では、お楽しみください!(^^)!
強烈な打撃と共に、地べたに叩きつけられる。
倒れ伏したのは独特な左右に非対称に跳ねた黒髪、褐色の肌、黒を基調としたバトルジャケットと白い道着のズボンを履いた男。
「く…! この程度で!!」
男が睨みあげると緑を基調とした蝉のような羽を持つ人型の異形が、白い肌に紫のラインの入った端正な顔立ちで笑みを浮かべて見下ろしてきた。
「どうした、ターレスよ? 私の主人になりたいのならば超サイヤ人の一つや二つは超えてもらわねばな」
「調子に乗るなよ、虫の化け物が。真の超サイヤ人ならば貴様ごとき虫ケラなんぞに!!」
立ち上がりながら黒髪の男・サイヤ人ターレスは、緑の異形セルを睨みつける。
「それだ。無限に上昇するなどという仮初めの力に頼って基礎を疎かにするから、自分の引き上がったパワーやスピードを扱いきれずに振り回されるのだ」
両腕を組みながら稽古をつけてやるとばかりに悠然と告げるセルに、ターレスは忌々しそうに歯を食いしばる。
セルはチラリと自分の背後でギニュー特戦隊に稽古をつけているピンク色の異形・ブウを見据える。
「そちらはどうだ? ブウ」
ブウは上衣が孫悟空達の着ている山吹色に青いインナーの道着、下半身が魔神の紋章が入ったベルトに白の道着を着た己を見下ろして、理知的な笑みを浮かべた。
「…そちらよりは遥かに物覚えが良い。こいつらは性格が素直な分、吸収も早い。この分ならば直ぐに超サイヤ人になったターレスくらいには引き上がるだろう」
「…だそうだが?」
嘲りを含んだ笑みで二人から見下され、ターレスは静かに拳を握りながら立ち上がる。
「お前は超サイヤ人や真・超サイヤ人になれるだけで、それ以外が全くと言って良い程の素人だ。我流にも程がある。天才と言われたフリーザならばそれだけでも充分な戦闘力を持っているが、お前は戦闘力が高いだけの素人だ。下手をすれば、戦闘力では超サイヤ人に劣るナメック星時のフルパワー・フリーザにも負ける」
これを聞いて、新しく手に入れた宇宙船の状態を部下と共に確認していたフリーザは、静かに勝ち誇った笑みをセルに向けた。
「おやおや、セルさん。ただのサイヤ人の猿が私に敵うわけないでしょう?」
「今のお前ならば第一形態でターレスを倒せるのは当たり前だろう。問題は、孫悟空に負けた時のお前にもコイツが及ばんことにあるのだ」
「…フム。私の力を完全に引き出そうにも、ゴールデンフリーザになっただけでターレスさんはエネルギーを供給し切れずに息切れしてしまいますからねぇ。少しは強くなってもらわないと、孫悟空さんに復讐しようにも何もできませんよ」
呆れたような表情で告げるフリーザ、酷薄な笑みを浮かべるセルを睨みつけ、ターレスは今一度金色のオーラを身に纏って金色の戦士。
超サイヤ人に変身した。
「…いい気になるなよ、化け物どもめ!!」
立ち上がってきたターレスにセルはニヤリと笑い、構える。
ーーーー
時は少し遡る。
広大な宇宙に数ある星々。
その中で、宇宙の帝王フリーザによって支配され、名を惑星フリーザと変えた星が点々とあった。
惑星フリーザNo.38。
惑星サイヤから逃げ延びたターレスは、死者の都の力を得てフリーザとギニュー特戦隊、人造人間セルと究極魔人ブウを支配下に置いて堂々と星を訪問した。
「ーーフン。ここが惑星フリーザの一つか。いい星じゃないか、フリーザさんよ」
以前使用していた黒を基調としたバトルジャケットに白い道着のズボンを履いたターレスは、帯のように尻から生えた尻尾を腰に巻いた格好で、白色のボディと尻尾を持った人型の宇宙人に問いかける。
光沢のある肌をこちらに向けながら、白い人型の異形フリーザは褐色の肌のサイヤ人に向き直った。
「……当たり前です。この私がわざわざ拠点にと選んだ星なのですからね。それで、ターレスさん。貴方はこれから何をするおつもりなのですか?」
隣では緑色の異形セルと桃色の異形ブウが、互いに物見遊山のような雰囲気で語り合っている。
それをあえて視界に入れずにフリーザは問うと、ターレスは淡々と告げてきた。
「簡単だ、フリーザ。俺の力で手に入れたこの宇宙船も所詮は仮初めの存在。そんなモノに頼るよりは、ここで本物を手に入れた方が早いだろ? それと食料と水、後はスカウターの類だな。乗組員ならばギニュー特戦隊がいるから増やす必要もあるまい」
言うとターレスは右手を掲げてパチンッと指を鳴らすと、手品のように巨大な宇宙船は黒い霧となって消えていった。
これにフリーザが忌々しそうな顔になりながらも告げる。
「私を使えば宇宙船や施設は簡単に手に入るという寸法ですか。サイヤ人にしては色々と考えてるじゃありませんか」
「当然だ。俺はカカロットや王子のような無謀なバカとは違う。折角、復活したんだからな。精々、人生を楽しもうぜ? フリーザ」
「フン。まあ、いいでしょう。今はね」
面白くなさげにしながらも、素っ気なく告げるフリーザに笑みを返し、ターレスはしばらく思考にふける。
(肉体は完全に生身として個体化できている。問題は死者の都からくすねた力の方か。あらゆる可能性を引き出せるとサイヤ王が言ってたが、コイツはそんなに便利なものじゃねえ。例えるなら索引機能の無い100万ページある辞書ってところだ。力を使いこなせればその機能も付くのかも知れねえが、今の俺にはジュードやリューベ、ベジットから得た情報で真・超サイヤ人になれるのと、コイツ等を使役するだけで精一杯。おまけに、真・超サイヤ人の力もコントロールが利かない。戦闘力を安定させて使っていたカカロットやターニッブのようには行かん。まあ、アイツ等も最初の頃は時間切れになるまでコントロールできずにエネルギーを無駄に引き上げていた。あの力に関しては慣れ次第でどうとでもなる、か)
熟考しているとフリーザが目の前に来ていた。
「? なんだ、フリーザ?」
「宇宙船を手に入れるんだろ? 早く行かないかい? 惑星フリーザを、この僕が案内してあげるよ」
そう言ってフリーザは気を纏うと己の肉体を変化させ、角の生えた第一形態と呼ばれる姿に変わる。
「ん? 姿を戻すのか?」
「こっちの姿の方が、皆さん私と認識できるでしょうからね」
「なるほど、確かにな」
ほくそ笑みながら、フリーザとギニュー特戦隊を先頭に、ターレスたちはフリーザ軍の本部へと入っていった。
突然の帝王の復活と訪問、そして仲間達に惑星フリーザのフリーザ軍の者は慌てふためいていた。
悠々自適にターレスは地球で破壊された自身の色の戦闘服を新調し、ベジータ王やコルド王が使っていたタイプの黒と赤のマント(両肩の鎖骨の部分にボタンを付けるタイプ)を羽織った。
下半身の白い道着のズボンはそのままに黒い布を褌のように巻き、前と横に付いていた垂れを外す。
新しい宇宙船を前に笑っていると先に船内を見ていたフリーザ達が振り返ってきた。
「おや? 戦闘服はともかく、マントとは。パパやベジータ王みたいじゃありませんか」
「クク、折角あったんでな。着せてもらったが、中々に良いものだ」
「お気に召したのなら、何よりですねぇ……」
マントを羽織らせながら笑うターレスを肩を竦めて見た後、フリーザは淡々とモニターを見据えている。
セルとブウ、ギニューも静かにモニターを見ていた。
「…?」
そこに映し出されていたのは、フリーザの最終形態によく似た姿をした背の高い異形。
ターレスが腕を組んで不快そうにしているフリーザを見据え、問いかける。
「フリーザさんよ。あんたの知り合いか?」
「丁度いいから紹介しておきましょう。私の兄であるクウラさんです」
「……兄、だと?」
この言葉に、セルが肩を竦めてモニターに向かって一礼した。
「これはこれは。私の名はセル。フリーザの友人、と言ったところか。よろしく」
「私は魔人ブウだ。見知りおき願うよ、クウラ」
ブウもまた、隣で慇懃に頭を下げながら不敵に告げる。
ターレスは二人にかまわず、目を見開きながらモニターの人物を見据えるとフリーザによく似た宇宙人は淡々とフリーザよりも低い声で語り掛けてきた。
鋭い真紅の瞳でセル、ブウ、ターレスを見据えながら。
「ふざけた態度の部下集めに忙しないことだな、フリーザよ。しかし、どういうことだ? 何故、そんな奴等に無礼な言葉を許している? いや、そもそもサイヤ人は皆殺しにしたんじゃなかったのか?」
その言葉にフリーザは半目になりながら告げる。
「ま、色々あったんですよ。それで兄さん、私に説教をしに来たんですか?」
「相も変わらず口の利き方を知らん弟だ。まあ、いいだろう」
言うとクウラは静かにフリーザを見据えて告げた。
「俺と戦え。フリーザ」
「何ですって?」
目を見開くフリーザを淡々と冷徹な赤の瞳が見据えている。
「どういうつもりです、兄さん?」
「何、簡単なことだ。弟よ、俺はお前や親父と違って軍の運営や星の支配などに興味はない。俺はただ宇宙最強であればいい。知っているだろう?」
「知っていますよ。つまり、このフリーザと優劣を競いたいと言いたいのですね?」
「そうだ。お前がどれほどに甘いかを、この俺がその身に教えてやろう」
この言葉に、その場に居た一般兵士や研究者達は震え上がった。
宇宙最強の一族であるフリーザとクウラがぶつかり合えば、この惑星ごと消えるかもしれないからだ。
しかし、そこに魔人ブウが声をかける。
「やめておいた方が良いぞ、クウラとやら」
「……」
不敵な笑みを浮かべたブウは静かにクウラを見据えて告げる。
「お前の弟は既に神の次元に足を踏み入れている。お前では勝てんよ」
「…く、くくく。神の次元だと? 面白いジョークだ」
ブウの言葉に取り合わずに笑うクウラをセルが呆れた表情で見た後、フリーザを向く。
「どうするのだ? 時間の無駄だとは思うが」
「…仕方ありませんね。ちょっと運動ついでに思い上がった兄を懲らしめてあげますか。アプール、この宙域に何もない星がいくつかあるはずです。そこへ兄さんを案内しなさい」
言うとフリーザは首を左右に倒しながら部下に命じる。
座標軸を合わせ、クウラの宇宙船に向かって送る。
「…クウラ様! お待ちください!!」
早速向かおうとする兄弟に対し、孫悟空の肉体を持つギニューが声を張り上げてクウラに跪いた。
左目には緑色のスカウターを付けている。
「? サイヤ人か? いや、何か違うな」
「お久しぶりでございます、ギニューです。失礼ながらクウラ様、ご兄弟で争い合われる必要はないと思いますが?」
「…ギニュー? 特戦隊とかいう、ふざけた部隊の隊長か」
「……どうか、お考え直しください! コルド様が亡くなられた今、ご兄弟で争われる必要など!!」
真剣な表情で頼むギニューにクウラは淡々と告げる。
「なら、お前が俺の相手をするか? お前を殺してから、ゆっくりと弟を痛めつけてやってもいいんだぞ?」
「ギニューさん、下がっていなさい」
クウラの言葉と他でもない自分の主であるフリーザに下がれと言われ、ギニューは不本意そうに表情を歪ませる。
「無用な心配ですよ。貴方の上司である、このフリーザの実力を良く見ておきなさい」
そんなフリーザに向かって、クウラは思いついたように自身の部下に告げた。
「サウザーよ、お前がギニューの相手をしてやるか?」
そこに居たのは青い肌と白い髪を持つ端正な顔立ちの人間。
クウラ機甲戦隊と呼ばれるエリート中のエリート部隊のリーダーだった。
サウザーは、他の二人のメンバーと共に頭を下げた後、モニター越しにギニューを見てくる。
「サイヤ人如きの肉体に移り変わった愚か者との決着など、望んでも居ません。ですがクウラ様が望まれるのでしたら、あのおちゃらけ軍団の隊長を血祭りにしてみせましょう」
その言葉に静かにギニューが立ち上がる。
「貴様…! 言ってくれるではないか」
「機甲戦隊と特戦隊の実力の差を思い知らせてやろう」
二人の超エリート部隊の隊長同士のやり取りに酷薄な笑みを刻んで笑うクウラは、フリーザを見据えた。
「では、先に行っているぞ。フリーザよ」
「ええ。現地でお会いしましょう、兄さん」
モニター越しの通信が切れ、フリーザはやれやれと肩を竦める。
「フフ、退屈しのぎにはなりそうだな? フリーザよ」
「だといいんですけどね。それじゃ、向かいますか。よろしいですね、ターレスさん」
笑いかけてきたセルに応えるとフリーザはターレスに問いかける。
「ああ、クウラとやらの実力も見ておきたいからな…」
「では、ジースさん。目標に進路を向けなさい」
フリーザの指示にジースが「了解しました!」と声を張り上げ、宇宙船を発進させる。
ーーーー何もない惑星。
岩場と空しかないその星で、二人の尻尾を生やした大小の人物が見合っている。
フリーザとクウラ。
「臆せずに来るとは、少しはお前にも誇りが残っていたか。フリーザよ」
「誇り、ですか。生憎と兄さんに構っていられる時間は、ほとんど無いんです。私は地球に居るサイヤ人達に復讐をしなければいけませんからねぇ」
両手を広げ、静かに足を揃えて構えを取るフリーザ。
クウラはそれに淡々と返した。
「地球のサイヤ人? お前や父が猿に負けたという噂は本当だと言うのか? ならば、何故その猿の一味を仲間にしている」
「色々と事情があると言ったでしょ? 兄さん、いつからそんなに無駄口を叩くようになったんです?」
「……フン。まあ、いいだろう」
言うとクウラも構えを取る。
その前にサウザーが告げた。
「クウラ様。先に、私とギニューの闘いをご覧に入れましょう」
「…いいだろう」
言うとクウラは構えを一旦、解いてフリーザを見る。
フリーザは呆れたような表情で、ギニューを見た。
「兄さんの余興にも困ったものです。ギニューさん、その体の力を見せてあげなさい」
「はは! フリーザ様の勝利の為に!!」
言うと二人は前に出る。
「? フリーザ軍の戦闘服ではない? なんだ、その恰好は」
「先にフリーザ様が言っていた地球のサイヤ人。これは、その肉体を模して作り上げられたものだ。もっとも、胸と背中のマークは俺の趣味だがな」
余談だが、本物の悟空とギニューの差異は漢字マークと道着の帯の結び方にある。
今の悟空は胸と背中の〇に「悟」のマークを付け、青い帯を腰で着物の様に巻いて結びを作らずに締めている。
対して、ギニューは〇に「牛」のマークを付けており、青い帯は一般的な道着のように腹の下辺りで結んで締めくくられている。
「……訳の分からんことを。ならば行くぞ! クウラ機甲戦隊! サウザー!!」
「ギィニュー特戦隊隊長! ギニュー!!」
互いにスペシャルファイティングポーズという珍妙なポーズを取って気合を入れた後、真剣な表情で構え合う。
一瞬、セルとブウの二人が冷めた目でフリーザを見ると。
フリーザはコホンと咳を一つしてから見据えた。
両者、同時にその場から地を蹴って姿を消すほどのスピードで動く。
強烈な炸裂音と共に現れたのは空。
二人は互いに凄まじい打撃の交換を行いながら空高く上に跳躍、そのまま舞空術で空を気ままに飛び回りながら、拳と蹴りを激しく何度もぶつけ合う。
繰り返される連続打撃からサウザーはギニューの右ストレートを選んで左に見切り、右の膝蹴りを腹に向かって放つ。
鈍い音と共にギニューの右掌に受け止められる。
「・・・!?」
「フン、どうした? 特戦隊と機甲戦隊のレベル差を見せるのではなかったのか? この程度では、この肉体の本気を見せるまでもないぞ」
「舐めるなよ、ギニュー!!」
左ストレートを放つサウザーを右に首をひねって見切り、受け止めていた膝を突き放すとギニューは右の拳でサウザーの顔を打って吹き飛ばす。
仰け反りながら後方に弾き飛ばされるサウザーの後ろに高速移動でギニューは現れ、思い切り蹴り上げる。
「ぐはぁ! おのれ! ならば!!」
天高く吹き飛ばされながらサウザーは態勢を整えて、右手に気を纏わせ刃を作り上げた。
「サウザーブレード!!」
そのまま右手刀を振り上げて、袈裟懸けに斬撃を放つ。
「舐めるなぁ!!」
真っ向から右の拳をぶつけ、受け止めるギニュー。
周囲に白い気が走り、嵐のように吹き荒れる。
舌打ちをしながら、次々と手刀からの蹴りを繰り出すサウザー。
拳と蹴りを合わせて受けるギニュー。
両者、真っ向から譲らない打撃の応酬。
「バカな! 俺のサウザーブレードを止めるだと!?」
何度目かのぶつかり合いに、サウザーは目を見開きながら黒髪のサイヤ人となったギニューを見据える。
「攻撃する一点に気を集中させれば、このくらいは容易い。この肉体になって学んだことだ!! そして…!!」
黒い目を見開き、ギニューは強烈な右の後ろ回し蹴りをサウザーの腹にぶつけると同時に金色の気を纏う。
一気に戦闘力が上昇し、黒髪は天に向かって逆立つと眉毛と同時に金色に、目付きは鋭くなって翡翠色となる。
「これで終わりだ、サウザー!!」
右腕を横に広げ、左手を前方に突き出してパワーを溜めると強大な紫の気の弾丸を打ち放った。
サウザーは蹴りで吹き飛ばされた体勢を整えると、目の前に迫る強大な紫の光弾を光輝く右の手刀で切り捨てようとして、受け止めきれずに爆発した。
「ぐわぁあああ!!」
光の爆発から吹き飛ばされて背中から地面に叩きつけられ、サウザーは気を失った。
それを見据えて、超サイヤ人と化したギニューは静かに己の肉体に満ちていた金色のオーラを解除し、元の黒髪黒目のサイヤ人へと戻る。
「…これが伝説の超サイヤ人の肉体か。素晴らしいものだな!!」
ニヤリと笑って己の身体を見下ろし、ギニューはフリーザの前に立つと頭を下げる。
「お目をお汚しして申し訳ありません、フリーザ様」
「いえいえ。素晴らしい強さでしたよ、ギニューさん! 今分かりました。その肉体はナメック星の時の孫悟空さんを模したモノのようですねぇ。それをギニューさんが使いこなせれば、タゴマさんより余程強い」
嬉しそうに微笑むフリーザの前では、気を失ったサウザーがクウラ機甲戦隊のドーレとネイズに介抱を受けている。
それを静かに見下ろして、クウラは淡々とフリーザの前に立った。
「フン。おふざけ軍団の隊長にしては、中々のものじゃないか」
「おっほほほ! ギニュー隊長は伝説の超サイヤ人の肉体を手に入れてますからね。サウザーさんでは相手にならないでしょう。もっとも、ギニュー隊長をして超サイヤ人になるには地獄のようなトレーニングを必要としたでしょうがねぇ」
サウザーの目が覚め、クウラを見上げる。
「ク、クウラ様…! 申し訳ありません!!」
「サウザーよ、貴様が弱いのではない。奴の力が貴様を遥かに凌駕していただけのことだ」
そう言いながらクウラはギニューをニヤリと見た後、フリーザを見据える。
フリーザの方は、いきなり気を高めて紫色の気を纏い最終形態へと変身した。
「なるほど、そいつを従えられる位には強くなったということか。フリーザよ」
その強烈な気を見てクウラが目を静かに鋭く細める。
「そういうことだよ、兄さん。悪いことは言わない。やめるなら今の内だよ」
「ククク、弟よ。この俺が、その程度の力に恐れをなすと思うのか?」
言うと同時にクウラも紫色の気を纏う。
フリーザはこれに微かに目を細めた。
「さすが、兄さん。ずっと最強であることに拘っていただけあって、強敵と戦い続けてきたみたいだね」
「貴様こそ。かつて見た時よりは遥かに強くなっているようだ。どういう風の吹き回しだ?」
冷たく光る紅の瞳を見返してフリーザは静かに笑う。
「超サイヤ人に復讐するためさ。奴は修行とやらをすることで、実力を上げていった。それを真似てみたんだけど。やってみるもんだね? 数ヶ月でこれだけの力を得ることができたよ…!!」
「なるほど、生まれついての強者であるお前が修行を行えば、そこまでのレベルになるか。当然と言えば当然だ。だが、その超サイヤ人どもを部下にしているのは何故だ?」
クウラは静かにターレスとギニューを見据えた。
これにフリーザは笑う。
「色々あるって言ったじゃないか、兄さん」
「フン…。まあ、いいだろう。いくぞ、フリーザ!!」
言うと同時にフリーザの目の前に現れるクウラ。
右の拳を握り締めて、まともに腹を打ち抜く。
「ぐぅ!?」
目を見開くフリーザを長い尾できりもみに回転させて宙に浮かせ、足首を右手で掴んで頭上に掲げて地面に叩き落とす。
地面に背中から叩きつけられて、後方に引きずられるように吹き飛ばされるフリーザ。
立ち上がろうとする弟に、情け容赦のない瞳からの怪光線を放つクウラ。
「ぐあ!?」
目を見開いて光を受け、爆発するフリーザを静かにクウラは見つめる。
「どうした? 大口を叩いておきながら、この程度だと言うのか?」
問いかけるクウラに煙の向こうから現れたフリーザは己の肉体を見下ろしながら、ターレスを振り返った。
「……ターレスさん? なんですか、そのザマは?」
フリーザの引きつった表情を見て、クウラは冷徹な瞳を後ろのサイヤ人ターレスに向ける。
彼は無様に地面に這いつくばりながら、弱り切ったように肩で息をしている。
「…僕はまだ、20パーセントの力も出しちゃいないんですよ? どうして、そんな状態になるんです?」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ!」
這いつくばりながらも必死に目で訴えてくるターレスに、フリーザは目をセルに向けた。
セルは口元に手を当てながらターレスを見下ろして告げた。
「ウム。ターレスのレベルが神次元に達していない為に起こったことだろう。おそらく、自分のレベルとかけ離れた力を顕現させることが、今のターレスにはできないのではないか?」
「…超サイヤ人の真の姿とやらになれば?」
「できるだろうが、お勧めはしないな。ターレスは孫悟空達のように使いこなせていない。すぐにエネルギー切れになってしまうだろう。私の見立てでは、お前の兄はお前に匹敵する力をその身に有している」
「なんですって? じゃあ、私はクウラを相手にハンディキャップを持った状態で戦わなければならない、と!?」
目を見開くフリーザにセルは頷く。
隣でブウも口を開いた。
「この消耗具合から察するに。ターレスが何の支障もなく私達に力を与えられるのは、己と同等のレベルまでだろう。それ以上はコイツの気の容量が持たんようだな」
「つまり、超サイヤ人の状態に毛が生えた程度の力しか出せんということか」
セルが呆れたような表情になる。
「完全体となったこの私が、第一形態の頃よりも劣る力で戦わなければならないとはな」
「私など。孫悟飯やゴテンクス、ピッコロと言った名立たる戦士を吸収しているのにも関わらず、デブの頃よりも力が劣るのだぞ?」
ブウがセルの愚痴に合わせるように告げると、フリーザの目が血走ったものになった。
「ふ、ふざけるなぁ!! 僕が、このフリーザが、どれだけの努力を数ヶ月の間したと思っている!? それを、それを…!! なかった事にしやがって、この猿がぁああああ!!!」
マジギレするフリーザをぜぇ、ぜぇ、ぜぇと見上げるしかできないターレス。
これにいよいよ、フリーザの苛立ちは限界に達する。
「これは急務だ。ターレスを鍛えなければ、我々は本来の力を出すこともできないぞ」
「やれやれ。私達が雁首を揃えて、このザマとは笑えんな」
セルとブウの会話にフリーザが目を見開く。
「落ち着いてる場合じゃありませんよ!! こ、この猿を鍛えないと本来の力も出せないなんて!! そんなふざけた話が!!」
そんな話をしていると背後から強烈な打撃を食らってフリーザは吹っ飛ぶ。
「がはぁ!?」
振り返れば、背中を強烈なクウラの前蹴りが襲っていた。
ふっ飛ばされたフリーザをセルが片手で受け止める。
「…すみませんね、セルさん」
「何、気にするな。それにしても、中々容赦ない男だ」
愉快気に笑うセルをクウラは冷淡に見据えた。
「どうしたフリーザよ? その力は見かけ倒しなのか?」
「に、兄さん。ちょっと今回は待ってくれませんか? どうやら私は本調子で戦えないようですので」
「弟よ。戦いの場で、そんな悠長なセリフが通じると思っているのか?」
言いながら、クウラは静かに拳を握りしめる。
フリーザは半笑いになりながら呟いた。
「そうでしたね。兄さんは、そんなヒトでした」
これにブウとセルも静かに横に並び立つ。
「まあ、役に立つとは思えんが。今の自分がどれだけ奴を相手にやれるのか、知っておくのも悪くはない。手を貸そう」
「フフフ、どれだけの力の差があろうと。究極となった魔人の私に敗北はない…!」
静かに笑い合う二人の異形にフリーザも目を鋭く細める。
「仕方ありませんね。私達三人で、分からず屋の兄に目にものを見せてあげましょう!!」
そう言うと三人の異形は、クウラに向かっていった。
そして、ボロ負けした。
「弟よ。どうやら、今のお前はその猿の力をもらって生きているようだな? ならば、猿を鍛えるがいい。お前が全力を出せるときに、もう一度戦いに来てやろう」
そう言って倒れ伏したフリーザ、セル、ブウを見据えた後、悠然とクウラは去っていった。
後日、ターレスが地獄の特訓を始めたのは。
こういう経緯であった。
――――
フルパワーで闘うためにも、ターレスをきたえなければならなくなったフリーザ達。
セルの発案でターレスは戦闘服に重りを付けさせられた状態で修行する。
ターレスの乗る宇宙船は惑星フリーザを離れ、とある宙域に出ていた。
現在の主要な乗組員は、ギニュー特戦隊を除いたフリーザ、セル、ブウとターレスのみ。
他は宇宙船操縦の為の乗組員だ。
ある程度ターレスのレベルが上がったことと、ギニュー特戦隊自体の能力の底上げにより、特戦隊のメンバーは肉体の固体化に成功した。
よってターレスが死なない限りは、ターレスから離れても問題なく行動できるようになったのだ。
それを知ったフリーザは惑星フリーザNo.38の防衛をギニュー特戦隊に任せ、自身はターレスを鍛え上げる為にセルとブウを連れて強力な敵を探し求めていた。
現在は、ブウの案内で適当に旅をしている。
司令室に居る彼らの前には、巨大な氷の惑星がモニターに浮かんでいた。
「ブウさん、本当にこの辺りで間違いないんですね?」
「ああ。ビビディの情報どおりなら、この辺りに封印されているはずだ。ヘラー一族がな」
フリーザが宇宙図を確認しながら問いかけ、ブウが淡々と頷く。
「ヘラー一族? ブウ、よければ説明してくれないかね?」
「…いいだろう」
セルの問いかけにブウは快く応えると、説明を始めた。
「濃い緑色の肌と橙色の髪が特徴の一族だ。一部の者は超サイヤ人のような変身もできると聞いた」
そう告げた後、ブウはセルとターレス、フリーザを見回しながら説明する。
「その昔、一族の中でも凶悪な戦士ボージャックと仲間達が銀河を荒らし回っていた。奴らは無差別に銀河を荒らしまわったため、東西南北に住む四人の界王によって封じられたと聞く。しかしセルよ、お前が北の界王を殺したことで封印が破られたらしい」
「フン。孫悟空と共に爆発に巻き込んだあの男が、北の界王というわけか」
語り合う両者の言葉にフリーザも目を見開いた。
「ああ! ヘラー一族ならパパから聞いたことがあります。なるほどなるほど。中々に古い情報をご存知ですね、ブウさんは」
「俺のは、ビビディから教わった知識だからな。正確ではあるが古いのは否めん」
「正確なら構いませんよ。しかしパパから聞いていた伝説の魔人ブウさんが、味方になってくれるとは。心強いことです」
「宇宙の帝王と言われたお前に言われるとは光栄だよ、フリーザよ」
互いに笑い合う白と桃色の異形を前にターレスは静かに口を開いた。
「それで? そのヘラー一族を見つけて。いったい、何をしようっていうんだ?」
この問いかけにセルが肩を竦め、ブウが半目になり、フリーザが呆れ返ったような表情になって溜め息をついた。
「私たちの命の供給源が、こんなにも血の巡りの悪いサイヤ人とはな」
「ああ、本当に無念だ。俺としては、今ので察してくれると思ったのだがね」
「ターレスさん、貴方はサイヤ人なのでしょう? サイヤ人がヘラー一族の話を聞いて会いに行くとなれば、闘い以外に何があります?」
フリーザの説明を聞いて、ターレスは訝し気に表情を歪める。
「だから何故、今勝てるかどうかも分からないような強敵を相手に闘いを挑まねばならんのだ?」
思わずという風にセルとブウがフリーザを凝視した。
「…そういえば孫悟空さんやベジータさんの私への反応ですっかり忘れていましたが。元々サイヤ人は、自分よりも強大な相手には従順でしたね。なるほどなるほど。だからターレスさんは、強敵と戦った経験が孫悟空さん達に比べて大きく劣っているわけですか」
納得したと言わんばかりのフリーザの言葉にターレスは忌々しそうに眼を伏せる。
「とにかく! そんな連中は後回しだ!! 今は修行で安全に力を付ける方が……!!」
言おうとするターレスだったが、モニター画面がいきなり爆発して衝撃が宇宙船を揺らす。
「!? な、なんだと!?」
「て、敵襲です! レーダーに反応ありませんでした!」
アプールの報告に驚くターレスとは反対にセルがニヤリと笑ってモニターを確認した。
「フフ、どうやら向こうからお出迎えが来たようだな」
「ちっ! いきなり撃って来やがるとは…!!」
「これで戦うしかなくなってしまったな?」
不敵な笑みを浮かべたまま告げるセルにターレスは歯ぎしりしながら、前を見る。
「おのれ…!! この疫病神どもが!!」
「一つ忠告をしておくぞ、ターレスよ。今のお前の戦闘力は、かつて私がセルゲームを開いた頃のベジータ程度だ。セルジュニアと同じくらいだな」
瞬間、ターレスの頭の中に記憶が湧き上がる。
「……超サイヤ人を超えると息巻いていた頃の王子だと? この映像は死者の都の記憶か。だから何だ?」
「今、感じている戦闘力の連中と闘っても一騎打ちならばお前が有利だろう。もっとも、相手がお前よりも闘い慣れていれば苦戦は必至だ。心してかかることだな、お前には経験が圧倒的に足りないのだから」
「……フン、大きなお世話だ」
上部ハッチを開き、ターレスとセル。
フリーザとブウが、宇宙空間に躍り出た。
ーーーー
彼ら四人の前に現れたのは、同じタイプのズボンとブーツにアクセサリーをつけた男が四人と女が一人。
先ほどのブウの説明通り、濃い緑色の肌と銅色の髪を持ったサイヤ人や地球人のような人間タイプ。
その五人の中で最も体格の良い、頭を覆う赤色のバンダナを付け、眉間から斜めに刀傷のついた男が、ターレス達を見回しながら話しかけてきた。
「ほう? 珍しいな、サイヤ人か。それにお前はフリーザだな? これはいい。いずれ、銀河一を巡って挑もうと思っていたところだ、手間が省けたな」
ターレスを見た後、バンダナの男はフリーザを見据える。
「なるほど。私の名前をご存知ですか、それは好都合」
「なんだと?」
「いえ、こちらの話です。名前を伺っても?」
「俺の名は、ボージャック。お前の持つ惑星をもらいに来た」
そう告げるボージャックの周囲で、三人のヘラー一族の者が叫ぶ。
「銀河を統べる力を持つ我ら銀河戦士ヘラー最強のボージャック様が、貴様の惑星をご所望なのだ」
「貴方達が大人しくボージャック様に惑星を差し出し、永遠に服従するのなら、温情を与えても良いのよ」
「…もっとも。ボージャック様に刃向かう様な愚か者ならば、ここで俺たちが殺してやろう」
ボージャックと同等の体格を持つモヒカン頭に口髭を生やした野生的な男に続き、ウェーブのかかった腰まである長い髪の美女、紫のターバンのようなモノをかぶり、子どものように小柄な出で立ちの男が続く。
唯一、言葉を発しなかった、腰に剣を差し紫のハチマキを額に巻いた青年だけは、残忍な笑みを浮かべてフリーザ達を見回している。
一方的な彼らの言い分を前に、フリーザは呆れた表情で見返していた。
「貴方がた。このフリーザに向かって、よくもそんな戯言を言ってくれますね? 怒りを通り越して、呆れてしまいましたよ」
セルは淡々と腕を組んで成り行きを見守り、ブウは不敵な笑みを口元に刻んでいる。
誰一人、服従する気はないと判断できた。
ボージャックは、自分の仲間四人に向かって告げる。
「ビドー、ザンギャ、ブージン、ゴクア! 相手をしてやれ!!」
瞬間、四人の銀河戦士は、その場から姿を消すとブウ、ターレス、フリーザ、セルの目の前に現れて対峙する。
「…ふふ、ちょうどいい。ターレスよ、しっかりと強くなってくれたまえ」
「…チッ! なんで俺の相手が女なんだ」
「やれやれ。身の程知らずのおバカさん達には、痛い目を見せてあげましょう」
「…剣士か。私のウォーミングアップには、最適かもしれんな」
それぞれの相手を見ながら構えるターレス達。
対する銀河戦士達は、四人同時に仕掛けて来た。
「…ふふふ。その程度の戦闘力で果たして、どこまで俺の部下達を凌げるかな?」
ニヤリとボージャックは凶悪な相貌の笑みを強めた。
ーーーー
ヘラー一族の剣士・ゴクア。
彼の実力は一味の中でも高い。
真正面からどんな敵とも闘える力と技を持ち、剣の腕もある。
紫のハチマキを額に巻いて、黒いシャツに白い道着タイプのズボンを履いている。
その彼をして、強敵だとハッキリと分かる目の前の緑を基調としたバケモノ。
「なかなか、腕が立つようだな?」
ゴクアの言葉に異形セルが笑みを返した。
「…フフ、私はパーフェクトだ。貴様程度に倒されることはない」
「面白い!!」
言うとゴクアは腰の剣を抜き放って正眼に構える。
対するセルはニヤリと笑って両足を揃え、右手を胸の前に突き出して左手を添えるようにして構える。
同時に消える。
現れた時、ゴクアの剣が袈裟懸けに振り切られているところだった。
それを背を後ろに反らして鼻先で見切るセル。
すかさず左の膝蹴りを腹に決めようと繰り出すゴクアだが、セルの左手に受け止められている。
「ぬぅ!?」
「どうした? この程度ならば、私が本気を出すまでもないのだが?」
「……やるな。ならば…!!」
この僅かな攻防でセルの実力がまだ上のレベルであることを感じて、ゴクアは一旦剣を納めると両拳を腰に置いて気を高める。
「ぬぅうううあああああ!!」
「……フン」
現れたゴクアは上半身に着ていたシャツを破り脱ぎ、肌は黄緑色になって髪は赤銅色に変化していた。
筋肉が膨張し、体が一回り大きくなっている。
「なるほど。ブウの言っていた通りだ、確かに超サイヤ人の変化に似ている。かなりの戦闘力の上昇だ」
セルは呟きながら、残忍な笑みを浮かべているゴクアに向かって冷酷な笑みを返した。
「だが、それがどうした?」
瞬間、剣を再び抜いたゴクアの目が見開かれる。
「ほざいたな!!」
緑色のオーラを身に纏い、一気に斬りかかってくる。
これにセルは静かに笑みを引っ込めて真剣な表情になると、右手の人差し指を立てて金色の気を全身に纏う。
「はぁああああ!!」
ゴクアが気合を込めた大上段からの振り下ろしをセルの頭に目掛けて放つ。
しかし、セルは全くその場を動こうとはしない。
勝ち誇った笑みを浮かべるゴクアだが、硬い金属に当たったような手応えを感じ、目を見開く。
見れば、セルは先の人差し指に気を集中させて、頭上で剣を受け止めているのだ。
「なんだと!?」
「クク、そんなに驚くものでもあるまい? それとも、この程度の受けも知らないのかな?」
「ほざけ!!」
その場から動き回り、鋭く速い強烈な斬撃を次々と繰り出すゴクアだが、セルはその場から微動だにせずに人差し指を立てた右手だけを移動させて軽く受けていく。
「こ、こんなバカな!? 戦闘力は俺の方が高いはずなのに!!」
「そうかね? 気を集中させれば、このくらいはできる。それにターレスが気を消費しない程度の速度で一気に本気を出せば良いと分かったのでな。要は攻撃をする一瞬に気を高めれば良い。つまりーー」
ゴクアの強烈な跳び上がってからの斬撃を指を顔の横に構えて受けると、痛烈なカウンターの右蹴り上げを腹に打ち込むセル。
「がはぁ!? なんだ、この威力は!!」
前のめりになりながら上空へ蹴り上げられるゴクアの背後にセルは高速移動で現れ、静かに左手を背中に当てる。
「あ、バカな!?」
振り返るゴクアに向かって冷酷な笑みを浮かべ、セルは気功波を放って告げた。
「じゃあな」
金色の光線がゴクアの全身を包み、地面に背中から叩きつけられた。
その一撃で、ゴクアは白目をむいて気絶している。
「…フン。瞬間的に気を爆発させるというのは、地球の戦士共が得意ではあったが。このセルが、奴らの真似をしなければならんとはな」
つまらなそうに呟いてセルは両腕を組むと、ターレスの方を向いた。
「早く強くなってもらわねば、こんな退屈な戦い方では飽きが来てしまう」
ぼやくようにセルは呟いた。
ーーーー
一方、フリーザの前に現れたのは紫のターバンを頭に巻いたブージンと呼ばれる小柄な戦士だ。
小惑星や隕石のかけらを念力で移動させ、攻撃する。
これにフリーザはその場から動くことなく、両目を見開いてみせるだけで向かってくる隕石は消える。
「…お前も念力を使えるのか?」
「ええ。貴方の子どもだましのマジックよりはね」
「…ならば、これはどうかな?」
近くに漂っていた隕石を念力で削り巨大な石の槍へと変化させる。
フリーザは淡々とした表情でそれを見た後、ため息を少し吐いた。
「念力勝負ですか? いいでしょう」
両手を少し動かし、フリーザも周囲にあった隕石を削って槍にする。
数十もの隕石を一瞬で操る姿は、正に魔人のようであった。
「貴方に合わせてあげましょう。大体、同じ数の隕石です。これをぶつけ合って、先に相手をダウンさせたら勝利ということでどうでしょう?」
「…後悔するぞ? 俺はボージャック様の配下で最も念力を得意とするものだ!!」
同時、数発の隕石がぶつかり合う。
互いに相殺する隕石を見つめて舌打ちをするブージンだが、フリーザは余裕の表情。
頬の辺りに違和感を感じ、ブージンはそっと手を当てると切り傷が発生しており、血が流れていた。
「…砕いた破片までも念力で動かしたと言うのか? 細かい真似を」
「分かりやすいでしょう? 私と貴方のレベルの差がね」
「ククク。この程度の小さな破片を操れたから、なんだというのだ? 一気にお前が操り切れない数の隕石を叩きこめばいいだけのこと! そんな姑息な技で、俺の念力を防げると思うのか?」
笑いながら告げるブージンにフリーザは肩を竦めると告げた。
「では、お好きにどうぞ?」
瞬間、フリーザの持っている宇宙船にも匹敵する隕石を両者はぶつけ合う。
破片が飛び散り、ブージンの左足の膝を掠っていく。
「!?」
「さ、次々と行きますよ?」
「おのれ!!」
数十の隕石がぶつかり合い、その破片の一つが確実にブージンの肉体を傷つけていく。
「くたばれ!!」
それを数回繰り返し、ブージンは眉間にしわを寄せて目を見開くと、隕石同士が相殺したと同時に気功波をフリーザに向かって放った。
右手から放たれた赤い光線は、隕石の破片を消し飛ばしながらフリーザの正面に迫る。
それを腕組みをしながらフリーザは見据えた後、目を輝かせる。
「なんだと?」
ブージンの放った紅い光弾が、フリーザの目の前で止まっているのだ。
目を見開いて焦るブージンにフリーザはつまらなさそうに告げた。
「おや? ゲームは終わりですか?」
右人差し指を緩やかに出し、気を纏って光を放つ。
ブージンも同じフォームから紅い光弾を放った。
だがーー。
「馬鹿な!?」
互いに指先から放たれた極細の赤い光線は、一方的にフリーザの放った光がブージンのそれを砕いてあっさりと胸を撃ち抜いた。
「ーーがはぁ!?」
近くの浮遊する隕石に膝をついて前のめりに倒れるブージンを見た後、フリーザは首を鳴らしながら告げた。
「念力は気を消費しない。あのサイヤ人の負担にはならないでしょう。…やれやれ、このフリーザが無様なものですよ。姑息な手段とは、よく言ったものだ」
命の火を消したブージンをそのままに、フリーザは闘いを終えたセルの下に引き上げていった。
ーーーー
強烈な拳が空を切る。
次々と繰り出される銀河戦士・ビドーの攻撃を紙一重で見切る山吹色の上衣を着た魔人ブウ。
左右の拳からの右回し蹴りも首をひねるだけで拳を避け、回し蹴りは高速移動で背後を取って空振りさせる。
「貴様…! 何故、攻撃をしてこない!!」
「簡単なことだ。究極の魔人である私が攻撃を加えたら、あっさりと闘いが終わってしまう。久し振りの運動だからな、もう少し楽しませてもらおう」
「舐めやがって!! お前の戦闘力は、俺を遥かに下回るだろうが!!」
野獣のような咆哮を上げて攻撃を繰り出してくるビドーに、ブウは微かに笑みを強めると告げた。
「…ほう?」
ビドーの右ストレートを軽く左に見切って避け、ブウの強烈な返しの右膝蹴りが腹部を打ち抜く。
「ぐはぁ!?」
衝撃が背中を突き抜け、ビドーは動きを止めた。
「ば、馬鹿な!? なんだ、コイツの攻撃の重さは!?」
「…どうした? 戦闘力はお前が上なんだろう? この程度で終わりか?」
思わず目を見開くビドーに、ブウは目線を合わせて挑発する。
「フルパワーで戦えないのならば、闘えないなりの方法がある。一瞬だけ戦闘力を上昇させるなど、地球の戦士を取り込んだ私には造作もない」
「何を訳の分からんことを!!」
ビドーの強烈な右ストレートを、今度は避けもせずに左掌で顔の前で受け止める。
同時にブウの右の拳がビドーの腹をもう一度打ち抜いた。
前のめりになった顎をブウは右足で蹴り上げ、上空に吹き飛ばした後、オーバーヘッドキックのように宙返りしながら高速移動で先回りして蹴りを繰り出し、ビドーの肉体を何もない惑星に叩きつけた。
土煙が晴れた後、ぴくぴくと肉体を痙攣させてビドーは気を失った。
「ちょっと大人げない真似をしてしまったな…。私もまだまだガキだ。ククク、さて私達の大将の闘いを見てやるとするかな?」
ニヤリと笑いながら言うとブウはターレスの闘いを観戦しようと移動を始めた。
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黒いマントをなびかせて、ターレスは目の前の女銀河戦士・ザンギャを見据える。
「この俺の相手が、お前のような女とはな。舐められたもんだぜ」
「…ウフフ。私に勝てると思うの? 貴方」
「馬鹿め。その勝気な余裕の笑みを恐怖の表情に変えてやろう!!」
言うと同時、ターレスが目の前に高速移動で現れる。
放った拳は、ザンギャに微笑みながら片手で受け止められた。
「な、なに!?」
顔の前で受け止められた事に目を見開くターレスに、ザンギャは可愛らしく小首を傾げる。
「ねえ、あなた。他の三匹のバケモノと違って随分と弱いのね? この程度の戦闘力で私に挑むと言うの?」
微笑みながら告げるザンギャは、一瞬でターレスの背後を取ると強烈な蹴りを後頭部に叩き込んでふっ飛ばした。
「がは!?」
目の前に地面が近づいたところで両手を突き、バク転して体勢を整える。
「貴様…! 女と思って手加減していれば、いい気になりやがって!!」
「…フフ、サイヤ人にそんな感傷があるなんて知らなかったわ。意外と可愛いじゃない」
「ほざけぇえええ!!」
言うと同時に殴りかかるターレスをザンギャは微笑みながら迎え撃つ。
強烈な炸裂音が響く中、ターレスの攻撃は悉くザンギャに捌かれている。
右ストレートを左に捌かれたのを見て、ザンギャの返しの右ストレートを体をクルクルと回転させながら上に跳んで躱し、ザンギャが移動した方に高速移動して背後に先回りし、遠心力のついた蹴りの一撃を放つ。
紙一重でザンギャは体を返しながら、右腕で中段回し蹴りを軽く受け止める。
「…なんだと!?」
目を見開くターレスにザンギャは微笑みを返し、強烈なスライディングで足を刈ると、宙に浮いたターレスの背中を真紅の気を纏った蹴りで打ち抜いた。
「ぐぉおおお!?」
はじき飛ばされ、地面に叩きつけられるターレス。
その前にザンギャは興奮したような顔で立っている。
「…こんな程度なの、色男?」
「な、なめやがって…!!」
立ち上がりながら吐き捨てるターレスをザンギャは微笑みながら見る。
「嫌いじゃないわ、貴方。弱いけれど、その苦しんでいる顔を見るの、好きよ」
「……フン。おい、ブウ!!」
ターレスは鼻で笑った後、自分の闘いを見ていたセル、フリーザ、ブウの三人のうち、ブウを見つめる。
「おや、何かな?」
「何かな、じゃない! さっさと、この重りを解除しろ!!」
ターレスの言葉にブウはニヤリと笑みを返してセルを見た後、頭の先の触覚から桃色の光線を放つ。
セルとフリーザは、揃って肩を竦めた。
ザンギャが目を見開きながら、三人の異形を見返した後呟く。
「…こいつら。ゴクアやビドー達を倒したというの?」
セルがこれに皮肉気だが、紳士的な笑みを浮かべて一礼する。
「コレは麗しいお嬢さん。貴女の仲間は、皆揃って仲良くお昼寝しているよ」
「ザンギャさん、と言いましたね? さっさと降参した方が身のためですよ」
フリーザの言葉に、ザンギャは目を細めながら言い返す。
「宇宙の帝王と呼ばれたフリーザが、女一人相手に複数で挑むと言うのかしら?」
「おほほ! 私やセルさん達が手を下すまでもありませんよ」
「何ですって? まさか、このサイヤ人に私が劣るとでも?」
ザンギャが振り返ったと同時にターレスが目の前に踏み込んでいた。
「…っ!?(こいつ、さっきまでと動きが違う。本当に重りをつけていたと言うの?)」
指先を伸ばし、顎先を持ち上げられてザンギャは顔をターレスに向けさせられる。
「先の話だがな。俺も嫌いではないぞ、女。お前のような気の強い女はな。どうだ、俺の仲間にならないか?」
「……少しは速くなったみたいだけど。私は強い男にしか興味がないのよ!!」
至近距離から赤い気弾を放ち、離脱するザンギャ。
気弾はターレスの胸にぶつかって爆発した。
「…何ですって!?」
立ち上る煙が晴れた時、ターレスの褐色の肌は透き通るように明るい肌色に。
漆黒の髪は天に逆立ち金色に輝いている。
「…変身した? ゴクアやボージャック様のように?」
感じられる気の質が、先までとは違う上に強力だった。
戦闘力が桁外れに上がっている。
構えようとするザンギャの前にターレスは現れ、翡翠になった瞳で見据えてくる。
「こいつが伝説の超サイヤ人だ。フリーザの言葉じゃないが、降参した方が身のためだぞ?」
「……舐めるんじゃないよ!!」
言うと同時にザンギャが殴りかかる。
先までと違い、紙一重で避けるターレス。
左右の連続ストレートを体を見切って避け続け、痺れを切らしたザンギャの右回し蹴りを高速移動で背面に移動して避ける。
「…な、なんてスピードなの? こいつ、一体?」
明らかに先までとは別人のようなスピードにザンギャは目を見開く。
強烈な赤い気を纏う蹴りを咄嗟に顎へ放つが、逞しい二の腕の筋肉に受け止められ、微動だにしない。
「パワーも桁外れに上がっている?」
目を見開いて、歴然たる実力差に呆然とするザンギャの頰を、超サイヤ人ターレスはゆっくりと撫でる。
「…なかなかの蹴りだ。超サイヤ人になってなければ効いただろうな」
「スーパー、サイヤジン? そんな変身をするだけで、私の技が通じないなんて」
悔しそうにするザンギャを見下ろし、ターレスは笑いかける。
「俺の勝ちだな」
「……そうね。申し訳ありません、ボージャック様。私では、この男に勝てません」
無念そうに顔をうつむかせて告げるザンギャをターレスはニヤリと笑いながら見下ろす。
その時、ターレスが目を見開いてザンギャの腕を引っ張り、背に庇うようにする。
理解できずに呆然としていたザンギャの目の前で、緑の光がターレスを襲った。
「…な!?」
ターレスが庇わなければ、死んでいたのは自分だとザンギャは呆然と理解する。
黒いマントを靡かせ、ターレスは右手をかざして光線を受け止めていた。
「…ボージャック様、何故!?」
ザンギャが呆然と自分の主人を見ると、ボージャックは退屈そうな顔で告げた。
「敵に情けをかけられ、道連れに自爆もできずに降参するような弱い奴は、俺の部下には要らんのだ」
ボージャックは「…しかし」とターレスを見て笑う。
「冷酷で非情のサイヤ人が聞いて呆れるぞ。女を庇うとはな」
これにターレスはニヤリと笑みを返す。
「フフ、貴様のようなパワーだけの能無しには分からんだろうが。ザンギャとか言う、この女はイイ女だ。この俺の伴侶に相応しい」
「…な、何を勝手なことを言ってんだい!?」
「なら、このまま奴の所に戻って死ぬか? どちらを選ぶかなど火を見るよりも明らかだ」
「………」
黙り込むザンギャに笑った後、ターレスはボージャックの前に立った。
「と、言うわけだ。この女はもらうぞ? ついでに、貴様を倒して俺の戦闘力を上げさせてもらおう」
「…フン。ザンギャ達を倒したからと言って調子に乗らんことだ」
両腕を組むボージャックにターレスはニヤリと笑みを深めた。
「楽しみだ、俺の真・超サイヤ人は。お前の力でどれだけ引き上がるのかな? クククク…!」
冷酷で残忍な笑みを浮かべて、ターレスは金色のオーラを身に纏った。
エピソード・オブ・ターレス その3
超サイヤ人になったターレスは、両腕を組んでこちらを嘲笑しているボージャックを見据える。
「フン、この俺を使って力を引き上げるだと?」
「…ああ、面白いだろ?」
冷酷な笑みを浮かべて告げる超サイヤ人に、ボージャックもニヤリと返すと拳を握りしめた。
「ふん。できるものなら、やってみろ!!」
打ち込んでくるボージャックの拳に拳を合わせ、相殺する。
その一撃の重みにターレスは目を見開いた。
「…! 何だと? 超サイヤ人になった、この俺が押されているだと?」
余裕の笑みを浮かべているボージャックは、更に拳を打ち込んでくる。
三度合わせた拳が痺れていることに、ターレスは冷や汗をかきはじめている。
「どうした? デカイ態度の割には大したことないな? ただのハッタリ野郎か」
「……そいつは今に分かるさ」
「フン」
あくまで冷徹な笑みを崩さないターレスに、ボージャックは次々と攻撃を繰り出していく。
ぶつかり合う拳と拳、蹴りと蹴り。
徐々にターレスが押され始める。
ラッシュの打ちあい。
お互いに拳を顔面に放ち合うもギリギリでターレスの拳は避けられ、ボージャックの拳は左頬を射抜いた。
「ぐは!?」
首をねじ切らんばかりにふっ飛ばしながら後方に弾け飛ぶターレス。
仰け反ったターレスに向かって左の拳がボディに突き刺さる。
「ぐぉ!?」
同時にボージャックの長袖が筋肉が膨張して破ける。
「ぬぁああああ!!」
叫びながら右の肘打ちがボディに続けざまに炸裂し、一気にボージャックの上半身の筋肉が膨張して破けてしまう。
緑色のオーラを纏いながらボージャックは、赤銅色の髪と黄緑色の肌に変化した。
「ぐはぁ!!」
強烈な気の奔流に弾き飛ばされ、ターレスは氷の惑星の地表に叩きつけられる。
それを悠然と見下ろし、ボージャックは笑った。
「どうした、この程度で終わりか?」
巨大なクレバスを生みながら氷の大地に飲み込まれたターレスを、セルとフリーザ、ブウが静かに見据えている。
「あれがヤツの本気か。中々の戦闘力だ」
「ふん。あの程度、孫悟空さんであれば超サイヤ人になるまでもないでしょ」
「フリーザ、意地悪を言うもんじゃないぞ? 顔が似ていると言っても奴はターレス。孫悟空とは赤の他人なんだからな」
やられている仲間に見向きもしないで物見遊山のように語っている三体の異形に、ザンギャは表情をしかめる。
「いいのかしら? このままだと、死ぬわよ。あの男」
「…希望としては、死んでもらっては困るさ。だが、まだ慌てるような状況でもない」
セルが淡々と返すと、ザンギャは目を見開く。
「あなた達、ボージャック様を甘く見過ぎているわよ」
「甘く見てはいない。奴の実力はまともに戦えば超サイヤ人のターレスを遥かに凌駕しているだろう。かつて孫悟空と戦った私と同等と言ったところか。大したものだ」
「何か手があるって言うの?」
美しい眉を寄せながら問いかけるザンギャに、セルは揶揄するような笑みを浮かべた。
「フン。それよりも、ザンギャと言ったな? そんなにターレスが気になるか?」
「な、何を!! アイツが負けたら、私がボージャック様に殺されそうだからよ!!」
「頬が赤いぞ? 銀河戦士とやらも女は女だな」
クククと笑いながら告げるセルをザンギャは忌々しそうに見た後、ターレスに視線を戻した。
同時、強大な爆発音が発生する。
クレバスの闇を金色の気が照らし、暗黒惑星に光が満ちる。
ターレスは肩で息をしながら、ボージャックを睨みつけている。
「…なるほど。忌々しいが、セルの言うとおりのようだな」
「フン。どうしたサイヤ人? そこまでなのか?」
ターレスはその言葉にニヤリとした後、首元に吊ってある灰色の勾玉を左手で握り締める。
瞬間、ターレスの頭の中に彼が知らない光景が映し出されて行く。
山吹色の道着を着た少年が、一方的に自分達の闘ったヘラーの戦士達を葬り去っている光景。
ーー お父さんが助けてくれた。僕に甘ったれるなって。地球を護れって言ってた!! ーー
超サイヤ人2となった少年は、鋭い瞳でボージャックを睨みつけている。
ザンギャを目隠しにして、不意打ちを仕掛けたボージャックは一方的に追い詰められている。
ーー この、俺が! 貴様のような、ガキに!! ーー
そしてボージャックの最期の時。
ーー そしてお前達を絶対に許すなと言っていた!! ーー
青白い光と深緑の光がぶつかり合う中、二つの影が交差してボージャックは断末魔の悲鳴を上げることなく消えて行く。
ターレスは笑う。
「…甘いな、小僧。少しはサイヤ人らしくなったのかとも思ったが、一撃で楽にしてやるとは」
立ち上がりながらボソリと呟くターレスに、ボージャックは笑う。
「どうした? 恐怖のあまりに独り言か?」
ターレスはニヤリと笑った後、マントを羽織ったバトルジャケットを脱ぎ捨て、上衣はノースリーブの黒のアンダーシャツのみとなる。
そして首にかけていた勾玉を握りしめた左拳から気を込める。
灰色の勾玉が銀色に輝き出した。
「? なんだ?」
「…死者の都よ、惑星サイヤの意志よ。カカロットの息子とは違う可能性を貴様に見せてやろう! だから、貴様の力を俺に寄越せ!! この俺をーー奴らと同じ域にまで引き上げろ!!」
天に向かって吠えつけるターレスの左手の中で、勾玉が灰色の光を放ちながらターレスの肉体を包み込んだ。
瞬間、ターレスの金色のオーラがより濃い黄金に変化する。
全身の筋肉が一回り膨張し、175センチ程度だった身長が190センチ近いモノになる。
逆立った髪はより鋭角になり黄金に、瞳は翡翠に黒の瞳孔が現れたものになった。
その変化は奇しくも孫悟空やベジータ達が見つけた、超サイヤ人・第二段階と言われたモノに酷似している。
フリーザが腕を組みながら、ターレスを見つめる。
「セルさん、どうやら成ったようですね」
これにセルが腕を組んだまま呆れたように、隣でブウが笑みを浮かべたまま告げる。
「情けない奴だ。確かにボージャックは一筋縄では行かんだろうが、ターレスの最大の技を放てば倒せん敵ではないだろうに」
「あの真紅の光線か。だが、必ず当てられるという保証がない。安全に勝利を収めるならば、真・超サイヤ人という選択も、そう悪くはあるまい」
「調子に乗って遊んだ挙句、時間切れにならないことを祈りましょうか」
セルとブウに向かってフリーザは淡々と告げる。
「「……それは論外だ」」
その状況を想像できたためか、セルもブウも呆れたような表情になって告げた。
仲良さげな三体の異形のことなど知る由もなく、真・超サイヤ人になったターレスを見てボージャックは笑う。
「ふん。多少筋肉が膨張して体がでかくなったところで、この俺には勝てんぞ!!」
言うと同時に強烈な踏み込みからの右ストレートだが、鈍い音が響くと同時ターレスの左掌がボージャックの拳を掴み止めている。
「…ククク。馬鹿め、今の俺に敵うと思うか?」
完全に嘲笑して笑うターレスにボージャックが目を見開く。
強烈な拳がボージャックのボディに突き刺さった。
「ぐぅおおおお!?」
前のめりになるボージャックの顎を右足で蹴り上げて上空に吹き飛ばし、更に黄金の軌跡を描きながら空を駆けてボージャックの背後に回ると、右の肘を背中に叩きつけた。
鈍い音と共に地面にクレーターを作りながら前のめりに倒れるボージャックを見下ろして、ターレスは腕を組んで笑う。
「お前のパワーはその程度か? もう少し俺を楽しませてみろ!!」
むくりと起き上がり緑色のオーラを纏ったボージャックはターレスを睨み上げて叫んだ。
「おのれぇええええ! この、ガキがぁあああ!!」
強烈なスピードで突っ込みながら拳と蹴りを繰り出すボージャックをターレスは見事に紙一重で捌いていく。
「なんだ、コイツ!? パワーアップだけならまだしも、さっきまでと動きそのものが違う!!」
思わず目を見開くボージャックにターレスはニヤリと笑う。
「…無駄だ。俺は貴様の気を感じ取り、紙一重で攻撃を避けることができるのだ…! その程度の動きでは、今の俺の相手にはなれないぜ」
ボージャックは知らないが、今のターレスには惑星サイヤの記憶とサイヤ人達の可能性の記憶が肉体に再現されている。
地球の戦士達の得意とする気を読むという闘い方も、今のターレスには朝飯前だ。
強烈な右ストレートを片手で止めると、ターレスは右の拳でボージャックの顎を打ち貫いた。
「がはぁ!?」
後方にのけ反るボージャックを緑色の光を纏った左手で薙ぎ払う。
惑星の意思がターレスに見せたのは、戦車の群れを薙ぎ払ったセルの一撃。
強烈な光の奔流が起こり、ボージャックの前方を薙ぎ払いながら吹き飛ばしていく。
「アレは私の技か。惑星の意思め」
セルが静かに目を細めて呟く。
更に吹き飛ばされたボージャックに向けてターレスは右手の人差し指を立てた。
コレにフリーザがニヤリとしながら呟く。
「おや、今度は私の技ですね」
赤い極細の光線がパッと宙を疾り、宙で何とか制止したボージャックの目の前に赤い光が数発迫っている。
「ぬぉ!?」
直撃し大爆発を起こす。
煙の中からボージャックはよろめきながら現れ、額に血管が浮き出ている。
「お、の、れぇええええ!!」
血眼になって怒りを露わにするボージャックに、ターレスは邪悪な笑みを浮かべている。
「ハハハハ! いいぞ、もっと怒れ! 憎め!! 貴様の怨みが、この俺の力を高める!! 俺が取り込んだ惑星の意思の力をなぁ!!」
ボージャックの怒りと怨嗟の声に応えるように、ターレスの気が無限に上昇していく。
その気は、人間のそれとは思えない程に邪悪なものだった。
「時間制限どころの騒ぎではないな。ターレスの奴め、下手をすれば力に取り込まれるぞ」
セルが気付いて呟くと、フリーザが勢いよく振り返る。
「…何ですって? まさか、自我を保つこともできないって言うんですか?」
「これは不味いな。そうなると、私たちも再び惑星の意思の支配下に置かれてしまう」
折角自由になったというのに、と呟くブウを見た後、フリーザは声を張り上げた。
「ターレスさん! いつまで遊んでるんです!! さっさと決めてしまいなさい!!」
「一応、忠告しておこう。今のままでは、力に取り込まれるぞ。ターレスよ」
セルも言葉を続けるが、フリーザに比べて消極的だった。
「どうしたんです、セルさん! もっと声を張り上げないと昂奮しているターレスさんには聞こえませんよ!!」
「フリーザよ。調子に乗ったサイヤ人を言葉で止めるいい方法を知っているか? 私には分からんのだが」
「……はっ!!」
目を見開いて気付いたフリーザにセルが静かに頷いた後、ブウを見る。
ブウの方はニヤリと笑った後で肩を竦め、言った。
「まあ、ターレスを信じてやろうじゃないか? いざとなれば、先に私たちがボージャックを殺せばいい」
「私は、お前ほど楽観できんな…」
三体の異形がそんな会話をしている中、ザンギャは自分や仲間を圧倒的な力と恐怖によって支配してきた男。
ボージャックが一方的に叩きのめされている姿を見て呆然としている。
「…強い。なんなの、あのサイヤ人の強さは」
必死になって拳を突き出そうとするボージャックに向かって、ターレスは両手を突き出した状態で強大な気弾を創り出し、後方へ吹き飛ばして爆発させる。
これにブウが笑った。
「デブの魔人ブウの技か。中々、他人の可能性から技を取り出すのが巧くなったじゃないか」
後方に吹き飛ばされたボージャックの背後に周り、ターレスは更に拳を顔面に叩きつける。
「ぐおぉおお!?」
血まみれになりながら、悲鳴を上げるボージャックの全身を左右の拳で徹底的になぶり尽くす。
悲鳴を上げ、顔の形が変わろうともターレスは一切の手加減をしない。
ボージャックの血を吸い尽くそうとするかのように拳を叩きつけていく。
ターレスの気がどんどんと上昇していく。
動きが攻撃を繰り出すごとに洗練され、他人の技と技を組み立て連携させるのが上達していく。
破壊をすればするほどに。
相手を攻撃すればするほどに急激に、無限に。
「ククク、ハハハハハ!! 気が、どんどんと高まっていくぞ!!」
一際、強烈な拳が仰向けに倒れ伏しているボージャックの腹に叩き込まれ、バウンドする肉体を後ろ回し蹴りで吹き飛ばす。
「ぐ、あ……!」
もはや、ボージャックは虫の息だった。
その目の前にターレスは立ち、首を右手で掴んで持ち上げる。
「どうした? この俺を満足させるには、まだ足りんぞ! まだまだ、これからだろう?」
その翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳は、狂気に染まっている。
殺戮と破壊を望む超サイヤ人の力と知的生命体の怨念を栄養とする惑星の意思。
二つの強大な力にターレスの理性が食われつつある。
ここに至ってボージャックは、ようやく理解した。
自分が相手をしているのは、ただの人間ではない。
これはーーもっと、とんでもない何か、だ。
「な、何者なんだ、貴様…!!」
ボロボロの半開きの瞼を必死に開いて問いかけると、ターレスは狂気に染まった翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳と笑みで覗き見てくる。
「俺か? 俺の名はターレス。いずれ、この力で全宇宙を跪かせるものだ…!!」
そのまま首を掴んでいる右手の気を高めていく。
「いや、違うな…! 俺はこの力で。この世界の全てを破壊しつくしてやる!! ハハハハハハッ!!」
瞳が徐々に色を失くし、消えて行く。
白目になりつつある。
これにセル、フリーザ、ブウが目を見開いた。
「おい、本格的に変化が始まっているぞ…! 時間制限ありの力の制御を課題としていたのに、まさか暴走を始めるとは。注文の多い男だ」
「このままだと、別の存在に成り果てると? 厄介ですね。敵味方の区別なく暴走を始めた場合は、流石の私達でも手を焼くでしょう」
「奴の理性を呼び戻してやるしかないな。もっとも、痛みを感じない真・超サイヤ人の状態では、ヤツを強くするだけかもしれんが」
ターレスが真・超サイヤ人になったことで、ようやく100%の力を解放できるというのに、状況が一つも良くならない。
その事実に、フリーザとセルはいい加減ウンザリ気味であった。
唯一、魔人ブウだけは予想のつかないこの状況を楽しんでいるフシがある。
セルが青いスパークを散らす金色のオーラを。
ブウが強烈な薄紅色のオーラを。
そして、フリーザは身体の色を金色に輝かせながら灼熱と金色の混ざったオーラを纏う。
パーフェクトセル。
アルティメットブウ。
ゴールデンフリーザのフルパワーである。
「…な、なんなのよ!? こいつら!!」
自分の理解が及ばないレベルでパワーを引き上げた三体に、ザンギャは呆然とする。
その強大な三つの力に引き寄せられるように、瞳から色が無くなったターレスがボージャックを捨て、フリーザ達に向いた。
コレにフリーザは冷静に呟く。
「…どうやら今のターレスさんは、より強い力に引き寄せられるみたいですね」
「…面白い。同じ真・超サイヤ人のリューベに比べてどれほどのモノか。見てやろう」
「フフフ、来るぞ。フリーザ、セル」
三体の異形が構えを取ると同時、ターレスが襲いかかってきた。
「貴様ら、この俺に逆らうつもりか? ならば、死ね!」
強烈な右ストレートをセルが左腕で受け止める。
「ターレスよ。貴様の真・超サイヤ人。見極めてやろう!!」
セルは自身の力を完全に引き出して闘い始めた。
互いに強烈な打撃を交換し合う。
セルの長い手足から繰り出される切れ味鋭いラッシュに対抗するのは、筋肉が膨張したターレスの重く速い攻撃だ。
セルは真っ向からは受けずに捌くことで、苛烈なターレスの攻撃を凌いでいる。
フリーザが訝しげにセルを見据えた。
「セルさんともあろう人が、フルパワーで真・超サイヤ人に挑むとは。あの力は相手に合わせてパワーが上がるのでは?」
「…フリーザよ、忘れているのか? ターレスは私達を召喚した際に真・超サイヤ人になり、金色のお前と闘って勝ったではないか。その時点で奴のマックスパワーはお前の金色に匹敵するモノになっている」
ブウの説明にフリーザは一瞬固まった後、気を取り直したように告げる。
「……そうでしたね。しかし、あの時はターレスさんは、力を使いこなしていた。何故、今になって力に取り込まれるようなことに?」
「推測だが、ターレスが手に入れた勾玉は惑星サイヤの意思が弱り切っていた。その状態だったから、ターレスは真・超サイヤ人にのみ力を使うことができた。だが、時間が開いてターレスが惑星の意思の能力を使いこなせるようになってきたように。惑星の意思もターレスの肉体に順応し始めた」
「…真・超サイヤ人の力と惑星サイヤの力が体内で荒れ狂い、暴走したと。やれやれですね」
会話する二人の前にセルが弾き飛ばされて、空中で静止する。
「なるほど。体術など、からっきしだったというのに大した進歩だ。コレが惑星サイヤの可能性か。ターレスが本来できぬ動きや技を使うことができる」
淡々と告げるセルにフリーザとブウが並び立つ。
「…ふん。どう違うのか、見てやるとしますか」
「ああ。上手くすれば、今後の方針にもなる」
二人に向かってセルは告げた。
「では、行くぞ! フリーザにブウ!!」
セルの合図にフリーザが正面から。
左右からセルとブウが攻め込む。
ターレスは最小限の動きで攻撃を避けながら、拳を返して行く。
フリーザと真っ向から殴り合いしながら、後方の移動するセルとブウの動きも把握しているのだ。
セルとブウがタイミングを合わせたように二本の指を揃えて立て、額に当てて気を高める。
「「魔貫光殺砲!!」」
強烈な螺旋状の魔力を孕んだ光線が二人から放たれる。
フリーザが見事なタイミングでターレスから離れ、一瞬後にターレスの背中に直撃する二本の光線。
爆発し煙が発生する。
「…当たればダメージはともかく、動きは止められるはずなのだが」
「残念ながら躱されたか、奴は技の特性も把握しているようだな」
淡々と告げる二人の前にターレスは高速移動で現れる。
二つの光が爆発する一瞬で、彼は脱出していた。
超高速で攻め込んでくる真・超サイヤ人に対し、セルとブウは同時に構えて迎え撃つ。
黄金、緑金、薄紅の三つの光の筋が宇宙の闇の中、猛スピードで駆け回る。
派手な炸裂音が辺りに響き、衝撃で小隕石を砕きながらも止まない三つの光。
戦闘力でいくら上を行かれようとも、セルとブウには歴戦の戦士達の細胞や記憶がある。
戦闘力で圧倒的に劣り、一騎打ちで不利でも二人いれば一方的に負けることはない。
「フフフ、中々スリリングな戦いだ…!」
「やるじゃないか、セル! 私の動きについて来れるとはな!」
「私を甘く見ないことだ、ブウ! 貴様とて、このまま負けるつもりはあるまい?」
「まったくだ。こんな力に振り回されるだけの存在に負けるなど、お互い許せんな!!」
追い詰められながらも余裕の笑みを絶やさない二人の異形。
完璧と究極を自称する彼らは、正に誇り高い戦士だった。
サイヤ人との違いは、一騎打ちで勝てないと悟ればコンビを組むことである。
誇りや意地を優先しはしない。
それよりも勝利にこだわるのが、セルでありブウであった。
「小賢しいクズどもが。そんな姑息な手段で、この俺を倒せると思うのか?」
もはや輪郭線が消えれば完全な白目になってしまうターレス。
そんな彼を前に、セルとブウは構える。
「笑わせるな。貴様のような自分の力も使いこなせない三流に、このセルが負けるものか」
「同じくだ。ピッコロやゴテンクス、孫悟飯と言った戦士を取り込んだ私が、お前に劣るはずがあるまい!!」
不遜にして不敵な二人の笑みに向かってターレスの姿をした何かは笑いかける。
「く、ククク。俺が力に振り回されているだと? 違う、この肉体にようやく馴染み始めたというところだ」
フリーザが目を細めながら問いかける。
「馴染み始めた? どうやら、惑星の意思が自我を持てるほどに回復したようですねぇ」
「そうだ。このサイヤ人に一時は支配されたが、我は蘇る。不滅にして絶対の力なりーー!」
徐々にターレスの輪郭線を失った白目の中に紅の光の球がまるで瞳の様に輝き始める。
「お前達を打ち倒して再び取り込み、我はこの宇宙の全てを取り込もうぞ…!!」
「あの惑星から解き放たれたことで、他の星や生命を狙うようになったか。随分と悪食なことですね」
灼金のオーラを身に纏い、金色のフリーザは構える。
その左右に緑金のオーラを纏ったセルと薄紅のオーラを纏ったブウが並び立った。
「一撃で決めますよ! 準備はよろしいですね、お二人とも!!」
「任せてもらおう。この一撃であの無礼者を沈めてやる」
「さあ、始めようか。惑星ーーいや、怨念の集合体よ!!」
言うと同時、フリーザは両手を頭上に掲げて真紅に輝く光の球を作り上げる。
セルとブウは同時に腰だめに両手をたわめて青い光の球を作り上げていく。
「こいつで終わりだよ…!!」
「星系ごと消してやろう…!!」
「さあ、跡形もなく消えるがいい!!」
三人の宣言を受けて、ターレスの肉体を乗っ取った意思も笑みを浮かべて頭上に両手を掲げる。
同時、まるでゲートのように真紅の光の輪が三人とターレスの間に宙に浮かんで二つ現れる。
意思は、そのまま掲げた灰色の光を両手を前方に突き出して放ち、光線が一枚目の光の輪を撃ち抜いて色が真紅に、二枚目を撃ち抜いて倍の大きさとなってフリーザ達に迫る。
「きぃえぇええええ!!」
「「かめはめ波ぁあ!!」」
迫りくる強大な光に向かい、三人の必殺技が放たれた。
強大な真紅の雷光に真っ向から赤い光と二つの青い光がぶつかる。
身動きのできないボージャックをそのままに、ザンギャは呆然と強大な力のぶつかり合いを見ていた。
歯を食いしばりながらフリーザが叫ぶ。
「ターレスさん! いい加減に戻って来なさい!! でなければ、このまま消しますよ!!」
セルが脂汗を掻きながらも、笑みを浮かべて告げる。
「フリーザの言うとおりだ。このまま惑星の意思に乗っ取られるような出来損ないのサイヤ人に用はない」
ブウが真剣な表情になって告げる。
「全てを跪かせるのだろう? そんな面白そうな話がこんな所で終わりか、ターレスよ!!」
雷光は無慈悲に三つの光を押し返していく。
無限に力を上昇させる相手に気功波で打ち勝つには、最初の一瞬が勝負だった。
しかし、それは失敗に終わる。
フリーザ、セル、ブウの三人をしても真・超サイヤ人となったターレスの力を押し切ることはできなかった。
このままでは、いずれ押し切られる。
後はターレスが自我を取り戻すことだけが、この場の勝機だった。
「肉弾戦も気功波の押し合いも、つくづく厄介な存在ですね!!」
「アレを使いこなせれば、確かに最強だろうな。無限に上昇する戦闘力と、夢幻(多次元世界)の可能性を得る肉体、か」
「だが、無理だ。現状ターレスは、真・超サイヤ人の破壊衝動を抑えるだけではない。怨念の集合体も制御しなければならんのだからな」
拳を合わせてみて分かったが、今のターレスが乗り越えなければならないのは真・超サイヤ人という力だけではない。
惑星サイヤを支配してきた、数億年の怨念の集合体もコントロールしなければならないのだ。
「無駄だ…! 再び我に取り込まれよ! フリーザ、セル、ブウよ!! 汝らの力をもって我は更なる力を得る」
この言葉にフリーザが眦を見開いて血走った目を向け、血管の浮き出た表情で告げる。
「貴様…!! その程度で、孫悟空に勝てると思うのか!!?」
「無駄だと言うのが、まだ…っ!? ……ソン、ゴクウ? カカロット?」
目を見開き、何かをつぶやくターレスにフリーザが更に叫ぶ。
「俺を追い詰め、このフリーザに宇宙一と認めさせたサイヤ人だ!! そんな死にぞこないの怨念どもに支配される体たらくで、アイツを跪かせるだと!? ふざけるのもいい加減にしろぉおおおお!!」
強大な気がフリーザから更に放たれる。
押し切られようとしていた雷光を踏み留まらせる。
「気付いたか、セル?」
「ああ。フリーザよ、そのまま挑発してくれ。私とブウは、気功波を押し返すことに専念させてもらう」
「頼んだぞ、フリーザ。勝てばチョコレートパフェをご馳走してやろう」
二つの青い光は、強大な輝きを持って雷光を押し返していく。
押し返され始めたことよりも、惑星の意思は肉体が己の思い通りに動かないことに焦りを覚え始めていた。
「お、おのれ…! このまま、肉体を奪われるくらいならば…!!」
何かをしようとする惑星の意思の腕が止まる。
「ククク、人の肉体(からだ)で随分と暴れてくれたじゃねえか? まだ生きていたとはなぁ、怨霊よ」
ターレスの口からターレスの言葉が紡がれる。
その事実にフリーザが目を見開いた。
「ようやく戻って来たか。さあ、さっさと潰してしまいなさい!!」
「…分かっている。怨霊よ、貴様の可能性を取り込む力と真・超サイヤ人の力があれば、俺は無敵。その力の全てをこの俺に捧げてもらう!!」
左手で灰色の勾玉を掴み、ターレスは翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳を取り戻した。
同時、黄金の気柱が螺旋を描いて天に突き立ち、押し合っていた雷光と三つの光を消し飛ばす。
真・超サイヤ人となった己の肉体を見下ろし、ターレスは笑った。
「クク、ついに俺のモノとなったか。真・超サイヤ人よ!!」
無限に上昇していた気が安定したのだ。
この事実にターレスは高笑いをしていた。
ついに孫悟空やターニッブと同じレベルに至ったのだと、心から喜んだ。
そのターレスの目の前に、ターレスの立っていた影から黒い霧が現れて一人の肉体を創り出す。
「…? なんだ、貴様? 死にぞこないの怨霊が、この俺の無限の気をかすめ取って肉体を作ったか。無様なもんだな」
「これはこれは、サイヤ人。この肉体はお前達の王子のものだぞ?」
「…なんだと? ベジータ王子?」
怨霊が象ったのは、孫悟空のライバルであるベジータの可能性。
数多に枝分かれした未来の時空に存在する、ベジータの肉体を乗っ取った存在。
それを模倣して怨霊は作り上げた。
体格は今のターレスと同じく190センチに近い大柄になり、肌は浅黒く、白く輝く銀の髪はリーゼントになっている。
目元は超サイヤ人3のように眉毛を失い、眼窩上が隆起している。
服装は黒のボディスーツに独特な手袋とブーツを履いており、ターレスが一目でベジータと見抜けなかったのも仕方ない。
「…この肉体はな、俺がお前達サイヤ人を殺すことを目的に取り込んだ未来の時空のベジータのものだ。サイヤ人に殺された怨念ならば。過去、現在、未来の中でも取り分けて、俺が強かったようだ。惑星の意思ーー怨霊共はお前よりも俺に力を与えた。俺に全宇宙ツフル人計画を行わせるためにな」
「なんだと? 何を訳の分からんことを言ってやがる? ツフル人だと?」
「我が名は、ベビー! 貴様らサイヤ人に滅ぼされたツフルの王!! 我らツフルの悲願、サイヤ人の絶滅とツフル人の繁栄の為にも、いずれ貴様らには死んでもらう!!」
強烈な紫の気を纏って叫ぶベビーと名乗る男。
だがターレスは冷酷な笑みを口元に浮かべた。
「ほう、大した戦闘力だ。だが、今の俺に敵うと思うか?」
「今は闘わん。怨霊の力の遣い方を学ばねばならんからな。それにーー!」
言うと同時、ベビーの周囲に漆黒の渦が巻いて三人の肉体を作り上げた。
これにフリーザとセルが反応する。
「! あの紫の髪の男はーー! 私を地球で倒した超サイヤ人!!」
「トランクス、か? だが、私の知っているトランクスとは何かが違う。それにーー」
紫の髪をした青年ーートランクスの隣にいる、スーツを着た逆立った黒髪の青年を見て、ブウが目を見開く。
「孫悟飯、か? だが、何か違う?」
「…どういうことだ?」
ブウとセルの言葉に邪悪な笑みを浮かべる、青いスカーフを首に付けたトランクスと、緑色のスーツを着た悟飯。
そして、髪を尖らせて一方向へ向けた頭にしている、白い長袖シャツを着た悟飯によく似た黒髪の青年。
「はじめましてだな。フリーザにセル。そして久し振りだ、魔人ブウ。俺の名は孫悟天。ベビー様の下でツフル人として生まれ変わったのさ」
これにブウが目を見開く。
「本当に未来とやらの存在なのか、貴様ら…!!」
セルは淡々と告げる。
「あり得るだろうな。かく言う私も未来から来た存在だからね」
惑星の意思の力を得て本来の次元とは違う世界に復元されたベビーと、その可能性から生み出された別時空のトランクス、孫悟飯、孫悟天の三人だった。
真・超サイヤ人となったターレスは静かに目を細める。
(このベビーとか抜かす野郎。金色のフリーザよりも上、か。コイツの力にベジータ王子の力が上乗せされているのか?)
今のターレスには、一目で相手のレベルがある程度理解できる。
それを感じて、ベビーを睨みつけた。
「いずれ、この世界の宇宙をツフル人に変えてやる。次に会う時を楽しみにしているがいい、お前の中の惑星の力を取り込めば、より多くの可能性を俺は引き出せるようになるのだからな!!」
「…だとすれば、俺がこの場で貴様を倒せば。その可能性を独り占めできるわけだな?」
冷酷な笑みを浮かべて構えを取るターレスに、ベビーは笑いかける。
「やめておけ。今の貴様は、ようやく真・超サイヤ人の入口に立ったのだ。完全にその力を使いこなせないのならば、下手に闘って暴走されても敵わん」
そう言って、ベビーは三人のツフル人と化した僕を連れて、光と共に消えて行く。
「尻尾を巻いて逃げるんですか? トランクスさん」
「ベビー様のご意向に従うだけだ。いずれ殺してやるさ、フリーザ」
フリーザが紫の髪の青年に問いかけると、彼は本物のトランクスが言うとは思えないほどに冷酷な言葉を返してきた。
隣ではセルが、緑のジャケットにベージュのズボンを履いた孫悟飯に語りかける。
「孫悟飯よ。可能性とは言え、その程度の存在に飼い慣らされたことがあると言うのか?」
「黙れ虫けら。ベビー様こそが、この宇宙を統べるに相応しいのだ」
両腕を組みながら問いかけるセルに、悟飯は冷淡な声と表情で返す。
「孫悟天、か。随分と複雑な心境だ」
「そうかい? 俺は単純だぜ。俺を子どものころに吸収してくれたお前を、ぶちのめせる日が来たんだからな。せいぜい楽しみにしてろよ」
複雑そうな表情の魔人ブウに向かって孫悟天は、凶暴で残忍な笑みを浮かべている。
そんな彼らを満足そうに見渡し、ツフル王・ベビーは告げた。
「いずれ、決着を付けてやろう。ではな、サイヤ人」
光の粒子を残して、ベビー達はその場を去っていった。
残されたターレスとフリーザ、セル、ブウは互いに顔を見合わせる。
「次々と、面倒な話だな」
気だるそうに告げるターレスに、金色から白色に戻りながらフリーザが言う。
「まあ、いいじゃありませんか。強くなれるのですからね」
「ベビーに未来の戦士達、か。面白いものだ」
「フフフ、精々。楽しませてもらおう」
セルとブウは楽し気に互いに笑い合っている。
そんな彼らを呆れた表情で見た後、ターレスは真・超サイヤ人を解除した。
元の黒髪に褐色の肌のサイヤ人に戻り、筋肉が膨れ上がって大柄になっていた体格も元に戻る。
そんな自分の身体を見下ろし、溜め息を一つ吐く。
「全宇宙を跪かせるのも、中々大変そうじゃないか」
ニヤリと笑うターレスは、静かに自分の乗ってきた宇宙船を見て告げる。
「帰るぞ、フリーザ。セル、ブウ!」
その言葉にフリーザは肩を竦め、セルとブウはニヤリと笑いながら頷いてきた。
ターレスは彼らを見返した後、脱ぎ捨てたバトルジャケットを再び身につけ、漆黒のマントを翻す。
そのまま上部ハッチの開いた宇宙船に乗り込もうとして、つんのめる。
「!? なんだ?」
振り返れば、女戦士ザンギャがマントの裾を掴んでいた。
「なんだ、じゃないわよ。口説いた女をほったらかしにして、どこに行こうって言うのよ?」
「…ああ。そうだったな。それで、お前は俺と共に来るのか? ザンギャよ」
今、思い出したと言わんばかりに、ターレスはザンギャを見下ろして問いかけた。
すると彼女は、妖艶な笑みを浮かべて告げる。
「ええ、仲間になるわーー。あなた、とっても強いモノ。強い男は、好きよ」
「…フン。当たり前だ、俺の名はターレス! いずれ、全宇宙を跪かせる男だ!!」
こうして、ターレスは真・超サイヤ人の力を自分のものにした。
しかし、同時に怨霊の力をかすめ取った強敵。
他の力を持った存在も彼の前に立ちはだかることは明白である。
ターレスの旅は、まだ始まったばかりであった。
次回からは、未来編に繋がる孫悟飯のエピソードです。
お楽しみ!(^^)!