はたして、未来時空の地球の運命は?
強烈な打撃の交換が行われる。
互いの右ストレートが互いの一撃を止め、距離を置く。
ゴクウブラックとスーパーベビーの戦いは、未だクリーンヒットを許さない肉弾戦だった。
「…フフ、この程度では私は倒せない。神たる私に挑むならば、限界の一つでも超えてもらおうか」
「フン。どうやら、貴様は超サイヤ人に変身できないようだな?」
「だったら、どうした?」
問いかけるブラックの笑顔は、口元を引き裂くようなもの。
これにベビーは嘲笑を返す。
「驚かせやがって…! 超サイヤ人に変身できないのであれば、俺の勝ちだ」
敢えての挑発。
自分とブラックが互角程度であるという演出は充分できたであろう。
この上があるなら、このブラックと言う自己顕示欲の塊のことだ。
必ず見せるはずだ。
「…分かりやすい挑発だ。なるほど、神たる私の力を見たいのか?」
「この程度で神などとふんぞり返っているような男など、倒す価値もないのでな」
これにブラックはニヤリと笑うと、静かに拳を腰に置いた。
それはサイヤ人達が力を開放して変身する時の型だ。
「では、神の力を見せてやろう…!」
瞬間、金色の光がブラックから放たれる。
黒い髪は天に向かって逆立ち、金色の光を放つ髪へと変身した。
黒目は翡翠の瞳へと変化している。
「…超サイヤ人? それだけか?」
静かにベビーが問いかける。
これにブラックはニヤリと笑った。
「やはりな。どうやら、私が力を隠しているのをご存じのようだ…! さすがは王」
ブラックの気が高まり、金色のオーラに青いスパークが纏わる。
だが見た目に変化はない。
(超サイヤ人3に匹敵するエネルギーだ。それを超サイヤ人の状態のまま引き出せるのか。確かに凄まじいが…!)
ベビーはジッとブラックを見据える。
「それが、貴様の全力か? 超サイヤ人の状態で3のMAXパワーを引き出せることを力と言っているのか?」
「…驚いていないな? この変身を予測していたのではないのか?」
訝し気にするブラックにベビーは笑う。
「この程度で俺に敵うと思うのか!!」
一気に気を高めるベビー。
紫色のオーラが金色のスパークを纏いながら一気に高まる。
その力は、今のブラックよりも数段上だった。
「超サイヤ人3など、俺の次元に居た悟空でさえ俺に敵わないレベルだ。それを、お前程度が敵うと思ったのか?」
「これは面白い。私の力よりも更に上、か」
瞬間、ベビーが巨大な拳を振り下ろす。
鈍い音と共に超サイヤ人のブラックは左手で受け止めた。
「出し惜しみはするな…! さっさと本気を出せ!!」
「フフフ。その内に、な」
「舐めるなぁああ!!」
額に筋を浮かばせてベビーはパワーを引き上げ、ブラックを紙のように吹き飛ばす。
「ぬお!?」
強烈なボディを叩き込み、前のめりになるブラックの頭上から両腕を組んで振り下ろす。
地面に叩きつけられるブラックは、寸前で舞空術を使い空中で静止するも、目の前に高速移動で現れたベビーに腹を蹴り抜かれる。
「ガハァッ!!」
背中から後方の地面に叩きつけられるも、すぐにバク転して体勢を整える。
これにベビーは静かに両腕を組んで睨みつけた。
「…どうした、何をぼけっとしている? 今ならば私を倒せるかもしれないぞ? 何故、攻めてこない?」
笑うブラックにベビーは静かに表情を変えた。
「どうやら、俺の考えすぎだったようだな」
「…何?」
笑みを浮かべるベビーは先ほどまでの測るようなものではない。
勝利を確信した表情だった。
「真に至っていないな? 貴様…!」
「真? 至る? 何のことだ?」
目を見開くブラックにベビーはニヤリと笑う。
「傑作だな。神だと言っておきながら、真・超サイヤ人を知らないのか!!」
「…真・超サイヤ人? なんだ、それは?」
哄笑するベビーを尻目にブラックは目を細めた。
「ククク! 貴様の孫悟空は、真に至っていないのか! これは、いい!! 真・超サイヤ人が居ないのであれば、俺の敵はこの世界には存在しない!!!」
目を見開き、圧倒的なパワーを生み出す。
一気に気が高まり、ブラックをして戦慄を覚えるほどのモノにベビーは力を引き出した。
「貴様…! いったい、何者だ? ただの人間に、それだけの怨念が生み出せるわけがない!」
「俺はツフル人の王! 貴様らサイヤ人に滅ぼされたツフルの恨みーー! そして、この世界には存在していない惑星の! その意思を手にすることで、ようやく叶うのだ!! 我らの望み! サイヤ人よ、滅びろぉおおお!!」
一気にパワーが引き上がり、超サイヤ人の状態のブラックを渾身の右拳の一撃で沈める。
立ち上がるブラックは、先ほどまでの余裕はない。
「お、おのれ…! これほどまでの力の差があるとは…!!」
ベビーは笑みを浮かべる。
「ククク、この程度で驚くな! 更に絶望を与えてやるぞ、神よ!! 俺に取り込まれた怨霊共よ、俺の可能性を呼べ! 召喚しろ!!」
瞬間、漆黒の雲から霧が現れる。
霧は渦を巻いてベビーの両側に二つの塊を生み出した。
「…なんだと?」
目を見開くブラックの前に、赤い二つの異形が現れる。
片方は、長い頭部とマッシブな筋肉質の大柄な肉体に、額や両腕と両足に緑色の水晶を嵌めている。
ベビーと同じく顔にラインが入り、目もベビー同様に瞳がない。
同じデザインのジャケットとグローブとブーツを嵌めている。
「…よぉ、兄弟。サイヤ人を滅ぼす為に、ようやく呼んでくれたか」
ニヤリと笑う声は、ベビーのモノと全く同じ。
これにベビーはニヤリと返し、もう一人の方を見る。
もう一人の赤い異形は巨大な尻尾を生やし、角を生やしていた。
凶悪な顔は、ベビーと同じラインと瞳の無い深い青の目。
「なぶり殺してやろうか? あのサイヤ人を」
鬼のような顔をした異形もベビーと同じ声を出す。
これにベビーはニヤリと笑った。
「兄弟たちよ。お前達と共に世界をツフル人に変えられるとは。嬉しい限りだ」
ツフル人の怨念が作り出したハッチヒャックというバイオロボットに寄生した別次元のベビー。
ジャネンバという地獄の邪悪な魂が固体化した存在に寄生した別次元のベビー。
共に、ベビーの可能性。
「ジャネンバベビーとハッチヒャックベビー。お前達の力で、目の前のサイヤ人を八つ裂きにしてやろう…!」
「「いいだろう、兄弟」」
二人のベビーが同時にブラックに仕掛ける。
「なに!?」
目の前に現れたハッチヒャックベビーに右拳を叩きつけるも、全く意に介していない。
反対に強烈な右拳で吹き飛ばされる。
「馬鹿め! ハッチヒャックベビーは、俺達三人のベビーのなかで最も打たれ強く、パワーを持っているのだ!!」
圧倒的なパワーとタフネスを誇るハッチヒャックベビーに舌打ちをしながら着地するブラック。
その背後に、まるでジグソーパズルのように躰を組み立てていく鬼のような姿のジャネンバベビーが現れる。
「なんだと!?」
「死ねーーサイヤ人!」
振り下ろされる血のように紅い刃を、光を放つ右手刀で受け止める。
だが、刃を止めたのに斬撃はブラックの遥か後方までを切り裂いた。
「こ、こいつら!!」
「そいつはジャネンバベビー。特殊な能力で空間を移動できる。そして、その斬撃は世界の全てを切り裂く次元の刃ーー! 逃れられるかな?」
余裕の笑みでスーパーベビーは笑っている。
二人のベビーの強さにブラックは舌打ちしながら、攻撃を捌いていく。
ジャネンバベビーとハッチヒャックベビーは左右から拳と蹴りを繰り出し、完璧なコンビネーションでブラックを攻め立てた。
「ぐっ!?」
左のジャネンバベビーの右拳がまともにブラックの横顏を捉え、仰け反ったところを反対側からハッチヒャックベビーが巨大な拳をボディに叩き込む。
「ぐうぉおお!!」
あまりの威力に目を見張るブラックを、拳をふり切ってそのまま天まで吹き飛ばす。
天高く舞うブラックの先に、空間移動をして先回りするジャネンバベビーが居た。
「くたばれ!」
両腕を組んで振り下ろし、地面に叩きつける。
クレーターを作りながら叩きつけられたブラック。
立ち上がると目の前には二人のベビーが悠然と歩いてくる。
「お、おのれ…! これほどとは!!」
二人のベビーがピタリと立ち止まり、ブラックとは違う方を見てニヤリと笑う。
ブラックがその笑みを見返し、チラッとそちらを向くと、空中で紫色のエネルギーを纏ったスーパーベビーが、両腕を顔の左横に構えてエネルギーを高めていた。
「し、しまーー!!」
目を見開くブラックに、スーパーベビーは両手を突き出して、エネルギーを紫色の光線にして放った。
「死ね、サイヤ人!! スーパーギャリック砲!!!」
光はまともにブラックの躰を飲み込み、巨大なーー底の見えない大穴を廃墟の街に作り上げる。
一つ間違えば地球の核を傷つけ、崩壊していたであろうことは間違いない。
それほどの一撃をベビーは躊躇い無く撃った。
彼にとっては、勝利こそが全てであり。
そのために何が犠牲になろうと知ったことではなかったからだ。
三人のベビーは互いに勝利を確信して笑みを浮かべる。
だがーー。
「? まだ生きているとはな。流石、孫悟空の肉体と言ったところか」
ゆっくりとこちらに向かって歩いてきたブラックに、三人のベビーは笑いかける。
そのブラックの足取りがしっかりとしている。ジャネンバベビーとハッチヒャックベビーがスーパーベビーを見ると、スーパーベビーもコクリと頷き返した。
超サイヤ人のブラックは静かに笑みを浮かべ、冷淡な声音で告げた。
「人間の身で、よくぞここまで純粋な怨念を糧に強くなった…! 褒美だ、王よ。私のーー神の力を見せてやろう!!」
言うと同時、金色のオーラは薄紅色に変化する。
「お前達のおかげでーー俺は更なる力を手に入れることができた。見るがいい、これが神の魂を持つ者が神の気を纏った姿! 超サイヤ人ロゼだ!!」
瞬間、気柱が立ち上がり、薄紅色と紫色が混じったようなオーラを纏う、禍々しくも美しい超サイヤ人が現れた。
「…兄弟。アレは、真・超サイヤ人ではないが」
「侮れない力を持っているようだ。この重圧、超サイヤ人4の悟空に匹敵するかもしれんぞ」
二人の分身からの言葉にスーパーベビーも頷く。
「確かにな…! だが、こうでなくては詰まらんさ」
笑う三人のベビーに対峙し、超サイヤ人ロゼは静かに笑みを浮かべた。
「続きを始めようか? この世界にこんな醜い大穴を開けた貴様らの罪ーー万死に値するぞ!!」
「おかしな奴だ。人間を皆殺しにしようとするくせに、地球が傷ついた程度で騒ぎ立てるとはな」
嘲り笑うベビーに超サイヤ人ロゼとなったブラックは冷笑を浮かべる。
「……つくづく、人間とは罪深い。浅はかな己こそが全てだと、信じて疑わぬその傲慢さ。死をもって償うがいい」
「そのセリフ。貴様にそっくり返してやろう!!」
言うと三人のベビーが気を纏い、超サイヤ人ロゼが殴りかかった。
ハッチヒャックベビーの強烈な拳を真っ向から超サイヤ人ロゼは殴り返す。
「なんだと!?」
目を見開くハッチヒャックベビー。
右拳は完全に打ち返され、腕が後方に弾かれるーーだけではない。
ハッチヒャックベビーが、まるで引きずられるように後方へ仰け反って体勢が崩れたところを、ブラックは懐に入り込んで強烈な右ストレートをボディに叩き込む。
「ぬぐぅ!?」
目を見開いて硬直するハッチヒャックベビーの顎に更に強烈な後ろ回し蹴りが叩き込まれ、後方にあるビル群に背中から叩き込まれる。
「ハッチヒャック! おのれ!!」
ジャネンバベビーが、これに怒りの形相で亜空間移動を始める。
これを見てブラックは冷ややかな笑みと共に瞳を閉じ、右掌を開く。
掌の中には薄紅色の光の球が生み出されていた。
ブラックの背後にジャネンバベビーが気配を消しながら現れ、右手に持っていた紅の剣を振り下ろす。
だがーー刃がブラックに届く一瞬前。
「そこか!!」
ブラックの灰色の瞳が見開かれ、振り返ると同時に薄紅色の光を右掌から放って剣に合わせる。
「ーーなっ!? バカなぁあああ!!」
目を見開くジャネンバベビー、薄紅色の光はそのままジャネンバベビーの肉体を飲み込んで行った。
光の向こうから弾き飛ばされてジャネンバベビーが地面に叩きつけられる。
「……! 貴様!!」
スーパーベビーがブラックを振り返りながら目を見開く。
明らかに、先までの戦闘力とはケタが違う。
「超サイヤ人ロゼ…! これほどか!!」
忌々し気に告げるスーパーベビーに、ブラックは笑みを返す。
「敵うと思ったのか? 神である俺に…!」
超ベビーの頭の中に現れたのは、黒髪に赤い体毛を生やした超サイヤ人。
「…なるほど。超サイヤ人4とは違うが、それに匹敵するパワーアップだ。基本戦闘力が悟空と同じくらいならば、今のお前は俺達の時空の孫悟空と同等と言ったところか」
「先程から思っていた…。貴様、俺が来た次元とはまた違う存在のようだな? だから、俺の知らない超サイヤ人を知っているのか」
「今一度、告げておこう。俺はツフル王ーーベビー! 惑星の意思にして怨霊共の集合体が多次元世界にあった俺の姿を取り込み、再現したモノ。サイヤ人への無念と怨念を基に復元されたのが、俺だ!!」
静かに瞳を細めるブラック。
形勢逆転しているのに、三体のベビーの表情は笑っている。
「愚かな、超サイヤ人ロゼとなった俺に勝てる者など居はしないのだ。大人しく裁きを受けるがいい、人間よ!!」
「断わる…! 世界を食らい尽くそうとする怨霊の力をーー惑星の意思を、ツフルの怨嗟を舐めるな! 神め!!」
更に三体のベビーの気が高まっていく。
これにブラックは静かに目を細めた。
「避けたければ、避けるがいい!! 貴様が助かっても、この惑星は粉々だ!!!」
漆黒の球が三体のベビーの肉体から霧のように放たれて、一つになる。
「貴様…! 世界を滅ぼすだと!!」
「そうだ! この俺のモノにならない世界など消してやろう!!」
目を見開くブラックにベビー達は笑う。
同時、ブラックの瞳に怒りの炎が宿った。
「貴様ら…! 神に歯向かうだけでなく、美しい世界までも滅ぼすと言うのか…!! 許さん…! 許さんぞ、人間ども!!!」
薄紅色の光が再びブラックに纏わり、両手を腰だめに構える。
「言いたいことは、それだけか? ならば死ね! トリプル・リベンジデスボール!!」
三体のベビーが頭上に作り上げた一つの漆黒の球。
それがブラックに目掛けて放たれる。
「愚かな。神の力の偉大さを思い知るがいい! か~め~は~め~…!」
強烈な光がブラックのたわめた両掌で一つの光球となる。
薄紅色の光の球は、強大な漆黒の気弾に向かって前方に突き出されると同時に光線となった。
「波ぁああああああっ!!」
二つの力は、あらゆるモノを吹き飛ばしながら空中でぶつかった。
ーーーー
ブラックとベビー達が闘っている地点から数キロ離れた場所にて。
ピッコロと孫悟飯が、時空の狭間から現れていた。
「…悟飯。ここは、地球か?」
「ええ。だけど、此処は僕達の地球じゃないみたいです…」
目を見開きながら、荒れ果てた世界を見つめる。
街は完全に崩壊している。
もともと廃墟だったものを復興しようとして組まれていた骨組みの足場もあったが、手付かずのまま放置されていた。
「なんだ、此処は。何故、こんなことにーー!」
悟飯が目を見開きながら呟くと、頭の中に声が響く。
(此処は、まさか俺の世界? 俺の時空の世界なのか?)
「どういうことだい、もう一人の僕」
胸元に吊っている勾玉が輝き始め、悟飯にもう一人の悟飯の記憶が流れてくる。
「これは…! そうか、未来のトランクスさんの次元か!!」
「話には聞いていたが、これほどまでに荒れていたか。しかし、人造人間は倒されたはず。一体誰が…!」
「! ピッコロさん、誰か来ます!!」
互いに考えを巡らせていると、目の前に悟飯達と同じように時空の狭間の光を放ちながら、何者かが現れた。
真紅の道着を着た男と、白と赤の巫女服を着た女性。
「此処が、怨霊が選んだ世界ーー!」
「何だ、こりゃ? 惑星サイヤよりもずっと酷でぇ有様じゃねえか!」
共に黒髪黒目であり、悟飯とピッコロの目は大きく見開かれる。
「「ラディッツ!!」」
「ん? 先客が居るみてえだな? って、悟空に似た顔に同じ道着ーー! お前、もしかして」
ラディッツにそっくりな顔をした赤い道着の青年は、悟飯の顔を見て指差す。
「え? 悟空ってーー!」
そんな彼の後ろの光から、次々とピッコロと悟飯の知る顔が出てくる。
悟飯と同じ山吹色の道着を着た、桃色の魔人。
緑を基調とした、悟飯が幼い頃に倒した人造人間。
そしてーー父が倒した、白を基調とした宇宙の帝王。
「ば、馬鹿な! 魔人ブウにセル! フリーザだと!!」
目を見開くピッコロに向かって、セルがニヤリと笑みを浮かべた。
「久し振りだな、ピッコロ。と、言うことはそちらが、本物の孫悟飯か? 随分と大きくなったものだ」
「……本当にセルみたいだな。ということは、お前達も本物か!! 魔人ブウ! フリーザ!!」
ブウとフリーザも、それぞれ笑みを浮かべてピッコロと悟飯を見る。
「孫悟飯にピッコローー! 私が吸収してやった時よりも更に腕を上げているようだ」
「この間ぶりですね、孫悟飯さんにナメック星人のピッコロさん? それにしても、何があったのでしょうね? この間と違って、随分と強そうになっていますね」
ピッコロが静かに口元を歪ませて笑う。
「試してみるか? ちょうど俺も、孫悟空と決着をつける前に肩慣らしをしたかったところだ!」
ピッコロの言葉にブウとセル、フリーザがニヤリと笑って、構えを取ろうとする。
「待ってください、ピッコロさん! もう一人、大きな戦闘力を持った人間が!!」
それを悟飯が制した時、光の向こうから一人の男。
漆黒のバトルジャケットを着た褐色の肌の青年が、マントをなびかせて歩いてきた。
「随分と薄汚いところね? こんなところに用事なの、ターレス?」
その男の腕を抱くのは、深緑色の肌をした黄銅色の髪の女性。
ターレスと呼ばれた男は静かに、悟飯とピッコロを見据えて笑う。
「これはこれは、懐かしい顏だ。あの時の小僧が随分とデカくなった。それにーーナメック星人か」
フリーザ達を従えるように現れたサイヤ人の男は、孫悟空と瓜二つの顔を持っている。
「父さん…! 父さんやお祖父さんに、そっくりだ!」
「ん? そうか、小僧。お前にとっては、はじめましてーーだったな?」
そう言うとターレスは静かに笑みを浮かべて告げた。
「俺の名は、ターレス。サイヤ人の下級戦士は顔のタイプが少なくてな。俺とカカロットやバーダックの顔が似ているのも無理はないぜ?」
「ターレス…!」
静かに悟飯はターレスを睨みつけた。
「少し、待っていただけませんか?」
そんな彼らに割って入るように、黒髪の巫女が止める。
そして悟飯とピッコロを見上げた。
「わたくしは惑星サイヤの巫女ーープリカと申します。不躾ながら貴方は、孫悟空さんの?」
「え? ええ。僕は孫悟空の息子の悟飯です」
その言葉にラディッツにそっくりの男が声を上げた。
「おお! やっぱりか!! めちゃくちゃ強そうじゃねえか!! さすが、悟空の息子だな!!」
「え? あ、あのーー! 貴方達は、父さんとどういった? というか何故、フリーザ達と一緒に?」
混乱したような悟飯にターレスが告げる。
「勘違いするな、小僧。そいつらは俺の仲間じゃねえ…! もっとも、目的は同じだがな」
「…目的?」
「この世界に現れた惑星の意思を潰しに来たのさ」
ターレスの言葉に悟飯は目を鋭く細める。
とてもではないが、このサイヤ人は善人の類ではない。
感じる気の質から言って、明らかに悪の部類だ。
だが、同時に嘘をついている気配もない。
そして何より、ラディッツに瓜二つの男と巫女の女性からは善人の気を感じる。
「悟飯。こいつらの話を聞いた方がいいかもしれん」
「ええ。僕も、そう思ってました」
そう言って、二人はプリカと名乗るサイヤの巫女に目を向ける。
意外にも、フリーザ達は攻撃を仕掛けてくるような真似はしなかった。
「プリカ、先に行かせてもらうぜ? どうやら、惑星の意思は何者かとやり合っているようだ」
「分かりました。どうか、お気を付けください。ターレスさん」
美しい巫女に真っ直ぐに言われ、ターレスはニヤリとクールな笑みを返す。
が、それも長くは続かない。
「アンタ、他人(ヒト)の男に色目使ってんじゃないよ! ターレスも、何をデレデレしてんのさ!!」
隣から嫉妬したザンギャがターレスの首を締めあげたからだ。
「ぐお! そんなんじゃねえよ! は、離せ、ザンギャーー!!」
これを呆れた表情でフリーザとセルが見据え、ブウは肩を鳴らしながら力を感じる方向へと視線をやっている。
そんなやり取りをしながら、彼らは激戦が繰り広げられている北の都へと向かって行った。
「なんだか、僕たちの知ってるフリーザ達より穏やかになってませんでしたか?」
「…悪党であることに変わりはない。あまり、期待するな」
「は、はい」
悟飯の問いかけに、ピッコロは淡々と告げるとプリカとガーキンを見る。
「自己紹介が遅れちまったな! 俺は惑星サイヤのサイヤ人、ガーキン! お前の親父の孫悟空と、ベジータにバーダック、ブロリーには世話になったんだ!!」
「先程から思っていました。惑星サイヤはターニッブさんの故郷ですね? では、あなた方は」
コクリと頷き、プリカは悟飯に告げた。
「力を貸してください、悟飯さん。再び、惑星の意思ーー怨霊が目を覚ます前に!」
ただならぬ気配に悟飯とピッコロは静かに互いを見つめ合った後、プリカを見据えた。
未来時空の地球の戦いは、混乱を極めている。
次回もお楽しみに!(^^)!