ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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超サイヤ人の鬼ーーリューベの放った光の前に飲み込まれたフリーザ達。

しかし、彼らとの闘いはまだ始まったばかりであった。

死者の都が呼び寄せる悪の戦士たちは、次元を超え。

時空を超えてサイヤ人達を滅ぼそうと迫りくる……!


気高き血統 孫悟空の父★

 金色と化したフリーザ、超サイヤ人・孫悟空の肉体を持つギニュー。

 

 動揺するフリーザ達とは対照的に静かな表情で見つめていたセルが、リューベの放った光に飲み込まれていった。

 

 瞬間、バーダックがリューベに叫ぶ。

 

「まだだぁ!!」

 

 ターレスがキョトンとした表情でバーダックを見ると、彼の見つめる先にセルがフリーザとギニューの腕をつかんだ状態で現れた。

 

 瞬間移動である。

 

「…チッ! あの瞬間移動って技がある限り、野郎は攻撃を避けれるじゃねえか!!」

 

 イラついたようなバーダックの声。

 

 だが、鬼はーー。

 

「フンーー」

 

 その場から消えた。

 

 これにセルが目を見開く。

 

「! まさか!?」

 

 瞬間、肉を断つ斬撃音がすると共に、セルの胸元が背後から袈裟懸けに切り捨てられた。

 

「うぐぁああああっ!!」

 

 セルが激痛に叫びながら、目を背後にやる。

 

 セル同様、瞬間移動した鬼ーーリューベが手刀を振り下ろした姿で立っていた。

 

「せ、セル殿!?」

 

「な、なんですって! 気配を読むことに長けた、あのセルさんが!!」

 

 目を見開くギニューとフリーザ。

 

「…この私の、背後を取るとはな……!!」

 

 膝を折り、歯を食いしばった状態でセルが前のめりに倒れた。

 

 ギニューとフリーザが構えを取るのに対し、鬼はすさまじい踏み込みで地面を砕きながら構える。

 

「ーー憤怒! 夜郎自大が吠えおるわ!!」

 

 鬼の纏う黄金の炎は更に高まり、天を衝き地を穿つ。

 

 フリーザが忌々しそうに拳を腰に置いて構え、ギニューも超サイヤ人の金色のオーラを纏って構える。

 

 これに鬼は静かにギニューを睨みつけて告げた。

 

「…その器。うぬの自我では足りぬ…」

 

「なんだと!? この天才と言われたギニュー様でも、死者の都の力を借りてできた孫悟空の肉体を使いこなせないというのか!?」

 

「…うぬの器で辿れるのは入口までよ。“人外”の域に達することができねば、“真に人を超える”ことはできぬ」

 

 圧倒的な気配を放ちながら、幽鬼の様に姿と気配を消して、鬼はふと現れる。

 

 ギニューの目の前に。

 

「ぬお!?」

 

 強烈な右拳の一撃が腹にめり込み、ギニューはうずくまりながら前のめりになると同時。

 

「…昇!!」

 

 リューベは飛び上がりながら右拳を突き上げて顎を跳ね上げ、ギニューを後方へ弾き飛ばした。

 

「グハァ!!」

 

 背中から地面に叩きつけられ、血を吐くギニュー。

 

 超サイヤ人と化していた髪は一瞬で黒に変わり、動かなくなる。

 

「……」

 

 リューベは、鬼の眼を静かにフリーザに向ける。

 

 フリーザも静かにリューベを見返した。

 

「なるほど。ギニュー隊長やセルさんを物ともしないとはね。とてつもない強さだ」

 

 先ほどまで取り乱していたフリーザではない。

 

 セルやギニューを倒した動きを見て、逆にフリーザは冷静になった。

 

 頭を冷やし、気を集中する。

 

 両足を揃え、両手を開いてゆっくりと構える。

 

「さて、では続きと参りましょうか?」

 

 この発言にバーダックが訝しげに眉をひそめる。

 

 先ほどからフリーザはリューベに劣勢を強いられていた。

 

 だというのに、やけに余裕のある表情だ。

 

「…では、行きますよ!!」

 

 瞬間、フリーザの纏うオーラが爆発し、一気にリューベに近づくと右の拳をガードの上から叩きつける。

 

 リューベの右拳が返しでフリーザの腹に突き刺さる。

 

「…ぐう!? こ、の、猿がぁああ!!」

 

 フリーザの目が血走り、激しい乱打戦が繰り広げられはじめた。

 

 互角の殴り合いに見える。

 

「…どうなってやがる? フリーザの野郎、さっきまであのバケモンに押されてたじゃねえか」

 

「そんなもの。化け物が手加減してるのか、フリーザが本気になっただけだろ?」

 

 ターレスの言葉に納得していないようにバーダックは、睨みつける。

 

 半分は正解だった。

 

 フリーザの動きが変わったのだ。

 

(…フリーザの野郎は今、全力でリューベとやり合ってる。ペースを気にせずに。だとすりゃあ、息切れになるのは明白だ。あんなペースを維持できる訳がねえ)

 

 フリーザは先までとは違い、手数を増やして動くスピードを上げ、絶えずリューベと殴り合っている。

 

 距離を置いて気弾を撃つような真似はしない。

 

 真っ向から殴り合っていた。

 

 宙に幾筋も刻まれる黄金と灼金の線。

 

 秒間に数百は下らない打撃を応酬しながら、絶えず相手を翻弄できる有利な位置を求めて殴り合う。

 

 だが、この打撃の応酬にも差がつき始めた。

 

 絶えず気が上がり続けるリューベと、明らかにオーバーペースで動いているフリーザでは、差が出て当たり前だ。

 

 瞬く間に血まみれになったフリーザが、のけ反り始める。

 

「…ぐう、ま、まだまだぁ!!」

 

 血を吐きながらも逃げずに真っ向から殴り合うフリーザに、バーダックが目を細める。

 

「…いけ好かねえクソ野郎が。真っ向から殴り合うとは。チッ、認めたかねえが見直してやるぜ。フリーザよぉ」

 

「だが、あの化け物には勝てん。度胸は認めてやるがな」

 

 対照的にターレスは嘲笑しながら、告げる。

 

 しかし、自分の発言に眉根を寄せて考える。

 

「…あのフリーザが、考えなしに勝てないと分かっている相手に真っ向から殴り合うだと? おい、バーダック」

 

「なんか、企んでやがるって言いてえのか?」

 

「貴様は、奴がこのまま潔く死ぬと思うか?」

 

 黙って見あうこと数秒。

 

 バーダックはジッとフリーザを、いやその周りを確認していく。

 

 なにか不審なものがないかを確認するために。

 

 この時、バーダックは気付いた。

 

 フリーザや自分たちが戦ったことで生じたクレーターや地割れが、綺麗になくなっていることに。

 

 目を細めてみれば、生まれたての亀裂がまるでビデオの逆再生のように元の姿に戻っていく。

 

(……こいつが“常世”ってヤツか)

 

 そして、しばらく周囲を探していると。

 

 程なくして不審なソレは見つかった。

 

「おい、ターレス! あれは何だ?」

 

 空に巨大な青く光る球体が浮いている。

 

 曇天の空に。

 

 つまり、雲の下にそれは存在している。

 

「……太陽じゃないな。なんだ?」

 

 それは、何処か禍々しくも美しい青い光の球だった。

 

 バーダックの言葉にターレスも訝し気に目を細めながら呟く。

 

 その光る球の下には、両手で頭上に掲げるようなポーズを取った、蝉のような羽を持った緑色の人型の化け物が居た。

 

「野郎は、セル!!」

 

「さっきやられたのは演技か? しかし、アレは……!!」

 

 どんどんと気が膨らんでいる。

 

 球の大きさは限りなく強大に。

 

「悪いが、元気を頂くぞ……!!」

 

 光は限りなく強力になっていく。

 

 死者の都の大気中から、あの青い光の粒子は流れているようだった。

 

 それが球に吸収されてどんどんと膨らんでいる。

 

「フフフ。死者の都に満ちている怨念の気をもらっては、元気玉とは言えんかな?」

 

 光の球を見据え、ほくそ笑むセルをバーダックは睨みつけた。

 

「あの野郎! ふざけた真似を!!」

 

「フリーザが、大人しくこのままやられるわけがないと思っていたが。やはりな」

 

 二人のサイヤ人は、再び拳を握り金色のオーラを纏う。

 

 その前に、黒髪の状態になったギニューが現れる。

 

 鋭い翡翠の瞳で睨みつけるバーダック。

 

「カカロットの面で、俺の前に立つとはなぁ? ギニューっつったか? セルといい、フリーザといい、どいつもこいつもふざけやがって…!!」

 

「…ふふ、孫悟空の父親か。だが、このギニューはまだ倒されてはいない!! お前たちぃ!!!」

 

 スペシャルファイティングポーズと名付けた右手を前に出し、左手を頭の上に置いて足を肩幅に開いて構える。

 

「「「「了解っすよ、隊長ぉおおおおお!!!!」」」」

 

 瞬間、四人の特戦隊がギニューを中心に集まり、奇妙なポーズを同時に取る。

 

「「「「「我ら、ギニュー特戦隊!!」」」」」

 

 五人揃った時、五色の気のオーラが全員を纏い、一気に戦闘力が増加した。

 

「…なんだと? 力が跳ね上がりやがった?」

 

 この現象にバーダックが目を鋭く細め、睨みつける。

 

 その横からターレスが腕を組んでギニュー達を見下した。

 

「下らない真似だ。確かにおかしなポーズで戦闘力が上がるのは奇妙だが、俺達の戦闘力を超えるほどではない」

 

 嘲り笑うターレスの言葉にギニューが笑う。

 

「そのとおりだ。だが、この世界を包む霧は死者の都のもの。この世界では、ありとあらゆる可能性が交わる。孫悟空とベジータの可能性によって私達は再現され、引き寄せられた」

 

 本来ならば出会うはずのない金色のフリーザと人造人間セル。

 

 地獄で出会ったセルとフリーザ、ギニュー特戦隊。

 

 ギニュー特戦隊と孫悟空の肉体を持ったギニューが揃った世界。

 

「そう。お前たちもだ!!」

 

 その言葉にターレスが目を見開く。

 

 対照的にバーダックは淡々とした表情で自分の体を見下ろす。

 

「ふん、やはりか」

 

「な、なんだと? どういうことだ?」

 

 ターレスが困惑の表情で訳知り顔のバーダックを見る。

 

 向かいでギニューがにやりとしながら、バーダックを向いた。

 

「ほう。気付いていたか?」

 

 バーダックは乱暴に髪をかき上げ、告げた。

 

「ああ。惑星プラントの記憶。惑星ベジータの記憶。俺が仲間たちに馬鹿にされ、フリーザに一人で殴りこんだ記憶。そしてーー仲間に慕われていた記憶とギネやラディッツ、カカロットの記憶。惑星ベジータと共に死んだ記憶もあれば、惑星プラントで超サイヤ人に目覚めた記憶もある。地獄でカカロットと魔人ブウって奴の戦いを見た記憶もな。その全てが、どう考えても繋がらねえ…!」

 

 バーダックは睨みつけるような目でギニューを見る。

 

「そう。私達も貴様達も、この世界ーー死者の都が作り出した、仮初めの存在を依り代にしただけのものだ」

 

 ニヤリと笑うギニューに、ターレスが目を見開きながら頭の中に思い描く。

 

(そうだ…! 俺は、神精樹と共に地球でカカロットに……!! ならば、この俺は……!!)

 

 バーダックは静かに拳を握り締める。

 

「俺は死んだのか。生きてんのか。その記憶も曖昧だ。生きてる記憶と死んだ記憶。愛した記憶と見捨てた記憶。仲間を失った記憶と妻と共に見送った記憶。惑星プラントで出会った新しい仲間の記憶……!!」

 

 拳を握り締める。

 

 金色のオーラを纏うバーダックは、翡翠の瞳でギニューをセルをフリーザを見据える。

 

 カカロットを見た記憶は、保育器の中で眠る息子か?

 

 三歳児まで育った、バトルジャケットを着た息子か?

 

「どうでもいい……!!」

 

 ターレスが見守る中、笑うバーダック。

 

 己の人生をせせら笑う。

 

「この俺が“どの俺”なのかなんざ、興味もねえ。生きてるのか、死んでるのかさえな! 今の俺が誰だろうと、俺にとって大事な事は一つだけだ……!!」

 

 睨みつける。

 

 全ての記憶が一つに重なっていく。

 

 仮面を付けられ、改造したバトルジャケットを着させられた記憶。

 

 時の狭間と呼ばれる空間で、青白い肌の青年と戦った記憶。

 

ーー カカロット。絶対に、生き延びろ……!! ーー

 

 歯を食いしばる。

 

ーー 情けねぇ、俺に力があれば……!! ーー

 

 血が出るまで拳を握り締める。

 

ーー フリーザァアアア!! 俺は、貴様が許せねぇぇええええ!!! ーー

 

 金色のオーラが更に勢いを増していく。

 

ーー カカロットの運命も、関係ねぇ!! テメエは俺がぶっ潰す!! ーー

 

 全身の血が騒いでいる。

 

 目覚めろと告げられている。

 

 貴様も目覚めろと。

 

 至れと声がするーー。

 

「テメエらは、カカロットの敵だ……! 俺とギネの大事な倅を狙う奴はーー誰だろうと、ぶっ倒す!!!」

 

 感じるままに身を委ねる。

 

 気を。

 

 意識を。

 

 力を。

 

 全身から黄金の炎が噴き上がり、天に向かって柱を立てる。

 

 全てのバーダックが一つに重なる。

 

 幻影の存在は一つに統合される。

 

 圧倒的な気を纏い、金色のオーラが黄金の炎に変化する。

 

 髪の色は、金色よりも更に濃い黄金色。

 

 翡翠の瞳には漆黒の瞳孔が現れる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ギネ…! ラディッツ…! トーマ、セリパ、パンブーキン、トテッポ!! テメエらの借りをまとめてあのクズ野郎に返してやる!!!」

 

 バーダックの髪は更に天に突き立ち、前髪が少なくなる。

 

 無限の戦闘力の上昇を始めるバーダックに、ゴールデンフリーザを圧倒していたリューベが静かに目をバーダックに向けた。

 

「……うぬもまた“真に至りし”か。時と生死の壁を行き来する者よ」

 

 深紅のバンダナが真っ赤に、肌が白く透き通る様に美しい肌色に輝く。

 

 ターレスが思わず、バーダックを見て呆然と呟いた。

 

「“真の超サイヤ人”か…! だが、カカロットやターニッブとは微妙に違う……!? あの髪型は、超サイヤ人2だと!?」

 

 そう。

 

 目覚めたバーダックの髪型は超サイヤ人2のそれだった。

 

「邪魔だ、ギニュー!」

 

 右手を開いて青い光を掌から漏らすと、それで空を撫でた。

 

 それだけで、扇状に光の波動が走る。

 

 その波動を止める術は、ギニュー達には無い。

 

 瞬間、ギニュー達の目が真紅の光を帯び、全身を邪悪な紫の気が覆い尽くし、彼らはバーダックの一撃を一度だけ耐えてみせた。

 

 ターレスが目を見開く中、ギニュー達の額には「M」のマークが付いていた。

 

「…フフフ、中々面白い真似をするじゃないか。サイヤ人」

 

 其処に居たのは悟空の姿をしたギニューと、同じ道着の上を着た桃色の人の姿をした異形。

 

 あらゆる人間を吸収し、己の肉体を変化させた究極の魔人。

 

「この技は、バビディやビビディといった魔術師の技でな。戦闘力を高める洗脳の魔術だ」

 

 バーダックがその異形を睨みつけ、つぶやいた。

 

「テメエは、魔人ブウだな?」

 

「そのとおりだ。孫悟飯の祖父にして、別次元の私を倒した男ーー孫悟空の父親よ」

 

 構えるバーダックはケッと吐き捨てる。

 

「何が別次元だ? テメエも、俺達と同じ死者の都が作り出した幻影だろうが!!」

 

 その言葉にブウはニヤリと笑う。

 

「そのとおりだ。だが、お前とて分かっているだろう? 既に私たちは個として独立した存在なのだよ。きっかけは死者の都の霧だ。しかし自我を持ち、仮初めの肉体を完全に固体化することに成功していればよい。お前達と同じようにな」

 

「何が固体化だ? 死者の都ってのが消えれば、俺達は消えてなくなるんだろうが。この惑星から出た時点で、俺もテメエも霧となってな?」

 

「……そこまで理解しているのか。その頭の切れは孫悟飯ーーいや、孫悟空か? 戦いに関しては、素晴らしい感覚を有している」

 

 魔人ブウはチラリと、ギニュー特戦隊を見る。

 

「お前たちには、もう一人のサイヤ人を相手してもらおう。超サイヤ人の孫悟空の肉体を持ち私の魔術で強化までしてやっているのだ。五人がかりならば、遅れは取るまい?」

 

 その言葉に、ギニューは黒髪の状態から再び超サイヤ人の姿へと変化する。

 

 五人は血管の筋が顔や体に浮き上がり、筋肉が膨張していた。

 

「…チッ! こんな雑魚共を強化したくらいで、この俺を倒せると思うのか!!」

 

「…孫悟空の肉体。セル殿から得た体術。そしてブウ殿からもらったこの力で、貴様を殺してやるぞ!!」

 

 ジース、バータ、リクームの三人が、紫のオーラを纏いながら真紅に光る瞳でターレスを睨みつけて殴りかかってくる。

 

 三対一など、ターレスには物の数ではない。

 

「邪魔するなぁああ、死にぞこないども!!!」

 

 ジースの左ストレートを右に躱し、右の拳で体躯を貫く。

 

 右脚に気を纏わせ、左右から殴りかかって来たリクームとバータを中段回し蹴りで薙ぎ払う。

 

 悲鳴を上げる間もなく、消される三人。

 

「きぃぇえええええ!」

 

 奇妙な声を上げるとともに超能力者・グルドが、ターレスの動きを止めようと念力を使う。

 

「…フン、邪魔をするなと言わなかったか? 虫けらめ」

 

「!?」

 

 驚愕の表情で念力を破られ、弾き飛ばされるグルド。

 

 ターレスは金色のオーラを更に高めて己の身を縛る念力を弾き飛ばすと、右掌を突き出し金色の気弾を放って肩で息をするグルドを消し飛ばした。

 

「…フン。残るは一人」

 

 ニヤリとしながらギニューを見ると、彼は腰だめに両手をたわめ青い光の球を作り出していた。

 

「!? それはカカロットの!?」

 

「か~、め~、は~、め~!!」

 

 ターレスは舌打ちをすると同時に両手を頭上に掲げ、灰色の光の球を作り上げる。

 

「ちぃっ! やらせるかぁあああ!!」

 

「波ぁあああああああッ!!!」

 

 互いに向かって両手を突き出し、灰色と青色の光が中央でぶつかった。

 

 先程直っていた地面が再び割れて、噴き上がる。

 

 今度はターレスの後ろの地面に亀裂が走り始めていた。

 

「な、なにぃいいいい!? こ、これは……!!」 

 

「フハハハハ! どうだ、ターレスよ!! 貴様の技など、かめはめ波の前には無力だ!!」

 

 勝ち誇るギニューにターレスは叫んだ。

 

「他人の肉体と技、力を得ただけの屑がほざくなぁああああ!!!」

 

「よく言う! 勝利こそが全てなのは私も貴様も変わらんだろうがぁああ!!」

 

 押されている。

 

 このままでは、かめはめ波にターレスの技は押し切られる。

 

 その事実に彼は、舌打ちをして考える。

 

 ターレスとギニューが互いに向かって光を押し合う傍で、静かにバーダックは立ち上る己の力を見下ろした後、魔人ブウを見据えた。

 

「フフフ、真の超サイヤ人か。死者の都から得た可能性で、まさかソレに至るとは。恐れ入ったよ、バーダック」

 

 両腕を組み、余裕の表情を浮かべるブウは静かに後ろを振り返り、セルを見た。

 

 二人は目を合わせると、口元に酷薄な笑みを浮かべて笑い合う。

 

 セルが頷くと、ブウは静かにバーダックに顔を向け直した。

 

「その力は厄介でね。お前も知っているだろうが、その姿になっている間は無限に気が上昇する。しかも闘う相手のレベルに合わせてね。自分と拮抗している実力の者に使っても大した意味はない変身だが、レベルが明らかに違う相手との闘いでは重宝されるだろう」

 

 バーダックは静かに魔人ブウを睨みつけた。

 

「随分と詳しいじゃねえか? この姿になると無限に強くなるだけかと思ってたが」

 

「当たり前だ。私はこの姿になるまでに何百年と争ってきたのだからね。真の超サイヤ人というのは、強ち外れてはいないのだよ。戦えば戦うほどに強くなる、お前たちサイヤ人の特性を高めた姿だからね」

 

 だが……と前置きしてブウは続けた。

 

「今のお前はお前が成れる最強の姿。超サイヤ人3を少し上回る程度の力だ。そこから力が高まっていったところで、敵がそのレベルよりも低いか、同等程度であれば力は少しずつしか上がらない。敵を上回った時点で上昇する力の速度は下がる。ベジットになった私がそれを教えてくれたからね」

 

「…フン。魔人ブウやらフリーザなんてのにならずに、さっさとそのベジットにならねえのか? 俺は歓迎するぜ? いけ好かねえ野郎だからな、一度はぶん殴ってやりたかった」

 

「巫女によってあの姿は封じられてしまってね。生憎と作り上げられなくなった。まあ、それでも今のお前程度ならば問題はないがな」

 

 そう言うとブウは右手を掲げて、更に煙の渦を生じさせる。

 

 人型の姿をした異形が再び、バーダックの前に現れた。

 

「ギギグガガガガガ!!」

 

 牙を剥き出しにした鬼が、凶暴に笑みを浮かべている。

 

「……! 随分と大盤振る舞いじゃねえか? 次々と新しいのを出してくるなんてよ」

 

「ジャネンバという。こいつも孫悟空やベジータに恨みを持っている怨念の姿さ。お前たちが死者の都に反発するサイヤ人共の意志ーー魂で呼ばれた孫悟空達の可能性ならば、私たちはお前たちを滅ぼすために作られた死者の都の意志といったところか」  

 

 ブウは自分の戦闘力を上げることなく、超サイヤ人3を少し上回る程度の力しか出していない。

 

 そしてジャネンバもまた、ブウの意志に従って戦闘力を抑えている。

 

 同時に魔人と邪念が攻撃を仕掛けて来た。

 

 魔人ブウが先にバーダックの懐に入り込み、殴り合う。

 

 高速でその場で足を止めて拳と蹴りを繰り出しあう両者。

 

 バーダックの背後に、まるでパズルのブロックのように身体を分解させながら移動してくるジャネンバ。

 

「グガガガ!!」

 

 後ろから顔を目掛け、殴りつける。

 

 瞬間、右の拳を裏拳にして受けるバーダック。

 

 咄嗟にくるりと身を反転させ、左右にブウとジャネンバを置くと両手をそれぞれに突き出し、気を放って吹き飛ばす。

 

 後方へ弾き飛ばされたジャネンバの目の前にバーダックは現れ、強烈な右のボディブローを叩き込んだ。

 

「グガァアア!」

 

 両腕を組んで頭上からジャネンバの頭に振り下ろす。

 

「ギャァ!」

 

 クレーターを作りながら、地面に倒れ込むジャネンバ。

 

 その後ろから魔人ブウが右手に桃色の光弾を作り上げて、急接近しながら放ってくる。

 

 これにバーダックは右の掌を広げ、蒼い光球を作り出す。

 

「くたばれ!」

 

 一喝と共にオーバースローで投げつけると、青白と桃色の光弾が両者の中央でぶつかり合い相殺した。

 

 殴りつけてくるブウを右腕で受けて左拳を返す。

 

 背後にジャネンバがブロックを分解して組み立てるように移動し、殴りかかってくる。

 

 乱打戦が始まり、バーダックは互角の戦いを展開してみせる。

 

「フフ、素晴らしい戦闘センスだ。私とジャネンバの二人がかりでも押し切れんか。流石は孫悟空の父親だ」

 

 満足そうに笑うブウだが、バーダックは忌々しそうに表情を歪める。

 

 悟空やベジータ、ブロリー達の時のような、一気に戦闘力が上がるような感覚がないからだ。

 

 ブウ達がもっと力を引き出さなければ、バーダックはそのレベルにまで上がれない。

 

 このまま手を抜かれて時間切れを待たれれば、負ける。

 

「からくりがバレてるってことか!」

 

 今の自分は痛みを感じず、攻撃を受け付けない無敵の状態ではあっても、万能とは行かないらしい。

 

 このままでは確実にやられるとバーダックも分かった。

 

 その時だった。

 

 前方で人外の戦いを繰り広げていたリューベが、こちらに向かって移動してきたのだ。

 

「な、なにぃ!?」

 

 ブウがこれに驚き、ジャネンバも恐怖に満ちた表情になってバーダックから同時に離れる。

 

 思わずバーダックがリューベに問いかける。

 

「…何のつもりだ、この鬼め」

 

 リューベは、何故かバーダックの目の前に来るとピタリと動きを止め、フリーザに向き直る。

 

「逃がすか、このサルめェえええええ!!」

 

 金色のフリーザが紫の雷を纏った紅い光弾を右手に作り上げ、全身の気を纏った一撃を放ってきた。

 

 それを淡々とリューベはすり抜けて避ける。

 

 これにブウがリューベの狙いを悟り、フリーザに叫んだ。

 

「待て! フリーザァアアアア!!」

 

 制止するブウの目の前で、フリーザの気弾が真・超サイヤ人と成ったバーダックに直撃した。

 

 瞬間だった。

 

 爆心地から強烈な黄金の炎がまるでフリーザの紅の光弾を食らう様に猛り狂い、一気にバーダックの戦闘力を引き上げた。

 

 黄金の炎は吹き上がり落ち着いた後、ゆっくりとバーダックの身に纏うように小さくなる。

 

「な、なんですって……! 私の渾身の一撃を、餌にしたというのか!?」

 

 驚愕するフリーザの目の前で、バーダックは己の肉体を見下した。

 

「こいつは……! なるほどな……!! 今の俺なら、テメエを倒せそうだぜ。フリーザよぉ?」

 

 ニヤリと凶暴に笑みを浮かべるバーダックの隣にリューベがすり足で移動してきた。

 

 静かにブウとジャネンバに向け、拳を向けている。

 

「! 奴を譲ってくれんのかい? チッ……借りを作っちまったな」

 

 バーダックは静かにフリーザに拳を向けて握りしめた。

 

 未だに光球を作り上げているセルの方を無論意識しながら。

 

「俺自身がこの変身を維持していられる時間は、まだあるみてえだな」

 

「…クッ! あのサル野郎め!! 私の力を利用して雑魚の戦闘力を引き上げるなんて!!」

 

 自分と同等レベルに戦闘力が跳ね上がったバーダックを睨みつけ、ゴールデンフリーザは忌々しそうにする。

 

 その時、ターレスがギニューのかめはめ波を辛うじて相殺しながら、バーダックとリューベの隣に高速移動して現れた。

 

「ククク、サイヤ人の成長速度を甘く見たのが貴様らの運の尽きだ」

 

「フリーザ、覚悟しやがれ!! 俺は貴様が許せねぇ!!!」

 

「……我、求めるはうぬらの真なる一撃。ただそれのみ!!」

 

 三人の超サイヤ人を前に、ブウとジャネンバ、ギニューもフリーザの下に集う。

 

「戦闘民族サイヤ人ーー。つくづく、嫌な連中でしたよ!!」

 

「…だが、それもここまでだ。長きに亘る我ら死者の意志と戦い続けた鬼よ、我らの怨念の気を受けるがいい」

 

 フリーザとブウの言葉の後、セルが瞬間移動でバーダック達の目の前に現れる。

 

「しま!?」

 

「奴には、これがーー!!」

 

 ターレスが目を見開き、バーダックも思い至らなかった自分に舌打ちする。

 

 あれほどの強大な光球ならば、放たれた瞬間に避けるなど造作もなかった。

 

 だが、その本体が一瞬で目の前に現れるのは誤算だ。

 

「悪いが、これで終わりだ!!」

 

 セルがニヤリとしながら、光球をふり降ろした。

 

 咄嗟にバーダックがその球を両手で受け止める。

 

「く……! 何だと、野郎これほどの力を溜めて……!?」

 

 金色のフリーザと同等程度になった自身でも受け切れないほどの圧倒的な力だ。

 

 真・超サイヤ人が力を引き上げてくれるが、間に合わない。

 

 セルが冷酷な笑みを浮かべて、右手を前方に差し出した。

 

「力が引き上がる前に消させてもらう。良い闘いだったぞ……。では、さらばだ」

 

 ターレスが呆然としていた表情から、咄嗟にキルドライバーを作り上げて光球を受け止めているバーダックの隣に打ち込む。

 

 しかし、あっさりと炎の輪はかき消された。

 

「な!? なんだと!?」

 

「ち、ちくしょぉおおおおおおっ!!!」

 

 ターレスとバーダックが目を見開く中、セルが静かに端正な口元を歪めて気を込めた。

 

「はぁああああああっ!!!」

 

 押し込まれる光の球。

 

 なすすべなく、光の球に飲み込まれていく三人の超サイヤ人。

 

 それを見て、フリーザとブウが笑う。

 

「おほほほ! 素晴らしい!! これで、終わりだサル共!!!」

 

「フフフ、美しいものだな」

 

 光の球は、地表を削りながら後方で爆発した。

 

 強烈な一撃は、真・超サイヤ人となったベジットやゴジータの究極の一撃ほどではない。

 

 それでも、今のバーダックやターレスには受け切れない。

 

 きのこ雲が空に向かって突き立つ。

 

 それを見て初めて、セルが勝利を確信した笑みを浮かべた。

 

「フフフ、さらばだサイヤ人どもよ!! これで、この惑星の運命は決まったのだ!!!!」

 

 両手を広げ金色のオーラを纏って、大の字になりながら喜ぶセル。

 

 ギニューが喜びの舞を踊りながら、勝利を祝う。

 

 爆煙がゆっくりと晴れていく。

 

 強大な溝が出来上がり、爆発した地点では底が見えないほどの穴が出来上がっていた。

 

 フリーザはニヤリと笑った後、ゴールデンフリーザから元の白い姿に戻る。

 

「さあて残ったのは力を使い切った孫悟空達と、超サイヤ人二人。後は無駄に増えたサルばかり」

 

「我々ならば、一時間もあれば皆殺しにできる」

 

「勝ちましたな、フリーザ様! セル殿! ブウ殿!!」

 

 ほくそ笑むフリーザとブウ、ギニュー。

 

 それに向けてセルも笑いかけようとして気付いた。

 

 煙が晴れていくごとに石の塔のようなものが、巨大な穴の一点に立っている。

 

 それは爆発の中心地だった。

 

「ま、まさか……!!」

 

 驚愕の表情でセルが見つめ。

 

 笑っていたフリーザ達もゆっくりと恐怖に表情を引きつらせていく。

 

 煙が晴れて、徐々に石の塔の全容が明らかになっていく。

 

 僅か肩幅程度の足場となった地表に静かに黄金の炎を纏って立つは濃紺の道着を着た鬼ーーリューベ。

 

 鬼はかすり傷一つ負うことなく、その場に立っている。

 

「こ、こんな……バカなことが……!!」

 

「あ、ありえん……!! あの元気玉には死者の都の意志そのものが詰まっていたのだぞ!?」

 

「グギギギッ!!」

 

 フリーザ、ブウ、ジャネンバが怯えの表情でリューベを見る。

 

 それを見逃すサイヤ人ではない。

 

「……往けぃ!!」

 

 リューベが一喝すると同時、フリーザ達の目の前に二人の金色と黄金のオーラを纏った超サイヤ人が現れた。

 

「これで、終わりだーー!!」

 

「くたばれ、フリィザァアアアアアア!!!」

 

 超サイヤ人・ターレスが頭上に掲げた灰色の光を両手を突き出して放てば、隣で“真に至った超サイヤ人”バーダックが全ての力を込めて作り上げた右手の光弾をオーバースローで放つ。

 

 二人の放った光が全ての悪の戦士を飲み込んで行った。

 

 光が晴れた時、死者の都と同じような霧と曇天に支配されていた惑星サイヤの王都周辺には、緑成す大地とどこまでも高く澄んだ青空が広がっていた。

 

「……ギネ。トーマよぉ、やっとテメエらの仇を取れたぜ」

 

 静かにバーダックはそれだけを告げた。

 




真に至ったバーダックの光とターレスの一撃は、フリーザ達を見事に倒し、王都を囲んでいた霧と不吉な雲は消えた。

しかし、死者が死者の都に戻っただけだとリューベは告げる。

意志を倒したいのならば、都に降りて固体化した意志との決着を付けねばならない。

その言葉にバーダックは迷うことなくリューベと共に死者の都に降りるのだった。

次回、惑星を守る意志 死者の都

ご期待ください(*^^*)
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