ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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どもども、こちらも少しだけ変えてます。
楽しんでください(=゚ω゚)ノ


最強 その名は孫悟空(GT)

ーー 破壊神ビルスの星。

 

 超新星爆発のような規模で光がぶつかり合い、消滅する。

 

「うぉおおっ!! 調子に乗るなよ、真・超サイヤ人! 究極ナメック星人!!」

 

 紫色の神気を纏い、文字通り本気の破壊神ビルスが宇宙に響き渡るほどに声を張り上げる。

 

 目の前には、恒星のようなオーラを纏う逆立った黄金の炎のような髪をしたサイヤ人が五人。

 

 蒼銀の炎のようなオーラを纏う緑色の肌に紫色の道着を着たナメック星人が一人。

 

 本気になったビルスを横目で見ながら、互いに睨み合っている。

 

 第7宇宙最強の破壊神ビルスを前にして、彼らは互いに睨み合える余裕がある。

 

「……ビルス様ばぁーっかり、お楽しみで。本当にズルいですねぇ」

 

 その様を見て、ひとりごちるのは第7宇宙のガイド天使ーーウイス。

 

 その前で、ブロリーとピッコロ。

 

 二人の長身の戦士が上半身裸に尻から猿に似た茶色の尾を生やす悟空(GT)に殴りかかった。

 

「ーーっ!!」

 

 悟空(GT)の冷たい目が鋭く細まり、ノーガードのまま自分の顔の横に右手を、脇腹の前に左膝を曲げて置く。

 

 凄まじい音を立てて、右手にブロリーの右拳が、膝にピッコロの右足が突き刺さった。

 

「カカロットぉ…!」

 

「へっ、簡単に止めてくれるじゃないか。孫!!」

 

 不敵な笑みを浮かべる二人の長身の戦士に悟空(GT)も冷徹な顔のままニヤリと笑みを返した。

 

「とんでもねぇ、パワーと切れ味だ。止めた俺の手足にビリビリ来てるぜ…!」

 

「お前もな。流石だぞ、未来から来たカカロット!!」

 

「…正直よ、嬉しくなっちまうよ。オメエ等みてぇなヤツが、この世界にゃイッパイ居るんだろ? そのオメエ等が揃って褒めまくるターニッブってヤツ。俺も闘ってみてぇなぁーー!」

 

 血に飢えた獣のように凄惨に、歳を重ね落ち着いた老獪さを併せ持つ悟空(GT)にブロリーとピッコロは同時に笑みを返しながら、背に冷たい汗をかいた。

 

(強い。俺たちの世界のカカロットよりも数段ーー!?)

 

(分かってはいたが、コレが真に目覚めた未来の悟空か。精神と時の部屋でやりあったリューベに匹敵している)

 

 自分達のスピードとパワー、極限にまで高めた真の一撃は引けを取らない。

 

 ーーしかし体の動きが、技のキレが、咄嗟の判断力が、未来の悟空は他の戦士達よりも数段上だ。

 

 この世界の悟空を知るが故に、経験を重ねた老獪さと知恵から生まれた予測対応能力、更に磨き抜かれた洞察力は手がつけられない程に厄介だと気付く。

 

「退け、ブロリー! ピッコロ!!」

 

 声がかかるよりも先にピッコロとブロリーは高速移動で悟空(GT)から離脱。

 

 悟空(GT)の目の前には、サイヤ人の王子ベジータが両手を広げてから前方で左右に手首を合わせて突き出している。

 

「ファイナルーーフラァアアアッシュゥウウ!!」

 

 真・超サイヤ人の無限の気を利用して一瞬でマックスパワーを練り上げ放つ。

 

「ーーベジータ。オメエも、流石だな」

 

 目の前に迫る黄金の光線を前に、悟空(GT)は右手をゆっくりと広げて強烈な青い光を掌に生み出すと振りかぶって突き出した。

 

「超ーーかめはめ波ぁあああ!!」

 

 片手で放たれた青い光は、ベジータの光とぶつかり合うと二人の中間まで押し返して爆発した。

 

「フン。やはり、片手でフルパワーのかめはめ波を撃てるようだな。化け物め!!」

 

 口では罵りながらも、口許は愉快げに笑みを浮かべてベジータは邪悪に悟空(GT)を見上げる。

 

「そう言うなよ? こっちはオメエ等より歳食ってんだ。そう簡単に超えられちゃ、たまんねぇよ」

 

 悟空(GT)もまた、サイヤ人の闘争本能そのままの野生的な笑みを返している。

 

 背中に緑色を基調とした龍が刺青のように浮かび上がり左手に青い光を振りかぶってーー。

 

「ーー!?」

 

「そらよ、ベジータ!!」

 

 放たれた超かめはめ波は、問答無用で相手を行動不能にする威力を示しながらベジータに迫る。

 

「チーー!」

 

 構えを取るベジータの前に無地の山吹色の道着を着た背中が映る。

 

「ーーベジータさん。ここは俺にやらせてください」

 

 現れた男の言葉に、ベジータはニヤリと笑みを返すと構えを解いて腕を組んだ。

 

 同時に悟飯が両手を腰だめにたわめて、青い光を練り上げる。

 

「超ーーかぁ、めぇ、はぁぁぁ、めぇぇぇーー!!」

 

「! この世界の俺?」

 

 そう言いながら、先の自分にあった左胸の「悟」マークがないことに気付く。

 

「いや、アレはーー!?」

 

「波ぁああああっ!!!」

 

 目を見開く悟空(GT)の前で、かつて父を超えた迫力を取り戻した息子ーー悟飯の両手が突き出されて光を押し返してきた。

 

 二つの光は、互いの中間に迫ると先のベジータとの撃ち合いと同じように爆発、相殺した。

 

「まさか、オメエは。悟飯?」

 

 驚きに目を見開く悟空(GT)に向かってニヤリと超サイヤ人2の悟空そっくりの悟飯が笑みを向けてきた。

 

「驚きました? 真・超サイヤ人になると、父さんの超サイヤ人2ソックリになっちゃうんですよ」

 

「ーーサイヤ人の血を限界まで引き出した悟飯の姿だ。俺やテメエにソックリだろ、カカロットよ?」

 

 悟飯の肩を掴み、同じく超サイヤ人2になった自分ソックリの真・超サイヤ人が野生的な笑みを浮かべてくる。

 

 額の赤いバンダナが風になびき、緑色の戦闘ジャケットを着た左頰に傷のある男。

 

「…父ちゃん。アンタも真・超サイヤ人になれるんか」

 

「そゆこった。精々ーー楽しませろ! 息子よぉ!!」

 

 瞬間、父バーダックが目の前に現れる。

 

(動きが、他の奴らより一段鋭い!?)

 

 その動きに悟空(GT)は無意識に反応していた。

 

 左右の拳が、目の前に迫る。

 

 ノーガードであった悟空(GT)は、右手を顔の前に上げて左拳の手首をつかみ、左手で右拳を掴み止めた。

 

「ーーあっちの悟空の両手を塞ぎやがった!」

 

「さすが、バーダックだぁ」

 

「ピッコロ、ブロリー! 後に続け!!」

 

 ピッコロ、ブロリーにベジータが叫び、高速移動で悟空(GT)に打ち込む。

 

 バーダックが睨みつけた未来から来た息子は、不敵な笑みを浮かべている。

 

「…テメェら、気を緩めるな! 反応してるぞ!!」

 

 瞬間、悟飯がバーダックの脇を通り過ぎざまに告げる。

 

「反応されていようが、攻めなきゃ勝てない! チャンスならモノにしてやる!! 全力で行きますよ、父さん!!」

 

 勇敢な息子・悟飯の姿に、悟空(GT)はニヤリと笑みを返すと掴んでいたバーダックの両腕を離し、その場で回転し始める。

 

「ーーつぅおりゃあ!!」

 

 右脚を大きく振りかぶり、回し蹴りを放つ。コマのように回転した悟空(GT)は、極々小規模の竜巻と化し突っ込んだピッコロ達4人を吹き飛ばそうとする。

 

 だがーー。

 

「だだだだだぁ!!」

 

「おぁたたたぁ!!」

 

「うぉああああ!!」

 

「はぁぁあああ!!」

 

 蹴りを捌きながら悟飯、ピッコロ、ブロリー、ベジータの4人が一斉に己の両手足を打ち込んだ。

 

 瞬間、竜巻からの攻撃を捌きながら、4人の戦士のラッシュが打ち込まれ、光の波紋がいくつも発生する凄まじい乱打戦になった。

 

 誰も彼も、悟空(GT)の強さから一歩も退かぬという強い意志を感じる打ち込みだった。

 

 悟空(GT)の頬には汗が浮かび上がり、息が上がり始めている。確実に追い込まれているのは、間違いない。

 

「まったくーー打たれても構いなし、かよ。熱くさせるじゃねえか、テメェら!!」

 

 バーダックの言葉通り、四方を取り囲んで左右の両手足から打撃を放って尚、悟空(GT)の勢いは止まらず速度を上げていく。

 

 この技こそは、悟空の脚技の中でも最強の威力とラッシュ力を誇る激烈連脚。

 

 更に悟空(GT)当人すら知らないが、背中に現れた神龍と一体化したことにより、六星龍の回転の勢いがプラスされている。

 

 言うなれば、旋風激烈連脚である。

 

 紙一重で捌いた蹴りからは真空刃が放たれ、打ち込む悟飯達を瞬く間に切り刻む。

 

 それでも、ベジータは。ブロリーは。ピッコロは。悟飯は、一歩も退かずに拳と蹴りを打ち込む。

 

 いかに悟空(GT)と言えど、回転の勢いを増すには限度がある。回転が止まってしまえば、一気に畳み込まれるだろう。

 

 それを見抜いた上で、4人の闘士は真っ向勝負を挑んで来ている。

 

「回転の勢いを止めたら、俺に勝てるっていうのか? なら止めてみろよ!!」

 

 一気に黄金の炎を纏い、気を高めて回転速度を上げる悟空(GT)にベジータ達も気を引き上げ、挑む。

 

 激しいせめぎ合いは、僅か10秒。

 

 全員がボロボロになる渾身の連撃は、悟空(GT)最強の脚技を相殺した。

 

 悟空(GT)の回転が止まると同時に悟飯達のラッシュも限界だった。

 

 両手足が真空刃でボロボロになり、これ以上打ち込めば息が上がり、隙を見せてしまう。

 

「止めやがった。コイツら、俺の激烈連脚を!?」

 

 瞬間、悟空(GT)の背中に悪寒が走り、振り返るとそこには。

 

「創造の前に、破壊あり!!」

 

「これでーー最後だぁあ!!」

 

「龍ぅうう拳ぇえええん!!」

 

 紫色の神の炎を纏うビルス、黄金大猿の幻影を拳に宿すバーダック、黄金龍の幻影を拳に纏う悟空。

 

 3人からの真っ向勝負に悟空(GT)の背に長い黒髪に赤い猿の体毛を生やした剥き出しの上半身を晒す超サイヤ人の幻影が浮かぶ。

 

「かぁぁ、たまんねぇなぁあ。ホントによぉ!!」

 

 そしてーー悟空(GT)の右拳に黄金の大猿と神龍が宿っていた。

 

「龍拳ーーーー!!」

 

 3人の真の一撃に向かって己の右拳を、振りかぶりぶつける。

 

 極限の一撃を放った4人の顔は、凄絶な笑みを浮かべていた。

 

 強烈な光が全てを飲み込んで行き、やがて四人の姿は光の向こうへと消える。

 

(……なるほど。これが未来から来た悟空さんの力、ですか)

 

 ぶつけ合う。

 

 全てを真っ向からぶつけ合う。

 

 真っ向から気をぶつけ合い、拳と蹴りを交換する。

 

 誰もが無邪気に、鋭い笑みを浮かべ、楽しげに飢えているかのように目をギラギラとさせて。

 

 血が舞い、身にまとうオーラに照らされてキラキラと宝石のように輝く。

 

 その美しさ、気高さはおそらく見ているものの心を震わさずにはいられない。

 

 かつての邪悪龍達の能力全てと身勝手の極意、超サイヤ人4フルパワーが備わった真・超サイヤ人悟空(GT)に対して、仲間たちと練り上げた技で力で真っ向勝負を挑む悟空やベジータ達。

 

 丸一日を要する激しい戦いは、やがて一人また一人と倒れ伏して行き、終わりの時を迎えようとしていた。

 

「…半端、じゃねぇ。こいつら、ホントに半端じゃねぇ」

 

 肩で息を切らし、ふらつく足元。

 

 気を抜けば、倒れてしまいそうな意識。

 

 全身に汗をかいて傷だらけの自分の肉体を見下ろした後、限界まで自分を追い込んだ戦士達の中で一人だけ立っている破壊神を見据える。

 

「素晴らしい強さだ。人の身でありながら、そこまで極めたお前の力に敬意を表する。そしてーー、よくぞ。よくぞ、この世界に来てくれた。未来の世界の孫悟空よ!!」

 

 肩で息を切らしていた自分と違い、破壊神ビルスは闘気を纏った瞬間に傷と体力が治っている。

 

(身にまとう闘気が、傷と体力を治してる? コレが破壊神の底力ってわけか)

 

「…僕を倒したければ、真の一撃しかない。もう分かっているな?」

 

 言うとビルスは両手を頭上に掲げ、恒星のように巨大で赤い光の球を生み出した。

 

「…さあ、見せてくれ。武の力のみで天に至り、純粋な魂は神龍とさえ融合する。そして、今ーー破壊神をも超えるお前の全力を!!」

 

「…行くぜ、ビルス様!!」

 

 黄金の炎のような闘気を身にまとい、悟空(GT)は全力の気を練り上げる。

 

 その輝きは、自分の知る孫悟空を更に磨き上げたもの。

 

 その強さは、限界などないのだと自分たちに告げるかのようなもの。

 

 震える。

 

 笑みを隠そうともせずに牙を剥き出しにしてビルスは両手を振り下ろした。

 

「…行くぞ、孫悟空ぅううっ!!!」

 

「…100倍! かめはめ波ぁああっ!!!」

 

 巨大な光球と。

 

 その光球に負けないほどに大きな赤い光線が両者の中央でぶつかり、音が消えて視界が白銀の世界に変わっていった。

 

 全てが終わり、瓦礫の山と化した闘場で。

 

 倒れ伏した戦士達の中から一人の男が立ち上がる。

 

 肩で息をしながらも、黄金に燃え上がる髪の男は両の足で己を支えて拳を握りウイスにふり返って来た。

 

「…ど、どんな、、、もんでぇ、、、!! 俺、勝っちゃったもんねぇ、、、!!」

 

 その背中に神の龍を浮かび上がらせ、猿のような尾を靡かせながら、半ば閉じた目を必死に開けて。

 

「お見事です。未来の悟空さん」

 

 その言葉にニヤリと笑いを返した後、黄金の炎は解除されて後ろ向きに悟空(GT)は倒れたのだった。

 

ーー魔界にて。

 

 コウモリのような翼を刃のように変化させて女魔王マーヤは横薙ぎに払う。

 

「ハッ!!」

 

 それに対峙するのは、愚直に鍛え抜かれた赤いオープンフィンガーグローブをはめている頑丈な拳骨。

 

「ーーッ!」

 

 刃と拳がぶつかり合う瞬間、青い光が弾けてマーヤの斬撃は完全に無効化され受け流される。

 

(……へぇ。この男、私の斬撃を素手で受け流したと言うわけ?)

 

「やるじゃない?」

 

 まぐれかどうかを確認するためにマーヤは右足のヒールの踵に刃を具現化させると新体操のように上半身を地面に仰向けに倒してブリッジをしながら蹴り上げる。

 

「エイッ!」

 

 すぐさまに体勢を整えて左手刀を突き出しながら背中の翼を螺旋に変化させて腕に纏わせ、槍のように変化させる。

 

 男ーーターニッブの受けはマーヤの期待を超えていた。

 

 左裏拳を相手に構えるようにして顎の前に置き蹴りを無効化した後、胸の前に移動させて手槍が当たる瞬間に拳骨を軽くぶつけて波動を弾く。

 

 光の粒子が弾けて波動は完全に相手の攻撃を無効化する。

 

「心眼・一心! 風の拳!!」 

 

 瞬間、ターニッブは右中段正拳突きをマーヤに放つ。

 

 両手で胸を抱くような姿勢を取り、更に背中の翼を鋼鉄の板のようにに変化させて腕を庇う。

 

 構わず拳を振り切るターニッブの真っ直ぐな目を見つめて、マーヤの第六感が寒気を背中に走らせた。

 

「……ッ!!」

 

 咄嗟に翼をロケットのバーニアのように変化させて火を吹かせながらバックステップする。

 

 鼻先で見切った拳には、青白い光が一閃されて禍々しい魔界の空気に一陣の清らかな風が吹いた。

 

「コレは……! 浄化したと言うの? 魔界の瘴気を?」

 

 青い瞳を見開いて驚くマーヤの前には拳を見切られたと言うのに爽やかに微笑む黒髪黒目のターニッブが真っ直ぐにこちらを見ていた。

 

「風の拳を見切るとは。やるな……!」

 

「……只の人間ではないと思っていたけれど。あなた、想像以上のようね」

 

 睨み合う両者は、構えを取る。

 

 ターニッブの両脚を中心に、青い風の波動が吹き上がり渦を巻いて天に昇っていく。

 

 魔の瘴気を払い、何処までも吹き抜ける力強く清らかな風を前に魔の王は静かに瞳を細めた。

 

「ねぇ! 楽しそうなひとだね!!」

 

 その時、無邪気な声が辺りに響く。

 

 マーヤが妖艶な笑みを浮かべて振り返ると、そこには無邪気な笑顔を浮かべた紫色のロングヘアーに赤いコウモリの翼を持ったマーヤそっくりの美女が浮かんでいた。

 

「よく来たわね。丁度、あなたを呼ぼうと思っていたところよ。クウマ」

 

「マーヤがアタシを呼ぼうなんて。本気で強いんだね、そのヒト」

 

 真紅の瞳をキラキラと輝かせてクウマと呼ばれたマーヤに瓜二つの存在は、興味深そうにターニッブを覗いてくる。

 

「……この気。体は二つあるが、同じ気か?」

 

「そんなことまで分かるの? まあ、貴方は鋭いものね」

 

 微笑みながらマーヤはクウマを隣に立たせてターニッブに微笑みかける。

 

「彼女は私の中にあった余分な魔力の結晶よ。私は元々、強大過ぎる力を持っていた。幼い私では、扱いきれない程に強力な魔力をね」

 

「それをアタシ達の父であるテクマが二つに別けた。その別けられた魔力の塊が人格と肉体を持ったのがアタシ」

 

 ターニッブは左右の美女を静かに黒い瞳でい見つめた後、拳を握り構えを取る。

 

「ここまで話せば分かるわね? 私とクウマが融合した状態が本来の私の実力。貴方に耐えられるかしら?」

 

「只の人間なのにマーヤがアタシを呼ぶくらいに強いんだもの。あなた、すごいね!」

 

 妖艶な笑みを浮かべるマーヤに邪気のない笑みを浮かべるクウマ。

 

 同じ容姿をしているが、二人の雰囲気は明らかに異なる。

 

「さあ、始めましょう? 私の本当の全力、あなたで確かめさせて」

 

「ドキドキする。胸が、キュンキュンしてくるよ! もう我慢できないなぁ」

 

 二人の女は気を纏い、ゆっくりと左手を伸ばして天に掲げる姿勢を取ると重なった。

 

 瞬間、マーヤの気が爆発的に上昇し、目の前には恐ろしい気を纏った存在が生まれる。

 

「……この、凄まじい気は!」

 

 妖艶な唇に赤い血のような朱が差す以外、見た目にはマーヤ一人の頃と変わりない。

 

 だが、それでも感じる気の量は桁が変わっていた。

 

「さあ、ターニッブ。あなたの力をもっと見せて? 勿体ぶらずに限界いっぱいまで出し切っちゃってよ。あなたの全てを受け止めてあげる……!」

 

 恋人にねだるように、甘えるようにマーヤは妖艶に可憐に声を上げる。

 

 並みの男ならば、即座に骨抜きにされたであろう強烈な色香と美貌。

 

 まさしく男の夢をさすらうサキュバス(夢魔)そのもの。

 

 その色香に惑わされることなく、ターニッブは爽やかな笑顔を返すと拳を硬く握りしめた。

 

「……ならば、お前の全力に俺もこの拳で応えよう!!」

 

 頷くターニッブの瞳は黒の瞳孔が拓き、翡翠色に変じていた。

 

 髪は黄金に燃え上がり天に向かって逆立つ。

 

 その輝きの美しさを前に、マーヤは目を微かに細めた。

 

「なるほどね。ダ―ブラの一族が、黄金に頭髪が変化する人間に負けたと聞いていたけれど。あなたのことなのね? ターニッブ」

 

 ダ―ブラ一族の荒くれものアブラ、魔族以外の女の腹を孕み袋にして自分の陣営の強化を図った策略家のカタブラを物ともせずに倒したと言う噂の人間。

 

 暗黒魔界という広い世界の中でも、有名な話だ。

 

「……ターニッブ。あなたの力、見定めさせてもらうわよ」

 

「受けて立とう!!」

 

 構えを取る両者は、一気に互いに向かって大地を蹴って襲い掛かる。

 

 頑強に握りしめられた正拳と、嫋やかな白い貫手が同時に相手に向かって繰り出された。

 

 凄まじい音とともに相殺する二人の一撃。

 

 魔界の荒廃した台地が、二つの強大な力によって割られて掘り起こされ、クレーターを作り上げていった。それほどの惨状を辺りにもたらした男と女は、互いに無傷で向かい合っている。

 

「私の魔力をーー無効化したと言うの?」

 

 青い瞳を見開いて魔界でも並ぶ者なしとされる本来の自分の力を防いだ相手にマーヤは自覚せずに声を上げていた。

 

 真っ直ぐにこちらを見据えるのは、強い光を宿した黒の瞳孔が浮かんだ翡翠の瞳。

 

 多くを語らず、ただ彼の者の魂の熱さを現すように瞳の奥が燃えている。

 

「これほどのーー私にも匹敵する強大で純粋な力を、人間が持っていると言うの? いったい、この男……!」

 

 踏み込んでくる。

 

 愚直に、真っ直ぐにーー。

 

(踏み込みが速い!!)

 

 一瞬でマーヤの懐に入り込み、左の拳をぶつけてくる。

 

 右手で受け止めるマーヤだが、止めた手は一瞬だけ痺れている。更に踏みこんでくるターニッブにマーヤの眼が怪しく輝いた。

 

「……悪いコね?」

 

 髪に魔力を込めて咄嗟にターニッブの目の前に針のように突き出す。

 

 真っ直ぐに踏み込んできたターニッブに躱す術はない。まともに目を取られる。

 

 そのはずだったーー。

 

「……!?」

 

 マーヤには、確かにターニッブが自分の魔力を帯びた髪に瞳をえぐられるのが見えた。

 

 だが、髪は何もない空間を突き刺している。

 

(あのタイミングで避けた? どうやって!?)

 

 混乱に目を見開いて凝視していると自分の真下に潜り込むように頭を下げながら踏み込んで来ているターニッブの姿が映った。

 

「くぅ!?」

 

 悲鳴に似た声を上げながら両腕を腹の前に折り畳むマーヤ。

 

 そこへ間髪入れずに強烈なターニッブの右拳が叩き込まれていた。ボディへの強烈なアッパーはマーヤの腕で覆われた水月にさえ衝撃を通す。

 

 だけにとどまらず、踏ん張っていた彼女の両足を地面から天に向かって引っこ抜くように浮かび上がらせた。

 

(ーー馬鹿な!? 完全に止めたのに!!)

 

「真!!」

 

 ターニッブが静かにつぶやきながら左拳を振りかぶって宙空に打ち上げられたマーヤの顎に向かって跳び上がりながら突き上げてくる。

 

「昇ぉお龍ぅううう拳ぇええええん!!!」

 

「ーーっ!?」

 

 背中の羽がマーヤの意思を反映するかのようにロケットのバーニアの形を取り、幻影を残しながら超高速でターニッブの背後へと移動。

 

ーー ヴァルキリーターン!!

 

 ターニッブの昇り龍は、天を衝いて空振る。

 

 くるりと天頂で身を翻しながら着地するターニッブの目の前に、超高速で移動したマーヤが立った。

 

「やるな。あのタイミングで見切られるとは思わなかった……!」

 

「……よく言うわね。これだけの腕を持っていながら」

 

 掛け値なしのターニッブの称賛にマーヤは瞳を鋭く細めるだけで返す。

 

 通常、人間でなく全ての生物に言えることだがーー。

 

 目を咄嗟に狙われれば立ち止まる、目を瞑る、回避する、などの反射行動があってしかるべきだ。

 

 だが、この男は目の前に迫る喰らえば失明は免れない一撃を前に踏み込んできた。

 

(この男。……私の攻撃を前に怯むことさえしなかったというの?)

 

「……生意気ね」

 

 背中につたう冷たいものは無視して、胸の高鳴りに身を任せる。

 

 楽しいと思えたのは、何百年ぶりだろうか?

 

 真っ向勝負では分が悪いと、彼女の中の何かが告げている。

 

(ガードもフットワークも、駆け引きもせずに。ただ純粋に殴り合う。それがあなたの望みなのね? けれど、先の拳を見せられたら、付き合うわけには行かないわね)

 

 おそらく負けたとしても楽しめるのは間違いない。

 

 退屈とは無縁の高鳴りを感じるだけでも充分だ。

 

 だが、彼女はもはや、それだけでは足りなかった。

 

 どんな手を使っても、目の前の男を屈服させたくなったのだ。

 

 男の行動は単純だ。ただ真っ直ぐに踏み込んで殴るだけ。

 

 攻撃はブロッキング(心眼)と呼ばれる技で弾き飛ばしながら突っ込んでくるが、攻撃のモーションに入ればブロッキングは使えない。

 

(あえて踏み込ませる? それとも、こちらから攻め込もうかしら? 予測か、先手か。どちらが良いかしらね)

 

 妖艶な光を宿した瞳は興奮に濡れ、口元は怪しく微笑む。

 

 だが、ターニッブは構わない。

 

 罠を仕掛けられようが、先手を取られようが、自分の出来ることは同じだ。

 

 ただ真っ直ぐに踏み込んで殴り、打ち勝つ。それだけだ。

 

「この道をーー進むのみ!!」

 

 これにマーヤが両手を広げて微笑んだ。

 

「いいわよ、全力でーーおいで。貴方の全てを受け止めてあげるわ」

 

 拳を握り、踏み込んでくるターニッブにマーヤも笑みを返す。

 

(真っ直ぐ(右ストレート)二つ)

 

 右正拳突きがマーヤの腹と顔に向かって放たれる。

 

 左手でボディに来た一撃目を受け流し、顔に放たれた二撃目を右に体を移動させて見切る。

 

 マーヤも右の貫手を返すもターニッブは頬に掠らせながら踏み込んでくる。

 

 踏み込んできた右脚に向かってマーヤは左足を放ち、地面が踏み込まれる前に踵を掬い上げにかかる。

 

 バランスを崩すターニッブに、出した左脚をそのまま顎に向かって放つマーヤ。

 

 咄嗟にターニッブは右手を顎の前に挟むも、そのまま蹴り上げられる。

 

 無防備に宙に吹き飛ぶターニッブに向かってマーヤの眼がギラリと光った。

 

「ーーおしおきよ」

 

 空中に跳び上がり、先ほどのように翼をバーニアに変えるとターニッブの身体に突進、強烈な右の肘を背中に叩き込む。

 

 それだけでターニッブの身体は慣性に逆らって宙に止まる、マーヤが己の魔力を全開にして彼の身体を固定しているのだ。

 

「クウマ!」

 

 マーヤが自分の分身の名を叫ぶと、ターニッブの身体を挟んだ向こう側に紫色の髪に赤いコウモリの翼を持ったマーヤと瓜二つの分身が現れる。

 

「あなた、本当に凄かったよ!」

 

「ーーいくわよ!!」

 

 無邪気な笑顔と妖艶な笑みを前後から向けられたのち、強烈なラッシュが前後から放たれる。

 

 無防備なターニッブは、攻撃を捌くことも流すこともできずにまともに、その体躯に叩き込まれていく。

 

「「ダークネスイリュージョン!!」」

 

 強烈なサマーソルトキックで上空に跳ね飛ばされた後に、宙空へテレポートしたマーヤとクウマによって更に地面に蹴り落とされる。

 

「気持ちイイでしょ?」

 

「楽しい時間をありがとうね!」

 

 強大な地響きと衝撃を放ちながら、地面に落ちたターニッブに向かってマーヤは、再びクウマと一つになると右拳を握って真っ直ぐに己の頭の上にかざし左手を右手首に添えて強大な魔力を練り上げる。

 

「とどめよ、ターニッブ!!」

 

 強烈な淡い緑の光を前に、土煙が登っていた地面から黄金の炎が吹き上がって吹き飛ばす。

 

「……その闘志。まだ終わらないのね」

 

 マーヤが興奮に微笑む中、ターニッブは腰だめに両手をたわめて青い光を練り上げる。

 

 強烈な青い光の風が、マーヤの魔力に対抗するように高まっていく。

 

「決着をつけましょう? ソウルイレイザー!!」

 

 無数のコウモリがマーヤの前に出現し、マーヤと共に一斉に緑色の光線を放ってくる。

 

 強烈な光のシャワーを前に、ターニッブの両腕から金色の電刃が疾(はし)る。

 

「電刃ーー!!」

 

 目の前に迫るのは無数の魔の光。

 

 この辺り一面を焦土と化して尚、飽き足らない程の一撃を前にターニッブの瞳に怯えはない。

 

 昂る闘志は無限に。

 

 天下を貫く風は、何処までも吹き抜く。黒の瞳孔が浮かんだ翡翠の瞳が見開かれ、乾坤一擲の気合を放った。

 

「波動ぉおお拳ぇえええええええええんっ!!!」

 

 両手を前方に突き出して、電刃を纏った強烈な野太い波動の光が無数のマーヤの光とぶつかる。

 

 目を見開いたのは、マーヤ。

 

「バカな……! 先程の一撃(真・昇龍拳)を、気(波動)でも再現できるというの!?」

 

 自分の無数の光が、束ねた力の全てが、たった一本の光に押し負けていく。

 

 自分の魔力はターニッブの波動と変わりない。

 

 そこに無数のコウモリ(眷属)の力を加えれば単純に考えればターニッブの波動を大きく上回っている。

 

(なのにーーなぜ!?)

 

 その問いに応えるようにターニッブは静かにマーヤを見据えた。

 

「……! タァアアアニッブゥウウウウウ!!!」

 

 その瞳に咆哮を返しながら、マーヤはターニッブの放った光に飲み込まれていった。

 

 ターニッブは、構えを取ったまま静かに上空を打ち貫いた己の波動を見据えると視線を脇に移動させる。

 

 そこには無数のコウモリ達に身体を運ばれ、気を失った美女が二人。

 

 仰向けに寝かされていた。

 

 コウモリ達は、そこで力尽きたかのように光となって霧散する。

 

 完全に魔力が尽きたのを確認して、ターニッブは構えを解くと静かに息を吐いた。

 

「……際どい戦いだった」

 

 黄金の炎が霧散し、元の黒髪黒目のサイヤ人へと戻るのだった。

 

ーー全王の間にて。

 

 この宇宙で最も硬い物質・カチカッチン鋼。

 

 全王の目前で行われた凄まじい激闘により無残に破壊された武舞台は、この物質で構成されていた。

 

 これが何を意味するか、分かるだろうか?

 

 この闘いは、地上や宇宙ーー世界で起こってはならない正に神々の争いであったと言うことだ。

 

「う~ん。やっぱり墓守くんは、強いのね~! ゴスイのねぇ~!!」

 

 倒れ伏した人影は全て、宇宙を司る破壊の神々。

 

「……! なんという強さ……!」

 

「全ての宇宙の破壊神を相手に一人で……!」

 

 ヴァドスやクスといった天使たちが、絶句する程の実力。

 

 闘技場の場にてただ一人、立っているのは黄金の髪に炎のような黄金と真紅のオーラを纏う鬼神。

 

 濃紺の道着に荒縄を帯の代わりに腰に巻き、素手にも荒縄を巻いている。

 

 両脚にはわらじ草履を履き、首には巨大な数珠を巻いている。

 

 真・超サイヤ人リューベである。

 

「……素晴らしい! お見事です。サイヤの鬼神どの」

 

 掛け値なしに、小さな少年のような見た目の神が手を叩く。

 

 彼こそは全ての天使を束ね、全王に仕える最強の存在。

 

 リューベは静かに最強とされる存在へと目をやる。

 

「各宇宙の天使さんは、ご自分の宇宙の破壊神様をお願いします」

 

 彼ーー大神官もまた、微笑みながら天使たちに向かって告げ武舞台に降りる。

 

 天使たちは、大神官の言葉に従い観客席へと破壊神たちを移動させてから回復させる。

 

 起き上がる破壊神たちを放って静かに見合うサイヤの鬼神と全王に仕える大神官。

 

「……ぐ! なんて化け物だ……!」

 

「ベルモットさま。ご無事ですますか?」

 

「……! マルカリータか。ヤツは……!」

 

 首を横に振りながらピエロのような見た目の破壊神にツインテールの女天使は武舞台を指差す。

 

 そのころには他の宇宙の破壊神たちも見つめている。

 

 人とは思えぬ鬼と少年のような神官の対峙を。

 

「……リューベさん。あなたの願いに習い、この私がお相手いたしましょう」

 

「……」

 

 無言で構えを取るリューベだが、その前に赤い界王神の服を身に纏う逆立った黒髪のサイヤ人が現れる。

 

「大神官さま。私も参戦させていただいてもよろしいですか?」

 

「……なるほど。全王様に認められたあなたも、この場に立つに相応しいかもしれませんね」

 

 微笑みながら、赤い界王神の服を着た長身のサイヤ人を見据える大神官。

 

 穏やかにして不敵な笑みを浮かべた長身の男にリューベが瞳孔が浮かんだ翡翠の鬼眼を向ける。

 

 瞬間、男の銀色の瞳が黒の瞳孔が浮かんだ翡翠眼に変わり、黒髪が黄金に燃え上がった。

 

 同時に白金色の炎のようなオーラと黄金色のスパークを身に纏う。

 

 これに第六宇宙のシャンパが目を見開く。

 

「! なんだと!? あの界王神の服を着たサイヤ人。身勝手の極意と真・超サイヤ人の力を同時に出したっていうのか!!?」

 

「……あのサイヤ人。いったい何者……?」

 

 ヴァドスもまた目を鋭く細める。

 

 これに第10宇宙の天使クスが目を見開いた。

 

「この気……! まさかザマスさん? いえ、ザマスさんは孫悟空という人間と融合しゼノさんとなった。では、彼はいったい?」

 

「……! ゴワスめ、何かを知っているようだな」

 

 象のような見た目の破壊神ラムーシが、自分の相棒である老いた界王神を見つめて目を細める。

 

 ゴワスは、自分にも何も言わないが明らかに何かを知っているようだった。

 

「神をガイドする天使たち。それを総括する最強の神官。武において貴方を上回るものは居ない、という」

 

「……」

 

 静かに笑みを返す大神官に男ーーサイヤが笑みを強めた。

 

「孫悟空たちだけで最強を決められるのは、つまらん。真の最強は、戦闘民族の主神サイヤが頂く!! 覚悟はよろしいか。天使の長大神官! サイヤの鬼神リューベ!!」

 

「……サイヤの主神とサイヤの鬼神の実力。それが、どこまで私に近づけるのか。見定めさせて頂きましょう」

 

「我は、ただーー拳を極めるのみ!!」

 

 三つの力が同時に噴き上がり、全王の間にて激突した。




注意:大会は、まだ始まっておりません。

次回も、お楽しみに( *´艸`)
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