一つエピソードを上げていきまーす(*'▽')
力の大会 前哨戦 前編
此処は何もない無の世界。
そこへ作り上げられたのは、全王が主催する全宇宙武道大会の前哨戦とも言うべき会場であった。
その場で、自分達の宇宙の代表選手6名を従えた第6宇宙の破壊神。太った人型の猫のような見た目の神、シャンパは叫んでいた。
「なんだぁ? 孫悟空ともう一人のサイヤ人抜きでも勝てるって言うのかぁ?」
彼が叫んだのは、自分の管理する宇宙と密接な関係の世界ーー第7宇宙。その破壊神は、シャンパの双子の兄弟だった。
痩せた猫のような見た目の破壊神ビルスは、ニヤリと笑みを浮かべ、自分の背後に立つ戦士達をニヤリと見据えて勝ち誇る。
「当たり前だろう?僕の所は悟空とターニッブだけじゃない。此処にいる連中が皆、あの二人に勝るとも劣らない実力を持っているんだからね」
その宣言に、全宇宙の破壊神達が目を見開いて驚愕している。
第2宇宙の破壊神ーーやや褐色肌の黒髪の美女の神ーーへレスは目を大きく見開く。
「な、なんと? あの二人と互角の美しさを持つ戦士だと!? いったい第7宇宙は、何人の戦士を持っていると言うのだ!?」
これに気をよくしたのか、ビルスは笑う。
「しかも、サイヤ人達は皆、悟空達と同じ真・超サイヤ人に。ナメック人は究極ナメック人へと変身できる!!」
これに後ろに控えていた赤いバンダナをした頬に傷のある黒髪のサイヤ人が呆れた顔をしている。
彼は久しぶりに自分の服ーー緑と黒を基調とした戦闘服に身を包んでいた。
「オイオイ、まぁた何か面倒くせぇこと始めんじゃねえか? あの神さまは」
「……フン。修行ととらえるならもってこいだぁ」
その隣では上半身を裸にした無駄のない引き締まった筋肉、白い道着のズボンに赤い布を腰に巻いて金属製のベルトを締めた2メートルを越えるサイヤ人が笑っている。
「フ、修行か。お前も孫やターニッブに毒されているな」
「だけど、何をするつもりなんでしょう? ビルス様は」
これに彼に匹敵するほどに背の高い緑色の肌をした額から触角を二つ伸ばした男と、山吹色の道着を着て逆立った黒髪の青年が語り合う。
バーダック、ブロリー、ピッコロ、孫悟飯である。
彼らの中央に立つのはM字の額を持ち、黒髪を逆立てた青と白の戦闘服に身を包んだサイヤ人、ベジータが立っていた。
彼らの期待(不安)に応えるようにビルスは続ける。
「だが安心しろ、お前達。ウチの宇宙の連中は弱い者イジメをするのを嫌う。敢えて全力を封じた状態で優勝してやろう」
これにピエロのような見た目の第11宇宙の破壊神ベルモットが反応する。
「ほう、ビルス。大きく出たな?」
桃色の人型をした象のような見た目の第10宇宙破壊神ラムーシも額に皺を刻んでいる。
「相変わらず気に入らん奴だ」
黄色の肌をした鼠のような見た目の神ーー第4宇宙破壊神キテラがビルスに笑いかける。ただし、その口許の笑みは悪だくみを考えている者のそれだ。
「そこまで大口叩いたからには、負けたら土下座でもしてくれるんだろうな?」
これに小賢しいとばかりにビルスは笑みを返した。
「いいだろう!僕の宇宙の戦士が誰か一人でも負けたら、土下座でも何でもしてやろうじゃないか!」
バーダックが呆れた顔でビルスを見つめている。
「おいおい、何勝手に話を進めてんだよ?」
「構わんだろう? お前らの実力なら真・超サイヤ人にならなくても有象無象なんぞ捻れるさ」
確信をもって言うビルスにブロリーも笑みを返すが、ピッコロの瞳が鋭く細まる。
「どうかな? ビルス様、それは一対一での話では?」
「え? 一対一の形式じゃないの? 第六宇宙との試合じゃ、そうだったじゃない?」
瞬間、ビルスの目が点になる。
同時にベジータの目がくわっ、と見開かれて大神官を見据えた。
それに応えるように、青い肌に青の服を着た子どものような見た目の天使の長が穏やかな笑みと共に告げた。
「それでは、バトルロワイアル形式で始めたいと思います」
そしてビルス達、第7宇宙の者にだけ分かるようにウインクしてくる。
「え?一対一の形式でないーー?」
「ったく。おい、ビルス様。どうすんだよ?」
呆れたバーダックの問いかけにビルスも冷や汗を一気に全身から流し出す。
代わりに周りの宇宙の破壊神たちは一気に盛り上がった。
まずシャンパがビルスに向かって笑いかけてくる。
「今更、前言撤回無しだぞ!兄弟!!」
これに小太りの緑色の肌をした長いひげの破壊神。第9宇宙のシドラが乗って来た。
「第7宇宙から落とすぞ!!」
その言葉に、ラムーシも頷く。
「ビルスの土下座ーー見ものだな!!」
彼ら三人の言葉に第1宇宙から第12宇宙の破壊神たちが頷いた。
「「「「戦士達よ、第7宇宙を落とせ!!!」」」」
目を見開いて硬直しているビルスの横で第7宇宙の天使ウイスは微笑む。
「これはーー大ピンチですねぇ、ビルス様」
そんなビルスを押しのけてバーダックがニヤリと笑いながら闘技場に飛び降りた。
「やれやれ、真・超サイヤ人抜きーーか。ま、いい修行にはなりそうだぜ」
ブロリーもまた、ニヤリと笑みをこぼして頷きながらバーダックの隣に立つ。
「クク、ハハハハハ!! いいぞぉ!流石だ、ビルス! 面白くなってきた…!!」
これにベジータとピッコロ、悟飯が互いに顔を見合わせた後、ニヤリと笑った。
「いいだろう。今の俺の全力が、どこまで通じるかーー試してやる!!」
「フ、ビルス様には悪いが、エキシビションだからな。今回は楽しませてもらうとしよう」
「ええ。全力で、行きましょう。真・超サイヤ人抜き、かーー。今の僕たちの本当の実力が試せますね」
そんな普段は常識的な判断をする三人の言葉に、今度こそビルスは硬直から立ち直った。
「な、なんだってぇ!!!?」
即座に自分の宇宙の戦士達に向かって叫んだ。
「ま、待て! バーダック、悟飯、ブロリー! ベジータ、ピッコロ!! お前らーー真や究極の力を隠すのはなしだ!! 状況が違う!!」
焦ったビルスにバーダックがニヤリと告げる。
「おいおい。俺たちの破壊神が、そんなちっちぇことでガタガタ言うんじゃねえよ」
「そうだ。お前は後ろで、どっかりとふんぞり返って見てればいい。雑魚に身の程を思い知らせてやる…!!」
「ブロリーさん。昔みたいに悪ぶらなくても…」
邪悪に笑うブロリーに悟飯が苦笑して窘める。
これにベジータ、ピッコロもニヤリと笑って告げた。
「いいや、それで構わんーー! なぁ、ピッコロ?」
「そうだな。全員叩き潰すのに、変わりない」
大胆不敵な第7宇宙の戦士達に全宇宙の戦士達が目を見開く。
そんな中で、大きな黒目とボサボサな特徴的な髪型をした赤紫のチューブトップと紫色のシャノワール風のズボンを着用した美女が声を上げた。
「んだと? 同じサイヤ人みてぇだが。アタシらと何も変わりねぇように見えるぜ、おい? それで全員を相手取るだと、舐めてんのかテメエ!」
「あ、姐さん…!」
彼女を止めようとするのは気弱そうな見た目の長い黒髪をポニーテールにした小柄な女戦士。
へそ出しの赤い服と黒のスパッツを着用している。
そんな彼女達に声をかけるのは、青の体にフィットした半袖半ズボンの上から軽鎧を付けた小柄な逆立った黒髪黒目の少年。
「気を付けてください、カリフラさん。ケールさん。あの人達の1人は僕に超サイヤ人の成り方を教えてくれた方です。ーー更に、別格の変身も持ってます」
「だからって、あたしに舐められたまんま黙ってろってのか? ああ、キャベ?」
第6宇宙のサイヤ人の戦士達であった。
これにバーダックが彼女達を見据えて目を見開く。
「ほぉ? テメエら、俺たちと同じサイヤ人なのか? にしちゃ身体が出来てねぇな。も少し、体をデカくしてから挑んで来い」
「…ガキが、3人そろって邪魔だ。失せろ」
ブロリーも睨みつけて言う。
瞬間、カリフラのこめかみに皺が寄っていた。
「絶対、ぶっ潰す!!」
「…やれやれ。とんだ、お転婆だぜ」
「んだとぉ、このバンダナ野郎!!」
ベジータがキャベを見て言う。
「おい、キャベ。仲間の制御くらいきちんとしろ!」
「は、はい! 師匠!!」
その言葉にブロリーと悟飯が目を見開いてベジータを見た。
「師匠ーー?」
「ベジータさん、あの子に何か?」
ひくりと頬を引きつらせるのみの反応を返しベジータは、キャベから紫色の肌を持つコートの男に目を向ける。
真紅に黒の瞳孔が浮かんだ瞳は、目が合っただけでベジータの背筋を震わせる。
「…久しぶりだな、ヒット」
「孫悟空は、いないようだな?」
「ああ、ヤツは野暮用で遅れている。すぐに来るとは思うがな」
応えながらベジータは自分をジッと見つめるヒットに目を向けなおす。
「…ベジータ、だったな。いったい、お前に何があった? その戦闘力と落ち着きは?」
「知りたいか? だが、貴様の相手は後だ。まずはーー雑魚を蹴散らさなければな」
そう言ってベジータは、自分の左に並び立っている各宇宙の戦士達を睨みつける。
「おい、王子。テメエが相手しないんなら、コイツは俺がもらっていいか?」
「バーダックか。いいだろう、貴様ならヒットを満足させられるだろうからな」
バーダックはニヤリと笑ってヒットの前に立つ。
「…孫悟空に似た顔だが、違うな」
「へっ。その孫悟空ってなぁ、俺の息子の名だ」
「ほう?」
そこで初めてヒットはコートのポケットから手を出す。
バーダックはニヤリと笑って首を鳴らしながら拳を握る。
「テメエの事は、息子から聞いてる。強ぇえんだろ? せいぜい楽しませてくれよ」
「…名は?」
「バーダック!」
そう言い合う。それだけだ。それだけで、彼らの中では話が終わった。
悟飯がニコリと笑った後、ブロリーとベジータ、ピッコロを見る。
「それじゃ、他に一対一をしたい方とかいますか? ベジータさんは、キャベ君ですか?」
「キャベの力がどれだけ成長したかは見たいが、それよりも先に戦ってみたいのが居てな」
言いながらベジータは、第11宇宙から代表で出て来た6人を見る。
赤と黒を基調としたフィットネススーツに白いブーツと手袋をした彼らの中、ベジータの目に留まっているのは一人だけ。
灰色の肌をした2メートルを越える筋骨隆々とした男だ。
男は腕を組んで瞑想するように両の目を閉じている。
「なるほど、確かに只者じゃなさそうですね」
「フン。なら俺は、その隣の丸っこいヒゲ面だぁ」
ブロリーがベジータの隣に来てニヤリと告げる。相手は灰色の男の隣に居る黄色い肌の白いひげを生やした更に巨漢の男。
5人中、3人が一騎打ちの相手を勝手に選んでいる。
これに悟飯が苦笑した後、自分の師を見据えた。
「仕方あるまい、俺たちはサイヤ人達のサポートに回ってやるか」
「はい、ピッコロさん」
そう言い合って、それぞれが構える中、ビルスが目を見開く。
彼らは、最初から全力じゃない。
変身すらせずに黒髪状態で闘うつもりだ。
「ま、まて! いくらなんでも変身しない状態で闘うのはよせぇ!!」
その言葉を拒否するように、4人のサイヤ人は金色の光が見える白いオーラを纏った。
気を開放したーー。それだけで、全宇宙の戦士達の目が鋭く細まる。
その気迫に、感じる強さに、瞳を閉じていた灰色の男が目を開く。
「ジレン?」
「どうしたんだ?」
問いかけてくる同僚の二人に目をやった後、告げる。
「トッポ、ディスポ。気を付けろーー。そいつらは口だけじゃない。強いぞ」
ジレンと呼ばれた男からの忠告に二人の戦士は唾を飲み込んでいる。
「分かった。できればエキシビションマッチでお前の力を見せたくはない。俺たちだけで何とかしてみせる」
「おう、任しとけよ。ジレン!!」
黄色い肌に白いひげを生やした巨漢ーートッポと、全体的にビルスに似た紫色の肌をしたウサギのような見た目の男ーーディスポが頷いた。
戦士達の気迫にそれまで怒りの皺を刻んでいたカリフラも目を見開く。
「なんだ、コイツ等ーー! めちゃくちゃ強そうじゃねえの!!」
「間違いなく、強いです! 気を付けて!!」
「ーーあの人?」
キャベが注意を促す中、ケールはジッとトッポに邪悪な笑みを向けているブロリーを不思議そうに見ている。
そこで大神官の右腕が大きく上に掲げられた。
「それでは、全王様主催のエキシビションマッチを開始します。準備はよろしいですね?」
「「「「「「応!!」」」」」」
無の界にて、戦士達の気合いの声が響いた。
今、此処に全宇宙武道大会の前哨戦が開始されるのだった。
ーーーー
迫りくる各宇宙の戦士達にピッコロがニヤリと笑い、自分の全身から緑色の光を放って分裂していく。
「ナメック星人も居るか、面白いな」
それは魔術であり、龍族であった父や神の技を模倣したものでもある。
第六宇宙から来た二人のナメック星人を見てピッコロは嬉しそうに告げた。
「そっちのナメック星人には”帝王”は居たか?」
「帝王? 何の話だ?」
これにゴツイ見た目の男ーーピリナが応えた。同時にピッコロと瓜二つの男サオネルも訝しげに見てくる。
「ーーナメックの神も居ない、か。なら、俺が教えてやる」
「「?」」
「貴様らも、この境地に立てるってことをな」
瞬間、ピッコロの全身に青みがかった銀色の光が纏う。
強烈な力の顕現に全宇宙の戦士達が硬直し、腕を組んで瞑想していた第11宇宙の戦士。灰色の男ーージレンがピッコロを睨みつけた。
「ーーこの力。まだ、本気じゃない」
呟かれた言葉にピッコロがニヤリと彼に向かって鋭い笑みを返す。
硬直する戦士達の中、サオネルとピリナの二人に向かってピッコロは言った。
「第6宇宙のナメック星人よ。これが破壊神や天使の域にも迫る真の格闘家。究極のナメック人の力だ!!」
悟飯がニヤリと笑った後、ナメック人の二人以外の戦士達を見つめる。
「申し訳ありませんが、あなた方の相手は俺がします。一斉にかかって来てください」
慇懃無礼ーー。不敵な表情で丁寧な言葉を紡ぐ悟飯に残りの戦士達の眼が怒りに見開く。
「なんだとぉ!?」
「調子に乗りやがって!」
「私たちの愛を舐めると、痛い目を見るわよ!」
これに少年のような見た目の第4宇宙のガノス、狼人のような見た目の第9宇宙のベルガモ、太った体格をした触覚のあるピンク色のタイツを着た第2宇宙のリブリアンが反応する。
これに悟飯は不敵にーー冷徹に応えた。
「さあ? どうかな」
白い気を身に纏い、蒼い雷が火花を散らしている。
圧倒的な気の量に全員が目を見開いた。
「コレはーーなんてエネルギーなの!?」
悟飯は彼らに向き直って告げる。
「最初に言っておくがーー俺はアンタ等を舐めてない。悪いが全力でーー叩き潰す!!」
目の前に一瞬で現れた悟飯に目を見開く岩山のような肌をした第9宇宙の戦士ヒソップの腹を右拳で撃ち抜き、すれ違いざまに帽子を被った白いウサギのような少女ソレルを左掌で背中を押すようにして吹き飛ばす。
だけに留まらない。
更に踏み込んで、筋肉質の肉体に髪をポニーテールに結わえた第4宇宙の戦士ニンクの顔を右拳で真っ直ぐに撃ち抜き、左の上段廻し蹴りで第3宇宙の胸にPと描かれた宇宙服を着こんだような見た目の戦士カトペスラを蹴り飛ばす。
「おのれ! 第7宇宙の小僧めが!! ラベンダ! バジル!!」
第9宇宙のベルガモの言葉に、同じような狼の見た目をした黄色の体毛の戦士ラベンダと赤色の毛を持つバジルが構える。
「「「トライアングル・デンジャァアビィイイイムゥウ!!!」」」
ベルガモの両手に青、ラベンダの両手に黄、バジルの両手に赤の光が現れ、三人は前方に手を揃えて突き出すと三色の光が螺旋を描いて一つとなり、悟飯に迫る。
「中々のチームワークだ。三人同時に放つことで、それぞれの技を単体で撃つよりも倍近い力を生み出している」
「この強力なエナジー! これなら、あの小僧も!!」
第11宇宙のベレー帽を被った眼帯の男ーーカーセラルと、第3宇宙のモノクルを付けた老人のような男パパロニが叫ぶ中、悟飯の口許には笑みがこぼれている。
彼は両手を腰だめに置いてたわめ、一瞬で青い光を練り上げた。
「かめはめーーーー!」
目の前に迫る光に向かって、両手を突き出す。
「波っ!!」
三人の放った光は、それよりも小さな悟飯の光によってもつれた糸を解くように分解され、消えて行く。
「ば、馬鹿な!?」
「あ、兄貴!?」
「お、俺たちの技がーー!?」
驚愕に目を見開くベルガモ達に向かって悟飯は静かに燃える黒い目を向けた。
「連携に無駄が多いんだ。その技もコンビネーションも、もっと磨けるーー!」
悟飯は力をゆっくりと込めながら微笑んだ。
「だ、第7宇宙ーー半端じゃねぇ!!」
力に余裕があることを見抜いたベルガモが恐怖に目を見開いた。
「本番を楽しみにしてますよーー! ハァアアアア!!」
一気に気を倍に吹き上がらせて、かめはめ波を増大させて三人の第9宇宙の戦士を一気に吹き飛ばした。
悟飯の攻撃と動きに無駄はない。
吹き飛ばされた者は例外なく、場外へと落とされている。
「…なんという、戦士だ。攻撃に、防御に、無駄がない! しかも、技が美しいまでに洗練されている!!」
目を見開いて、第2宇宙の破壊神へレスが悟飯を評する。
「おい、ビルス! 孫悟空やターニッブにベジータときて、またサイヤ人か!? お前の宇宙のサイヤ人はどうなってんだ!?」
「狼狽えてんじゃないよ。僕は言ったはずだ。コイツ等のうち、誰か一人でも負けたら土下座してやるってな。この僕がそこまで言ったんだ。その意味が、分かるか?」
シャンパに向かって静かにビルスは目を向けた後、悟飯を睨みつける。
「…この強さ、うずくじゃないか。悟飯!!」
震える右拳を左手で掴み、ビルスはニヤリと恐ろしい笑みを浮かべた。
一方、第六宇宙最強の殺し屋ヒットとバーダックの戦いが、その向こうで繰り広げられている。
ヒットの正確無比な拳と蹴りを、バーダックは野生の勘で返していく。
暗殺者の眼をした男と、戦士の目をした男。
互いに余計な言葉は語らない、それ以上に拳と蹴りを交わしている。ひととおり、攻撃と対応を見せ終えると二人は着地して睨み合う。
瞬間、バーダックが一気に踏み込むと世界が止まる。
ヒットの時飛ばしだ。
時を飛ばすことで自分以外の世界の時を0.1秒止めることが出来る。
その間に背後に回り込み、拳を打ちこもうとする。その一撃は見事に空を切った。
「ーー!」
背後を向いたまま膝を曲げて頭の位置を下げ、ヒットの拳の下をかいくぐりながら拳を返してくるバーダック。
「そいつが、時飛ばしかい? んなもん、俺には超スピードの移動となんも変わらねぇぜ」
「そうかな?」
両者は高速移動を交えながら打ち合いを始める。世界の時を止める時飛ばしを容赦なく使うヒットに対し、ワイルドセンスと呼ばれるサイヤ人独特の勘で返していくバーダック。
悟空のように動きを予測せずとも、バーダックは勘だけでヒットの動きについて行くのだ。
互いに笑みを浮かべて、ヒットとバーダックは拳を交換する。
「ーーなるほど。孫悟空よりも更に攻撃的な男だ。狩り甲斐がある」
「へっ、テメエもな。俺もはじめてだぜ…。戦士じゃなく狩人と闘(や)り合うのはーー!」
更に反対の拳を放ち、交わるヒットとバーダック。どちらも、ペースを譲らなかった。
その向こうでは、ブロリーとベジータのコンビの前に第11宇宙のプライドトルーパーズの二人、力のトッポと速さのディスポが立っている。
長い黒髪を靡かせながら拳を振りかぶって強烈な一撃を放つブロリーをトッポが片手で掴み止める。
「貴様程度の力で不意打ちをして来たところで、正義を執行するプライドトルーパーズ・リーダーの俺を倒せると思ったか? 舐めすぎだぞ、第7宇宙!!」
「ーーほう。いけ好かない顔をしてやがると思ったが。お前は正義の味方なのか? そいつはいい、正義面したヤツは潰し甲斐がある」
笑みを浮かべて邪悪に告げるブロリーにトッポの眼が鋭く細まった。
「貴様…! その発言、悪と断定する!! 悪よ、正義の名の下に滅びよ!! ジャスティィイイイス!!」
拳を返してくるトッポの拳を掴み止めるブロリーだが、目を見開く。
「ーー!?」
押されている。強烈な拳に、掴み止めた手がしびれている。
「どうした、悪!? その程度で、浮かんでいた笑みが消えるとは!! 正義の力、思い知ったか!!」
「ぬぅ!?」
瞬間、両手をがっぷりと四つに組まれるブロリー。
力比べをする二人だが、ブロリーが一方的に押し込まれていく。相手の押し込む力を利用して投げを打とうとするブロリーだったが、トッポはビクともしない。
「ーーコイツ!?」
投げられると悟った瞬間に力を逃がし、逆にトッポはブロリーの身体を固定してしまう。
「私をパワーだけの男と思ったか!? 他者の実力を侮るその浅ましい心、まさしく悪!!」
「ぬかせ!!」
脂汗を流しながらも吠えるブロリーにトッポが紅い気を高める。瞬間、ブロリーも白い気を纏った。
「ブロリー!!」
ベジータが動こうとするも、その前に長い耳を持った紫色の肌のウサギのような見た目の男ーーディスポが立ちはだかった。
「よう。俺はプライドトルーパーズ・スピードのディスポ。よろしくな」
自分の間合いにあっさりと入られたことにベジータは目を見開く。
「…コイツ! 今の動きは…!」
明らかにスピードの次元が違うと悟っていた。
「おいおい、しっかりしてくれよ? ウチのエース・ジレンとやり合いたいなら、今程度の手を抜いた動きくらいは見切ってくれないとーーな!!」
目の前に迫るディスポに拳を繰り出そうとするベジータだが、気付く。
「後ろか!!」
振り返ると同時に目の前に長く細い脚が槍のように放たれている。
咄嗟に顔の前に置いた手を使って槍の穂先を脚を捌いて逸らす。が、逃げた先に回り込まれている。
「なんだと!?」
「そらそら、どうした!? デカいのは口だけか!?」
強烈なスピードと切れ味鋭い蹴りの連続攻撃にベジータをして防戦一方だった。
残像と戦っているかのような動きで跳び込んでくるディスポにベジータは両腕のガードを上げて攻撃を辛うじて防いでいく。
クリーンヒットは時間の問題かと思われたが、ガードの奥の顔は跳ねあがらない。
「…! この野郎。だったら更にーー!!」
一気にディスポのスピ―ドが上がる。これにベジータも脚を動かしてフットワークを刻み始めた。
「これが、第11宇宙か! やるじゃないか!!」
ニヤリと笑い、ベジータは繰り出された蹴りに反応して捌かずに避ける。
(この野郎!?)
僅か、数度のやり取りだけで完全にディスポの蹴りを見切った。だけでなく、ディスポの目の前に高速移動で現れた。
「確かにそのスピードは厄介だが、慣れさえすれば予測と対応くらいはできるさ!!」
「おもしれぇ、出来るものならやってみな!! ついてこいよ、ギアを上げるぜ!!」
光を纏い、更に動きを上げるディスポにベジータも冷や汗を流しながら笑う。
「サイヤ人の王子、ベジータを舐めるな!!」
白い気を纏い、ベジータも動く。
彼らの戦いを見据えながら、静かにジレンは目を動かす。
力で劣りながらも、辛うじてトッポに食らい付く長身のサイヤ人ブロリー。
速さで劣りながらも、辛うじてディスポに予測対応していく短身のサイヤ人ベジータ。
「…気の量。パワー、スピード。全て第7宇宙の奴らは劣っている。だが、それならば何故トッポやディスポのレベルに対応できる?」
静かにつぶやかれた言葉を自分の耳を通して頭が拾った。
「まさかーー!!」
明らかにベジータとブロリーは本気で動いている。だが違和感をジレンは感じていた。
自分達の宇宙の破壊神ベルモットから事前に彼は聞いていたのだ。
「いいか、ジレン。エキシビションマッチにお前を呼ぶのは、サイヤ人という連中に対応するためだ。特に孫悟空とターニッブに気を付けろ」
「…それが自分の宇宙の平和よりも優先することか?」
「ああ。大神官さまが、おまえを指名して来たからな」
瞳を細めるジレンにベルモットが頷く。
「孫悟空やターニッブと戦え。そうすれば、お前の願いが叶うーーとな」
「? 何故、そいつらと戦うことで俺の願いが叶う?」
「分からん。だがーーこれだけは言っておく」
いつもは皮肉気な笑みを浮かべて余裕を絶やさないベルモットが、真剣な表情でジレンを見て来た。
「全王さまがお気に入りの、その二人はもしかしたら、今のお前と同じくらい強いかもしれん」
「……!」
「信じられんことだがな。俺は、この目で奴らの試合を見た。惑星サイヤとか言う星に呼ばれてな。柄にもないが、見惚れちまった」
淡々と語るも、ベルモットの眼には静かに燃える炎がある。
彼もまた、かつての武道家の魂を震わされていた。
「ベルモット、お前がそこまで言うとは。ーーそれほどか」
「ああ。あの強さ、本物だ」
ベルモットは語る。
「だが何より。お前とアイツ等を戦わせたいのは、奴らが似てるからだ。お前の師匠にな」
その言葉に、ジレンの眼が明らかに鋭く細まった。
「…それは、本気で言っているのか?」
「俺が、冗談でアイツの事を語ると思うか?」
ジレンは瞳を開けて、回想をやめ目の前にいるサイヤ人達を見据える。
ーー 黒髪黒目だった奴らは黄金の炎を身に纏い、髪は黄金に輝いて逆立ち、翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳に変わる。その姿になられたら、お前でも絶対に勝てるとは言い切れんぞ。
ベルモットの言葉を思い起こしながらジレンはジッとベジータとブロリー、悟飯を見つめる。
「コイツ等、力を隠しているというのか?」
鋭く目を細める。
力を隠して尚、破壊神候補と言われるトッポや彼の相棒ともいえる実力を誇るディスポを相手に一対一を演じられる実力。
そしてサイヤ人達の中でただ一人混じっている、ナメック星人の戦士を見つめる。
第6宇宙のナメック星人2人に、サイヤ人3人を相手取って戦っている彼の力もまた、おそらくはーー。
(この中で、一番力を隠していないのは緑色の男だ。だが、それでも全力には程遠い)
おそらく、自分が動かなければ第7宇宙の戦士達は本気を見せない。
そのレベルだ。その事実にジレンの口許には笑みが浮かんでいた。
ーーーー
一方、観客席のビルスはベジータとブロリー、バーダックにもどかしさが爆発していた。
「お前らぁ! 様子見なんかしてないで、本気を出せぇ!! でなければ負けちゃうだろ!!」
だが、彼らはそんなビルスの言葉を無視して闘っている。
確かに黒髪状態でも戦えているが、明らかに苦戦している。バーダックは徐々に肩で息をし始め、ベジータとブロリーにあっては完全に押されているのだ。
「これは困りましたねぇ」
ホホホと笑うウイスにビルスが目を見開いた。
「くそぉ! 悟空から連絡はまだ来ないのか!?」
「そうですねえ、悟空さんならアッサリと片づけられると思ったのですがーー」
「あいつ、何をサボってるんだ!! おい、こうなったら悟空を呼びに行くぞ!!」
叫ぶビルスにウイスが微笑む。
「そうですねぇ。悟空さんが来れば、もっと面白いモノが見れそうです」
彼が見つめる視線の先には、第11宇宙の戦士ーージレンが居た。
珍しく乗り気なウイスにビルスも表情をほころばせる。
「よし! 全! 王! 様ぁあああ!!」
彼の絶叫にニコニコ笑っていた全王がこちらを向いてくる。
「? なぁに、ビルス?」
「そろそろ、悟空を呼んできます!!」
「ほんと~!! わぁい、早く呼んで来てね!!」
「ははっ!!」
それだけを告げてビルスはウイスの肩に手を置くと、ウイスも微笑んだ。
「少し離れますが、悟飯さん。ピッコロさん、彼らのサポートをよろしくお願いしますね」
その言葉に悟飯とピッコロは、ニヤリとだけ返してきた。
ベジータとブロリーも、ゆっくりと立ち上がりながら互いに笑みを深めている。
孫悟空ーーその言葉を聞いただけで、彼らの闘志が燃え上がっている。
これに満足げにウイスは微笑むと天を見上げて光を纏った。
「さあ、最高の舞台を仕上げるためにも、この前哨戦。最高のスタートを切りたいですねぇ」
そう言って、彼とビルスは無の世界を後にした。