」
「それでカレシの兄貴とセフレになったってこと?」
「うん。だって、えっちはお兄さんのほうが上で、でもデートして大好きだなあってなるのはカレなら、気持ちいいと好きを別けて考えればいいでしょ?」
「……松原さん……らしい、ですね……」
むしろセフレや浮気相手にセックスの気持ちよさを預けてるから、花音はどんだけ童貞でセックスが下手でも好きって気持ちだけで付き合っていけるんだよな。まぁそれをいいよと口にして本当にいいカレシなんているわけがないんだけどさ。本当に花音を愛せるのはそれにダメだと言える人だけなんだから。
「そうだねえ……ふふ♪」
「それにしても、二人ともやはりそこそこ初体験をしているのね」
「たぶん紗夜も相当だよ」
なにせ学校の、弓道場の着替えるところでしょ? 場所がもうアウトだよね、しかも相手が相手だし。紗夜はそれに対してそうねと苦い顔をした。俺としてはどんな初体験をしたって、どんな男とセックスしてたって気にしない……わけじゃないけどさ。それはそれとして実は結構気になるんだよね。
「童貞くんだなあ」
「うるさい」
「ところで、処女を貫通する場合、陽太はどういうことを想像するかしら?」
「……でたー」
紗夜の性教育の時間が唐突に始まった。これは無視しようとなんだろうと強引にねじ込んでくるのがお約束なので家ということもあり大人しく付き合ってあげることにする。そもそも俺にとってそれって無縁のものだと思ってたから余計になぁ。どういう感じってあれでしょ? 血が出たり、痛がったり……ってやつ?
「そう、そしてそれは実は大きな勘違いなのよ」
「そう……なんです、か……?」
「なんで燐子が疑問に思うの?」
どうやら自分は痛くはなかったものの血は出たらしい。花音は全くどっちでもなくて、紗夜さんは血こそ出なかったものの違和感がしばらく残ってたと教えてくれた。そしてこの違いこそが俺の勘違いらしい。つまり、誰もが血が出て痛い思いをするわけじゃないってことか。
「そもそも処女膜というものがあるけれど、これは女性全員が完全に入り口を塞いでいるわけじゃないわ」
「そうなんだ」
「しかもそれほど血が通っているわけでもないので痛かったり血が出たりするのは単純に濡れてないからよ」
「ほー……ってそれを俺が知る意味ある?」
「ないねえ」
「けれどいずれ娘が生まれた時に陽太が処女膜をチェックして交際相手の有無を判定する変態にならないためには必要なの」
「……そんな、こと……するんですか……?」
「しねぇよ!」
──なんて言っていたらその初体験を俺で済ませる子が新しくやってくるなんてその時は全く思っていなくて、後で役立ってしまったことで紗夜がドヤ顔したのが一番なんかムカついた。ちなみにつぐみも痛いんじゃないかって心配してたからそうやって落ち着かせましたとも!
まとめ
紗夜:本編投稿した通り。中二の時の中学教師、ゴミクズロリコン犯罪者
燐子:中二の冬 オフ会で顔を合わせたゲーム友達(2X)チンカスロリコン犯罪者
花音:中一の夏 カレシの兄(17)に襲われた。 未来の性犯罪者