ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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絶望の未来を変える為。

戦士達は動きます。

さあ、楽しんでください!(^^)!


絶望の中の希望 孫悟空ゼノ誕生!!

 廃墟の街。

 

 絶望の雲が世界を覆い尽くし、太陽の光が地に届かない世界。

 

 この世の終わりを体現したかのような光景。

 

 そんな世界の雲を背景に、四人と一人の男が対峙する。

 

 冷酷な笑みを浮かべて笑いかける金色の戦士が三人。

 

 彼らを従える、銀髪をリーゼントのようにした髪型を持つ筋骨隆々の大柄の男ーーベビーが、対峙する孫悟空と同じ容姿を持つ黒い服の青年に問いかける。

 

「…神と言ったな。やはり、孫悟空ではないな。貴様…」

 

「いいや。私は、孫悟空だ…!」

 

 不敵な笑みを浮かべて青年ーーブラックは応える。

 

 しかしベビーは首を横に振った。

 

「違う…! お前は孫悟空ではない。少なくとも“俺の姿になる前に戦った怨霊共の記憶”とは違う。器が孫悟空なのか?」

 

 問いかけに、邪悪な笑みを浮かべてブラックは応える。

 

「そういうお前も、器はサイヤ人だな? サイヤ人の肉体に何者かが寄生しているのか…!」

 

「フフフ、俺はベジータの器を手に入れている。この器は、お前とは別次元の強さを持つぞ。証拠を見せてやろう!! ぬぅぁあああああっ!!!」

 

 言うと同時、ベビーは気を高めて開放する。

 

 全身に紫色の気を纏って、一気に力が引き上がる。

 

 そのパワーは、今のブラックをも上回っている。

 

 だがーー。

 

「これはいい。私にとって、好都合な強さだ…!!」

 

「…何?」

 

 ブラックは笑みを消すどころか、むしろ喜びに打ち震えている。

 

 これにベビーは目を細めて静かにブラックを睨みつける。

 

(明らかに戦闘力で劣っているというのに、この余裕は何だ? 孫悟空の肉体だからという理由でここまで余裕で居られるものか?)

 

 睨みつけるベビーにブラックは笑いかける。

 

「どうした、ベビー? 始めようではないか。神(私)と人間(貴様)の器の差を教えてやろう」

 

「…フン!」

 

(こいつの余裕、どうも気になる。奴らに相手をさせて手の内を探るか…)

 

 ブラックの言葉にベビーが苛立つように吐き捨てた後、悟飯達三人の超サイヤ人に目配せすると共に右手をかざして指示する。

 

「やれ、お前達!!」

 

「「「はっ! ベビー様!!」」」

 

 同時、三人の超サイヤ人がブラックに三方向から殴りかかった。

 

「孫悟空の息子二人にトランクスか。面白いーー!!」

 

 正面から殴りこんできた悟飯の攻撃を左に見切り、右から蹴り込んできたトランクスの攻撃を左肘で受けると、同時に背後から拳を放ってきた悟天の一撃を右手で掴んで捌く。

 

 超サイヤ人でありながら、彼らの放つ光弾は青い光ではなく。

 

 ベビーと同じ紫色のものだった。

 

 三方向からの連撃を華麗に捌いていくブラックを前に、ベビーは笑みを浮かべる。

 

「ほう? 超サイヤ人にならずに、そいつらの攻撃を簡単に捌けるとは。俺達の次元の孫悟空に基本戦闘力は、匹敵しているかもしれんな」

 

 この言葉を聞いて苛烈な三方向からの攻めを捌きながら、ブラックは顔をベビーに向けた。

 

「ククク、神である私の力をこの程度の連中で測れると思うのか? 浅はかな…!!」

 

 言うと同時、漆黒のオーラをブラックは纏う。

 

「何処を見ている…!!」

 

「舐めてんじゃねえぞ!!」

 

「薄汚いサイヤ人が、ベビー様に口をきくな!!」

 

 悟飯、悟天、トランクスが叫びながら連撃から強烈な右のストレートを、左右と背後から同時に放った。

 

 口許だけを歪ませてブラックは笑う。

 

「止せ、お前達!!」

 

 ベビーが目を見開くと同時に叫ぶも、時すでに遅し。

 

「…!?」

 

 悟天は目を見開きながら己の胸を見下ろす。

 

 そこには、光の刃を纏った手刀が突き刺さっていた。

 

「な、なんだと!?」

 

 血を吐きながら目を見開く悟天の姿に、悟飯が繰り出していた拳を止める。

 

「悟天!!」

 

 動きを止めた悟天を悟飯に蹴り込んで受け止めさせる。

 

「悟天、しっかりしろ!!」

 

 抱きとめた悟飯は必死に弟に呼びかけるが、その傍でブラックの右手が無情にも開かれた。

 

「悟飯さん、悟天!!」

 

 トランクスの叫びが響く中、金色の光の球が虫の息の悟天とそれを抱き留めた悟飯に放たれる。

 

 二人の兄弟は光の中に消えて行った。

 

「貴様ァアアアア!!」

 

 目を見開き、怒り狂うトランクスにブラックは静かに振り返る。

 

「なんだ、ツフル人とやらになっても中身はそんなに変わらないのだな。トランクス」

 

 冷淡な笑みを浮かべて告げるブラックに、トランクスは背中の剣を引き抜いて斬りかかった。

 

「殺してやるぞ、貴様ァアアアア!!」

 

 ブラックは、穏やかともいえる笑みを浮かべて手招きをする。

 

「本物のお前を殺す予行演習だ。さあ、来るがいい」

 

 斬りかかるトランクス。

 

 上段からの唐竹、袈裟切り、胴薙ぎを放つも、悉くを紙一重で見切られ、躰を躱すだけで捌かれていく。

 

「どうした、トランクス? この次元のお前ならば、もう少し粘ってくれたぞ?」

 

「黙れェええええ!!」

 

 強烈な気を纏って、大上段から跳び上がって振り下ろす。

 

 それをブラックは左手を前に差し出して、あっさりと受け止めた。

 

「なーー!?」

 

 目を見開くトランクスの胸の前に、ゆっくりとブラックは右手刀の形にしてかざす。

 

「ガハァッ!!」

 

 光の刃がトランクスの胸を串刺しにし、血を吐かせる。

 

「あっけないモノだな? サイヤ人ーーいや、ツフル人だったか? どちらも、罪深い人間に変わりはないが」

 

 冷酷で残忍な笑みを浮かべて口元を歪ませる。

 

 そのブラックの脇から強烈なエネルギー弾が放たれる。

 

 咄嗟に串刺しにしたトランクスを突き飛ばし、右の光の刃で薙ぎ払う。

 

 強烈な光が爆発し、ブラックは光弾を放った男ーーベビーを見上げる。

 

「トランクスを死角に使ったか。そのような姑息な手段で私を倒せると思うのか?」

 

 血を吐きながら廃墟のビルの屋上に倒れ伏したトランクスを見据え、ベビーは表情を不快気に歪ませて、虫の息の彼に気弾を放った。

 

 跡形もなく消し飛ばされる。

 

「殊勝な心掛けだ。神の手を煩わせる前に、止めを刺してやるとは」

 

 笑いかけるとベビーは不愉快そうに吐き捨てた。

 

「フン、役立たずの部下どもだ。この程度の雑魚を相手に王の手を煩わせるとは」

 

「ククク、王かーー。たかが、人間の長に過ぎない王が神に挑めると思うのか?」

 

 これにベビーはニヤリと笑う。

 

「たかが、神如き。俺の邪魔をするのならば、ひねり潰すまでよ!!」

 

「活きの良い餌だ…!!」

 

「ほざけぇ!!」

 

 ペロリと口の周りを舐めて笑うブラックに、ベビーが殴りかかった。

 

 これをブラックは左腕で捌いて右の拳を返す。

 

 左手で掴み止めるベビー。

 

 一瞬の静寂と硬直の睨み合いの後、嵐のように凄まじい乱打戦が始まった。

 

 互いの攻撃を互いの拳と蹴りで捌きながら、打ち込む両者。

 

 目まぐるしく立ち位置を移動、空で舞を踊るかのように場を動きながらクリーンヒットはない。

 

(孫悟空の動きもあるが、別の人間の動きも取り入れているのか?)

 

 目を細めながらベビーはブラックと拳をぶつけ合う。

 

 強烈な右拳での強打は、互いの距離を離させる。

 

「なにを探っているのだ? 王よ、神にこの程度の攻撃が通じると思うのか?」

 

「貴様こそ。何故、全力を出さん? 俺を侮るか?」

 

 ベビーは慎重だった。

 

 慎重にならざるを得なかった。

 

 惑星の意思ーー怨霊の集合体によって再現された彼の頭の中には、本来のベビーとしての記憶と共に死者の都の記憶、すなわちベジットが固体化され悟空達と戦った時の記憶までもがある。

 

(黄金の炎を身に纏い、天井知らずに気を高める真・超サイヤ人。あの力を使えるのならば、こいつがここまで余裕なのも頷ける。ならば、早目にアレに変身させてコイツのエネルギーが切れたところを狙う。それができねば、勝てん!)

 

 現状でのブラックの全力を測った上で、己の全力を出すのを控える。

 

 ただし、ブラックが真・超サイヤ人に変身しなければならないと思わせるほどの力の差は必要。

 

 よってベビーは、ブラックの現時点での全力と自分の全力の差を考え、安全に倒せる範囲でのパワーの引き上げを計算しなければならない。

 

「何か、企んでいるようだな?」

 

「…貴様こそな」

 

 互いに笑みを浮かべる。

 

 お互いの手の内が、判然としない内には勝負に出ない。

 

 その慎重さが、吉と出るか凶と出るかは相手次第だった。 

 

ーーーー 

 

 地響きが鳴る中、トランクスは気を失ったゼノを背負いながら、ブルマと共にレジスタンスの下に現れた。

 

「トランクス! ブルマさん!! 二人とも無事だったんだね!!」

 

 黒髪をなびかせながら、妙齢の女性がトランクスとブルマに駆け寄る。

 

「マイ!」 

 

「マイちゃん! 貴女達も!!」

 

 互いに無事を喜び合う。

 

「さすが、トランクスさんとブルマさんだ!」

 

「ブラックに出会って生還するなんてな!!」

 

 避難していた人々も、トランクスとブルマに近づいてきた。

 

「あんたたちも、無事で何よりだわ」

 

「皆、ありがとう」

 

 マイと同じ緑を基調とした軍服を着た男達と声を掛け合う。

 

「トランクス兄ちゃん、その人は?」

 

 幼い兄と妹がーートランクスが背負う人間を指さす。

 

「…ああ。皆、落ち着いて聞いてくれ」

 

 ゆっくりとトランクスは背負っていたゼノを地面に下ろし、丁寧に仰向けに寝かせる。

 

「!!!」

 

 その顏と姿を見て、皆が声にならない悲鳴を上げている。

 

 マイが真っ先に声を出した。

 

「ブラック!!」

 

「違うーー」

 

「ーーえ? で、でも」

 

 困惑したような表情になるマイを静かに見つめて、トランクスは告げる。

 

「悟空さんじゃない。でも、この人はブラックでもない。この人は俺達を助けてくれたんだ」

 

 ジッと気を失っているゼノを見つめて、トランクスは告げる。

 

「それに気になることを言っていたの。この人、ゼノというらしいんだけどね。ブラックと知り合いみたいなのよ。ううん、別次元の同一人物だって言ってたわ」

 

「それって、ブルマさんが創ったタイムマシンと関係が?」

 

「多分、あると思う。とりあえず、ゼノが目覚めてくれないと話が進まないんだけどね」

 

 弱り切った表情になるブルマ。

 

 そしてトランクスは真剣な表情で告げる。

 

「それともう一つ。今、ブラックと誰かが闘っているんだ」

 

「え? トランクスさん以外にブラックと戦えるような人が、まだ地球に!?」

 

「分からない。だが、ブラックよりも気は大きいと思う。問題は、この気が邪悪な気配だってことだ」

 

 真剣な表情で呟くトランクスに、周りがざわつき始める。

 

「トランクス。ブラックと闘ってる奴は、悪そうなわけ?」

 

「ええ。気の質から言えば、ブラックよりも上かも知れません」

 

 ジッとブルマに応えながら、トランクスは水をゼノに飲ませる。

 

 苦し気に呻きながら、ゼノは水を飲み込んだ。

 

「後は、この人が回復するのを待つだけだけど。仙豆があれば違うんだけどな」

 

「カリン様は、もう居ないんだから。仕方ないわよ」

 

 ブルマが告げる中、ゼノがゆっくりと眼を開く。

 

「…こ。此処は?」

 

「気が付いたみたいね」

 

 目を開けたゼノをブルマが声をかける。

 

 痛む体を無理やりに起こしながら、ゼノは周囲を見渡す。

 

 レジスタンスの人間は警戒したように、避難している民間人は怯えた表情でゼノを見返してきた。

 

「だめよ、まだ起きちゃ!」

 

「傷口が広がってしまいます、安静にしてください!」

 

 ブルマとトランクスに言われ、ゼノは二人を見返しながら呟く。

 

「何故だ? 何故、助けた?」

 

「え?」

 

 ゼノの問いかけにブルマとトランクスは咄嗟に反応できなかった。

 

 構わず、ゼノは続ける。

 

「お前達は聞いていたのだろう? 私はブラックと同じ存在だ」

 

 その言葉に、皆がざわつき始め、レジスタンスの兵士たちは銃を構えようとする。

 

 しかし、それをマイとトランクスが黙って手で止めた。

 

「…奴は、私であったものだ。私も、ああなっていたかもしれない。お前達を苦しめる者は、間違いなく私なのだ」

 

 ゼノは言う。

 

 ブルマが彼の前でしゃがみ込み、ジッと顔を覗き込んだ。

 

「似てないわよ。貴方とアイツは」

 

「……ブルマ」

 

「だって、アイツは孫君の躰で人を殺したわ。大勢ね。だけど、貴方は私やトランクスを守ろうとしてくれた。それで充分よ」

 

 全てを理解したかのようなブルマの言葉に、ゼノは目を見開く。

 

「分かるのか、私が誰なのかを?」

 

「分からないわ。正体まではね。でも、貴方とブラックが別次元の同一人物だって推測と。その体が孫君ーー孫悟空のものだってのは分かった。ゼノ、貴方の肉体の孫君はこの世界で亡くなった孫君のものなのね?」

 

 これは、ブルマが情報収集のために投げた盗聴器から得た情報だ。

 

 その信ぴょう性を裏付けるように、ゼノは小さく頷いた。

 

「……ああ。罪滅ぼしになるとは思えないが、孫悟空の肉体と魂を復活させるために私は」

 

「話してもらえるかな? ゼノ、貴方のことを」

 

 真っ直ぐな瞳に向かって、ゼノは静かに懺悔するような表情になりながら告げた。

 

「…聞いてくれ。私の本来の名はザマス。元々は北の界王と呼ばれる神であり、東の界王神ゴワス様に仕える付き人だった」

 

「北の界王様って、孫君の師匠?」

 

 ブルマの言葉にゼノは頭を横に振る。

 

「少し、難しい話になるが。この星は、第7宇宙の北の銀河にある地球という星だ。私の管轄する第10宇宙にも地球と呼ばれる星はあるが、このような場所ではない」

 

 ゼノの言葉に大半の人間は疑問符を浮かべるしかなかった。

 

 だが、ブルマとトランクスには何となくだが理解できる。

 

 孫悟空と共に過ごした時間が、彼女達にゼノの言葉が真実であることを見抜かせた。

 

「……本当に神さまなのね。でも、ブラックは」

 

「私は、界王ザマスとして過ごしていた時から疑問だった。人間は互いに争い合い、滅ぼしあい、死をまき散らしながら世界を巻き込む。時には己の私腹を肥やすために他人を貶め、それを正義だと告げる者もいる。そのような自分勝手でエゴの塊のような存在を、見守るだけだと言う神の存在が、私には疑問だった」

 

 ジッとブルマはゼノの言葉を聞いている。

 

「ふざけんな! お前にどれだけの人間が、俺の家族が殺されたと思ってる!?」

 

「私の子が、何をしたっていうのよ!!」

 

 周りの人間が怒りに身を任せて掴みかかろうとするのを、トランクスが止めている。

 

「…そうだ。人間は滅ぼすべきではないのか、私はずっと悩んできた。ゴワス様に見せられた時も彼から神の役割を聞いた時も、疑問でしかなかった」

 

 そんな時だった。

 

 自分の目の前に強烈な黄金の炎を纏った、無限の戦闘力の戦士が現れたのは。

 

 絶えず強さを求める純粋な心と、非道な存在を許さない正義。

 

 そして、他者を信じようとする優しさを併せ持ったサイヤ人。

 

 全王の紹介で見せられたーー見せつけられた、純粋な強さを望む者同士の闘い。

 

 その美しさは、ザマスをして初めて目にしたものだった。

 

「孫君ね。貴方の世界の孫君も、そうなのね」

 

「ああ。ただ強いだけではない。他人の為に笑って死ねる男など、そうはいなかった。別の宇宙の人間ではあったが興味が湧いて調べさせてもらった。何度も救ったのだな、神が何もせずに見届けるだけだった星の滅び。世界の運命を、人々を。孫悟空は」

 

「……ええ。どんなにヤバい状況でも、孫君なら何とかしてくれる。あの人は、私達にそう思わせてくれた」

 

 そのブルマの言葉に、ゼノは寂しそうな笑みを浮かべた。

 

「ゴワス様に言われて、彼がいない未来を見て来いと言われた。そして、お前達ーートランクスの人生を見せてもらった」

 

 ゼノはトランクスを見つめて告げる。

 

 目を見開くトランクスに、ゼノは真っ直ぐに告げた。

 

「タイムマシンを使うのは重罪だ。本来ならば消されても仕方ない。だが、ゴワス様の仰る通りだった。お前達は足掻いていた。絶望から、必死にーー。そのお前達が、希望の未来を願うのは当たり前だと、神の身ながら思ったのだ」

 

「…ゼノさん」

 

 すぐに帰るつもりだった、とゼノは言う。

 

 だが、余りに気になった。

 

 その為、トランクスの人生を追ったのだと言う。

 

 そしてーーこの未来に辿り着いた。

 

「目を疑ったぞ。私が、世界を滅ぼそうとしているとはな。希望となった孫悟空の肉体で、人々に絶望を与える姿を見ることになるとは」

 

 ゼノには見過ごせなかった。

 

 トランクスや孫悟空達の人生を見てきた彼の中には、人間への愛と敬意が芽生えていたのだ。

 

 それは、神としてはあまりにも人間の側に偏った見識だった。

 

 それでも、自分の見方を変えてくれたサイヤ人達の肉体を使って別の次元の自分が破壊していく様を、ゼノは見過ごせなかった。

 

「私は、神失格だ。人間を想うあまり、人間を滅ぼそうとし。人間を想うあまり、人間を救おうとする。なんと傲慢な神だ…!」

 

 悲し気に呟くゼノの手をブルマは静かに取る。

 

「あなた、孫君の肉体と魂を得たって言ってたわよね? 孫君の魂は、何て言っているの?」

 

「……あんたのせいじゃない、とだけ」

 

 ブルマに取られている手とは逆の手で、胸元を抑えながら告げるゼノ。

 

「あいつとあんたは違うと。だがーー!」

 

 悔し気に表情を歪めるゼノを、ブルマが見据えてくる。

 

「違うわよ。孫君の言うとおり、貴方は違うわ。だって、貴方は聞こえているじゃない? 孫君の声も、私たちの声も」

 

「……ブルマ」

 

「アイツは、自分以外の声を聞いてないわ。自分の中だけで生きてる。だから、聞く必要もないんだと思う。それって、全然違うのよ」

 

 微笑みながら言われ、ゼノは目を見開いた。

 

ーーーー

 

 脳裏に浮かぶ光景は。

 

 別次元の自分が孫悟空の肉体で街を破壊していくのを見た時、自分は何をすればいいのかわからなかった。

 

 ただ、己の心が求めるままに崩壊した孫悟空の墓石の前に来た。

 

 その前で彼は、神の力を使って心臓病で世を去ったこの世界の孫悟空と会話した。

 

「ーー!? ここは、地球か? 何だか、懐かしいなぁ」

 

「孫悟空…! 私は界王ザマスと言う。単刀直入に告げる、貴方の全てを私に与えてもらいたい」

 

 何故、自分はこんなことをしたのか。

 

 今となっては分からない。

 

 だが、まともな精神状態ではなかったのは事実だ。

 

 孫悟空を己が貶めるのなら、自分が孫悟空の名を護ると。

 

「今、オラの顔をした奴が街を破壊して回ってるんと関係あんのか?」

 

「知っていたのですか?」

 

「ああ。オラ、ずっとあの世から見てきた。ベジータの息子トランクスって言ったかな。アイツが地球を守ってきたのも、全部知ってる」

 

 悟ったような静かな表情で孫悟空は告げる。

 

「あんた、あのオラみてえなヤツが何者か知ってんのか?」

 

「アレは、私です。おそらく別次元のあなたの肉体を得た私ーー。貴方の名を守るために孫悟空よ、私に貴方の魂と肉体をください。代わりに、私はこの身と命を捧げましょう」

 

「あんたは、今のオラよりずっと強い。そのアンタがわざわざオラの肉体を手に入れてぇって理由が分からねえ。別の次元のオラの肉体が滅茶苦茶強いのは分かっけどな」

 

 ジッと見合う。

 

 だが、すぐに悟空は目を緩めて明るく笑った。

 

「ま、いいさ! ザマス様、あんたの考えに乗ったぜ」

 

「? 良いのですか?」

 

「オラはもう、死んだ身だ。皆、死んじまった…。それでもよ、ブルマとトランクスを助けられんならオラ、構わねえ。オラの躰と魂、使ってくれ!」

 

 ならばと、ザマスは左耳のポタラを孫悟空の亡霊の耳に取り付ける。

 

 そして己は見習いの琥珀のポタラを右耳に付けた。

 

「ポタラよ。この者の魂を我と一つとせよ! 我が肉体と命は、この者の肉体の復活の為に捧げん!! 界王ザマスの名の下に!!」

 

 その言葉と同時、亡霊の悟空に付けた緑色のポタラが輝き、ザマスの肉体が金色の光の粒子となって、半透明だった体を実体化させていく。

 

 同時に、孫悟空の魂とザマスの魂が一つに融け合っていく。

 

 孫悟空としての経験と考えが、ザマスの魂の一部となって。

 

「孫悟空、一体となって分かりました。ーー君の心を。これより、我が名は孫悟空! 孫悟空・ゼノ!!」

 

 言うと同時、服装を一瞬で変える。

 

 孫悟空・ゼノは、違う世界の自分であるゴクウブラックと戦うために生まれたのだ。

 

ーーーー

 

 瞳を閉じ、ゼノは己の中に確かにある孫悟空であった者の魂に礼を言う。

 

 最早、ザマスと孫悟空の魂が別れることはない。

 

 二つの魂はゼノという新しい魂へと変わったのだから。

 

 ぐ~っ

 

 誰かの腹の虫が鳴った。

 

 その音の方を向くとトランクスが顔を赤くしながらこちらを見ている。

 

「あ、いや。その…」

 

「しょうがないね、ホント! ブルマさん、食事にしましょう?」

 

 その手を取りながら、マイが明るくブルマに告げると彼女も頷く。

 

「そうね! ゼノ君、行きましょ!」

 

「……いいのか?」

 

「君は、ブラックの敵で孫君の名前を守る者。なら、私たちは仲間よ!」

 

 その言葉に、静かにゼノは頭を下げた。

 

「すまん」

 

「ほら、いいから食事にしましょ! 孫君の躰なら、目一杯食べさせてあげなきゃね!」

 

 初老の女性でありながらも、茶目っ気たっぷりな笑顔はとても魅力的であった。

 

 その笑みにゼノは救われたように笑みを浮かべていた。

 

ーーーー

 

 時の狭間、死者の都と言われし特異点。

 

 忘却のナメック星での修行を終えたピッコロと孫悟飯は、死者の都を通って元の世界へと戻ろうとしていた。

 

 だがーー二人は同時に立ち止まる。

 

 彼らの前には元の地球へと戻る階段があった。

 

 しかし、今彼らは別の階段を見ている。

 

「なあ、悟飯。孫と勝負する前に、少し寄り道しても構わんか?」

 

「ええ。俺も気になります」

 

 こうして、二人は絶望の未来が広がる世界へと向かって行った。

 

 




次回もお楽しみに!(^^)!
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