ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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 惑星の意思が生み出したのは、ベジータとブロリー、ターニッブの可能性だった。

 しかし、ベジータ達は正面からこれを粉砕した。

 彼らを止めるには、過去の存在はあまりにも未熟であった。



サイヤ人の王子 ベジータ

 超サイヤ人ブルーの孫悟空と真・超サイヤ人のターニッブは全くの互角の戦いを繰り広げている。

 

 一撃勝負と銘打たれた格闘試合は、両者全く譲らず。

 

 互いに紙一重で捌き、受け、避ける。

 

「…おいおい。かれこれ一時間近くやり合ってんじゃねえか。一撃勝負だぞ、これ」

 

 ガーキンがボヤくのも無理はない。

 

 二人は互いの技を放ちながら、互いの技で防いでいるのだから。

 

「…ターニッブの野郎。真・超サイヤ人になってる時間が明らかに長くなってやがる」

 

 打撃の応酬は必殺技を絡めた一瞬の隙も許されないものになり、互いに笑みを浮かべながらも譲らない。

 

「…これなら、どうだぁあ!!」

 

 金色の光を手に生み出し、悟空は片手を突き出した。

 

 光弾は散弾となって散り、ターニッブの眼前を塞ぐ。

 

「まだだっ!!」

 

 気合いを入れてガードの構えを取った右手を突き出し、悟空の放った光に当てると光の散弾は粒子となって無効化される。

 

 しかし、悟空はこれを読んでいた。

 

 右手の人差し指と中指を立てて額に当て、その場から文字通り消える瞬間移動を行う。

 

 現れたのはターニッブの背後だ。

 

「油断したなぁ、ターニッブ!!」

 

 ターニッブに振り返りざま、回転しながらの上段飛び回し蹴りが放たれる。

 

「後ろか! 竜巻旋風脚!!」

 

 これにターニッブも体を回転させ、遠心力を加えた旋風脚を悟空の蹴りに放った。

 

 互いの脛の部分が、刀の斬撃のようにぶつかり合い止まる。

 

 衝撃が互いに響き渡り、互いの放った蹴り技に弾き飛ばされる。

 

「ぐあ!」

 

「くう!」

 

 互いに呻きながらも、見事に空中で体勢を整えて着地すると悟空が一気に加速する。

 

「行くぜぇ、ターニッブ!!」

 

 地を蹴ると目にも映らないスピードで駆ける。

 

「…来い、孫悟空!!」

 

 ターニッブも地面を踏みしめると、一気にその場を駆ける。

 

 両者の姿は消え、大地がせり上がり、打撃音が辺りに不気味に響く。

 

「飛び道具は牽制くらいで、ほとんど己の身だけで闘ってんなぁ。あいつら」

 

 拳を拳で。

 

 蹴りを蹴りで止める。

 

 どちらの攻撃が上か。

 

 どちらの防御が上か。

 

 逃げることなど考えてない、真っ向からの打ち合い。

 

「…は、はは! ダメだぁ! オラ、オメエがリューベとやり合う為に組み手してんのによぉ!! 終わりにしたくねえや!!!」

 

「…俺もだ。真・超サイヤ人の力をここまで長時間振るえるようになったのは。お前やベジータ、ブロリーが居てくれたからだ。本当に感謝している」

 

 楽しそうに笑う悟空に、清々しい笑みを浮かべて返すターニッブ。

 

 初めて会った時からそうだ。

 

 孫悟空にとって、ターニッブという男は最高の相手だ。

 

 そして、ターニッブにとっても孫悟空というサイヤ人は、ガーキンやジュードのように掛け替えない友だった。

 

 口で語るよりも拳を交換した時間の方が長い。

 

 二人は正に、そんな関係だ。

 

 語らいよりも、闘争を好む。

 

 通常、それはお互いを毛嫌いまたは、憎悪している行為なのだが、この二人にとってはまるで違う。

 

 余計な言葉は要らないのだ。

 

 孫悟空とターニッブ、この二人にとって言葉など何の意味もない。

 

 ただ、全力で拳をぶつけ合いたいだけだ。

 

 相手がどんな道を歩んだのか。

 

 どれほど腕を上げたのか。

 

 語らなくとも拳で分かるのだ。

 

 其処に憎しみや殺意はない。

 

 この二人にしか分からない純粋な闘志と勇気、そして愉しみがある。

 

「…ターニッブ!!」

 

 何度目になるか分からない、拳のぶつけ合い。

 

 ターニッブが静かに構えていた拳を解き、悟空に向き合う。

 

 いつの間にか孫悟空の方も超サイヤ人ブルーから真・超サイヤ人になっていた。

 

「…孫悟空、ありがとう。コレが俺の答えだ!!」

 

 悟空はコレに冷徹な瞳で口の端を歪めて笑う。

 

「俺は幸せもんだ。オメエと此処までやり合えた上に、最高の一撃まで拝めるなんてよ」

 

 拳を構える悟空。

 

 全身の気が膨れ上がり、拳に漲っている。

 

「俺の力の全てを、この拳の一撃にかける!! ターニッブ、勝負だぁあ!!!」

 

 冷徹な笑みを浮かべたあと、我慢できないと熱く叫ぶ悟空に応えるように。

 

 ターニッブも自分の宝物を見せる幼子のように自らの拳を見つめる。

 

「…お前だからこそ、俺は此処まで強くなれた。お前が相手だからこそ、俺はーー!! ありがとう、悟空。そして、この拳がお前への礼だ!!!」

 

「ああ、リューベよりも先に俺に味あわせてくれよ。オメエの最高の拳をなぁ!!」

 

 ニッと笑う悟空は、鋭く冷たい翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳でありながらも彼本来の温かさや優しさを感じさせる、何とも魅力的な笑みであった。

 

 対するターニッブも真っ直ぐに、翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で悟空を見つめ、足を広げて左の中段正拳突きの構えを取る。

 

「…行くぜ、ターニッブ! コレが俺のーー龍拳だぁああ!!!」

 

「受けて立とう、孫悟空! 俺の拳ーー真・超サイヤ人の先に見えるもの! 倒すのではなく、勝つ為の拳。それが俺の一撃必殺!!!」

 

 悟空が身に纏う気を爆発させ、自らを黄金の龍に変えて地を蹴り空を駆ける。

 

「俺に放った時とは比べものにならねえ。コレが、孫悟空の真の一撃か。どう破るよ、ターニッブ!?」

 

 二人の熱が飛び火したように、ガーキンが熱く叫ぶ。

 

 中段正拳突き。

 

 空手の技の中でも基本中の基本というべき技。

 

 猛り狂う炎のように激しい悟空の気に対し、ターニッブの気は大木の葉を微かに揺らす風のように静か。

 

 空を駆ける龍の如き天衣無縫の拳に対するは、しっかりと地に足を付けて道を歩む質実剛健の拳。

 

 同じ顔をしたサイヤ人。

 

 同じ真・超サイヤ人の力を振るいながらも対極の拳。

 

「つうぉりゃぁぁああ!!」

 

 悟空が右の拳を振り抜き、黄金の龍のアギトが閉じる。

 

「セイヤァァアアアア!!」

 

 ターニッブの左拳が突き出され、風に揺れる木の葉が見える。 

 

 二人の全力の拳は、三度ぶつかり合った。

 

 音が消えた。

 

 二つの拳がぶつかり合った時、白い光が世界を包み。

 

 音を消した。

 

 光が晴れた時、ガーキンが静かに二人に歩み寄る。

 

 其処には、悟空の拳を左に見切って左拳を腹に突き立てたターニッブが居た。

 

「…フフフ、俺の負けだな。最高だぜ、ターニッブ!!」

 

 真・超サイヤ人の悟空は笑みを浮かべ、それだけを言うと黒髪に戻りながら両膝を地面についた。

 

 それを見下ろし、真・超サイヤ人のままターニッブは悟空に拳を突き出して告げた。

 

「コレが答えだ、友よ!!」

 

 その宣言を終えるとターニッブも黒髪に戻る。

 

 二人の間には会話はない。

 

 ただ、お互いに穏やかな明るい顔で、涼しげな顔で。

 

 笑いあっていた。

 

「…なるほど。ターニッブに本質は似てるが、振るう拳は正反対のサイヤ人ーー孫悟空か。悔しいけど、あそこまでやられちゃ、今回は負けを認めるしかねえかな?」

 

 ターニッブの一番の親友にしてライバルだと自負しているガーキンだが、この場だけは孫悟空に負けを認めた。

 

 悟空はしばらくは体が動かなかったようだが、やがてすくりと立ち上がり、ターニッブに笑いかけた。

 

「…今のオメエなら、どんな奴にも負けねえ。その拳をリューベに叩きつけてこい!!」

 

「ああ」

 

 ターニッブが拳を突き出して応えると、悟空も拳を合わせて白い歯を見せて笑った。

 

「そんでもって、その後はオラとだぜ? だから死ぬなよ。ターニッブ」

 

 明るく無邪気な笑顔でしかし、真剣な口調で告げる悟空にターニッブも真っ直ぐに見返した後、コクリと頷いた。

 

 リューベとの約束を果たす為に磨き上げられたターニッブの拳が、ついに形となった。

 

 ガーキンは、一気に自分を置いて遥かな高みに至ったターニッブを、複雑な表情で見ている。

 

(アレが、真・超サイヤ人か。ターニッブの野郎、ついに自分の目指す拳を形にしやがった、か)

 

 ターニッブが力を克服したことは嬉しい。

 

 しかし、それをさせたのは自分ではない。

 

 複雑な自分の心にガーキンは苦笑を漏らしていた。

 

 そんな彼らを物陰から褐色の肌のサイヤ人、ターレスが覗いていた。

 

「…アレが、真・超サイヤ人か。やはり、あの力に俺が目覚めれば。だが、どうやって?」

 

 超サイヤ人に成れたのだ、必ず成れるとターレスは信じている。

 

 問題はどうやって成るか、だ。

 

 カカロットもベジータもバーダックも、簡単に変身していたが。

 

「…可能性とやらを取り込むことで、奴らは急激な進化をしてきた。死者の都ーーあらゆる可能性が具現する場所か。だが、俺には超サイヤ人さえも可能性にはないらしい」

 

 皮肉に笑うターレスだが、ふと目を見開く。

 

「待てよ、死者の都の力を取り込めれば? あのベジットやフリーザ達を完璧に再現できるエネルギーの源を取り込めれば、俺はーー!!」

 

 自分の掌を握り締め、ターレスはニヤリと笑う。

 

ーーーーーーーー

 

 一方、死者の都では。

 

 圧倒的な力を誇るベジータ、ブロリー、バーダックの三人が生み出された影を相手に勝利を収めていた。

 

「…フン。どうやら、ブロリーが言ったように貴様もネタが尽きてきたようだな? この間のベジットに比べたら粗悪な紛い物だぜ」

 

「次に誰かの紛い物を召喚するなら、このバーダックにしとくんだな」

 

「ククク、良く言う」

 

 ベジータが見下し、バーダックが不遜にブロリーが邪悪に笑う。

 

 自分達の実力に自信と余裕を見せるサイヤ人達。

 

 だが、奢ってはいない。

 

 瞳は静かに相手を観察している。

 

ーー 汝らの力、理解した。では、その御魂を喰らうとしようぞ ーー

 

 異形の鬼は笑いながら牙を剥いて、凶悪に白目を光らせる。

 

 だが、鬼が構えると無限に上昇していた気が止まった。

 

ーー なんだと? ーー

 

 この現象に鬼は瞳が消えた白目を見開く。

 

 死者の都の意思は知的生命体の魂を喰らう事で、力を増し異界を更に増やしていった。

 

 あらゆる可能性を交わらせ、夢幻を現実に変える。

 

 生きているのか、死んでいるのかすら分からずに、滅んでいく生命体を喰らい続けた己に歯向かえたのは、数億年の記憶の中、ただ一人だけ。

 

 それを真似た自分が、エネルギーが尽きるなどあり得なかった。

 

「…貴様の誤算を教えてやる」

 

 ベジータの言葉に異形の鬼はその凶眼を向けた。

 

 体中にヒビが入り、黄金の光が溢れ出ている。

 

ーー 力が制御仕切れぬというのか? ーー

 

 鬼の独り言に応えるようにベジータは続ける。

 

「貴様は究極の戦士ベジットを完璧に作り上げてしまった。あの力の凄まじさは、体を得た貴様が一番分かっているだろう。其処に味をしめたのが貴様の敗因の一つだ」

 

 静かにベジータは己の気を引き上げ、水銀のオーラを纏う超サイヤ人ブルーに変身した。

 

 その時、着ているバトルジャケットがウイスの下で修行していた時の、黒を基調にした上下セパレートタイプのフィットスーツの上に、白い手袋とブーツを履いてバトルジャケットを着た服装となる。

 

「アレだけの力を完璧に再現し、挙句にはフリーザやブウ達まで復活させた。そして、リューベを葬るために大猿を作り上げ、全力のリューベと戦い敗れた。その後、リューベを異界に送り、自分はリューベの姿を模した可能性を取り込んで肉体を変化させた。超サイヤ人を極めた三つの形態ーー3にブルー、そして4の姿を継ぎ接ぎさせ。真・超サイヤ人の力をベースにした。エネルギーが持つ方がおかしいだろ?」

 

 冷静なベジータの指摘と身に纏う力に、思わずバーダックが目を見開く。

 

(さっきからどうなってる? なんで王子もブロリーも丸二日寝てやがっただけで、こんな桁外れのパワーアップを)

 

ーー 未来の己を取り込んだか。ベジットの力は時空を越えた存在にも脅威であったか。汝らの力を上げさせるとはな、確かに調子に乗り過ぎたわ ーー

 

 あの時に決着をつけていれば、と忌々しげに顔を歪める惑星の意思。

 

「そう。それが二つ目だ。貴様はあらゆる次元、時空から可能性を取り出すことができる。その力は未来の次元にまで及んだ。それを利用してサイヤ人の魂達が、未来の俺とカカロットに貴様の存在を知らせたのさ。真・超サイヤ人のベジットを見せた。その結果、奴らは俺たちに力を与えたのさ」

 

 ベジータは静かに拳を握る。

 

「…もっとも、超サイヤ人4と超サイヤ人ブルーのパワーアップはほとんど互角。僅かに身体能力や五感に優れ、力でねじ伏せる超サイヤ人4と。並外れた腕力ではないが冷静な判断力と洞察力、集中力を持った超サイヤ人ブルーと言ったところだ。状況に応じて使い分けることができるのは便利だが、そんな程度の有り難みだ」

 

 ニヤリとベジータは笑いながら言う。

 

「だが、未来の俺は基本戦闘力をトコトンまで鍛え上げていた。おかげで、真・超サイヤ人で引き上げなくても強くなれたぜ」

 

ーー 御託を並べおって ーー

 

「まあ、そう言うな。貴様の肉体にヒビが入った敗因を教えてやる。貴様は力を使い果たしてるのさ。真・超サイヤ人を模倣するだけの力がな!!」

 

 異界に溢れた瘴気の霧は既に消え、薄暗闇の空は徐々に朝焼けの空のような色に変わっている。

 

ーー 笑止!! 我は既にリューベに非ず、鬼なり!! ーー

 

 言うと同時、鬼は黄金の気を消すと髪を水銀に輝かせ始めた。

 

 消えていた瞳が再び現れる。

 

 琥珀色に漆黒の瞳孔が現れた瞳が鬼の目に宿った。

 

 身に纏うオーラは禍々しい青と黒の混ざったようなオーラである。

 

 ひび割れた赤黒い毛の生えた褐色の上半身は修復され、肉体が安定した。

 

「…真・超サイヤ人で無限に気を引き上げるのを諦め、超サイヤ人ブルーになる事で気をコントロールしたか」

 

 淡々と告げるブロリーと横で腕組みをしているバーダックにベジータが告げた。

 

「俺が叩き潰す! ブロリー! バーダック! 手出し無用!!」

 

 勇猛果敢に異形の鬼に対して、超サイヤ人ブルーが殴りかかった。

 

 羅漢仁王の如き鬼の手刀を真っ向から受け止め、ベジータは右の拳を褐色の腹に放つ。

 

 アッサリと掴み止められたが、衝撃は凄まじく周囲を吹き飛ばす。

 

ーー 愚かな。鬼神に何故抗う? ーー

 

「くだらん! なにが鬼神だ? 俺は誇り高き戦闘民族、サイヤ人の王子ベジータだ!!」

 

 ベジータは右の拳を顔面に放つ。

 

 鬼がそれを頰でまともに受けてのけ反り、すぐさま拳をベジータの左頬に返した。

 

「…ぬう! なめるな!!」

 

 スピードは互角だが、拳の威力が明らかに鬼の方が強い。

 

「フン、流石はリューベを模しただけはある。だが!!」

 

 相手の攻撃力が高いと知るや、足を止めて踏ん張って受けるのではなくフットワークを刻んで紙一重で避け、拳と蹴りを捌きながらベジータは打撃を返していく。

 

「フリーザ達をびびらせた鬼の拳を相手に、微塵も恐れを抱くことなく冷静に捌いて返すーーか。柄にもねえが見惚れちまうぜ、王子様よ」

 

 強烈な殺意を纏った拳を冷静に対処する姿に、バーダックが静かに告げた。

 

「それだけではない」

 

 ジュードが呆然と見つめながら告げる。

 

「ベジータの奴、先程ひびの入っていた箇所を的確に打ち抜いている。あれだけの殴り合いの中で、あの鬼を相手に冷静だというのか、ベジータ!!」

 

「亡霊をも殺す殺意のこもった拳はガードをするだけでも削られると言うのに。なんという精神力ーー!」

 

 プリカも静かに頷く。

 

 圧倒的な力と力が、異界の空と地を揺らしていく。

 

ーー 羅漢断頭刃!! ーー

 

 立った構えの残像を刹那の拍子に置いてベジータの背後に現れた鬼は、強烈な手刀を背後から一閃する。

 

 一瞬の隙を突かれ、ベジータは足を掬い上げられて宙に浮かされる。

 

 一瞬頭上に跳ね上がった体。

 

 その顔にめがけて鬼の強烈なハイキックが決まった。

 

「ぐぉ!?」

 

 その場できりもみに回転させられるベジータの腹に強烈な掌底が突き出され、遥か後方に吹き飛ばされる。

 

 それに追い討ちをかけようと鬼は両手首を上下に合わせて前方に青黒い光線を放った。

 

ーー 受けよ! 冥同豪波動!!! ーー

 

 咄嗟にベジータは両手を地面に叩きつけて、ひっかきながら勢いを殺して着地する。

 

 目の前に己の身の丈を遥かに上回る青黒い波動が、光線となって迫っている。

 

「舐めるなよ!!!」

 

 水銀のオーラを身に纏い、両手を突き出して波動を受ける。

 

 否、受けようとした。

 

 だが、波動はベジータの手をすり抜けてそのまま胸の中心を撃ち抜いた。

 

「な、んだと……!?」

 

 目を見開きながら、己の身を貫通した青黒い波動拳に舌打ちをしようとして、体が動かないことに気付く。

 

(これは、ジュードの使った電刃波動拳と同じーー!?)

 

 目の前を見れば、先よりも圧倒的に強力な波動拳がベジータ目掛けて放たれた。

 

 棒立ちのまま光の中に飲み込まれる。

 

「馬鹿な! ベジータぁああああ!!!」

 

 ジュードの悲鳴が響き渡る中、強烈な爆発と気柱が生まれて「天」と気で書かれた文字が浮かび上がり、爆炎が生じる。

 

ーー 汝の道は、此処で終わる ーー

 

 静かに構えたまま告げる鬼。

 

 その声を聞き、ジュードが超サイヤ人に変身する。

 

「貴様ーー! よくも!!!」

 

 今にも飛び出そうとするジュードをブロリーが止めた。

 

「落ち着け、ジュード」

 

「そこを退け、ブロリー! これは、惑星サイヤの王たる俺が止めなければならんのだ!!」

 

「…その覚悟は、全てが終わった後にしろ」

 

「なに!?」

 

 目を見開くジュードの前で、爆炎が金色のオーラに吹き飛ばされた。

 

 これに鬼が目を細める。

 

ーー 神威の力ではない。大猿か ーー

 

 現れたのは、紅い体毛に覆われた裸の上半身。

 

 漆黒の革のズボンの尻からは毛の生えた尾が。

 

 革のナックルグローブを嵌め、ブーツを履いた服装。

 

 漆黒の髪は天に向かうものと首元から背にかけて伸びているものがある。

 

 赤く隈取を付けたような目には翡翠に漆黒の瞳孔が現れている。

 

「待たせたな? これが異次元の俺の姿ーー超サイヤ人4だ!!」

 

 落ち着いた低い声や冷徹な雰囲気は真・超サイヤ人によく似ている。

 

 だが、それよりも遥かに変化のある変身だった。

 

「ベジータ。超サイヤ人ブルーや真・超サイヤ人の他にも、こんな変身を持っていたのか」

 

 普通の人間には気を感じられない超サイヤ人ブルーとは違い、超サイヤ人4は問答無用で圧倒的な気を纏っている。

 

 その気の大きさは、神の気を感じられるものからすれば先ほどまでの超サイヤ人ブルーとそう変わらない。

 

 神の気を使わずにただ純粋な気だけで神の域に達しているのだから、充分すぎる変身ではあるが。

 

「ベジータ、お前傷がーー!」

 

 そう。

 

 今のベジータは超サイヤ人ブルーの時に負っていた傷が癒えているのだ。

 

 ダメージも完全に回復しており、それがジュードを驚かせた。

 

「そういえば、先ほども超サイヤ人ブルーに変身した時にそれまで負っていた傷が消えていた。それに服装も変わっている? プリカ、どういうことだ?」

 

「ーーおそらく、ベジータさんは超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4を死者の都の力で固体化したのだと思います」

 

 プリカの言葉の意味が分からず、バーダックは目を訝し気に細める。

 

 ブロリーがそれに淡々と告げた。

 

「要するに、死者の都の“違う次元の存在を作り出す”能力を逆手にとって、超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4の二つの変身を違う肉体として誕生させ、魂に取り込んだってわけだ」

 

「どういうこった?」

 

「変身したら、ダメージが回復するのではなく。変身する毎に違う自分となって戦えるようになったってことだ。要は車を乗り変えるようなものだ」

 

 ブロリーの説明にバーダックは半信半疑と言った表情になる。

 

「エネルギー切れやらダメージを負い過ぎても、違う車に乗って目的地に向かえばいいって理屈か?」

 

「そんなところだな。死者の都がある惑星サイヤ以外で使えるのかは知らんが」

 

 ブロリーの言葉にバーダックがフン、と鼻で笑う。

 

「真・超サイヤ人も固体化してんのか?」

 

「いや。あの力と超サイヤ人1~3。俺の伝説の超サイヤ人は固体化できなかった」

 

「なんでできねえ?」

 

「…おそらくだが、変身のベクトルが同じタイプだからだ。“違う存在とは認識されないから”だろう」

 

 バーダックがチッと舌打ちする。

 

「残念だったな。バーダック」

 

「全くだぜ。せっかく超サイヤ人3まで目覚めたってのによ」

 

 二人はそう述べ合うとベジータと名もなき鬼に目を向ける。

 

 赤い猿の超サイヤ人となったベジータ。

 

 サイヤ人の神と大猿の力を同時に引き出した鬼。

 

「終わりだーー!!」

 

 超サイヤ人4ベジータはそれだけを告げると、一気に鬼の前に現れる。

 

ーー 愚かな!! ーー

 

 拳と拳が再びぶつかり合う。

 

 今度は力負けしないベジータ。

 

 鬼の怪力に真っ向から返すことができる。

 

 しかも、反応速度はブルーの時よりも速い。

 

 ブルーの時に鬼のヒビ割れた箇所は把握している。

 

 つまりーー。

 

「貴様の弱点は筒抜けだ!! それさえも理解できずに力を振るうだけの貴様には、この俺を倒すことなどできん!!!」

 

 拳を握り、相手の右正拳をかいくぐって踏み込むと同時にボディに右のアッパーを叩き込む。

 

 鈍い炸裂音と共に鬼の体が前のめりになるのを見て、容赦なく左のフックを顔面に叩き込み、のけ反ったところを右の上段回し蹴りで吹き飛ばした。

 

ーー なんだと!? ーー

 

 背中から遥か後方の地面に叩きつけられ驚愕する鬼に向かって、超サイヤ人4のベジータは右手を突き出し青白い光を宿した掌を向け、叫ぶ。

 

「ビックバンアタァァァック!!」

 

 軽々とした動きで放たれた光弾は、強烈な力を持ってまともに鬼の正面にぶち当たる。

 

 ドーム型の閃光が生じて光が晴れた後、鬼は静かにその琥珀色に黒の瞳孔が現れた瞳を細めてベジータを見据えた。

 

ーー よかろう! 汝を我が敵と認めようぞ!! ーー

 

 その言葉にベジータは静かに告げた。

 

「紛い物に用はない。俺のここでの目的は、数百年に渡り“真・超サイヤ人”で在り続けた初代サイヤ王リューベだけだ!!」

 

 拳を握りしめて超サイヤ人4のベジータは叫んだ。

 

「惑星の意思だか何だか知らんが、誇り高きサイヤ人の闘いの邪魔はさせんぞ!! サイヤ人の王子ベジータとしてなぁ!!!」

 

 気を高め、超サイヤ人4の金色のオーラに赤色が混じる。

 

 物理的な力に限って言えば、超サイヤ人ブルーをも上回るパワー。

 

 死者の魂を食らう惑星の意思にサイヤ人の王子ベジータの怒りが爆発したのだった。

 

 




 超サイヤ人4となり、超サイヤ人ブルーの時に見た弱点を容赦無くつくベジータ。

 惑星の意思はついに追い詰められるが…。

 一方、リューベとの決戦に臨むため死者の都に向かおうとするターニッブと悟空達の下に宇宙最強の存在が降り立つ。

 はたして、彼の目的は?

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