ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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 惑星の意思を倒したベジータ達。

 彼らの前についに、ターニッブが現れる。

 ターニッブとリューベの戦いがついに始まる。

 一方で、破壊神ビルスと超サイヤ人4になった孫悟空は激戦を繰り広げていた。


超サイヤ人4 対 破壊神ビルス

 ジュードはプリカの腕の中で目を覚ました。

 

「こ、此処は」

 

「ーーお兄さま!!」

 

 抱きしめられ、ジュードは困惑した表情になる。

 

「プリカ? どうしたのだ、いったい」

 

 いつもは淑やかな妹が、自分を必死に抱きしめてくるので戸惑う。

 

 そんなジュードに声をかけてくるものがいた。

 

「無事のようだな、ジュード」

 

 闘いを終え、黒髪に戻ったベジータだ。

 

「? ベジータ? 惑星の意思は、あの異形はお前が倒したのか!?」

 

「ああ。とどめはブロリーの奴だがな」

 

 ベジータはそう言うとブロリーを見据える。

 

 黒髪に戻ったブロリーは静かな瞳でジュードを見返してきた。

 

「どうやら、成功したようだな」

 

 ブロリーの言葉にジュードが目を見開いた。

 

 記憶が蘇る。

 

 自分は、ベジータを庇い。

 

 惑星の怨霊に肉体を奪われて。

 

「ブロリー、お前が助けてくれたのだな。ありがとう」

 

「気にするな。大したことはしていない」

 

 頭を下げるサイヤ王ジュードにブロリーは微かに笑い、本当に何でもないように告げた。

 

 その後、ジッとジュードを見据えて苦笑する。

 

「まさか、この俺が違う星とはいえ。サイヤ王に礼を言われる日が来るとはな」

 

「おいーー。耳が痛いから、余りその手の話題は言うな」

 

「ククク、気にし過ぎだ。ベジータ」

 

 ブロリーから直接面と向かって言われたジュードには意味がわからなかったが、ベジータには理解できたようだ。

 

 苦虫を噛んだような顔になる。

 

 それをブロリーは可笑しそうに笑って見ていた。

 

「ーージュード、プリカ様。ベジータにブロリー。みんな無事だったか」

 

 声の聞こえた方を見れば、真・超サイヤ人になったターニッブが翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で立っている。

 

 隣にはガーキンも居た。

 

「良かったぜ。みんな、何ともないんだな?」

 

 ベジータが静かに黒髪のガーキンを見る。

 

「当たり前だ、俺とブロリーが居て何を心配することがある?」

 

「そりゃそうだ。けどよ、ベジータ。今、悟空の奴が」

 

「知っている。破壊神ビルスが現れたのだろ?」

 

 ガーキンの言葉を遮り、ベジータが告げるとジュードが目を見開き、プリカが表情を険しくする。

 

「破壊神ビルス? 宇宙で最も強く、恐ろしい神という?」

 

「…ビルス様は、リューベに興味があるようです。ですから、ターニッブとリューベの闘いを邪魔させない為に。ベジータさんや悟空さん達はーー」

 

 これにガーキンも頷いた。

 

「ターニッブを此処に来させる為に、悟空のヤツは破壊神のところに一人で残りやがった。あいつだけに任せてられるか。俺は戻るぜ!」

 

「待て、ガーキン!」

 

 今、来た道を振り返り戻ろうとするガーキンにベジータが告げる。

 

「…カカロットの所には、奴の親父のバーダックを向かわせた。貴様にはターニッブの闘いを見届ける義務があるだろ。ジュードもプリカもだ。だから、カカロットは闘っているのだ。分かってやれ」

 

 淡々とした口調のベジータにジュード、プリカ、ガーキンが思わず黙り込む。

 

 彼らを置いてターニッブが静かに一歩、先ほどまでブロリー達が立っていた場所に歩んで行く。

 

「…ターニッブ」

 

 ブロリーが真・超サイヤ人となっている彼の背に声をかけた。

 

「死ぬなよ…」

 

 その一言には万感の思いがある。

 

 それを知ってか、ターニッブはその場に立ち止まって振り返り、笑みを浮かべた。

 

「…ああ。みんな、行ってくる」

 

 寡黙であまり自分から表情を変えることのないターニッブが、まるで幼子のように純粋で透明な笑みを浮かべた。

 

 思わず、プリカが立ち上がり呼び止めようと手を伸ばすが、それを兄ジュードが無言で止める。

 

 兄は静かに首を横に振った。

 

 ガーキンがターニッブに真っ直ぐ拳を突き出す。

 

 ターニッブは笑ったまま、その目に向かって頷いた。

 

 瞬間、ターニッブの前に巨大な雷が落ちる。

 

 轟音が響いて衝撃が走る中、濃紺色の空手着。

 

 手と帯を荒縄で締めた、足袋に草履を履いている超サイヤ人が現れた。

 

 静かにベジータが呟いた。

 

「…いよいよ、だな」

 

「ああ。だが、この闘い。惑星の意思が倒された以上、サイヤ人の運命は最早関係ない」

 

 ジュードが応え、ベジータの隣に立つ。

 

「純粋にサイヤ人同士、どちらが強いのか知りたい。それだけなのだろう…」

 

「…あいつらは、ただの武道家だからな」

 

 ブロリーの言葉にガーキンが応える。

 

 彼らが見守る中。

 

 互いに翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で見合う、白と黒の道着の超サイヤ人。

 

 圧倒的な力を放ち合いながら、二人は向き合う。

 

「…貴方を師匠ーー先代サイヤ王は”甘い”と言った」

 

 静かにターニッブは、冷淡にして冷徹な無表情の鬼の青年に告げる。

 

「だが、俺はそうは思わない」

 

 表情の変わらない鬼に向かい、ターニッブは穏やかな笑みと共に告げた。

 

「真なるサイヤ人・リューベ。貴方は、どうしようもない頑固者だ」

 

 ややあって、リューベの。

 

 能面のように無表情だった鬼の口の端が柔らかく歪む。

 

 これにプリカが目を見開いた。

 

「…リューベが、笑った?」

 

 非情な拳で命を奪うことにしか興味を示さない存在だと思っていた。

 

 なのに、今のリューベは笑っている。

 

 冷たい氷のような瞳を閉じ、優しげな笑みで。

 

「…フ、フフフフ」

 

「ははははっ」

 

 無邪気な笑顔で口を開けて笑うターニッブ。

 

 互いに穏やかな笑みを浮かべ、笑い合う。

 

 ようやく、約束が果たせる刻。

 

「…貴方に言いたかったこと。それだけだ」

 

 言うと同時、ターニッブが真・超サイヤ人の黄金のオーラを身に纏う。

 

 右拳を腰の前に出し、斜に構えて左拳を顎の横に置く。

 

 左構えになって膝を曲げ、腰を落とす。

 

「……」

 

 これに応えるように。

 

 鏡に映るようにリューベも同じ構えを取る。

 

 リューベの全身に黄金のオーラが漲り、濃紺色の空手着が青紫色に変わる。

 

 ターニッブの指の開く紅いグローブを着けた両の拳には、青白い雷光が走り始め。

 

 リューベの荒縄を巻いた拳には、血のような紅の光が天に昇りながら宿る。

 

 両者、同時に目を見開き、地を蹴って踏み込むと、互いに向かって左の拳を突き出した。

 

「うぉおおおおっ!!!」

 

「ぬぉりゃあぁっ!!!」

 

 乾坤一擲の気合いの声。

 

 二人の真ん中で、強烈な炸裂音と共に二つの拳がぶつかった。

 

ーーーーーー

 

 サイヤ王の宮殿。

 

 兵士達は亡霊騒ぎで起こった外の混乱を鎮め終え、宮殿に戻ろうとして、できなかった。

 

「こ、こりゃ、なんだよ?」

 

「…王様や巫女様は、無事なのか!?」

 

 宮殿の周りには強力な光のドームが張られている。

 

 中には入れない。

 

「…いったい、中で何が起きてるんだ」

 

 一人の兵士長が思わず、口に出して告げた。

 

 破壊神の付き人・ウイスが作った結界である。

 

 この結界があれば、ビルスの全力の攻撃も外には影響しないのだ。

 

 結界が張られた無人の宮殿内にある闘技場の中では、二つのパワーが空中、地上を問わずぶつかり合っている。

 

 炎のような紅と金色のオーラを纏い、口元に不敵な笑みを湛えた赤い体毛の生えた黒髪の超サイヤ人。

 

 猫のような見た目の頭を持ち、ギョロリとした丸い目を見開いて牙をむき出しにする痩せ型で紫色の肌を持つ破壊神。

 

 左拳を右に避け、右の拳を被せるように放つ悟空。

 

 簡単に右手を開いて頰の前で受け止め、悟空の右の膝を右の膝で受けるビルス。

 

「…フン」

 

 その場で回り、長い尻尾を鞭のようにして悟空の顔に放つも、悟空は軽々と左手で掴み止める。

 

 同時、宙に浮いたビルスの左飛び蹴りが、尾を掴んだ悟空の左腕に突き刺さり、衝撃が悟空の体を抜けて後方のものを吹き飛ばす。

 

 互いに見合う悟空とビルス。

 

 と、悟空はニヤリと笑ってビルスの尾をパッと離した。

 

 同時、ビルスは悟空から距離を取る。

 

「どうだい、ビルス様? 超サイヤ人4になった俺の強さ、楽しんでもらえてるかい?」

 

 距離を取ったビルスは悟空を見ながら告げた。

 

「…驚いたよ。戦闘力が表面化した状態で、神の域に来るとはね。超サイヤ人ブルーにも匹敵している。いや、純粋な身体能力と戦闘力なら、ブルーよりも上だ」

 

「そ! 超サイヤ人ブルーが、敵の弱点や闘い方を見切るのに長けた洞察力で相手を上回るなら。超サイヤ人4は、圧倒的な戦闘力で相手をねじ伏せるのさ」

 

 得意げに鼻をこすり、笑みを浮かべる悟空にビルスは感嘆したような溜め息をついた。

 

「全く、つくづくサイヤ人ってのは面白いね。生身の人間が神の気を纏うかと思えば。神の気を纏わずに神の域に達する変身をしてみせる」

 

 これに悟空もニヤリと笑う。

 

「なんだよ。知らねえのか、ビルス様?」

 

「……?」

 

「俺たち、サイヤ人は闘えば闘うほどに強くなんだ。戦闘民族だかんなぁ」

 

「…なるほどね。だけど、悟空。僕には通じないよ、その超サイヤ人4ってのはね」

 

「…ん?」

 

 ビルスの淡々とした言葉に悟空も目を見開く。

 

「…僕とやり合うなら、超サイヤ人ブルーの方が良かったね」

 

「……!!」

 

 目を見開く悟空の前にビルスが現れる。

 

 破壊神の強烈な不意打ち気味の右の浴びせ蹴りを軽々と掴み止める、デタラメなパワーの超サイヤ人4にビルスはニヤリとする。

 

「素晴らしいパワー、反応速度、そして戦闘力だ」

 

 拳と蹴りをぶつけ合う両者。

 

 悟空の打撃は、ビルスを物理的なパワーで押している。

 

「…だけどね、悟空。超サイヤ人4には、ブルー程の“未来視”とも第六感とも言える神がかった予測ーー判断力と洞察力がない。相手の攻撃を解して捌きながら攻撃を返すよりも、相手がどんな攻撃だろうと真っ向から殴り合ってねじ伏せるスタイル。それが、お前の敗因だ!!」

 

「……っ!?」

 

 打ち合いの中。

 

 悟空の右ストレートが、それまで凄まじい威力を誇った超サイヤ人4の力が、まるで凪のようにピタリと止まる。

 

 泰然として揺るがないビルス。

 

「力を一時的にゼロに破壊する。僕の能力を知らないわけじゃないだろう、悟空?」

 

「…っ! 舐めんなよ。あん時みてえに、消された以上の力でアンタを吹っ飛ばしてーーっ!?」

 

 気を高め、超サイヤ人ゴッドを吸収できた時と同じように気を上げて、拳を止めたビルスを体ごと上空に吹き飛ばそうとする。

 

「真剣勝負に、わざわざ力が溜まるのを待つ奴がいると思うのか!?」

 

 掴んでいた拳を引かれ、体勢が崩れた所に強烈で鋭い右の前蹴りが、悟空の腹に突き刺さった。

 

「…ぐぁ!?」

 

 強靭な肉体の超サイヤ人4でも、気がゼロの状態では耐え切れない。

 

 前のめりになって呻く悟空の背後に、ビルスは高速移動で現れ、首筋に蹴りを食らわせる。

 

 悟空はまともに地面に顔面から突っ込んで、闘技場の地面に溝を掘りながら、うつ伏せに倒れこんだ。

 

 たった二撃の打撃だがダメージがまともに通り、それまで全く揺らがなかった超サイヤ人4が少しだけふらつく。

 

 肩で息をしながら、立ち上がる悟空。

 

 その気が下がっている。

 

「なるほどな…。ビルス様と互角以上に殴り合えるレベルになって浮かれてたぜ。気をゼロにされっと超サイヤ人4の肉体でも、こんだけダメージを食らうんかよ」

 

 悟空は拳を握って気合いを入れ、一気に超サイヤ人4の力をゼロの状態から引きあげる。

 

「ならよぉ、超サイヤ人4のフルパワーで行くぜ!!」

 

「…来なさい。躾を兼ねて破壊神の恐ろしさを思い出させてあげよう」

 

 目の前に現れた悟空にビルスは凶暴な笑みを浮かべて、拳を握る。

 

 ぶつかり合う二つの拳。

 

「…ぐぁ!」

 

 ビルスが呻きながら、右手を払って僅かに下がる。

 

 完全に力負けした。

 

「…もらったぁ!!」

 

 悟空が見逃すはずはない、一気呵成に怒涛の拳と蹴りの連撃を放つ。

 

 鋭く速く、荒々しくも的確に急所を狙う悟空。

 

「…舐めるなよ?」

 

 ビルスも負けじと拳と蹴りを放ち、移動する足を止めての打ち合いになる。

 

 ビルスの右のストレートを悟空は片手で軽々と受け止めて、右の回し蹴りを顔に返す。

 

 左腕で受け止めるビルスだが、歯を食いしばり脂汗を流している。

 

「破壊神の腕を痺れさせるとはねぇ。やってくれるじゃないか、悟空!!」

 

 言うと悟空の蹴り足を弾いて紫の光を放つ拳がボディに炸裂した。

 

「…ぐぁ!?」

 

 瞬間、超サイヤ人4の漲るオーラがゼロになる。

 

「…しまっ!?」

 

 バックステップして距離を取ろうとする悟空の懐にビルスが踏み込み、左の拳を悟空の頰を振り切った。

 

「がっ!?」

 

 顔がのけ反り、意識が半分飛ぶ。

 

 更にビルスの右ストレートが悟空のボディを貫いた後、右のハイキックが顎を蹴り飛ばした。

 

「ぐわぁああっ!!」

 

 悲鳴を上げながら、悟空は地面に背中から叩きつけられていた。

 

「…ビルス様が破壊の力を使う程に本気になり、純粋な殴り合いではビルス様相手に優勢、ですか。神の気を纏わずに。それだけでも充分過ぎるほど、素晴らしいのですが。貴方は納得されていないようですね、悟空さん」

 

 ウイスが告げると、超サイヤ人4の力を全身に漲らせて悟空が立ち上がる。

 

「当たり前じゃねえか、ウイスさん。せっかくビルス様と俺一人の力でまともに殴り合えてんだぜ? 勿体無くて寝てなんていらんねえよ……!!」

 

 コレにウイスが楽しそうに口元を手で隠しながら、上品に笑う。

 

 対峙するビルスは、凶暴な笑みを浮かべている。

 

「いいぞ、悟空!! お前を強敵と認めよう!! 楽しいぞ、本当に!! はじめてだよ、本気で誰かと殴り合うのは。それも、まともに殴り合うと僕が負けるなんて!! 破壊神の力を使わなきゃ、僕が劣勢になるなんてね!! 楽しいじゃないか!!!」

 

 超サイヤ人ゴッドの時よりも遥かに楽しそうに、恐ろしい迫力の笑みを浮かべてビルスは笑った。

 

 これに悟空も野性味ある冷徹な笑みで応える。

 

「…へへっ、アンタを喜ばせることができて光栄だぜ。だけどよ。悪りいが、俺は勝つつもりだぁあ!!」

 

「やってみろ!! 今のお前になら、その大言も許されるぞ!! それ程の強さだ!!!」

 

 更に高まる両者の気。

 

 力をゼロにされ、打撃をまともに受けても悟空は不屈の闘志で立ち上がってくる。

 

 純粋な身体能力や戦闘力ならば、自分を上回る超サイヤ人の誕生に、ビルスはリューベの事も忘れて夢中になっていた。

 

 一方、激戦を繰り広げる超サイヤ人4と破壊神の闘技場に死者の都の階段から、ゆっくりとバーダックが現れた。

 

 彼は空中で繰り広げられているバトルを見て、思わずボヤく。

 

「カカロットの野郎。さっきの王子と同じ超サイヤ人に目覚めてやがる。とんでもねえ領域の戦いだな。…んで、あの猫みたいなツラしてんのが、破壊神ビルスか」

 

 悟空よりも鋭い翡翠の目で超サイヤ人バーダックは、ビルスを見据えた。

 

「…ウイス、バリアは完璧だな?」

 

 そのビルスが静かにウイスに向かって話しかける。

 

 コレにウイスが楽しそうに笑いながら、涼しい表情で告げた。

 

「ええ。しかし、ビルス様を本気にさせるとは。やはり、悟空さんは凄い人ですねぇ」

 

 瞬間、ビルスの両手に破壊の光が一瞬で宿る。

 

「…なんだと? 破壊の力は、一定の時間溜める必要があるんじゃねえのか!?」

 

「誰が、そんな事を言った?」

 

 瞬間、ビルスが先程までと変わらない超スピードで踏み込んでくる。

 

 悟空は咄嗟に距離を取りながら、気弾を撃って離れようとする。

 

「いい判断だ。肉弾戦だと、僕に触られたら力が消されるからね。だけど、その闘い方では、超サイヤ人4の持ち味が活かされないよ」

 

 気弾が全て、ビルスの体から放たれるオーラに触れて止まり、消えて行く。

 

 ビルスにダメージを与えるには、気をゼロにされるリスクを計りにかけながら肉弾戦を挑むか。

 

 それとも無効化できないほどのエネルギーを遠距離から放つしかない。

 

 超サイヤ人4の孫悟空が選んだのは、後者。

 

「なら俺の最高の技ぁ、受けてみろぉ! 10倍!!」

 

 言うと悟空は、両手を前に突き出して上下に手首を合わせた後、右腰に置いてたわめる。

 

 両手の中に紅い光の球が生まれた。

 

「かぁ〜めぇ〜! はぁ〜めぇ〜!! 波ぁああっ!!!」

 

 前方に両掌を突き出して放つ紅いかめはめ波。

 

 ビルスは、両手を胸の前で合わせて小さな恒星のような炎の球を作ると自分の頭上に掲げて、一気に大きくする。

 

「破ってみろ、超サイヤ人ゴッドの時には破れなかった僕のエネルギー弾を!!」

 

 放たれる紅い炎の球と紅いかめはめ波がぶつかり合う。

 

 強大な力と力にバーダックが翡翠の目を細めて悟空を見据える。

 

 紅いかめはめ波がビルスの作った球を撃ち抜き、爆散させるとそのまま、ビルスの前に迫る。

 

 ビルスは、右手に強烈な光を放つ紫の球を作り出すと、掌を紅いかめはめ波に向けた。

 

 紅いかめはめ波がビルスの掌に触れた瞬間、何事もなかったように消される。

 

「大した強さじゃねえか、カカロットよぉ。だが、あの猫野郎には通じねえ、か?」

 

 静かに目を細めて、紅いかめはめ波を消された瞬間、破壊神に殴りかかる息子を見て考える。

 

 その横に青白い肌の長身の男性ーーウイスが現れた。

 

「はじめまして〜! 悟空さんによく似た方ですね〜。ターニッブさんや、そちらで隠れられているサイヤ人の方よりも気の質が悟空さんに近い」

 

「…誰だ、テメエ。只者じゃねえのは、何となく分かるが」

 

 バーダックはチラリと隠れていると告げられた方を見た後にウイスに向き直る。

 

「…わたくしの名前はウイスと申します。悟空さんやベジータさんを、当人たちの希望もあって鍛えております。よろしければ、お名前を伺っても?」

 

「…バーダックだ。するとテメエは、カカロットや王子の師匠になる訳か?」

 

「まあ”今は”と申し上げておきましょう。ところでバーダックさん。貴方も素晴らしい鍛え方をされておられますね〜。いかがでしょう? この惑星サイヤの問題が済めば、わたくし達の宇宙代表として、闘っていただけないでしょうか? 惑星サイヤに来た元々の目的は悟空さん達が認めたターニッブさんを全宇宙格闘技大会の選手にスカウトすること、だったのですが。貴方を含め、素晴らしい資質の方々ばかりのようですからね〜」

 

 これにバーダックは、皮肉な笑みを浮かべて告げた。

 

「…生憎だな。この肉体は死者の都に造られた仮初めのモンで、魂もあらゆる世界の俺が混じって訳の分からねえ状態だ。まあ、ただのサイヤ人でしかねえ。生きてるのか、死んでんのかも分からねえ、曖昧な存在だ」

 

 これに微かに微笑み、ウイスは安心させるようにバーダックに告げた。

 

「…見たところ、存在が統合された事で肉体の固体化には成功しているようですが。ふむ、まあいざとなればビルス様に頼んで死者の都との因果を破壊してもらいましょう。中途半端な固体化ならば消えてしまいますが、貴方やブロリーさんほどに固体化できているなら問題ありませんよ」

 

 そして、ウイスは声をビルスに張り上げた。

 

「ビルス様!」

 

 ビルスは悟空のボディに拳を入れ、気力をゼロにすると両手を組んで後頭部に真上から振り下ろした。

 

 地面に叩きつけられる悟空を尻目に、ビルスは目をバーダックに向ける。

 

「聞いてたよ。なるほど、確かに戦力になるね〜。だけど簡単に選手にしたんじゃ、つまらないな」

 

 尻尾を振りながら言うビルスにウイスが告げた。

 

「おそらくバーダックさんは悟空さんのお父様でしょう。性格や気の質がよく似ております」

 

 超サイヤ人4の悟空が頭を左右に振りながら、バーダックを間に挟んで話をする二人の会話に耳を傾ける。

 

「確かにね。ターニッブや其処の物陰から見てるサイヤ人も悟空にソックリだけど、君は中身や気も似てるね」

 

「バーダックさんやブロリーさんは、肉体の固体化に成功してます。とはいえ、元々は死者の都の産物。惑星サイヤを離れれば消えてしまうでしょう。その因果律をーー」

 

「破壊できるのは僕だけだね。いいよ」

 

 その会話の内容に悟空が思わず声を上げた。

 

「ホントなんか、ビルス様にウイスさん! この惑星を離れたら、父ちゃんもブロリーも消えちまうってのか!?」

 

 ビルスは立ち上がってきた超サイヤ人4の悟空を真正面に見据えて告げた。

 

「悟空、真・超サイヤ人になりなさい。お前が勝てば、バーダックとブロリー、だったか? 二人のサイヤ人をこの惑星から解き放ってやるよ」

 

「……」

 

 悟空の琥珀に黒の瞳孔が現れた目が細められる。

 

「このビルスが、ただの人間一人を相手に破壊神の力を使ってまで闘ってるんだよ? 文字通り全力だ。それに比べてお前は、超サイヤ人4とブルーまでしか使わないつもりか?」

 

 これに悟空は鋭く目を細めると、構えを解いてビルスを見つめる。

 

「…もう少しで、アンタの力を見切れそうだったんだがなぁ。残念だぜ」

 

「そうだね。このまま時間が経てばね」

 

 意味ありげなセリフに超サイヤ人4の悟空は目を細め、ビルスはニヤリと笑う。

 

「そう。真・超サイヤ人になれと言ったのは、僕の願望だけじゃない。超サイヤ人ブルーを使い果たしたお前へのアドバイスだよ。僕の破壊の力を喰らい続けて物理的なダメージも蓄積した超サイヤ人4の肉体が、そろそろ限界なんだよ。強靭過ぎる体ってのも考えものだね?」

 

 瞬間、金色のオーラか悟空の肉体を包み、超サイヤ人4の変身が解かれ、ただの超サイヤ人になってしまう。

 

 道着も、いつもの亀仙流の「悟」マークの付いた山吹色のソレだ。

 

「どうだい、なる気になったかい?」

 

 ビルスの言葉に悟空は静かに頷く。

 

「…ああ。オラも腹を決めたぜ! 父ちゃんとブロリーの為にもなぁ!!」

 

 言うと同時、悟空の肉体を黄金のオーラが身を包む。

 

 見た目はほとんど変わらないが、先までよりも濃い黄金のオーラは、バーナーのように激しい。

 

 金色の髪も黄金に染まり、翡翠の瞳には漆黒の瞳孔が現れている。

 

「…こいつが、俺の真・超サイヤ人。派手にやろうぜ、ビルス様!!」

 

「くくく、それでいい。これで破壊神の僕の全力をようやく試せるよ!!」

 

「…そいつぁ、楽しみだ。破壊神ビルス様の全力、見してもらおうじゃねえか!!」

 

 構える悟空とビルス。

 

 その悟空の隣にバーダックが立った。

 

「待てよ、カカロット。俺も混ぜろや!!」

 

 言うと同時、バーダックの前髪が更に天に向かって逆立ち、金色の髪が黄金に変わる。

 

 翡翠に黒の瞳孔が現れた目を見て、悟空は目を見開いた後に不敵な笑みを浮かべた。

 

「真・超サイヤ人か。…流石だぜ、父ちゃん」

 

「まだガキに負けるほど、耄碌してねえよ」

 

 バーダックも野性味ある笑みで返す。

 

 真・超サイヤ人になりながらも髪型は超サイヤ人2のソレだ。

 

 額が露わになり、紅いバンダナが映える。

 

「おい、宇宙最強の破壊神」

 

「…なんだい?」

 

「二対一でも良いよな?」

 

「…願ってもないよ」

 

 快諾するビルスを見た後、自分の体を見下ろす。

 

 悟空と違い、気が安定せずに無限上昇を始めるバーダックは、自分の左掌を抑えて必死に気を安定させようとコントロールする。

 

 このまま、息子の前で力を垂れ流し続けてガス欠になる訳には行かない。

 

「戦いながら、安定させる方法を探るとするか」

 

「…父ちゃん。アンタ、俺以上に無茶すんなぁ〜」

 

「るせえ、ガキが生意気言うんじゃねえ」

 

 何処か嬉しげに、同じ顔をした真・超サイヤ人の親子は破壊神ビルスを前にして笑い合った。

 

 




 孫悟空とバーダック。

 二人の真・超サイヤ人を相手に能力を駆使して互角以上に戦う破壊神ビルス。

 はたして二人のサイヤ人は、破壊神の牙城を打ち破れるのか。

 そして、ターニッブとリューベの死闘もまた、新たな意味を生み出していた。

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