ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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と、いう訳でブロリー編のラストです( *´艸`)

楽しんでください( *´艸`)
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壁を越えて 道は続いていく

 

 

 クウラを真っ向勝負で下した悟空は真・超サイヤ人から元の黒髪黒目に戻る。

 

 しかし、彼の目は鋭く細まったままであった。

 

 敗北を認めたクウラもまた、冷たい眼差しを鋭く細めて一点を見つめている。

 

 彼らが見つめる視線の先には、惑星バンパから連れてこられたサイヤ人ブロリーと黄金の炎を纏う真・超サイヤ人の戦いであった。

 

「……ブロリーよ。貴様に足りぬもの、その男から吸収できるか?」

 

 先ほど自身を負かした孫悟空と同じ姿となったブロリーに瓜二つの男を見つめて、クウラは静かに呟いた。

 

ーーーー

 

 拳と拳をぶつけ合う。

 

 瞬間、パワーもスピードも技も及ばないブロリーは一方的に吹き飛ばされ、血を吐いていた。氷の壁に叩き込まれ、赤い血が氷の大地に沁み出る。

 

 チライが思わず目を背けて、口元を覆うほどに強烈な拳を次々と叩き込まれている。

 

「ーーなんで?」

 

 血を吐いて、瞬く間にボロボロにされて。それでもブロリーは挑んでいく。

 

 何度も何度も、叩きつけられて。殴られて、蹴り飛ばされて。

 

 それでも諦めずに彼は向かっていく。唸ることもなく、ひたすら歯を食いしばって挑んでいく。

 

 黄金の炎を纏う悪魔のような戦士に。

 

 見た目は、ブロリーにそっくりだ。だが、血を吐いたブロリーを見ても悪魔は眉ひとつ動かさない。

 

 淡々と返り血すら浴びずに拳を叩き込んでいく。明らかにレベルの差があるのに、一切手を緩めずに。

 

「もう、やめよう? こんなの意味ないよ。ブロリー」

 

 あまりに強い。強すぎる。勝負になっていない。

 

 それなのに、悪魔はブロリーをとことんまで殴りつけていく。

 

 立ち上がろうとするブロリーを更に攻撃していく。情けも容赦もない。

 

「殺されちゃうよ、ブロリー」

 

 悪魔は一切手を緩めない。

 

 どれだけ健気にブロリーが立ち上がっても、父親への想いも、バァとの思い出も。

 

 何もかも否定して、その上でブロリーを叩き潰すと言うのだ。この、悪魔は。

 

 チライは涙を流していた。

 

 悔しい。

 

 ブロリーが何一つ認められないで、悪魔に蹂躙されるのが悔しくて仕方ない。

 

 こんな血も涙もない悪魔に、ブロリーが踏みにじられるのが。見ているしかできない自分の無力さが。

 

 悔しくて悔しくてチライは泣いていた。

 

 それでも、ブロリーは立ち上がる。

 

 どんなにボロボロにされても、立ち上がってくるのだ。

 

「逃げないと……。殺されちゃうよ。逃げて、ブロリー」

 

 弱々しい声で震えながらチライが呟く中、ブロリーは緑色の気を纏って悪魔に向かっていく。

 

 悪魔の動きを取り込んで尚、差がある。格闘センスが違う。

 

 ブロリーのガードの隙間を、攻撃の間隙を縫うように悪魔は拳と蹴りを叩き込んでくる。反撃に手を出せば瞬く間に全身を殴られ蹴られ、一方的にブロリーは吹き飛ばされていく。

 

 血を吐いて、地面に叩きつけられて、それでもブロリーの目は悪魔を睨みつけている。

 

 悪魔もまた、ブロリーから目を逸らさない。

 

 笑みすらも浮かべずにブロリーを追い詰めていく。その姿は正に悪魔だ。

 

 ブロリーは強い。その強いブロリーが、まるで歯が立たない。

 

 拳を繰り出すブロリーの懐にアッサリと踏み込んでボディに右拳を叩き込む悪魔。前のめりになってガードが下がるブロリーの顎を長い槍のような右脚が蹴り抜き、足が一瞬浮くくらいの衝撃がブロリーを襲う。その一瞬で悪魔が右の拳を振りかぶっていた。

 

 咄嗟に力の入らない両腕を顔の前で曲げて受けるも、受け切れずに後方に吹き飛ばされて何度目になるか分からない氷山の壁に叩き込まれる。

 

 頭を振り、意識をはっきりさせると目の前にゆっくりと余裕を持って悪魔が歩いて来ていた。

 

 口を大きく開けてブロリーは緑色の光線を口から放つ。

 

 それを悪魔は鬱陶し気に左拳を握って裏拳気味に弾いた。強烈な光は、それだけで悪魔から狙いがそれて遥か後方を撃ち抜いてしまう。

 

 そのことにブロリーは全く興味なさげに踏み込んで、拳を振り上げて顔に目掛けて下ろす。

 

 左手を顔の前に出して掴み止める悪魔にブロリーは左足を伸ばして胴を回転させて回し蹴りを放つ。軽く前に出された右脚で側頭部を狙った回し蹴りの側面を蹴り上げられる。

 

「ーー!?」

 

(これだけ、フェイントをかけて動き回っても見切られる!?)

 

 目を見開くブロリーに悪魔は不敵な笑みを浮かべて来た。

 

 その笑みを見て、ブロリーの闘志が燃え上がる。即座に拳を握り、殴りかかる。

 

 左右のストレートを放つも、首を左右に傾けるだけで避けられる。右ストレートを顔に放つと同時にボディにも放つ。

 

 顔は躱され、ボディに放った拳は左腕に止められている。

 

 それを悟ったときには強烈な右のボディがブロリーの左腹を打ち貫いている。

 

「うぐぉ!?」

 

 前のめりになったところを悪魔は左脚を伸ばして胴を回転させて回し蹴りを放ち、ブロリーの顎を蹴り抜いて後方へ弾き飛ばす。

 

 着地したブロリーの前に悪魔は迫り、凄まじい連撃を放ってきた。

 

 両腕のガードを上げて顔に直撃するのを避けるも、左のローキックで右脚を狩られて体勢を崩して生じたガードの隙間から右ストレートを顎にねじ込まれ、後方へ吹き飛ぶ。

 

 顔が亀の首のように引っ張り出されたところを、凄まじい左上段回し蹴りでコメカミを打ち貫かれて地面に叩きつけられる。

 

 すぐさま、左脚がそのままブロリーの頸椎を踏みつけて地面に固定させる。

 

「が……あ!!」

 

 その強さは、力任せに殴りつけてくるような戦闘力にかまけたものではない。

 

 圧倒的なスピードとパワーを磨き抜かれた技で使いこなしている。

 

 ブロリーのセンスをして、到底追いつけない経験が目の前の悪魔にはある。

 

「その程度の力で俺に勝てると思っていたのか?」

 

 見下されたブロリーは静かに両手を氷の地面に付けて立ち上がろうとするも、悪魔の足底に首を踏まれているが故に立てない。

 

「……! この程度、じゃない!!」

 

「フンーー!」

 

 睨み上げてくる瞳に悪魔も睨み下ろしてくると、脚をどけた。瞬間、ブロリーは立ち上がって殴りかかろうとするも、顎を左脚で蹴り抜かれて垂直に引っこ抜かれたように吹き飛ぶ。

 

 いや、脚が地面から離れた瞬間に悪魔の猛攻がブロリーの全身に叩き込まれていく。

 

「なんだよ。なんなんだよ、あいつは!? あんなの反則じゃないか!!」

 

 チライが思わず叫ぶほどに、ブロリーのあらゆる技が悪魔によって返されている。ブロリーの攻撃は全て通じず、代わりに全く同じフォームで繰り出された技が、ブロリーをカウンターで傷つけていく。

 

「ただでさえ強いのに、あんなの!!」

 

 何をしても、何度向かっても、全て叩き潰してくる。

 

 技で、力で、速度で、センスで。

 

 それでもブロリーは諦めていない。ジッと目を鋭く細めて悪魔を睨みつけている。

 

 どれだけ弾き飛ばされ、顔を後方へ仰け反らされようとも、打ち返す。

 

 その意識が途絶えない限り、ブロリーは足掻き続けるだろう。

 

「……! 肉体は既に限界を超えている。それを動かすほどに圧倒的な意思か」

 

「やっぱ、アイツもブロリーなんだな。あの意思の強さ。似てっぜ、オラ達の仲間のブロリーとな」

 

 クウラの言葉に悟空も頷く。

 

 自分の仲間のブロリーが、この世界のブロリーを鍛えている。悟空には、ハッキリとそう見えている。

 

 弾かれても、弾かれても、諦めない。その断固たる意志を、心の強さを、笑う者など此処にはいない。

 

 気付けば、真・超サイヤ人のオーラに導かれるようにブロリーの纏う緑色の気に黄金が混じり始めている。

 

「……! 超サイヤ人にも目覚めていない男が、至ると言うのか? 真の超サイヤ人に……!!」

 

「なんて野郎だ。才能だけなら、オラ達よりも上かも知れねぇぞ」

 

 ベジータと悟空が驚きに目を見開く中、冷徹な黄金の戦士は自分と同じ気を纏い始めているブロリーを真っ直ぐに見つめている。

 

 ブロリーの目には、既にパラガスなど居ない。

 

 彼の目に映るのは、たった一人だけだ。

 

 自分と瓜二つの姿を持つ黄金のオーラと髪の戦士。

 

「ーーしぶとい奴め」

 

 黄金の戦士が、それだけを告げると一気にブロリーの目の前に現れる。拳を振りかぶる両者。三度、ブロリーの拳は空を切り、悪魔の拳がブロリーの腹を穿つ。

 

 今回は、それだけで収まらない。次々と左右の拳を交互に連打で繰り出し、ボディを打ち貫いていくのだ。

 

「ぐ、ぅ、ぁ、がぁああああっ!!」

 

 氷の壁に貼り付けられ、瞬く間に壁を打ち貫いてブロリーは叩きつけられる。

 

「! 限界のようだな」

 

 ベジータが静かに呟く中、悟空も頷く。

 

「ああ。あっちのブロリーは、超サイヤ人にもならないで超サイヤ人ブルーの域にまで来てやがった。才能だけでターニッブを超えてやがる……!」

 

「ブロリーに真・超サイヤ人を引き出させたんだ。本物なのは間違いないだろう」

 

 二人のサイヤ人の言葉を聞き流しながらクウラは追い込まれているブロリーを見つめて叫んだ。

 

「ブロリー!! 貴様の力は、そんなものではないだろう!!!」

 

 その声に壁にめり込んで項垂れていたブロリーがピクリと反応して、顔を上げて悪魔の男を睨みつける。

 

 しばらく睨み合う両者。悪魔はブロリーが動かないのを見ると左の拳を振り上げた。

 

「ーーフン!」

 

 顔に向かって振り下ろされる拳をブロリーは睨みつけている。その瞳はーー黒の瞳孔が拓いた翡翠眼へと至っていた。

 

 悪魔の左拳を右手で掴み止める。それまで完全にパワー負けしていたのに、今度は完全に止めていた。

 

「……! 貴様!!」

 

 目を見開く悪魔の男の目の前には、黄金の炎のようなオーラを全身から噴き上げるブロリーが居た。

 

 チライの目も見開かれている。悪魔の男と、本当に瓜二つと成っていくブロリーの姿に。

 

「うぅぉぁあああああ!!!」

 

 獣神の咆哮が鳴り響き、悪魔を正面から睨みつける黄金の髪の戦士。

 

 そうーーブロリーは至っていた。

 

「なんだと!? 変身しやがった!!」

 

「真・超サイヤ人に、成ったって言うのか!? 超サイヤ人に目覚めてねぇアイツが!!」

 

 ベジータが、悟空が驚きに目を見開く中、クウラが叫ぶ。

 

「そうだ!! 見せてやれ、ブロリー!! 貴様の真の力を!!!」

 

 その声に応えるようにブロリーの目は冷徹な瞳となって悪魔を睨みつけていた。

 

 咄嗟にバックステップして距離を取る悪魔の男を獣神とも言うべき重圧を放つブロリーが睨みつけている。

 

「ーーこれが、俺か?」

 

 両手を見下ろしてブロリーは全身に漲る力と、冴えわたる頭。よく見える世界を見渡す。

 

 心配そうに涙を浮かべてこちらを見るチライと自分を必死に応援するレモ、こちらを真っ直ぐに見るクウラと機甲戦隊たち。

 

 そして地球で暮らしているサイヤ人二人を見据え、その横に呆然としているパラガスを見た後。

 

 ブロリーは正面に立つ自分と全く同じ存在に顔を移す。

 

「これで、同じだ。俺が、勝つ」

 

「ーー寝言を、ほざくな!!」

 

 互いに構える。

 

 強固な意思を瞳に、心の力を拳に、無限の気を全身から放って二人のブロリーは睨み合う。

 

 高速移動を三度、行う二人のブロリー。

 

 黄金の炎は、互いの影を追いかけるように走る。

 

 拳と拳、蹴りと蹴りがぶつかり合い、互いの臨界点を互いの気が超えていく。

 

 ブロリーは叫ぶ、目の前にある自分に似て非なる存在を超える為に。

 

 交互に仰け反るも、互いに一歩も譲らずに拳を打ち貫く。青空に黄金の螺旋を幾筋も描き、巨大な氷の世界を吹き飛ばして尚、飽き足らずに高まっていく。

 

 光の波紋が、そこいらで現れて衝撃波が響き渡る。

 

 二人のブロリーは同時に着地し、互いに睨み合う。

 

 真・超サイヤ人になったばかりのブロリーは目の前の異なる自分と違い、全身に汗を掻いて肩で息をし始めていた。限界が近い。

 

「ーーもう、終わりか?」

 

 それを悟ったように、もう一人のブロリーが拳を腰に置いて気を高めていく。

 

「終わりじゃ、ない……!!」

 

 これにブロリーも応えるように、黄金の炎を燃え上がらせる。

 

「「勝負だァアアアア!! ブロリィイイイイッッ!!!」」

 

 黄金の炎を燃やして、体力の限界に来ているブロリーに付き合う様に悪魔の男も気を高めていく。

 

 互いに構えるのは右拳。

 

 世界中から気を吸収して右拳に全ての力を集約させていく。

 

 同時に、足場を蹴る。

 

 急接近する両者。

 

 放たれるブロリーの右拳は、悪魔の男の額に吸い込まれるように叩き込まれた。

 

「俺のーー勝ちだァアアアア!!!」

 

 気高い黄金の獣神が咆哮する。額から鮮血を噴き出して悪魔はまともに右ストレートを食らった。

 

 否ーー受け止めた。

 

「……!!?」

 

 ブロリーが目を見開く中、悪魔はーーもう一人のブロリーは鋭くも穏やかな笑みを浮かべている。

 

「……最後まで、逃げなかったことは褒めてやろう」

 

 眼が見開かれる中、ブロリーの目にはもう一人のブロリーの巨大な鉄拳が迫っていた。

 

「ギガンティックゥウデストラクションッッ!!」

 

 眉間をまともに打ち抜かれて衝撃が体を突き抜け、ブロリーは白目をむいて黄金の炎を散らして黒髪に戻って前のめりに倒れた。

 

 黄金の炎を纏ったもう一人のブロリーは、黒髪に戻ってうつ伏せに倒れ伏したブロリーをジッと睨み下ろし立ち上がってこないのを確認すると黒髪に戻っていた。

 

「ーーフン」

 

 瞳を閉じ、彼は自分の下へ歩いてくる二人の親友ーー孫悟空とベジータにふり返った。

 

 彼らは互いにニッと笑みを浮かべると、右手の親指を突き立てて突き出した。

 

ーーーー

 

 暗い闇の向こうから、黄金の炎を纏った自分に似た悪魔のような強さの男が拳を振るってくる。

 

 その拳に向かって、自分は何度も何度も打ち返す。

 

 一心不乱に打ち返していた。

 

 負けたくない、コイツにだけは負けたくない。

 

 その想いが、彼を何度も立たせていた。

 

 怯えた、竦んだ、嫉妬した、羨んだ。自分と同じ存在だと言うのは、見れば分かったから。

 

 だけど、それでも目の前に現れた自分そっくりの男は、自分とは違った。

 

 自分には無い”自由”を、彼は持っていた。

 

 自分には持てなかった”強さ”を持っていた。

 

 その”強さ”は、友から教わったものだと拳が語っていた。

 

 だからブロリーは、コイツにだけは負けたくなかった。

 

「……ブロリー?」

 

 声が聞こえ、ゆっくりとブロリーは瞳を開けた。

 

 自分は寝室のベッドに寝かされていた。

 

 とても肌触りの良いシーツとクッションと言う柔らかいものが、ブロリーの躰を休めさせた。

 

「大丈夫なのか?」

 

 目を向けると、緑色の肌と短い白髪の女性が目の前で自分を心配そうに見ている。彼女の後ろにはオレンジ色の肌をしたニット帽をかぶった老人が穏やかな笑みを浮かべてブロリーに頷いてきた。

 

「頑張ったな、ブロリー」

 

 その言葉にブロリーはゆっくりと体を起こし、二人を見上げた。

 

「ありが、とう。最後までーー見てくれ、て」

 

「……ブロリー。気に、するんじゃ、ないよ」

 

「チ、ライ。お、父さんは?」

 

 この場に居るのはチライとレモしかいない。これにレモが答えてくれた。

 

「お前の親父さんなら、クウラ様が連れていったよ。今は、お前を休ませることが先決だって言ってな」

 

「……そう、か」

 

 どうやら、父も無事だったようだ。

 

 ベジータという仇に結局は、何も出来ていないが。それでもブロリーは、パラガスが無事であったことの方が喜ばしかった。

 

 自分と対峙した自分も強かったが、クウラと戦ったサイヤ人も強かった。

 

 あの二人のレベルには、簡単には追いつけない。

 

 そう、ブロリーをして思わせた。

 

「ねぇ、ブロリー? もう、やめない?」

 

 チライの言葉にブロリーは首を傾げる。

 

「お前は、闘いたくて闘ってたわけじゃない。クウラ様に頼めば。きっとバンパよりもっと環境の良い惑星で平和に暮らせると思う。私も、付き合うからさ?」

 

 彼女はブロリーの傷だらけの手を掴んできた。

 

 口元を震わせながら、目の端から涙を流して、チライはブロリーを見つめている。

 

「きっと、闘わなくていい世界に行けると思うんだ。ね、そうしよ? でないとさ、ブロリー、死んじゃうよ」

 

 怖かったのだ。

 

 彼女にとって、ブロリーが死ぬのは怖いと思ったのだ。

 

 だから、彼女はブロリーに告げる。闘いの日々など忘れて、平和に暮らそうと。

 

 ブロリーのような強くて優しいサイヤ人ならば、何処でだって生きていける。

 

 フリーザ軍や、パラガス、クウラの所に居るべきじゃない。

 

「ーーチライ」

 

 レモが気づかわしげに彼女を見た後、ブロリーに苦笑する。

 

「すまないなぁ。コイツ、よっぽどお前さんが死ぬのが嫌らしい」

 

 ブロリーはジッとチライの流れる涙を見つめている。

 

 すると、扉が開いた。

 

「どうやら目が覚めたようだな」

 

「ーークウラ?」

 

 目を見開くブロリーにクウラがニヤリと返す。

 

 そして彼はチライに向けて言った。

 

「チライと言ったな? 闘うか、闘わないかを決めるのはブロリー自身にやらせろ」

 

「……ブロリーを、これ以上闘わせるのは……!!」

 

 冷徹な瞳と平淡な声にチライは立場を忘れてクウラを睨みつけた。

 

 だが、クウラは素っ気ない。

 

「それを決めるのは、お前ではない。ブロリーの道を提案するくらいはしても構わん。だが、ブロリー程の男に進むべき道を指図するなど、侮辱以外の何ものでもない。それではパラガスと何も変わらん」

 

 目を見開くチライをレモが止める。彼には、クウラの言い分が分かったようだ。レモに止められたチライは不満そうに彼を見つめた後、押し黙る。

 

 そんな彼らをおいて、ジッとクウラはブロリーを見つめる。

 

「負けっぱなしで別の星で平和に暮らすか? 鍛え直してあの恐ろしい男に再戦を挑むか、選ぶがいい。どちらを選んでも、貴様が選んだことならば尊重しよう」

 

 その言葉にチライがブロリーを見つめる。彼はしばらく間を置いた後、クウラの目に語り掛けた。

 

「ーークウラ。俺、強くなりたい」

 

 ポツリと呟かれた言葉は、思いのほか彼の気持ちを表すように強いものだった。

 

「ほぉ? 何のためだ?」

 

「あいつに勝つ、ため」

 

 その言葉にクウラは心から楽しそうな笑みを浮かべて笑った。

 

「ク、ハハハハハ! そうか、貴様もそうなるか!!」

 

 漆黒の目は強く開かれ、強大な意思を持っている。

 

 ブロリーの目には、地球で出会ったもう一人の自分が映っている。彼に勝つのならば、自分はもっと強くならなければならない。

 

 彼に、勝ちたいーーと。

 

「ブロリー……!」

 

「チライ。俺、今度こそアイツに、勝つ」

 

 その真っ直ぐな目は、気弱だった彼の目とは違う。

 

 明らかに折れない、曲がらない、真っ直ぐで眩しい瞳。

 

 その光にーーチライは頬を赤く染めた後、笑った。

 

「し、仕方ないね。クウラ様、アタシもこの艦に乗艦させてください」

 

「そうだな。クウラ様、俺もよろしくお願いします」

 

 これにレモも嬉しそうにうなずいた。

 

「フリーザ軍よりも、あんた達と居た方が楽しそうだ」

 

 レモの呟きにクウラは肩をすくめた後、ブロリーを見つめた。

 

「……フン。楽な旅路ではないぞ、宇宙最強はな」

 

「宇宙最強……! それになれば、アイツに勝てるか?」

 

 真っ直ぐな問いかけにクウラが面白そうに笑いながら冷たい声音で応えた。

 

「ああ……! 貴様ならば、きっとヤツに勝つさ!!」

 

 その熱い言葉に、ブロリーは胸が湧き上がるのを感じる。

 

 もう一度、異なる自分と対峙した時。

 

 今度こそ勝ってみせる、とブロリーは拳を強く握っていた。

 

 






此処まで読んでくださり、ありがとうございました( *´艸`)

また、機会があれば書いてみたいと思います( *´艸`)

それでは、さようなら( *´艸`)

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