ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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 短編を進めて参ります

 ではお楽しみください〜\(゚ω゚ )


エピソード・オブ・ターニッブ 宿命の強敵

 師の仇、リューベといつか向き合う為に。

 

 ターニッブは、惑星サイヤの王家から地下の特異点の空間に出ると歩き出した。

 

 サイヤの波動が、ターニッブの前に道を示す。

 

 強敵の元へと向かう為、天まで続く階段を作り上げる。

 

 数多の天から降りた階段の先には、ターニッブが求める強き者が待っている。

 

 その階段を見据えながら、ターニッブは独り物思いに耽っていた。

 

「…思えば、俺の中のサイヤの波動が生み出した俺自身も。あの男に出会わなければ目覚めることはなかっただろう」

 

 静かに黒い瞳の奥に光を灯し、ターニッブは続ける。

 

「…偉大なるナメックの帝王ーーカタッツよ。お前は、この俺に真の格闘家への道を。格闘家の在り方を教えてくれた。お前が居なければ、俺は格闘家を辞めていただろう」

 

 風がターニッブの頬を優しく触り、何処までも続く荒野を吹き抜けていく。

 

ーーーーーー

 

 鈍い音と共に崩れ落ちたのは、頭に二本の触覚の付いた緑の肌をした戦士。

 

 ターニッブを侮り、不意打ち気味に放たれた槍のように強烈な飛び蹴りへな応えは、折り畳んだ左腕で絶妙に放たれた跳び蹴りを自身の身体の脇に逸らし。

 

 強烈な青い閃光を放つ右正拳突きだった。

 

 拳は見事に緑の肌をした細長い顔の男ーーナメック星人の戦士オタビの腹を打ち抜いていた。

 

「ば、バカな。神々にすらも匹敵する帝王カタッツより教わった蹴りが、サイヤ人如きに破れるとは…!!」

 

 前のめりに倒れたオタビを見下ろし、ターニッブは前を見据える。

 

 そこには、タンクトップを着たゴツイ四角形のような顔をしたナメック星人と無駄の無い鋭い刃のような顔をしたナメック星人が立っている。

 

「…ほう、あのオタビを軽く捻るとは。なかなかやるな」

 

「フッ、ヤツには良い薬だろう。それよりターニッブと言ったか? 帝王がお前に会うと言っている。私達について来てくれ」

 

 淡々とした二人組の男にターニッブが頷きながら、その瞳を闘志に燃やす。

 

「機会があれば、アンタたちとも拳を交えてみたい」

 

「…その時は、真っ先に俺が相手になろう。お前のスピリッツは熱い。それを俺の拳が超えれるかーー興味がある」

 

 ニヤリとシニカルに笑う強面のナメック星人の名はラシフ。その隣にいる端正でシャープな顔立ちの相棒はメッアという。

 

 彼もまた、ターニッブに友好的な笑みを浮かべて来た。

 

「たしかに君の格闘センスとスピリッツは素晴らしい。帝王に会わせる価値があるというものだ」

 

「…アンタ達ほどの男が、帝王と呼ぶ男ーーカタッツか」

 

 自らの拳を握りしめ、緑色の空を見上げて静かにターニッブは瞳を細める。

 

「現時点ではお前に勝ち目はない。帝王のことだからやり過ぎる可能性がある。早めに降参しろ、いいな」

 

 ラシフの言葉は心底から自分を思ってのことだとターニッブは気付く。

 

 その強面の目には、真摯にこちらを思うラシフの誠実さがあった。

 

 二人の案内の先に居たのは、3メートルを優に越える巨体の漢。

 

 ラシフのゴツさとメッアの鋭さを兼ね備えた上で、強烈な覇気と雰囲気を放っている。

 

「…こ、これが帝王ーーカタッツ…!!」

 

 ターニッブが目を見開きながら、カタッツの全身から放たれる蒼銀の覇気に言葉を震わせる。

 

「…カタッツ。連れて来たぞ」

 

「後のことは、貴方に一任する」

 

 ラシフとメッアに目で頷き彼らが去るのを見送った後、カタッツは鋭い黒瞳でターニッブを見据えた。

 

「良く来たな。拳を極めし者リューベの志を継ぐものーーターニッブよ」

 

「…リューベを、知っているのか?」

 

 目を見開くターニッブにカタッツは凄みのある顔にシニカルな笑みを浮かべて巨大な拳を握る。

 

「かつて、我らは宿敵(とも)だった。それだけの事だ」

 

「……あのリューベに友が居たというのか?」

 

 目を見開き驚くターニッブをカタッツは面白そうに見下ろして笑う。

 

「意外か? アレは昔から、闘うこと。強くなることにしか興味はない。そのために手段を選ばぬが為、ただ闘うことだけが目的の修羅と誤解されやすいーー」

 

「…人では居れず、鬼には成れず。サイヤ王ヘイヤはあの人をそう言っていた。まさかーー」

 

「…人で居れぬが故、人外の極みへと至り。鬼に成らぬが為に修羅道を求める。お前があの男を超えると言うならば。あの男の力だけでなく覚悟さえ超えてみせろ」

 

 拳を目の高さに置き、軽くステップを踏みながらカタッツは静かに告げた。

 

「…来い、小僧!!」

 

「行くぞ、カタッツ!!」

 

 帝王の咆哮に応え、ターニッブが踏み込む。

 

 鋭い踏み込みと素早いダッシュからの左正拳突きをカタッツの腹に目掛けて放つ。

 

 カタッツの太い肘が凄まじい唸りを上げてターニッブの左正拳に上から振り下ろされた。

 

 強烈な炸裂音が響き、両者の脚元を中心に巨大なクレーターが生じる。

 

「…くっ!」

 

 一瞬後、後方へ吹き飛んだのはターニッブである。

 

 咄嗟にバックステップしてカタッツから距離を取り、痺れる左手を前に突き出し、右拳を握って腰に置き構える。

 

「…軽い拳よ。貴様の拳には重みがない」

 

「…何?」

 

 カタッツは、その場から動かずに失望したような溜め息を吐いてターニッブを見据えた。

 

「…あのリューベを超えると言う男の拳が、この程度。中身の伴わぬ拳など、振るうことに何の意味がある?」

 

「…俺の拳には、力が足りないと言うのか?」

 

 己の拳を見下ろして震えるターニッブにカタッツは静かにだが、冷厳に応えた。

 

「足りぬ! 覚悟も信念も、その拳には全てが足りぬ!!」

 

「…っ!!」

 

 歯を食いしばり、屈辱と敗北感にすぐさまターニッブは立ち上がる。

 

「…悔しいか? ならば挑んで来い、俺は帝王! 全ての闘うものにとっての壁だ!!」

 

「うぉおあああ!!」

 

 心のままに咆哮を上げて青い波動を拳に纏い、ターニッブが突っ込む。

 

 瞬間、野太い丸太のような脚から、凄まじい勢いの蹴りが放たれた。

 

 脇腹を打ち抜かれ、前のめりになるターニッブの左頬を更にカタッツの回し蹴りが捉える。

 

 ピンボールのように後ろに仰け反り、前のめりに身体を曲げるのを繰り返すターニッブ。

 

 握っていた拳は開き、なんとかして蹴りの嵐を抜けようと捌き、防ぐも防ぎきれずに痛打を貰う。

 

「…うっ、ぐ、あぁあ!?」

 

 膝と両腕を使ってガードしようにも、ターニッブの技術は全く通用しない。

 

 無力感さえ与えられる程の容赦ない攻め、帝王の強さがそこにある。

 

 半ば飛んだ意識の中、ダメ押しの左肘鉄をフック気味に叩き込まれ、ターニッブはついに前のめりに倒れた。

 

「…つ、強い…!」

 

 それしか言葉は出せなかった。

 

 余りの力の差にターニッブは悔しくて仕方なかった。

 

(あの辛かった修行は、なんだったんだ? 俺は何のために強くなろうとしたんだ? こんな程度の力しか、俺には無かったのか?)

 

 失望が、絶望が、ターニッブの全身を包み込む中、巨大な右手がターニッブの頭をわし掴んで引き上げる。

 

 宙吊りにされたターニッブの目の前にカタッツの黒い瞳があった。

 

「…どうした? 貴様の目指す道は、こんなものか? 貴様は此処までに過ぎんのか? それでリューベを超えるなど笑わせるな!!」

 

 瞬間だった。

 

 理屈ではない。身体が、胸が燃えた。

 

 胸の内から黄金の炎が燃え上がり、瞬く間にターニッブの全身を包み込むと彼の髪は黄金に燃えて天に向けて逆立っていた。

 

「…滅! 昇龍拳!!」

 

 ターニッブの拳から血のように赤い光が放たれ、稲妻のようなスピードでカタッツに迫った。

 

 強烈な跳躍をしながら斜め下から天に向けて振り上げられた拳はカタッツの分厚い筋肉の胸板を刃物のように切り裂きながら上空へと吹き飛ばした。

 

 ターニッブはクルリッと着地際に身を翻しながら、己の前で膝をつく帝王カタッツを見下ろす。

 

「…我が名はターニッブ! 我、生きるが故にサイヤの波動に目覚めしもの!!」

 

 冷徹な翡翠に黒の瞳孔が開いた瞳は殺気に一瞬赤く光る。

 

 凄まじい迫力を放つターニッブを前にカタッツは己の胸を切り裂いた傷を見つめた後、立ち上がった。

 

「…愚か者が。この帝王を前に安易に力に頼るとは!」

 

 手負いの虎は牙を剥いてターニッブを睨み付ける。

 

 同時にターニッブは拳を握って構えを取った。

 

 真紅の陽炎のような光が拳から放たれてターニッブの白い空手着を真っ黒に染め上げていく。

 

 それを見据えてカタッツは鋭く瞳を細めると、拳を握りしめた。

 

「…超サイヤ人に取り込まれるのが、貴様の目指す道か? それでリューベを超えるなどと、見下げ果てたぞ!!」

 

「…うるさい! 俺は、俺は、全てを超えてみせる!! この力で、全てをだ!!」

 

 黄金の炎のようなオーラを纏ってターニッブが構えをとると、カタッツがニヤリと笑みを浮かべた。

 

(…ほう? この小僧、超サイヤ人の力に飲み込まれながら自我を失っていない。素質はある、ようだな)

 

「…面白い、貴様が俺の宿敵に足るか。試してやろう」

 

「ぬかせ、帝王ぉおおお!!」

 

 鬼神の迫力を漲らせながら、ターニッブが踏み込む。

 

 対してカタッツも神技のステップを刻みながら巨体とは思えぬ軽やかさで消える。

 

 光の波紋が、そこかしこで生まれ。

 

 轟音が辺りに響くと同時にクレーターが発生していく。

 

 天が割れ、大地を穿つ、両者のパワー。

 

 人外の域に至ってなお、ターニッブの拳はカタッツに届いていない。

 

「…バカな、この力が! 拳が、届かないと言うのか!?」

 

 叫ぶターニッブをカタッツは睨み下ろした。

 

「…安易な力に溺れたことを、後悔しながら沈むがいい!」

 

 今一度、拳を握り力を漲らせて放とうとするターニッブの前にカタッツが強烈な飛び膝蹴りを叩き込み、顎をかち上げながら吹き飛ばすと、右拳に太陽のような赤い光を漲らせて叫んだ。

 

「…タイガァアア、ジェノサイドッ!!」

 

 先ほどのターニッブの昇龍拳に酷似したフォームでカタッツは右拳を下から突き上げた。

 

 ターニッブの顎を打ち抜き、天高く超サイヤ人は舞い上がりながら地面に背中から倒れていった。

 

ーーーーーー

 

 目が覚めた時、ターニッブの黒く染まった道着は白に。

 

 天に向けて逆立った黄金の髪は、左右非対称に跳ねた黒髪へと戻っていた。

 

「…1000年に一人現れるという血と破壊を好む伝説の戦士。超サイヤ人か」

 

 仰向けの姿勢から目を開けて首を起こすと、目の前には3メートルを越える巨大なナメック人・カタッツが立っていたのだった。

 

「…貴様が目指す強さとは、その程度のものに負けるものなのか?」

 

「……っ!」

 

 言い返せない。

 

 力に呑まれた己もだが、それをアッサリと叩き伏せた目の前の男の強さに、ターニッブは声も無かった。

 

(サイヤの波動。何もかもを破壊したくなる力、全てを蹂躙したくなる力。答えは、リューベと同じ……?)

 

「…その力を真っ向から打ち破ったというのか」

 

 目を見開くターニッブの胸を打つのは、感動か?畏怖か?

 

 茫然とするターニッブに対してカタッツは静かに腕を組み告げた

 

「…強くなれ。貴様が求める道を突き進む為にもな」

 

 その声が、ターニッブの胸に響き。

 

 彼の右手を熱くたぎる闘志が硬く握らせた。

 

ーーーーーー

 

 目の前に広がる広野を真っ直ぐに遠くまで見据えてターニッブは静かに拳を握る。

 

 その黒い瞳が翡翠に黒の瞳孔が浮かんだものに変化し、髪が天に向かって逆立つと黄金に燃え上がる。

 

 眩い黄金の炎のようなオーラを身に纏いながら、脚元から青い風が渦を巻いてターニッブの力を引き上げていく。

 

 その空手着は何ものにも染まらぬことを主張するかのように真っ白なものである。

 

「……はぁあああっ!」

 

 両手を腰でたわめて、気を練り上げる。

 

 青白い光に黄金の火花が混じり、ターニッブは叫んだ。

 

「波動拳!!!」

 

 放たれた青白い光は、果てなき常世の世界を撃ち抜いて行った。

 

 己が放った光を見据え、ターニッブは爽やかに笑う。

 

「…また会おう、宿敵(とも)よ」

 

 男は歩く。

 

 己の中に積み重ねていく強さで、己の中の力に打ち勝つために。

 

 その拳で、己の理想を体現できるように。

 

 いつかーーー。

 

 あの濃紺の道着を身に纏った鬼に相対した時、胸を張って己の拳を見せるために。

 

 黄金の炎が散り、本来の黒髪黒目に戻るとターニッブは真っ直ぐに己の前にある階段を昇り始めた。

 

 新たな戦いの場が、彼を待っている。

 

 新たな出会いと別れが、彼を強くする。

 

 それを静かに、濃紺の空手着を着た鬼が見下ろしていた。

 

「……」

 

 黒の瞳孔が浮かんだ翡翠の鬼眼は、ただターニッブの征く道を静かに見据えている。

 

「……ぬぅ」

 

 だが、真っ直ぐに進むターニッブに反して、影だけがその場にピタリと残った。

 

 濃紺の空手着を着たターニッブが、ゆっくりと影から歩み出す。

 

「……リューベ」

 

 影から生まれた黒のターニッブは、己と同じ色の道着を着たリューベを見上げてきた。

 

 ターニッブに比べて褐色の肌、左右非対称に跳ねた黒髪の下に輝くのは黒の瞳孔が開いた赤く輝く瞳。

 

 リューベと同じ鬼眼を持った黒いターニッブを見据え、リューベは己を振り返らずに歩く白いターニッブの背を見据えた後に天を見上げる。

 

「……フン。我に迫りしもの、か」

 

 リューベが闘う気が無いことを理解したのか、黒のターニッブが一つ瞬くと白いターニッブとは違う階段を昇り始めた。

 

「力を超えるか、従えるか。うぬの答え、見せてもらうぞ……! 小僧!!」

 

 亡者が作り出した階段を昇り、二人のターニッブが進む。

 

 彼らの行く先は、光か闇か。

 

 その答えを知るのは、彼ら自身の拳のみ。

 

 黒のターニッブが進む先にも、道がある。

 

 その先にある出会いと別れが、彼に何をもたらすのだろうか?




次回も、お楽しみに!
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