ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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当時は思い付きで書いてみたこの闘いが、まさかあんだけ長くなるザマス編に繋がるとは思ってませんでした(>_<)

懐かしみながら楽しみください。




ザマス編
激突! 孫悟飯 対 ターニッブ


 

 白い道着に黒帯を腰で締め、赤いグローブを着け、黒いブーツを履いた、孫悟空と同じ顔を持つサイヤ人。

 

 ターニッブは、予てよりの悟空からの誘いを果たすために数日前、地球へと死者の都と呼ばれる亜空間を通って現れた。

 

 今、彼は地球最大の都市ーー北の都の次に大きいとされる街に来ていた。

 

 行き交う人々は、サイヤ人に似ているが尻尾はなく。

 

 黒髪黒目だけではない。

 

 様々な髪の色や、獣と人のハーフのような人間も大勢いる。

 

「ここが、悟空の言っていたサタンシティか…。随分と大きな街だな」

 

 数日前に悟空の所を訊ねたターニッブは、彼とその父・バーダックと拳を交えた後。

 

 悟空からの依頼を受けてサタンシティに来ていたのだった。

 

「ターニッブさん! お兄ちゃんの家は、こっちだよ!!」

 

 ターニッブを元気よく案内するのは、彼と同じ顔をした山吹色の道着と青い長そでのインナーを着た少年。

 

 孫悟天だった。

 

「すまないな、悟天。学校はいいのか?」

 

「今日は休みなんだ! お父さんとお祖父ちゃんは、畑仕事しなくちゃいけないから! 僕が案内するね!!」

 

「助かるよ。ありがとう」

 

 微笑みながら告げるターニッブに、嬉しそうに悟天も笑う。

 

 自分の父親や祖父にそっくりな青年は、強さも優しさも彼らに匹敵している。

 

 悟空よりはバーダックに近い目つきだが、眉間にしわを寄せることはほとんどなく。

 

 穏やかで爽やかな笑みを浮かべてくれる。

 

 そんなターニッブを孫悟天少年が気に入らないわけがなかった。

 

 ターニッブを連れ、悟天はサタンシティの立派な豪邸の前に立つ。

 

「此処が、悟空の倅の住む家か。随分と立派なものだ」

 

「Mr.サタンって言う、兄ちゃんのお嫁さんのお父さんがお金持ちなんだ!」

 

「なるほど」

 

 ハッキリと子ども特有の遠慮ない言葉に苦笑しながら、ターニッブは家の前に立つ。

 

 同時に立派な玄関戸から赤ん坊を抱いた黒髪の女性が出てきた。

 

「? あら、悟天ちゃん! どうしたの? それにお義父さん?」

 

「ビーデルお義姉ちゃん、ちょうどよかった! この人は、ターニッブさんって言うんだ! お父さんの親友でサイヤ人なんだよ!!」

 

「そ、そうなの? サイヤ人って同じ顔をした人が何人もいるのね」

 

 困惑したような表情でビーデルと呼ばれた若い母親はターニッブを見上げる。

 

 ターニッブも苦笑を返しながら一礼した。

 

 彼女の腕の中の赤ん坊、パンはその黒い瞳をジッとターニッブに見据えている。

 

「じーじ?」

 

 首を傾げるパンにビーデルがあやしながら応える。

 

「パンちゃん? この人は、悟空お祖父ちゃんのお友達なんですって」

 

「だ~?」

 

 首を傾げながらも手をターニッブに出してくるパン。

 

 それをあやしながら、ビーデルは悟天とターニッブに向き直った。

 

「えっと。それで、ウチに何か?」

 

「…悟空から悟飯という男に会ってほしいと言われたんだ。会わせてもらえないか?」

 

「悟飯君に? それは構いませんけれど、ごめんなさい。悟飯君は、今日は学会でーー」

 

 本当に申し訳なさそうに頭を下げるビーデルにターニッブは首を横に振った。

 

「その学会というのは、どこで行われているんだ?」

 

「え? オレンジスターカリッジですけど」

 

「……ありがとう」

 

 それだけを告げ、ターニッブはビーデルに背を向ける。

 

 これに悟天も得心したという表情で笑み、ビーデルとパンに手を振った。

 

「ごめんね、二人とも! またね!!」

 

 去っていった同じ顔をした親子のような二人のサイヤ人に、ビーデルはポカンとする。

 

「なんだったんだろね、パンちゃん?」

 

「だ~!!」

 

 問いかけるビーデルを見ずにパンは去っていったターニッブと悟天の方に手を伸ばしていた。

 

ーーーー

 

 オレンジスターカリッジ正門前。

 

 数々の生徒や講師達が出入りする中、悟天とターニッブは門の前で立った。 

 

「此処がオレンジスター大学だよ、ターニッブさん!」

 

「ああ、ありがとう。それで君の兄さんっていうのは?」

 

 ターニッブの問いかけに悟天は顔を左右に向けたあと、微笑んだ。

 

「あ! 兄ちゃん!!」

 

「? 悟天じゃないか! どうして大学に? それにーー父さん? いや、違う。お祖父さんでもない。だけど、この気はーー!」

 

 カバンを片手にこちらに歩いてくる眼鏡をかけた青年は、ターニッブを見てキョトンとする。

 

「お前が、孫悟飯か?」

 

「…え? ええ」

 

 ターニッブは静かに左肩に下げていた白いザックを手放し、地面に立てると拳を握った。

 

「……構えろ」

 

「!? 何を!!」

 

 驚愕に目を見開く悟飯にターニッブは静かに告げる。

 

「俺はサイヤ人、ターニッブ。悟空が認める戦士、孫悟飯よ。俺はーー強い奴に会いに来た」

 

「サイヤ人!?」

 

 だが、悟飯の知るサイヤ人とは決定的に違う。

 

 淡々とした声は驕りや昂ぶりなどみじんもない。

 

 ただ、純粋なまでの闘志を瞳と言葉に載せている。

 

 似ているのは顔だけではない、この男は父にーー。

 

 悪い人間ではないと悟り、同時に放たれた言葉に悟飯は困ったような表情になって告げた。

 

「すみません。僕は、闘うのはーー! それに、こんなところでは。生徒達も一般の人も居ますから」

 

 周囲を見回しながらの言葉に、静かにターニッブは構えを取ったまま告げる。

 

「……真っ直ぐ前を見ろ。敵から目を逸らしてちゃ、勝てないぞ!!」

 

 同時、一瞬で距離をゼロにする圧倒的な踏み込み。

 

 目の前に現れた男に悟飯の目が見開かれる。

 

 右の正拳突きが放たれる。

 

 鈍い音と凄まじい衝撃波が生じると共に、悟飯の左手に拳が突き立っている。

 

「ーーくっ!」

 

 その一撃の重さに歯を食いしばり、悟飯は口を開く。

 

「話を聞いてください! 僕はーー!!」

 

 ターニッブの鋭い左回し蹴りを避け、思わず鞄をその場に投げ捨てる。

 

 右の上段回し蹴りを左腕で受け止める。

 

 痺れる腕に悟飯は目を鋭く細めた。

 

 目を合わせると、ターニッブが口を開く。

 

「……眼鏡は外した方が良い」

 

「そういうことを気にしてくれるんなら、僕の話を聞いてもらえませんか?」

 

 声を低くしながら告げる悟飯にターニッブは淡々と告げる。

 

「口ではなく拳で語れ。お前もサイヤ人ならば!!」

 

 左腕で受け止めていた蹴りを跳ね返し、悟飯は眼鏡をはずすとこちらを見ていた悟天に手渡す。

 

 そのまま弟に上着も脱いで手渡しながら、悟飯はターニッブに告げた。

 

「…その身勝手さ。ホントにサイヤ人みたいですね」

 

 これにターニッブは静かに気合を入れて応える。

 

「そうだ。全力で、かかってこい!!」

 

 その言葉に悟飯は何故か、己の心が昂るのを感じた。

 

「…分かりました。アンタの言うとおり、僕ーーいや、俺の全力を見せますよ」

 

 言うと同時、強烈な白い気が青白い雷を纏って悟飯の全身から立ち上る。

 

 気の質が変わり、甘さが消えた鋭い目付きの面立ちに変化する。

 

「……なるほど。悟空が言うわけだな」

 

 静かにターニッブは悟飯の力を見て頷いた。

 

 これに悟飯はニヤリと不敵に笑う。

 

「さあ、本気になってやったぞ? 降参するなら今の内だ…! 勝てんぜ、お前は!!」

 

 言うや否や、一気に距離を詰めて殴りかかる。

 

 悟飯の右ストレートを左に捌き、ターニッブは強烈な右の回し蹴りで咄嗟に腕を上げてガードした悟飯を吹き飛ばす。

 

 後方で見事に着地した悟飯に追い打ちをかけることなくターニッブは、淡々と告げた。

 

「…強くありたいのなら、まずは相手の強さを認めることだ。勝ちにこだわると大切なものを見失うぞ」

 

「聞いた風な口を!!」

 

 再び、悟飯が殴りかかる。

 

 先よりも強烈な右ストレートは、ターニッブの左手に掴み止められている。

 

 瞬間、青白い気がターニッブの全身から立ち上って爆発する。

 

「……なに!!」

 

 目を見開く悟飯。

 

 彼の目を真っ直ぐに見つめ、ターニッブは静かに告げる。

 

「負けることは怖くはない。諦めることが怖いんだ!!」

   

 軽々と打ち込みを受け止められた事実。

 

 そして、その真っ直ぐな黒瞳に悟飯は目を見開いた。

 

「あ、貴方は一体…!! 俺に何をさせようっていうんだ!?」

 

 その問いかけに静かにターニッブは口元を歪ませ、掴んでいた拳を離すと構えを取る。

 

「…拳で語れって言うのか」

 

 気を高めながら構えを取り問う悟飯に、ターニッブは静かに告げた。

 

「いくぞ。この拳、確かめてみろ!!」

 

 再び、踏み込むターニッブに悟飯も反応する。

 

 強烈な拳と拳が真っ向からぶつかり合い、衝撃波が発生する。

 

「なんだぁ!?」

 

「おい、アレ!」

 

「ウッソ、悟飯先生!?」

 

「か、かっこいい…!!」

 

 いつもとは違い、凛々しい表情の悟飯に生徒や同僚達の目が集まる。

 

 だが、当の悟飯はそれどころじゃない。

 

(強い! 俺の本気の攻撃が、さっきから無効化されている!! 人のいる前で全力を出せと言って来たのも、俺の攻撃を全て無効化する前提か!!)

 

 目を見開く悟飯にターニッブが問いかける。

 

「どうした悟飯。お前の力は、こんなものか!?」

 

「舐めんなよ。俺が父さんやピッコロさんから教わった拳を全て無効化できると思ってんのか?」

 

 ターニッブの挑発に更に気を高める悟飯。

 

 怒涛のラッシュが放たれる。

 

 悟空よりも更に苛烈な攻めは、悟飯の内面にある激しさを顕著に表している。

 

 ターニッブは変わらずに攻撃を捌いているが、明らかに打撃の音が変わっている。

 

「…凄い、兄ちゃんの本気の連撃を真っ向から受けて捌いてる!!」

 

 拳を握る悟天の隣に、静かに長身の緑の肌のマントを着た男が並び立った。

 

「! ピッコロさん!」

 

「悟飯の気を感じて来たが、あの顔。また孫悟空の親戚か?」

 

 悟飯に目を向けながら問うピッコロに、悟天が見上げながら告げる。

 

「ううん、確かに同じサイヤ人だけど。お父さんのお友達だって」

 

「友達、か。そいつが何故、悟飯と闘っているんだ?」

 

「お父さんが、ターニッブさんに頼んだんだよ。兄ちゃんと闘ってくれって」

 

 鍛えてくれ、ではなく闘えと言った。

 

 その言葉にピッコロは微かに目を細めて、ターニッブというサイヤ人を見つめる。

 

「孫悟空に似ているな。顔だけじゃない。あの振るう拳の質が似ているのか? いや、違う。悟空や悟飯のような激しさがない。なのにーー強い!!」

 

 ことごとく悟飯の攻めを捌くターニッブに、ピッコロは目を見開く。

 

 強烈な右ストレートを左手で脇に流し、流れるように繰り出される右の膝を右手で受ける。

 

「うぉりゃぁあああ!!」

 

 悟飯は強烈な咆哮を上げながら、左の軸足で地を蹴って跳び上がり、止められた右足を身体を回転させながら、後ろ回し蹴りにして繰り出す。

 

「兄ちゃん! 周りを巻き込んじゃうよ!!」

 

「…いや」

 

 余りのスピードとキレに悟天が叫ぶも、ピッコロは静かに目を細めて呟く。

 

 強烈な蹴りは、ターニッブの赤いグローブを着けた右拳骨に受け止められている。

 

 凄まじい炸裂音が響き、風が巻き上がるも。

 

 それだけだ。

 

 それ以上、周囲には影響がない。

 

「…悟天。ヤツは何者だ? あそこまで見事に悟飯の蹴りを受けられるとは…!!」

 

「僕もよくは知らないんだ。でも、お父さんが。めちゃくちゃ強くて、良いやつだって。僕も、そう思う!」

 

「……サイヤ人でありながら、こんな真っ当な強さを持ったヤツが居るとは!」

 

 悟空とは正反対の拳でありながら、似ている。

 

 ピッコロは、ジッと熱くなる心を抑えてターニッブを見据えた。

 

 悟飯と対峙するターニッブも、静かに目だけを移動してピッコロに視線を向ける。

 

「……!!」

 

 真っ直ぐな黒瞳が微かに見開かれ、ターニッブは不敵にピッコロに向けて笑った。

 

「…余所見してんなよ!!」

 

 言いながら、ターニッブに殴りかかる悟飯。

 

 強烈な左右のストレートをターニッブは左拳を固めて手首を上に弾いて捌き、右の正拳突きを放つ。

 

 その時、悟飯には目の前に一枚の木の葉が落ちて来ているのが見えた。

 

 その木の葉を挟むように拳は悟飯の胸に繰り出される。

 

「ガハッ!?」

 

 息を吐きながら、悟飯は両膝を地面につく。

 

 地面が顔に近づいた時、咄嗟に腕で支えて四つん這いになりダウンするのは拒否したが、見上げると。

 

 ターニッブの放った拳の上にまるで最初から、そうあるように木の葉が乗っている。

 

(? なんだ、この拳は? 肉体にダメージは、無いのに。力が入らない!! いや、効いてるのか!?)

 

 初めて食らった類の拳に悟飯は目を見開く。

 

 肉体に与える損壊は最小限に、しかし芯にダメージが刻まれる重い拳。

 

「…この、拳は。いったい!?」

 

 ゆっくりと一分ほど、呼吸を整えて立ち上がって問う悟飯に、ターニッブはグローブに乗った木の葉を静かに左手で掴み、道着の脇に入れながら語る。

 

「これが、お前の父親との修行で得た俺の必殺拳。風の拳だ、孫悟飯」

 

 そして清々しい笑みを浮かべて言う。

 

「…だが、流石だな。この拳を受けて、まだ立ち上がるのか」

 

 フラつきながらも足を踏ん張り、構えを取る悟飯にターニッブは微笑む。

 

 これに悟飯も笑う。

 

「…不思議な人だな、貴方は。貴方と闘うと、自分の中で今が限界だと思っていた以上の力が引き出されてる。はじめてだ。誰かともっと、闘ってみたいと思ったのは!!」

 

「その闘志、受けて立とう!!」

 

 更に構えるターニッブに悟飯は目を見開き、金色の気を纏う。

 

 黒髪と眉は金色に、黒い瞳は翡翠に変わった。

 

 そんな己を見下ろし、悟飯は呟く。

 

「…潜在能力を開放した状態に超サイヤ人を重ねがける。俺の潜在能力を全て引き出してるんだから、意味の無い変身だと思っていたが」

 

 超サイヤ人になった自分に平然と構えるターニッブを見て、静かに拳を握り締める。

 

「…貴方を見てると出来る気がした。自分の潜在能力の全てを引き出した上で、超サイヤ人の倍加の力を引き出すことが!!」

 

「見事だ。お前もまた、己の限界を一つ超えた」

 

 悟飯が先までとは明らかにレベルの違う気を纏っているのに、ターニッブは全く変わらない。

 

 いや、口元に清々しい笑みを浮かべて、告げてくる。

 

「限界を超えたその拳、確かめさせてくれ!!」

 

「…本当に不思議な人だ。サイヤ人で、それだけ強いのに奢りや油断が全くない。父さんやベジータさんとも違う。貴方の闘いへの想いは、純粋なんですね」

 

 グッと口を引き締め、悟飯はターニッブを睨み付ける。

 

「知りたくなった。貴方と闘うことで、自分がどれだけ強くなれるのかが!!」

 

 強烈な踏み込みと共に、悟飯が右の拳を繰り出す。

 

 ターニッブも真っ向から右の拳を返す。

 

 拳が互いの真ん中でぶつかり合い、金色の気と青白い気が、燃え上がって天を突く。

 

(やはり、超サイヤ人になっても押し切れない! この人の拳は、まるで大木みたいだ。いや、どれだけ打ち込んでも揺らがない、不動の山ーー!)

 

 華麗なフットワークで周囲を跳び回り、攻撃を繰り出すも真っ向から受け止められて捌かれている。

 

 だが、どれだけ鉄壁の守備を誇っていても、打ち抜けない壁はない。

 

「貴方の鉄壁の防御を打ち破ってみせる!!」

 

「……来い!!」

 

 悟飯の左上段回し蹴りが立て続けに放たれる中、軽々と右の拳で捌いていくターニッブ。

 

 三連続の回し蹴りを捌き抜いた後、腹に放たれる悟飯の右膝を左膝を曲げて受ける。

 

 懐に入った悟飯は強烈な左右の拳を次々と繰り出す。

 

 対するターニッブは左拳を固めて、左右に捌いていく。

 

 両者はその場から動かず、退がらずに激しい攻防を繰り広げていく。

 

「これだけのラッシュを受ければ、カウンターは取れない。貴方の風の拳は、打てないぞ!!」

 

 強烈な気を纏いながら咆哮を上げる悟飯に、ターニッブは静かに燃える黒目で見つめる。

 

「確かに大した連撃だ。だが、ダッシュのスピードや攻撃速度が僅かでも劣れば、風の拳の餌食だぞ」

 

「その前に俺の拳が、アンタを捉える!!!」

 

「そうか。ならばーー!!」

 

 瞬間だった。

 

 ターニッブは、ブロッキングに使っていた拳を下げ、まともに顔面で拳を受け止める。

 

「…なんだって!?」

 

 強烈な衝撃波が吹き抜け、それまで鉄壁を誇っていた防御を解いて顔面で拳を受けたことに、悟飯は目を見開いた。

 

 清々しい笑みを浮かべて、静かだった黒い目は激しく燃えていた。

 

「…いい拳だ」

 

 静かな声が聞こえた後、強烈な衝撃が悟飯の横頰を襲った。

 

「ぐあ!?」

 

 仰け反りながら前を見た。

 

 目の前に赤いグローブ。

 

 たたらを踏んで向き直れば、打って来いとターニッブがノーガードで仁王立ちしている。

 

 侮辱など感じない。

 

 嘲りもない。

 

 純粋な闘志がターニッブから放たれている。

 

 一種の神聖ささえ感じるほどに、ターニッブからは邪念や油断がない。

 

「一つ、教えてくれ。…父さんは、貴方に勝ったのか?」

 

「…ああ。孫悟空は、俺より遥か先を歩いている。だからこそ、俺も前に進めるんだ」

 

「……本当にそうか? 貴方や父さんを疑うつもりはないが、正直に言って。貴方と父さん、どっちが強いのか俺には分からない。貴方が父さんと、それほどに差があるとは思えない」

 

 ターニッブを真っ直ぐに見て、悟飯は問いかける。

 

「貴方の本気は、父さんとどっちが強い!?」

 

 激情を露わにした問いかけ。

 

 優しい兄の激しい一面に悟天は戸惑う。

 

 あの優しい兄が、まるで別人だと。

 

 ピッコロは静かに目を細めて思い出す。

 

 悟空がセルとの闘いで悟飯を選んだ時、何故仙豆をセルに与えたのか。

 

 簡単だ。

 

 悟飯は優しいからだ。

 

 傷付いた敵を前に、悟飯は本気にはなれない。

 

 だが、彼の心の内には悟空やベジータをも上回る激しい部分があったのだ。

 

 悟空は、それを知ったからセルとの決着を悟飯に任せたのだろう。

 

 今、その激しい本質を怒りに任せてではなく、悟飯はさらけ出している。

 

「…怒りを与えずに、あの優しい悟飯の本気を引き出すことができるとは。ターニッブ、何という男だ…!!」

 

 悟空をも凌ぐ激しい気を前にターニッブは微笑む。

 

「気になるか。だが、俺の答えは変わらない。お前の父や祖父は強かった。そしてーー!」

 

 拳を突き出し、真っ直ぐにターニッブは告げる。

 

「お前もまた、強い! 孫悟飯よ!!」

 

 ターニッブの叫びに、悟飯は構えを取りながら首を横に振る。

 

「…俺は、ダメです。フリーザって悪党が地球を襲って来た時。何もできずにやられました。ビーデルさんや、仲間を守るどころか、自分のことすらーー!!」

 

 歯を食いしばり、情けないと呟く悟飯にターニッブは淡々と返す。

 

「…だから、強くなることを諦めるのか?」

 

 目を見開く悟飯にターニッブは真っ直ぐな瞳で告げる。

 

「お前の目は、そんなに弱くはないと雄弁に語っているぞ!!」

 

「……俺は」

 

 うつむこうとする悟飯にターニッブは告げる。

 

「孫悟飯、10や20の失敗で簡単に諦めるな。負けてもいい、弱くていい。いや、むしろ弱いからこそ、闘うことをやめるな。お前の拳はお前の親父とは違う。闘いを楽しむ為に強くなるのか。大切なものを守る為に強くなるのか。理由はそれぞれ、違っていい」

 

 見開いた翡翠の目には、黄金の炎を纏い、逆立つ黄金の髪に翡翠に黒の瞳孔が現れた目を持つ超サイヤ人が写っていた。

 

 その姿を一目見て、悟飯は笑う。

 

 見た目は超サイヤ人に似ているが、重圧が桁違いだ。

 

 あくまで悟飯の主観だが、超サイヤ人ブルーになった父よりも上、感じる気の方は無限に上昇している。

 

 自分は神の気を感じられないから分からないが。

 

 おそらく、この力は神の域にあるはずだ。

 

「強いですね、貴方は。…闘い続ければ、貴方のように強くなれるんでしょうか?」

 

「俺は、強くはない。だから闘っている。自分とーー自分自身と」

 

 淡々と告げた言葉に悟飯は静かに微笑むと、舞空術で空を飛ぶ。

 

 ターニッブも気を纏い、上空に昇って悟飯と向かい合う位置で止まる。

 

「…貴方には、今の俺の全力を叩きつけてやる。行きますよ、ターニッブ!!」

 

 言うと悟飯は腰だめに両手をたわめ、青い光の球を作り出す。

 

「かぁ〜、めぇ〜、はぁ〜、めぇ〜!!」

 

 これにターニッブも燃える翡翠に黒の瞳孔が現れた目を見開いて、悟飯と全く同じ構えで腰だめに両手をたわめ、青白い光の球を作り出して告げた。

 

「ならば、こちらも。全力の拳で迎え撃とう、孫悟飯!」

 

 瞬間、両者の両手が前方に突き出され、青い光が互いに向かって放たれる。

 

「波ぁああああああ!!」

 

「…真空・波動拳!!」

 

 互いに放たれた青い光線は両者の中央でぶつかり、一瞬拮抗する。

 

 だが、その一瞬が過ぎた時、一気にターニッブの光が悟飯の光を押し切った。

 

「…くっ!!」

 

 両腕を顔の前で交差させて受ける悟飯。

 

 たが、受け切れず光が爆発して地面に弾かれる。

 

「ぐあああ!」

 

 背中から落ちて仰向けに倒れ込んだ悟飯の前に、静かにターニッブは降り立つ。

 

 目を見開き、肩で息をしながら悟飯はターニッブに告げた。

 

「……参りました。そして、ありがとうございます。これほどまで、本気を出せたのは初めてです。怒りを感じずに、純粋に闘いを楽しめたのも」

 

 そんな悟飯に、ターニッブは真・超サイヤ人になったまま爽やかに微笑む。

 

「…いや、こちらこそだ。いい勝負だったな、また俺と闘ってくれ」

 

 爽やかな笑顔に悟飯は黒髪に戻りながら笑う。

 

「…ええ、ぜひ!!」

 

 互いに健闘を讃え、その右手はしっかりと握手されていた。

 

 その後、今回の凛々しい悟飯の活躍がきっかけで、若い女講師や女子生徒に囲まれて困るのは別の話である。

 




オス、オラ悟空!

悟飯の奴、一気に限界超えちまいやがった!

やっぱ、オラの悟飯は流石だ!!

そんな悟飯を更に強くするため、ターニッブはある男を紹介するみてえだ!!

オラも会ってみてぇぞ!!

次回! ナメックの神、その名はカタッツ!!

ぜってぇ、見てくれよな!!
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