ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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初めましての方、はじめまして。お久しぶりの方、お久しぶりです。手違いで消してしまった作品ですが、何とか復元できましたぁ。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました(*´ω`*)

ではでは、第一話です。
頭を空っぽにして、読んでみてください(´ー`* ))))


惑星サイヤ編
空を悟るもの 道を求めるもの★


 オーロラが見える紫色の空。

 

 水晶玉のように浮かぶ星々の下に小さな集落がある。

 

 褐色の肌と銀色の髪に尖った耳をした人間たちが、ジッと目の前に起こっている戦いを見ていた。

 

「し、信じられない。あの乱暴者のアブラを、ああも一方的に」

 

 村人の一人が驚きの声を上げる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 青年は左右非対称の特徴的なハネのある黒髪。

 

 その静かな瞳も髪と同様に黒だった。

 

 肌は一般的な黄色人種の肌色をしており、やや筋肉質だが中肉中背の体格。

 

 黒いインナーと黒のブーツに袖口がボロボロに破けた白い武道着を身に纏い。

 

 両手に赤いグローブを着けている。

 

「お、おのれ……っ!」

 

 青色の肌に小さい角を生やした悪魔のような見た目の男ーーアブラが、肩で息をしながら目の前の青年を見据えている。

 

 忌々しそうに告げ、アブラは空間に穴を開けて傷ついた身体を引きずりながら、穴の中に消えて行った。

 

 これを静かに見送ると青年は、地面に置いた白のザックの紐を手に取って肩にかけると、村人に背を向けて歩いていく。

 

「あの! 待って!!」

 

 まだ少女の域を出て間もない美しい娘が、彼を呼び止める。

 

 その隣には、彼女の姉であろうーー美女を伴って立っていた。

 

「…ありがとう!!」

 

 漆黒の帯を静かに結び、青年は引き結ばれた口を開いた。

 

「……いや。俺はただ、強い奴に会いに来ただけだ」

 

 それだけを告げて優しく彼は姉妹に微笑んだ。

 

「元気でな」

 

 ザックを片手に夕日に向かって、青年は静かに歩いて行った。  

 

ーーーーーー

 

 あの世とこの世の境にある黄金の雲と明け方の空の世界。

 

 灰色の石で掘られた、何処までも続く蛇の道が浮かぶ。

 

 その先に、直径100メートル程の小さな小さな球体が浮いていた。

 

 その球の名は、界王星。

 

 この銀河に限りなくある星々を統治する神。

 

 その更に上の存在である界王と呼ばれる存在が住む星だ。

 

 その小さな星にぎっしりと生えた芝生の上。

 

 青色のインナーシャツに山吹色の道着を着た、左右に非対称に飛んだ独特の黒い髪の青年。

 

 彼はいつものように青色の帯を締め、黒いブーツを履いた両足を地面に叩きつけ、目の前にいる青い肌の丸い中年の男性ーー北の銀河を統べる界王に語り掛けた。

 

「本当かよ、界王様!? そんなすげえヤツが、西の銀河に現れたんか!?」

 

 強い男を見れば戦わずにはおられない。

 

 戦闘民族と呼ばれる彼らの性なのだろう。

 

 幼いころに頭を打ち、凶暴性を失くしたとは言え、彼もまた純粋な戦士の一人だった。

 

「お、落ち着け~! その男なんだが。どうもお前やベジータと同じサイヤ人のようなのだ」

 

 間延びした独特なイントネーションで語られる言葉に地球育ちのサイヤ人ーー孫悟空は、ニカリと明るく笑った。

 

「へぇ~! オラ達以外のサイヤ人はフリーザに殺されたってベジータに聞いてたけど。そいつは、数少ねえ生き残りなんかなぁ?」

 

 拳を合わせてまなじりをキリリと引き締める。

 

 が、すぐにその引き締まった瞳がまん丸になって無邪気な子どものような顔になると、界王に問いかけた。 

 

「界王様がオラに会って来いってことは。そのサイヤ人、何か悪りぃコトしたんか?」

 

 これに界王は丸ぶちのサングラスをかけ直すと、丸い顔を真剣な表情にして告げた。

 

「この世界には、魔界と呼ばれる魔族どもが住む世界がある。そこを統べるのは、界王神様と対となる魔界王神と呼ばれる存在だ」

 

 界王は真剣な表情のまま、話を続けていく。

 

「その魔界の住人の中でも、とびきりの強さと邪悪さを誇ったダーブラ。お前も知っておるだろう?」

 

「ああ! 魔人ブウの時にバビディに操られてた、キビトのおっちゃんを殺した奴だな?」

 

「うむ。そのダーブラの一族は魔界の中でも取り分け残酷で凶暴な存在であった。時に人間の世界に来て、罪のない人々をたぶらかし、その魂を喰らうような奴らだ。余りにも目に余るので、ワシはお前に奴の一族を退治してもらおうと思っておった。しかし、その矢先に件のサイヤ人が現れたのだ」

 

 悟空は目をキラキラとさせながら、ジッと界王の言葉を聞いている。

 

 界王はそんな彼の様子に気付かずに、言葉をつづけた。

 

「あの恐ろしいダーブラ一族の若者ーーアブラを、まるで赤子の手をひねるように倒してしまった。しかも顔はお前と瓜二つ。服装もよく似ておる」

 

「オラと?」

 

「うむーー、しかも珍しいことに。そのサイヤ人は無益な殺生を好まなかった。アブラに止めを刺さず、魔界に返すだけに留めたのだ」

 

 ジッと界王は自分の弟子でもある、心優しく戦いが大好きなサイヤ人を見る。

 

 宇宙の悪魔フリーザ、伝説の魔人ブウを倒し、あの破壊神ビルスにまでもその力を認めさせた、最強のサイヤ人の青年ーー孫悟空を。

 

「悟空よ、お前にはそのサイヤ人に会ってもらいたい。邪悪な存在ではないが、余りに強すぎる力を持っている。あの力を正しく使える持ち主なのか、見極めてほしいのだ」

 

 真剣な表情で、深刻な声で告げる。

 

 ふと、悟空が何も言わなくなっていることに気付き、界王は目を見張って振り返った。

 

「悟空?」

 

「く~っ!! そりゃ、すげえな!! あのダーブラにも匹敵するようなヤツが、オラ達以外のサイヤ人に居たなんてよ!! 会ってみてえぞ!!」

 

 宝物を見つけた子どものような顔で無邪気に喜ぶ悟空にやれやれ、と内心で苦笑しながら界王は告げた。

 

「では、この件を引き受けてくれるか?」

 

「ああ! もちろんだ!!」

 

 即答で頷く悟空に、界王は静かに告げた。

 

「この方角に向かって気を探れば、サイヤ人の気があるはずだ」

 

 その言葉に、悟空は頷いて右手の人差し指と中指を額に当てて、界王の指す方向に体を向ける。

 

 瞳を閉じて静かに気を集中していくとーー。

 

「あった。サイヤ人の気だ」

 

 瞳を開き、悟空は界王の顔を見る。

 

 界王は静かに頷き返してくれた。

 

「ーーよし。いっちょ見てくっか!!」

 

 それだけを告げて去ろうとする前に、悟空は地球に残されたもう一人の純血のサイヤ人を思い出す。

 

 別宇宙のサイヤ人に出会えただけで、あれほど喜んでいた彼のことだ。

 

 自分たちの世界にも、まだ生き残りがいたことを知れば喜ぶだろう。

 

 そう思い至った。

 

「っと、その前にベジータにも声をかけてみっかな!」

 

「そうじゃな〜。あやつも戦闘民族サイヤ人の王子、会ってみて損はあるまい」

 

「ああ!」

 

 悟空はそれだけを応えると、先に地球へと向かった。

 

ーーーー

 

 北の銀河の中で、最も美しいとされる惑星・地球。

 

 高度な科学と豊かな自然が共存する世界。

 

 孫悟空の育った故郷だ。

 

 悟空は、ヤードラット人から教わった瞬間移動という時間や距離を無視する技がある。

 

 惑星間はもちろん、あの世とこの世、神々の世界にまで移動できる。

 

 それを使って界王星から、大きな敷地を持つ屋敷に移動した。

 

 半球体の家には会社名であるカプセルコーポレーションと書かれている。

 

「…何の用だ、カカロット?」

 

 トレーニングルームに向かおうとした悟空だが、建物に入る直前で呼び止められる。

 

 その声に悟空は思わず、ニッと笑って振り返った。

 

「よ! ベジータ!!」

 

「…俺に用事か」

 

 見れば悟空より小柄な体格に鋭い黒目。

 

 天に向かって逆立った黒髪の青年が腕を組んで立ったまま、気難しい顔を悟空に向ける。

 

 服装は青いフィットスーツに全身を包み、ラバー製の胸あてをつけており、両手足には白い手袋とブーツを履いている。

 

 誇り高い戦闘民族サイヤ人の王子・ベジータだ。

 

「ベジータ、サイヤ人の生き残りを見つけたんだ! 会いに行かねえか? 見た目はオラそっくりで、ダーブラ級のヤツを超サイヤ人にならずに倒せるくらい強いらしいぞ!!」

 

「…貴様は下級戦士だからな。ガキの頃に同じタイプの顔は何人か見た覚えがあるが。生き残りのサイヤ人で、ダーブラを倒せるだと?」

 

 鋭い目を細め、思案する。

 

 魔王ダーブラは、ただのサイヤ人で倒せるレベルではない。

 

 当時の惑星ベジータを滅ぼしたフリーザを優に凌駕する存在だ。

 

「…何かの間違いじゃないのか? ただのサイヤ人の力ではダーブラは倒せまい」

 

「それを確かめに行かねえか? オラ、戦ってみてえ!」

 

「…場所は分かるのか?」

 

 ベジータも乗り気であることを理解し、悟空は明るく言った。

 

「ああ! そいつの気は覚えたからな!!」

 

「いいだろう。サイヤ人の生き残りならば、俺も会いたいからな」

 

「…へへっ! よし、行くか!!」

 

 悟空の肩に手をかけ、ベジータが頷く。

 

 これに悟空も頷き、額に指を当てて気を集中させ、瞬間移動を行った。

 

ーーーーーー

 

 瞬間移動で現れた先は、地球よりも文明レベルの低い、主だった土地は荒野しかない惑星だった。

 

「…カカロット。いきなり目的の男に会えたようだな」

 

「ああ。瞬間移動は、ホント便利だなぁ」

 

 目を前に向ければ、白い道着を着た孫悟空と同じタイプの顔を持つサイヤ人が居た。

 

 青年は静かに歩みを止め、目の前に現れた二人のサイヤ人を見据える。

 

「…オメエ、ホントにオラそっくりだな!」

 

 明るく笑いながら悟空が言うと、サイヤ人の青年は静かに目を細める。

 

「…俺と同じサイヤ人か? こんな辺境の星で会うとは。驚いたな」

 

 淡々とした声で青年は悟空とベジータを見た。

 

 静かにベジータは悟空に瓜二つのサイヤ人の青年を見据える。

 

 間違いなく、サイヤ人の気だ。

 

 だが、自分の知るサイヤ人達とは、何処か違う。

 

「…貴様、惑星ベジータからどうやって逃げ延びたんだ?」

 

 ベジータの問いに青年は訝しげな顔になる。

 

「…惑星ベジータ…?」

 

「俺は、サイヤ人の王子ベジータ。サイヤ人ならば故郷である惑星ベジータを知らないはずがあるまい。いや、それともキャベ達のような別宇宙のサイヤ人か?」

 

 問いかけに、青年は静かに首を横に振る。

 

「そうか…。あんたらは、惑星サダラで仲間割れした片割れのサイヤ人の末裔か」

 

「! ならば、お前はサダラの生き残りか?」

 

 ベジータの問いに青年は、静かに首を縦に振る。

 

「…俺の名はターニッブ。惑星サイヤのサイヤ人にして、惑星サダラに残ったサイヤ人達の末裔だ」

 

「…なんだと!? 親父から惑星サダラは、仲間割れで消滅したと聞いたが。俺たちの宇宙でも現存しているのか!?」

 

 ベジータが興奮したような口調で問いかけると、青年・ターニッブは、首を横に振った。

 

「サダラは、仲間割れで消滅したのではない。それが原因で起こった星の異常気象で生命が住める環境ではなくなったんだ。原住民だったサイヤ人達は、あんたらの先祖のように星を捨てなければならなくなった。出て行った奴等とは違い、無益な争いを好まない彼等は知的生命体のいない惑星に移民してサイヤ人の惑星を作ったのだ。王の名はサイヤ人の中のサイヤ人という意味で、自らをサイヤと名乗り、惑星サイヤを統治している」

 

 ベジータは静かにターニッブの言葉を反芻し、考える。

 

 嘘をついていないのは、目を見ればわかる。

 

 何より、ターニッブの発する雰囲気は確かに自分達惑星ベジータのサイヤ人よりもキャベに近い。

 

 ベジータは今、強烈に惑星サイヤを見てみたかった。

 

 しかし、口を開こうとするよりも先にもう一人のサイヤ人。

 

 惑星ベジータでも、サイヤでもない地球育ちのサイヤ人が前に出る。

 

「ベジータ、その話は後にしねえか? オラ、こいつと戦ってみてえんだ」

 

「…カカロット?」

 

 見れば悟空は、静かに瞳に炎を燃やしてターニッブを見ている。

 

「…感じるんだ。オメエは、強ぇえってな…!!」

 

 笑う孫悟空の表情は、不敵にして凄みがある。

 

 対峙するターニッブは、まっすぐな目で悟空を見返す。

 

「オラとさ、戦ってくんねえか?」

 

「…あんたも、強い奴に会いにきたのか?」

 

「ああ!!」

 

 力強く頷く悟空に、ターニッブは静かに笑みを浮かべた。

 

 彼は、両掌を天に向けて腰に置き、拳を握る。

 

 左拳を前に出して、斜に構え右拳を体の脇に付けて腰を落とす。

 

 対する悟空も左手を顔の前に、右拳を腰に置き、両足のスタンスを広げて構えた。

 

ーーーーーー

 

 同じ顔と髪型をした戦闘民族サイヤ人が、互いに構えを取って睨みあう。

 

 片方は青いインナーに山吹色の道着を青い帯で結んだ青年。

 

 もう片方は、黒いノースリーブシャツの上に袖が破れた白い道着を着た青年。

 

「オメエの力、見してもらうぞ!!」

 

「…受けて立とう!!」

 

 物静かだったターニッブが、気合いを入れて一気に覇気を放つ。

 

 青白い炎のようなオーラを全身に纏った。

 

「…こいつは、すげえな。超サイヤ人でもねえのに、なんて気の量だ。悟飯の奴が変身した老界王神のじっちゃんの潜在能力開放に似てやがる」

 

 構えを取りながら、悟空はターニッブの状態をそう断じた。

 

「…ならオラも! はぁああああああっ!!」

 

 一気に気を高め、孫悟空は黄金の気を身に纏う。

 

 逆立つ黄金の髪に鋭く細められた翡翠の瞳。

 

 ベジータは、これを腕組みをしながら見るとターニッブに視線をやる。

 

 彼は悟空の姿を見て驚きさえせずに、静かに見据えた。

 

「超サイヤ人、か。俺はそいつを邪道だと考えている」

 

「…邪道? どうゆうことだ?」

 

 悟空の問いかけにターニッブは、静かに彼の目を見返してきた。

 

「…自分の身体能力を何倍にも高める超サイヤ人。だが、それは本当に己の実力だと言えるのか?」

 

 ターニッブは、拳を握る。

 

「孫悟空よ。その境地に達するまで、お前は相当な修行を積んできたのだろう。だが、だからこそ問いたい。己の身を強化するだけが、強さを極めることか? 楽をして手に入る力などない。漲る力も、溢れんばかりのスピードも、俺には必要ない。俺は積み重ねてきた己の力こそを信じる!!」

 

 悟空は黙って、真剣な表情でターニッブを見据える。

 

「それが。この拳を通してできた友や倒してきたライバル達への、俺なりの答えだ」

 

 静かに燃える黒瞳に、悟空は不敵な笑みを浮かべた。

 

「オメエ、サイヤ人らしくねえな!」

 

「…かもな」

 

 笑い合う。

 

 そして、互いに向かって同時に駆けると右の拳を構えて振りかぶった。

 

 凄まじい衝撃波を発生させながら、二つの拳が互いの中央でぶつかり合う。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「……ぐっ!」

 

「どうした? お前の力は、こんなものではないだろう」

 

 明らかに超サイヤ人になった悟空が押されている。

 

 その事実に、ベジータが微かに目を細める。

 

(カカロットの奴め。悟飯の潜在能力開放に見立てているのなら超サイヤ人3以上の力が必要のはずだ。実際に拳を合わせてターニッブの実力を量るつもりか?)

 

「ぐああっ!!」

 

 拳を合わせていた悟空が、後方に弾き飛ばされた。

 

 片手と両足を地面に着け、飛ばされる勢いを殺す。

 

「…ぐっ!?」

 

 目を見開いて前を見ると、ターニッブが一気に踏み込んできた。

 

 愚直なまでに真っ直ぐな攻めだった。

 

 こちらの攻撃を受け、耐えた上での反撃。

 

 初めからペース配分など考えていない。

 

 生真面目で地道な特訓を重ねに重ねた硬い拳。

 

 重く、速く、鋭い蹴り。

 

 左ストレートを右の頬に放ってから右の正拳中段突き、右足の上段回し蹴りから中段後ろ回し蹴りという手堅い攻め。

 

 左のストレートを悟空は右に見切る。

 

 鳩尾付近に放たれた重い右正拳突きを両腕で受ける。

 

「ぐぅうう!!」

 

 重い一撃に思わず、超サイヤ人と化した悟空の腕が痺れた。

 

(こいつ……強ぇえ!!)

 

 目が見開かれると同時、その目に右の上段回し蹴りが迫ってくる。

 

 咄嗟に上体を屈ませて頭上に避け、悟空は右の拳を握って半ば背を向けているターニッブに殴りかかろうとして腹部に強烈な左の後ろ回し中段蹴りを喰らった。

 

「がぁっ!!」

 

 鈍い炸裂音が響き渡り、悟空を後方へ弾き飛ばす。

 

 背中から遥か後方の地面に叩きつけられ、その衝撃は強大な土煙を巻き起こす。

 

 ターニッブは左足を曲げて掲げた姿勢で止まり、静かに弾き飛ばされた悟空を見据え、両の拳を握って腰だめに今一度構える。

 

 その目には静かに燃える炎があった。

 

「これが、俺の全力だ。さあ、お前の本気を出せ!!」

 

 ゆっくりと仰向けの状態から起きあがる孫悟空。

 

「……へへっ」

 

 不敵な笑みを浮かべる。

 

 戦闘民族サイヤ人の闘争本能が彼の瞳を鋭くする。

 

「オメエ、ほんとにサイヤ人らしくねえな。自分の強さを誇示するわけでもなく、ただオラに本気を出させようとするなんてよ」

 

 これにターニッブも微笑み返す。

 

「俺はただ、お前がどれだけ強いのか知りたい。俺の全力が、お前の本気に応えられるかどうかを。ーーただ、それだけだ」

 

「へっへっへっへ………! オラも色んなヤツと闘ってきたけどよ。オメエみてえなヤツ、初めてだぜ」

 

 拳を握りしめ、孫悟空は気を高める。

 

「オラ、決めたぞ! オメエは、オラの全力でぶっ倒してやるってなぁ!!」

 

 腰溜に構え、一気に髪が伸びる。

 

 身にまとうオーラがさらに激しくなる。

 

 孫悟空から眉を消え、強面の顔へとーー。

 

「こいつがオラのとっておき、超サイヤ人3だ」

 

 両腕を組んでいたベジータは、悟空の変身に思わず舌打ちした。

 

「カカロットの奴め。まだ様子見をするつもりか」

 

 だが、自分の言葉に自ら首を横に振り、考えなおす。

 

「いや。超サイヤ人3以上となれば、神の気を使う必要が出てくる。ある意味では妥当な判断か」

 

 超サイヤ人3。

 この変身は圧倒的な力を孫悟空に与えるが、気の消費が激しく、なっていられる時間に制限がある。

 

 短期決戦にしか使えない変身であるが、その力は強力無比なものだ。

 

「初っ端から全開で飛ばさせてもらうぞ」

 

 鋭い瞳に、低く冷たい声で孫悟空は告げる。

 

 ターニッブは、腰を落とし構えを取りながらも微かに眉を上げ、笑う。

 

「驚いたな。コロコロと姿が変わるやつだ」

 

「ふふっ、オメエが邪道だって言った超サイヤ人の極みがこれさ」

 

「極み……? 孫悟空よ、お前の極みーー力の限界はそこなのか」

 

「どういうこった?」

 

 孫悟空は訝しげに問う。

 

「極みとはすなわち、それ以上はないということだ。だが、強さとは限りないもの。俺はこの拳を通して多くの友からそれを学んだ。お前は違うのか」

 

「…そうだな。オラも強くなる度に、すげえヤツらが現れてずっとソイツらと闘ってきた」

 

「ならば極みなどと言うな。俺たちの目指す強さとは限りないもの。生きている限り続く道。果てない強さへの極みを目指し続けるんだ!!」

 

「なら、オメエの極みへの目指し方、見せてみろ!!」

 

 圧倒的な気をまき散らし、その場から轟音と共に消える超サイヤ人3。

 

 次に現れたのはターニッブの左。

 

 強烈な右のストレートを放つ悟空に対し、ターニッブはこれを左手で受け止める。

 

「流石だ。超サイヤ人3についてくるんか!」

 

「俺もまた、限りなく強さを求める者だ!」

 

 ターニッブの右正拳突きを受け止める孫悟空。

 

 そこから両者、脚を止めての撃ち合い。

 

 互いに向かって放たれる拳と蹴り。

 

 互いの攻撃のどちらが上回るか。

 

 純粋な力と力。技と技。

 

 退くことを知らぬサイヤ人、二人。

 

 ターニッブの表情は、闘いの場に身を置く者と思えぬほどに清々しい。

 

 対する孫悟空は不敵であった。

 

 一つ分かることは、二人にとってこの闘いは何よりも尊く、代え難い愉悦の一時であることだ。

 

 後方に弾き飛ばされる度に頭を突きつけ合う二人。

 

 舞い散る血が、飛び散る気が、地面に巻き起こる亀裂が、二人の闘いの激しさを物語っている。

 

 またたく間にボロボロになっていく二人のサイヤ人。

 

 それでも両者は退かない。

 

 互いの極みを求めんと、ただひたすらに互いの拳を、蹴りをぶつけ合う。

 

 強烈な炸裂音と共に悟空の右正拳突きを左に躱し、ターニッブの右拳が孫悟空のみぞおちにヒットした。

 

「くはっ!」

 

 耐え切れず顎が下がる悟空に対し、全力の気を込めた左の拳を突き上げる。

 

「破ぁああっ!」

 

 跳び上がりながらのアッパーカットを喰らわすターニッブは、宙にて直ぐに身を翻した。

 

「かああっ!」

 

 悲鳴と共に天高く舞う超サイヤ人3。

 

 螺旋を描きながら地面に上半身から倒れ込む。

 

 ターニッブは静かに着地した後、拳を構える。

 

「へっ……へっへっへっへっへっへ……!」

 

 ダメージを負いながらも、超サイヤ人3となった悟空は立ち上がってきた。

 

 これにターニッブも感嘆を込めた声で、清々しい笑みを浮かべて語りかける。

 

「…凄い奴だ。俺の全力を込めた渾身の一撃だった。それをまともに受けて、まだ立ち上がるのか…!」

 

 対する悟空は、心底楽しそうな明るさと凄みのある笑みを浮かべている。

 

「ホントにすげえよ、オメエ……! オラ、油断なんかしちゃいなかったつもりだけどよ。超サイヤ人3になったオラ相手に、たったの一撃でこんだけのダメージを叩き込むなんてよ」

 

 その時、この場にいるもう一人のサイヤ人から声がかかった。

 

「カカロット、いつまで様子見をしている! その男に遠慮は無用だ! 貴様の全力を見せつけろ!!」

 

 ライバルであり、親友でもある男の言葉に超サイヤ人3はニヤリと笑う。

 

「へっ……だよな、ベジータ! オラもそう思ってたところだぜ!!」

 

 これにターニッブは笑う。

 

 より強さを増すというサイヤ人に対して、己の全力が何処まで通じるのか知り得ると。

 

「ふっ、ひとの悪い奴だ。全力を出すと言っておいて、まだ力を隠していたのか」

 

「ちょっと違うな。こっから見せるんは、普通の超サイヤ人の力じゃねえ。超サイヤ人3も、超サイヤ人のバリエーションに過ぎねえからな」

 

「どういうことだ?」

 

「見したほうが早いさ」

 

 悟空は超サイヤ人3の変身を解き、普通の黒髪のサイヤ人の状態へと戻る。

 

 同時に、先ほどまでの超サイヤ人の黄金の気と白い気が入り混じったオーラを身に纏う。

 

 これにターニッブは構えを取りながら、感じた。

 

(雰囲気が、変わった……! それだけじゃない。孫悟空の気が感じられない? いや、違う! 気の純度が高まって、透明に見えるんだ!)

 

 ニヤリと笑う悟空の全身を青い粒子が纏わっていき、姿が青い炎に包まれて消えて行く。

 

 それが解きほぐれて行くごとに、纏うオーラが青いものに変化した。

 

 逆立つ青い髪と鋭い目は、先までの超サイヤ人とは似て根本的に非なるもの。

 

「これが超サイヤ人ゴッドの力を持ったサイヤ人の超サイヤ人。超サイヤ人ブルー! どうだ、ターニッブ! これがオラの全力だぁああっ!!」

 

 放たれる威圧感と咆哮に、ターニッブは身震いする。

 

「な、なんて気だ……!」

 

 その言葉に、悟空は嬉しげな笑みになる。

 

「わかるんか? さすがだな。神の気を見ただけで、オラの戦闘力を見極められるなんてよ」

 

 悟空は破壊神ビルスや付き人ウイスから、相当の修行を受けて神の気を感じられる域になった。

 

 これをターニッブは初めて見て感じたというのだ。

 

 掛け値なしに賞賛されるべきことだ。

 

「素晴らしい強さだ。ならば俺も改めて、全力を持って挑ませてもらう。超サイヤ人ブルーよ!」

 

 ターニッブは宣言すると同時に、先までの全力の動きで悟空の懐に飛び込むと、強烈な左ストレートを放った。

 

 だが、吹きすさぶ衝撃波とは対照的に乾いた音で、拳は左手に掴み止められている。

 

 止められたと見るや、掴み止められた拳を引いてターニッブは逆の拳を振り抜いた。

 

 拳は空を切り、強烈な左の拳がターニッブの腹に突き刺さる。

 

「…がはぁっ!」

 

 肺の中の空気を吐き出し、ガラ空きになったターニッブの顔面に右の上段回し蹴りが炸裂した。

 

 弾き飛ばされ、遥か後方の地面に巨大な土煙を上げながら、背中から叩きつけられる。

 

 僅か一瞬の攻防だったが、先までと違い両者のレベルには圧倒的な差があった。

 

 たったのニ撃でターニッブは、肩で息をする程のダメージを負いながらも立ち上がってきた。

 

 そんなボロボロの彼に対し、真正面に向かい合いながら悟空は淡々と告げる。

 

「オメエも超サイヤ人になれ」

 

 その言葉に、ターニッブは目を見開きながら問い返す。

 

「なに?」

 

 悟空は、そのままの表情で淡々と続ける。

 

「オラが全力を出したんだ。オメエも全力を出すんだ!」

 

「俺は、最初から全力だ」

 

 間髪入れずに返すターニッブに首を横に振り、悟空は冷めながらも燃える青い目で告げる。

 

「そうじゃねえ。オメエもなれんだろ? 超サイヤ人に」

 

 その言葉に、ターニッブは表情を曇らせる。

 

 だが、悟空は真っ直ぐに告げた。

 

「邪道だとか、そんな事どうだっていいじゃねえか。オラたちが目指す強さってのは、相手がどんだけ強ぇか知りてえ! その力に今の自分がどんだけ立ち向かえるんかを知りてえ! そのためにオラは闘ってきた。オメエは違うんか、ターニッブ!!」

 

 拳を握りしめ、悟空はサイヤ人として。

 

 一人の戦士として、最高の敵にーー友に告げた。

 

「超サイヤ人へのこだわりなんて捨てちまえ! そしてオラに見してくれ。オメエの全てを込めた力を!!」

 

「俺は……」

 

 真っ直ぐな声と瞳に、ターニッブは迷う。

 

 この忌むべき力。

 

 圧倒的にして絶えず高まり、溢れる力。

 

 全てを破壊する黄金の光。

 

 理性すらも闘争と破壊の意志に塗り替えられていく、あの恐怖を越えて。

 

 己の力と化した超サイヤ人。

 

 忌み嫌いながらも、己の一部であると受け入れるまでに時間を要した。

 

 ただの武道家同士の戦いには不要だと、使うつもりはなかった。

 

 だがーー目の前のサイヤ人は、その忌み嫌った力を使いこなすだけで飽き足らず、限界を超えて変身した更なる境地を自分に見せてくれている。

 

 ただ、自分と戦うために。

 

「何をためらってやがる、貴様!」

 

 その時、誇り高いサイヤ人の王子ベジータが、叫んだ。

 

「カカロットと全力を賭して闘いたいと言ったのは、貴様ではなかったのか!? その男は、破壊神にすらもその強さを認めさせた宇宙最強のサイヤ人の一人だ! その男を前にして、自分の下らん拘りのために勝負を棒に振るつもりか!?」

 

 親友の言葉に思わず悟空は笑みを浮かべる。

 

「へっ、ベジータ……」

 

 自分もまた、ベジータと同じ気持ちだからだ。

 

 ターニッブの全力を見たい。

 

 互いに全力を持って、とことんやり合いたいだけだ。

 

「貴様もサイヤ人ならば見せてみろ! 俺たちに!!」

 

 ベジータの熱い言葉に、ターニッブは静かに頷いた。

 

「……わかった。お前たちの言うとおりだ。今、自分の全力を賭しても倒せるのか分からない強敵(とも)が目の前にいる。そんな男に対し、力を出し惜しむなど武闘家としては愚の骨頂!」

 

 拳を握りしめ、ターニッブは力強い意志を持った黒い目を悟空に向ける。

 

「そうだ、ターニッブ! 超サイヤ人もまた、オメエの中の力の一つだ!!」

 

 応えながらも、悟空は続ける。

 

「オメエはすげえよ。超サイヤ人を否定したからこそ、それだけの力を通常の状態で引き出してる。そのオメエとなら出来るはずだ! 限界を超えた最高の戦いをなぁ!!」

 

「ならば行くぞ、孫悟空! これが俺の全力だっ!!」

 

 拳を握りしめ、黄金の気を纏いながら、ターニッブは叫んだ。

 

 強烈な気柱が天を衝き、落雷が地を穿つ。

 

 目の前には、ただ黄金の気を纏った超サイヤ人が逆立つ髪を揺らして立っている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その瞳と纏うオーラを見て、悟空はニヤリとした。

 

「ふっ、ベジータ……。こりゃとんでもねえヤツを目覚めさしちまったかもしんねえな」

 

「なんだったら俺が代わってやろうか? カカロット」

 

 揶揄するようなベジータの声にそちらを見て笑い返すと、悟空は静かに構えを取りながら、超サイヤ人と化したターニッブを見る。

 

「見た目はただの超サイヤ人とほとんど変わんねえのに、感じる気が無限にアップしていきやがる……!」

 

 自分の提案を無言で拒否した悟空にニヤリと笑い、ベジータも頷く。

 

「超サイヤ人に似てはいるが、身に纏うオーラとあの黒い瞳孔が現れた目は超サイヤ人3のソレだな。髪の色も普通の超サイヤ人よりも濃い金色だ」

 

「ああ。神の気を使わずに、これだけの力を極めれるなんてなぁ。超サイヤ人3の力を超サイヤ人の状態で引き出してるって訳か」

 

「言うなれば千年に一人の戦士。名付けるとすれば、まさに"真・超サイヤ人"だ!」

 

 興奮気味に言うベジータに、悟空はニヤリとしながらターニッブを見据えた。

 

「おいおいベジータ。そいつはちょっと誉めすぎじゃねえか? ホントに千年に一人かどうか、超サイヤ人ブルーになったオラが、はっきりさせてやらぁ!!」

 

 強烈な蒼銀の炎のような気を纏い、孫悟空はターニッブと対峙した。

 

 




ありがとうございました(´ー`* ))))
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