リューベとの闘いにターニッブが答えを出すために。
一方、ベジータとブロリーは死者の都で激戦を繰り広げている真・超サイヤ人リューベと漆黒の大猿を前に立っていた。
死者の都に降り立つのはベジータとブロリー、そしてジュードと巫女プリカ。
悟空達と訓練場で別れた彼らが見たものは、漆黒の肌と濃い赤茶色の体毛をした大猿だった。
「テメエらは。ベジータ王子とブロリー、それにサイヤ王と巫女か」
漆黒の肌を持つ禍々しい大猿と黄金の光を纏う鬼神が互いに向かって拳をぶつけ合い、衝撃が広がっていく。
ジュードとプリカが恐怖に顔をひきつらせて見上げる中、ベジータとブロリーに対しリューベ達の戦いから少し離れたところで体を休めていたサイヤ人。
緑色を基調としたバトルジャケットに赤いバンダナを額に巻いた男ーーバーダックが語りかけてきた。
「バーダック、貴様。その消耗具合は?」
ベジータが、フラつきながらも自力で立って、リューベから溢れ出た気を吸収するバーダックを見て問いかける。
「…真・超サイヤ人に成ったのか」
ブロリーが確信を持って告げた。
その言葉に、目を見開いて彼とバーダックを交互に振り返るジュードとプリカ。
外見はそれほど傷付いてはいないが体力がほとんど残っていないバーダックの状況を、ブロリーは自分が真・超サイヤ人に成った体験や、悟空達の変身後の副作用を見て理解した。
「…なんだ、驚きやがらねえのか。そこのサイヤ王達みたいに、もう少し驚いた面しやがれ。可愛げのねえ」
バーダックがやや不満そうに淡々としているブロリーに告げると、ベジータがニヤリとした。
「…いいぞ。やはり惑星ベジータのサイヤ人は、優秀な戦闘民族だ!」
ある意味、サイヤ人の王子らしいベジータの言葉にバーダックが吐き捨てる。
「関係ねえな。惑星ベジータだろうと、プラントだろうとサイヤやサダラだろうと。俺は俺だ」
「…同感だぁ」
バーダックの言葉にブロリーも頷く。
そんな二人をベジータは嬉しげに笑った。
「…それでこそ! 誇り高き戦闘民族サイヤ人だ!!」
仲良さげに笑い合う三人のサイヤ人を、ジュードは呆れたような、羨ましそうな表情で見ている。
一方で。
リューベと大猿の対決も、いよいよ終局に差し掛かっていた。
「…長きに渡り続いた死闘も残すところ僅か!! 我が殺意! 極限まで昂ぶらば! 滅せぬものなど、断じて無し!!」
身に纏う黄金の気を更に高めるリューベの拳には血のように紅く、炎のように揺らめく光が纏わる。
更に濃紺色の道着は、紅の光を吸収して青紫色に変わった。
「道着の色が変わっただと!? 父との死闘にさえも、奴はあのような姿には!!」
「…あれが“真の力を解放したリューベ”です。禍々しく満ちたあの血色の拳は、葬ったサイヤ王達の魂の果てに創り上げた最強の姿」
目を見開いて驚く兄・ジュードにプリカは巫女となって得た能力で、リューベの状態を説明した。
「つまり、アレが奴の本気の姿か。なるほど、ゴジータやベジットにも引けを取らんな」
ベジータが目を細めながら告げると、バーダックも頷く。
「確かにあの力は異常だぜ。だがよ、野郎の理性が食われてるようには見えねえ。どういうこった?」
「何百年の月日の中。理性が食われるようなことがあるならば、とっくにリューベは力に食い尽くされているはず。プリカ。お前が見たのは、あの姿か?」
バーダックにベジータ、ブロリーが続いてプリカを見ると、彼女は首を横に振った。
「違います。惑星サイヤを滅ぼそうとする鬼は、紛れもなくリューベですが。あの姿ではない」
その言葉に皆が再び、鬼神と大猿の対決を見据える。
「…真の力、見せてみよ!!」
気合いの声と共にリューベの鬼の踏み込みが地面を砕いた後、一気に大猿の懐に飛び込んだ。
ーー なんだと!? ーー
目を細めて叫ぶ大猿に構わず、リューベは血のように紅い光を纏う拳を飛び上がりながら突き上げる。
「…滅殺! 豪昇龍!!」
強烈な一撃に顎を弾き飛ばされながら、身体も後方へのけ反りながら宙に飛ばされる大猿。
リューベはその場から高速移動で宙に浮いたまま、姿を消したあと、飛ばされる大猿の落下点に移動すると、右手を天に向けて大きく振り上げて告げた。
「…我が真なる一撃、受けてみよ!! 金剛國裂斬!!」
振り下ろされた手刀は大地を裂き、紅の波動状の光が間欠泉のように沸き立つと、巨山の如くそびえ立つ。
ーー グアアアアア!!! ーー
大猿は断末魔の悲鳴を上げながら、光に巨体を真っ二つにされて光の粒子となって宙に消えていった。
呆気ないほどの最期に、皆がリューベを見据える。
リューベは静かにベジータ達に向き直ると告げた。
「…惑星サイヤの命運は、うぬらの拳に」
真っ直ぐに告げられたその言葉に、ベジータは目を見開く。
「…どういうことだ? 貴様は何を知っている?」
「あの大猿のバケモンをぶっ倒したのに、まだ何かあるのかよ?」
バーダックも問いかけると。
突如、死者の都の大地が揺れ霧がリューベの体を覆い尽くす。
「…ぬう!」
呻き声と共に人の形をした霧に見える姿になったリューベは、空間にポッカリと開けられた穴に放り込まれた。
「リューベ!!」
ベジータの叫びの中、真の力を開放したリューベがアッサリと異界に送られる。
静かにブロリーが目を細めた。
「…あのリューベを、亜空間に飛ばしただと?」
「真正面からじゃ勝てないと踏んで逃げやがったな…!」
バーダックが忌々しそうに歯をくいしばる前で、リューベを異界に送った霧が大猿の形を取った後、人間の肉体へと変化する。
その姿を見て、ベジータとブロリーが目を見張る。
ーー …我、サイヤの殺意! 極めたり!! ーー
空間に響き渡る声。
死者の都の意思が姿を模したのは、先ほど異界に送ったリューベである。
ただし、只のリューベではない。
「…あ、あの姿は!!」
プリカが恐怖に顔をひきつらせる。
これにジュードも気づいた。
「まさか、プリカが予知した惑星を滅ぼす鬼とは…! リューベの姿を模した惑星の意思なのか!!?」
漆黒の道着のズボンの尻からは、赤黒い体毛が生えた猿のような尻尾が生えている。
荒縄を腰に締め、仁王のようだった両手足は更にごつくなり、異形の爪ーー大猿のそれをしている。
足袋と草履は破け裸足となった脛からは、赤黒い体毛が生えている。
上半身の肌は褐色に染まり、脛から覗いているものと同じ赤黒い体毛が生え、鍛え抜かれた肉体は更に筋肉が膨れ上がり、体格が一回り大きくなっている。
黄金の髪は天に向かって突き立ち、後ろ髪が獅子の鬣のように背中まで伸びている。
青と黒、紫の光が黄金のオーラの内側に現れている。
翡翠に黒の瞳孔があった目は白目に変わり、眼窩上に隆起が起きて眉毛が消えている。
「…ベジータ。こいつは」
「超サイヤ人のつぎはぎのような姿だな。超サイヤ人3と4、ブルーを足したような見た目だ」
腕を組んで冷静に告げるベジータにブロリーも頷く。
その横でバーダックは拳を握り、気合を入れた。
「うぉおお!!」
金色のオーラを身に纏い、超サイヤ人に変身する。
「…バーダック、貴様は俺たちの戦闘を見ながらサイヤパワーを吸収しろ」
「…何? サイヤパワー?」
「…サイヤ人の気に含まれる特有の力だ。サイヤ人を回復させるなら、サイヤパワーが効率がいい。死者の都に漂う霧を通して俺たちの戦闘エネルギーからサイヤパワーを吸収しろ」
「…理屈は分からねえが、さっきリューベの気を吸収できたのと同じ要領だな? だったら造作もねえ」
力強く頷く超サイヤ人バーダックを見据え、ベジータとブロリーも金色のオーラを纏う。
ベジータは超サイヤ人2に。
ブロリーは伝説の超サイヤ人に変身した。
「…なんだ? 真・超サイヤ人は使わねえのか?」
問いかけるバーダックにベジータが不遜な笑みを浮かべる。
「この程度の紛い物に、はたして更なる力を付けたベジータ様の真の力など見せる必要があるかな?」
「……ふん。俺達は強くなった。それだけのことだぁ!!」
隣でブロリーがニヤリと笑った後、二人が“死者の意志が模した超サイヤ人の異形”に構える。
異形の鬼はニヤリと笑うと、羅漢仁王像のような構えを取って告げた。
ーー 我ーー! 万物の“理”を超えし者なり!! ーー
超サイヤ人2のベジータと伝説の超サイヤ人ブロリーの二人を相手取ってこの余裕。
「なら見せてみろ! 貴様の下らん物真似で、異次元の強さを得たこのベジータを倒せるのならな!!」
「ベジータ!!」
ジュードの制止の声をふり切り、ベジータは勇猛果敢に告げると異形の鬼に真っ向から向かって行った。
拳を握り、左右のストレートから右の中段回し蹴りを放つ。
紙一重で異形の鬼は首を左右にひねるだけでストレートを避け、ベジータが中段回し蹴りを放った時には背後に瞬間移動の様に回り込んでいた。
ーー …力を持つならば、示せ! 我は汝らを葬るのみ!! ーー
後ろを振り返ったベジータの鳩尾をまともに撃ち抜く鬼の右正拳突き。
「ぐぉ!?」
目を見開き、悲鳴を上げるベジータの顎を上段回し蹴りが狙い打った。
まともに蹴り上げられ、天高く舞うベジータに鬼は更なる拳を握り締める。
ーー 豪昇龍拳!! ーー
響き渡る雷鳴のような声と共に、後ろ向きにのけ反ったベジータの背中に拳が突き刺さった。
「あぐぅ!!」
背中から地面に叩きつけられるベジータを見ず、着地した瞬間に目の前に現れた巨体の超サイヤ人。
ブロリーと向き合う。
「殺してやるぞ…! 化け物!!」
ーー 笑止!! ーー
拳をぶつけ合う両者。
伝説の超サイヤ人と化した自分よりも強烈な拳に、ブロリーが白目を見開く。
「ぐ、ぬぅ!?」
ーー 汝の力、人に非ず。我と死合うならば、人の心を捨てよ ーー
「黙れ!! 俺は、二度と俺を見失うものか!! 俺の心を取り戻してくれた友の為にも!! そして、共に競い合うと誓ったライバル達の為にもなぁあああ!!!」
金色のオーラを全身から噴き立たせ、力を引き上げるブロリーに鬼は笑う。
異形の声で笑った。
ーー グハハハハハハッ! 笑止!! ーー
黄金の気を纏い、鬼の赤白く輝いた拳がブロリーの巨体の腹を打ち貫いた。
「ぐぅお!?」
うめき声を上げながら前のめりになって上体が下がったブロリーの顔に右のストレートがまともにぶち当たり、後方へ弾き飛ばされる。
後方にあった巨岩にぶつかり、ブロリーは埋まりながらも頭を振って立ち上がる。
異形の鬼が更に攻撃を仕掛けようと拳を握ったとき、倒れていたベジータが立ち上がって両手を左脇に置いて気を練って前方に光を放った。
「喰らえ、ギャリック砲!!!」
見上げた鬼に紫色の光線はまともにぶつかり、周囲の荒野を吹き飛ばしていく。
光が消え、煙が晴れた時、静かに立つ黄金の鬣を持った褐色の肌の鬼が居た。
「なんだと!?」
瞬間、鬼は右手を開いてそれを前方に突き出す。
ブロリーが驚愕するベジータの前に庇う様に現れ、鬼に向かって構える。
五指の指からそれぞれ、ベジータ達の上半身を軽く飲み込むほどの大きさで雷を纏った青白い光弾ーー波動拳が放たれた。
「舐めるな!! スローイングブラスター!!」
ブロリーもオーバースローのフォームで緑色の光弾を放つ。
五つの波動拳の内、自分たちに直撃するコースの二つとぶつかり、ブロリーの放った光は星を砕くほどに強大な大きさになる。
だがーー。
「!? なに!?」
「避けろ、ブロリー!!」
ベジータの言葉と同時、ブロリーはその場から高速移動で離れる。
瞬間、軽々とブロリーの放った巨大な光を撃ち抜いて波動拳が着弾し爆発した。
尋常ではないスピードと破壊力、そして貫通力を持った一撃だ。
「…チッ、奴の波動拳。ピッコロの魔貫光殺法なみの貫通力とスピードだな」
吐き捨てるベジータにブロリーも白目を険しく細める。
「奴め、俺達を使って遊んでいるな」
「舐められたもんだぜ!!」
ベジータが叫ぶと同時、目の前に鬼が現れ拳を握って壮絶な打撃を交換し合う。
超サイヤ人4の自分と統合した事で、今のベジータは超サイヤ人2の状態で基本戦闘力の桁が違う。
つい数日前までのベジータの超サイヤ人ブルーと同等くらいだ。
それでも、殴り合いで押されている。
「…舐めるなよ、クソッタレェエエエエ!!!」
凄まじい拳と蹴りを打ち合いながら、更に気を高めるベジータに対し鬼は笑う。
ーー 汝の力、この程度か? ならば、疾く消えよ ーー
「ほざけぇええええ!!!」
強烈な打撃音が響き渡り、ベジータの腹を左の拳が打ち抜く。
動きが止まったベジータの顔面に左の掌底が打ち込まれ、弾き飛ばされる。
ーー 羅豪双破!! ーー
吹き飛ばされるベジータを見送らず、鬼は背後を振り返る。
3メートルを越える大柄のブロリーが巨大な拳を握りしめて振り下ろしてきていた。
片手でそれを受け止める。
「…ぐう!!」
万力の様にブロリーの剛力でも動かない。
咄嗟に身を引こうとするブロリーよりも早く、鬼はその背後に回ると手刀を一閃した。
ーー 羅漢断頭刃!! ーー
薙ぎ払いをまともに受け、ブロリーは宙に浮きながら縦に吹き飛ぶ。
そのブロリーの顎を狙って、鬼は跳び上がりながらのアッパーカットを放った。
天高く舞い上がり弾き飛ばされるブロリーの巨体。
地面に背中から叩きつけられるのと、ベジータが地面に叩きつけられたのは同時だった。
ーー 笑止! 汝らでは、我の相手は務まらず!! 我は既に鬼なり!!! ーー
土煙を上げながら立ち上がるベジータとブロリー。
そんな二人に挟まれながら、鬼は笑っている。
ーー 力を隠したまま、我を倒す? 愚かな…!! ーー
瞬間、鬼は天に向かって己の褐色の拳を突き上げると、地面に向かって叩きつけた。
ーー 今の汝ら如き、この姿を手に入れた我が動くまでもない!! 影に食われて消えるがいい!!! ーー
青黒い波動と共に光が三つ現れ、収集していく。
光は三つの人間の形を取った。
「な!? これはーー!!」
ジュードが目を見張り、プリカも忌まわしいものを見るように目を細める。
「惑星の意志よ。貴方は、それほどまでに我々人間が憎いのですか!?」
現れたのは、三人のサイヤ人。
ノースリーブの紺色フィットスーツを着た金色の髪を逆立て、全身に血管が浮き上がり、額には「M」のマークが刻まれた姿のベジータ。
「ククク、残忍で冷酷なサイヤ人の力を思い知れ!!」
同じく、3メートルを越える伝説の超サイヤ人の姿をした全身に血管が浮き上がり、額に「M」のマークが刻まれた姿のブロリー。
「フハハハハハ! 全て、全てを破壊してくれるぅうううう!!!!」
そして濃紺の道着を着た茶色のオープンフィンガーグローブを付けた左右非対称の髪型を持つ黒髪の男。
彼は静かに拳を握ると禍々しい紫の雷を拳に纏わせながら、超サイヤ人へと変身した。
「力こそが正義だ…!! 貴様らの力を、この俺に示せ!!!」
強烈な真・超サイヤ人の殺意に正気を奪われ、氷のような翡翠の目を持つ鬼と化したーーターニッブの姿が其処にある。
これにベジータとブロリー、バーダックが腰を落として斜に構えながら、述べ合う。
「フン。バビディに洗脳された時の俺か」
「…俺も居るのか。違う次元だか知らんが、つくづく洗脳に縁がある」
「テメエ、ターニッブなのか? 随分とつまらねえ面じゃねえか。それがテメエの可能性ってヤツか」
三人の下に、それぞれの相手が並び立つ。
破壊王子となったベジータ。
破壊王と化したブロリー。
そして超サイヤ人に取り込まれたターニッブ。
鬼は彼らと向き合う三人の超サイヤ人に向かって告げた。
ーー 汝らの力を示せ。我が喰らうに値する力を!! ーー
吼えつける鬼を睨み返し、バーダックは叫んだ。
「下らねえ。紛い物しか作れねえテメエが、俺達サイヤ人を勝手に測ってんじゃねえ!!」
超サイヤ人2に変身するバーダック。
これにブロリーがニヤリとする。
「どうやら、体力が回復したようだな」
「ああ。テメエらのサイヤパワーとやらのおかげでな!」
笑い合う二人の前に濃紺の道着を着たターニッブが突っ込んでくる。
「何を笑っている!? 死合いを前に!! さあ! 俺と闘い、力を示せ!!」
バーダックに向けて放たれる紅い雷を纏った正拳突き。
しかし、それは巨大な筋肉の塊と言っていい掌に受け止められていた。
「…貴様、この俺の友の姿を真似るとは。簡単には死なさんぞ…!!」
3メートルを優に越える肉体のブロリーがターニッブを見下ろす。
睨み合う両者だが、バーダックが二人の間に割って入る。
「待てよ、ブロリー。コイツは俺にケンカを売って来やがったんだ。俺がぶっ潰してやらぁ」
「…バーダック」
「テメエは、自分の紛い物を潰して来い」
バーダックの視線の先を振り返ると、金色の超サイヤ人特有のオーラに禍々しい紫の光を纏った己が見える。
「貴様ぁ、サイヤ人だなぁ? 殺してやるぞ!!!」
凶暴な笑みを浮かべて笑う破壊王ブロリーに対し、伝説の超サイヤ人ブロリーが静かに向き合った。
「洗脳されたと言うよりは、力に取り込まれて暴走したと言ったところか」
「…何をボーっと突っ立って喚いている? お前が戦う意志を見せなければ、俺はこの惑星を破壊し尽くすだけだぁ!!」
「…くだらん。死者の都とやらも、お前程度を寄越すようならば知れている。どうやら、ベジットに続いてリューベの姿を模したことで、模倣するエネルギーもなくなってきたか」
淡々と告げるブロリーの言葉に破壊王ブロリーが狂気の笑みから一転、怒りの表情に変わる。
「死にたいようだな…!!」
「やってみろ、“化け物”」
己の姿に化けた死者の意志に対し、ブロリーは淡々と告げた。
これに破壊王ブロリーが叫びながら、突進。
「俺が化け物? 違う! 俺は悪魔だ!」
巨大な右の拳がブロリーの左顔面を射抜いた。
「フハハハハハ!!!」
強烈な手ごたえに高笑いする破壊王ブロリー。
しかし、すぐに違和感に気付く。
目の前の巨体は全く動かず、破壊王ブロリーが放った拳を頬で受け止めていた。
「貴様が悪魔? 違うな。貴様はただの“化け物”だ!!」
淡々と知性を感じさせる白目を破壊王ブロリーに向け、巨大な拳が腹を射抜く。
「ぐぅお!?」
前のめりになる破壊王ブロリーの顎にブロリーの鋭い前蹴りが突き刺さる。
「あがぁ!?」
弾き飛ばされる破壊王ブロリーの先にブロリーは回り込み、頭上に両手を組んで打ち下ろした。
地面に叩きつけられた破壊王ブロリーは、脳震盪を起こしたのかフラフラとしながらも立ち上がってくる。
「…な、なんだ、と…!?」
目の前にブロリーが悠然と立っている。
それも笑みを浮かべるのではなく、無表情に。
これに破壊王ブロリーが笑う。
「ふ、フハハハハハ!! ならば、消してやるぞ!!!」
全身に金色のオーラを纏い、ブロリーの頭上に飛ぶと緑色の光るバリアーを球体状に発生させて身を包む。
そして右手を開き、全てのエネルギーを掌サイズの光る球に凝縮する。
作り出された自分の影に向かってブロリーは静かに告げた。
「やってみろ」
「ほざいたな…!! ならば、消え失せろぉおお!!!」
破壊王ブロリーは右手にある光弾をサイドスローで前方に放った。
ギガンティックミーティアと呼ばれるブロリー最大最強の技である。
これにブロリーも己の全身に金色のオーラを纏うと、破壊王ブロリーと全く同じフォームから技を放った。
「…とっておきだぁ!!」
二つの光弾が互いの中央でぶつかり合い、押し合う。
全くの互角。
これに破壊王ブロリーが忌々しそうに表情を歪めながら、左手を突き出す。
「消えろと言ったはずだ、クズがぁ!!!」
押し合う緑色の光弾が破壊王ブロリーの方だけ大きくなる。
既に銀河系を破壊できるほどの威力を秘めている。
だが、ブロリーは平然としていた。
「怖気づいたか? フハハハハハ!!」
笑う破壊王ブロリーを見ずに、静かにブロリーは己の前に両手を突き出す。
「!? その技はーーカカロット!?」
静かにブロリーは両手を右の腰に置いて気を高める。
圧倒的な伝説の超サイヤ人の気が両掌に凝縮されていく。
「カカロットォオオオオオオ!!!」
破壊王ブロリーの様子がおかしくなった。
ブロリーの技の構えを見ただけで、猛り狂い出したのだ。
同じ顔のバーダックを見ても反応しなかったのに、である。
左手を突き出し、更に気弾を放ってギガンティックミーティアの威力を高めていく。
「…フン」
ブロリーはそれをつまらなそうに見ている。
そして瞳を閉じる。
思い描くのは、白い道着を着た友の顔。
山吹色の道着を着た好敵手の顔。
紺色のフィットネススーツの上に白銀のバトルジャケットを着たライバルの顔。
「うぉおおお! 邪魔だぁあああああ!!!」
叫びと共に両手を突き出して放たれたのは、圧倒的な緑色の光線だった。
それはアッサリと破壊王ブロリーの放った緑色の巨大な光弾を撃ち貫き、一瞬で目の前に迫った。
「ぐぅううう! カカロッ…トォオオオオオオ!!!!」
両腕を交差させエネルギーのバリアーを張って受け止めるも、止めたのは一瞬。
そのまま光線に飲み込まれ、死者の都が作り出した破壊王ブロリーは、消えて行った。
「言ったはずだ…。お前はただの化け物だとな」
消し飛んだ破壊王ブロリーに、伝説の超サイヤ人ブロリーは静かにそう告げた。
ーーーーーー
一方、ブロリー同士の決着がついた直ぐ横では、超サイヤ人2となったバーダックと“真・超サイヤ人の力に取り込まれたターニッブ”の闘いが始まっていた。
拳と拳をぶつけ合いながら、バーダックは殺意を剥き出しにしたターニッブに笑いかける。
「どうしたぁ!? こんなもんなのかよ、真の超サイヤ人の力ってのは!!」
「ほざいたな…!! たかが入口を越えた程度の分際で!!」
「御託はいいんだよ! テメエが言う“真・超サイヤ人”ってヤツの力ぁ、見してみろやぁ!! カカロットやベジータ王子達を認めさせた本物のターニッブより、テメエが優れてるってんならなぁ!!!」
「ふざけたことを。…この力の前には、闘いの意味などもはや不要だ!!」
ぶつかり合う両者。
ぶつけ合った拳を弾き合い、バーダックは片手に全ての気を。
ターニッブは腰だめに溜めた己の気を前方に突き出す。
「喰らいやがれ!!」
「波動ぉ拳ッ!!」
青白いバーダックの光線と、禍々しいターニッブの放った紫色の波動拳が相殺する。
戦闘本能のみで動いているターニッブの動きは、どっしりと構えるのではなく、敵を殺すために動いて攻撃を仕掛けてくる。
悟空やガーキンのように足で動き回るスタイルに似ている。
だが、二人とは決定的に違うものがある。
それが殺意だ。
死者の都が作り出したターニッブの影は、阿修羅閃空と呼ばれるリューベと同じすり足での高速移動を行う。
まるで滑るように地面を移動し、気配を消して目の前に現れては殺意を纏った強烈な拳を本能のままに急所に繰り出してくる。
「…荒削りな拳だが、悪くない。さあ、俺と死合え!!」
理性は超サイヤ人の破壊衝動に侵されながらも、体は生真面目な修行を地道に積み重ねてきたターニッブの動きを忘れておらず、荒々しい拳には武の動きも重ねてある。
(これが自分の力に飲み込まれた男の拳か。確かに強え…だがよ!!)
紙一重で拳を捌きながら、バーダックは告げた。
「…テメエ、こんな中途半端な拳で本物を上回ってるつもりでいるのか?」
「何だと!?」
力を無限に引き上げるターニッブに、バーダックは目を見て叫ぶ。
「分からねえか? だったら、体で教えてやらぁ!!」
叫ぶとバーダックは、ターニッブに殴りかかった。
ターニッブも拳を返す。
乱打戦が繰り広げられ、そこかしこで地面がせり上がり、空に軌跡が描かれる。
空も地も構わずに飛び、駆け回って、拳や蹴りを繰り出し合う両者。
だが、ターニッブの力が変わらず上昇しているにも関わらず、後方へのけ反る。
「…何故だ。この俺が、何故打ち負ける!?」
「分からねえなら教えてやらぁ」
驚愕に目を見開くターニッブに、バーダックが首を鳴らしながら告げる。
「…テメエの動き、チグハグなんだよ。本物のターニッブの動きと超サイヤ人の破壊衝動から来る動き。似てるようで違うんだ」
「…何だと?」
訝しむターニッブの影に向かい、バーダックは告げた。
「リューベの様な動きが本来のテメエの型なんだろうよ。だが、ターニッブの拳の鍛え方とリューベの鍛え方は正反対のもんだ。倒すことを目的にしたリューベの拳は、正に超サイヤ人の為だけの技。だが、ターニッブの拳は野郎も言ってやがったが、勝つ為の拳だ。ターニッブの為だけの拳なんだよ」
「…バカな、俺もターニッブだ!!」
「分からねえか? テメエは否定したろ、自分の在り方をよ。積み重ねてきた自分を否定して、安易に力に逃げたろ?」
徐々に、ターニッブの目が怒りに震える。
氷の様な翡翠の瞳、無表情だった顔が鬼と化していく。
「…その時点でテメエは本物には勝てねえよ。自分と向き合い続けているあの野郎と、逃げちまったテメエじゃ勝負にもならねえ。その答えが、半端なテメエの拳だ」
「…ほざけ、バーダックぅうう!!!」
黄金のオーラを纏い、翡翠に黒の瞳孔が現れた目をバーダックに向ける。
地面を踏み砕き、前のめりになって肩を怒らせ拳を握ると、両手を前に突き出して右腰に置き、紫の光を練る。
「一撃で殺してやる! 滅!!」
バーダックはそれを見ると静かに右手を開き、胸の前に置く。
「…いつまでも、寝言ほざいてんじゃねえよ!」
右手に全身の気を練ることで出来た青白い光の球が生まれた。
これに合わせる様に、ターニッブが禍々しい光を両手を突き出して放ってくる。
その光は命あるものを殺し、形あるものを壊す一撃。
「真空、波動拳!!」
紅の雷を纏った紫の光線に対し、バーダックは手の内で回転する光の球を見据え呟く。
「…吹っ飛ばしてやらぁ!」
目を見開き、バーダックは金色の気を更に高めると、オーバースローで青白い光の球を投げつけた。
「これで、最後だぁあああ!!!」
ジャイロ回転しながら放たれた光の球は、何もかもを撃ち抜く光線に変化し、まともに真空波動拳とぶつかり合った。
互いに向かって押し合う青白い光と紫電の光。
しかし、ぶつかった時点で勝敗は決していた。
バーダックの放った光線は、ぶつかった瞬間にその大きさを倍近くにまで増加したのだ。
「…何だと!? 真の力を肯定したこの俺が負けるというのか!?」
一気に押し返される己の波動拳に、目を見開くと。
バーダックは髪を腰まで伸ばし眉を無くした姿・超サイヤ人3に変身していたのだ。
「…お、おのれぇええええっ!!」
光の向こうに消えていくターニッブを見据え、超サイヤ人3となったバーダックは息を吐いて超サイヤ人2の状態に戻りながら呟いた。
「…本物のテメエなら、こんな小細工も簡単に跳ね返して来たぜ? ターニッブよぉ」
ブロリーやベジットにも屈さなかった青年の影に向かって、バーダックは静かにそう告げた。
ーーーーーー
一方で、二組とはやや離れた位置で、ベジータはバビディに洗脳された時の破壊王子と呼ばれる頃の自分と向き合っていた。
「…随分、久しぶりに見たな。なるほど、コレが当時の俺が選んだ姿か。やはり、トランクスや悟天に見せる様なモンじゃないな」
辛辣なベジータの言葉に、破壊王子ベジータは静かに邪悪な笑みを浮かべた。
「笑わせてくれるぜ…! 随分と丸くなっちまったじゃないか? そんなザマで、サイヤ人の冷酷さと残忍さを取り戻した状態の俺に敵うのか?」
禍々しい気と邪悪な気配は、正に魔人ブウの頃に現れた破壊王子そのものだ。
「…残忍で冷酷なサイヤ人、か。その姿ならば、カカロットを超えられると当時の俺は考えた。結果は超サイヤ人3なんてふざけたモノを持っていたあの野郎の完勝だった訳だが」
「それを何とも思わんのか? 今一度、戦闘民族サイヤ人の王子としてカカロットを超えようとは!?」
「…くだらん。何が戦闘民族サイヤ人だ。誇りを捨ててバビディの力に頼り、強くなった気でいた訳じゃなかろう?」
ベジータの言葉に破壊王子ベジータは目を細めて応えた。
「…さあな」
構わずにベジータは告げる。
「別にあの時と同じ状況ならば、今でも俺は同じことをしただろう。カカロットと目一杯闘うためにな。奴はあの日だけしか、この世に来ることはできなかった。俺たちの実力差は歴然としていて、且つ魔人ブウのゴタゴタの所為で勝負が流れるかもしれなかったからな。カカロットも俺も蘇った今はそう焦ることもないが」
「フン。弱くなったな、ベジータ。人間としての温かさなどを戦闘民族サイヤ人が求めるとは」
「…試してみるか?」
同時に構える。
超サイヤ人2のベジータと破壊王子ベジータ。
右手を突き出したのは同時。
「「ビッグバン・アタァアアック!!」」
青白い光の球が掌に生じ、光弾が放たれる。
中央でぶつかり合う二つの強烈な光は、互いに向かって押し合う。
「な、何だと!? バビディの洗脳で、俺の力は底上げされているはずだぞ!?」
「…フン。まあ、驚くのも仕方あるまい。つい数日前の俺ならば、超サイヤ人2でなら貴様と良い勝負をしただろうからな」
淡々と告げるベジータに、破壊王子ベジータの目が見開かれる。
「どういうことだ!? 貴様、先のベジットと闘った時はこれほどのモノでは!?」
「ああ。まあ、精神と時の部屋に十数年入ってきたようなものだ」
「…な、なんだと!?」
目を見開く破壊王子ベジータにベジータは静かに笑う。
「俺が弱くなったと、貴様は言ったな? だが実際に手合わせした感想はどうだ?」
「…き、貴様!!」
破壊王子ベジータは必死にビッグバンアタックを押し返そうと、左手を右手に添えて力を入れている。
だが、ベジータは淡々と右手を突き出したまま、微動だにしない。
「…バカな! ビクともしないだと!? どうなってやがる!?」
「貴様とは基本戦闘力が違うんだ、マヌケめ」
はっきりと告げるベジータに破壊王子ベジータは目を見開く。
「…ふ、ふざけるな! 俺は貴様の基本戦闘力をバビディによって引き上げられた存在だぞ!! いくら貴様が修行していたとはいえ、超サイヤ人2の状態でこんな…!!」
明確な差ができる訳が、と破壊王子ベジータが告げようとするよりも早く、ベジータのビッグバンアタックが一気に膨れ上がり、破壊王子ベジータの放ったビッグバンアタックを飲み込むと爆発した。
「…ば、バカな! こんな!!」
「…こんなはずじゃなかったか? まあ、そうだろうな。俺自身も反則だと思っている。未来の自分から得た力と技、変身を手に入れたのだからな」
「…なんだと!? バカな、時空を超えた可能性を引いたというのか!? あ、あり得ん!! 死者の都があるとはいえ、自分の未来の可能性が出てくるなど」
冷や汗を流しながら告げる破壊王子ベジータに、ベジータは静かに目を細めて告げた。
「貴様ら死者の意思が、ベジットを作り上げた。そいつを見た未来の俺やカカロットが脅威だと感じるくらいにベジットになった貴様は強かった。だが、そのベジットは俺たちに倒された。それを見た未来の俺やカカロットは、この俺達を鍛え上げることを望んだのさ」
破壊王子ベジータが目を見開いてベジータを見据える。
「つまり、貴様はサイヤ人の死人が呼んだ未来の自分を取り込んだというのか? だから、其処までデタラメにパワーアップしたと?」
「…まあ、そんなところだ。今の俺は超サイヤ人2の状態で破壊神の領域に片足を突っ込んでる。前までは超サイヤ人ブルーにならなければ至れなかった領域だ。喜びに打ち震えたぜ…!!」
震える拳を握り締め、超サイヤ人2でありながら神の領域に達した己を見下ろす。
「…貴様は言ったな? バビディの洗脳を受け、甘さを消したが故に強くなれた、と」
ベジータは静かに破壊王子ベジータの目を見据えた。
「…本当にそうか、ベジータ?」
真剣な瞳で静かにベジータは、恐怖と屈辱に歯軋りする破壊王子ベジータを見据えた。
次々と生み出された己の影を払うベジータ達。
いよいよ、死者の都も紛い物を生み出す能力がなくなり、ベジータ達が有利になる。
しかし、惑星に溜まりし怨念は全てを食らうために鬼の姿を模した肉体に意識と力の全てを集中させたのだ。
ここに、怨霊と超人の闘いが始まる。