ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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お待たせしております。

それでは、楽しんでください( *´艸`)


強さを求めし者たち

 破壊神ビルスの星。

 

 未来の次元から来た孫悟空(GT)と孫悟空の戦いは苛烈さを増し、身に纏う黄金の炎は天井知らずに互いの気を高めていく。

 

「…もう一人の俺。オメエ、まだ上があるんか?」

 

「そいつは、お互い様だろ。未来の俺よぉ」

 

 天井知らずに上がる相手の、そして自分のパワーに悟空(GT)は瞳を細める。

 

「なんてことだ。パワーが、気が、どんどん高まっていきやがる。この力があれば、俺はーー!!」

 

 思い返すのは、地球での最後の戦い。

 

 究極の超サイヤ人をして、真っ向から打ち破られた邪悪龍の長。

 

 超サイヤ人4をも超える今の己の姿に、悟空(GT)は複雑な思いを抱いていた。

 

 あれだけ努力して、死に瀕しながら辿り着いたフルパワーの超サイヤ人4でも、超一星龍には届かなかった。

 

 その踏み込めなかった領域に自分は今、アッサリと立っている。

 

「…気に入らねぇだろ? 自分の今までの修行を、積み重ねたもんを、全て無駄だって言われてるみてぇだろ?」

 

 懐かしい「悟」マークを左胸に付けた山吹色の道着の自分は、嬉しそうに問いかけてきた。

 

「ああ…! こんなレベルに、俺は来れたんだな。知らなかったぜ。超サイヤ人の基本を極めると、こんな力に目覚められるなんてよ」

 

 今までの努力は無駄ではない。

 

 真の超サイヤ人に目覚めた基本戦闘力は、超サイヤ人4のフルパワーの更に一つ上のレベルだ。

 

 そこから無限に気が高まっていく。

 

 つまり今の自分のフルパワーを更に一歩、超えた状態からのエネルギーの上昇。

 

 最初からそのレベルに至れるのは、悟空(GT)が極めた闘いの歴史ありき。

 

 それでも、悟空(GT)は不満げに己の肉体を見下ろす。

 

 濃い赤茶色の尾を生やし、体毛が消えて剥き出しの上半身に超サイヤ人4に変身した際に着る道着のズボンを履いた自身の姿。

 

 超サイヤ人4の更に奥の領域を見せつけられている。

 

 超一星龍にさえも、匹敵する領域へーー。

 

「オメエは俺の至れなかった域に、その若さで踏み込んでやがったんだな。もう一人の俺よぉ」

 

「ソイツは、ちょっと違うぜ。未来の俺」

 

 不敵な笑みを浮かべて過去の自分は語って来た。

 

「今の俺の力は、オメエの力でもある」

 

「…! 惑星サイヤ…! 俺の知らねぇ俺の記憶、か」

 

 孫悟空と孫悟空(GT)が真の超サイヤ人になって互いに拳を交えたとき、互いの経験が互いに等しく振り分けられている。

 

 かつて未来の世界で悟空と戦ったゼノやブラックのように、悟空は悟空(GT)のパワーに引き上げられている。

 

 その戦いの記憶さえも共有し始めていた。

 

「……! コイツが、オメエの拳から感じる真っ直ぐな、この拳が……!!」

 

「そうだ……! 感じっだろ? アイツの拳を! アイツの風の波動を!! 心の力ってヤツを!!」

 

 悟空の燃えるような言葉に悟空(GT)の眼が見開かれる。

 

 これほどとは、思っていなかった。

 

 見えている。感じている。

 

 白い道着を着た己や目の前の自分と同じ顔をしたサイヤ人が、静かに燃える黒の瞳孔が拓いた翡翠の瞳で自分を真っ直ぐに見つめ、愚直な拳をぶつけてくる。

 

(……! なんだ、この胸の、高鳴りは!? 魂の奥が、燃え上がるような。この……! この、感覚は!!?)

 

 力強い鼓動が、規則正しく胸の奥で響いている。

 

 悟空(GT)のパワーが、魂の鼓動に呼応するように更に桁外れに高まっていく。

 

 悟空(GT)は何気なしに右掌を開くと本能の赴くままに力を集中させて蒼い光の球を生み出し、右手を悟空に向けて突き出しーー光線を放ってきた。

 

(! このパワーは!?)

 

 瞬間、悟空も両手を腰だめに溜めてから前方に突き出して蒼い光ーーかめはめ波を放つ。

 

「超ーーかめはめ波、だぁああああ!!」

 

 本来ならばフルパワーのかめはめ波は練り上げるのに時間がかかるのだが、常に無限の気を放てる真・超サイヤ人に変身した悟空にとって、一瞬で全力のかめはめ波を練り上げるのは容易。

 

 だが、問題はそこではない。

 

 二つの光は中央でぶつかり合うと、相殺したのだ。

 

「……! 片手で超かめはめ波を撃てるって言うのか、この野郎……!」

 

「ああ。「できる」みてぇだ。そんでよーー」

 

 悟空(GT)が淡々と両手を腰だめにたわめると蒼い光が二つ現れて一つに圧縮され、真紅へと変化する。

 

(まさかーー! 10倍かめはめ波をーー!?)

 

 その真紅のかめはめ波は、今(現代)の悟空にとって最強の技の一つ。

 

 真超サイヤ人でも放つには気の溜めが必須の極限の技ーーそれを、目の前の未来の自分は一瞬で練り上げた。

 

「ーー本物だ!!」

 

「10倍! ーーかめはめぇっ波ぁっ!!」

 

 ほとんど隙のない動きで放たれた真紅のかめはめ波の威力は、超かめはめ波の比ではない。

 

 一瞬で地球の大気圏外まで届く光と衝撃。

 

 咄嗟に身体を高速移動で動かして完全に躱すもーー真紅のかめはめ波が通り過ぎた余波は己の身体に確実に負荷を与えている。

 

 それを悟空は頬に冷や汗をかきながらもクールな笑みで見据えている。

 

「とんでもねぇパワーだ。流石だぜ、未来の俺……!! だけど、まだだ……! まだ、オメエは自分の底を見せてねぇぜ……!!」

 

「……!! まだ、上があるってのか……!」

 

 自分の放ったかめはめ波の威力に満足そうに笑っていた悟空(GT)の顔が悟空を向く。

 

 悟空もまた自分の未来である相手に向き直った。

 

「ああ、俺が。この俺が、オメエの底を引きずり出してやる!!!」

 

 超サイヤ人4フルパワーと超サイヤ人ゴッド超サイヤ人進化の力を同時に吹き上げて黄金の炎に吸収させ、爆発させる。

 

「うぅぉおおおおぁああああああ!!!!」

 

 猛々しい咆哮を上げて、孫悟空は真の超サイヤ人のフルパワーを引き出す。

 

「コレが、俺の全力だ……!」

 

 その背後に白い道着を着た真の格闘家の姿を幻視させる。

 

 それほどまでに真っ直ぐで純粋で、強烈な意志を瞳に宿して悟空は悟空(GT)を睨みつけてくる。

 

「勝負だ……! 決着(ケリ)ーー付けようぜ?」

 

 冷徹に吐かれた声は、その冷たさに反比例するように悟空(GT)の心(魂)を燃え上がらせる。

 

「……上等だ! 行くぞぉおおお!!」

 

 心荒ぶるまま、悟空(GT)が叫ぶと同時、緑色の鱗に金の角、赤い目をした龍が一瞬浮かび上がって消えた。

 

 互いに黄金の炎を燃え上がらせて、一気に駆ける。

 

 ガードもフットワークも捨てた文字通り全力の殴り合い。

 

 額をぶつけ合わせ、互いのタックルの威力にのけ反ると同時、拳を握って襲い掛かる。

 

 打たれたら、打つ。目の前を蹴りが通り過ぎれば、即座に蹴りを打つ。

 

 互いの攻撃を攻撃で防ぎながら、相手に向かって打ち込んでいく。

 

 攻撃に攻撃を重ねて隙を失くすように、圧倒的な手数で相手を飲み込まんとするかのように。

 

(何てやろうだ……! コイツ、底が知れねぇ!!)

 

 悟空(GT)をして目を見開く。

 

 それほどまでに今の孫悟空は、桁が違う。

 

 打ち込んでも打ち込んでも、闘志もパワーも衰えない。それどころか、打ち込めば打ち込むほどに底なしのパワーが、気が引き上がっていく。

 

 それなのに、どうして自分は付き合っているのか。

 

 簡単だーー。自分もまた、引き上げられているのが分かるからだ。

 

 いや、事はもっと単純だ。

 

(なんてこった。ワクワクしてきやがる……! こんな、こんな力に俺はーー至れんのか? 俺の限界は、何処なんだ? いってぇ、どこまで行けるんだ? なぁ、真・超サイヤ人よぉ?)

 

 こんな世界を自分は知らない。

 

 こんなに純粋に、強さのみを求めて極められる領域を、自分は知らない。

 

 求めて、求めて止まなかった、その世界が。

 

 もう一人の自分によって開かれていく。そして言われている。己の中の真・超サイヤ人に。

 

ーー こんなものではない。お前の力は、こんなものではない。

 

 自然と笑みがこぼれていた。

 

 それも口が裂けるような笑みだ。

 

 知的で冷徹な眼差しにそぐわぬほどに何かに飢え、乾いたように強さを求める狂おしい笑みを悟空(GT)は浮かべている。

 

 満たされていく感覚と、飢えている感覚が同時に彼の肉体の裡を満たしていく。

 

 凄まじいぶつかり合いを、魂の歓喜を見据えてベジータが笑う。

 

「……フン。楽しそうじゃないか、カカロット!!」

 

「相変わらず、疼く試合しやがって……!!」

 

 ブロリーが引きつった笑みを浮かべる。

 

 悟飯とバーダックが興奮を抑えきれないように目を見開いて笑みを浮かべる。

 

「父さん同士の……! ホントの真っ向勝負だな……!」

 

「ハハッ! それでこそ、俺の息子だ!!」

 

 これにピッコロが水を差すように冷たい声を上げた。

 

「浮かれてる場合か、サイヤ人共。そろそろ、拮抗が破れるぞ」

 

 その言葉に互いの拳を喰らって交互に首を後方へ吹き飛ばし、のけ反りながら後ずさる二人の孫悟空を見る。

 

 徐々にだが、ハッキリと山吹色の道着を着た孫悟空が肩で息を始めていた。

 

 ビルスが目を鋭く細める。

 

「まさか……! 僕の世界の悟空でも、あっちの悟空に勝てないって言うのか!?」

 

 ウイスの眼も細まる。

 

「もしかしたら、私でも勝てないかもしれませんね。あちらの悟空さんは、それほどまでに技と経験を積んでおられる。それだけで神の域に至るほどに」

 

「……! 奴も”極めし者”だというのか? リューベのように……!!」

 

 ビルスの言葉にウイスは思考する。

 

(あちらの悟空さんの背に浮かぶ龍は、間違いなく地球のドラゴンボールの神龍。まさか、悟空さんは神龍と同化している?)

 

 神の気を纏わずに神の領域へと達し、神を理解する力。

 

 それは龍神ザラマの系統を継ぐドラゴンボールならばーーあり得る。

 

 悟空(GT)の剥き出しの上半身の背に刺青のように浮かんでいる七つの願い玉と緑の鱗の龍。

 

「……! 強い。この強さ、天使の私が全力を振るったとしても、勝てるかどうか……! しかも、まだ底なしに上がるーーですか」

 

 生まれ出でて初めてかもしれない。

 

 純粋な強さに、ここまで心が震わされるのは。

 

 ウイスが静かに呟く中、強烈な打撃音が響き渡り、ついに悟空が一方的にのけ反る。

 

 距離が開いた瞬間ーー孫悟空と孫悟空(GT)の眼が同時に見開かれて両手を腰だめにたわめて己の真の一撃を練り上げる。

 

「「うぉおおおお!!!」」

 

 極限にまで高められた真紅の光の球は、見た目だけでも悟空(GT)の方が倍近く大きい。

 

 それでも悟空は退かない。

 

 笑みを浮かべて目を見開き、己の全力の一撃を放つ。

 

「10倍ぃいい!」

 

 対して悟空(GT)もまた、極限の一撃を練り上げる。

 

「100倍ぃいい!!」

 

 両手を前方に突き出し、真紅の光をぶつけ合う。

 

 圧倒的な二つの真紅の光の輝きは互角ーーだが、その太さは倍の差がある。

 

 明らかに己よりも強いかめはめ波を前に、逃げるどころか真っ向勝負を挑んできた山吹色の道着を着た自分の姿に悟空(GT)は鋭く瞳孔が現れた翡翠の瞳を細める。

 

(どういうつもりだ? オメエの全力で、俺の全力を止められると思ってんのか?)

 

「おいおい、そいつはちょっと無謀じゃねぇか? もう一人の俺よぉ」

 

 だが悟空(GT)の瞳は驚愕に見開かれることになる。

 

 両者の中央でぶつかった光は、一瞬だけ互いに動きを止めると押し合うことなく強烈な爆発を起こして互いの技を相殺してみせたのだ。

 

(……! コイツ、俺の100倍かめはめ波の芯の部分に自分のかめはめ波を当てて、相殺したっていうのか? あのとんでもねぇエネルギーを前に、冷静に見極めたっていうのか?)

 

 過去の自分とは言え、震えてくる。

 

 自分の全力に真っ向から挑み応えてくる相手にーー。

 

「ハァッ、ハァッーー! ち、限界かよ……!」

 

 黄金の炎は収まるところを知らないが、悟空の息が明らかに上がり辛そうに肩を上下させている。

 

 対する悟空(GT)は静かにして冷徹な瞳を悟空に向けている。

 

 その肩は微動だにしない。

 

 自分の全力の一撃を相殺した目の前の自分に称賛の感情を覚えながらも、悟空(GT)は告げた。

 

「どうしたよ? 俺はまだ、ピンピンしてんぜ?」

 

「く、ちくしょう…! 流石、俺の未来の姿だな……!」

 

 どこか嬉しそうな悟空の言葉にピッコロが肩を鳴らしながらマントとターバンを脱ぎ捨てた。

 

「自分に向かって何を言ってやがる? 限界なら下がれ、悟空」

 

「そろそろ、交代しろや? カカロット」

 

 バーダックもバンダナを額に締め直して気合を入れる。

 

 ベジータもブロリーも、悟飯までもが拳を握って悟空(GT)を向いている。

 

「…オメエ等、今の俺の技と力を見ても挑んで来てくれるんかよ……! 嬉しくなって来っじゃねぇか」

 

「おいおい。俺はまだ、参ったしてねぇぜ?」

 

 ベジータ達の方を向く悟空(GT)に向かって悟空が抗議の声を上げた。

 

 パワーもスピードも互角。

 

 それでも経験と技術に差がある。真・超サイヤ人同士の闘いでは、この差が大きい。

 

 逆にパワーやスピードで劣っているだけなら、真・超サイヤ人になれば勝てる。

 

 相手の防御力に関係なく精神力を断ち切る心の力。それを拳に宿して放つ真の一撃。そして限界を超えてどこまでも気を高めていく底なしのパワー。

 

 これらを持った真・超サイヤ人を相手に有利に戦うには、純粋な戦闘技術と経験がモノを言う。

 

 今の悟空では、未来から来た悟空(GT)に勝てない。道理である。

 

 それでも心が折れない。どれだけ差を見せつけられても、闘志を燃え上がらせて己を奮い立たせてくる。

 

 ならば、最後まで勝負は分からない。立っている限り、何が起こるか分からないーーそれこそが、真の強さを手に入れた戦士達の戦い。

 

「良いぜぇ。俺も、もう我慢できねぇ。オメエ等、ひとり残らず。全員ーーぶっ倒すっ!!!」

 

 悟空(GT)をして鳥肌が立っている。

 

 ゾクゾクしている。もう一人の孫悟空の強さに。

 

 心のーー魂の熱さに。そして、それに負けず劣らない周りの戦士達に。

 

 その強さが、熱さが、彼の底を更に引き出してくる。何処までもどこまでも強くなる。

 

 今の悟空(GT)の力は、それこそベジットやゴジータにも匹敵するパワーだった。

 

 その力を前に、震えあがるどころか燃え上がるのが真の格闘家。

 

 もはや、この場を納めることは破壊神ビルスをもってしても不可能だった。

 

「……ウイス、後は任せたよ」

 

 細い目に鋭い闘気を宿し拳を握るビルスに、ウイスが後ろでため息を一つ吐いた。

 

「ビルス様ばっかり、お楽しみですか?」

 

「天使は戦いに介入してはならない、だろ? 大人しくしてろ」

 

 紫色の神の気を纏い、ビルスが己の全力を引き出す。

 

 細い目は見開かれ、凶悪な笑みを浮かべている。

 

「何度も言わせるなよ、お前らーー! 最強を、勝手に決めるなぁああああ!!!」

 

 宇宙最強の破壊神の本気を前に、真の格闘家たちは笑みを浮かべて迎え入れる。

 

「なら、決めようぜ。ーー真の最強ってヤツを!!」

 

 これに現代の孫悟空が不敵な笑みを浮かべて拳を握る。

 

 今、此処にーー第7宇宙最強が決められようとしていた。

 

ーー神々の長・全王の間

 

 凄まじい現代と未来の二人の悟空のバトル。

 

 さらに他の真・超サイヤ人達や破壊神ビルスが参戦するぶつかり合い。

 

「おお~!! 凄いのね! やっぱり、悟空達は凄いのね!! ビルスも凄くなってるのね!!!」

 

 その激しいバトルを閲覧して頬を真っ赤に染め、興奮する全王の下、第7宇宙以外の全11宇宙の破壊神や界王神、天使たちが見ている。

 

「……! どういうことだ? 何故、違う歴史の人間がこの場に?」

 

「いや、それよりも。この強さは何だ!? 破壊神をも上回っているというのか、コイツ等は!?」

 

 慌てる第11宇宙の界王神カイと破壊神ベルモット。彼らの言葉に同意するように他の宇宙の神々も生唾を飲み込んでいる。

 

 それを穏やかな笑顔で見渡した後、大神官は告げた。

 

「第7宇宙のビルスさんが言うように、今回の大会。私も破壊神の皆さんに参加していただきたく思っております。全王さまも、その方がよりお楽しみ頂けると思いますから」

 

「……! しかし、破壊神には星の管理があります…! いかに全王さまのお望みと言えど、長期間に渡って宇宙から離れるわけには……!!」

 

 これに第1宇宙の界王神アナトが声を上げる。これに大神官はほほえみを返して告げた。

 

「今回は特別に時の界王神に手伝っていただき、無の世界の時間軸を弄っています。具体的に言うと、無の界での一年間が各宇宙では一日分で済むようにしている、というわけです」

 

 目を見開く他の宇宙の神々の中、第10宇宙の界王神ゴワスの前に2メートルに迫る長身の赤い界王神の服の上に明るい水色の帯を巻き、白い道着のズボンから茶色の猿に似た尾を生やす逆立った黒髪の男が居た。

 

 男はゴワスとラムーシの二柱に会釈した後、その黒い瞳を銀色に一瞬だけ輝かせると大神官に向かって口を開いた。

 

「ーーなるほど。時間を気にせずに強さを競え、と?」

 

 これに大神官は、とても嬉しそうに微笑んで男に返す。

 

「ザマスーーいえ、サイヤさん。貴方の参戦を私も全王さまも非常に喜んでおります。この私にも届くかもしれない力ーー見せてください」

 

 微笑みながら大神官は告げるも、他の宇宙の破壊神たちは困惑気味に互いを見合っている。

 

 それはそうだろう、神には神の役割がある。

 

 それを無視して戦いに興じろなどとは、今までの大神官や全王は言わなかった。

 

 彼らの変化に戸惑い、応えあぐねていると全王が興奮した表情をそのままに、神々を向いてきた。

 

「僕のお願いだから、参加したくない宇宙の破壊神は構わないよ? あくまで今の悟空達と戦って勝てる自信のある破壊神だけ出てほしいんだ!」

 

 こう言われては、破壊神たちは絶句して眉を吊り上げる。

 

 たかだか人間風情に勝てない破壊神など居るはずがない。

 

 相棒である界王神たちも全王の言葉に内心では不快に思うも、困惑した表情を浮かべるに留める。

 

 しかし、相手は全王。彼のものを前に、嘘や誤魔化しは通じない。

 

「勝てるって思ってるんだね?」

 

 それは疑問ではなく確認だった。故に全宇宙の破壊神は迷わずに頷いた。

 

 瞬間、大神官が微笑む。

 

「ではーーそれを証明してもらいましょう。クロノアさん」

 

 神々の卓で唯一、天使を伴わずに全王や大神官と向かい合う形で座っている幼女の姿をした界王神に向かって話しかける。

 

「………分かりました。本当に、よろしいんですね?」

 

「勿論です。破壊神の皆さん、少し席を移動してください」

 

 そう言って大神官は破壊神たちに席を立たせると、目を銀色に輝かせてカチカッチン鋼を基に力の大会前哨戦で使用した武舞台を作り上げる。

 

 そして自分たちを結界で守る。

 

「……!! これは、俺たちに戦えと?」

 

 第12宇宙の破壊神ジーンが鋭く目を細めて問いかけると、大神官は微笑みを返す。

 

「ええ。ただし、あなた方が相手にするのは一人ですよ」

 

「ーーえ?」

 

 目を見開くジーンの横から第5宇宙の破壊神アラクが問いかける。

 

「お待ちください! 我々、11人を相手に1人で闘うと言うのですか? では、相手は大神官さまで?」

 

 各宇宙に配置された天使でさえ、この場に居る全員を相手に等できるはずがない。

 

 それが出来るとしたら、破壊神をも指先一本で相手取れる目の前の少年のような神しかいない。

 

「いいえーー」

 

 だが、破壊神たちの想像を簡単に裏切って大神官は微笑みながら首を横に振った。

 

 同時、時の界王神クロノアの手が天に向かって掲げられ、武舞台の前に白銀の光で巨大な円が浮かび上がる。

 

 その気配を感じた瞬間、全ての破壊神が。界王神が、強烈にして純粋な殺意に全身の毛を総毛立たせる。

 

「……!! これは、真の超サイヤ人!?」

 

 ベルモットが叫ぶ中、無限に立ち昇る黄金の炎と真紅の稲妻を身に纏う濃紺の空手着を着た黒の瞳孔が現れた翡翠の瞳を持った漢が居た。

 

 破壊神たちは知る由もないが、漢の首にはかつて首から下げていた勾玉の首飾りはなく。

 

 代わりに巨大な数珠を巻いている。

 

「……! なんだ、コイツは!? 人間だと言うのか!?」

 

 神の気を纏わぬから神ではない。

 

 だが、その純粋な殺意と鬼気ーー力は圧倒的だ。

 

 大神官は感嘆したように微笑みを浮かべて漢を見る。

 

「ウイスさんも、まだまだですね。彼は天使の域などーーとうに超えている」

 

 黒い足袋に草鞋を履いた足で地を踏み割り、黄金の炎のような鬼気を放つ漢は構える。

 

「……!」

 

 それだけで破壊神たちは一斉に構えを取った。

 

 大神官は、彼らを向かずに美しさと恐ろしさを併せ持った炎のような鬼気を見つめて微笑む。

 

「貴方は、純粋な強さだけならば私に届いているかもしれない。真の超サイヤ人ーー!」

 

 その呟きを、サイヤだけは聞き逃さなかった。

 

 漢は静かに構えを取ると、地獄の底から響くような低い声で神々に告げる。

 

「我が名はリューベ。我こそ、拳を極めし者ーー! 我が望みに応えよ。破壊の神よ」

 

 その声を聴いて、第2宇宙の破壊神へレスが叫ぶ。

 

「来るぞ、皆のもの!!」

 

 これに第6宇宙のシャンパが応える。

 

「ちくしょう、ビルスの野郎!! こんな肝心な時に居やがらねぇ!!」 

 

「まったくだ。あの無駄な戦闘力は、こういう時のために使ってこそだろうが!!」

 

 シャンパの言葉に第4宇宙の破壊神キテラも叫び、破壊神たちは同時に破壊の神気(オーラ)を纏う。

 

 拳を握りしめて、己の肉体のみを武器にして独りの黄金の炎を纏う鬼が。

 

 遥か遠き神々の長の神殿で。

 

 破壊の神々と戦を始めるーー己が強さの極みを知るために。

 

「ただ人を超え、鬼を超え、天に至る。我が願いに応えよ、神よ!!」 

 

 鬼の咆哮が神々の長の玉座に響いていた。

 

ーー魔界。

 

 人間が住む世界とは真逆の闇の世界。

 

 血のように紅い空と赤茶けた枯れた大地で、白い道着を着た黒髪のサイヤ人が顔をのけ反らせながら後ずさる。

 

 顔を戻すサイヤ人ーーターニッブの黒い目の先には、長く青い髪を煌かせた妖艶な美女が笑っている。

 

「この程度なの? チョロいじゃない、格闘なんて」

 

「…強い奴はいくらでもいる。勝負の最中に気を緩めるような相手に、俺は負けない」

 

 ターニッブは燃える炎を漆黒の瞳に宿し、白い気を纏う。

 

 赤いオープンフィンガーグローブを握りしめ、拳を硬く作り出す。

 

 黒いブーツを履いた足元からは、蒼い波動の光が渦を巻いて天に向かう昇り龍のように噴き出ている。

 

「いくぞ!!」

 

 宣言すると同時、一気に踏み込む。

 

 右拳を握りしめて正拳を顔に放った瞬間、女魔王の上半身が下に沈み込みターニッブの顎をつま先が捉える。

 

「……!」

 

 彼女は、背を後ろに反らせると両手を地面についてダンスのように右脚を天に向けて蹴り上げたのだ。

 

「ぐっ!」

 

 顎を跳ね上げられ、上空へと吹っ飛ぶターニッブの正面に女魔王がコウモリのような翼を広げ、ロケットの射出口のような形に変化してバーニアを吹かす。

 

 ターニッブは空中で白い気を纏い、舞空術を使って宙で止まると目の前に迫る敵に回し蹴りを放つ。

 

「竜巻旋風ーーっ!」

 

「ーー遅いわね」

 

 瞬間、バーニアを横に吹かして慣性を無視した動きで直角に上へ曲がり、ターニッブの回し蹴りは空ぶる。

 

「ーーな!?」

 

 そこに女魔王のつま先を当てるような蹴りが放たれ、ターニッブの顎を直撃。

 

 後方へ吹き飛ばされるターニッブの背後へと高速移動して女魔王は己の羽を針のように変化させて長い右脚に纏わせるとドリルのような形状に変え、鋭い一撃を背中に見舞う。

 

「ぐぁ!?」

 

 地面に向かって急降下するターニッブだが、気を纏い己の肉体を制御しながら着地しようと左手と両脚を構えて迫る地面に備える。

 

 だが目の前には妖艶な笑みを浮かべた女魔王の顔があった。

 

「!?」

 

「……堕ちろ!」

 

 細いがターニッブの力をしてビクともしない腕に肉体を抱かれると、女魔王の羽がジェット噴射して頭から地面に急降下(ダイブ)して叩きつけられる。

 

 まともに首から地面に打ち付けられ、背中から地面に倒れ伏して仰向けになるターニッブを女魔王は背中の黒い悪魔の羽を無数のコウモリに変化させて腰掛ける。

 

 さながら空中に浮くゴンドラに跨る様に宙に身を浮かせながら、女魔王は物憂げな表情で見下ろす。

 

「見かけ倒しね? もう少し楽しめると思ったのだけれど、この身体の火照りをどうしてくれるの?」

 

 そう問いかけると、ターニッブは静かに黒い瞳を見開くと立ち上がってきた。

 

 これに女魔王の眼が丸く見開かれる。

 

「……驚いた。只の人間にしては、随分と打たれ強いのね?」

 

 そう告げた後、妖艶な容姿に不釣り合いな少女のような無邪気な笑顔でこちらへと構えを取るターニッブの黒い瞳に告げる。

 

「まだまだ楽しめそうで、良かったわ。このまま終わりだと私の退屈を紛らわせないもの……!」

 

「この強さ、流石は魔界の王だな……! アブラも相当な強さだったが、お前はそれ以上のようだ」

 

「……? アブラ? たしかダ―ブラの一族の? そう言えば人間に負けたと風のうわさで聞いたわね。貴方なのかしら?」

 

 そう告げながら女魔王は自分の空中椅子にしていたコウモリの群れを再び自身の躰に纏わせ、頭と背中に悪魔のような翼を象らせる。

 

「……名を聞かせてもらえるかしら? 魔族を倒した人間」

 

「俺の名は、ターニッブ。因果の狭間にて拳を振るう者……!」

 

 その名乗りに魔王は静かに豊かな己の胸に手を当て、微笑んだ。

 

「ーーいいわ。我が名は魔王マーヤ。魔界の三大貴族クマクを統治するもの。ターニッブ、あなたの夢を確かめさせてもらうわ」

 

「……受けて立とう!!」

 

 両手脚に黄金の雷を纏わせて構えを取るターニッブを前にマーヤは目を見開くと、羽をジェット噴射させて突っ込む。

 

 マーヤが右拳を握り、ジェット噴射の勢いをそのままにターニッブの顔に向けて放つとターニッブはたくましい左腕を顔の前で曲げて構えーー受け止めた。

 

 衝撃がターニッブの背を突き抜け、地面を割って空の雲を割く。

 

 だがーーターニッブの眼は揺るがない。

 

 先ほどまでとは明らかに雰囲気の違う彼に、マーヤの眼が見開かれる。

 

「……!」

 

「昇龍拳!!」

 

 顎先に寒気を感じ、咄嗟に上半身を後ろに反らせると目の前を昇り龍が如き右拳が通り過ぎる。

 

 その迫力に躱したといえ身が硬直し、くるりと回転しながら着地するターニッブを見つめた。

 

(この私が、隙を突けなかった? 体が硬直したと言うの? 今の一撃に……!)

 

 静かにマーヤはターニッブを蒼い瞳で睨みつける。

 

 今の一撃は、まともに喰らっていれば自分でも耐えられるとは言い切れない。

 

 それほどの一撃をあっさりと繰り出した目の前の男に、スリルと同時に危機感を覚える。

 

 ターニッブは、昇龍拳を見切られたことにショックを受けていない。むしろ笑みを浮かべて嬉しげに語る。

 

「昇龍拳を見切るか、流石だな……! なら、これならどうだ!!」

 

 一気に踏み込む。

 

 一瞬でマーヤの懐に入り込むターニッブに、彼女の眼が見開かれる。

 

(速い! それも、無駄のない動き!)

 

 左右の正拳突きを紙一重で首をひねって脚を左に一歩移動させて体を躱して見切るも、その迫力は数百年を生きる魔族の王でも経験のないもの。

 

 背中の羽を巨大化させ、とっさにマントのように重ねて腕を折り畳んでガードに構える。

 

 すかさず、移動したマーヤの目の前にターニッブの上段足刀蹴りが放たれる。

 

 何かが爆発したような衝撃が目の前で起こり、マーヤの両腕とガードに使った羽を吹き飛ばしてのけ反らせる。

 

「……な!」

 

 とっさにこれ以上打ち込まれないようにコウモリの羽を変化させてバーニアを後方へ吹かし、距離を取る。

 

 同時ターニッブは両手を腰だめにたわめて蒼い光球を作り上げると両手を前方に突き出して放った。

 

「波動拳!!」

 

 瞬間、マーヤも空中で右拳を突き出し左腕を手首に添えて頭上に掲げてターニッブに向けて突き出す。

 

「ソウルフィスト!!」

 

 両者の放った青い光が中央でぶつかり、相殺。

 

 この現象にマーヤが驚きの表情に変わる。

 

(ばかな? たかだか人間に私のソウルフィストが、相殺されたというの?)

 

 驚きながらも着地するマーヤの眼前にターニッブが踏み込んでいる。

 

 愚直なまでに真っ直ぐな拳と蹴りの打ち込みをガードして、マーヤの顔が焦りに変わる。

 

(この男……強い!! これほどの存在が居るなんて……!!)

 

 拳を、蹴りを防いだ腕が痺れている。

 

 それを感じながら、同時に興奮している。

 

 人間の身でありながら魔族の王たる己に正々堂々と一騎打ちを挑み、愚直に拳を放ってくる目の前の男。

 

 強大な力を誇る自分を前に、そんな存在は魔族の中にも居なかった。

 

 だから、彼女は語る。魔王として余裕の笑みを浮かべて。

 

「やるじゃない? 闇の世界でも充分に通用しそうよ」

 

 強烈な後ろ回し蹴りを後ろにバックステップして鼻先で見切り、距離を置いて微笑みかける。

 

 接近戦で自分が退くなど、生まれて初めてのことだ。

 

 だから彼女は微笑みかける。

 

 まるで想い人との初デートを楽しむ生娘のように。

 

 これにターニッブもまた、爽やかな笑みを返していた。

 

「闇の世界にはお前ほどのヤツが、まだまだ居るのか?」

 

「……いいわよ。私に勝てたら、この広大な魔界を案内してあげるわ」

 

 その言葉を最後に昂る己の鼓動を解放するようにマーヤは魔王の力を全開にする。

 

「勝てれば、ね?」

 

 その凄まじい迫力を身に纏う姿は、先ほどまでの彼女とは一線を画す。

 

 ターニッブもまた、その力の波動を前に黒い瞳を鋭く細めて拳を握りしめる。

 

「……凄まじい強さと、そして誇りだ。多くの魔族を従える王だということはある。お前の拳が、何よりも雄弁に語っている」

 

 真っ直ぐな黒い瞳で告げてくるターニッブの熱にあてられて、マーヤの心の奥に真紅の炎が宿っていた。

 

「……戦いを通して心を通じ合わせる。そんなことが出来るなんて、知らなかったわ。ねぇ、あなた? もっと私の知らない事を教えてちょうだい? そしてあなたの”強さ”を教えて?」

 

 豊かな胸の奥に確かに燃え盛る炎を感じて、マーヤは微笑む。

 

 退屈をしのぐ手段でしかなかった戦いが、目の前の男とのソレはまるで違う。

 

 その事実に、彼女は胸の高鳴りを抑えることが出来なかった。

 

「ならばーー俺の拳を確かめてみろ!!」

 

 女の高鳴りを前に、ターニッブは真っ直ぐに闘志をぶつけるのだった……。

 

 

 




次回も、お楽しみに( *´艸`)

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