ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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ターニッブとリューベの決着はついた。

 しかし弱った惑星の意思を狙い、虎視眈々と野心のサイヤ人・ターレスが動く。

 そんなことは知らずに宴会を行う悟空達のもとに、全王が現れた。



平和なる日々 と それぞれの道★

 真の超サイヤ人に目覚めた者達の活躍により、数百年に渡る惑星の意思との闘いに終止符が打たれた。

 

 サイヤに住む住民達は、そのことを何よりも喜び。

 

 瞬く間に孫悟空、ベジータ、ブロリー、バーダック、ターレスの五人の名は惑星サイヤの隅々にまで知れ渡っていた。

 

 いつの間にかいなくなったターレス以外の四人に破壊神ビルスとウイスは、ジュードの計らいで食事を振舞われていた。

 

「うめぇ!! やっぱ飯は闘いの後が一番うめぇや!! ターニッブ、何してんだ? オメエも食えよ!!」

 

「おい、カカロット! 右手の炒飯だけならまだしも貴様、俺が楽しみにしていたステーキを!!」

 

「そういうベジータもスープ片手に、僕が楽しみにしていた骨つき肉を食べてないかな?」

 

「プリカ、ラーメンお代わりだぁ!! 後、こっちの餃子も追加くれぇ!!!」

 

「お? この魚、中々イケるぜ!! おい、ガーキン! サイヤ王! 何してやがる、酒だ酒! こっち来て俺の酒を飲みやがれ!!」

 

 戦場とは何も闘いの場だけではない、ということを惑星ベジータのサイヤ人達は教えてくれる。

 

 特に、食事時に。

 

「本当によく食べるな、悟空達は! 見ていて気持ちがいいくらいだ!!」

 

「笑いごっちゃねえよ、ターニッブ。食い過ぎだろ、コイツ等。うおっ、離せバーダック!!」

 

「ビルス様、お肉ばかりでなく野菜もきちんと食べてくださいね」

 

「ブロリーさん、こちらに置いておきますね?」

 

「く、ははは! 闘い終えた友からの酒だ。有り難く貰おう、バーダックよ!!」

 

 多少騒がしく不穏な発言もあるが、楽しそうに笑みを浮かべて騒ぐ。

 

 こんな楽しい食卓などいつ以来かとジュードは笑いながら思う。

 

 バーダックに絡まれて不満を吐くガーキンも、何だかんだ言いながら口元は笑っている。

 

 王都は“惑星の意思ーー常世の国”から解放されたことで、祭りが繰り広げられていた。

 

 亡霊や怨霊に悩まされる日々は、もう来ない。

 

 そうサイヤ王ジュードが発言したことにより、惑星サイヤの人々は数百年の時を経てようやく死者から解放されたのだ。

 

 悟空達が体を休めて三日目になるが、それでも変わらずに惑星は連日連夜の宴を繰り広げている。

 

 サイヤ王が言うには、一週間程度を予定しているが、皆の反応次第では引き延ばすことも視野に入れているとのことだ。

 

 文官たちが隣で頭を悩ませていたが、それもその場だけの話。

 

 祭りに参加し始めれば、武官も文官も変わりなく騒いでいる。

 

 美しく着飾った神殿の巫女娘達が、踊り子を買って出れば。

 

 その相手役にと手を上げる男達。

 

 悟空は飯をたらふく腹にかっこみながら、告げる。

 

「にしてもよぉ、ベジータ? ターレスの奴、最後まで現れなかったな?」

 

「…貴様も気になるか?」

 

「そりゃあな。オメエもか?」

 

「ああ。奴はバーダックやブロリーと違って野心の塊だからな。超サイヤ人に目覚めた今、よからぬことを考えているかもしれん」

 

 真剣な顔で食事の手を止めて告げるベジータを、悟空はキョトンとした表情で見据える。

 

「そりゃ、大丈夫じゃねえか? 今回のことでアイツも少しは懲りっだろ? 超サイヤ人に成れても上には上があるって思い知らされたんじゃねえかなぁ」

 

「…だといいがな。ん? カカロット、貴様は奴が何かしでかすと思ってなかったのか?」

 

「ああ。アイツも惑星サイヤの開放に協力してくれたみてぇだしよ、ビルス様に言って因果律ってのを破壊してもらったらいいんじゃねえか、ってよ」

 

「そんなことをしてみろ。この惑星から出れるようになった奴は、昔のように宇宙海賊に逆戻りしかねんぞ」

 

「心配し過ぎだって、ベジータ!」

 

「貴様が能天気なんだ!!」

 

 揉め出す二人の間にあったステーキ肉を、ビルスが音が出るように強くフォークで突き刺して口にする。

 

 二人がビルスを見ると、彼は口の中にあった肉を食しながら告げた。

 

「そのターレスって奴は、悟空と僕の戦いを物陰から窺っていた奴だろ?」

 

「? そうなんか? オラ、気付かなかったなぁ!」

 

 目を見開いて頭を掻く悟空に、バーダックが横からガーキンの首っ玉を引っ捕まえた状態で酒を飲ませながら告げた。

 

「テメエは破壊神との対決で忙しかったからな。他に気を取られる余裕がねえだろ」

 

「…そのターレスさんですが。彼はあの後死者の都に向かったようです。何をしに行ったのか、ご存知ですか?」

 

「? いや、何かあるのか?」

 

 ウイスの言葉にバーダックが目を見開いて首を横に振る。

 

 その隙にガーキンはバーダックの左腕から逃げていた。

 

「おい、悟空! お前の親父なんとかしてくれよ!!」

 

「ははっ! 父ちゃん、ガーキンのこと気に入ってるみてえだなぁ!!」

 

「笑い事じゃねえ!! あの酔っぱらいオヤジめ!!」

 

 騒ぎ立てる二人の肩をブロリーが叩いて制する。

 

「お? なんだよ、ブロリー?」

 

「ん? 結構マジな話か?」

 

 悟空とガーキンに向かって静かに目を向けた後、ブロリーはビルスとウイスを向いた。

 

「ありがとう。ブロリーと言ったね? サイヤ人にしては中々、礼儀もきちんとしている」

 

「それでは、話を進めたいと思います。プリカさんも、よろしいですね?」

 

 ウイスから言われ、プリカも姿勢を正す。

 

「結論から申し上げますと。死者の都ーー惑星の意思は滅んでいません」

 

 ウイスの言葉に、その場に居たサイヤ人全員が目を見開く。

 

 何かを語ろうと口を開くジュードを手で制し、ウイスは告げた。

 

「そもそも惑星の意思を完全に消してしまえば、このサイヤは人が住める環境ではなくなる。文字通り死の星になってしまうのです」

 

「この惑星の問題は“惑星の意思”が自我を持ち、積極的に知的生命体の精神エネルギーを取り込もうとしたことにある。だがリューベにベジータ、ブロリーのおかげで相当その自我も弱められたようだ。放っておけば他の惑星と同じくらいに自我レベルは下がる」

 

 その言葉にベジータが鋭く目を細めた。

 

「ターレスは、まさか惑星の意思を取り込もうとしていると?」

 

「おそらくね…。ジュード王の肉体を乗っ取ろうとした時に口走っていただろ? 人間の意識に乗っ取られるほどに力が弱まったというのか、とね。そいつを聞いてたんじゃないかな?」

 

 その言葉に悟空が口を開いた。

 

「ターレスの奴、しょうがねえな。気配消してそんなところから覗いてやがったんか?」

 

「取り込むだと? 下手すりゃ、自分が乗っ取られんじゃねえのか?」

 

「いやいや、お前ら親子と違ってそこまで無謀(アホ)じゃねえだろ」 

 

 悟空とバーダックの言葉に思わずガーキンが口を挟み、例によってバーダックに捕まえられて首を絞められている。

 

 それを尻目にベジータが口を開いた。

 

「ビルス様。もし仮にターレスが惑星の意思を乗っ取ればどうなりますか?」

 

「…そうだねぇ。おそらくだけど、亡者を操る能力を得ると思うよ」

 

「惑星の意思が行っていたことを出来るようになる、と?」

 

「ターレスって奴の器によるけれどね。器に合わせて使える能力も変わるはずだ」

 

 そう告げながらビルスは目の前のあんまんを口に運ぶ。

 

 横からウイスが告げた。

 

「ターレスというサイヤ人が最低限の器しかなかった場合ですが。仮に今の惑星の意思を取り込んだ場合、真・超サイヤ人への変身と亡者の一時的な復活と使役。このくらいは出来るでしょうね。惑星の意思が呼び出したベジット以外の存在ならば、特に召喚しやすいはずです」

 

 その言葉にバーダックが目を鋭く細める。

 

「…ってことは。俺達が倒したフリーザやカカロットの肉体を得たギニューと特戦隊。ブウとセルとか言うバケモン共もか?」

 

「そうなりますねぇ。神の域に達した能力を持つフリーザに、超サイヤ人の肉体を持ったギニューという男。これだけでも厄介なのですが。魔人ブウに人造人間セル、ですか」

 

 ウイスの言葉に、悟空が目を見開いてバーダックを振り返った。

 

「いい? 父ちゃんとターレス、金色のフリーザやセル達と闘って勝ったんか!?」

 

「リューベの野郎に手を借りたけどな。流石に真・超サイヤ人ってのに目覚めてなかったら、ヤバかったぜ」 

 

「ははっ、ホント父ちゃんは無茶すんなぁ!!」

 

 嬉しそうに笑う悟空に、バーダックもニヤリと笑みを返す。

 

 プリカが静かにウイスに問いかけた。

 

「ウイス殿。ターレスさんが惑星の意思に取り込まれた場合は、再び?」

 

「そうなりますね…。サイヤ人を護ろうとしたリューベと違い、惑星の意思を宿した真・超サイヤ人が出来上がるでしょう。サイヤ人を滅ぼすために」

 

「…そんな」

 

 思わずプリカはターニッブを見る。

 

 命を賭けて戦った彼とリューベの全てが、無駄になるかもしれない。

 

 ウイスはそう言うのだ。

 

 これに食事の手を止め、悟空が静かに瞳を鋭く細める。

 

「ベジータ。オラ、ちょっくら死者の都に降りてターレスを探してくっぞ」

 

「俺様も付き合ってやる…。万が一、惑星の意思が復活したら惑星ベジータの王子である俺の責任だ」

 

 それぞれ口にしながら席を立つ。

 

 既にターニッブは席を離れて道着の黒帯を締め直していた。

 

 互いに見合い、頷く三人。

 

 これにバーダックとブロリーも続こうとして、横からの声に遮られる。

 

「! ちょっと、お待ちくださいね!」

 

「? ウイスさん、何だぁ?」

 

 ウイスの持つ杖が突如光り出し、青い肌とまん丸の目をしたローブを着た子どものような人物が現れる。

 

 思わずジュードがプリカを見ると巫女である彼女にも分からないらしく、首を横に振った。

 

 その人物の顔を見た瞬間、背中に針金を通したようにビルスの姿勢が真っ直ぐに伸び、顔中から冷や汗を流しながら席を立つ。

 

「ぜ、ぜ、全王様ぁああああああ!!?」

 

 気を付けの姿勢を取りながら、ビルスは周りに座っているサイヤ人達に向かって必死の形相で告げた。

 

「な、何してる!? 全員、気をつけェええ!!!」

 

 言われたとおり、席を立つ惑星サイヤのサイヤ人達。

 

 これに比べてベジータ以外の惑星ベジータ出自組は、のろのろと立ち上がった。

 

「ああ! 全ちゃんじゃねえか、どうした!?」

 

 悟空が現れた人物に対してにこやかに片手を上げ、告げる。

 

「ぜ、ぜ、全ちゃん!? あ、あわわわわ……ブクブク」

 

 瞬間、ビルスが泡を吹いて卒倒する横で、ウイスが澄ました表情のまま礼をする。

 

 全王と呼ばれた子どものような人物は悟空の顔を見るや、無邪気な笑顔を向けた。

 

『うん、悟空~! あれ? でもどうして悟空がそこにいるの?』

 

「え? 全ちゃん、惑星サイヤに用事でもあったんか?」

 

 首を傾げて問いかけてくる全王に、悟空も無邪気に首を傾げる。

 

「全王様、いかがなされましたか?」

 

 ウイスがそんな二人の間に割って入り、問いかけると全王は思い出したように目をパチクリとさせて口を開いた。

 

『ターニッブ君っている~?』

 

「? 俺がターニッブだが」

 

 いきなり名指しで呼ばれ、訳も分からない状況ではあるもののターニッブが応える。

 

 これに全王はジッとターニッブを見据えて言った。

 

『悟空に似てるねぇ~』

 

「へへっ! オラの顔ってさ、サイヤ人には珍しくねえみてぇなんだ。オラの父ちゃんもオラにそっくりだろ?」

 

『わぁ、本当だぁ~!』

 

 バーダックを指差しながら言う悟空に全王は楽しそうな笑顔を向けた後、ターニッブに向き直った。

 

『墓守君からの伝言を伝えに来たよ~』

 

「? …墓守?」

 

『うん!』

 

 にこやかに言う全王に気を失っていたビルスが立ち上がって告げた。

 

「全王様に伝言役を頼むなんて! どんな無礼者ですか!! 私がこの手で!!!」

 

『うるさい、消しちゃうよ』

 

「申し訳ありませんでしたぁあああああああ!!!!」

 

 破壊神ビルスがまるで小間使いのような扱いに、全王の恐ろしさを何となく理解した悟空とベジータ以外のサイヤ人達は警戒した表情で彼を見る。

 

『墓守君がね、言ってたの。“その夢と拳を絶やしちゃダメだ”って』

 

 その言葉に皆が目を見開いた。

 

 思わずターニッブが口を開く。

 

「まさか…リューベが?」

 

『うん! 墓守君からの伝言を伝えたよ~!!』

 

 言うと同時、ウイスの杖からの通信が切れる。

 

 皆がポカンとしている中、ビルスがブツブツと呟いていた。

 

「まったく、全王様に頼み事だと? どんな関係か知らんが、恐ろしい真似をしやがる…。そもそも奴の魂は怨霊共に喰われたんじゃないのか? いやそれよりも、悟空まで全ちゃんって。アレは悪夢じゃなかったのか? いや、とにかく通信が切れて…」

 

「何をしゃべってるの?」

 

「え? いや、とりあえず通信が切れて一安、心……ヒィッ!!?」

 

 傍から聞こえた肉声に、ビルスが震えながらそちらを向くと、長身の側近二人に手を繋がれた全王が、玉座の間で広げられた宴会の席の前に立っていた。

 

「全ちゃん! いってぇ、どうしたんだ?」

 

「悟空! 悟空がターニッブ君と闘ってるところ、見に来たの!!」

 

「…へ?」

 

「墓守君がね、言ってたのね。伝言したら、面白いものが見れるって! 悟空とターニッブ君の組み手、見たいのね!!」

 

 無邪気に告げてくる全王に、悟空が困った顔になりながら告げる。

 

「悪りぃ、全ちゃん! オラもターニッブと組み手してぇんだけどさ、今は他に用事がーー!」

 

 瞬間、ビルスが大声で叫んだ。

 

「ぬぁにを言ってるんだ、お前は!? 全!王!様が!! お前達の組み手を見たいと言うんだから、そちらを最優先にしないくぁああああ!!!」

 

「えぇ!? でもよ、ビルス様! ターレスのこともあるしよぉ」

 

「後だ、後!! 全部後回しだ!! ターニッブ、お前もだ!!!」

 

 言いながら、ジュードに闘技場の手配をさせ、テキパキとビルスは指示を飛ばし始めた。

 

 バーダックが静かにベジータの横に来て告げる。

 

「どうするよ、王子?」

 

「まあ、全王や破壊神に関してはカカロットとターニッブに任せれば良いだろう。俺達は死者の都に向かうぞ」

 

 ベジータがバーダックとブロリーを見返しながら告げると、二人は静かに頷いて出立しようとする。

 

 だがーー。

 

「待て、ベジータ!! 全王様のお世話を僕一人にやらせるつもりか!!? お前達も来るんだ!!!」

 

 ビルスの叫び声に思わずベジータも気を付けの姿勢を取りながら告げる。

 

「はっ! しかし、ビルス様!! 惑星の意思やターレスがどうなったかを確認しなければ…!!」

 

「後にしろ、全部後だ!! 今は、全王様を優先するんだ!! 全宇宙を消されたくなければな!!」

 

「ははっ!!」

 

 こうしてベジータもビルスの言いなりとなりながら、全王の為に持て成しを始める。

 

「おいおい、惑星サイヤの存亡の危機じゃねえのか?」

 

「…俺は行くぞ」

 

「へっ! テメエにだけいい思いはさせねえぜ!!」

 

 呆れた風なバーダックの横を通り過ぎながら静かにブロリーが告げるのを聞き、彼もニヤリと笑う。

 

 そんな二人に追従するようにガーキンも立ち上がった。

 

「階段は闘技場にあるからな。悟空達よりも先回りして、俺達だけ先に死者の都に向かおうぜ」

 

 三人は頷き合うとガーキンが先頭に立って闘技場への近道を通ろうとして、ウイスに遮られる。

 

「お三方。焦らなくても既に決着はついているようですよ」

 

「? 分かるのか、アンタ」

 

 ガーキンの問いかけにウイスは「はい」と頷く。

 

「惑星の意思ーー“自我”は、どうやらターレスというサイヤ人に取り込まれてしまったようですねぇ」

 

 全員が目を見開く。

 

 ウイスはそれを見て笑いながら告げた。

 

「彼は既にこの星には居ません。先ほど、死者の都で得た可能性で自分の宇宙船を作って、惑星の外に出てしまいましたから」

 

 事もなげに言うウイスに思わずバーダック、ブロリー、ガーキンが叫んだ。

 

「「「それを先に言えェえええ!!!」」」

 

 木霊する声にウイスは嬉しそうに声を抑えて笑った。

 

ーーーー

 

 フリーザ軍の使う大型宇宙船が、全王が王宮に現れる寸前に惑星サイヤを出立した。

 

 惑星を後にしながら、ターレスは己の身を見下ろす。

 

「ククク、こんなにも上手く事が運ぶとはなぁ…」

 

 身に纏っているバトルジャケットは、ベジータの着ていたタイプと同じノースリーブタイプ。

 

 黒色の半袖フィットスーツの上に黒色を基調とした白の肩口のバトルジャケットを着ている。

 

 下は惑星サイヤで着せられていた白い道着のズボンを履いている。

 

 両手と両足には地球の戦いで使っていたグローブとブーツをそのまま使用していた。

 

「…この能力、実に便利なもんだ。服にしろ宇宙船にしろ、霧みたいなもんを固体化するだけで造れるんだからなぁ。もっとも、服はともかく宇宙船のような巨大なモノは固体化している状態を維持するのに力を使い続ける必要があるから、しばらく熟睡できねえわけだが」

 

 惑星サイヤの宮殿から盗んできた食料や酒、装飾品などを見てターレスは笑う。

 

 食い物の類も固体化したところで、自分の力を食っているだけなので霞を食べるようなものだ。

 

 本物の味と腹を満たす感覚に優るものはない。

 

 宇宙船に関しては手頃な惑星フリーザを襲って強奪する予定だ。

 

 道案内の人物は能力で復活させた。

 

 死者の都に降りたターレスはターニッブとリューベの戦いを覗き見、悟空達が去って行った後に惑星の意思が倒された場所に立って地面を調べた。

 

 すると、そこにはリューベの持っていた全く同じデザインの、灰色の勾玉の首飾りがあった。

 

 それを手にして首に掛けただけで、ターレスは自分の中に圧倒的な力が漲るのを理解した。

 

 同時に惑星の意思の記憶と感情がターレスの心の中に染まっていき、肉体を乗っ取ろうと最後の抵抗を試みていたが。

 

 既にそれだけの力が無いほどに弱まっていた意思を逆に取り込むことは、彼にとって造作もないモノだった。

 

「…こ、このフリーザが…! こんな猿の言いなりになるなんて…!!」

 

 艦長席から前を見ると、副長席に座った白い尾を持った人型の宇宙人が拳を握りしめて忌々しそうにしている。

 

「クク、どうしたフリーザ? このターレス様がわざわざ、仮初めの肉体とは言え生き返らせてやったんだ。有難く思ったらどうだ?」

 

「調子に乗るなよ…!!」

 

 怒りに震えるフリーザを見て、静かにターレスはワイングラスを持つ手とは逆の手を目の前にかざす。

 

 すると掌の中に拳大の紫の光る球が現れた。

 

「…ま、待て…!!」

 

 フリーザの制止を無視して、ターレスは勢いよく光球を握りしめる。

 

「ぐぁあああああ!!!」

 

 席にうずくまって苦しみ喚くフリーザを肴にワインを一口煽り、ターレスは告げた。

 

「貴様の肉体は仮初めであり、その心臓はこの俺に握られていることを忘れるな? もっとも、闘いたいならいつでも挑んでくれて構わんぞ? 俺を殺すことが出来れば、この能力は貴様が手に入れられる可能性があるからな」

 

 うずくまりながら怒りに震える真紅の瞳を見据えてターレスは続ける。

 

「先程、死者の都であれだけ俺にやられて無様に命乞いした貴様が、勝てると思うのならなぁ?」

 

 冷酷に邪悪に笑うターレスにフリーザの瞳がいよいよ血眼になっていく。

 

「…ち、調子にのりやがって! 相手に合わせて強くなる真・超サイヤ人なんて訳の分からない変身さえなければ、こんなサル野郎に!!」

 

「ククク、よく分かってるじゃないか。フリーザ様…! アンタの天下は終わったのさ。これからは、この俺の小間使いとしてせいぜいこき使ってやるぜ…!!」

 

 高笑うターレスを睨みつけるフリーザだが、今の状態では勝ち目が全くないので手が出せない。

 

 そんな彼を元気づけようと、孫悟空の恰好をしたギニューがフリーザの横に現れる。

 

「フリーザ様! 今は、お耐えください!!」

 

「…ギニューさん。貴方にその気はないんでしょうけれど。その顏でこちらに近寄られると、凄く不愉快な気持ちになります」

 

「…申し訳ありません、フリーザ様! では、わたくしと特戦隊のメンバーで何か元気の出る舞を踊って差し上げましょう!!」

 

「…結構です」

 

 言葉が通じず、喜び勇んで告げるギニューに最早フリーザも何も言えなくなる。

 

 そんな様を見て、忍び笑いを漏らしながら二人の人型をした異形が笑い合っていた。

 

「宇宙の帝王と言われたフリーザが、ああも部下に振り回されるとは…! 貴重なモノを見た気がするよ」

 

「フフフ、今生は中々面白くなりそうだよ。今回の主はビビディより、余程頭の切れるようだしな」

 

 緑色の異形の名は人造人間セル。

 

 桃色の異形の名は魔人ブウ。

 

 共に死者の都で惑星の意思によって模された姿で復活している。

 

 ターレスは二人の異形に笑みを返すと静かに惑星サイヤにいる同族たちに向けて告げた。

 

「カカロット、ベジータ王子! 同族のよしみだ、惑星サイヤと地球には手を出さないでおいてやる。だが、俺はいずれこの宇宙の全てを支配する…!! 新たなクラッシャー軍団を、いずれ貴様らにも見せてやろう…!!」

 

 邪悪な意志の塊を載せた宇宙船は、漆黒の闇の世界へと旅立っていった。

 

ーーーー

 

 完全にターレスの気を感じられないほどに遠ざかったのを確認し、バーダックはウイスを見る。

 

「いいのかよ? カカロットはああ言ってたが、あのバカは改心なんぞしねえぞ」

 

「それも運命でしょう、私は中立の存在です。ただ、これ以上の戦闘を惑星サイヤで行えば心労から多くの民が倒れてしまうでしょう」

 

「……そうかい」

 

 瞳を閉じ、バーダックは静かにウイスから顔をそむける。

 

 ブロリーも静かに握っていた拳をほどいた。

 

「ターレスというサイヤ人が惑星の自我を奪ってくれたおかげで、惑星サイヤは普通の星になりました。これからこの星が今以上に繁栄していくのか、それとも衰退していくのかは人間次第ですねぇ」

 

「…興味ねえな」

 

「それは失礼。では、闘技場に参りましょう? そろそろ悟空さんとターニッブさんの準備が始まる頃です」

 

 そう告げて闘技場に向かうウイスの背でバーダックとブロリーは静かに互いを見合った後、どちらからともなく足を闘技場に向けた。

 

ーーーー

 

 余談であるが、孫悟空とターニッブの御前試合を見て触発されたサイヤ王・ジュードと側近であるガーキンは後日、ターニッブと共に死者の都で修行を重ねた。

 

 そこに漂う惑星サイヤに伝わる武技の数々を記憶を通して習得し、ついに彼らは真・超サイヤ人に目覚める。

 

 ようやく手に入れた惑星サイヤの平和な日々。

 

 それは、これからも守られていくだろう。

 

 ターニッブ、ガーキン、ジュード。

 

 三人の真・超サイヤ人が居る限りーー。

 




 次回、エピローグという名の蛇足( *´艸`)

 孫悟空対ターニッブを全力で一話にまとめてお送りします ^^) _旦~~

 とりあえず物語としては、これで終了ですのでありがとうございました( *´艸`)


真・超サイヤ人の悟空とターニッブ


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