彼もこの先、めちゃくちゃ強くなりますので。
ファンの方はお楽しみに!
エピソード・オブ・ブロリー
宇宙に数ある星々。
その中に菱形をした居城のある破壊神の星。
そこで孫悟空とベジータは、いつもどおりに付き人ウイスから修行を受けていた。
「だりゃぁあああ!!」
「でやぁああああ!!」
二対一でもかすることすら許さないウイスに、悟空とベジータは金色が混ざった白色の気を纏い、拳や蹴りを次々と繰り出していく。
ウイスは涼しい顔でこれらを避けていく。
「…其処のお二人も、いつでも良いですよ」
悟空の強烈な拳とベジータの鋭い蹴りを長い両腕で完璧に捌きながら、ウイスは淡々とした口調で目を脇にやって告げる。
其処には悟空の父・バーダックと長身の青年・ブロリーが居た。
バーダックは自身の戦闘服ではなく、下衣は息子の山吹色の亀仙流の道着ズボンとブーツ。
上衣は青い半袖のインナーシャツの上にベジータと同じタイプと色の戦闘服を着けている。
まるで地球人とサイヤ人の服を合わせたようなコーディネートである。
「ほぉ? 随分と気前が良いじゃねえか、ウイスさんよぉ」
バーダックが赤いバンダナを外して拳に巻き付け、グローブのようにして口で引っ張りながら嬉しそうに告げる横で、ブロリーは無表情に応える。
「俺は遠慮しておく。一騎打ち以外に興味はない」
ブロリーの方はいつもどおりの服だが首飾りを外し、上衣にバーダックや悟空のインナーと同じ青色のノースリーブシャツを着ている。
「へっ、贅沢なこと言いやがる。なら、俺が参加させてもらうぜ!!」
言うとバーダックは金色の混じった白色の気を纏うと一気に悟空とベジータに並び立って拳を繰り出し始めた。
これに悟空がニヤリと嬉しそうに笑いながら、気合を入れた。
「! 父ちゃんも混ざんのか、よっしゃぁ!!」
ベジータもほくそ笑みながら、ウイスを挑発する。
「……フン。ウイス、さすがのアンタもサイヤ人三人が相手じゃ、本気にならざるをえないんじゃないか」
そんな悟空とベジータの言葉に、ウイスはにこやかな笑みを返して告げる。
「あらあら、そう見えましたか? では、私の体に触れるくらいはしてくださいね」
その言葉に悟空が不敵な笑みを浮かべた。
「いいんか、ウイスさん? なら顔に一発くれぇ、覚悟してもらうぜぇ!!」
悟空とベジータが左右から、バーダックが背後からラッシュを同時に繰り出す。
「良い動きです。悟空さんとベジータさんだけでは、お互いに張り合うことだけを考えてますから、足を引っ張りあうこともあるのですが。バーダックさんが加わったことで少~しだけ、コンビネーションに磨きがかかりましたねぇ」
三方向からのラッシュを器用に両手だけで防いでみせるウイスに、ベジータの目が見開かれる。
「なめるなよ!!」
強烈な白と金の混じった神の気を身に纏い、ウイスの懐に踏み込むとベジータは右のストレートを放つ。
ガードすればガード越しに敵を仰け反らせるスマッシュ(強打撃)だ。
だがウイスはその拳をきれいに左手で脇に受け流すと、右の掌底でベジータの顎を突き放すように打ち抜いた。
「……ぐぉ!?」
弾き飛ばされながらベジータがニヤリと笑う。
「今だ、カカロット! バーダック!!」
突き放した姿勢のウイスの正面に悟空。
背後にバーダックが現れて、強烈な気を纏った状態でラッシュを繰り出す。
「もらったぜ、ウイスさぁああん!!」
「覚悟しやがれ。その小奇麗なツラぁ、ボコボコにしてやらぁ!!」
強烈且つ鋭い拳と蹴りの連撃にウイスが微笑みながら体を横にして紙一重で見切りながら、両者の強烈な打撃の数々を左右の手で受け流していく。
これに悟空とバーダックが揃って目を見開く。
「オラ達、結構強くなってんだけどなぁ!!」
「野郎…! 俺達の攻撃をこうも見事に!!」
辺りに攻撃を受け流される乾いた音が鳴り響いていく。
「悪くありません…。まだまだ、ですがね」
ウイスは静かに穏やかな瞳を鋭くすると、両者の拳を突き放した後、気合いで後方へ吹き飛ばす。
後方に回転しながら反対方向に吹き飛ばされる悟空とバーダック。
ウイスは静かに二人から目を離し、自分の正面に目をやる。
「もらったぞぉおお!!」
そこには強烈な気を拳に纏わせたベジータが、右ストレートを長身のウイスの顔面に放ってきていた。
ウイスは静かに右手を顔の前に掲げて掴み止めた。
乾いた音が響いて、衝撃波が辺りに広がる。
「素晴らしい一撃と連携でしたよ、みなさん」
その一撃に満足そうにウイスは微笑むと、静かにベジータの拳から手を離した。
三人のサイヤ人は、肩で息をしながら淡々としているウイスを見上げる。
「や、やっぱ、ウイスさんは別格だなぁ…」
「なんてぇ野郎だ……。息一つ乱れてねぇ」
「フン、流石は宇宙最強の男だ……!」
汗だくになりながら告げる三人にウイスは穏やかに返す。
「いいえ、悟空さんにベジータさん。思い出してください? 私に拳を掴まれたことがありましたか?」
そう言えばという顔をする二人に向かってウイスは続ける。
「私は相手の動きを見切り、攻撃を受けずに捌くようにしています。その私が捌ききれなかった、これは大きな進歩なのですよ」
涼しい顔で告げるウイスに三人のサイヤ人は、不満そうに表情を歪めた。
「そんなこと言われても、なんか納得いかねぇなぁ」
「……たりめぇだ。三人がかりで、体に触れるどころか息一つ乱せねえのは事実なんだからなぁ」
「フン……」
そんな孫悟空、バーダック、ベジータを見つめウイスは告げる。
「いいですか? 強くなれたからといって、慢心してはいけませんよ?」
人差し指を立て指導するウイスに向かって、唯一組み手に参加していなかったサイヤ人。
ブロリーが静かに向かう。
長身のウイスよりも更に背が高いブロリー。
ウイスが珍しく見上げるような格好になる。
「おや? ついに動きますか」
「……ああ」
言うとブロリーは金色のオーラを身に纏う。
逆立った髪と眉は金色に、黒目は翡翠に変化して目つきが鋭くなり、肌が透き通るように輝く肌色になる。
「一対一だから、超サイヤ人でいかせてもらうぞ」
「結構。何だったら、伝説の超サイヤ人とやらでも良いんですよ?」
「……あれは体格が変化するからな。基本体型に近い真・超サイヤ人を極めるならば、超サイヤ人の方が良い」
「よろしい、満点の回答です」
ブロリーの言葉にウイスは満足そうに頷くと、拳を握って拳法の構えを取った。
悟空達が少し離れたところから、見つめる。
「ブロリー! オメエの力ぁ、見してやれ!!」
「超サイヤ人……。全ての超サイヤ人の基本にして原点。真・超サイヤ人に最も近い姿だな」
「さぁて、パラガスのガキの手並み、見せてもらおうじゃねえか」
悟空が口元に両手を当ててブロリーを応援すると、左右にベジータとバーダックが並び立って腕を組む。
金色の戦士と化したブロリーと拳法の構えを取ったウイス。
互いに静かに見合う。
「……いくぞ」
瞬間、拳を握ってブロリーがウイスの目の前に高速移動で現れる。
「だぁあああああ!!」
気合いの声と共に強烈な左右の拳と廻し蹴りを次々と繰り出すブロリーに、ウイスは長い左右の腕で見事に捌いていく。
ブロリーの強烈なダッシュからの左ラリアートを、ウイスは舞を踊るように優雅な動きで捌きながらかいくぐり、すれ違う。
ブロリーは振り返りざま、強烈な左右のストレートから拳と蹴りの連撃を再び放つ。
そのラッシュの一つからウイスは右ストレートを選んでアッサリと右手の甲で流すと、左手刀をブロリーの首元にピタリと当てて動きを止める。
「はい、隙あり」
ウイスはパッと手刀を首元から離し、距離を取って淡々とした表情のブロリーを見据える。
(おや、悟空さんやベジータさんのようにムキになった表情ではありませんね)
ジッとブロリーはウイスの動きを見ていた。
口許を手で隠し、微笑むウイスにブロリーは更に攻撃を仕掛けていく。
今度はしなやかに長い脚を振り上げた。
咄嗟にウイスが体を左に見切ると、其処を野太い棍棒のような脚が鞭のようにしなりながら鋭く刈り取っていく。
「ほほぉ、これはこれは」
左の下段回し蹴り、中段回し蹴り、上段回し蹴りの三つを連続で繰り出すブロリー。
(これはーー全て同じモーションから繰り出されている? 上段と中段・下段、全て放たれるまで見切るのが困難、おもしろい)
鋭く速い蹴りの連携技にウイスが感心している。
ブロリーは軸足の右脚で地を蹴り、ダッシュ移動しながら、先の上中下に放たれる蹴り技を繰り出していく。
上段・中段を両腕で防ぎながら、ウイスは微笑む。
「すばらしい蹴り技です。しかし、左から来ると分かっていれば後は上段・中段・下段の三択ですよ」
「……そうかな?」
瞬間、ウイスの懐に飛び込むと同じモーションで右脚を天に向けて蹴り上げる。
「なんと!」
驚いた表情で体を後ろに仰け反らせて避けるウイスにブロリーは告げる。
「もらったぞ」
蹴り上げた脚を絶妙に引き戻すと同時、軸の右脚を中段の前蹴りで放つ。
しかし、腹を狙って放たれた中段蹴りは体を右に避けることでかわされる。
「ノーモーションからの左脚での連撃から本命の右中段蹴りですか。中々にお見事」
「ぬぁああ!!」
叫びながらブロリーは体をくるりと回転させて、左の後ろ回し蹴りを上段に放つ。
空を切る凄まじい蹴り。
紙一重でかいくぐったウイスは右掌を相手の眼前に向けて突き出し構えると、気合いを放った。
ブロリーを遙か後方へ吹き飛ばす。
背中から叩きつけられ、金色の戦士・超サイヤ人が解除されて黒髪黒目に戻るブロリー。
「……ぐ、う」
ゆっくりと起き上がりながら、ブロリーは目の前に立つウイスを見上げる。
「なかなかのモノです。最初のパワーを振り回すだけの頃を考えれば、素晴らしい進歩ですねぇ。武術をきちんと学ばれているようです」
「……」
淡々と己を見下ろし、拳を握る。
「フン。武技とやらは、中々便利なものだな」
「それが分かっているのならば結構です。サイヤ人にしては真面目な貴方のことです。人知れず地道に技を磨いていたようですね」
「……ターニッブの動きを真似ているに過ぎん。それに奴の動きには遠い」
「向上心があることも技が上達する材料です。さて」
ゆっくりと四人のサイヤ人を見返して笑う。
「昼食にしましょうか」
微笑むウイスの言葉に悟空、ベジータ、バーダックがブロリーの周りに歩み寄る。
「やるなぁ、ブロリー! オラ、わくわくしたぞ!」
「中々に見事な蹴りの連携技だったぞ」
「あの左蹴りから右の前蹴りに繋げるたぁな」
彼らの言葉に笑みを返しながら、ブロリーは立ち上がる。
かつて、有り余る闘争本能と無限に上がる気によって、全てをねじ伏せてきた伝説の超サイヤ人ブロリー。
彼はその闘争本能を己の理性で乗り越え、無限に上がる気をコントロールして真・超サイヤ人へと至る。
有り余る才能故に孤独であった彼は、恨みや憎しみすらも乗り越えて純粋に強さを求める。
彼は、これからも強くなり続けるだろう。
孫悟空とベジータ、バーダックが共に居る限り。
そして、自分に“真の強さとは何か”を教えてくれた友が居る限り。
もはや、彼は化け物でも悪魔でもない。
心の力を手に入れた強者なのである。
「…ふん。カカロット、ようやく技の動き方が分かってきたぞ」
「お! そいつはすげえや! よし、昼飯の後はオラが相手すんぞ!! 一緒に修行して、お互い一気に強くなろうぜ! ブロリー!!」
「ターニッブにまた会うためにもな……」
「ああ! そうだな!!」
かつて、誰よりも憎んだサイヤ人が。
今は掛け替えのない友であり、好敵手であった。
そのことをブロリーは静かに喜ぶ。
(親父よ。力による支配などよりも、星を破壊する行為よりも。こいつらと共に強くなる方が楽しいぞ。アンタは、今の俺をどう思うかは知らんがな)
天を見上げ、ブロリーは笑いかける。
「ブロリー! 何してんだ、早いとこ飯にしようぜ!!」
「…ああ、分かってる。カカロット」
感傷に浸るブロリーを悟空の明るい声が呼び戻す。
「遅いぞ! 悟空! ベジータ! バーダックにブロリー! お前たち、破壊神である僕を待たせるなんていい度胸じゃないか!」
紫色の猫の声が辺りに響く。
「わりぃわりぃ、ビルス様!」
「はっ! 相変わらず、我儘な神様だぜ」
「よせ、バーダック!」
これに悟空は明るい笑みを浮かべて手で謝りながら席に着く。
その隣で肩をすくめながら告げるバーダックを止めるベジータ。
「ククク、ハハハハハ!!」
それを見て、楽しそうに笑うブロリーの声が破壊神の星で響いていた。
しばらく短編が続きますが、お付き合いくださるとうれしいです。
次回は、いよいよ。
ターレスのエピソードが始まります。
このエピソードも地味に未来編に繋がっていますので、皆さまお楽しみに!(^^)!