尊敬する父と、大好きな母、可愛い弟の仇を取るまでは……!
現代の地球・パオズ山。
大自然の中にある山奥。
壮大な滝が流れるのを覗く開けた岩場で、二人の同じ顔をしたサイヤ人が構えを取り合う。
一人は山吹色の道着の上下に青い帯を腰で巻き、青いインナーを着て、ブーツを履いた黒髪の青年。
もう一人は、同じ山吹色の道着のズボンとブーツを履いているが、上衣は青いインナーのみを付けている、左頬に傷のある赤いバンダナを巻いた青年。
二人は無言のまま、地面を蹴って互いに踏み込む。
「だりゃあああっ」
「うぉらあああっ」
両者は、気合いの声を上げて右の拳と拳を合わせた。
強烈な一撃に草木は舞い、長閑に寝ていた動物達が目を向ける。
しかし動物達は、すぐに元の寝る体勢になっている。
同じ顔をしたサイヤ人達は互いにニヤリと笑い、拳を引く。
「まぁた、腕ぇ上がってんな。父ちゃん」
「…テメエもな、カカロット」
互いに嬉しそうな笑顔を浮かべて笑い合うのは、孫悟空と父・バーダックだった。
農作業を終えた彼らの日課は、こうして滝の前で拳を合わせて組手をすることだった。
「よし! んじゃ、始めっか!!」
言うと同時、金色の混じった水銀のオーラを身に纏って、悟空は超サイヤ人ブルーに変身する。
「なんだ、真・超サイヤ人で来ねえのか?」
コレにバーダックが意外そうに眉を上げると、水銀の髪を逆立てた悟空は、ニヤリと告げる。
「ブルーも鍛えとかねえとな。真に頼ってばっかじゃ、基本が強くなったとは言えねえ。それに基本をしっかりと鍛えてりゃ、超サイヤ人4にもなれっかもしれねえしな」
「…テメエも王子も惑星サイヤから離れちまうと、超サイヤ人4にはなれねえんだったな」
「しょうがねえさでも、未来のオラからもらった基本戦闘力は消えてねえ。条件さえ揃えば、なれるはずだ」
「…その時のためにも、腕は磨いとかねえとな」
黄金の気を纏い、戦闘力を引き上げて今の悟空のレベルに合わせて固定させるバーダック。
彼もまた、真に至ることで神の域へと辿り着いた戦士だ。
「父ちゃんが、真に目覚めてくれて助かったぜ。これ以上ねえ修行ができる!!」
「俺もだ。こいつの力を固定させたり引き上げたりするのは、修行で鍛えなきゃできねえからな」
互いにニヤリと笑うと先と同じく、右ストレートをぶつけ合う。
歯をむき出しにし、目を見開いて笑う二人。
そんな親子の下に、もう一人の彼らと同じ顔の白い道着を着た青年が現れた。
「…やってるな」
親子は同時に彼を振り返り、笑う。
「ターニッブ! オメエも組手、混ざっか!?」
「よう、ターニッブ。悟飯はどうだった?」
「っと、そうだった悟飯のヤツは!?」
二人からの言葉に笑みを返した後、ターニッブはバーダックに顔を向けた。
「まだ、来てないのか……」
これにバーダックも頷く。
「…ああ」
「その様子だと悟飯のヤツ、まさか!」
隣で悟空が前のめりになりながら問いかける。
ターニッブは無言で笑みを強くし、頷いた。
「ホントかよ、ターニッブ! うっひゃあ! やっぱ悟飯のヤツ、スゲーぜ!!」
「…真・超サイヤ人に目覚めたか。さすが、俺の孫だな」
隣ではバーダックも笑みを浮かべている。
そんな彼らにターニッブは続ける。
「…悟飯だけじゃない、悟空。お前の宿敵(とも)が、お前と再び戦うために。今のお前と同じか、それ以上に拳を鍛え上げている」
ターニッブの言葉に、悟空の脳裏には一人のナメック星人が思い浮かんだ。
「……ピッコロ、か」
「そうだ」
この答えに悟空は、もう辛抱できなくなったようだ。
「ピッコロもか! ああ、早く戦いてえなぁ、もう!! ターニッブ!何処に行きゃ、あいつらに会えんだ!?」
超サイヤ人ブルーを解除して、拳を握りワクワクしている悟空にターニッブも頷く。
「それが、お前の所に行くと言って、俺より先に修行の地を去ったところなんだが…」
「珍しいな、あのクソ真面目な悟飯とピッコロが寄り道か」
こちらも真・超サイヤ人を解除してバーダックが訝しげにすると悟空が真剣な表情になる。
「死者の都で、なんかあったとも思えねえ。そんなら、ターニッブが気付くかんなぁ」
そんな親子との会話を切るようにふとターニッブは、明後日の方向に顔を向けた。
バーダック・悟空の親子は、ターニッブの見る方を向く。
「ん? どうした? っ!」
「こりゃ……! 時の階段か!!」
金色の光の球が三人の前に現れている。
時空の階段ーー死者の都と呼ばれた、時の狭間の空間に繋がる階段である。
「なんだって、時の階段が……!」
悟空が目を見開いていると、其処から白と赤の巫女服を着た黒髪の女性がゆっくりとこちらの世界に歩んできた。
「プリカ様……」
「おっ、プリカじゃねえか!」
「久し振りだな、どうしたよ?」
三人の同じ顔のサイヤ人が声を上げる中、プリカは静かに一礼してターニッブ、孫悟空、バーダックの順に目を向ける。
「…皆さん、死者の都を復活させようと怨霊が動いています。現在、ターレスさんと悟飯さんとピッコロさんに協力していただいています。力を貸してください……!」
「死者の都を復活…時の狭間には最早、怨霊はいないのではないのですか?」
落ち着いてはいるが、切羽詰まっているのが分かるほどに端的に言ってくるプリカにターニッブが現状を把握しようと問いかける。
「違うのです、ターニッブ。時の狭間ではなく、この世界時空とは違う未来の時空です。その世界の地球は、神を名乗る人物によって人間が皆殺しにされています。怨霊達は、殺された犠牲者の魂を怨霊に堕として吸収し、地球に死者の都を作るつもりなのです……!」
悟空が静かに目を細めた。
「地球人が皆殺しにされたってぇのか…。やったヤツは分かるんか?」
低い声を上げる悟空の表情は眦が吊り上がって目つきも鋭く、怒りに震えている。
他の次元であろうと関係ない。
孫悟空にとって、地球は自分の命よりも大事なモノなのだ。
これにプリカは躊躇いがちに悟空を見上げた。
「亡くなられた魂から聞いた話によると、未来の地球人を皆殺しにした人物は〝孫悟空〞と名乗っているようです」
「「「ーー!!?」」」
プリカの言葉に三人のサイヤ人が、同時に目を見開いた。
ーーーーーー
地下シェルターに避難していたトランクス達とゼノは、強烈な気と気のぶつかり合いに目を見張っていた。
「な、なんだ? どうしてブラックと戦える人間が急に増えたんだ!?それに、この気はフリーザ達と悟飯さん!!?」
「桁が違い過ぎるが、確かに。信じられないエナジーだが…! それにピッコロもか」
「い、一体、誰がブラックと闘っているんだ!?」
ブルマやマイが見守る中、二人の気を感じることが出来る戦士達は、困惑した表情で戦闘が行われている方角をふり返っている。
次々と現れる強大な戦闘力の持ち主たちに、トランクスもゼノも事態を把握しかねていた。
「…トランクス。私は、一度ブラックの所に行ってみる。奴の神の気もとんでもないレベルに引き上がっているが、それよりも。神の域に達した戦士が、あの場所にはあまりにも多すぎる……!」
「俺も行きます。このシェルターの中まではブラック達も追っては来ませんから……!」
二人に向かってブルマとマイが声を張り上げた。
「二人とも気を付けていくのよ!」
「危なくなったら、すぐに帰ってくるんだよ!」
これにトランクスとゼノは静かに頷くと、地下通路をトランクスが先行する。
「こっちです! ついて来てください!!」
「分かった……!」
かつて、人造人間達やセルによって滅ぼされかけた人類が、必死に逃げようとして創られた地下通路。
人々が絶望の中に僅かな希望を託して作り上げられた道を、再びトランクスとゼノが駆け抜けていった。
ーーーーーー
ガーキンは炎の竜巻を放って着地すると、自分と一緒に来た二人の戦士を振り返る。
「…こいつら、頼りになるぜ。さすが、悟空の息子とライバルだ」
黄金の炎を纏う孫悟飯。
白銀の光を纏うピッコロ。
どちらも圧倒的な力を放っている。
「…なんだと? 惑星サイヤに行ったことのないカカロットの息子が、真に目覚めているだと…? それに、あのナメック星人も。いったい、どうなってやがる……!?」
ザンギャに肩を借りていたターレスは、目を見開いて驚く。
圧倒的な力を孫悟飯とピッコロは放っているのだ。
しかも、孫悟飯はターレスと同じく真・超サイヤ人の戦闘力を固定できている。
「し、信じられん。俺がーーカカロットや王子でさえも真・超サイヤ人の力を安定させるのには苦労したと言うのにあの、小僧…!!」
悟飯は静かな翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳で、ブラックを見下ろしている。
その迫力は、真・超サイヤ人となった孫悟空やバーダックすらも凌いでいるとターレスには感じられた。
「素晴らしい。孫悟飯にピッコロめ、よくもここまで力を上げたものだ……!」
「信じられませんよ。つい、この間までは孫悟空の肉体でさえないギニュー隊長と良い勝負だったのに……!」
「何か、急激にパワーをつける修行を積んだとしか思えんな」
神の域に達している魔人ブウ、フリーザ、セルが、今の悟飯とピッコロの力を見て頷き合う。
彼らが掛け値なしに褒めるまでに圧倒的なパワーだった。
「…孫悟飯だと? こいつが? バカな…!! 俺の知る孫悟飯よりも、遥かに…!!」
ブラックが目を見開きながら、先のターレスと同じく黄金の炎を纏う戦士を見やる。
孫悟空の超サイヤ人と瓜二つとなった真・超サイヤ人ーー孫悟飯は静かにその鋭い瞳をブラックに向けた。
「……」
「フン、面白い。先程のターレスよりは長持ちしてくれそうだな…」
ニヤリとするブラックを前に悟飯は何も語らない。
静かに、冷徹な瞳を向ける。
「お前の父親に何をしたか、だったな。知りたいか? ん?」
目を見開きながら、ブラックは笑みを浮かべて告げる。
「それもそうだろうな。気づいているんだろうが、この肉体は、お前の父親のモノだーー! 俺が、殺してやった」
ピクリと悟飯の腕が微かに動く。
ブラックは更に続けた。
「この肉体で最初に殺したのは、お前の父親。そして、その場に居た、お前の母親と弟もーー!!」
瞳を閉じ、自らの肉体に手を当てて微かに悟飯から目を離した瞬間だった。
目の前に黄金の炎が姿を見せる。
これにブラックは笑みをさらに深めた。
「かかったなーー!!」
あえて目を閉じることで隙を見せ、挑発させることで目の前に来させる。
ブラックは狙い通りに右手刀に気を纏わせ、光の刃を抜いて孫悟空に瓜二つとなった孫悟飯の腹を刺し貫こうとする。
ーーしかし。
甲高いガラスの割れるような音が鳴り響いて、薄紅色の刃は真・超サイヤ人が身に纏う黄金の炎に砕かれた。
「な、なんだと…?」
目を見開いたブラックの灰色の瞳を、静かに黒の瞳孔が現れた翡翠眼が見据えてくる。
「…それで終わりか」
「!! 舐めるなぁ!!」
拳を握り締め、ブラックは悟飯の顔を打ち貫く。
脛を左足底で蹴り、返す刀で左のハイキックを横顔に向けて打つ。
蹴り抜いた左足を下げて踏み込みに利用し、右拳を顔面、鳩尾、顎に向かって三連打する。
それらは、まともに悟飯を打ち貫き、顎を跳ね上げた姿勢で後方に下がりながら止まる。
「どうした。孫悟飯よ、ガードもせずに受けるだけか ?」
攻撃をまともに浴びるだけの悟飯にブラックは左手を顔の横に上げ、右の拳を腰に置いた構えを取る。悟飯は、ゆっくりと顔を元の位置に戻す。
「……ッ」
全く動じていない瞳が、そこにある。
(馬鹿な。俺の全力の攻撃をまともに喰らって、コイツ……!)
ブラックの目が驚愕に見開かれるも、悟飯は静かにノーガードのまま、淡々とこちらに向かって歩いて来る。
「チッ!」
舌打ちと共にブラックは攻撃を繰り出す。
これに悟飯もはじめて動いた。
拳と拳、蹴りと蹴りをぶつけ合う。
全く同じフォームで、両者は鏡に映った様に互いに連撃を放ちあう。
悟飯は全くの無表情で、ブラックの攻撃に自分の拳と蹴りを合わせていく。
黄金の炎と薄紅色の光が幾重にも空間に線を引き、ぶつかり合う。
やがて、両者はゆっくりと離れる。
「全くの互角、か」
「…いや」
ガーキンが目を細めながら呟くと、ターレスが頬に汗を流しながら否定した。
ブラックが静かに己の両手足を見下ろす。
「…貴様…!!」
相手の打撃によってボロボロにされた両手足がある。
圧倒的な力の差ではない。
僅か、ほんの微かに悟飯の攻撃力が勝っている。
その僅かを何百回と繰り返す応酬で、悟飯はブラックの両手足をここまで損耗させたのだ。
「孫悟飯め、無限に気が上昇する真・超サイヤ人の力をああ使うのか!! 引き上がった力で押すのではなく、相手よりもわずかに上回らせるだけで固定して、ほとんどブラックの戦闘力が引き上がらないようにしている…!!」
「お父さんとは、違った意味で頭が切れますね。相手の攻撃力に合わせて戦闘力を上げるブラックに対抗するならば、あの戦法は確かに効果的だ……」
「だが、ブラックの力を見誤ればあの戦法は通じなかった。弱すぎれば自分が打ち負かされ、強すぎればブラックを強化してしまう。それをーーギリギリのところで見極めて力をコントロールしている… 」
ブウ、フリーザ、セルの言うとおりだった。
ブラックは自分の力を引き上げることができずに、一方的に攻撃力を削がれている。
「何だと孫悟空の肉体を手に入れた私が、ああも一方的に…!!」
不死身となった未来時空のザマスから見ても、今の孫悟飯の力は底知れない。
「孫悟飯、このような戦法を使ってくるとは…」
忌々しそうに睨みつけてくるブラックだが、悟飯の表情は静だった。
ただ静かにーー怒りの瞳をブラックに向けていた。
「もう、終わりか?」
「神に向かって、その不遜な態度ーー死を持って償うがいい!!」
拳を握って構えようとするブラックの目の前に孫悟飯は踏み込んでいる。
放とうと踏み込んだ勢いをそのままカウンターにされて、ブラックの腹に悟飯の拳がめり込んだ。
「ぐぅおお…!!」
あまりの痛みにうめき声しか、ブラックは出せなかった。
姿勢が前のめりになって顎が下がると同時、強烈な蹴りで顔を跳ね上げられる。
「ガハァッ」
後方へ吹っ飛ぶブラックだが、その背後に孫悟飯は高速移動で姿を現した。
ダメージから立ち直る前に、悟飯の無慈悲な拳が顔面に入り地面に身体ごと叩きつけられる。
「グ…ハァ…」
あまりの威力に身体が縦に一回転しながらバウンドして、悟飯の正面に向かい合うように顔を向けた時。
「うぉりゃぁああああっ!!!」
無表情だった悟飯が烈火の如く咆哮し、無数の拳蹴打をブラックの全身に叩きつける。
本来ならば、打撃の勢いに押されて後方へ吹き飛ばされるはずのブラックの肉体は、慣性の法則を無視したように悟飯の打撃に吸引されるように空で固定され、徹底的に彼の打撃を味あわされている。
「おのれ孫悟飯め……!」
ザマスが叫びながらブラックを追い詰める悟飯に向けて金縛りの神通力を使おうとした時、目の前に白銀の光を纏うナメック星人が現れた。
「貴様…!」
「悟飯の邪魔はさせんぞ」
静かに告げるとナメック星人ーーピッコロは一気にザマスの懐に飛び込み、強烈な拳を腹に見舞う。
「うぐぉっ!」
前のめりになって顎を下げるザマスを、長い右脚で後ろ回し蹴りを繰り出して吹き飛ばした。
瓦礫に叩きつけられて磔になり、ザマスは動けなくなる。
「そこで大人しくしていろ。不死身の貴様は、奴の後で処理してやる」
「…おのれぇ、ピッコロォ!!」
恨みのこもった声を前に、ピッコロは淡々とした表情で見下ろしていた。
一方、悟飯のラッシュをガードも出来ずにまともに受けるブラック。
肘打ちが顔面に入り、鮮血が飛び散る。
その返り血を更なる鮮血で洗うような無慈悲且つ徹底的な拳が、ブラックの肉体に打ち込まれていく。
「あの苛烈な攻め。孫悟飯め、嫌な記憶を思い出させる……!」
「…つ、強い…! あの情け容赦のない荒々しい戦い方……! ナメック星での孫悟空…!? いや、アレよりも遥かに恐ろしい攻めだ!! バカな、あの男はついこの間まで私の第一形態で遊べたはずなのに……!!」
「…これが、あの孫悟飯だと言うのか力を振るうことを躊躇わず、慢心も油断もせずに…!?」
セル、フリーザ、ブウが目を見開いている。
彼らの記憶にある孫悟飯と今の真・超サイヤ人は、あまりにかけ離れている。
「ブラックって野郎が哀れに見えて来るぜ。とんでもねえ奴を怒らせたな…!」
「…見違えたぜ。あの甘ったれた小僧が、何と言う立派なサイヤ人ぶりだ…!!」
「化け物みたいな強さだったブラックを、ああも一方的にのしちゃうなんて…!」
ガーキン、ターレス、ザンギャも圧倒的な力の差に目を見開いている。
同じ力を持つターレスから見ても、同じ力を振るうサイヤ人達を知るガーキンから見ても。
今の悟飯は、圧倒的だ。
強烈なラッシュの止めは天を突き刺すほどに蹴り上げられた右脚。
顎先を足底で撃ち抜かれた時、慣性が戻ったように一気に吹っ飛ばされるブラック。
「ぐわぁああああっ」
ようやく悲鳴を上げることを許されながら、全身を血まみれにして天を舞うブラックを。
しかし、悟飯はまだ逃がさない。
ブラックの左足をジャンプして右手で掴み取ると、地面に背中から叩きつける。
強烈に打ち付けられ、動きが止まるブラック。
即座にバク転しながら下がると、悟飯は右拳を胸の前に掲げて青白い光を纏わせる。
それを冷厳な瞳で見下し、腰の辺りに一旦引いて構えると、拳を開いて掌を前方に向かって突き出した。
「…くたばれぇええええ!!」
強烈な紫電を纏った青白い光線が右手から放たれ、千鳥足ながらも立ち上がろうとするブラックに迫る。
「お、おのれ…」
両手で気を練って打ち返そうとしてボロボロにされた両手を見下ろし、ブラックは目を見開く。
「孫。孫ーーー悟飯ぁああああああああんっ!!!」
絶叫が廃墟に響く中、青白い光線がブラックを飲み込んでそのまま爆発した。
絶望の空を打ち貫く、青白い光の柱。
雲を晴らして青空がその向こうに広がっている。
巨大な溝とクレーターを作り上げながら、悟飯は無表情で睨みつけていた。
「…私を葬った片手のかめはめ波か。相も変らぬ強さだーー」
「いや、この強さ。真・超サイヤ人とは言え、常軌を逸しているぞ…!」
「蛙の子は蛙…! 厄介な親子ですよ、本当に…!!」
セル、ブウ、フリーザが見守る中。
ブラックがボロボロになった肉体を起こして、立ち上がる。
拳も握れず、まともに身体を支えることもできない脚を見下ろして震える。
「おのれ…孫悟飯…! よくも……!」
「…黙れ」
「何ぃ!?」
静かに悟飯は告げる。
「ーー黙れと言ってるんだ…」
言うと同時、ブラックの目の前に悟飯は現れて蹴り飛ばす。
「ぐぅあっ!!」
ボロボロになった敵を前に、かつての悟飯ならば手を緩めただろう。
甘さ故に油断して、反撃されたかもしれない。
優しさ故、逃げるチャンスを与えたかもしれない。
背中から叩きつけられて体で地面を削りながら、後方で倒れるブラック。
薄紅色の光が消え、黒髪に戻る。
そんなブラックの前に立ち、ゆっくりと胸倉を掴んで吊り上げると顔をこちらに向けさせ、悟飯は目を覗き込むようにして睨みつけながら、無表情に低い声で告げた。
「…父さんの肉体を使って、よくも人を殺したな」
「き、きさ…ぐぅおっ!?」
言葉を発しようとするブラックの腹を悟飯の拳が打ち抜く。
うめき声を上げながら言葉を途中で切るブラック。
それを見下ろしながら、悟飯は続ける。
「よくも父さんの肉体を奪ったな」
うめき声を上げるブラックに情け容赦のない一撃が顔面に入る。
「あ…ぐぅ…!!」
痛みに震え、拳も握れずにブラックは悟飯を睨み返す。
その目を無慈悲に見据えて、悟飯は怒りの表情に変わった。
「よくもーーよくも、俺に父さんを殴らせたなぁああああああっ!!!」
掴んでいた胸倉を手放し、強烈な拳が顔を打ち貫く。
その一撃に仰け反りながらも、ブラックの肉体は倒れることを許されない。
「消え失せろ!! 究極(アルティメット)ーー!!」
両手首を上下に合わせて組み、掌を前方に向けた後で腰だめにたわめて構える。
銀河のような螺旋を光の粒子が描いて、一つの強大な光を放つ球を練り上げる。
黄金の炎は猛り狂い、光球は全てを滅ぼさんと照らし尽くす。
「おのれ…おの、れ… 人間…っ!!」
目を見開くブラックに向けて、悟飯は怒りの咆哮を上げた。
「かめはめ波ぁああああああっ!!!」
両手が突き出され、強烈な光が全てを撃ち抜いていく。
「人間めぇえええええええっ!!!」
廃墟となった都の全てを荒野に変えながら、圧倒的な力が地球から大気圏外を打ち抜いて、宇宙の闇を照らしながら消えて行った。
光が晴れて爆煙が晴れたそこには、何もない。
ブラックの姿は跡形もなく消えていた。
「…逃がしたか」
静かに悟飯はピッコロを見る。
そちらを向くとピッコロは悟飯に頭を下げた。
「すまん。ザマスを逃がした……」
申し訳なさそうなピッコロに向かい、悟飯は静かに瞳を細めて首を横に振る。
「…いえ。まさか、キビトさんの瞬間移動を使えるとは。意外でした」
止めを刺せなかったことを心のなかで悔みながらも、今の悟飯はそれを表情には出さない。
静かに天を見上げるのみだった。
次回もお楽しみに!(^^)!
次回は明日の午前7時予定しております_(-ω-`_)⌒)_