一方、リューベとの闘いに備えて悟空と拳を鍛えていたターニッブの下に破壊神ビルスが訪れる…。
赤い猿の超サイヤ人ーー超サイヤ人4と化したベジータ。
超サイヤ人ブルーの力をベースにした異形の鬼。
二つの超パワーの持ち主が互いに睨み合っている。
「…ベジータ。それほどまでにターニッブとリューベの戦いを」
惑星サイヤの王ーージュードは静かに友となった惑星ベジータの王子を見据える。
巫女プリカも表情を険しいモノに変えながらジッと自分達とは異なるサイヤ人の王子の戦いを見据えていた。
ーー 愚かな。他者の争いを尊重し、己が命を棄てるか ーー
目を細める琥珀に黒の瞳孔が現れた異形の瞳。
対峙するベジータは、やや赤色に変わった黒髪を異界の風に靡かせ、翡翠に漆黒の瞳孔が現れた瞳で異形の鬼を見据える。
「言いたいことは、それだけか!!」
その場から地を蹴り、一気に鬼の眼前に現れる。
鬼の拳が振り下ろされるのを片手で受け止めるベジータ。
圧倒的な力を誇る自身の拳を受けられ目を細める鬼に、ベジータの右ストレートが放たれる。
これを鬼も左手で受ける。
即座に鬼の天から落ちてくるような踵落としがベジータの頭上から落ちてくる。
ベジータはその場で身を翻して避けると、後ろ上段回し蹴りを放った。
鬼は後方にジャンプして反らしながら、宙で片手撃ちの波動を放ってくる。
ーー 散れ!! ーー
即座にベジータも舞空術で飛ぶと波動拳を紙一重で避け、右の拳を握って鬼に突き出す。
「舐めるなよ!!」
再び、空と大地を二つの強大な力が所狭しと駆け回る。
今のベジータは、力比べの姿勢になっても自分よりも体格に優る異形の力に決して負けていない。
「あの姿ーー真・超サイヤ人と違って戦闘力は無限に上昇しないようだが、桁外れのパワーだ。バケモンの怪力にも真っ向から勝負できるなんてよ」
バーダックが、先ほどまで相手の攻撃をフットワークで紙一重で捌きながらカウンターを取っていた超サイヤ人ブルーとは、戦い方が全く違うベジータを見て呟く。
これに応えたのは隣で見ていた3メートルを越える巨体の筋肉の塊ーー伝説の超サイヤ人・ブロリーだった。
「超サイヤ人ブルーとは異なるサイヤ人の極みの一つらしい。神の気を纏わず、大猿の闘争本能と怪力を持った超サイヤ人。それが今のベジータの姿ーー超サイヤ人4だ」
「やけに詳しいじゃねえか」
「…まあな」
バーダックが横目にブロリーを見ながら言うと、彼は静かに頷いた。
青黒い気を纏った異形の鬼と紅と金色のオーラを纏った超サイヤ人4は、互いに拳と蹴りをぶつけ合う。
乱打戦の最中、羅漢断頭刃と呼ばれる高速移動で背後からすれ違いざま両足を掬い上げる手刀の一閃。
しかし、ベジータはくるりと身を翻し、手刀が両膝の裏を掬い上げようとしたところに振り返りざま膝蹴りを繰り出して受ける。
両者の放った一撃が相殺し、天にむかって白い光の柱が突き立つ。
ーー 未だ抗うか、愚かなり ーー
「何度も言わせるな。惑星ベジータの王子として、貴様は此処で倒す!!」
ーー 笑止! ならば、受けて見ぃ!! ーー
超サイヤ人4ベジータから、一気に距離を取り異形の鬼は両手を上下に組んで突き出し、右腰に置いて再び波動拳の構えを取る。
ーー 万物! 悉く塵と化す!! 冥同豪波動!!! ーー
青、黒、紫の禍々しい気功波がベジータに向かって放たれる。
「ベジータ! 受けるな、避けろ!!」
ジュードの叫びにベジータはニヤリと笑った後、両手を広げた後前方に左右で合わせて突き出すーーファイナルフラッシュの構えで一つの金がかった緑色の光球を作り上げる。
「黙って見ていろ、ジュード! ファイナルシャインアタァアアック!!」
放たれた青緑がかった光線は冥同豪波動と中央でぶつかり合う。
ベジータの放った一撃は、一気に異形の鬼の放った気を押し返していく。
「どうした!? 先ほど超サイヤ人ブルーの俺をKO寸前まで追い詰めたデカイ波動拳は撃たんのか!? それとも、このまま押し返されて終いか!!」
ベジータは挑発する。
先にしてやられた借りを真正面から返すために。
相手がどんな存在であろうと己の誇りの為に戦う彼の姿は終始、変わらない。
サイヤ人同士の誇りをかけた闘いを邪魔させないためにも。
サイヤの王子ベジータは誰よりも誇りにこだわる。
ーー 失せよ!! ーー
瞬間、鬼が先ほどまでとは比べ物にならない波動拳を左腰にたわめて逆の足を前に出して踏み込み、両手を突き出して放ってきた。
しかし中央まで押し返した鬼の波動はそこで止まる。
ーー 何!? ーー
これにベジータはニヤリと笑った。
目を見開いた鬼の前に黄金の髪となったベジータ。
青色のフィットスーツの上にバトルジャケットを着た、普段どおりの服装に変わっている。
無限の気の上昇が始まり、翡翠に漆黒の瞳孔が現れた瞳が鬼を射抜いた。
「終わりだ、化け物ぉおおおおお!!!」
ーー バカな……!! ーー
真・超サイヤ人ベジータの全力の一撃。
超サイヤ人4を一回り上回る状態から数倍にまで力が一気に膨れ上がり、鬼を光の彼方に葬っていった。
「…フン。超サイヤ人ブルーや超サイヤ人4に比べてじゃじゃ馬だったが、ようやく使いこなせたぞ。手こずらせやがって」
口元を拭いながらベジータは真・超サイヤ人となった己の掌を見下ろし、ニヤリと笑って拳を握り締めた。
光が晴れたとき、目の前には仁王立ちとなった異形が再び姿を現す。
ただし、その体は左半分ほどが崩れて消えて行く。
「貴様の負けだ。惑星の意思よ!!」
真・超サイヤ人ベジータが半壊していく異形の鬼を前に、高らかに自らの勝利を宣言した。
目の前では鬼が仁王立ちのまま、崩れゆく己を見下ろしている。
ーー まさか、リューベから進化した我が負けるとは ーー
「笑わせるな、貴様は進化などしていない。真・超サイヤ人となった俺には分かる。リューベは破壊と殺戮の衝動に飲み込まれまいと常に己自身と闘い続けてきたのだ。その研鑽の結果が今の奴だ」
鬼は静かに琥珀色に黒の瞳孔が現れた目でベジータを見据える。
ベジータは真・超サイヤ人となった己の戦闘力をコントロールしている。
無限に上昇する気を無駄に上げて消耗させるのではなく、必要な時に引き上げるようにしているのだ。
超サイヤ人ブルーの気のコントロール。
超サイヤ人4の野生を抑え込む理性。
この二つを持って、真・超サイヤ人の力を完全に使いこなしている。
「失せろ、紛い物!! ここからは誇り高き戦闘民族サイヤ人による決闘だ!! 魂を食らい、亡霊を生み出して人間を滅ぼすことしか能のない役立たずは必要ない!!!」
黄金のオーラを炎のように激しく燃やしながら、真・超サイヤ人となったベジータは拳を握って叫んだ。
「…凄い。死者の都が生み出したリューベの写し身を、一方的に倒すなんて」
プリカが思わず告げる横でブロリーが告げた。
「俺たち惑星ベジータのサイヤ人を束ねる王族だ。アレくらい、できて当たり前だ」
「くく、確かにな! その通りだぜ!!」
ブロリーの言葉にバーダックも上機嫌に頷いた。
ーーーーー
一方、闘技場にて格闘を行い終えた悟空とターニッブだったが。
彼らの元に七色の光の柱が降りてきた。
「…この気は、ビルス様!?」
悟空が目を見開きながら言うと、目の前には数日前に現れたウイスがいる。
「…誰だ、ビルスって?」
ガーキンが目を見張りながら左右を見る。
「ガーキン…」
「何だよ?」
同意を求める声をかけようと隣のターニッブを見ると、彼は真剣な目でウイスを見つめている。
「…ふうん。君が悟空とベジータが褒めていたターニッブかい? 顔や髪型、悟空にそっくりだね」
「服装もよく似てますね〜。白い武道着とは。しかし、雰囲気はどちらかと言えばベジータさんに似てるように見えますね〜。理想的なバランスです」
ウイスの背後からの声に、彼は笑顔のまま淡々と応える。
ウイスがゆっくりとその場から一歩退くと、細い目をした猫のような見た目の人間が立っていた。
「ターニッブ、でいいのかな?」
「…ああ。あんたは?」
紫の肌をした猫人間は、静かに目を細める。
猫科の獣が獲物を品定めするような仕草だ。
「僕はビルス。破壊神をしている」
「…破壊神?」
それだけを告げるビルスにガーキンが横から口を挟む。
「おいおい、チョット待てよ! いきなり出て来てターニッブに何の用だ、神様!!」
焦った口調のガーキンをウイスが止める。
「ガーキンさん、友達想いの貴方には申し訳ありませんが。ビルス様の興味はターニッブさんとリューベにあるのです。邪魔立てして、下手に機嫌を損ねると惑星ごと破壊されてしまいますよ」
淡々と事実を告げるウイスにガーキンが、目を見張る。
「そんなこと言われて、黙って見てろってのかよ!?」
ターニッブは静かにガーキンの肩を制する。
「お、おい!」
「すまないが下がってくれ、ガーキン」
悟空が静かにターニッブとビルスを見つめる。
「…俺に用事が?」
「そうだ。僕はリューベと戦いに来たんだが、君にも興味はある。君がどれだけ強いのか、ね」
それだけを言うとビルスは、後ろで組んでいた両手を前に移動させ、構えを取る。
「悟空達を認めさせた君の実力、是非この身で体験したくてね。構えなさい」
「ビルス様! ターニッブは、これからリューベと闘うんだ! だからよ、待ってくんねえかな!?」
悟空が焦ったような口調で告げると、ビルスは笑う。
「…待ったさ」
「え?」
淡々と恨めしげな目で見られ、思わず戸惑う悟空に構わず、ビルスは告げる。
「お前達が楽しそうに闘っているのを美味しいピザを食べながら待ったさ。ベジットなんて極上の獲物までくれてやってね。この上、リューベまで待てと言われたら、僕は怒りに身を任せちゃうかもなー」
「そりゃ、勝手じゃねえか? ターニッブとリューベには何年も前から因縁があんだよ。だからさ!」
「悟空、僕は確かに慈悲深い神様だけどね。自分の楽しみを我慢してまでお前達の都合に合わせるつもりはないよ。リューベは、僕がこれまで生きてきた中でも最高の獲物だからね」
話を聞くつもりのないビルスに、悟空は静かに黙り見つめる。
瞬間、ビルスはその場から消えるような高速移動で動くと悟空の目の前に現れた。
「!!」
「不服そうだな、悟空。歯向かうつもりならば、容赦はしないよ?」
軽く裏拳を顔に放たれるも、悟空は黒髪の状態で反応して避ける。
「ふん、動きが随分と鋭くなったね。まるで十数年くらい修行した後のような動きだよ」
「へへっ、まあな」
ビルスの言葉に人差し指で鼻をかきながら、自慢げに笑う悟空。
「だが、こんな遠いところまで来てターニッブ達よりもお前を優先する気はないよ。下がりなさい」
言うとビルスは悟空の脇を高速移動で駆け抜け、ターニッブに拳を振り切る。
「! ターニッブ!!」
悟空の声が響く中、片手でターニッブはビルスの拳を握り締めていた。
「…やはりね」
口をニッと開いて笑うビルスを、ターニッブは静かに燃える黒の瞳で見返す。
「コレが、神の拳か。なるほど」
「…興味が湧いて来たみたいだね? 僕はこれでも、この宇宙最強の破壊神だからね」
「最強か、確かに。こんな強い拳は、あまり受けた経験がないな」
ターニッブの言葉に、ビルスが不服そうに目を細める。
「僕の拳を比べられる相手が居るのかい? それはリューベかな?」
問いかけるビルスにターニッブは右の正拳突きを放つ。
強烈な炸裂音と共にビルスの左手に止められる。
「…君、リューベと似てるね。拳に心を宿している。奴は殺意、君は勇気、かな? 悟空の好きそうな拳だよ」
心の力。
純粋に強さを求めるターニッブやリューベだからこそ手に入れられた、悟空達とは違う拳。
能力や身体のみならず、精神力がそのまま拳の威力に宿る。
ビルスはニヤリと笑った。
「さて、それじゃーー」
「ーー!?」
ターニッブが気付き、ビルスから離れる。
同時、一気にビルスの気が上がった。
「見せてもらおうか? 超サイヤ人ゴッドにも匹敵する真・超サイヤ人の力って奴をね」
紫色の神気を纏い、破壊神ビルスが本気を出した。
その圧倒的な力は、全てをひれ伏させるほどの重圧がある。
「…ヤバイ! ターニッブ、悟空! 逃げろ!!!」
ガーキンが震えながらも、必死に声を張り上げる。
破壊神の重圧の前に一定の戦闘力以下の者は問答無用で金縛り、もしくは恐慌状態に陥る。
“普通の”サイヤ人ならば。
「…凄まじい気だ」
黄金の気を纏い、頭髪は天に向けて逆立つと黄金色へと変化する。
燃えるような漆黒の瞳は翡翠色に黒の瞳孔が現れたモノに変わった。
「やはりね、君は耐えられると思っていたよ。悟空やベジータと同等ーーもしかすると、それ以上の力を持っているようだ」
淡々とした口調で、真っ直ぐにビルスの目を見つめて告げる真・超サイヤ人のターニッブに、ビルスも嬉しそうな顔になる。
静かに左構えのファイティングポーズを取りながら、ターニッブはビルスを見た。
「ちょっと待った…!」
その時、悟空がターニッブとビルスの間に現れた。
これにビルスが目を鋭く細める。
「…何の真似だい、悟空? 僕は下がっていろ、と言ったはずだ」
悟空が不敵な笑みを浮かべた後、ビルスに対して構えを取った。
全身に水銀の燐光を張り付かせて、オーラを纏う。
「悪りぃんだけどよ、ビルス様。ターニッブとリューベの闘いを邪魔させねえよ」
水色に輝く超サイヤ人ブルー、神の気と超サイヤ人の気を同時に引き出した極限の姿。
そう、超サイヤ人ゴッドの力を持つサイヤ人の超サイヤ人へと変化した。
「これはーー悟空さん。あなた」
ウイスが表情を改める。
悟空の服装が亀仙流の「悟」マークの入った山吹色の道着から、自分が与えた道着に変わったこと。
そして、超サイヤ人ブルーの状態の基本戦闘力が跳ね上がっていることに目を見開いた。
「その変身ーー別の肉体に変わった? それに基本戦闘力も桁の違う上がり方をしていますね」
これにビルスが目を細めて告げる。
「なるほど。死者の都が見せる時空と次元の可能性を魂が統一した存在になったのか、面白いじゃないか」
「オラ、難しいこたぁよく分かんねけど。…分かるんか。流石だな、ビルス様にウイスさん」
不敵な笑みを浮かべて告げる悟空にビルスがニヤリと笑う。
「なるほど、いい勝負になりそうだな。だけど、ターニッブとの闘いで相当お前は消耗しているようだが?」
「…かもな。でもよ、一回は超サイヤ人ブルーでアンタと戦いたかったんだぁ!!」
言うと同時、悟空は気を溢れさせて一気にビルスに向かって駆ける。
右の拳を思い切りぶつける。
左手で掴み止められるもビルスの目が鋭く細まった。
「…お前!!」
すぐさま、ビルスの返しの右の上段回し蹴りが放たれる。
凄まじい衝撃で、周囲のモノが吹き飛ぶ。
その一撃を悟空は左腕で軽々と受け止めた。
(…こいつ)
ビルスが目を細めると同時、悟空はビルスの蹴り脚を跳ね返すと、一気に懐に踏み込み強烈な左と右のストレートからの拳と蹴りのラッシュを繰り出していく。
鋭く、速い的確な打撃はビルスをして、防御体勢に回らなければ避けきれない。
左右のストレートをギリギリで避ける、と左の上段回し蹴りがビルスのガードの上に炸裂する。
「ぐぅ!!」
うめき声を上げ、ガード越しに崩れる体勢を悟空は見逃さない。
冷静で的確な連撃が、ビルスを襲う。
咄嗟にビルスは、距離を取ろうとバックステップしながら跳び上がろうとする。
しかし、目の前には悟空が迫っていた。
「逃がすかよ!!」
「…ぐ!?」
右のストレートが放たれる。
瞬間、ビルスの顔面の手前で拳は止まった。
「!?」
目を見開く悟空の右手首をビルスの左手が掴み止めている。
「図に乗るんじゃないよ、悟空ぅううううう!!!」
強烈な紫の神気がビルスに纏わり、拳を返してくる。
それを左手で掴み止めて悟空も水銀の気を纏い、地上を見下ろした。
地上ではこちらを見上げる真・超サイヤ人のターニッブが居る。
彼に向かって悟空は叫ぶ。
「何してる、ターニッブ!? ここはオラに任せて、オメエは死者の都へ行け!!」
これに思わずターニッブが翡翠に黒の瞳孔が現れた目を見開いて告げる。
「だ、だがーー!」
「こんな所で時間なんて食ってる暇あんのか!? オメエが前の王様やリューベと交わした拳の誓いは、そんなに安っぽいんかぁ!!?」
その言葉にターニッブは見開いた瞳を静かに鋭く細め、黙ってうなずくとガーキンに向かって告げた。
「行こう」
「…分かった。亡者どもが邪魔しに現れたら、露払いは俺に任せろ」
「すまん」
ターニッブがあまりに自然にしているので、ガーキンは忘れていたが。
この時、ターニッブの姿は真・超サイヤ人のままであった。
戦闘力は無限に上昇してはいない。
気が安定している。
それが、どれほどに困難で険しいものだったかは、同じ境地に至った悟空とベジータにしか分からない。
「…へへっ。決着、つけられるといいなぁ。ターニッブ!」
動きを止めていた向かいのビルスが静かに口を開く。
「悟空。“こんな所”とは言ってくれるじゃないか? この破壊神に向かってーー!」
目を細め、怒りに震えるビルスに悟空は不敵な表情を崩さない。
「悪りぃな、ビルス様。アンタが何を言おうとオラ、ターニッブの邪魔はさせねえ!!」
「全王様のお気に入りだからって、殺さないように加減してやってれば調子に乗ってるみたいだねぇ…! 完全にキレたぞ!!!」
「そんなら、オラもアンタに怒ってんだ…!! 神様だからって好き勝手に人の因縁にちょっかい出すんじゃねえよ!!!」
強烈なビルスの拳に力負けせずに受け流し、返す悟空の姿をウイスは嬉しそうに微笑みながら見ている。
「ビルス様と全くの互角とは、素晴らしい。やはり悟空さんは、次期破壊神にスカウトしたいですねぇ」
凄まじい打撃のやり取りの後、悟空が肩で息を切らし始める。
ビルスが拳に紫色の光を纏って放ってきた。
それを受け止めると、超サイヤ人ブルーのオーラが消える。
「!? クッ!!」
「忘れたか? 僕の能力は破壊だ。お前が僕と同等の力になっていても、それを消してしまえば意味はない」
一時的に戦闘力を下げられた悟空に強烈な右のボディが決まり、前屈みになったところを背後に回ったビルスが後頭部に強烈な飛び蹴りを放った。
「ぐぁああああ!!!」
悲鳴を上げながら前のめりに闘技場の地面に叩きつけられる悟空。
亀仙流の道着に戻り、黒髪になりながらも立ち上がってくる。
これにビルスがつまらなそうに見下ろしながら言った。
「…なんだい? ターニッブとの組み手で全力を出し過ぎたのかな? もうスタミナ切れなんて、ガッカリだよ」
そのまま、ニヤリと笑いながらビルスは告げる。
「それとも、真・超サイヤ人になって戦うか? それなら、まだまだ楽しめそうだ!!」
これに悟空は肩で息をしながらも、ペッと血を地面に吐き捨てて睨み上げる。
「言ったろ? オラ、アンタやウイスさんを相手に真・超サイヤ人にはなんねえってよ」
「なら、諦めて降参しろ。今なら、そこを退けば許してやる」
「それもゴメンだ。ターニッブとの約束をオラは守る!!」
ビルスを正面から見据えて悟空は叫ぶ。
同時、赤色の混じった金色のオーラを身に纏いはじめる。
「? これはーー? 超サイヤ人ゴッドと同じ赤色? だがーー!」
目を見開くビルスに悟空は笑う。
「こっからは、アンタも知らねえ超サイヤ人の可能性だ。未来のオラからもらった力、見してやる!!!」
悟空の気合いの咆哮が響き渡り、天に向かって金色のオーラが立ち昇る。
その変身にビルスが目を細めた。
「なんだい、その姿は? 神の気を纏っていないな」
悟空の姿は、赤い体毛の生えた裸の上半身と赤い尾の生えた、長い黒髪の超サイヤ人に変身していた。
琥珀色に黒の瞳孔が現れた目。
目の周りは歌舞伎の隈取をしたように紅い。
道着も亀仙流のモノから更に変化し、山吹色よりも明るい道着のズボンと靴は黒の革靴。
裾に青色の布を巻いている。
「超サイヤ人4さ…。何なら、強さ見せようか?」
冷徹で低い声で、孫悟空は破壊神ビルスに告げた。
「…今度の俺は、ちょっと強いぜ」
ーーーー
死者の魂を食らい続けた惑星の意思が。
それが生み出した幻影の鬼の肉体が消えて行く。
ひび割れた肉体の口は動かず。
怨念めいた惑星の意思が声を上げた。
ーー おのれ。よくも、やってくれた ーー
真・超サイヤ人となったベジータは、冷徹な翡翠に黒の瞳孔が現れた目で見据える。
「戦闘民族サイヤ人を甘く見たのが、貴様の敗因だ」
腕を組んで消えて行く鬼の肉体に告げるベジータを、惑星の意思が笑う。
ーー フフフ。確かに“素晴らしい肉体を持ったサイヤ人”だ ーー
瞬間だった。
崩れゆく半壊した鬼の肉体がこちらに向かって突っ込んでくる。
ベジータは、無事な方の左腕で拳を突き出してくる鬼を掴み止め、軽々とハイキックで蹴り飛ばす。
まともに蹴りを浴びた鬼は完全にその場で塵となって消える。
同時だった。
蹴り脚を軸足に引きつけて戻し、素立ちになったベジータを青紫色の光が渦を巻いて襲い掛かる。
「!? これは!!?」
目を見開くベジータの胸ーー心臓に向かって。
肉体が消し飛んだ怨念の塊は、光る球が高速で迫る。
「! ベジィーータァアアアアアアア!!!」
だが、目を見開くベジータの前に両手を広げて光の球を遮る影があった。
「馬鹿な! ジュード、よせ!!」
ベジータの制止の声もむなしく、怨念が凝縮した光はジュードの胸に吸い込まれていった。
「ジュードォオオオオオオ!!!」
プリカも目を見開いてジュードを見据える。
「お、お兄様…! そんな…!!」
目の前に居たのは、真・超サイヤ人と化したベジットと瓜二つのサイヤ王。
ジュードが邪悪な笑みを浮かべて立っている。
「…くっ! なんてザマだ、この俺が!!」
油断をしたつもりはない。
だが、まさか惑星の意思が肉体を作るのではなく乗っ取ることを選択するとは、ベジータも思っていなかった。
「…どうした? 何を驚いている。ベジータよ」
ジュードの意識を完全に乗っ取った惑星の意思が、真・超サイヤ人となった己を見下ろして笑う。
「俺は惑星の意思。知的生命体の意志や念、魂を食らうことで自我を得た実体のない存在だ。こうなることくらい予測できなかったか?」
嘲笑するようなジュード王の姿にベジータが忌々しそうに表情を歪める。
「貴様…! 俺の友の肉体を乗っ取りやがったな!!!」
「友、か。お前は幸せ者だな? 友の拳で死ねるのだから…!!」
無限の気の上昇を始めるジュードに、ベジータも真・超サイヤ人の力を引き上げ始める。
(先に変身した分、俺の方が時間的に不利だ。一気に引き上げねば!!)
真・超サイヤ人の倒し方は簡単だ。
ベースとなったジュードの戦闘力は並みはずれてはいるが超サイヤ人でしかない。
そこから戦闘力が引き上がる前に、強烈な一撃で決着を付ければよいのだ。
しかし、それは下手をすれば肉体を乗っ取られたジュードが死んでしまう。
かと言って手加減をして、生半可な攻撃を加えたところで相手を強化するだけだ。
この状況にベジータは、惑星の意思とそれを許した己への怒りを感じて拳と唇から血が出るほどに握り、あるいは噛みしめていた。
その時だ。
「ベジータ。お前の出番は終わった」
3メートルを越える巨大な筋肉の塊。
白目の超サイヤ人ーーブロリーが淡々とした様子で激しい金色のオーラを身に纏い、告げる。
「後は、俺がやる!!」
追い詰められた惑星の意志に意識を乗っ取られたジュード。
彼を救うため、かつて己を悪魔だと言ってのけた伝説の超サイヤ人が立ち上がった。
かつて、血と争いを好んだ超サイヤ人が居た。
しかし彼は、その才能ゆえに仲間に疎まれて赤子のころに殺されそうになる。
さらに、もって生まれた力と凶暴さ故に親に自我を奪われて洗脳されるのだった。
自らを悪魔と呼んだ彼は、惑星サイヤに召喚されて変わった。
壊すのではなく、守るために。
倒すのではなく、勝つために。
その拳は固く握られていた。