ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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死者の都の意志によって生み出された本物と変わらない実力のベジット。

 彼を辛くも打ち破った悟空達は真・超サイヤ人の力を使い切り、深い眠りにつく。

 そんな中、死者の都から惑星サイヤを滅ぼそうと亡者が現世に溢れていた。

 溢れる亡者達を食い止めるために出撃したバーダックとターレスの前に、かつて孫悟空とその息子の悟飯によって倒された二大巨悪が現れる…。



超サイヤ人 対 悪の戦士達

 王都から一歩でも外に出れば、薄暗い霧が辺りに漂い、亡者が溢れかえっていた。

   

「…フン。死者の都とか言うところと変わらねえな」

 

「いい加減に離せ、バーダック!!」

 

 首を絞められているターレスが必死になって告げるとようやく、離される。

 

「…この、バカ力め」

 

「クク、さて…! 此処から一番近い異界の門ってのは何処だ?」

 

「? 貴様、まさか地図を見てないのか!?」

 

「テメエが見てんだろ? グズグズしてねえで、さっさと案内しやがれ!」

 

「なんで教えてもらう側なのに偉そうなんだ、貴様!!」

 

「年輩者を立てるのは当たり前だろうが? それとも、俺を力づくでねじ伏せるかい?」

 

 にやりと笑いながら、告げるバーダックにターレスが忌々し気に歯を食いしばる。

 

 超サイヤ人にしか成れない自分と、超サイヤ人の壁を二つほど超えている目の前のサイヤ人とでは、明らかにレベルが違う。

 

「……」

 

 最終的にターレスは大人しく言うことを聞いた。

 

 二人が向かったのは、北門から300メートルほど離れた荒野だった。

 

 そこに無造作に生えた木の横に、ポッカリと紫色の穴が開いている。

 

「…こいつか」

 

 バーダックは静かに門を確認すると、超サイヤ人に変身した。

 

 金色の髪を天に向かって靡かせ、翡翠の瞳で睨みつける。

 

 群がっている亡者は、その光に当てられただけで消滅した。

 

「……さっさと片付けて次に行くぞ」

 

「任せとけって」

 

 右手に光を生じさせ、バーダックは裂け目に向かって放った。

 

「くたばれ!!」

 

 青い光弾は、しかし横から紅く細い光線によって撃ち抜かれた。

 

「!?」

 

 ターレスとバーダックが、光線を放ってきた方を向くと、全体的に白い肉体。

 

 小型のシャープなシルエットをした長い尾を持つ人物が浮かんでいた。

 

「これはこれはーー! サイヤ人ですか。それも孫悟空さんにそっくりな顔をした方が二人も……!!」

 

 尾を生やした人物は静かにバーダックとターレスを見比べる。

 

「片方は忌々しい超サイヤ人のようですね。これは好都合です。孫悟空さんを嬲り殺しにする前に良い予行演習ができそうですよ!!」

 

 バーダックが静かに人物を見据えて金色の眉を訝し気にする。

 

「…テメエ。何者だ? 孫悟空ってのは、カカロットの名前だな?」

 

 これに彼はニヤリと濃い紫の唇を歪ませて笑みを作り告げた。

 

「あなた方の上司だったフリーザですよ。この姿をお見せしたことはありませんでしたがね」

 

 その言葉にターレスが血相を変えた。

 

「……貴様、フリーザなのか!? な、なんだ、その姿は!!?」

 

「ほほほ。これが私の本来の姿なのですよ。さてーーせっかくの再会ですが、サイヤ人は皆殺しだ。たっぷりと縊り殺して差し上げますからね!!!」

 

 紫色の気を纏い、フリーザが一気にパワーを上げる。

 

 これに静かにバーダックが笑った。

 

「クク、コイツは良い。テメエ、フリーザなのか…!!」

 

「? …お前は、まさか? 惑星ベジータを滅ぼした時に居たーー!?」

 

「思い出したかよ、フリーザ? トーマ達やギネの仇だ! 俺は貴様を許せねぇ!!!」

 

 金色の気を纏いバーダックが構える。

 

「面白い、返り討ちにしてあげましょう! 私の真の力でね!!」

 

 瞬間、フリーザは更に腰だめに拳を握り、黄金の炎のような気を纏いはじめた。

 

 ターレスが目を見開きながら、寒気を覚える。

 

 目の前には金色に全身を変えたフリーザが居た。

 

「ゴールデンフリーザと言います。以後見知りおきをーー!」

 

 バーダックはニヤリと笑いながら拳を構える。

 

 その時、フリーザに向かって第三者の声が届いた。

 

「何をそんなに昂奮しているのだ、フリーザよ」

 

 バーダックがそちらを向くと、超サイヤ人と同じ色の金色のオーラを纏った緑色の怪物が居た。

 

「……サイヤ人? いや、何だか色んなものが混じっている感じだな」 

 

 静かに告げるバーダックに、怪物は端正な顔を向けると笑みを浮かべた。

 

「はじめまして。サイヤ人の戦士よ」

 

「…何ですか、セルさん? 私は今からこのサイヤ人どもを嬲り殺しにするつもりなんですよ?」

 

「分かっている。だが、フリーザ。敵は二人いるのだ…! 一人くらい分けてもらえないかな?」

 

 冷酷な笑みで告げるセルに、フリーザもニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。

 

「良いでしょう。それでは、あの色黒の方を差し上げましょう」

 

「フフ、ありがとう」

 

 その言葉にターレスがバーダックの肩を掴んで告げた。

 

「おい! 逃げるぞ!!」

 

「ああ? 何を寝言言ってやがる。二対二でちょうど良いじゃねえか!」

 

「貴様、バカか!? 戦闘力が違い過ぎるだろうが!!!」

 

「関係ねぇ……! 俺は、フリーザをぶっ飛ばす。邪魔するならあの緑色の野郎もついでに消してやらぁ!!」

 

 気を高め、バーダックはフリーザとセルに向かい合う。

 

「誰だ、このバカを勇敢だとかぬかした奴は!!」

 

 逃げる気がまったくないバーダックにターレスは舌打ちしながらも、逃げる術を探しながら時間を稼ぐしかないと悟り、己も超サイヤ人へと変身する。

 

 これにセルが笑いながら、金色のオーラに青い雷を纏わせる。

 

「……これはいい、少しは楽しませてくれそうだ」

 

「さあ、恐怖のショーを始めましょうか」

 

 フリーザが両手を広げて構えを取った。

 

 これにバーダックとターレス。

 

 二人の超サイヤ人は、気を高めて二人のバケモノと向き合うのだった。

 

 金色の髪を逆立たせ、翡翠の瞳でバーダックは目の前にいる金色の肌になったフリーザを睨み付ける。

 

「…はじめに言っておいてあげましょう。ただの超サイヤ人では私の相手は務まりませんよ?」

 

「…フン。そうかい?」

 

 バーダックはニヒルな笑みを浮かべた後、一気にフリーザの前に現れる。

 

 右の拳を下から突き上げながらボディに放つ。

 

 真剣な翡翠の瞳と嘲笑する真紅の瞳が互いに睨み合う中、鈍い音が鳴り響きながらバーダックの拳がフリーザの腹を打ち抜いた。

 

「…テメエ」

 

 バーダックが睨み付ける中、ニヤリとフリーザが笑う。

 

 瞬間、怒りの表情のバーダックと嘲笑するフリーザは同時に拳を繰り出し、激しい乱打戦を始めた。

 

 互いに強烈な打撃を連続で放ち合い、防ぎ合う。

 

 高速移動を繰り返し、金色と灼金の光が空に螺旋を描きながら飛び交う。

 

 フリーザの右ストレートを左に躱し、バーダックは強烈な右の回し蹴りを顔面に返す。

 

 炸裂音と共に首筋に当たって蹴りは止まった。

 

「…なんだと?」

 

 目を見開くバーダックに、フリーザは笑いかける。

 

「…どうしました? その程度では私を倒せませんよ?」

 

 笑いかけるフリーザにバーダックの目つきが更に鋭くなり、左右のパンチを交互にボディへ数発ぶつけた後。

 

「オラァァァ!!」

 

 その場で回転しながらの左回し蹴りで無防備なフリーザの顔を蹴り飛ばした。

 

 しかし、フリーザは微かに後ろに下がっただけ。

 

 全くの無傷でバーダックを見返している。

 

「…テメエ、一体…!」

 

 構えを取りながら訝しむバーダックにフリーザは笑いかけた。

 

「…素晴らしい強さですね、バーダックさん。確か孫悟空さんの息子さんも超サイヤ人になられてましたが、彼よりも遥かに強い」

 

 肩を揺らして手で口を隠して上品に笑いながら、フリーザはバーダックの強さを評した。

 

「…私を倒した超サイヤ人が、あんなに弱いなんてと拍子抜けでしたが。今の貴方を見て考えを改めましたよ。流石は超サイヤ人です」

 

「…カカロットの息子だと? テメエ、俺の孫をどうしやがった?」

 

 バーダックはフリーザの賞賛など聞いていない。

 

 聞くつもりもなかった。

 

 しかし、聞き捨てならない単語を聞いたので思わず問いかけた。

 

「…なるほど。バーダックさん、貴方は孫悟空さんの父親ですか! これはいい!! その容姿といい、私に正面から挑んで来る気質といい。よく似ていると思っていたのですよ!!」

 

「…質問に答えろ。俺の孫をどうしたぁ!?」

 

「知りたいですか? では教えて差し上げましょう」

 

 瞬間、フリーザは無造作に人差し指を立てて赤い光線を放ってきた。

 

「…ち!」

 

 バーダックは反応し、咄嗟に体を左に傾けて避ける。

 

「…今ので左肩を射抜いてあげました」

 

 バーダックが避けたことを嬉しげに笑いながら、フリーザは更に光線を放ってくる。

 

 左太ももと右の肩だ。

 

 バーダックはこれをアクロバティックな動きで縦に回転しながら避ける。

 

「…すごいすごい! そう! それでこそ、超サイヤ人です!!」

 

 続け様に放ってくる赤いビームをバーダックは触れることなく、紙一重で避けながら気を込めた。

 

「…はぁああ!!」

 

 髪が更に天に向かって逆立ち、前髪が少なくなって目つきが更に鋭くなる。

 

 身にまとう金色のオーラに青い稲妻が走っている。

 

 超サイヤ人2である。

 

「…おやおや。これは? さらなる変身があったとは」

 

 先までとは比べ物にならないスピードで、バーダックはビームの弾幕を完全に避け、フリーザの脇に高速移動した。

 

「…今ので、本来なら手、腕、肩、太もも、足、腹、最後に心臓を撃ち抜いて差し上げる予定だったんですよ。貴方のお孫さんは、蓑虫みたいになってましたよ! おほほ」

 

「…ぶっ潰してやらぁ、フリーザァアアアア!!」

 

 目を見開き、バーダックの髪が更に天に向かって突き立ち、後ろ髪が伸びて眉が縮毛し、翡翠に黒の瞳孔が現れる。

 

 圧倒的な力を持った超サイヤ人が、その場に誕生する。

 

「カカロットの言葉を借りるなら、超サイヤ人3だ。くたばれ、フリーザ!!」

 

 一気に加速して突っ込み、バーダックは灼金に燃えるフリーザの顔面に右ストレートを繰り出した。

 

 乾いた音と共に、あっさりと拳が掴み止められる。

 

「…なんだと!?」

 

 目を見開くバーダックにフリーザは微笑んだ。

 

「…確かにお強い。ですが、今の私には貴方も貴方のお孫さんも大して変わらないんですよ」

 

 バッと拳を軽く突き放された。

 

「…ぐおっ!?」

 

 それだけで凄まじい衝撃が拳から肩に響き、バーダックは苦悶に表情を歪ませる。

 

 その背後にフリーザは移動していた。

 

 バーダックが振り向いた時、既にフリーザの拳は振りかぶられていた。

 

「…こういうことです。生意気な猿め!!」

 

 右の拳が振り下ろされ、バーダックは顔面を殴られて荒野に頭から叩き落とされた。

 

 土煙を上げ、クレーターの中に前のめりで倒れた彼は通常の黒髪のサイヤ人に戻ってしまっている。

 

 セルと睨み合っていたもう一人の悟空と同じタイプの顔を持つ超サイヤ人ターレスがバーダックの敗北に顔を歪めて吐き捨てる。

 

「真正面から行くとはバカめ! 力の差が分からんのか!!」

 

 セルがそのセリフに冷たい笑みを浮かべた。

 

「…あのバーダックという男。私よりも遥か上のレベルにあるようだが、今の金色のフリーザは神と呼ばれる存在の域にあるのだ。普通の人間に敵う道理はない」

 

 笑いながら、瞳に殺気を浮かべてセルは左手を胸の前に伸ばし、右手を添えて後ろに重心を取った構えをする。

 

「貴様程度ならば、私でも充分倒せるがね」

 

「…言ってくれるな、化け物め。俺を其処の脳筋と一緒にするなよ!!」

 

 言うと金色のオーラを纏い、ターレスがセルに対して斜に立ち腰に拳を置いて構える。

 

「どう違うのかな?」

 

 これにセルも青い稲妻が走る金色のオーラを纏った。

 

「この感じは…超サイヤ人2、だと!?」

 

 目を見開くターレスにセルは淡々と答えた。

 

「…私は孫悟空とベジータの細胞を持ったバイオ生命体。超サイヤ人など、恐るるに足らんのだよ」

 

 余裕の笑みを浮かべ、構えながらも肩をすくめるセルを前髪の隙間から覗き見るターレス。

 

「…ほう?」

 

 瞬間、ターレスが残忍で冷酷な笑みを浮かべて隙を見せたセルの前に踏み込み、左のフックを顔にぶつけると右のボディ、右のハイキックで顎先を蹴り上げた後、両掌を胸の前で合わせてから左右に離しながら、赤い炎の輪を作り出す。

 

「…死ねぇ!!」

 

 前方に両手を突き出して炎の輪を放ち、仰け反ったセルに直撃した。

 

 技が直撃して生じた爆煙に向かって、ターレスは冷酷に笑う。

 

「…フフフ、この俺を甘く見るからだ」

 

 だが、その笑みはすぐに凍りつく。

 

 ゆっくりと煙の向こうからセルが無傷の姿で笑みを浮かべて現れたからだ。

 

「…貴様らサイヤ人は、強くなるとすぐに調子づく。ベジータやトランクスもそうだった」

 

 口元を手で隠しながら、セルは上品に微笑むとターレスの目の前に一瞬で現れる。

 

「…ぐう!?」

 

 左のフックで顔を仰け反った所を右のボディで腹を貫かれ、顎を蹴り上げられる。

 

「ガハァ!?」

 

 仰け反ったターレスの背後にセルは高速移動すると、右の肘を背中に叩き込んだ。

 

「…ぐあ!?」

 

 ゆっくりと立ち上がり始めたバーダックの隣にターレスが叩き落とされる。

 

「ケッ…偉そうなことを言う割にはテメエも大して変わらねえじゃねえか」

 

 皮肉げに告げるバーダックにターレスが黒髪に戻りながら、起き上がって言い返す。

 

「…言ってる場合か。こいつら、とんだバケモンだぞ…!」

 

「…カカロット達が闘った、あのベジットって野郎に比べたら。…こんな奴ら大したモンでもねえだろが」

 

「だったら、今すぐこいつらを何とかしてみせろ!!」

 

 目を見開いて怒るターレスにバーダックは、不敵な笑みを浮かべた。

 

「…安心しろ。その内、なんとかなるさ」

 

 その笑みに向かってターレスが叫んだ。

 

「ふざけるなぁ! カカロットや王子みたいな変身がある訳でもないだろうが、どうやって…!?」

 

 前のめりになって怒鳴りつけるターレスの声が尻すぼみになった。

 

 自分の腰あたりから地面に何かが転がったのだ。

 

 それはトゲの付いた赤い果実だった。

 

「…こ、こいつは!?」

 

 ターレスの態度にバーダックが訝しげに見ると彼はニヤリとしながら、赤い果実を取り上げる。

 

「何だ、そりゃ? 変わった形のリンゴだな」

 

 バーダックが問いかけると、ターレスはフフフ、と笑いながら実を一口齧った。

 

 瞬間。

 

 太ももの筋肉、二の腕の筋肉、胸筋が一気に膨れ上がり、果実を握り潰す。

 

「……ククク。これで俺の戦闘力は桁違いに高まったぞ」

 

(? ターレスの奴から感じる力が確かに跳ね上がりやがった。どういうことだ?)

 

 バーダックが訝し気に目を細める横でターレスは更に気合を込めて、金色の戦士・超サイヤ人に変化する。

 

「……さあて。“神精樹の実”を得たこの俺の圧倒的なパワーで貴様を叩き潰してやるぞ。虫の化け物!!」

 

 これにセルがニヤリと笑いながら告げた。

 

「ほう? 変わったパワーアップの仕方だ。死者の都から己の可能性として技を引き出した孫悟空やベジータのように、貴様もパワーアップの手段を求めたか」   

 

 目の前に現れた超サイヤ人に笑いながら、拳を繰り出す。

 

 ターレスは紙一重で避けながら、拳を返す。

 

「……ッ!?」

 

 両腕で防ぎながらも、後方へ弾き飛ばされるセル。

 

 ピタっと空中で静止したセルの真上に、くるくると体を丸めて回転しながらターレスが迫っていた。

 

「なに!?」

 

「はぁあああ!!」

 

 回転する遠心力を加えた蹴りがセルの頭に直撃し、地面に叩き落とされる。

 

 姿を消すターレス。

 

 地面に接触する前にセルも目を見開き、高速移動で姿を消す。

 

 空中で響く炸裂音。

 

 セルの右ストレートを上半身を後ろに反らすスウェーバックで鼻先で見切り、ターレスはくるりと反転してセルに背を向け、後方へ逃げる。

 

 追いかけようとするセルだが、瞬間あさっての方向に逃げたはずのターレスが逆方向から現れ蹴り飛ばされた。

 

「…これは……!?」

 

 再び地面に叩きつけられそうになった時、ターレスが目の前に現れて膝蹴りでセルの腹を穿ちながら拾い、両手を組んで背中から地面に叩きつける。

 

 跳ね上がりそうになるセルの顔を踏みつけて固定し、右手を開いて紫色の光を生む。

 

「これで……死ねェえええ!!」

 

 放たれた一撃は、紫色の光の柱を天に突き立てた。

 

 バーダックがそれを見た後、金色のフリーザを見る。

 

 フリーザは余裕の笑みを浮かべながら両腕を組んで観戦していた。

 

「……どうだ、化け物。この俺の攻撃は? カカロットとは、ひと味違うだろう?」

 

 冷酷な笑みを浮かべて告げるターレスの目の前にセルは淡々とした表情で立っていた。

 

「フム。確かに孫悟空とは天と地ほどの差がある…。貴様は、奴に比べれば平凡もいいところだな」

 

「……なんだと?」

 

 忌々しそうに表情を険しくするターレスにセルは告げた。

 

「確かに身体的な力はあるようだ。しかし、戦闘センスが孫悟空と比べると貴様は致命的にない…! 純粋なサイヤ人としては其処に居るバーダックやベジータにも劣る。二流も良いところだ」

 

「……貴様。このターレス様の力を侮るか!?」

 

 黄金の気を纏い、更に構えるターレスの前にセルが現れた。

 

「!?」

 

「敢えて、貴様と同じスピードと技で返してやろう。受けるがいい」

 

 ボディを突き抜ける程の拳に思わずターレスが目を見開く。

 

 目の前にセルが来ていた。

 

(な、なんだと……!?)

 

「これは孫悟空達の得意とする“踏み込み”と言う動作だ。武術の基本ともいえる。スピードは同じでも反応するには苦労するだろう?」

 

 セルは淡々と告げながら、ターレスの後頭部に長い脚からのかかと落としを繰り出して、地面に叩きつける。

 

 跳ね上がりそうになるターレスの体を先の自分と同じように顔を踏みつけて固定し、右手をゆっくりと開いた。

 

「……ばかな!?」

 

 目を見開きながら、緑色の異形を見上げる。

 

 異形は端正な顔を冷酷にゆがめて告げた。

 

「じゃあな」

 

 青白い光が生まれ、先のターレスの技のように天に向かって光が突き立った。

 

 光の中に消えるターレス。

 

 しかし、セルは静かに瞳を正面から左に向けた。

 

「……サイヤ人は冷酷で残忍だと聞いていたが。意外にも同族への仲間意識はあるようだ」

 

 ぐったりとしたターレスの襟首をつかんでこちらを睨みつけるバーダックを見据えて笑うセル。

 

「……テメエ。ある意味、フリーザよりも厄介だな」

 

 バーダックの目には、セルの実力がある意味ではフリーザよりも手強いことを見抜いていた。

 

 力任せに殴りつけるだけの高い身体能力にモノを言わせるフリーザの戦い方は、一般的な戦闘民族サイヤ人と同じ戦い方だ。

 

 バーダックのように実戦に実戦を重ねて得た粗削りだが理に適った動きは、サイヤ人やフリーザ軍の中でも珍しい。

 

 そしてセルの動きは、孫悟空やベジータ、ターニッブのように、鍛錬に鍛錬を重ねることで動きに無駄をなくした武術のモノだ。

 

 その動きは、自分よりも戦闘力の高い敵ともある程度は戦えるようにバーダックには見えた。

 

 逆を言えば、ターレスやフリーザは自分と同等か、少し下くらいの敵と戦うと苦戦する。

 

「流石、セルさんです。タゴマさんよりも余程私にとって良い修行相手ですよ。貴方を仲間に引き入れて正解でした」

 

「フフ、神の領域に至ったお前に教えることがあるとは。私もまだまだ強くなれるということか」

 

 笑い合うフリーザとセル。

 

 それを忌々し気にバーダックは睨みつけた。

 

「しかし、フリーザよ。これでは勝負にならんな」

 

 セルがバーダックを見据えながら告げる。

 

 これにフリーザは訝し気な表情になってセルを見た。

 

「バーダックと言ったな? これからゲームを始めないか? 上手くすれば命を長らえさせることができるかもしれんぞ」

 

「……なんだと?」

 

 セルはフリーザを見上げて告げる。

 

「フリーザよ、ギニュー特戦隊を呼べ」

 

「ギニュー隊長たちですか? セルさん、何か面白いことを思いついたようですね?」

 

 笑いながら、フリーザは自分の指先から紅いビームを曇天に向けて放った。

 

 瞬間、そこから煙のように雲が五つ現れ、人の形を象っていく。

 

「リクーム!!!」

 

 地球人と同じ人間型のオレンジ色のパイナップルのような髪型をした筋骨隆々の大男が現れる。

 

 戦闘服の下に黒のアンダーを着ており、両肘下、両膝下を露出している。

 

「バータ!!!」

 

 体は青色をしており隊員の中で身長が先のリクームと言う大男よりも高い。

 

 戦闘服は両腕を露出し両脚がアンダースーツで覆われているスマートな体形の男。

 

「ジース!!!」

 

 地球人に近い姿で整った顔立ちをしているが、肌は赤色で白くて背中まで伸びた長い髪を持つ。

 

 戦闘服は両腕がアンダースーツで覆われ、両脚は露出している170程度の身長の男。

 

「グルド!!!」

 

 体は緑色をしており、全体的に丸まった体格をしていて背が低く、目が四つある男。

 

 その外見は醜悪で、性格も残忍そうな笑みを浮かべている。

 

 戦闘服は両腕、両脚ともアンダースーツで覆われていた。

 

「ギニュー!!!」

 

 そして最後の男は煙が一瞬、長身な体格の角を持ったシルエットになった後、バーダックとターレスと似たような体格の姿へと固定されていった。

 

 その姿は、山吹色の道着に青色のインナーを着ている孫悟空そのもの。

 

 その胸と背中に付いたマークが「亀」ではなく、「牛」であること。

 

 左目に緑色のスカウターを付けていることが特徴だった。

 

「「「「「み! ん! な! そろって!! ギニュー特戦隊!!!!!」」」」」

 

 全員が見事なタイミングでおかしなポーズを取ってキリッとして告げる。

 

 それをバーダックとターレスが、訝し気に見上げていた。

 

「ギニュー特戦隊だと?」

 

「…フリーザ軍のエリート戦士の名前だが」

 

 二人のサイヤ人が訝し気に、孫悟空の姿をしたギニューと名乗った男を見据える。

 

 金色のフリーザもキョトンとした表情でギニューを見ている。

 

「ぎ、ギニューさん? タゴマさんや元の姿ではなく。何故、孫悟空さんの姿なのですか?」

 

 どうやらフリーザも度肝を抜かれているようだ。

 

 これに悟空の姿をしたギニューはキリリと眉を引き締めて告げた。

 

「この姿こそ、私が求めた究極の肉体だからです! 孫悟空の戦いを地球で見た私は、この肉体こそフリーザ様にお仕えするのにふさわしいと常日頃から思っておりました!!」

 

「……そ、そうですか。そ、それにしても。肉体はともかく、服装まで変えないのは……?」

 

「この山吹色の道着にセンスを感じるからです!!!」

 

「あの……ギニューさん。私、孫悟空さんが憎いんですけど……。貴方の顔を見たら、どう反応して良いのか……」

 

 ハッキリと言い切るギニューに、フリーザは混乱した様子でそれ以上何も言えなくなった。

 

 セルが両腕を組んだまま告げる。

 

「良いではないか、フリーザよ。組織の長たるお前が見た目に惑わされてどうする?」

 

「……まあ。孫悟空の能力と肉体を持った忠誠心の塊のギニュー隊長、と考えれば。私の理想の部下ですねぇ」

 

 ニヤリとするフリーザに悟空の姿のギニューは頭を下げる。

 

「ありがとうございます、フリーザ様! セル殿、感謝申し上げます!!」

 

「構わんさ。共にサイヤ人の力でサイヤ人を滅ぼすとしよう…!」

 

 ニヤリとしながら、セルはバーダックとターレスを見据える。

 

 これにギニュー特戦隊も構える。

 

「セルさん、特戦隊の皆さんを呼んだのは何故です?」

 

「私やお前では、勝利が見えている。私は、結果の見えたつまらない闘いが嫌いでね」

 

「フフ。まあ、いいでしょう。強者には余裕が必要ですからねぇ」

 

「そういうことだ。怒りや憎しみに任せてしまえば、下らんことで足を掬われかねんからな」

 

 そのセルの言葉にフリーザは静かに笑みを強めた。

 

「ええ。本当に……! やはり、貴方は私に必要ですねぇ!!」

 

 そんな二人の化け物にバーダックが吐き捨てた。

 

「調子に乗りやがって……! 今に見ていやがれ!!」

 

 再び、超サイヤ人に変身するバーダックだが、己の手を見下ろして苦虫を噛んだような顔になる。

 

 超サイヤ人3になれるだけの体力がまだ、戻っていない。

 

 隣のターレスの方も、静かに拳を握って超サイヤ人に変身した。

 

「ギニュー特戦隊程度で俺とバーダック。二人の超サイヤ人を止められると思うのか!?」

 

 問いかけるターレスに応えるようにセルがニヤリとした。

 

「確かに、ギニュー以外の者には厳しかろうな」

 

 その言葉に孫悟空の姿をしたギニュー以外の隊員は、一斉に苦虫を噛んだような顔をする。

 

 たかがサイヤ人ごときに劣ると言う自分たちが、屈辱だった。

 

「もっとも、私が稽古をつけてやれば一気に戦力が上がるとは思うがね……」

 

 セルの言葉にリクームとバータが食いついた。

 

「おお! ホントですかい、セルのダンナ!!」

 

「有難い! さすがはフリーザ様の武術の先生だ!!」

 

 他の特戦隊の者も期待を込めてセルを見ている。

 

 セルはそんな彼らにニヤリとして頷いてやった。

 

「ギニュー。死者の都から得た可能性で貴様の肉体は孫悟空そのものになった。その可能性を見せてやるがいい」

 

「ふふ。良いでしょう……、ご覧ください! フリーザ様! セル殿!!」

 

 瞬間、金色のオーラを纏ってギニューが超サイヤ人孫悟空の姿に変身した。

 

「……ギニュー隊長が超サイヤ人に……!! 素晴らしいーー素晴らしいですよ、ギニュー隊長、セルさん!!」

 

「フフ、お気に召してもらえたようだな。もっとも、ギニューの戦闘センスを持ってすればこのくらいは容易いのだがね」

 

 笑いながらセルは対峙する二人の超サイヤ人を見据える。

 

「さて…! 超サイヤ人・孫悟空の肉体を得たギニューの力。存分に味わうがいい」

 

「…けっ! 煙から生み出されたカカロットの肉体を手に入れた偽者がぁ!! 調子に乗ってんじゃねえ!!!」

 

 バーダックが息子の姿を模した敵に怒りを露わにする。

 

 これに超サイヤ人となったギニューは残忍な笑みを浮かべた。

 

「お前たちは、此処までだ!!」

 

 これにターレスも自身に残されたバトルジャケットのグローブを付けた拳を構えながら告げる。

 

「笑わせるなよ、ギニュー!!」

 

 三人の同じ顔をした超サイヤ人が睨み合う中、突如落雷がバーダック達とフリーザ達の間に落ちた。

 

「…誰です? 今、良い所なんですがね?」

 

 フリーザが金色の姿を維持したまま、問いかける。

 

 どうやら、超サイヤ人ブルーの悟空やベジータと戦った時とは違い、フリーザは金色の姿を己の肉体に完全になじませていた。

 

 そんな神の次元に達したフリーザと、その修行相手をしていたという完全体セル。

 

 二人とギニュー特戦隊の前に現れたのは、濃紺の武道着に黒のインナーシャツ。

 

 黒い足袋と草履を履いた黄金の髪を天に逆立て、翡翠に黒の瞳孔が現れた目をした超サイヤ人。

 

 死者の都より現れし、亡者の天敵。

 

 真・超サイヤ人リューベであった。

 

「……」

 

 淡々とした冷徹な表情で、リューベはフリーザを見据える。

 

 フリーザは目を静かに黄金のオーラを纏う超サイヤ人を見下ろした。

 

「超サイヤ人がまた一人…! まったく次から次へと、害虫のように湧いてきますね?」

 

 静かなリューベにフリーザはにこやかに笑いながら告げた。

 

「これは、無口な方ですねぇ。恐怖で口も開けませんか? それも仕方ありません。私は、あなた方サイヤ人の故郷・惑星ベジータを滅ぼした存在ですからねぇ」

 

 得意げに笑うフリーザを、リューベは表情の変わらない目で見つめるだけだ。

 

 これにセルが真剣な表情になって告げた。

 

「フリーザよ、三対三でもかまわんかな?」

 

「おや、ゲームはどうしたんです?」

 

「……その超サイヤ人。普通ではない」

 

 微かに畏怖の表情をしたセルを見て、フリーザは表情を改めた。

 

「貴方がそこまで言うとは。いいでしょう、この男は私が相手をして差し上げます!」

 

「バーダックは必然的に私だな。フフ、私の戦闘力を引き上げる良い機会だ!」

 

「では、フリーザ様にセル殿。私は、あのターレスとかいう孫悟空と同じ顔をしたサイヤ人を頂きましょう!!」

 

 三人の悪の戦士は、即座に方針を決めると構えを取る。

 

 バーダックがセルを睨みつけながら、リューベに言った。

 

「おい! 貴様とはコイツ等をぶっ潰した後で相手してやる!! 逃げんじゃねえぞ!!!」

 

「コイツ…! カカロットと王子がフュージョンしたゴジータとか言う奴にそっくりだ…!」

 

 バーダックの隣では、ターレスが静かにリューベを観察していた。

 

 そんな彼らに目を向けることもなく、リューベはフリーザを見て告げた。

 

「我が名はリューベ。真なるサイヤ人!! うぬが未熟さ、その肉体に刻めぇい!!!」

 

 圧倒的な力を纏って、真・超サイヤ人が咆哮した。




 次回。

 拳を極めし者・その名はリューベ

 ご期待ください( *´艸`)

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