惑星フリーザの司令塔の中で、二つの邪悪な力が向かい合っていた。
赤い軍帽に軍服、黒いマントに銀色の肩当てとブーツを履いた魔人は青い光をユラユラと全身から吹き出させている。
その目にあった黒い瞳は一瞬現れると、白く濁った光が強膜から放たれて黒瞳を消していく。
フリーザは長身痩躯の魔人の姿を見て、静かに紅の瞳を細めた。
「…普通のサイヤ人ではない。孫悟空やターニッブとも、第六宇宙のサイヤ人達とも違う」
宇宙の帝王の勘が告げている。
先ほどセルやブウと遊んだ連中も、まだまだ実力を隠していると。
それらを束ねる得体の知れないサイヤ人の肉体(からだ)を持つ目の前の存在は、フリーザをしても未知である。
「…どうした? 宇宙の帝王と呼ばれた貴様が、たった1匹のアリに怯える臆病者か?」
口の端を歪めて嘲笑う魔人ーーボガを前にフリーザは応えた。
「…向き合った時に感じる。この感覚は、サイヤの波動に近い。あなたーー波動に肉体を乗っ取られてしまった存在ーーということですか?」
その言葉にボガは笑みをたたえたまま、応えた。
「…フン。このボガ様を貴様等如き下等な生命体が理解できると思うか?」
全身から放たれるオーラが弾けてボガの全身が七色に光って消えると同時に、フリーザの懐に現れた。
フリーザが反応して右拳を顔に繰り出すと、ボガは右手で簡単に掴み止める。
フリーザの紅の瞳とボガの白目が睨み合う。
瞬間、両者は高速移動で姿を消すと、目にも映らぬ動きで秒間100を下らない打撃の応酬を繰り広げ始めた。
星を纏める司令塔の壁をぶち破り、空へと戦いの場を移動させながら、フリーザは目の前の魔人を見据える。
自分の拳を簡単に掴み止めた。
いや、その前に魔人はフリーザが思わず拳を振り切らねばならない程の相手だった。
目の前に現れた魔人に意識でなく身体が反応した拳であったのだ。
(この私が、認識する前に拳を繰り出さねばならぬ程の動きをした。しかも、その拳を簡単に掴み止めた)
拳と蹴りを絶え間なく打ち合いながらフリーザは思う。
(このフリーザを前に、これ程のヤツがまだ居たのか)
正面からの殴り合いで、フリーザと対等に渡り合う魔人を名乗る正体不明のサイヤ人を見据えてセルが鋭く目を細めた。
「…フリーザと対等に打ち合えるとは。中々の強敵、と言うべきか」
「どうかな? フリーザは、まだ金色にすらなっていない。その判断は早計だろう」
ブウが応えながら、フリーザとボガの戦いを睨み付ける。
あのボガという魔人が得体の知れない力を持っているのは間違いない。
問題は、それがフリーザのゴールデンフリーザよりも上か下か、それが肝心なのだ。
「グゥッ!?」
鈍い打撃音が響くと同時、ボガの右中段回し蹴りが姿勢を低くしていたフリーザの横顔に炸裂。
後方に仰け反るフリーザの前にボカが凄まじい勢いで踏み込んでくる。
即座に首を戻して右拳を返すフリーザだが、拳は空を打ち抜く。
目を見開くフリーザの頭上から両腕を組んだ姿勢でボガの両足を揃えた靴底が降ってきた。
地面に首から叩きつけられるフリーザ。
即座に頭を左手で掴まれて地面から引き上げられると、ボガの右手から紫色の陽炎が生まれて全身を紫炎に包まれながらフリーザは後方へ吹き飛ばされる。
「ぐわぁああ!!」
巨大な建造物を打ち抜いてフリーザが背中から地面に叩きつけられる。
その目の前に魔人ボガは、ゆっくりとマントを翻してフリーザの下へ歩いてきていた。
「…セル」
「ああ…」
ブウとセルが互いに頷き合い、拳を握って構えをとる前にボガの部下である二人組が立ちはだかる。
「…先程の続きを始めようか。我が美に酔いしれるがいい、セルとやら」
「何処に行きやがる、触覚野郎。大人しく俺にぶち殺されとけや!!」
目の前に仮面の貴公子とボクサー崩れが立ちはだかる。
「…なるほど。私たちの相手は貴様らと言うわけか? 仮面の貴公子くん」
「舐められたものだな。サイヤ人崩れの魔人に付き従う有象無象どもが。かつて界王神を恐怖させ、宇宙を震わせた本物の魔人に挑むだと?」
構えを取る二人の異形に褐色の肌のサイヤ人のベルナルが赤いボクサーグローブを付けた拳を合わせる。
「ぺっ…おもしれぇ。なら、本物の魔人サマがどんなモンか、見せてみろやぁ!!」
瞬間、風を巻いて一気にベルナルがブウの前に踏み込む。
ブウは薄紅色の神域の気炎を纏い、拳を握ってストレートに合わす。
地面が砕け、互いに睨み合う。
「…超サイヤ人でも無いのに、神レベルの力を解放した私の拳を止めるーーこの強さ。質は正反対だがターニッブ達と同じ類。心の力を使う拳だな」
ブウが静かに問いかけるとベルナルが淵が黒い紅の気を纏いパワーを引き上げる。
「…ぬぅおぁあああ! 猿真似野郎、このパワーを真似れるか!?」
「ぬ!?」
完全に拳を打ち付け互いに止めた体勢からベルナルのパワーが膨れ上がり、ブウを後方へ吹き飛ばした。
「なんだと!?」
「ギガトンンンッ! ブロォオオオッ!!」
ブウの横頰に向かって体を捻りながらダッシュの勢いをプラスして拳を回転させるコークスクリューブローが叩き込まれたのだ。
ブウは白目を剥きながら後方の地面へと叩きつけられた。
「ブウ!?」
セルが思わずブウを向く。
瞬間、超サイヤ人とは雰囲気が違うものの金色の髪をした仮面の男ーーカルソッツがスピードで他の追随を許さないと豪語するセルの背後を取る。
「チィッ!?」
瞬間、セルが舌打ちしながら後ろ回し蹴りを天に向けて放つ。
「ほう、よく反応したなーー」
目の前に迫るセルの蹴りをカルソッツはニヤリと笑みを浮かべながら上空に跳び上がる。
瞬間、セルも高速移動で姿を消す。
カルソッツとセルーー両者の本気のスピードは全くの互角。
「…このセルについて来れるとはな。確かに素晴らしいスピードだ。だが、スピードだけで私に勝てるとは思わんことだな」
「…フフフ、ならばスピードだけではないことを我に見せてみるがいい!!」
セルのハイスピードでの攻防は、たとえフリーザでも霞んで見える。
それに苦もなくついて行く時点でカルソッツという戦士は、尋常ならざる実力者だ。
だがセルは気付いていた。
「…貴様のスピードと体術は素晴らしい。だがーー」
高速で移動しながら距離を取り、セルは左手を前に突き出した。
「…気功波の類は、どうかな?」
無数に放たれた連続の光弾は、マシンガン以上の連射性である。
カルソッツは仮面の奥で翡翠の目を細める。
「…フン、この私にその場凌ぎにすらならない細やかな気弾などが通じると思ったか。身の程を知れ、醜い異形め!!」
瞬間、加速して一気にカルソッツはセルの気弾に真正面から向かってくる。
いな、擦り抜けてきた。
「…コイツ!?」
「…我が力を甘く見たこと、その醜い血で贖うが良い!!」
右手の鍵爪から紫色の光が放たれ、一閃。
強烈な衝撃と斬撃に、セルのガードが血飛沫を上げながらこじ開けられ、カルソッツが宙返りしながら蹴りを顎に放ってきた。
まともに喰らい、上空へと吹き飛ばされるセルに向かい仮面の奥で狂気の笑みを浮かべながらカルソッツが飛び上がってくる。
「…コイツ!!」
蹴りの威力が相殺され、自由が効くようになる天頂でセルは舞空術を使って身体を停止させると向かいくるカルソッツを睨み付けて右手の人差し指と中指を揃えて立てると肩口から手裏剣のように緑色の光弾を放つ。
光弾は仮面の眉間に叩き込まれ、無様に蝶は地面へと叩きつけられる。
そのはずだった。
乾いた音と共に割れたのは仮面のみ、その奥にいた男はセルの喉元に迫っていた。
(私の技を見切っただと!?)
爪が一閃され、セルの胸板を切り裂いた。
「ぐわぁあ!!?」
「…くっはははは!!」
地面に背中から叩きつけられるセルと、その前方で着地するカルソッツ。
ブウとセルが同時にダウンさせられたのを離れた位置からフリーザも静かに見据える。
「…なるほど。この魔人に勝るとも劣らない実力者、というわけですか。あちらのお二人も。セルさん達の良い遊び相手になりそうですね」
「フン、このボガ様の力を他の有象無象と比べるとは。貴様は見る目がないようだな」
薄ら笑いを浮かべた魔人の姿にフリーザは不敵な笑みを刻むと立ち上がる。
紫色のオーラが金色に変わり、膨れ上がる。
光がおさまると金色の肉体へとフリーザは変異した。
「…ゴールデンフリーザーーです。あなたに私を止められますかね、サイヤの魔人さん」
「フン、笑わせる」
魔人ボガはターニッブの波動や超サイヤ人ブルーのオーラと似て非なる青白い炎を全身に纏う。
その形状は神の域に達したフリーザと酷似しており、フリーザの目は鋭く細まった。
「…なるほど。変身もせずに神域の気を纏えるというわけですか」
「ふん、超サイヤ人のことか? あんなもの、我が力の前には更なる高みへと至る糧に過ぎん。超サイヤ人神も真・超サイヤ人も、全ては我が力ーーサイコパワーの糧よ」
「…サイコパワーですか。面白い、私も超能力を使えるんですよ。一つ、力比べといきましょうか!!」
手近にあった瓦礫を浮かばせながら、フリーザがボガに笑いかける。
「…フン、只のサイキックと我がサイコパワーの違いを教えてやろう」
フリーザがボガに向けて岩を高速で放つ。
ボガの白目が赤く光り、放たれた岩は瞬く間に消しとばされた。
「…その程度のこと、私にもできますよ。キッ!!」
歯を食いしばり、目に力を込めて見えないエネルギーを放つフリーザ。
「なに!?」
瞬間、フリーザが後方に弾き飛ばされる。
ボガの全身から放たれる青白いオーラが、念動力を遮断してフリーザに弾き返したのだ。
「…まさか、このフリーザの念力を返した?」
「温い。これが宇宙の帝王とやらの実力か、フリーザ?」
ゴールデンフリーザとなった自分の念力を正面から弾き返すなど普通ではない。
「…ぬぅ!!」
「フンーーッ!!」
人差し指から赤い光を放つフリーザだが、ボガはその光を青白い炎を放つ右手で掴み止めて掻き消した。
「チィイイ!!」
「フハハハハ!!」
舌打ちしながら消えるフリーザと高笑いながらテレポートするボガ。
両者は凄まじい勢いで相手の正面に来ると拳と蹴りを次々と繰り出し合う。
互いの連撃を互いに攻撃を繰り出しながら避けていく、その高等技術にオルスー軍とフリーザ軍の戦闘員達が棒立ちになって見ている。
フリーザは、魔人の攻撃を捌きながら熱くなっていた頭を冷やし始めていた。
魔人の底がフリーザをして見えない。
(ゴールデンフリーザとなった私と正面から殴り合える格闘能力に、私をも上回る超能力。この男、言うだけのことはあるようですね)
魔人ボガもまた、ゴールデンフリーザの力を邪悪な笑みを浮かべて楽しんでいる。
「フフ、良い退屈しのぎだ」
フリーザの右拳を顔の前で掴み止め、目を光らせながら口許が裂けるような笑みを浮かべるボガ。
「それはそれは。私も久しぶりにこれほどの運動が出来て何よりですよ」
真紅の瞳を煌めかせながら、灼金色のオーラを燃やすフリーザ。
まるで刀を鍔迫り合うかのようにギリギリッと互いに力を込め合う。
「そ、そんな。フリーザ様と、互角だと言うのか!?」
「…チィ! やはり、このクンタン様の目は正しかったデス! フリーザは、ボガ様の多次元世界の征服という壮大な野望の! 最大の障壁になるデス!!」
アプールとクンタンが同時に叫ぶ中、フリーザの長い尾が鞭のようにしなり、音を上げてボガに迫る。
対するボガもまた、掴んでいた右拳を突き離すと頭を低めて尾をかいくぐりながら、踏み込んで来る。
正面に来るボガに絶妙なタイミングでの右拳をカウンターで置いておくフリーザ。
ボガは人間離れした動きで頭の位置をその場から動かさずに支点にして首から下だけをフリーザの前にやると、強烈な膝から足先を相手に向かって浴びせ蹴りのような姿勢で固定したまま突進した。
「…ダブルニープレス!!」
顎を蹴り上げられて仰け反ろうとした腹部ーー鳩尾に凄まじいカカト落としが叩き込まれる。
「ぐぅあ!?」
動きの予測が出来ずに、フリーザが呻き声を上げながら空中でくの字に身体が曲がる。
前のめりになるところを顔に向かってボガの青白い炎を纏う右手が空を撫でるように斜め上に振り上げられ、強烈な紫色の光弾がフリーザの顔に叩きつけられた。
「…サイコショット!!」
「ぐわぁあっ!!?」
フリーザの頭ほどの大きさだった光弾は瞬く間にフリーザの身体の数倍はある大きさに膨れ上がりながら、高速でフリーザを吹き飛ばすと爆発する。
その爆発を見上げながら、ボガは分厚い胸板の前で両腕を組むとニヤリと笑った。
「…たかがゼノバース(多次元世界)の一粒でしかない宇宙を征服しただけの小僧が、このボガ様に敵うと思ったか?」
爆発の向こうから灼金色のオーラを吹き上げてゴールデンフリーザが姿を現す。
「…なるほど。これほどの強さを持っていましたか。正直に驚きましたよ。まさか、孫悟空達以外に私やセルさん達に並べるほどの力を持つものが居るとはね」
腕を組んで現れたフリーザに向かってボガはつまらなさそうに無表情で嘆息した。
「…フン。この期に及んで、まだ貴様と私の力の差がわからない、というのか?」
「…ええ、分かりませんね」
瞬間だった、フリーザの笑みが消えると同時にボガの顔面に裏拳が叩きつけられたのだ。
「…な、何!? ヤツめ、ボガ様の顔面に拳を叩き込んだだと!?」
クンタンが叫ぶ中、ボガが仰け反る。
その横面に長いフリーザの尾が叩き込まれ、空中にきりもみに回転させられるボガの脇腹に膝、後頭部に肘を叩きつけて地面に叩きつける。
うつ伏せに倒れ込んだボガの背を右足で踏み付けようとするフリーザ。
その瞬間には青白い炎を全身から散らしながらボガがテレポートでフリーザの踏み付けを避けた。
「…それで逃げたつもりかな? 魔人さん」
不敵な笑みを浮かべたフリーザが左の人差し指を自分の左側の空間に突き出す。
瞬間、その場にボガがテレポートしてきた。
「…コヤツ、このボガの動きを読んだというのか!?」
強烈な赤く細い光が幾筋もフリーザの左人差し指から放たれる。
「このフリーザに、キミ程度の動きで裏をかけると思ったのかい? 孫悟空の動きに比べたら、キミなんて目じゃ無いんだよ」
孫悟空の瞬間移動やリューベの阿修羅閃空といった技を経験してきたフリーザにとってボガのテレポート等、破れぬわけがなかった。
光が胸板にぶつかり、貫通こそしなかったものの筋肉の塊のような魔人を吹き飛ばしたのだった。
「…クックック。少々、大人げ無い真似をしましたかね。私としたことが」
口許に手をやり、上品に笑うフリーザの前で爆炎の中から真紅の軍服を纏った魔人が、全身から青白い炎を放ちながら両腕を胸の前で組んで脚を揃えて立っていた。
「…くたばりぞこないめ」
笑みを浮かべてくる魔人に対し、コメカミに四角い筋を浮かばせながらフリーザは笑みを返した。
「フハハハ! いいぞ、これが私の求めていた究極の闘いだ。貴様の力を糧に我がサイコパワーを高めてやろう!」
力を引き上げるボガにフリーザも口元の笑みをそのままに真紅の瞳に殺気を纏うのだった。
「…生意気だよ、お前」
瞬間、灼金色のオーラを炎のように激しく燃やしてフリーザは突っ込む。
ボガも自身の纏う銀色めいた青い炎を燃やしてフリーザを迎え撃った。
強烈な拳と拳、蹴りと蹴りを交換し合うと次々と打撃を繰り出していく。
空で足を止めて互いに打撃を繰り出しあう両者だが、ボガの右手に紫色の炎が纏うとフリーザは目を見開いた。
「これはーーザマスとかブラックとか言った奴が使っていた!!」
自分の力を己の右拳に宿して炎と化すーー触れば消える斬撃を思い起こすフリーザは咄嗟に避ける。
フリーザが居た空間を袈裟懸けのように掌を薙いで斬撃のような一撃を放つボガ。
バックステップで避けたフリーザは、間髪入れずにボガに人差し指を突き立てて赤い光を放った。
「喰らえ」
パッと光った様にしか見えない貫通力の高い光は、しかし魔人の左掌に止められた。
正確には、魔人が左手を顔の横で掴むような動作をしたと同時に魔人の前の空間が、紫色の光の盾のようなものが現れて空間に穴を作った。
デスビームは、その光の中に吸い込まれた。
「なんだと?」
目を見開くフリーザに向かってニィと口が裂けたような笑みを浮かべてボガは左手を裏拳のようにして放ちながら光を放った。
ーーサイコ・ブラスト
「なにぃぃい!?」
その光は、デスビームに勝るとも劣らない速度で放たれフリーザをガードに追いやった。
強大な爆発を起こし、フリーザを後方に吹き飛ばす。
(孫悟空達以外の猿が。この、フリーザを吹き飛ばしただと? この、フリーザを!!)
混乱する思考の中で怒りに満ち溢れていく。
そのフリーザの背後をボガはテレポートで移動していた。
「コォオオッ……! ーー死ねぃ!!」
右手が光り、フリーザの背中に叩き込まれる。
フリーザは頭から地面に叩きつけられ、その衝撃で街が一気に崩壊していた。
両腕を組み、ボガはニィと笑う。
「どうした、フリーザ? この程度で私の力を引き出せると思うのか?」
瓦礫の奥から出てくるであろうフリーザに向かって笑うボガだが、その背後が光に照らされている。
「……」
振り返ると、強大な光の球を頭上に掲げて自分を見下ろしているフリーザの姿があった。
「……ほう、見事な力だ。このボガの良い糧になりそうだ」
「フン、消えなさい!!」
ふり返ったボガに向かって一気に振り下ろす。
強大な光の球がボガを飲み込み、爆発した。
それを真紅の瞳で睨みつけたフリーザは、自分の背後を見る。
そこには、神域に至った証である緑がかった金色のオーラを燃やすセルと超サイヤ人ロゼと同じオーラを纏うブウの姿があった。
(あの二人が本気を出さなければならない程の敵、ですか。この魔人も含めてね)
視線を戻すと軍服を完膚なきまでにボロボロにされ、軍帽をどこかにやったオールバックの黒髪を見せるサイヤの魔人の姿があった。
奇しくも、ボロボロになった軍服の様は孫悟空やターニッブと同じような道着を着ているように見える。
その瞳が、銀色に黒の瞳孔が浮かんだものに変わっている。
「ようやく、正体を晒す気になったか?」
フリーザが淡々とした怒りを込めた表情で告げるとボガは冷酷な笑みを返した。
「フフフ。貴様こそ、こんなものではないだろう? フリーザよ」
その言葉に目を細めるフリーザに、ボガは笑みを強めると己の身体から銀色がかった青い炎のようなオーラを纏う。
それを激しく燃やし始め、オールバックに固定されていた髪が伸び始める。
それが天に向かって炎のような形をして逆立っていく。
孫悟空やベジータ、ブロリーのような真の超サイヤ人の髪型のシルエットへと変わっていく。
「結局、超サイヤ人……なんだろ? サイヤ人は大猿かそれしかない。芸がないですねぇ」
茶化すようなフリーザに強い笑みを返した後、ボガの髪の色が紫色の光を放ち始める。
「……なんだと?」
ボガは元から眉毛は縮毛しており、眼窩上隆起をした顔であった。
それでも、フリーザには分かった。
その変身は、超サイヤ人とは違う。
それは神の御技だと。
何故なら今、目の前にいる魔人から感じられる気は他でもない。
「どういうことだ? 何故、サイヤ人の肉体を持っているだけの魔人に、こんな真似が?」
その力は、この世界の中で生み出された二つの力の一つ。
星を生み出す界王神の対となる力。
星を、そして万物を破壊する神の力。
「貴様、貴様は、いったい!?」
笑みを浮かべた魔人を驚愕の表情で見つめるフリーザ。
彼に対してボガは告げた。
「我が名はボガ。世界を食らい付くすもの、なりーー!!」
超サイヤ人となった悟空にそっくりの髪型になった紫髪の魔人。
ただし、その眉毛はなく眼窩上隆起しており、その瞳は銀色に黒の瞳孔が浮かんだものである。
「……その力は、破壊神そのもの。魔人が、破壊神の力を使うというのか!?」
目を見開くフリーザに笑みを返すと、ボガは構えを取る。
その力を前にフリーザもまた覚悟を決めた。
「いいだろう……! 貴様の正体も気にはなるが、それは貴様を倒してからでも良い」
「ククク、さぁ。見せてもらうとしよう……! 貴様の全力を!!」
フリーザがついにフルパワーを引き出す。
その力は、大気の全てを震わせるほどに強烈だった。
「……なるほど。破壊神どもが騒ぐだけの力はあるようだ……!」
二つの力が極限のパワーを引き出した状態で向かい合う。
あらゆる次元の中でも特別に強大で凶悪な二つの力。
それらの激突は、世界を混沌へと向かわせるトリガーとなるのか?
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ふー、次回もお楽しみに\(゚ω゚ )