短編ですが、楽しんでください\(゚ω゚ )
漆黒の闇の中、黄金の炎が舞う。
黄金に燃え、天に向けて逆立つ髪。
翡翠に黒の瞳孔が現れた目。
鍛え抜かれた体に黒いノースリーブのシャツを身にまとい、その上に肩の部分で破れた白い道着を羽織り、腰の部分に巻いた漆黒の帯で締める。
白い道着のズボンの上に漆黒のブーツを履いてる。
堅く握られた岩のように頑強そうな拳の上には赤いオープンフィンガーグローブが付けられている。
透き通るように白い肌は光を放つように美しく、端正な男の顔に色気を溢れさせている。
「………」
男は瞳を閉じて静かに気を高める。
無限に沸き立つ黄金の炎のようなオーラを全身から噴き立たせて闇の中を暴いていき。
静かな青い光を纏う風が男の足下から渦を巻いて周囲に広がり、闇しかない空間を光の粒子が照らしていく。
両手を腰だめにたわめ、光の粒子を練り上げて一つの強烈な光球を作り出した。
男は目をゆっくりと開いて真っ直ぐに闇の中を見据える。
すると男の目の前に男と瓜二つの合わせ鏡のような姿をした黄金の髪に翡翠に黒の瞳孔が現れた目をした人物が立っている。
男は言った。
「…お前か」
黄金の炎のようなオーラを纏いながら、新たに現れた男に瓜二つの人物は、血のように赤い光を赤いオープンフィンガーグローブを付けた拳から吹き上げる。
「何を惑う? この力の行く先こそ、俺が目指すべき道! 全ての格闘家が目指すべき頂のはずだ!!」
男と瓜二つの人物は、袖が肩口で破れた濃紺の道着を身に纏っている。
男との相違点は、それだけだ。
透き通るように淡く光る白い肌も、天に向けて燃え上がる黄金の髪も、翡翠に黒の瞳孔が現れた目も。
何もかもが、男と同じもの。
白い空手着の男の名は、ターニッブ。
「それは人を捨てた力の使い方だ。ただ、人のままに。格闘家が目指すべき道ではない」
「何故だ? 人の力では到底あり得ない強さが手に入るんだぞ!? お前の目指す道とは、この力を捨てることか!?」
ターニッブと対峙する黒の空手着を身に纏う人物もまた、ターニッブであった。
「楽をして手に入る力などない。己の中で積み重ねたものこそが、真の力だ。安易に超サイヤ人の力に頼るならば、己の身に過ぎたものと分からず。己が身を滅ぼす」
「何を言う! 力無き信念など無意味! 闘いの意味も何もかも、力が無ければ蹂躙され滅ぼされるのだ!!」
ターニッブは静かにーー真っ直ぐに己の姿をした黒い空手着の己を見据える。
「格闘家は、ただ拳をかわせればいい。それを繰り返し積み重ねることで、人としての強さを得る。10や20の失敗を繰り返しても己の中に積み重ねたものは、無駄じゃない」
「戯言を! 積み重ねた経験がどうした? それにどれだけの時間を費やす!? そんなことをしなくとも、超サイヤ人が俺を高みへとーー拳の極みへと導いてくれる。お前が真の強さを望むのならば、何故この力の本来の使い方を認めない!?」
「…俺は格闘家としての強さがあればいい。人を捨てた力など不要だ」
瞳を閉じて思い浮かべるのは、山吹色の道着を着た自分と同じ顔の超サイヤ人。
「この拳も、超サイヤ人も、俺の一部。俺が前に進むための力だ。誰よりも超サイヤ人に向き合っている孫悟空が、俺にそれを教えてくれた。拘りを捨て、ただ純粋に強さを極める為に。この力を使えと」
真っ直ぐな白のターニッブに対し、表情を歪めた黒のターニッブが叫ぶ。
「格闘家としての強さがどうした!? 力が無ければ道を進み、生き残ることもできんわ!!」
「力が足りないなら、格闘家として死ねばいい。だが指先一本にでも闘志が示せるなら、格闘家に敗北はない。積み重ねてきたこの拳が。鍛え抜かれた身体と技が足りないのなら、磨き続けるだけだ!!」
「磨き続けたければ勝たねばならん! 目の前の敵を殴り倒し、勝つためにーー! 生きるために、圧倒的な破壊の力を認めねばならんのだ!! それが何故分からない!?」
「俺が求めるのは“倒す"でなく"勝つ"為の拳だ」
「倒さねば勝つことなどできない!」
「ならばーー勝負!!」
両者の拳が固く握られ、互いに向かって放たれた。
まともに顔で受ける両者。
不器用に、純粋に、ただ己の心を拳に込めて互いの顔に向かって拳を放つ。
互いに仰け反りながら距離が開くと黒の道着を着たターニッブが吠えた。
「…この力ーー真・超サイヤ人の主は、この俺だ!! 消えろ、もう一人の俺よ!!」
拳から赤い光を放ちながら突っ込んでくる黒のターニッブに対し、白い道着を着たターニッブが清々しい笑みを浮かべた。
「ならば、この俺の拳を打ち砕いてみろ! お前の悪夢を俺が覚ましてやる、ターニッブよ!!」
互いに高速で黒い闇の空間を踏み込むと、重く鋭い拳を打ち合う。
強烈な正拳突きは中央でぶつかり合い、相殺。
一歩離れた両者は、互いに腰だめに両手をたわめると気を練り上げて光球を作った。
「ぬぅぅ! 波動ォ拳ェエエンッ!!」
「うぉぉ! 波動ぉ拳ぇええんっ!!」
両手を同時に相手に突き出し、紫色の光線と青色の光線が中央でぶつかり合う。
光は押し合いながら白銀の光を放ちながら相殺された。
瞬間黒いターニッブは、白いターニッブよりも波動拳からの戻りが早く拳と蹴りを繰り出すのが速かった。
「…!?」
目を見開く白いターニッブの咄嗟の左拳突きの下を掻い潜りながら黒いターニッブが鬼のような迫力を放つ左フック気味の拳を顔面に叩きつける。
「ウラァッ!!」
「ぐっ!?」
咄嗟に右拳を顔の横に持ってきてガードする白いターニッブだが、黒いターニッブの拳は獣のように俊敏でかつ急所に寸分違わず叩き込んでくる。
ガード越しに仰け反る白いターニッブのガードの上から更に強烈な後ろ回し蹴りが踵からぶつけられ、そのまま首を抑えるように脚が動いて白いターニッブは地面に叩きつけられる。
「ぐぅっ!」
さながら龍の爪のような器用な脚技に白いターニッブが目を見張った。
「この技はっ!?」
「…ふん。超サイヤ人の力と技を否定してきた貴様が、俺に勝てるものか!!」
地面で両手を突いて白いターニッブが背中を踏み付けられてロックされた状態を外しながら素早く立ち上がり、拳を下から相手の顎に向かって突き上げる。
「まだだ、昇龍拳!!」
放たれた重く鋭い拳は、しかし空を切る。
白のターニッブの目が己の下に向かうと同時、黒のターニッブの拳が真下から突き上げられていた。
「滅殺! 豪昇龍!!」
一撃の重みは互角だが連打の回転数で白いターニッブは黒のターニッブに負けている。
連続で2発放たれた昇龍拳は白いターニッブの全身に瞬く間に白い煙を上げる打撃痕を植え付けた。
「ぐぁあああっ!!」
悲鳴を上げ、空中を舞い地面に背中から叩きつけられる白いターニッブ。
一瞬、遅れて黒いターニッブがクルリと踵を返しながら着地する。
大の字で寝そべる白いターニッブを見下ろし、黒いターニッブは己の拳を見据える。
「…これが、俺の道か」
その濃紺色の空手着の背に赤い光で「滅」の文字を浮かべ上げて黒いターニッブは掌の中で猛り狂う血色の光を見据える。
「何もかもを破壊し、壊し尽くしたくなる衝動。この力こそが真の強さーー! これが俺の答えーー!!」
「…さあ、どうかな?」
静かな声のした方を向けば、白い空手着を着た鏡写しの己が拳を握り立ち上がっている。
「…しぶといヤツめ!! 何故認めない!! この力だ! この技だ!! これが強さだ! 他に答えなどない!!」
「…確かに強い。だが、やはり格闘家の拳じゃない」
「…なんだと!? 俺をーー波動を見縊るのか!!」
怒りに黄金の炎を吹き上げ、両腕から真紅の光を吹き立たせる黒いターニッブに対し、白いターニッブは真っ直ぐに答えた。
「この拳の何が違うという!?」
「その答えは、この拳の中に」
静かに青い光の風の渦を足元から吹き立たせ、両手から青い雷光が放たれる。
「さあ、ここからだ。かかって来い!!」
「…違う! 貴様は、ここまでだ!!」
互いに吠えあいながら、黒いターニッブが残像を残しながら白いターニッブの前に踏み込む。
残像に拳を放たせ、死角から拳を当てるーー正に阿修羅の如き運足法。
だが、白いターニッブも自分の脚元から光の渦を放たせると黒いターニッブが踏み込む眼前に踏み込んで足場を取る。
「ぬ!?」
「正面から殴り合おう。俺よ!!」
清々しい笑みを浮かべながら白のターニッブは闘志を翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳に燃やす。
「捻じ伏せる!!」
黒いターニッブが鬼気を放ちながら拳を振ると白いターニッブが真正面から腕を折り畳んでガードの姿勢のまま赤い光を放つ拳に己の拳を叩き付けた。
瞬間、青い光の粒子が弾けて黒いターニッブの一撃が無効化される。
「な、にぃ!?」
「知らなかったか? 波動は、こんな風にも使える。倒すのでなく相手を制するには、こういう方法もある」
「その程度の見切りで俺を止められると思うなぁ!!」
構いなしに拳と蹴りを連続で放ってくる黒のターニッブ。
「今だ! はぁ!!」
瞬間、白いターニッブが青い光の粒子を一際輝かせると黒のターニッブの右拳を受けた瞬間に強烈な右中段正拳突きを胸に叩き込んだ。
「ヌゥオォッ!?」
脚から力が抜けたように前のめりに倒れる黒いターニッブを白いターニッブが見下ろす。
「…これでも、まだその拳だけが答えだと思うか?」
「舐めるな…! 俺はまだ、負けてはいない!!」
「…なら立ち上がれ、お前の本気を出せ!!」
瞬間、黒のターニッブが立ち上がり白のターニッブに襲いかかった。
残像を攻撃させて、その隙に死角に移動しながら急所に拳と蹴りを叩きつける黒いターニッブ。
対するは神がかりの見切りと重く鋭い神速の打撃でカウンターを叩き込む白いターニッブ。
殺意に猛り、強敵を前にして鬼気を溢れさせながら黒のターニッブが吠える。
「俺の拳が血を求めている!!」
白い道着を着たターニッブが拳を握り、腰を落として脚を踏ん張り構える。
「俺の拳を試すか!!」
果てしない闇の空間ーー。
それは、ターニッブという男の心。
己の内にある己自身と向き合う場所。
ターニッブは受け入れ、進むだろう。
真の強さとは何か、その答えを見つけるためにーー。
ではでは、次回もお楽しみです\(゚ω゚ )
Z編より後の話になるので、長いなぁと思います〜(´・ω・`)