ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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お待たせしやしたぁ

多少、話の流れは変わりますが。

よろしくお願いします


滅殺の拳を継ぐもの

 第7宇宙。

 

 全覧の間。

 

 そして魔界。

 

 それぞれの世界で戦士達が激闘を広げる中。

 

 惑星サイヤの地下にある異空間ーー時の狭間にして可能性の行き交う場所。

 

 広さは惑星サイヤと同じくらいであり、どこまでも続く逢魔時のような空と荒野が広がっている。

 

 空からは黄金に光る点がまばらにあり、そこから石造りの階段が真っ直ぐに荒野に降りている。

 

 まばらな光の一つ一つは様々な次元、時空に通じている。

 

 多次元世界の可能性や死人の魂が現れ、具現化する。その場は、かつて惑星サイヤの住民から死者の都と名付けられていた。

 

 時は少し遡る。

 

 惑星の意思と呼ばれた特異な力の塊は、移住してきたサイヤ人達の可能性や死人の魂を取り込み強大化していった。

 

 その力の塊と戦った別の惑星から来たサイヤ人達。

 

 彼らに打ち破られた一つの可能性が消えることなく仰向けに倒れていたーー。

 

「本物のテメエなら、こんな小細工簡単に打ち破ってきたぜ。ターニッブよぉ」

 

 赤いバンダナを額で締めたサイヤ人の言葉が、倒れた男の脳裏に響いている。

 

 男は倒れたまま赤いオープンフィンガーグローブを硬く握りしめる。

 

 静かに黒い瞳を見開く。

 

 その瞳に光はなく、只暗い闇が宿っていた。

 

 どこまでも深く強い闇。

 

 内なる闇を現すかのように道着を墨を塗ったような濃紺のものにしている。

 

 鍛え抜かれた逞しい肉体。

 

 褐色の肌。左右非対称に跳ねた黒髪。

 

 真の強さとは何かを知る為に歩む男ーーターニッブのもしもの可能性。

 

 それは本来なら作られた可能性として消えるはずであったものだ。

 

 だが、可能性は消えることはなく、そこにあった。

 

 ターニッブと別たれたーーもしもが具現化した存在。

 

 別次元の可能性ですらない、夢幻と消えるはずの存在。

 

 何者でもない、因果律を外れたその男は静かに立ち上がると、前を向いて歩きだした。

 

 一つの異世界に通じる階段を目指して。

 

ーーーーー

 

 忘我のナメック星。

 

 最長老の他に帝王が存在するーー時の狭間からしか辿り着くことができない惑星。

 

 3メートルを優に越える巨軀に鋼のように鍛えられたゴツい肉体。

 

 スマートなナメック星人の中では珍しい筋骨隆々とした男の名は、カタッツ。

 

 緑色の空の下、石造りの塔に背を向けて腕を組んで立っている。

 

 帝王カタッツは、瞑想するように目を閉じている。

 

 彼は水も飲まず、ただジッとその場に立ち数日から数週間もの間微動だにしないこともある。

 

 だが、この日は違った。

 

 ゆっくりと両目を開くと、カタッツの眼前に道着を着た黒髪のサイヤ人が立っている。

 

「…ほぅ、面白いヤツが来たな。数年前、あの男の中に居たヤツか」

 

 カタッツは巌のような顔をニヤリとシニカルに歪ませる。

 

「…だが貴様は最早、どこにも存在せぬはずだ。ターニッブの拳がリューベの拳を上回り天下を吹き抜く風となった時からな」

 

 ゆっくりと濃紺の空手着を着た男は拳を握り、構える。

 

「くだらん戯言を…! さあ、死合え!!」

 

「フ…!」

 

 ゆっくりとカタッツは両拳を頭の高さに置くと両脚を爪先立ちにして独特のリズムを刻み始めた。

 

 一瞬の沈黙後、男が大地を踏み締めて蹴り、一気にカタッツに向かって拳を振りかぶり襲い掛かった。

 

「…っ!」

 

 鈍い音が辺りに響き渡り、ピンボールのように横に弾かれるのは男の方だった。

 

 右手と右片膝をついて左手で脇腹を抑えながら、カタッツを見上げる男。

 

 カタッツは太く長い右脚を横に振り切った姿勢で止まると、ゆっくりと脚を戻す。

 

(…この眼。確かに闇に進んだ者の眼でありながら、この強き信念を宿した眼。いったい、これは…?)

 

 カタッツが男の眼を見下ろしながら、考える。

 

 闇の波動に魂を食われたはずの男の眼にしては、あまりにも真っ直ぐな眼だ。

 

 ターニッブそのもののように。

 

「ターニッブ。貴様は、何故その道を進む? その道が誤りと知っているのだろう?」

 

「……この拳に問え、帝王!」

 

 立ち上がった黒道着のターニッブは、瞳の虹彩を赤く染め上げると同時に全身から赤い湯気のような光が立ち上り始める。

 

 圧倒的な力、純粋なまでの殺意。

 

 それは本来なら理性や思考、性格すら殺意に飲み込まれて消えていくはずのーー。

 

(変わらぬ。この男、振るう力も進む道もターニッブとは正反対だ。だが、その性根の部分が変わらぬ)

 

「なるほど。ならば確かめさせてもらうぞ、貴様の器と覚悟の程を!」

 

 再び黒のターニッブが、踏み込む。

 

 同時に射程圏内に入った獲物の首を狩るためにカタッツの太くて長い丸太のような脚が鞭のようなしなやかさを持って放たれた。

 

 紙一重。

 

 黒のターニッブは顔の横に拳を構えて蹴りを受け流しながら横に捌いて突っ込む。

 

 瞬間、竜巻のような激しさとスピードで左右からカタッツの蹴りが襲い掛かった。

 

 両腕で受けてから横に捌いて進む。

 

 一歩一歩、確実に前へ。

 

(…ターニッブそのもの、か)

 

 ニヤリと虎が牙を剥くような凄絶な笑みを浮かべ、カタッツが懐に入ってきた見事な男を睨み据える。

 

「うぉおおおっ!!」

 

 咆哮を上げながら黒のターニッブはカタッツの脇腹に拳を叩きこもうと振りかぶってーー。

 

「タイガァアアーージェノサイドッ!!」

 

 強烈な飛び膝蹴りを横頬にカウンターで叩きこまれ、空中に吹き飛んだ瞬間に下顎を跳び上がりながらのアッパーカットを叩き込まれる。

 

「ぐぅああ!!」

 

 天頂高く舞い上げられながら、悲鳴を上げて背中から地面に叩きつけられる黒のターニッブ。

 

 軽業師のような身のこなしで空中で巨体を回転させて着地するカタッツ。

 

 カタッツの着地には、ほとんど衝撃がない。

 

「…リューベやターニッブから受けた昇龍拳。それが俺の血となり肉となった証が今の技だ」

 

「……」

 

 肩で息をしながら立ち上がる黒のターニッブにカタッツは語りかける。

 

「…誤りと知りながら迷いなく進むその道。それは何のためのものだ?」

 

 問いには答えない。

 

 呼吸を整え波動で体の動きを回復させながら足のふらつきを確認し、拳を握る。

 

 答える必要はない。

 

「答えは、我が拳の中に…!」

 

「…良いだろう!」

 

 瞬間、両者の脚元から気炎が爆発する。

 

 黒のターニッブが全身に纏うは黄金の炎。

 

 カタッツが纏うは青みがかった白銀の炎。

 

 両者の炎は、互いの臨界点を超えんとするかのように高め合っていく。

 

 同時に黒のターニッブの肌は透き通るように白いものに。

 

 黒い髪は天に向かって逆立ちながら黄金に燃え上がる。

 

 瞳は翡翠の虹彩に黒の瞳孔が開いたものへと変わる。

 

 その濃紺の道着の背に「滅」の文字が赤く浮かび上がっていた。

 

「…絶ッ!!」

 

 気合いと共に赤黒く禍々しい雷が黒のターニッブの手足から放たれる。

 

 その戦闘力の高まり方、波動を電刃へと変える練気。

 

 全てがターニッブそのもの技ーー。

 

「波動拳!!」

 

 瞬間、黒のターニッブが紫色の気弾を両手首を上下にあわせた掌から放つ。

 

 人一人を簡単に飲み込むような巨大な気弾にカタッツも両手から夕陽のように赤い気を練り上げて両拳を突き出した。

 

「タイガーショット!!」

 

 互いの中央で白い光を上げながら相殺。

 

 しかし、そちらを見向きもせずに互いに向かって拳を握る両雄。

 

 三度射程圏内に入った獲物をカタッツの脚が襲い掛かる。

 

 だが、今度は受け流すのでなく受け止めてから弾く。

 

「…ぬぅ!」

 

「覚悟はいいか!」

 

 見事な受け身ーー心眼に唸るカタッツを置いて黒のターニッブが踏み込む。

 

 カタッツの強烈な膝蹴りを左腕一本を胸の前に折り畳んで受け止める。

 

 瞬間、黒のターニッブの右拳がカタッツの左脇腹に突き刺さった。

 

 頑強な肉体をして、前のめりにくの字に曲がる体。

 

 下がったその顎に目がけて黒のターニッブの跳び上がりながらの右拳が突き上げられた。

 

「滅ぅ・昇ぉお龍ぅう拳ぇえん!!」

 

 今度はカタッツの巨躯が天頂高く舞い上がる。

 

 黒のターニッブが地面にクルリと着地した瞬間、背中から地面に叩きつけられるカタッツ。

 

 むくりと上体を起こしながら今受けた腹でも顎でもなく、胸元に刻みまれた古傷を抑えていた。

 

「この胸の傷を震わせるか…! ヤツとは違う道を歩むその拳で!!」

 

 笑みを浮かべて立ち上がるカタッツを前に黒のターニッブも構えを取る。

 

「…知りたいのか。貴様が振るう力とヤツが歩く道。その二つの答えを」

 

「…我が拳を遮ること、なにものにも能(あた)わん」

 

「…くっ、くくく、はーはっは!!」

 

 淡々と口数少なく語るその雰囲気も力もリューベに近いがどこまでも語る内容はターニッブのものだった。

 

「本気で継ぐつもりか、サイヤが鬼神の拳。ターニッブが目指す真の格闘家。その相克に位置するものーー拳を極めしものを!!」

 

 黒のターニッブは語らない。

 

 語らずに拳を握り、大地を踏み締めてからはじめて笑った。

 

 ターニッブそのものの笑みを一瞬浮かべるとリューベを思わせる凄まじい鬼気を放つ冷たい貌になる。

 

「…ならば見せろ! 貴様が目指すもの。リューベの拳を継ぎ、超えるーー拳を極めしものを!!」

 

「…我! 拳、極めたり!!」

 

 互いにこれ以上の言葉は無用。

 

 両者は、再び互いに向かって踏み込むと拳を、蹴りを繰り出したーー。

 

 強烈な一撃のぶつかり合いは、衝撃波を周りに吹き荒れさせて爆発。

 

 両者は地面から僅かに浮き上がると刹那の拍子で打撃を応酬している。

 

 一つ打たれて仰け反ればすぐさま返す。

 

 瞬く間に両雄は血塗れになりながら拳と蹴りを交換する。

 

 少しでも後ろに下がれば一気に飲まれるであろう連撃。

 

 僅かに芯から外れているだけで応酬している打撃の内どれか一つだけでも、まともに貰えば一瞬で終わる。

 

 それなのに、どちらも退かない。

 

 鬼気を纏い突き進む黒のターニッブ。

 

 覇気を放ちながら迎え撃つカタッツ。

 

 同時に跳ね上がる顔、相打ち。

 

 互いの回し蹴りがぶつかり合い、後方に弾かれる両雄。

 

「…く、くく、はーっはっはっ!! 面白いぞ! ターニッブ!!」

 

「……っ!!」

 

 覇気に満ち溢れる帝王カタッツを前に、黄金に燃える炎のような鬼気を纏う黒のターニッブ。

 

 相手の真正面ーー真前で拳を握り締める両者。

 

 そこから退くことなど互いの頭にはない。

 

 そうーー両者の狙いは一撃。

 

 相手を真っ向から打ち倒す、真の一撃のみ。

 

「ゆくぞ、ターニッブ!!」

 

「…絶っ!!!」

 

 両雄の間には、小細工も何もない。

 

 ただただ、不器用で。

 

 ただ純粋で。

 

 圧倒的だったーー。

 

 気を限界まで高め合い、互いに向かって駆ける。

 

「…昇龍拳!!」

 

「タイガーアッパーカット!!」

 

 相手に向かって大地を蹴って跳び上がりながら、拳を下から上に向かって突き上げる。

 

 両者の拳は互いの顎に向かって真っ直ぐに伸びる。

 

 どちらが速いか、それだけの勝負。

 

 当たれば終わるーー真の必殺。

 

 ただ一撃のみ。

 

「うぉおぁああああっ!!」

 

「ぬぅおおおおおおっ!!」

 

 天頂高く突き上げながら交差する拳、腕、体。

 

 互いに空中で身を翻しながら、着地する。

 

 振り返り、構え合う。

 

 やがてカタッツが右手と左片膝を地面に突く。

 

「…俺の方が遅かった、か」

 

「……」

 

 黒のターニッブは、静かにカタッツを見下ろすと「滅」の文字を背負った背中を見せつけるかのように踵を返し、歩き出す。

 

「…どこへ行く、ターニッブ?」

 

 カタッツは、ゆっくりと立ちあがり黄金の炎を纏う鬼の青年に問いかけた。

 

 黒のターニッブは足を止め、己の右拳を見つめながら静かに告げる。

 

「…この拳が求めるもとへ」

 

 そのまま去ろうとする黒のターニッブ、それを見送るカタッツの間に声が落ちてきた。

 

ーーく、か、か、か!

 

 その声は、立ち去ろうとした黒のターニッブの影から響いてきた。

 

 黒のターニッブは、翡翠に黒の瞳孔が開いた鬼眼で鋭く睨みつけながら己の影を振り返る。

 

 影から、ゆっくりと黒のターニッブと同じ道着を身にまとう異形が現れた。

 

 影は異形の迫力を持って笑い、嘲りながら問いかける。

 

「…どうした、バズニッブ? 何故、死合いに負けた者の息の根を止めない?」

 

「…魂の無い影風情が! 出しゃばるな!!」

 

 仁王のような踏み込みで大地を窪ませながら、黒のターニッブーーバズニッブと呼ばれた男は納めていた強大な鬼気を放つ。

 

「…くっかっかっかっ!」

 

 そんなバズニッブを小馬鹿にするように、影から現れた異形は黄金の炎のような鬼気を全身から放って笑う。

 

 黒い道着の上を脱ぎ、こめかみから小さく光るツノを生やし。

 

 大猿に変化する直前のような鋭い牙と尖った耳をしている。

 

 黄金に逆立つ燃えるように輝く髪と翡翠に黒の瞳孔が開いた瞳は、真の超サイヤ人。

 

 だがーーその白目は血のような赤に染まっている。

 

 コレはカタッツの知るターニッブやリューベとも、先程まで拳を交わした目の前の黒い道着の超サイヤ人とも違う。

 

「殺す事も出来ぬ死合うとは口先ばかりの餓鬼、最初から殺すつもりもない名ばかりの帝王。飯事を繰り返すかーーバズニッブ!!」

 

 禍々しい鬼気そのもの。

 

 正に波動そのもの。

 

「…なるほど。ターニッブーーいや、バズニッブとやら。貴様の内にあった鬼の正体がソレか」

 

「……」

 

 ニヤリとシニカルに笑いながらカタッツがバズニッブとその影から現れた異形を見つめる。

 

 異形は笑いながら告げる。

 

「我が名はコンラッブ。我こそ死そのものーー。オレこそが波動だ」

 

 強烈な気を纏う異形に満身創痍の状態で鬼人と帝王が異形に向かって構えを取る。

 

「自らの死を賭して闘い、勝者が敗者を殺すのが死合い。貴様らのお為ごかしの飯事など何の価値もないわ!!」

 

 バズニッブとカタッツに挟まれながらも、一向に臆さない異形ーーコンラッブ。

 

 その力も気も、何もかもが桁違いだった。

 

「…下がれ、帝王カタッツ」

 

「この化け物は、我々ナメックの護人に任せて貰おう」

 

 突如、場に二つの声が響いた。

 

「何!?」

 

 バズニッブが思わず振り返る。

 

 真の超サイヤ人となった自分でも背後を取られた事に気づかなかった。

 

 それほどの達人が、目の前の帝王を置いて他に二人。

 

 その事実に目を見張りながら振り返ったバズニッブの前には無数の鋭い気の刃がコンラッブに向けて放たれていた。

 

「…ぬぅ!?」

 

 唸りながらその場で爪先立ちをして赤いオーラを全身から噴き上げるとコンラッブは幽鬼のように前後に移動して刃を全て擦り抜ける。

 

「…阿修羅閃空」

 

 バズニッブが目を鋭く細めてコンラッブを睨みつける。

 

 その脇から一人のナメック星人が声を上げた。

 

「…ほう。俺たちのソニックグレイブを全て躱したか」

 

 ナメック星人にしては筋骨隆々のカタッツに匹敵する筋肉ーー特に両肩の筋肉が頭一つ並のコブになっているーーを持つゴツい男が低い声でクールに告げる。

 

 悟空達を主観にして言うなら、彼の見た目は第6宇宙に居たピリナというナメック星人に似ている。

 

「さすがは、1000年に一人現れるという伝説の鬼。超サイヤ人だな」

 

 淡々と告げるのは細身の戦士タイプのナメック星人。

 

 彼を一言で現すなら、ピッコロやネイルに瓜二つだと告げておこう。

 

「…ラシフ。メッア」

 

 ゴツい男の名はラシフ。

 

 細い男の名前はメッアというらしい。

 

 カタッツの言葉にそれぞれが、目を向けて応える。

 

「油断するな」

 

 その言葉にニヤリとラシフが笑った。

 

「…安心しろ。俺たちはプロだ」

 

「了解した、帝王カタッツーー」

 

 メッアが淡々とした口調で返すと、二人のナメック星人の目の前に鬼炎を上げた異形ーーコンラッブが牙を剥いて襲い掛かってきた。

 

「死ねぇ!!」

 

「…物騒なことだ」

 

 殺意に満ち溢れた拳を前に、冷徹な眼差しでラシフが拳を握って踏み込む。

 

 強烈な異形の拳を左に捌き、返しに左ストレートを放つ。

 

 コンラッブは目の前に迫る拳を口が裂けたかのように広げて笑いながらミリ単位で右に見切りながら懐に踏み込むと顎に向かって右脚を蹴り上げる。

 

 咄嗟に上体を反らして顎先で躱すラシフだが、蹴り上げられた脚は踵から自分に向かって振り下ろされる。

 

「龍爪脚!!」

 

 瞬間、両足で大地を跳んでバックステップしながら後ろ回し蹴りを放つラシフ。

 

 身を翻した背中を踵が振り下ろされていくのを感じながら左脚を横に蹴り抜く。

 

 鈍い音が響きながら、後方にきりもみ回転しながらコンラッブが吹き飛んでいる。

 

 それを見逃すラシフではない。

 

 着地と同時に一気に踏み込む。

 

 同時、迫るラシフを前にコンラッブが空中で爪先立ちの姿勢になるとーーそのまま後ろに滑空した。

 

 瞬間、高速移動で姿を消すラシフ。

 

 コンラッブもまた、高速移動を行い空中に飛んだ。

 

「…強い。こんなヤツらが、カタッツの他に居たか」

 

「…ラシフ。そしてメッアは、このナメック星を護る護人。相手が超サイヤ人とて魂の無い影如きに遅れは取らん」

 

 バズニッブの言葉にカタッツが両腕を胸の前で組みながらニヤリとシニカルに笑う。

 

 強烈な打撃音と共に凄まじい攻防を繰り広げるラシフとコンラッブ。

 

「…貴様、死にーーオレに怯えないと言うのか」

 

「…お前がほざく死とやらに俺たち護人は触れ慣れている。悪いな」

 

 言いつつ拳を繰り出すラシフ。

 

 これにコンラッブもニヤリと笑いながら叫ぶ。

 

「…殺す殺す殺す!!」

 

 繰り出される前に踏み込んでの右正拳突き。

 

 それを見た瞬間、ラシフは両手で正拳を受けると勢いそのままに宙返りしながら爪先をコンラッブの顎に叩き込んだ。

 

「サマーソルト!!」

 

 顎を跳ね上げられて後方に吹き飛ぶコンラッブだが、空中で慣性を無視した動きで体勢を整えると阿修羅閃空で前につめる。

 

 着地したラシフの目の前にコンラッブが現れた。

 

「…デタラメな動きをする」

 

「クカカカ、死に惑うがいい!!」

 

 ダメージを受けていない。

 

 更に動きも速く、強烈かつ鋭くなっていく打撃。

 

 高速移動を行い、打撃を返しながらラシフは思考する。

 

 手応えは充分だが、生身の人間でないものには効き目が悪いようだ。

 

「…良いぞ! 貴様の手足に纏う気の刃と技の斬れ味、オレの力を高める良い餌だ!!」

 

「…俺の拳と技をエサ呼ばわりか。大口を叩いたことを後悔させてやる」

 

 スピードもパワーも桁違いに上がっている。

 

 だが、ラシフは退かない。

 

 音速の拳を振るいながら、全身に青みがかった白銀のオーラを纏い燃やし始める。

 

 それはカタッツやその息子たるピッコロと同じ、究極ナメック星人の気であった。

 

 音速を越えた気の刃を両手脚に纏い放つラシフだが、肉を裂かれてもコンラッブは一向に構わない。

 

 ダメージを与えても与えても動じることなく圧倒的なパワーで突き進んで来る。

 

「ちぃ!!」

 

 コンラッブの裸の背に滅の文字が浮かび上がると同時、一気に気が爆発し凌いでいたラシフを圧倒的な連撃でガードに追い込み退ける。

 

「恐れろ、俺こそが死だ!!」

 

 バックステップしながら距離を取り呻くラシフだが、その真後ろに尋常じゃない動きと速さでコンラッブが現れた。

 

 強烈な拳をガラ空きの背中に叩き込まれそうになり、ラシフも右裏拳を遠心力を加えて振り切ろうと構える。

 

 瞬間ーー。

 

「…ソニックサイス!!」

 

 脚に気の刃を纏ったメッアがコンラッブの顎先に向けて爪先を弧を描くように下から振り抜いた。

 

「クカカカッ!」

 

 コンラッブは右ストレートを放っていた体勢にも関わらず常識外れの軌道とスピードで、まるで天から糸が吊るされ引っ張られた人形のように上に下に阿修羅閃空の姿勢のまま飛び回って回避する。

 

 それを淡々と見つめながら着地するメッアの横にラシフが並び立った。

 

「…おい、メッア。余計な手出しは……!」

 

「文句は後で聞く。今は、この化け物を倒す方が先だ。こいつは危険だ。ここで仕留めなければならん」

 

 それだけを告げるとメッアは異形コンラッブに構える。

 

 ラシフは軽くため息を吐くも、メッアの言葉に同調する様に構えをとった。

 

「…二人か。いいぞ! 面白い、面白いぞ!!」

 

 これに上機嫌に笑うコンラッブ。

 

「波動拳!!」

 

 彼の左側面から紫色の人一人を簡単に飲み込む程に巨大な気弾が放たれた。

 

「…フン」

 

 コンラッブは、右手に紫色の気を瞬時に練り上げると前に突き出した。

 

「波動拳!!」

 

 相殺する二つの紫色の気弾。

 

 コンラッブが睨みつけた先には、己と同じ姿をした鬼気を纏いながらも人である事を捨てない男が立っている。

 

「…クカカカ。人である事に囚われたオノレが、波動そのものたるオレに勝てると思うのか!?」

 

「…絶っ!!」

 

 バズニッブが、風を巻いて異形に襲い掛かった。

 

「ラシフ!!」

 

「…了解」

 

 同時にメッアとラシフが示し合わせたかのように左右からコンラッブに向けて踏み込む。

 

 拳と拳をぶつけ合う二人の超サイヤ人。

 

 そのまま凄まじい乱打戦を繰り広げるも、僅かずつバズニッブが押され始める。

 

 両者の技のキレが、殺意の純度を現すかのように差が出ている。

 

 ほんの僅かのキレの差が、バズニッブをしてコンラッブに打ち負ける。

 

「クカカカ! どうした、バズニッブ!? オノレの中に居るオレの声に身を委ねろ!! そうすればオノレは、リューベをも上回る極みに立てるぞ!!」

 

「…黙れ。貴様の思い通りにはならん」

 

「阿保が!!」

 

 打ち負けながらも拳を返すバズニッブにコンラッブが笑みを強める。

 

「ならば肉体を叩き伏せた上で、オノレの自我をオレが塗り潰してやろう!」

 

「……!!」

 

 一際鈍い音が響いて互いの顔面に拳が突き刺さるも、バズニッブが一方的に後方へ仰け反る。

 

 更に拳を振りかぶるコンラッブの脇からラシフの鋭い蹴りが叩き込まれた。

 

「クカカカ! 貴様から喰われたいか!?」

 

「ち、仰け反りすらしない、か」

 

 舌打ちしながらも拳を返すラシフ。

 

 その脇からメッアが殴り込んで来る。

 

「…しゃらくさい!!」

 

 音速の気の刃を使う二人の究極ナメック星人を相手に異形は真っ向から殺意の拳を返して行く。

 

 攻撃を当てられてもビクともしないタフネスと、圧倒的なパワーとスピード。

 

 更に技のキレは、どんどんと増すばかり。

 

「…これが超サイヤ人か。とんだ化け物だな」

 

「口より手を動かせ。こいつは危険だ。仕留めなければ更なる力を付けてくる」

 

 ボヤくラシフにメッアが返しながら、凄まじい乱打戦をコンラッブと繰り広げている。

 

「クカカカ! 2人がかりでこのザマか!? オレを押し切ることさえ出来んとはなぁ!!」

 

 とはいえ、だがーー。

 

(このオレの力と滾りに平然とついてくるとは。やはり上質な餌だ。我が飢えを満たすに相応しい)

 

 拳や蹴りを交換する度に技のキレが増して行く己を満足げに見つめながら、コンラッブは拳を返して行く。

 

 先ほど退けたバズニッブを含めた3人は、真・超サイヤ人であり異形の自分の上昇についてこれる。

 

 限界を見極めた上でねじ伏せ、殺す。

 

 コンラッブは愉快げに笑みを強めて境界線を空間に引くように強烈な回し蹴りを放ち、二人の究極ナメック星人にバックステップで距離を取らせる。

 

「オノレ等の強さが、このオレの波動から更なる力を引き出させる。程よい餌だぞ!!」

 

 かなりの時間を全力で戦っているが、異形にはスタミナ切れがない。

 

 生身の人間であるバズニッブやラシフ達の方が不利だ。

 

 帝王カタッツは静かに3対1の状況を腕を組んだ姿勢で見守る。

 

「…下がっていろ、ナメック星人」

 

 低い声でバズニッブが、そう告げると両拳を腰に置き両膝を曲げて爪先立ちになる。

 

 一瞬、赤紫色の光でバズニッブの頭上に「滅」の文字が浮かんで消え、黄金の炎が一際激しく燃え上がる。

 

 体力と精神力を犠牲にして戦闘力を一気に引き上げる真・超サイヤ人の能力。

 

 ただし、体力と精神力が切れれば問答無用で行動不能になる諸刃の刃。

 

ーー ターニッブよ。お前は拳の先に何を見ている?

 

 先代のサイヤ王にして己がターニッブから分かたれる前の師匠ヘイヤの言葉が、バズニッブの脳裏に響いた。

 

 目の前に居るのは、ターニッブから逃げた影の異形。

 

 別たれた自分に取り付いた力の塊。

 

 サイヤ人の名を名乗っているが、その実は魂のない影なるもの。

 

 バズニッブの目に映るのは、波動に取り込まれ異形の器と化した己自身。

 

 白目が赤く染まり、道着は破けて片袈裟となり、肉体のど真ん中ーー胸板の中心は拳を受けたようにクレーター状に凹んだ痕。

 

 思わず目を逸らしたくなる痛々しく大きな痕からは肉体が崩壊する前兆のように不吉な赤黒い稲妻がもれている。

 

「…俺の骸。波動が見せる幻か」

 

「違う! オノレが歩むべき未来の姿だ!!」

 

 コンラッブの言葉を無視するも現れた自分の骸のような存在となった幻影を睨みつける。

 

 すると幻影は、コンラッブに重なって消える。

 

「…俺の拳が、血を求めている!!」

 

「そうだ、バズニッブ! 殺せ殺せ殺せ!! そうすればオノレはオレのモノだ!!!」

 

 ぶつけ合う拳と拳。

 

 ほとばしり、燃え上がる黄金の鬼気。

 

 バズニッブの気はコンラッブに引き上げられ、殺意と鬼気を纏って更に技のキレが増して行く。

 

 命を狩れば狩るほどに。

 

 血を求めれば求めるほどに。

 

 鬼の拳は、更に禍々しく強くなっていく。

 

「オノレも分かっていよう? ターニッブとは違う道を辿るならば。リューベを超える拳を得るならば。オレと一体化する他ないことをな!!」

 

「波動が見せる幻影風情が。知ったような口を利く!!」

 

「気に入らんか!? ならばオレをねじ伏せ、倒して取り込んでみよ! この波動の権化をなぁ!!」

 

 乱打戦の中、一際強烈な右正拳をぶつけ合い、距離が開く両者。

 

 同時に同じ構えを取る。

 

「アレは、阿修羅閃空とか言う運足法か」

 

「…何故、相手に向けて構える? あの技は回避移動に使うのではないのか?」

 

 ラシフとメッアが語る中、カタッツが睨みを効かせる。

 

「…来るぞ。幾星霜に渡る命を狩り続けたサイヤの波動の奥義ーー。リューベをして、ようやく踏み慣らした無限地獄」

 

 冷徹な怒りに燃えるバズニッブ。

 

 冷酷な殺意で嘲笑うコンラッブ。

 

 両者は同時に互いを獲物とさだめ、襲いかかった。

 

「心の臓ーー止めてくれる!!」

 

「六道鏖殺ッ!!」

 

 赤い光が接近する両者を中心に膨れ上がる。

 

ーー瞬獄殺ッッッ!!!

 

 刹那の拍子に無限地獄を思わせる打撃を交換し合う。

 

 その連撃は本来なら打ち合うことすら許されない。

 

 唯一、瞬獄殺を無効化する方法が同じ瞬獄殺をぶち当てて全て相殺することだ。

 

 つまりーー。

 

 爆心地を中心にバズニッブとコンラッブーー二人の超サイヤ人が、後方に弾かれる。

 

「…チッ」

 

 舌打ちしながらも肩で息をはじめるバズニッブに、異形は嗤った。

 

「ク、カカ、死地と定めよ!!」

 

「…絶っ!!!」

 

 両拳を左右それぞれの腰に置いて紫色の光を二つ生み出し、腰だめに構えるコンラッブ。

 

 対してバズニッブは両手を右腰に置いてたわめ、紫色の光を練り上げる。

 

「…消し飛べぇっ!!」

 

ーー 龍哭波動拳!!

 

 野太い紫色の光線がコンラッブの上下に手首を合わせながら突き出した掌から放たれる。

 

「…失せろぉっ!!」

 

 同じくバズニッブも両手を前方に突き出して野太い紫色の光線を放った。

 

ーー 滅・波動拳!!

 

 二つの極限の光は互いの中央でぶつかり、爆発。

 

 後方に弾き飛んだのはーーバズニッブだった。

 

 爆風で舞い上げられてからの落下。

 

 背中から地面に叩き付けられ、ダメージを負う。

 

 そして、バズニッブの真・超サイヤ人が解けて黒髪に赤目の褐色の肌をしたサイヤ人に戻る。

 

 これにラシフとメッアが告げる。

 

「…アレほどの一撃を相殺すれば、自分に跳ね返る衝撃も凄まじい」

 

「素晴らしい一撃だった。見事だ、超サイヤ人バズニッブ」

 

 バズニッブに称賛の声を上げた二人は、彼と対峙していた異形の方を見る。

 

 そこには、上半身が消し飛んで紫色の光を放ちながら煙を上げるコンラッブだったものが立っている。

 

 二人の究極ナメック星人もまた、闘いの終わりを察して強大な闘気を己の内に納める。

 

 だが、バズニッブの黒い瞳孔が開いた赤目は煙を上げる異形を睨みつけていた。

 

「…く、くかかかかっ!」

 

 上半身の無い異形から笑い声が上がる。

 

 これにラシフとメッア、カタッツの3人が笑い声を上げる両脚だけの異形を睨み付けた。

 

 身体から上がっている煙が少なくなるにつれて肉体が巻き戻しのように瞬く間に復元していく様は、まさしく異形そのものだった。

 

「…やれやれ。強い上に不死身か、コイツは」

 

「サイヤ人と言うのは大変だな。強くなるとこんな化け物が肉体の内に住むようになるのか」

 

 冷静だが皮肉めいた笑みを口にするラシフ。

 

 淡々と動揺を押し殺すメッア。

 

 肩を上下させ息を切らしながらも睨みを効かせるバズニッブ。

 

 そして、ただ腕を組んで見守るカタッツを順に見定めてから異形ーーコンラッブは笑った。

 

「…次は必ず殺す!! 我が餌どもよ! 真の死合いを楽しみにしているがいい!!」

 

 異形は完全に肉体を再生させ、黄金の炎のような鬼気を身に纏うと右拳を頭上に掲げて大地に振り下ろした。

 

 気柱が上がり、爆発すると土煙が発生して視界が一瞬でなくなる。

 

「…メッア!」

 

「逃さん!!」

 

 気配が消えるのを察知した二人のナメック星人は、音速の気刃を飛ばす。

 

 しかし、既に異形の気配は無く霧のように消えていた。

 

 ラシフが忌々しげに額を触りながら表情を歪めて呻く。

 

「…なんてこった。あんな化け物を野に放ってしまうとは。護人失格だな」

 

「無事か、帝王? それと、バズニッブーーだったか」

 

 対するメッアはカタッツとバズニッブにポーカーフェイスのまま負傷の気遣いをしている。

 

 カタッツは問題ないと、無言で頷き。

 

 バズニッブは虚空に消え去ったコンラッブが付けた拳の跡を睨みつけている。

 

 拳を叩き付けられた大地は底が見えない巨大な谷底の穴になっていた。

 

「……」

 

 バズニッブの赤い目が黒に戻り、道着の背に浮かんでいた「滅」の文字が消える。

 

 そのまま彼は、ナメック星人達に背を向けて歩き出す。

 

 彼の背を見ながらラシフが首を鳴らした。

 

「…帝王。メッア。しばらく俺はナメックを離れる」

 

「ラシフ?」

 

 メッアが訝しみながら相棒を見ると彼はクールながらも強い意志を秘めた黒目でバズニッブの背を見ている。

 

「…あの異形ーーコンラッブをそのままには出来ん。何より舐められた借りを返さなければならんのでな」

 

「そうか、分かった。ナメックは私と帝王に任せろ。暴れてこい、ラシフ」

 

 ニッといかつい顔に笑みを浮かべるラシフに淡々としながらもメッアはサムズアップする。

 

 カタッツもまた、静かに告げた。

 

「…貴様の腕ならば相手が不足するだろうが、技試しにはなるだろう。鍛錬を怠るなよ、ラシフ」

 

「…分かっている」

 

 頷くとバズニッブの背を追いかけるようにラシフも歩き出す。

 

「…ヤツを頼む」

 

 背後からかかった帝王の声に、ラシフは振り向かずに片手を上げると異界への階段に向かって歩いていった。




次回もお楽しみに〜

以下、簡単に元ネタを説明。
バズニッブ=殺意リュウ初期モデル(二代目の拳を極めしものというイメージ)
コンラッブ=影なるもの
カタッツ=サガット
ラシフ=ガイル
メッア=ナッシュ

となりますー(=゚ω゚)ノ
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