ソードアート・オンライン ~巨狼、虚現に生きる~ 作:巻波 彩灯
朝日が昇り、街を照らし出して人々を活気づける。リズベット武具店も例外なく朝から活発に動いているが、今日はいつもと違う。開店準備はされず、店の前でヴォルフとアキレアが装備を整えて、まだ準備中の店主を待っていた。
「昨日はよく眠れたかい?」
「私は大丈夫です。ヴォルフさんの方こそは、どうですか?」
「俺も寝れたよ。おかげで目覚めもスッキリしたよ」
待っている間、二人は他愛のない会話を重ねていく。涼やかな風が通り抜け、街が少しずつ
「大分落ち着いていますね」
アキレアが安堵の笑みを零しながら言葉を発し、「悩みが解決したようで良かったです」改めてヴォルフと顔を合わせる。黒の瞳は優しげな光を灯し、穏和に細められていく。彼の抱えていた悩みを見透かすかの如く。
「当分は上手く伝えられそうにないけどね」
苦笑いをしつつ、ヴォルフは穏やかな語調で言い返す。結果はどうであれ、昨日の夜に自身の想いを言葉に表せたのは大きな一歩だろう。彼女の
「……申し訳ないですけど、そんな気がします」
彼女もまた苦笑で浮かべて、素直に心中を
「えっと? アキレアさん?」
目の前の少女から発せられる冷気のようなオーラに、ヴォルフは困惑しながら声をかける。何を言っているかまでは分からなかったが、確実に何かを言っているのだけは分かった。雰囲気的に、何か良からぬ事を言ってしまっただろうか。
「へっ!? 今、何か口に出してました?」
「あ、う、うん。そんなに聞こえてなかったけど、何か言っていたよね?」
「き、聞かなかった事にしてください! た、単なるひ、独り言ですから!」
「あ、うん、分かった?」
慌てようから聞かれたくない内容なのは察したものの、すんなりと納得できるものではないから、了承の意に疑問符がついてしまう。
二人それぞれ困惑しているところに、「お待たせ。ちょっと準備に手間取って悪かったわね」とリズベットが姿を現す。
そして二人の間に流れている微妙な間に目を丸くして、「何かあったの?」何気なく訊ねる。当事者達は苦笑いをして、何でもないという意を伝えるだけ。
リズベットはヴォルフ達の顔を交互に見て、これ以上言及はしなかったものの、「ここにあの子がいたら、あんた一発もらっていたかもよ?」とこげ茶の
「……かもしれない。あれだけは勘弁して欲しいなぁ……」
話題に挙がった子は、恐らく自分の隣にいた青髪の少女だろう。というより、殴られたところを目撃している事を踏まえれば、彼女と一緒にいる時しか考えられないのだが。今でも思い出すだけで、後頭部に鈍い痛みが走る感じがする。
「というか、よく覚えているね」
「流石にあんなキツイの、目の前で見せられたら、嫌でも目に焼き付くって」
露店で商売していたリズベットと出会った時、ちょっとしたからかいが起因し、彼女の眼前で思い切り拳骨を後頭部に受けた。その時の音は鈍く重く響いた程。しばらく頭を抱えていたのは今でも忘れられない。
「それぐらい凄い一発だったんですね……」
詳しい内容は知らないアキレアは、リズベットの嘆息やヴォルフの苦々しい表情から察したらしく、引きつった笑みを浮かべた。ヴォルフも何も言葉を返すができず、乾いた笑いを立てるだけ。
話が一段落したところで、「じゃ、行こうか」ヴォルフが呼びかけるが、「ちょい待ち」とリズベットが制止の声を上げる。「あんたには、とっておきの物を用意したから」不敵に微笑む彼女に、ヴォルフはただ首を傾げるしかなかった。
装備品としては別に問題はないだろう。ハルバードは確かに古いけども、まだ壊れる感じでないし、威力だってそれなりに出る。だから、彼女から何を渡されるのかが予測できない。
鋭くも肉厚な刃、どんなものでも貫きそうな穂先、何かに引っ掛けてもヴォルフの体重すら支えてしまいそうな鉤など機能部だけでも充分に
「いいの?」
あまりの代物にヴォルフは鳩が豆鉄砲を食ったように目をしばたたかせるだけ。これだけ剛健なハルバード、店で売るとしたら、それなりの値がつくのが目に見えて分かる。だからこそ、タダでもらっていいのかと、
「何でそこで戸惑うのよ。あんた以外に使える人いないでしょうが」
あっけらかんと言い放つリズベット。「給料分として受け取ればいいのよ」愉快げに喉を鳴らして、ハルバードを手渡す。桃色の双眸は確かな信頼を寄せるかのように力強い光を宿しながら、穏やかに細められていた。
「なら、ありがたく給料をいただきます」
ヴォルフも冗談めかした調子で言い、新しいハルバードを受け取る。装備を変更して前のものをストレージにしまい、改めて受け取ったハルバードを握り締めた。新品だというのに、何年も使い込んだかのように手に馴染んでいく。
軽く振るっても違和感を覚えない。彼女の技量には感嘆するばかり……また一つ恩を返さないと内心決意する。
「このハルバードの名前って、決めてあるんですか?」
アキレアがハルバードをじっくりと観察した後に口を開き、製作者は「ないわ」と首を横に振って意を示す。
「まぁ、持ち主に決めてもらうのが、一番でしょ」
「と言っても、全然名前がなぁ~……」
今から決めろと言ってもすぐには思い浮かばない、ヴォルフが名前決めにうんうんと
「トルエノブリーチ……雷の突破口という意味の名前なんですけど……」
話を聞いているヴォルフとリズベットは目を丸くしながらも、どういう由来なのだろうかと各々の言葉で訊ねる。
説明する本人は、黒瞳をこげ茶の双眸と合わせて、緩やかに口の端を上げながら返答していく。
「ヴォルフさんって、雷みたいに大きな声を出して、重い一撃を浴びせるのでピッタリかなと」
彼女の言葉で、ヴォルフは自身の戦い方を振り返る。確かにかなり大声を出している気が……否定はできないと思いつつ、“雷の突破口”という意味が気に入り、穏やかな笑みで言葉を返す。
「うん、それがいいかな。ありがとう、アキレアさん」
「いいえ、お役に立てたなら幸いです」
嬉しそうにアキレアは笑い、安堵したような嘆息を吐く。黒の双眸はいつになく細められ、静かに喜びを噛み締めているかのよう。
ようやく話が決着した頃合い、リズベットが威勢よく「今日は気合い入れていくわよ!」と掛け声を立て、残りの二人もつられるように明るい語勢で返事した。
三人は今回のイベントの舞台となる五十七層の洞窟内を歩いていたが、骸骨の兵士――スケルトン・ソルジャーと遭遇してしまい交戦する羽目に。
動きは緩慢だが数で押し寄せてくるスケルトン・ソルジャー達。けれど、そう簡単に遅れを取るメンバーでもない。
「せいやぁぁぁぁ!」
先行してリズが複数の兵士達の頭部を軽々と砕き、メイスに赤色の光を
大量の硝子片が降り注ぐ中をアキレアが悲鳴を上げつつも、硬直中のリズベットを守るように盾で緩慢な剣撃を
半狂乱状態ながらも冷静にモンスターを硝子片に変えていく彼女の背後、
盾を持っているスケルトン・ソルジャーだが、彼の重い一撃の前では意味を為さず、腕ごと砕かれると脳天に振り下ろされた一閃で粉々になって硝子片に姿を変える。
背後のスケルトン・ソルジャー達をあっという間に片付けたら、ヴォルフは鬱金の疾風となってアキレアの傍らを通り過ぎて先行。「バァァァーニィィィィング!」強勢な雄叫びと共に金茶の輝きを纏った銀弧を薙ぎ、覿面にいた複数のスケルトン・ソルジャーの体を一刀両断にした。
硬直状態が解けたリズベットがヴォルフの前に出て、「チェストォォー!」力強い気合いを発しながらメイスを的確に骸骨兵士の側頭部へ殴りつけ、陥没させてながら奥まで砕いていく。振り切った時には、硝子片が目の前に舞い散る。
さらに右手側から迫る緩やかな突きを片手棍で弾き飛ばし、がら空きの胴に一撃を叩き込む。相手は盾で防ごうとするが、あまりにも動きが鈍重すぎた。背骨を簡単に粉砕されて、そのまま消失してしまう。
メイスを振り回す彼女の背を守るように、動けるようになったヴォルフが立ち回り、ハルバードを豪快に振り下ろして相手の脳天を確実に粉砕。左手側から接近して剣を振り上げた兵士には、振り下ろす暇を与えぬまま頭部に穂先を突き刺し、素早く引き抜いて撃破する。逆から肉薄してきたスケルトン・ソルジャーに対しては、ハルバードの背を頭部に叩きつけて砕き、勢いよく青白い硝子片が弾け飛ぶ。
その中を厭わずにアキレアが突っ込んでいき、怖いと甲高く叫びながらも片手剣を
最後の一体もアキレアが難なく撃破して、辺り一面は元来の静けさを取り戻していった。
「はぁ~、何とか片付いたわね」
「お疲れ様……と言っても、まだ先は長いけど」
戦闘が終わった事への嘆息をリズベットに労いの言葉をかけるヴォルフ。傍らで散々悲鳴を上げていたのにも関わらず、息一つも切らしていないアキレアにも「お疲れ様」と声をかける。
洞窟の奥は暗く、先を見通せない。これからも何度かモンスターと戦闘をするのだろうと、ヴォルフは
「あんたもね。元とはいえ、流石は攻略組……あたしは二人の背中を追うだけ精一杯よ」
「いえいえ、そんな事ないですよ。リズさんも私達に負けないぐらいでしたよ」
「そういうアキレアは疲れてないでしょ? あたしはちょっと疲れているのよ」
「それはソードスキルを使ったからじゃないかな? この中で範囲攻撃系使ったの、君だけだし」
ヴォルフに言われて、「言われてみれば……」とリズベットは思い返して、納得したかのように頷く。「この中だとあたしが先陣切らないといけねいしね」メイスを肩に担ぎつつ、開き直ったかのように勝ち気な笑みを浮かべる。
「あの……無理だけはしないでくださいね?」
「分かっているわよ! あんた達もあんまり無茶しないように!」
彼女の言葉にヴォルフは穏やかに笑って首を縦に振るが、傍目でアキレアが「本当に大丈夫かな……」と愁眉を寄せて呟いたのを見逃さなかった。呟いた時にはリズベットは既に背を向けて先に進んでいた為、アキレアの言葉は届いていなかった様子。
「きっと大丈夫だよ」
不安を払拭する為に、ヴォルフはそっと耳打ち。できるだけ活気よく歩いている意中の少女に気付かれないように。
「だと、いいですけど……リズさんもリズさんでお人好しですだから」
まだ憂いが晴れないのか、アキレアは眉根を寄せて嘆息を吐きながら言葉を継ぐ。「だから、この間も私が動けない中、あんな数を一人で相手して……」黒の双眸はいつになく不安そうに揺れており、心配そうに赤い背中を見つめていた。
「あはは、俺もいるし、いざとなれば囮になるからさ」
「それもそれでどうかと思いますけど……」
彼女が放ったか細い一言に、ヴォルフはただ苦笑いをするしかない。誰にも無茶して欲しくない気持ちは痛い程、分かるから。
しばらく探索して幾度か戦闘を繰り返し後、重々しい扉の前に辿り着く三人。扉の奥からは
「二人とも、いいわね?」
リズベットの問いかけにヴォルフとアキレアは意を固めたように力強く頷き、戦意がある事を示す。リズベットも彼らの反応を確認した後、「んじゃ、気合い入れていくわよ!」と言いつつ、重厚な扉を開ける。
扉は重そうな響きを立てながらも、見た目や音に反して軽々と動き、部屋の奥へとプレイヤーを招き入れるかのように開け放たれていく。
部屋の奥には、紺色の詰襟に身を包み、軍帽を深めに被っては左腰にはサーベルを携えた白骨の兵士が
軍服の装飾は自身の武勲を示すかのように、数々の勲章が左胸で輝きを放つ。しかし、その輝きは過去の栄光とも言えよう。
背丈は百九十近くあるヴォルフよりも遥かに高く、二メートルぐらいは優にあるだろう。ボスモンスターとしては小柄な方かもしれないが、それでも充分すぎる程に大きい。
部屋の周囲は壁に立てかけられた蝋燭台の蝋燭に紫の火が
「あいつが今回のイベントボス……?」
今までのスケルトン・ソルジャーとは違う異様な雰囲気に、リズベットはアキレアに目配せしながら訊ねる。
「ええ、間違いありません。あれこそが、イベントボスです」
情報と照らし合わせながらなのか、アキレアの目つきはいつになく鋭くなり、口調も鋭利になっていく。「七月に甦る革命の亡霊……ブレイブ・スカルジェネラルです」ボスモンスターを睨めつけるかのように見つめて、その名を呼ぶ。
「あれが、今回のイベントボスか……手強そうだね」
説明を聞き、ヴォルフも顎を引いてハルバードを構える。この前聞いた情報が正しければ、恐らく相手は手下を召喚してくるはず。まずはそれらを手早く叩き潰さないと、攻略が厳しいだろう。
こげ茶の双眸は普段の温厚な眼光を潜め、力強くも鋭利な戦意を宿して、正面を見据えていた。
両陣営が静かに睨み合った僅かな
だが、そんな事など気にしている暇はない。戦いの火蓋はもう切って落とされたのだから。
先陣を切るのはリズベット。一番手近にいた一体に襲いかかり、相手が剣を振るう隙を与えず、自慢の得物を頭部に叩きつけて軽々と頭蓋骨を粉砕する。青白い硝子が飛散する中をさらに突っ込み、目の前に現れた兵士が剣を振り上げた瞬間に、胴にメイスを薙いで肋骨ごと胸骨や背骨を叩き折って葬り去った。
突出した彼女の背を守る為に、アキレアが目尻に涙を溜めつつ後を追う。右手側から迫ってきた剣撃を難なく躱して、片手剣の刃を一筋閃かせ、命を刈り取る。続けて、覿面から突き出された槍の穂先を盾で捌き、素早く肉薄すると返しに頭部を突き刺す。
手早く引き抜き、硝子片に姿を変えたのを確認したら、次なる標的を見定めて剣を振るう。再び命が飛び散った。
最後尾のヴォルフは持ち前のパワーを思う存分に振るい、周囲のスケルトン・ソルジャーを蹴散らしていく。彼が豪快に一振りするだけで強風が巻き起こり、吹き飛ばされて多数の兵士達が壁や柱に衝突して姿を消していった。
運良く強風の中を脱しても、ハルバードの肉厚な刃で頭部を切り裂かれ、背を打ちつけられては胴体を粉砕されて強風で屠られた仲間と同じ運命を辿るだけ。
瞬く間に召喚されたモンスター達を全滅させると、三人はボスモンスターに向き合う。
ブレイブ・スカルジェネラルは静かに佇み、サーベルを眼前に構えているだけ。自分から動こうとする気配はない。
「そっちがその気なら!」
地面を強く蹴り出して、リズベットは懐に潜り込むように疾駆する。彼女の接近を阻もうとサーベルの銀刃が迫り立てるが、アキレアが盾でフォローに入った事により、未遂に終わった。
大きな体と違えて力がないのか、アキレアは簡単に盾で受け流して体勢を崩していく。
「ヴォルフ、今よ!」
リズベットの呼び声に反応して、ヴォルフは鬱金の弾丸となり疾走して、その威勢を利用して地面を踏み切り高く跳び上がった。ブレイブ・スカルジェネラルの背丈よりも高く位置に到達し、ハルバードに大きく振りかぶり、両手斧ソードスキル――サンダーボルトを発動。
「グゥゥゥレイトォォォォー!!」
「思ったより硬いね」
相手の間合いの外に着地して、ヴォルフは体勢を整える。リズベットもアキレアも一旦距離を取り、彼の近くに駆け寄った。「あんたの一撃でもそこまで減っていないって……これは骨が折れそうね」リズベットは辟易したように呟き、「速度や重さはあまりないですが、長期戦になるとこちらが不利です」アキレアは冷静に言葉を吐く。
ヴォルフも長期戦は厳しいは目に見えていた。元々の人数の少なさもあるが、いくら相手の動きが緩慢といっても何度も繰り返せば、こちらが疲弊していくばかり。だからこそ、速攻で強打を叩き込む必要があるのだと改めて確信する。
「もう一回召喚される前に、畳みかけるわよ!」
威勢のいいリズベットの声につられて、ヴォルフとアキレアの返事も強勢なものになる。そして再びリズベットが先陣切って、猛烈な勢いで肉薄していくものの、それを阻むかのように紫炎が地面に揺らめき立つ。
苛立だしげにリズベットは舌打ちすると、炎の奥から出現したスケルトン・ソルジャーの頭部を軽々と粉砕して、消失させて前へ進む。左手側から迫る緩慢な剣撃を躱して、背後を取るように回って再びメイスを頭部に目がけて振るう。
鈍い音と骨が砕ける音が混ざり合い、遅れて硝子が飛び散るような音が響き渡った。
先行した彼女の後を追うようにアキレア、ヴォルフも続いていく。リズベットの背中を狙った鈍重な一撃をアキレアが白骨の中をすり抜けて防ぎ、ヴォルフが剣撃を放った一体をハルバードの背で殴り飛ばし、青白い硝子片が宙に舞う。
相変わらず動きが鈍い白骨の兵士達。けれど、その間を通り抜けて、骸骨の勇将は一切攻撃してこない。
ブレイブ・スカルジェネラルの動きを不審に思いながらも、ヴォルフは覿面から飛来した槍の一撃を簡単に弾き飛ばして、肉厚な刃で頭部を真っ二つにした。続けて、愚鈍な銀弧を砕いて、持ち主の体も粉砕して欠片が飛び散る。
召喚された分を全て片付けると、先程と同じようにリズベットが駛走して足元へ接近していく。
しかし、今度はサーベルを振り下ろされてしまい、右手側に転がって躱すしかなかった。先程よりも早くなった剣速、近づく事が困難になった事により、リズベットはしかめっ面を浮かべる。
今度はヴォルフが鬱金の弾丸となって、果敢に肉薄。これもまたタイミング良くサーベルを振るわれるが、ハルバードの背を刃を弾き飛ばし、相手の体勢を大きく崩す。「今だ!」強勢な掛け声を響かせると、両サイドからアキレアとリズベットが飛び出して、それぞれ得物に輝きを纏わせる。
空気を貫き、凄まじい破裂音を立てながら片手剣を突き出すアキレア。「ひぃぃぃぃいやぁぁぁぁ!!」情けない声と共に翡翠の光が尾を引いて流星の如く駆け抜ける。左腕に突き刺した一撃は重く、相手の骨から割れる音が耳朶を打つ。
反対側からはリズベットがメイスに青い輝きを放ちながら、右の大腿部に豪快な一振りを放つ。完全に骨が砕かれる音が響き、ブレイブ・スカルジェネラルは右膝から崩れる。
間隙を縫うようにヴォルフが助走をつけて跳び上がり、黄金色の光をハルバードの肉厚な刃に纏わせて再び雷轟となりて、強烈な一撃を脳天に叩き込む。頭部は陥没こそしなかったが、亀裂を走らせて今でも割れそうな勢いで広がっていく。
「体力はまだまだ残っているみたいだね」
「ええ、でも倒せない相手じゃないわ」
「は、早く終わらせましょう!」
三人は体勢を整えると、スタンして動けない白骨の勇将に叩き込むように、もう一度肉薄する。最初はリズベットがメイスを大きく振るい、重々しい骨が砕かれる音を響かせた。
彼女と入れ替わるように、アキレアが突っ込んでいき、サーベルを持った右腕を片手剣で切りつける。骨は完全に砕かれ、サーベルを持つ力を失って得物を地面に落とす。
三度、ヴォルフが跳び上がる。最も自身が得意としているソードスキル――サンダーボルトをまた放つ。雄叫びと共に黄金色を煌めかせていく様はまさしく雷鳴。今度も脳天を狙うが、動けるようになったブレイブ・スカルジェネラルが辛うじて動かせる左手で落としたサーベルを素早く拾い、上段に掲げたが故に頭蓋骨を砕く事はできなかった。
代わりにサーベルの刀身を半分折り、切っ先を地面に突き刺す。まさしく負け戦の将軍のように、衣服は幾重にも切り裂かれ、折れたサーベルは虚しく空を切るだけ。
体力ゲージの残りはまだあるけれど、勝機は見えたか――誰しもがそう思った瞬間、突如ブレイブ・スカルジェネラルが持っているサーベルの刀身から紫炎が出現し、折れた刀身の代わりになるように切っ先を模る。
また空洞の右目に紫炎を瞳のように宿し、あたかもヴォルフ達を睨みつけるかの如く、鋭利で妖しく燃え盛っていく。
不穏な雰囲気から第二段階に入った事を悟るヴォルフ達。彼らは改めて顎を引き、それぞれ双眸を鋭く細めて、武器を構える。ここからが本番だと全員の意思が統一したかのように、場に緊張感が走っていた。
今回はここまで……次回、終わりまで行きたいけど文字数的にどうなのだろうか()
それにしても章の前半でも狂ったように戦っていたのに、後半でも戦闘シーンにかなり文字の圧が凄いんですけど……。
多分、ボス戦は一万字使っているよねぇ~()
次回は8月20日です。いよいよこの章も大詰めです……形にするまで少し時間がかかりましたが、最後までお付き合いください。
では、今回は筆をこの辺りで休めます。
感想の方、お待ちしております。
次回もお楽しみに。