ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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投稿の都合上、話は前後しておりますが。

短編なのでさっさとターニッブ関連のみ上げたいと思います!(^^)!


エピソード・オブ・ターニッブ 過去

 目の前に迫る頑強な拳。

 

 鋼よりも重く硬そうな一撃は、自分の命を救ったもの。

 

 しかし、その拳の在り方が納得できず俺は奴とは違う道を選ぶため、前に進んでいた。

 

 奴が告げた、己とは違う拳を振るう男。

 

 サイヤ王・ヘイヤの下へと。

 

ーーーーーー

 

 向かい合う二人の黒髪の青年。

 

 独特の左右に非対称に飛んだ髪型をした方は、ターニッブと呼ばれる。

 

 10年前にヘイヤを訪ねてきた少年が、逞しく育った姿。

 

 相対するのは、真紅の空手着を身に纏う、M字の額を露わにした、針金のような黒髪を肩甲骨の辺りまで伸ばした青年。

 

 彼の家系は代々サイヤ王の近衛兵として、王族と親交を温める名門のエリートである。

 

 そのエリート一族の中で、青年ガーキンは桁違いの才覚を発揮していた。

 

 二人の間に審判として立つのは、彼らと同世代の青年。

 

 背は彼らより頭一つ高く髪が逆立つように伸び、前髪が二房左右に垂れている黒髪を持ち、出で立ちは黒のノースリーブのアンダーに白い道着のズボンを履いて黒帯で締めている。

 

 ヘイヤの息子ジュードである。

 

「サイヤ王、よろしいか」

 

 ジュードの問いかけにヘイヤは静かに頷いた。

 

 ヘイヤの承認を確認したジュードは、闘技場の奥にいる妹ーーサイヤの姫巫女プリカを見据えた。

 

「巫女よ戦士たちの戦いをサイヤの神へ捧げよ!!」

 

 プリカは静かに頷いた後、左右に視線を走らせる。

 

 サイヤの神殿に使える女神官たちが手に楽器を持ち、演奏を始める。

 

 その演奏に合わせるように薄衣を一枚脱ぐと、プリカは身体の線がハッキリと分かる踊り子の服装に変わる。

 

 緩やかに、悠然と、つややかに舞を始めるプリカ。

 

 場に集まる戦士や兵士たち、観客の目を釘付けにする美しさ。

 

 しかし、白と紅の道着を着た二人は互いから目を逸らしはしない。

 

 二人の目はただ、お互いの黒い瞳を見据えている。

 

 兵士の誰かが呟いた。

 

「美しい。姫様の今日の戦の舞はいつもよりも情熱的だ」

 

「ああ。誰かに恋をしているのだろうか?」

 

 サイヤの神に対して捧げる、武闘を行う戦士達の無事を祈っての舞。

 

 いつもよりも激しく、情熱的なものだと兵士たちが心を躍らせながら見つめる中。

 

 ジュードが叫んだ。

 

「これよりターニッブとガーキン! 両者の試合を執り行う!!」

 

 その言葉にターニッブは静かに拳を突き出した。

 

「……俺の拳を試すか、ガーキン!!」

 

 ガーキンはターニッブの真っ直ぐな瞳と爽やかな笑みに向かってニッと不敵に笑みを返すと、拳を軽く握って突き出された拳に当てる。

 

「かかって来いよ、ターニッブ!!」

 

 両者、バックステップを行い、右拳を顎にひきつけ左拳を腹の前に置いて、相手に向かって斜に構える。

 

 ガーキンに至っては背中を向けて肩口からこちらを覗くように身体を捻っている。

 

「試合開始!!」

 

 ジュードの言葉に応えるように両者が同時に踏み込んだ。

 

「「ーー昇龍拳っ!!!」」

 

 二人の右拳が跳躍しながら天に向かって突き出され、ぶつかり合う。

 一気に地面から数百メートルの地点に移動すると、くるりと宙にて身を翻し、両者は拳と蹴りを空中で止まりながらぶつけ合う。

 

 互いの拳を拳で防ぎ、蹴りを蹴りで打ち落とす。

 

(野郎相変わらず、とんでもねえ打撃の重みだ…!!)

 

 拳を繰り出し合いながら、ガーキンは己の拳が押されていることに苦笑を浮かべている。

 

 右の正拳突きを正拳で受け止めるガーキンに向かって、真っすぐな瞳が問いかけて来た。

 

「どうした、お前の拳を見せてくれ……っ!!」

 

「へっ、分かってるって! たっぷりと味わえよ!! この俺の炎の拳を!!」

 

 ぶつかり合う拳の間から真紅の炎が浮かび上がる。

 

 炎の威力に押され、ターニッブが拳を出した姿勢のまま後方に仰け反る。

 

 思わず己の拳を目を見開いて見つめるターニッブ。

 

「隙ありぃ!!」

 

 袈裟斬りのように放たれるのは、炎を纏ったガーキンの右上段鎌払い蹴り。

 

 首の付け根から脇下まで、斜めに切り捨てるように叩き込まれた。

 

「ぐあぁ!!」

 

 仰け反ったターニッブの正面に既にガーキンは高速移動で踏み込んで来ており、膝蹴りで顔を蹴り上げられる。

 

 顎が上がった先に強烈な旋風脚が連続で放たれる。

 

「竜巻ぃいい! 旋風ぅうう脚ぅううう!!」

 

 炎を纏った竜巻と化したガーキンの駒のような連続回転蹴りは、情け容赦なくターニッブの全身を蹴りたくる。

 

 最後の廻し蹴りで地面に蹴り落とされ、ターニッブは咄嗟に右手を地面に突き出して全身を叩きつけられるのを避け、着地する。

 

 しかし、既にガーキンは目の前。

 

 一息つく暇すら与えない、正に烈火の攻め。

 

 身体を捻り右腰に両手を置いて、青い光の弾を練り上げている。

 同時、ターニッブも右腰に両手を置いて蒼い光の球を練り上げた。

 

「真空ぅううう…!」

 

 両者、同時に両掌を突き出して、至近距離で光をぶつけ合う。

 

「波動拳ーーっ!!!」

 

 地面を互いに踏ん張り、光を押し合う両者だが、歯を食いしばるガーキンとは別に、今度はターニッブが叫んだ。

 

「ぐっ!」

 

「うぉおおおおおっ!!」

 

 青い光が爆発し、後方に一方的に吹き飛ばされたのはガーキン。

 

 この光景にジュードが頷く。

 

「やはり波動拳はターニッブの方が上か。地道に気を練り上げる修行を怠らないアイツらしい」

 

 それまで一方的に打ち込まれていたターニッブの形勢が、一気に逆転する。

 

(ヤバイ、打ち込まれる!)

 

 体勢を崩していたガーキンは防御の姿勢を取るも。

 

 ターニッブは静かに波動拳を放った姿勢から元の構えに戻って佇んでいる。

 

 まるで打ち込んで来い、と言われているようだ。

 

「…の野郎ぉおおおおっ!!!」

 

 猛烈なダッシュから左の正拳、右のボディ、右のハイキックを流れるように繰り出すガーキン。

 

 同時、ターニッブは左手を前に出して放たれた左拳の付け根を払って横に流し、右のボディを左手で受け止め、右のハイキックを下に上体を下げて避ける。

 

 受け切れないほどの連撃を繰り出してやると、次々と拳と蹴りを絶え間なく放つガーキン。

 

 泰然自若と揺るぎなく、静かな瞳の奥に熱い炎を滾らせて受け止め続けるターニッブ。

 

 両者は同時に右正拳を繰り出して相手の顔を仰け反らせる。

 

 相打ち。

 ガーキンがすぐさま仰け反った顔を元の位置に戻したとき、ターニッブも既に顔を元の位置に戻している。

 

 拳を握り殴り合う両者。

 

 重い打撃のターニッブ。

 

 鋭い連撃のガーキン。

 

 両者は互いの意地を懸けるかのように譲らない。

 

 交互にはじけ飛ぶ両者の顔。

 

 黒い瞳は滾り、口元には互いに笑みが刻まれている。

 

「…やはり互角か。ならば、この勝負。どちらの魂が重いかで決する!!」

 

 ジュードが静かに告げる中、肩で息をしながらボロボロの顔になっていく二人。

 

 瞼は塞がり、口元からは血がにじみ出ている。

 

 波動拳を放つ気も、竜巻旋風脚を放つだけの体力もない両者が選んだ最後の攻防。

 

 両者は互いに向かって右の拳を握って掲げる。

 

「ガーキン。次で終わりにしよう」

 

「行くぜ、決着をつけてやる! ターニッブ!!」

 

 放たれようとする最後の拳は、天を突く昇龍の拳。

 

 皆が息をのむ中、両者は互いに向かって一気に駆け抜ける。

 

「昇龍拳で始まり、昇龍拳で終わる、か」

 

 静かにジュードが語る中。

 

 再び互いに拳を振りかぶった時ーー。

 

「そこまでーー!!」

 

 サイヤ王ヘイヤの雷鳴にも匹敵する低い声が響いた。

 

 ターニッブとガーキンは互いに拳を収めて見合う。

 

「チッ、決着をつけ損ねたぜ!」

 

「いい試合だった。また闘ってくれ!」

 

 軽い調子で語るガーキンに爽やかに笑いながら、ターニッブは拳を出す。

 

 その拳に向けて、ガーキンは静かに拳を握って軽く当てた。

ーーーーーー

 

 夢だと分かったのは、唐突に場面が切り替わっていくからだ。

 

 次の場面は、緑色の空と海の惑星。

 

 目の前には3メートルを越える巨漢がこちらを見下ろしている。

 

「弱過ぎるぞ、小僧! その程度の腕では俺の足を動かすことさえできん!!」

 

 叩きつけられる言葉にターニッブはうつ伏せに倒れたまま、朦朧とした意識の中で瞳を開けて男を見る。

 

 男は緑の肌をした額から触覚が伸びている。

 

(俺は、何のために修行を重ねてきた? 悪霊に取り殺されそうになった時と、何が変わった? 無力なままなのか? このまま負けるのか……?)

 

 心は既に折れようとしている。

 

 だが彼の内にある魂が、それを受け入れられないと叫んでいる。

 

 巨漢は静かに瞳を細め、立ち上がったターニッブを見据える。

 

「…この力。伝説の超サイヤ人、か」

 

 黄金の炎がターニッブの足下から噴き上がり、髪を黄金に染めて逆立てる。

 

 冷徹なまでに温度を感じない翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳を巨漢に向ける。

 

「…愚か者が。敗北を受け入れられずに安易に力に頼るか、小僧!!」

 

 怒鳴りつけ、巨漢ーーカタッツが拳を繰り出す。

 

 同時にターニッブも拳を繰り出していた。

 

「我! 拳、極めたり!!」

 

 二人の拳がぶつかり、衝撃で大地が崩れた。

 

ーーーーーー

 

 ゆっくりとターニッブは目を開ける。

 

 サイヤ王ヘイヤがリューベに倒されたがため、死者の都にて仇のリューベを追っていた。

 

 時空や次元の壁があやふやな世界は、ターニッブの中に眠っていたリューベと同じ力を目覚めさせた。

 旅を続けながら、ターニッブは己の中に目覚めた力。

 

 超サイヤ人を越えるために修行を続けている。

 

 修行の場は歩く先にゆっくりと現れる。

 

 まるで、彼を強くすることが当たり前のように。

 

 ターニッブは静かに起き上がり、拳を握って開く。

 

 空を見上げれば紫に染まった晴天が広がっていた。

 

「……そろそろ路銀が尽きるな」

 

 惑星ジュエル。

 

 ターニッブは、この星でひたすらに修行を重ねていた。

 

 宿敵と呼べる男ーーナメックの帝王が示してくれた。

 

 真の強さとは何かを。

 

 街に辿り着いたターニッブがはじめにした事は、飯屋に行き、皿洗いのバイトをさせてくれ、ということだ。

 

 賄い料理とわずかな金を貰えれば良い、とだけ告げる彼に、無愛想な店主はコクリと頷いた。

 

「皿洗い程度なら構わねえ。オパール、新入りに場所案内してやれ」

 

 店主の言葉に紫の長髪をした青い瞳の美女が頷く。

 

「りょ〜かい〜。あたし、オパール。よろしくね、新入りくん」

 

 切れ長の瞳と冷たそうな美貌に反して、明るく活発な話し方をするオパールに、ターニッブは静かに頷く。

 

「ターニッブだ、よろしく」

 

 こうして、ターニッブの路銀を稼ぐ仕事の一日が始まるのだった。

 

ーーーー

 

 惑星ジュエルという美しい星。

 

 此処でターニッブは路銀が尽きたことから、適当な港町の食堂に立ち寄って雑用係を申し出る。

 

 日が昇るよりも早くターニッブは目を覚まし、日課の筋トレを全て終えてから日が昇った早朝、テーブルクロスを洗濯し、それぞれのテーブルに敷き詰めていく。

 

 その後、朝市に向かって買い出し用の品を籠に詰めていく。

 

「すごいね、ターニッブ。昨日、教えたばかりなのに」

 

 隣ではバイトの先輩であるオパールが、目を見開いてターニッブの手際の良さに驚いている。

 

「よく路銀が尽きたらバイトしている。これくらいのことは、経験すみだ」

 

「そ! なら助かるわ!!」

 

 明るくウインクしてくるオパールにターニッブも笑みを返し、必要な品を揃えて開店の準備をしていく。

 

 今の彼は道着姿ではなく、店長が用意した白のワイシャツに黒の長パンツを着ている。

 

 客商売であるため、裏方がまったく客の目につかないわけではない。

 

 雑用係とは、オパール達ウェイトレスが手一杯の時は自分でも運ばなければならないのだ。

 

 というわけで、ボロ衣のような武道着では立つなと言われているため、ターニッブは店側の用意した服を着ているのである。

 

 正直、窮屈そうであるが。

 

 胸筋や二の腕があまりにも発達し過ぎている。

 

「どうした……?」

 

「ん。サイズ合ってないのかなぁって」

 

と、言いながらターニッブの胸や腕を触ってくるオパール。

 

「ウエストはバッチリみたいだし、シャツの大きさ自体はこれでいいはずよね。筋肉質すぎるんじゃない?」

 

「と、言われてもな。修行している身だから、体を鍛えるなと言われるのは……」

 

「鍛えるにも限度があるわよ普通の服が着れなくなってるもの。それであんなぼろっちい道着を着てるの?」

 

 遠慮なく聞いてくるオパールに、ターニッブが苦笑を浮かべる。

 

「別にそういう訳ではないのだが……!」

 

ーーーー

 

 店が開かれる。

 

 港町でも大きい食堂であるこの店は、二階もあることから約百人程度の席を設けている。

 

 男は店主一人のようで、他の店員は見目麗しい妙齢の美女ばかりだ。

 

 みな、オパール達のスカートから覗く白い脚線美に釘付けになっている。

 

 男性の客が多いのは当たり前だが、意外にも女性客も多い。

 

 冒険者向けというのもあるだろうが、近所に住む町娘なども制服の可愛さに見に来るようだった。

 

 彼女らの動きに合わせて、ターニッブは調理場から次々と料理を運ぶ。

 

「やるじゃねえか、新入り。俺の料理を滞りなくオパール達に手渡せるとはな」

 

 ほとんど投げ捨てられるかのように渡される絶妙な料理の数々を、ターニッブは全く揺らすことなく受け止めている。

 

 あまりにも簡単にしているが、素人がこんなことをされたら間違いなく料理をダメにする。

 

「これぐらいは何てことはない」

 

「言うじゃねえか。なら、もっと手を早める全ぞ部客に滞りなく渡してみろ!!」

 

「受けて立とう!!」

 

 そんな調理場の様子を何となく窺い知るオパールは、キョトンとしてターニッブ達を見据えた。

 

「なんか張り切ってない、店長?」

 

「オパールさん。今日、料理の運びが早すぎませんかちょっと手が足りないくらいなんですけど」

 

 赤茶色の髪をツインテールに伸ばした美少女がオパールに問いかけてくる。

 

 16人いるオパール達がてんてこ舞いを踊らされるほどに、調理場からの料理の運搬が速すぎる。

 

「分かってる、ガーネット。ちょっと、店長! ペース落として! あたし達でも全部受け止められないくらいになってきてるってば!!」

 

 オパールが皆を代表して抗議の声を上げるが。

 

「ならターニッブ。お前が客に届けろ……!」

 

 にべもなく告げる店長に、ターニッブは待っていたとばかりに口元を緩ませると告げた。

 

「ではーー行かせてもらう!」

 

 瞬間、ターニッブがほとんど空気を乱すことなく高速移動を行う。

 

 全ての料理は、ほんの数秒で客の目の前に運ばれていた。

 

 これには周りのウエイトレス達もポカンとしている。

 

 風が一陣頬に触れたと感じたら、目の前に料理が置かれているのだ。

 

 まるで魔法だ。

 

「ほう。大口を叩くだけのことはある……!」

 

「次の料理は何だ? 何処に届ければいい?」

 

 一瞬。

 

 まさに風の如き動きで全てを終わらせたターニッブに、強面の店主が愉快そうに笑みを浮かべた。

 

「フン。次は注文を受けて来い」

 

「それはウエイトレスの役割ではないのか ?」

 

「俺がやれと言ったんだ。出来るな?」

 

 鋭い眼光にターニッブは静かに表情を改め、コクリとだけ頷いた。

 

ーーーー

 その日の昼が終わり、皆が休憩を取る中で店主の表情は注文票を見ていた。

 

 ターニッブ一人で、二階席のほとんどの客の注文を聞いて回って見せている。

 

「あの小僧。拾い物かもしれん」

 

「ほんっと、凄いわよね。たった一人で二階席のお客さん全ての注文や追加オーダーも聞いて運ぶなんて」

 

 オパールも頷いている。

 

 彼女は、此処で一番長く働く者だが、ターニッブのような新人ははじめてだった。

 

「新入りは?」

 

「港の離れに向かって行ったわ。修行だって」

 

「フン。お前らのようなきれい処を前にして。何処までも堅物な野郎だな」

 

 包丁を研ぎながら告げる店主に笑みを返した後、オパールはターニッブが向かった場所に足を運んだ。

 

ーーーー

 

 強烈な拳と蹴りがまともにぶつかり合う。

 

「ぐぅっ! ……カタッツゥウウウウウ!!!」

 

「…そのザマで強さを極めると言うのか? 見下げ果てたぞ、小僧!!」

 

 秒間数百は下らない拳と蹴りをぶつけ合う両者。

 

 一歩も下がらずに気を無限に上昇させ、純粋な殺意に心を喰われていく超サイヤ人。

 

 理性を失くせば失くすほどに、気が上昇し攻撃に迷いがなくなり、動きが鋭くなっていく。

 

 しかし、そんな敵を前にして、カタッツと呼ばれた巨漢は何も語らずに強烈な拳と蹴りを返していく。

 

 動きは先程までと比べ物にならず、相殺し合うもカタッツの表情には焦りではなく、失望が浮かんでいる。

 

「愚か者が。この帝王を前に安易に力に頼ることがどれだけ浅はかか、思い知るがいい!!」

 

 両者の廻し蹴りが互いに距離を開かせる。

 

 瞬間、カタッツは金色に近い夕焼けのような赤い光を二つ顔の横に置いた両手に生み出す。

 

 対するターニッブは身体を捻って、右腰に両手を置いて、紫色の赤い雷を纏った光の球を生み出した。

 

「滅ッ!!」

 

「タイガァァ…!!」

 

 同時に両手を突き出して光を放つ両者。

 

「波動ォオオ拳ェエエエエン!!!」

 

「キャノォンッ!!!」

 

 中央でぶつかり合った光を互いに向けて押し合う両者。

 

 一瞬の拮抗の後、押し切られるのはターニッブの放った光だった。

 

「バカな!? この力が負けるだと……!?」

 

 目を見開いて、氷のような翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で、カタッツの放った光を睨みつけながら後方へ吹き飛ぶ。

 

 次に目を覚ました時、ターニッブの肉体から黄金の炎は消え去っていた。

 

「…俺は?」

 

「気が付いたか…」

 

 目を覚ました時、高かった太陽は下がり夜の月が浮かんでいる。

 

 月を背に巨漢はこちらを見下していた。

 

「カタッツ、アンタは俺の力の事をーー超サイヤ人を知っているのか?」

 

「千年に一人の割合で生まれると言う伝説の超サイヤ人。血と殺戮を好む最強の戦士、だったな」

 

 目を見開くターニッブにカタッツは静かに語る。

 

「お前の目指す拳とは、そんなモノに負けるモノなのか」

 

「俺はーー!!」

 

 静かな黒い瞳を前にターニッブは目を見開く。

 

「超えてみせろ。貴様の内にある超サイヤ人という名の鬼を。それが出来たとき、貴様は初めて、このカタッツの眼前に立つに相応しい敵となる」

 

 ニヤリとどこか邪悪な笑みを浮かべてカタッツは笑った。

 

「待っているぞーー宿敵(とも)よ」

 

ーーーー

 

 港町のはずれにある広場で。

 

 ターニッブは目を閉じ、静かに波動を練り上げる。

 

 己が超えるべき拳を放ったーー師の仇。

 

 己を打ち倒した拳を放ったーー宿敵。

 

 両者は正反対でありながら、何処か似ている。

 

「俺はーー俺より強い奴に会いに行く。真の強さとは何か、その答えを知るために……!!」

 

 空を見上げ、つぶやくターニッブの瞳には満天の星空が広がっていた。

 

「ターニッブ~!!」

 

 そんな彼の背をオパールが呼びかける。

 

 彼女にふり返る寸前、ターニッブは頷く。

 

 己が目指す二人の男に向かってーー。

 

「待っていてくれ! 宿敵(とも)よ!!」

 

 




次回もお楽しみに!(^^)!
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