ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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 後編です(´ー`* ))))

 頭を空っぽにして見てください(´ー`* ))))



地球育ちのサイヤ人 対 真・超サイヤ人★

 

【挿絵表示】

 

 

 ターニッブという男について、少し語ろう。

 

 彼は、惑星サイヤに住むサイヤ人だ。

 

 惑星サイヤのサイヤ人達は、穏やかな心と悪を屈する強い力を持った戦士達。

 

 地球人と変わらない程度の身体能力しかないが、街などを造る文明人が共存している。

 

 周辺の星々からも優れた知性と身体能力を買われ、銀河パトロール隊員にも何名か参加しているらしい。

 

 そんな平和な世界に現れた純粋な戦士。

 

 力を正義の為に使うのでも、弱者を守る為にでもなく、まして生きる為に使うのでもない。

 

 ただ、己の信念の為だけに。

 

 ただ、強さを極める為に、自己研鑽の為だけに使う。

 

 それが、ターニッブだった。

 

 正義感がないわけではない、むしろ強い方だろう。

 

 弱きを守ることを否と考えるのではない、むしろ弱いのは己自身の心だと語る。

 

 他者を敬い、己を未熟と断じ、自分を高めることを目的に彼は拳を振るう。

 

 真の強さに近付く為に。

 

ーーーーーー

  

 そんな彼にとって今、身に纏う力は己の道を否定するものだった。

 

 積み重ねた修練、高めた自己。

 

 親友や宿敵との研鑽。

 

 それらを全て無駄と言い切るかのような圧倒的な力と驚異的な成長。

 

 絶えず高まり、溢れる気。

 

 それに比例して強まる破壊衝動。

 

 そんな己を見下ろした後、ターニッブは目の前の青い超サイヤ人を見据えた。

 

 神の気とやらを纏う、自分と同じ顔の純粋なサイヤ人の戦士を。

 

 互いに構える。

 

 奇しくも鏡に写ったかのような両者の構えは、腰ために両手をたわめて右脇に置いて気を高める為のモノ。

 

 両者の掌には、一つの青い光の球が出来上がっていた。

 

「オメエも使えるんか。かめはめ波を!!」

 

「惑星サイヤの王が俺に叩き込んだ技だ。気を両手に凝縮させて放つ。しかし、地球育ちのお前にも似た技があるとは、驚きだ」

 

「…そういや。サイヤ人の王子っちゅうベジータのギャリック砲も似てるな」

 

 気を高めながら、悟空がベジータを見ると彼は不快げに言った。

 

「俺のはサイヤ人の王家に代々伝わる技だ! 貴様のかめはめ波が似てると言え!!」

 

 悟空はその言葉に、ニヤリと返すとターニッブに向いた。

 

「真正面から撃ち合おうぜ!」

 

「…受けて立とう!!」

 

 同時に上下に合わせた両手を前方に突き出しながら、悟空とターニッブは、青白い光の一撃を放った。

 

「か〜め〜は〜め〜波ぁあああっ!!」

 

「はぁぁああっ、セイヤァ!!」

 

 互いの真ん中でぶつかり合う青白い光と光。

 

 拮抗した二つの光線は、相殺すると同時に周囲に尋常でない破壊をもたらしながら、爆発した。

 

「…ダダダダダッ!!」

 

 気合い一閃、一気にターニッブの懐に踏み込むと悟空は鋭い拳と蹴りの連打を放ちはじめる。

 

 拳と蹴りがぶつかり合いながら、ターニッブも攻撃を返す。

 

 至近距離で互いにラッシュを放ちながら、避ける。

 

 悟空の攻撃は鋭く、速く、炸裂弾のように弾ける。

 

 対するターニッブの攻撃は、岩のように重い。

 

 ラッシュの手数なら悟空。

 

 一撃、一撃の重さならターニッブ。

 

 スピードは互角。

 

 両者の気功波の一撃も五分と五分。

 

 拮抗したこの打ち合いの決め手となるのは、技の組み立てとキレ。

 

 そして集中力。

 

 ターニッブの右正拳中段突きを左に見切り、カウンターの右フックを顎を狙って返す悟空。

 

 ターニッブはコレを顔の横に左掌を置いて掴み止め、右の拳を鳩尾と顎に向かって二連打放つ。

 

 悟空は鳩尾に放たれた拳を膝で蹴り上げて捌き、顎への一撃を左掌で掴み止める。

 

 睨み合う両者。

 

 同時に一歩下がりながら、右の膝蹴りを互いに相殺。

 

 お互いに掴み止めた右拳をパッと手放し、左掌を握って拳を作るとお互いに向かって放ち合う、

 

 悟空の左ストレートとターニッブの左正拳中段突きがまともにぶつかり合う。

 

 踏み込んだ威力も載せて放つ悟空の拳。

 

 対するターニッブの拳は、両足をしっかりと地面につけて広げ放つ。

 

 押し込むための悟空の拳と、押し負けないためのターニッブの拳。

 

 悟空が燃え盛る火炎の勢いを持って攻めれば、ターニッブは如何なる攻撃もしっかりと受けて返す巨山の如き守り。

 

 山はただ受けるのではなく、活火山となりて飛び散る溶岩の如き勢いで拳を放ってくる。

 

 悟空は風の如くその場でステップを刻んで、攻撃に徹しながらも冷静に避けていく。

 

 どちらも譲らない。

 

(…大したモンだ。超サイヤ人ブルーになったオラについてくるなんてよ。攻撃を喰らえば食らうほどに、奴は気が高まり、反応速度を増している。ビルス様と初めてやり合った時のオラみてえだな)

 

 あの時の自分もまた、ビルスの戦闘力に引き上げられていった。

 

 ならば“真・超サイヤ人”とベジータが名付けたターニッブは、超サイヤ人ブルーとなった自分にどれだけ近づいてくるのか。

 

 悟空は、ニヤリと笑うと一気に気を高めた。

 

「…!?」

 

 同等のレベルで打ち合いをしていたターニッブの目にも分かるほど、悟空は動きを上げた。

 

 ガードに回るターニッブを、悟空は強烈な左右のフックでピンボールのように弾き飛ばす。

 

 ガードした両手を見ながら、ターニッブが眼を見張ると目の前に悟空の左上段回し蹴りが迫っている。

 

 咄嗟に上体を後ろに反らして、顎先で紙一重で避けると同時、ピタリと悟空の足裏が止まり、そのまま足裏が槍のように突き出される。

 

 咄嗟に右腕を畳んで顎の前に置いて受けるも、ターニッブは後方へ蹴り飛ばされた。

 

 両手を地面につき、引っ掻きながら後方へ引きずられるのを止めようとする。

 

 その目の前に悟空が迫る。

 

「……くっ!?」

 

「どうしたぁ!? オメエの力ぁ、こんなもんかぁあああ!!!」

 

 叫びながら、情け容赦のない連撃が放たれる。

 

 これをベジータは静かに見据え、ニヤリと笑う。

 

「カカロット…。ターニッブの超サイヤ人を見極めようというのか」

 

 連撃の中から、右ストレートを選んでターニッブも右の拳を合わせる。

 

 ぶつかり合う両者の拳。

 

 しかし、圧倒的な戦闘力の差にターニッブが弾き飛ばされる。

 

(真正面から打ち合ったところでスピードもパワーもカカロットの超サイヤ人ブルーの方が上だ。だが、ターニッブの奴が変身した超サイヤ人は、一気に気が高まっていく。カカロットの攻撃を受けて戦闘力が桁違いに上がっている、か)

 

 ターニッブの無限の戦闘力の上昇を感じながら、ベジータは静かに悟空を見据える。

 

「嬉しそうだな、カカロット。俺たちの超サイヤ人には、まだまだ無限の可能性が秘められている」

 

 真・超サイヤ人と名付けたあの力は、どこまで超サイヤ人ブルーに近づくのか。

 

 それとも超えるのか。

 

 ベジータは。

 

 そしておそらく悟空も、それを期待している。

 

 超サイヤ人ブルーとは別の可能性。

 

 ならば見るしかない。

 

 超えるしかない。

 

 それがーー

 

「戦闘民族サイヤ人だ!!」

 

 何度も地べたに叩き伏せられる。

 

 その度に立ち上がる。

 

 拳を繰り出す。

 

 それ以上の一撃。

 

 今まで以上の連撃。

 

 瞬く間に叩き伏せられながらも、ターニッブは立ち上がる。

 

 目の前に立つ男の強さに近づく為に。

 

 初めてターニッブは、無限に戦闘力が上昇するこの姿に感謝していた。

 

 自分の全てを出して尚、それを上回る孫悟空という敵に出会えたことにも。

 

(気が更に上がってやがる。ビルス様とやり合った頃のーー神の気を吸収した時のオラと同じぐらい、か)

 

 立ち上がってくるターニッブを叩き伏せながらも、悟空は気付いている。

 

 受ける拳が徐々に重くなっていることに。

 

 手が痺れ始めていることに。

 

 そして、攻撃を捌くのが難しくなってきていることに。

 

「…ターニッブよぉ、オメエはまだ自分の力として超サイヤ人を認められねえんか?」

 

 構えながら、立ち上がってくるターニッブを見据える。

 

 痛みを与えれば与える程に。

 

「凄い男だ……孫悟空。お前は、超サイヤ人ブルーの全てをもって俺に自分を超えさせようとしていた。お前自身が強くなった俺を、更に一歩超えるために!!」

 

 時間を与えれば与える程に。

 

 無限に力を増していく、正にサイヤ人の権化ともいうべき姿に。

 

「……うぉおおおおおおおおっ!!!」

 

 ターニッブは立ち上がると同時に、気を入れて身に纏う黄金のオーラを激しく燃やす。

 

 悟空はそれに目を見開き、その頬に一筋の冷や汗を伝わせている。

 

「気が一気に跳ね上がりやがった……! こいつは……!!」

 

 戦いを見ていたベジータもターニッブの上昇を目の当たりにして震える。

 

「……フリーザの金色と同等か。随分と成長したもんだな」

 

 対峙する悟空も笑みを浮かべながら、一気に気を高めて踏み込む。

 

 三度、ぶつかり合う拳と拳。 

 

 だが、今度はターニッブは吹き飛ばされない。

 

 真っ直ぐな目で彼は悟空を見据えて来た。

 

(こいつ……! 一気に限界を超えやがった……!! 真・超サイヤ人ってのはこれほどか……!!)

 

 驚きながらもその口元に刻まれているのは笑みだ。

 

 強敵の誕生に心から、孫悟空は喜んでいる。

 

 超サイヤ人ブルーをも上回る成長速度を見せたターニッブの力に。

 

 その境地に。

 

「だが、勝負はまだまだこれからだぜぇ!!」

 

 悟空のその言葉にターニッブはニヤリと笑う。

 

 清々しい笑みが、圧倒的な気を纏ってなお変わらない。

 

 打たれる。

 

 打つ。

 

 何度も何度も。

 

 スピードとパワーで一枚上をいかれて尚、孫悟空は互角の戦いを演じている。

 

 ターニッブの癖や思考は先の戦いから、既に見抜いている。

 

 そこから動きを予測して攻撃を返すのは、孫悟空にとって難しいことではない。

 

 強い相手との闘いに興奮し、アドレナリンがお互いの脳から分泌され、圧倒的なダメージを受けながらも痛みを感じない。

 

 やがてーーターニッブの顔には大量の汗が浮かび始めていた。

 

「はあ!!」

 

 悟空の気合の右ストレートが、まともにターニッブの顔に入り、後方へのけ反る。

 

 ターニッブは、それをきっかけに纏っていた激しい炎のようなオーラが消え、通常の超サイヤ人へと変化した。

 

 見た目にはほとんど変化は見えないが、無限に上昇していた気が落ち着いたのだ。

 

 おまけに、先までは見えなかった疲れやダメージが一気に表面に現れたようで、ターニッブは肩で息をし始めていた。

 

 無理もない。

 

 神の域に居なかった者が、いきなりその境地に引き上げられたのだ。

 

 体が馴染むわけがない。

 

 悟空はそう思っていた。

 

 だがーー。

 

 殴りかかってくるターニッブの動きは、先ほどまでと何ら変わらない。

 

 むしろ、体に馴染んだように自然に動いている。

 

(こいつ…! その力をもう自分のモノにしちまってんのか?)

 

 真・超サイヤ人と呼ばれた先の姿は痛みを感じなくなり、相手のレベルに合わせてドンドンと戦闘力を上げることができる。

 

 言わば相手の強さから与えられる借り物の力。

 

 この形態に変身すれば、その間は文字通り無敵だ。

 

 反面、時間の経過と共に限界を超えた反動が体に現れる。

 

 超サイヤ人ゴッドのようなモノだ。

 

 一定時間が過ぎれば、無自覚に変身が解かれて通常の超サイヤ人に問答無用で戻ってしまう。

 

 もっとも先ほどまでのように、何の問題もなく拳をふるえるわけではない。

 

 痛みと疲れが一気に襲い来るのだ。

 

 普通に身体を動かすのさえ、激痛が走る。

 

 その激痛に反応が遅れ、悟空の攻撃をまともに喰らいはじめる。

 

「……がは!」

 

 ボディに一撃、顎を蹴り上げられ、のけ反ったターニッブの背後に移動してさらに後ろ回し蹴りを決めて吹き飛ばす悟空。

 

「つぇい!!」

 

 右手をかざし、更に気功波で吹き飛ばした。

 

 ターニッブの体は地面に叩きつけられ、土煙を天に向かって昇らせる。

 

「……左ぃ!!」

 

 悟空が叫びながら、自分の顔の横に右腕を構える。

 

 そこにターニッブの拳が打ち込まれていた。

 

 汗を掻き、肩で息をしながらも超サイヤ人となったターニッブの目は、一向に衰えていない。

 

 むしろ、その闘志は燃え上がっている。

 

(これだけ追い詰められていて、攻撃の重さが変わらねえ。それだけじゃねえ、スピードが一向に鈍らねえ。コイツは、自分がどんだけ追い詰められても戦えるように。日頃から常に自分を追い込む修行をしてんだ……!)

 

 目を鋭く細めながら、悟空は笑う。

 

(負けらんねえ。コイツにだけは、負けらんねえ……! 自分を追い込む修行なら、オラは誰にも負けてねえ!!)

 

 互いに拳と蹴りをぶつけ合う。

 

 水銀のオーラと黄金のオーラ。

 

 二人の同じ顔をした超サイヤ人。

 

 一撃が直撃するたびに、後方へ弾かれる両者の顔。

 

 その度に笑みを浮かべて。

 

 瞳にギラギラと燃える闘志を滾らせて。

 

 二人のサイヤ人は己の限界を超えて相手を倒さんと眼を見開く。

 

「最高だ……! これほどの奴だとは思わなかった……! オメエもそうだろ、ターニッブ!?」

 

「……ああ。この勝負、俺は全てを賭すことができる!! その上で俺は、お前を超える!!」

 

「なら、決めようぜ! どっちが強えんかをなぁああ!!」

 

 更に激しく。

 

 更に強く。

 

「まだだ! オラの力、こんなもんじゃねえ!!」

 

「ああ、まだまだぁ!!」

 

 高まる二人の拳。

 

 気と気。

 

 半日の時が、経過した。

 

 そんな二人のサイヤ人をジッと身じろぎ一つせずに見据えるベジータ。

 

 強烈な右ストレートを互いの顔面にぶつけ合い、のけ反りながら距離が開く。

 

 ついにあの孫悟空が肩で息をし始めた。

 

(あのカカロットを、あそこまで追い詰めるとは……! やはり本物か)

 

 悟空を追い詰めているターニッブという男を見ながら、ベジータは目を細める。

 

 二人の体力はもう限界。

 

 おそらく、これが最後の攻防になるだろうとベジータは読んでいた。

 

「……孫悟空。ここからが、本当の勝負だ!!」

 

 ターニッブは、それだけを言うと静かに己の気を高めていく。

 

 ベジータが目を見開いた。

 

「あの野郎……! 時間切れになったんじゃないのか!?」

 

 漲る黄金のオーラは、先までの金色よりも濃く。

 

 翡翠の瞳には黒い瞳孔がハッキリと見える。

 

 同時に、ターニッブの気が再び無限の上昇を始めた。

 

「へへっ、限界超えて。なお来るか、真・超サイヤ人!!」 

 

 嬉しそうに悟空は笑う。

 

 超サイヤ人ブルーを維持していられる体力はもう殆どない。

 

 だが、悟空は静かに笑っている。

 

 拳を腰に置いて、悟空は気合を入れた。

 

「はぁああああっ!!」

 

 瞬間、ベジータが目を見開く。

 

「な!? カカロットの奴め!!」

 

 

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 悟空もまた、金色ではなく黄金のオーラを身に纏ったのだ。

 

 超サイヤ人3のオーラと瞳を持った超サイヤ人。

 

 そう。

 

 ターニッブが変身した無限の戦闘力を誇る“真・超サイヤ人”に覚醒してみせたのだ。

 

「……お前……っ!!」

 

 目を見開き、驚くターニッブに悟空は笑みを返す。

 

 鋭く冷たい笑みで低い声を出す。

 

「なるほど。初めて超サイヤ人に変身した時みてえに、軽い興奮状態になるみてえだな……! 超サイヤ人ブルーとは、また違う」

 

 その気の量は超サイヤ人ブルーになった時よりも一回り上だった。

 

「……そうか。この姿は“俺”の覚醒した超サイヤ人のレベルに合わせてドンドンと力が上がるんか」

 

 自分の状態を見下した後、ターニッブを正面に見据えて笑う。

 

「ありがとよ。オメエのおかげで俺はまた、最強に近づけそうだ……!」

 

 無限に上昇を始める自分の気を確認しながら、悟空はターニッブに笑いかける。

 

 ターニッブもまた、静かに拳を構えて笑った。

 

「流石だな、孫悟空。俺は俺の持てる力の全てをもってお前に挑み、お前はその力をさらに上回らんとする」

 

「ああ。相手がオメエじゃなけりゃ、俺はここまで燃えることもなく、この場所にたどり着くことはできなかった。オメエとこのままやり合や、俺もまだ見たことのない世界が見えそうだぜ……!!」

 

「俺もだ……! この熱い想いを言葉にするのは難しいが、強いて言えば。闘いの中に、答えはある!!」

 

 熱く滾る二人の闘志は、お互い以外に目に映らない。

 

 ぶつかりあう。

 

 言葉ではなく、拳を交わす。

 

 ガードもフットワークもない。

 

 ただ、求めるまま。

 

 求められるまま。

 

 己の身一つで殴り合う、二人の超サイヤ人。

 

 孫悟空とターニッブ。

 

 不敵な笑みを浮かべて、ただ激しく拳と拳、蹴りと蹴りをぶつけ合う。

 

 両者の纏う黄金の炎は、一向に収まるところを知らない。

 

「……奴ら、いつまでやり合うつもりだ?」

 

 夜が更け、朝が来て。

 

 それでも変わらず殴り合う。

 

 顔を後方に弾かれて、その度に頭を突き付け合う。

 

 一歩も退かない。

 

 強烈に負けたくないという意志が見える。

 

 強さを求め、純粋に戦うことを望む者。

 

「カカロット、貴様ずるいぞ。自分だけ楽しみやがって……!」

 

 限界を超えて。

 

 お互いの強さが、本来なら底を付いたお互いの力を更に引き上げている。

 

 ベジータの目には、二人のサイヤ人の笑顔が余りに眩しく写っていた。

 

 悟空とターニッブの二人は、互いに右の膝蹴りをぶつけ合い、踏み込んで左の拳を互いの顔面に放り込む。

 

 強烈な一撃に後方へはじけ飛ぶ両者の顔。

 

 そのままのけ反った姿勢で、しかし両足を地面に擦り付けて後ろに下がる。

 

 互いに顔を戻し構えると、ついに二人が纏っていた黄金のオーラが掻き消える。

 

 漆黒の髪に戻る二人のサイヤ人。

 

 だが、その闘志は尽きることはない。

 

 指先が一本でも動く限り、二人は退かない。

 

「へ……へへっ!」

 

「ふ…、ははっ!」

 

 互いに屈託のない明るい笑みと清々しい笑みを浮かべて。

 

 無邪気に拳を握る。

 

 フラフラになりながらも、決して退かない。

 

 腫れた瞼で目が半分塞がりながらも、浮かべた笑みは変わらない。

 

 押せば倒れるような千鳥足で歩み寄りながらも、両者は強烈な拳と蹴りを食らわせ合う。

 

「……ち、くしょう……! 足りねえなぁ……! こんなもんじゃ、足んねえよ!!」

 

「ああ……! もっと……だ…! もっと! 闘って……いたい!!」

 

 フラつきながら、己の体が悲鳴を上げている。

 

 その悲鳴に向かって悟空とターニッブは互いに笑いながら、不満を述べ合う。

 

 もっと闘わせろと、己の肉体に告げる。

 

 目の前の相手と、もっと闘わせろ、とーー。

 

「いい加減にしろ、貴様らぁあ!!」

 

 その時、ベジータが叫んだ。

 

「いつまでやり合うつもりだ!? 肉体が限界を超えて悲鳴を上げ始めているんだぞ!? カカロット、ターニッブ! 貴様らは、死ぬつもりか!!」

 

 このままやり合えば、確実に片方の。

 

 最悪両方の命が尽きる。

 

 それを悟ったベジータの声に、悟空はボロボロになった顔を向けて言った。

 

「けどよ、ベジータ。こんな半端じゃ、終われねえよ……オラ!!」

 

「な!? カカロット、貴様……!!」

 

 フラフラになりながらも。

 

 丸一日殴り合っていながらも。

 

 限界を超えて戦いながらも。

 

 孫悟空は満足していない。

 

 もっと闘いたいと、目が告げている。

 

 サイヤ人の闘争本能が、限界まで高まっている。

 

 いや、これはーー孫悟空という武道家の魂だ。

 

「……そうか。界王よ、俺の言葉も聞くつもりはないらしいぞ? どうする?」

 

『任せておけ〜、ワシもこの事態を想定していなかった訳ではないからの〜』

 

 ベジータの言葉に界王が答え終わると同時、悟空の耳に強烈な甲高い声が聞こえた。

 

『悟空さ! いつまで遊んでるだ!!?』

 

「ーーいぃ!?」

 

 自分の妻の声ーーチチのそれだった。

 

 瞬間、悟空は冷や水を浴びせられたかのように昂っていた気分が冷めていく。

 

 と同時に肉体の痛みを思い出し、その場にうずくまってうつ伏せに倒れた。

 

「あ、痛ててててぇ……!!」

 

 その姿を見て、ターニッブもあっけに取られた表情になった後、己の肉体の激痛と悲鳴を思い出し、うずくまって仰向けに倒れる。

 

「う……ぐ……っ!」

 

 そんな二人のサイヤ人を呆れて見た後、ベジータは不敵に笑った。

 

「フン。やはり自分の妻の言葉には弱いか……!」

 

『地球の神やピッコロ、悟飯の協力を得てチチの声をワシが届けてやったぞ〜』

 

 界王の間延びした言葉に悟空が苦笑する。

 

 ベジータは、倒れて動けなくなったサイヤ人二人に向かい、悟空の腰袋にあった仙豆を二粒取り出した。

 

ーーーーーー

 

 朝焼けをバックに三人のサイヤ人が向かい合っていた。

 

「ターニッブ! オラ、すっげぇワクワクしたぞ!! オラ達と一緒に来ねえか!? オメエなら大歓迎だ!!」

 

 明るい声で告げる悟空を遮り、ベジータが口を開いた。

 

「待て、カカロット! ターニッブ、次はこのベジータ様と闘え!!」

 

「…おいおい、ベジータ! そりゃズリィぞ〜!!」

 

「貴様が言うな!! 丸一日やり合って、新しい超サイヤ人にもなりやがって!!」

 

 揉め出す二人のサイヤ人をターニッブが笑いながら、見た後に告げる。

 

「すまない、悟空。俺はまだ、修行中の身だ。未だ見ぬ強敵と出会うために。しばらくは、拳が選んだこの星で旅をするつもりだ」

 

 ターニッブの言葉に悟空が心底残念そうな表情になる。

 

 隣のベジータは、不機嫌そうに告げる。

 

「カカロットと対等に戦える貴様を満足させる強敵など、こんな星にいるものか!!」

 

 その言葉にターニッブは清々しい笑みを浮かべて告げた。

 

「強い奴はいるさ。力だけじゃない、心の強い奴がな」

 

 笑いながら応えるターニッブに悟空が明るく頷く。

 

「オメエの修行は、キツそうだな! んで、オメエはコレから何処に行くんだ?」

 

 コレにターニッブはニヤリと笑い、頑丈な拳を作ると天に向かって突き上げた。

 

「俺より強い奴に、会いに行く!!」

 

 悟空が、ベジータが見送る中、白い道着を着たサイヤ人の青年。

 

 ターニッブは、白いザックを肩にかけて彼らに背を向けて太陽に向かって歩いて行った。

 

 それを見送り、孫悟空は笑う。

 

「なあ、ベジータ!」

 

「なんだ?」

 

「オラ達も、もっと強くなろうぜ!!」

 

「…当たり前だ!!」

 

 互いに笑みを浮かべて、二人のサイヤ人は新しく出会った強敵の旅路を見送った。




ありがとうございました(´ー`* ))))
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