ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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怒りを爆発させた孫悟飯の力は圧倒的で。

ブラックとザマスは逃げざるを得なかった。

だが、界王神界に逃げた先で悪は新たなる力を得るのだ……。


渦巻く邪悪 絶対の神

 

 界王神界にてーー。

 

 ザマスは、ボロボロにされたブラックを大地に仰向けに寝かせると右手を彼の胸に当てる。

 

「哈ぁーーっ!」

 

 気合を込めて光を掌から放ち、ブラックの肉体を白く輝かせる。

 

 傷が一気に回復し、ブラックはゆっくりと瞳を開けた。

 

「…どうだ?」

 

 問いかけるザマスにブラックは己の肉体を見下ろし、拳を二、三回握ることで感覚を確かめる。

 

「ああ、助かった」

 

 体に異常がないことを確認すると、ブラックはザマスに頭を下げて礼を言った。

 

 悟飯やターレス達に相対した時とは別人のように礼儀正しい彼の態度に、ザマスも穏やかな笑顔を浮かべた後、鋭く表情を引き締める。

 

「どの世界から来たか知らんが。まさか、ピッコロと孫悟飯があれほどの力を持っているとは。神の気を纏う超サイヤ人になったお前が、ああも一方的にやられるとは思わなかったぞ」

 

 相棒であるザマスの言葉に、ブラックは首を横に振る。

 

「…いや。孫悟飯の力、あんなものではない。この身で受けた俺には分かる。初めにノーガードで俺の拳を受けたのもおそらくは、俺の力を計り無駄な引き上げをしないためだろう」

 

 ザマスが目を見開く。

 

「だからと言って、ほぼ同じパワーで殴り合っておきながら一方的にお前がやられるとは」

 

「俺の打点をズラした上で、自分の打点を合わせる。大した腕だ。孫悟飯ーー敵ながら、感動したぞ」

 

 ブラックは自分の肉体を見下ろし、拳を握り薄紅色の気を纏う。

 

 黒髪は天に向かって逆立ち、薄紅色の光を放っている。

 

「…素晴らしい。一気に戦闘力が跳ね上がったぞ!!」

 

 笑うブラックにザマスも笑みを浮かべる。

 

「…確かにな。お前は更なる高みへと至ったようだ」

 

「ああ。だが……!」

 

「だがそれでも、孫悟飯やターレスの変身した真・超サイヤ人の力は侮れんか」

 

 ザマスの言葉にブラックもコクリと頷く。

 

 この二人をして、地球から遥か離れた界王神界まで逃げたのは、はじめてだった。

 

「…ターレスと孫悟飯。俺の知らない、神の気を纏わずに神の域にある超サイヤ人に至った奴らの力は決して侮れん。気が無限に上昇するとはな」

 

「ダメージを受ける度にパワーが上がるお前に似ているが違ったな。相手の力に合わせて気を上げるだけでなく、自分の意思でも気を高めることができる。いわば奴らの力は、お前の上位互換に当たると言ったところか」

 

「…認めよう。神たる俺の力が人間に劣ったことはな。しかし故に俺は進化する。超サイヤ人の真の姿。必ず手に入れてやるぞ!!」

 

 ブラックは高笑う。

 

 追い詰められ、敗北しそうになったというのに尚笑う。

 

 次に会う時は勝てる。

 

 自分が、孫悟空の肉体を得た神が、人間如きに成れた姿に成れないはずがない。

 

「…いや。神たる俺が真に至れば、更なる姿を見せられるだろう。くくく、はははは!」

 

 ブラックの哄笑が界王神界に響いている。

 

「…さて、それはどうかな?」

 

「ん?」

 

 笑うブラックの横から第三者の声が聞こえた。

 

 ブラックとザマスが睨みつけた先には、白銀の髪をリーゼント風にした大柄な黒づくめのボディスーツの男。

 

「貴様は、ベビー!?」

 

「いったいどうやって、この神域に! 界王神界に来た!?」

 

 動揺する二人に向かって、ベビーは静かに笑みを浮かべる。

 

「驚くには値せん。俺はベビーの姿と強さ、記憶を真似た怨霊の塊。思念体なのだからな。時間や距離といった概念とはかけ離れた存在ということだ」

 

 両の手を広げて笑うベビーに、ブラックは静かに残忍な笑みを返した。

 

「わざわざ俺にーー神の手によって、殺されに来たか! 不届き者め!!」

 

 左手を顔の横に置き、右拳を腰に置いて構えるブラックにベビーは両手を広げる。

 

「随分と辛気臭い神域だーー。コレが貴様の作る世界か。惑星の意思たる我が、世界を束ねると言う神の力を見せてもらおう」

 

 拳を握りベビーもまた構える。

 

「そう。己の信念のためならば、人間はおろか神をも殺す貴様の正義をな…!」

 

 灰色と黒の気を纏うベビーに対し、ブラックも超サイヤ人ロゼとなって挑みかかった。

 

「ーー征くぞ、亡霊よ!!」

 

 元は小柄だったベジータの面影など全くない、190センチを超える大柄の筋肉質な肉体を持ったベビーは、その巨体に似合わないスピードで殴り返してくる。

 

 二人の拳がぶつかり合い、更に気を高めていく。

 

 右ストレートをぶつけて互いの動きを止めると、そこから拳と蹴りを数百発も打ち合う。

 

 空に螺旋を描きながら、ぶつかり合う薄紅と灰色の光。

 

(コイツーー! 戦闘力が先ほど地球でやりあった時よりも遥かに上がっている…!! どういうことだ!!)

 

 目を見開くブラックに対し、笑みを返すベビー。

 

 壮絶な打撃の応酬は、互いに上段蹴りを放って刀の斬撃のようにぶつけ合い、距離を置いていったん止まる。

 

「…なるほど。これが神の気とやらを纏った超サイヤ人の力か。惑星サイヤの記憶とベビーの肉体を併せ持つ俺にとっては、中々に興味深い」

 

「なんだと?」

 

 問いかけるブラックに、ベビーの姿を模した惑星サイヤの意思は笑う。

 

「その変身の基となる姿は超サイヤ人ブルーというのだったな? 本物のベビーは本来ブルーツ波を浴びることで黄金の大猿に変身し、超サイヤ人4とも渡り合えるほどになるのだが。そのブルーと言う変身、パワーアップの倍率で言えば超サイヤ人4にも匹敵している。ブルーツ波を浴びる必要も、尻尾を生やす必要もないわけだ」

 

 嬉しそうな笑みを浮かべるベビーに、ブラックは訝し気な表情になる。

 

「何が言いたいのだ、貴様?」

 

「簡単なことだ。つまりーーこうだ!」

 

 瞬間、ベビーの目が大きく見開かれる。

 

 蒼いカバーグラスがかけられたような目には血のように紅い十字のラインが入り、その交差点に失われていた瞳が浮かび上がる。

 

 その瞳は貴金属のような銀色に黒の瞳孔が現れたものだった。

 

 同時、リーゼントのような逆立つ銀髪が超サイヤ人ブルーと同じ青色に変化し、纏う気の色もブルーに準ずるものとなる。

 

「超ベビーブルー、と言ったところかな? サイヤ人の王子ベジータの肉体と神の気を纏う超サイヤ人の記憶を持つ俺には、ベビーの肉体でも簡単に再現できる」

 

 瞬間、ベビーの姿をした超サイヤ人ブルーはブラックの目の前に現れる。

 

「それが、どうした!!」

 

 強烈な左ボディを放つベビーだが、拳はブラックの右膝で蹴り上げられ目標をずらす。

 

 互いに右のストレートを間髪入れずに放ち合い、互いに自らの顔面の前に左手を置いて掴み止める。

 

 先程よりも激しい殴り合いだが、ブラックもベビーも手を止めることなく技を繰り出す。

 

 互いに右肘をぶつけ合い、左ストレートを合わせて距離を開くと同時に気を放つ。

 

「かめはめ波ぁ!!」

 

「ギャリック砲!!」

 

 薄紅色の光線と蒼紫色の光線が至近距離でぶつかり合い、一つの白い光の塊となって互いに向けて押し合う。

 

「ぬううう!!」

 

「ぐ、うう!!」

 

 やがて二人の中央でできた光の塊は相殺し、爆発した。

 

 ブラックは灰色の瞳を細めてベビーを見据える。

 

「特異点。数多の次元から無限の可能性をその身に宿すとは、こういうことか…!!」

 

 忌々しそうに吐き捨てるブラックに、ベビーは静かに笑いかける。

 

「更に俺の力には、もう一つある。生身の肉体を手に入れることができれば、俺は心・技・体の全てを手に入れることができるということだ。それがどういうことか、分かるか?」

 

「貴様は肉体を気で練り上げた紛い物、か。だからあらゆる存在に変身できるという訳だ。だが生身の肉体を手に入れたら、肉体を変える術は使えなくなる」

 

「…そうかな?」

 

 構えるブラックに、ベビーの姿をした惑星の意思は笑う。

 

「貴様を倒せば、孫悟空の肉体と最強の界王の魂。どちらも手に入る。何たる僥倖」

 

 ベビーの姿をした存在は、青と紫の光を放つ人間の頭程の大きさの球に変化する。

 

 気で練り上げた肉体を消し、力の塊へと変わったのだ。

 

「…ふざけた奴め。神に管理されるべき惑星の意思が、神に逆らうなどとは」

 

「全くだ。醜悪、この上ない存在だな」

 

 ブラックの隣にザマスが現れ、構えを取る。

 

 コレに惑星の意思は笑い声を上げる。

 

「…決めたぞ。まずはブラックよ、貴様の半身から戴いてやろう。貴様に絶望を与えてやるためにな」

 

 言うや否や、光の塊が弾けて消える。

 

「…なに?」

 

 訝しげにするブラックとザマス。

 

 突如、ザマスの足元から光の渦が生じ、螺旋を描きながら全身に纏わり付いた。

 

「こ、これは、何だ!? ぐ、あああああ!??」

 

 ザマスの苦悶の声が響く。

 

「…なんだと!?」

 

 ブラックがザマスを振り返った後、光の塊となった惑星の意思に向き直れば、既に其処には何も居ない。

 

「まさか、不死身となったザマスの肉体を手に入れるつもりか!?」

 

 目を見開いて問いかけるブラックの前で惑星の意思は笑う。

 

 男とも女とも、幼子とも老人とも取れる声で。

 

「…不死身の神の肉体と魂を得れば、我は不滅となるのだ。クク、ハハハハ!」

 

 頭を両手で掴み、悲鳴をあげるザマスはやがて苦しむのをやめて、糸が切れた人形のように力を抜く。

 

「…ザマスよ、気をしっかりと持て! 惑星の意思などに乗っ取られるなどと、無様をさらすな!!」

 

 焦った声を上げるブラックの前に、ゆっくりとザマスは笑いかける。

 

「当たり前だ。私は神だ、全てを凌駕する完全なる存在」

 

「…! 流石に焦ったが、どうやら奴はお前に取り込まれたようだな」

 

「ああ。そして、ブラック。次は、お前を取り込んでやろう」

 

 目を見開くブラックにザマスはニヤリと笑う。

 

「我こそは惑星サイヤの意思にして、絶対の界王ザマス。あらゆる次元の可能性を取り込み。あらゆる存在の血肉を我のものとする!!」

 

「…ザマス! 貴様、いったい…!?」

 

 訝しむブラックの前にザマスの肉体は虹色の光を放ち、超サイヤ人ロゼと同じ色のオーラを纏う。

 

 虹色の光の粒子がザマスの肉体から剥がれ落ち、現れたのは超サイヤ人ロゼとなった自分と同じ髪型をしたザマスだった。

 

「…そ、その姿は!?」

 

 焦るブラックを前に、超サイヤ人の髪型になったザマスは笑いかける。

 

 服装もザマスとブラックを足して割ったような物になっている。

 

「…崇めよ、讃えよ。我は絶対の神ーーザマスなり」

 

 ブラックが構えながら、呟く。

 

「ポタラが、二つだと!?」

 

 ザマスの両耳には、ブラックの左耳にある耳飾りと同じポタラが付いていたのだ。

 

「…この姿は、貴様とザマスが合体した可能性を取り込んだものだ。片方のザマスをベースにしているから、非常にやり易かった」

 

「…紛い物が、私の半身を取り込むとは。許さんぞ!!」

 

「真・超サイヤ人ーー。貴様が至るならば、この我を打ち倒す事が出来るだろう。至るならばな。その上で、我は貴様を取り込むとしよう」

 

 ニヤリと笑うザマスにブラックも瞳を細める。

 

「なるほど。俺を真・超サイヤ人にした後で取り込むつもりか。そんな打算など、無意味だと教えてやる!!」

 

 互いに薄紅色のオーラを纏い、漆黒の衣服に赤の帯を締めた両者が拳をぶつけ合った。

 

ーーーーーー

 

 未来世界の北の都では、ブラックとザマスを退けた戦士達が互いに向き合っている。

 

 片方はターレス一味。

 

 もう片方は、孫悟飯とピッコロであった。

 

「…つまり貴様らは次元の狭間で、ターニッブによって鍛え上げられたって事か。そして、この世界を見に来た」

 

 ターレスの問いに悟飯も頷く。

 

「ああ。俺やピッコロさん。それにもう一人の俺は、本来なら元の世界に帰るつもりだった。だが、真・超サイヤ人に目覚めたからなのか、気の流れを感じられるようになった俺は、不穏な気配を垂れ流すこの未来世界を見に来たって訳だ」

 

「…今度は、こちらの質問だ。何故、別次元の孫悟空に殺された貴様が、フリーザ達を引き連れ、悟飯と同じ真・超サイヤ人に目覚めている?」

 

 悟飯の説明が終わるや否や、即座にピッコロがターレスに問いかける。

 

「…話は長くなるが、順を追って説明してやろう」

 

 ターレスが肩をすくめながら、淡々と惑星サイヤでの出来事を述べていく。

 

 死者の都と呼ばれた亡者の巣。

 

 あらゆるサイヤ次元の可能性が集う場所。

 

 億の歴史を重ねた惑星サイヤの怨霊。

 

 対するは、真・超サイヤ人。

 

「…真のサイヤ人リューベ。その人が、最初の超サイヤ人って事か。会ってみたかったな」

 

 同じ力に目覚めた悟飯には、リューベが他人には思えなかった。

 

 そんな悟飯の隣でピッコロがターレスに問いかける。

 

「…なるほど。つまり、惑星サイヤの可能性が怨霊の塊であり、お前は怨霊の力を取り込んで復活した後、フリーザ達を従えた訳だ」

 

「…まあな。真・超サイヤ人の力を手にいれるついでだったが、フリーザ様やセルとブウを復活させられたのは好運だったぜ。おっと、従えていると言っても今や、フリーザ様達は共犯者ってところだ。なあ?」

 

 ターレスが気さくに笑いかけるとフリーザが肩をすくめながら、応えた。

 

「さあね? そんなことより、ターレスさん。惑星サイヤの意思とやらと、さっきの孫悟空さんの偽者をどうやって始末するかを考えないかい?」

 

 セルとブウもニヤリと笑いながら頷く。

 

「確かにな。どちらも、かなりの使い手だ、底が見えん」

 

「…ブラックとやらはダメージを受けるごとに力を引き上げ、惑星の意思は多次元の可能性を取り込む、か」

 

 考え込む二人に向かってピッコロは告げる。

 

「そろそろ言っておくが。俺達は敵同士だ、慣れ合うつもりはないぞ」

 

「腕が上がった割には相変わらずの石頭だな、ピッコロよ」

 

「なんだと?」

 

 セルの言葉に静かにピッコロの声が下がる。

 

 それを思わず制したのは、間で状況を見ていたガーキンだった。

 

「おいおい! なにも今、始めることはねえだろ!! まだ何も解決してねえんだからよ!!」

 

「下がっていろ、ガーキン。こんな奴らと組むぐらいなら俺と悟飯、お前でやった方が早い」

 

「今は、使えるもんは使おうぜ。お前達とターレス達に何があったのかは分かんねえけどよ。優先順位を間違えると碌なことにならねえよ」

 

「一理ある。だが、コイツ等が信用できないってのが一番の問題だ。信用できない味方は敵よりも質が悪い」

 

 そんな会話をする二人にターレスがフッと笑った。

 

「確かに。貴様ら、カカロットの仲間と手を組むのは俺も御免だ。だが、俺達にも優先順位がある。貴様らの相手は後だ。まずはブラックとか言うサイヤ人の紛い物を叩き潰すことの方が先決だ」

 

「おや? ベビーじゃないのかい?」

 

「この俺の、サイヤ人の血が騒ぐのさ。あの紛い物を潰せってな」

 

 拳を握って告げるターレスは、地面に落ちたマントを拾い上げて肩に付ける。

 

 それだけでベルトタイプだった鎧に肩当てが復元された。

 

 ターレスはマントを翻し、ピッコロ達に背を向ける。 

 

「行くぞ。とりあえず、この世界にどれだけの人間が残っているかは知らんが。ブラックに関する情報を探らねばな」

 

「情報収集は足が基本、か。僕はそういうまだるっこしいのは嫌いなんだけどね」

 

「文句を言うなよ、フリーザ様」

 

 言い合いながらターレスを筆頭にフリーザ、セル、ブウとザンギャが舞空術で去っていった。

 

 これを見送りながらガーキンは苦い顔になる。

 

「ああ。ただでさえ人数が欲しいって時にーー」

 

「ガーキンさん、貴方の事情は分かりますが。俺もピッコロさんの意見に賛成です。ターレスはともかく、フリーザ達は本当に卑怯ですから」

 

 真剣な表情で応える悟飯にガーキンも頷く。

 

「そうか。なら、しょうがねえな。とりあえず俺達もブラックって野郎の情報を集めるか?」

 

「それならば、問題あるまい。そろそろ、解説をしてくれる奴が来る頃だ」

 

「ん? ピッコロ、そいつは誰の事だ?」

 

 ガーキンの問いにピッコロはニヤリと笑うと、拳を握り気を放った。

 

「そこだぁ!!」

 

 廃墟と化したビルの一つに当たり、爆発する。

 

 その物陰から、二人の人間が現れた。

 

「…あなた達は!!」

 

 目を見開いて驚いた顔をしている、デニムのジャケットと赤いスカーフを巻いた、剣を背負う青い髪をした青年。

 

 その隣には、独特の左右に跳ねた黒髪を持ち、足先まである赤い羽織を黒い道着の上に着た男の二人組。

 

「トランクスさん? それにーー父さん、なのか? いやーー」

 

 悟飯が目を鋭く細めながら、父親と同じ顔をした男を見据える。

 

「さっきの男に似ているが、違う。貴方からは邪悪な気を感じない。それに、父さんの気も感じる?」

 

 悟空とそっくりの顔をした男も、悟飯を見て驚いている。

 

「ご、悟飯。それにピッコローー! 何故、お前達が…!!」

 

「…やはり父さんではないのか。だけど、完全に別人とも思えない。一体?」

 

 訝しむ悟飯の隣でピッコロが邪悪な笑みを浮かべて告げる。

 

「何を寝言を言ってる!? 先程のブラックの仲間か!! トランクスの偽者まで用意するとは、ご丁寧なことだな!!」

 

「? ピッコロさん?」

 

 突如、嬉しそうに笑いながら言う師匠に、悟飯が不審そうな表情で振り返る。

 

 彼は、かつての大魔王と同じような笑みで告げた。

 

「化けの皮を剥いでやろう!!」

 

 構えを取るピッコロに蒼い髪の青年ーートランクスが両手を広げて、悟空そっくりの男ーーゼノを庇うように前に出る。

 

「待ってください! 俺は偽者じゃありませんし、この人はーー!!」

 

「問答無用だ! 行くぞ、トランクス!!」

 

「ピッコロさん! 貴方、俺を本物のトランクスだと分かった上でーー!!」

 

 目を見開くトランクスに対し、ピッコロは殴りかかった。

 

 強烈な拳を受け止め、トランクスは目の前に居るピッコロを見据える。

 

「は、話を聞いてください!!」

 

「断わる。お前も、いつまで寝ぼけている? お前の世界のピッコロは既に死んでいる。俺達がピッコロや悟飯の姿をしているからと言って、味方だとは限らん!! そんな甘ったれたことで、未来の世界を守れると思っているのか!!」  

 

「ーー!!!」

 

「俺に話を聞いてほしいなら、まずは俺と戦え! 悟飯の弟子である貴様の実力を見せてみろ!!」

 

 強烈な拳をガードの上に受け、下がらされるトランクス。

 

 静かにピッコロは左手を前に突き出し、右手を顔の横に置いて指を曲げて構える。

 

「来い! この世界の悟飯に代わって、俺が稽古をつけてやる!!」

 

 ガードを下げ、トランクスも真っ直ぐにピッコロを見返した。

 

「…はい!!」

 

 金色のオーラを身に纏い、髪を天に向かって逆立て超サイヤ人2へと変身する。

 

 青い髪は輝く金色に、瞳は翡翠色に変化した。

 

「…全力で行きます! ピッコロさん!!」

 

「ククク、それでいい。素直に楽しみだ、未来の超サイヤ人にして悟飯の弟子。ベジータの息子のお前の実力を見せてもらおう」 

 

「実は、俺もです。俺の先生だった悟飯さんの師匠である貴方と、こうして拳を交えることが出来るなんて…!!」

 

「フン。ならば、このピッコロ様の実力を見せてやろう!! 行くぞぉおおお!!」

 

 紫色のオーラを纏い、ピッコロは一気にトランクスの目の前に立つ。

 

 凄まじい切れの拳を繰り出すピッコロに、トランクスも拳を握ってすぐさま応戦する。

 

 強烈な打撃の応酬を繰り出しあう両者だが、徐々にトランクスが後ろに下がり始める。

 

(超サイヤ人2になった俺が、押されているーー!!)  

 

 目を見開くトランクスに、ピッコロは余裕の笑みを浮かべて告げた。

 

「どうした? この程度の拳も真っ向から受けられんのでは、拍子抜けも良い所だぞ!!」

 

 強烈な力任せの拳に、トランクスはガード越しに仰け反る。

 

「ぐぁ!? くそ!!」

 

 トランクスは体勢を無理矢理整えて、左の拳を突き出すも、ピッコロの左手が静かに突き出されて掴み止められる。

 

 次の瞬間には、顎に切れ味鋭い蹴りを喰らわされている。

 

「ぐ、はぁ!!」

 

 宙で後ろにバク転しながら、距離を置いて着地するとピッコロの纏うオーラは先までの禍々しい紫色ではなく、神々しい青だった。

 

「打たれてすぐに打ち返す負けん気は買おう。だが、攻撃が単調過ぎるのだ!」

 

(なんだ? 気の質が変わった?)

 

 目を見開くトランクスを前に、ピッコロは纏う気の色を生命力に溢れた緑色に変える。

 

「次は、手数で押すぞ」

 

「え?」

 

 瞬間、ピッコロの手が無数に増えたようにトランクスには見える。

 

(そんな、超サイヤ人2になった俺でも分身して見えるほどの手数だって言うのか!!)

 

 咄嗟に拳を握って繰り出すトランクスだが、彼が一撃打つ間にピッコロは五発のパンチを繰り出してくる。

 

(ち、ちがう!? 手数が、圧倒的にーー!!)

 

 一瞬で両腕をガードに回し防戦一方になるトランクスだが、ピッコロはその動きに叫んだ。

 

「そんな甘いガードで、俺のラッシュを防げるものか!!」

 

 両腕を顔の前でクロスさせてガードするトランクスにピッコロは連撃を放ちながら踏み込み、左のショートアッパーをトランクスのガードの下から突き上げる。

 

「ーー!?」

 

 正面からの連撃に備えて力を一方向に加えていたトランクスはアッサリとガードを上に跳ね上げられて崩され、ピッコロの右のストレートが顔の正面と左右の胸、鳩尾に突き刺さる。

 

「が、あぁ!」

 

 意識が半分飛びながらも、咄嗟に後方へ跳躍して逃げようとするトランクスだが、その背後に白い気を纏ったピッコロが先程までとは比べ物にならないスピードで先回っていた。

 

「終わりだ」

 

 軽く足先を当てるような蹴りを後頭部に喰らい、トランクスは大きく吹き飛ばされる。

 

 壁にぶち当たって止まるように手加減された一撃ではあるが、既にトランクスは立っているのもやっとだった。

 

(ど、どうなってるんだ…? 強さもそうだが、まるでピッコロさんの中に四人の戦士が居て。その人達と同時に闘っているようだ)

 

 肩で息をしながらピッコロを見上げる超サイヤ人2のトランクス。

 

「圧倒的な力でねじ伏せる魔力。どんな攻撃も見切る神技。どれだけ繰り出しても尽きることないスタミナ。そして俺様本来のスピード。中々のものだろ? トランクス」

 

「い、一体何があったのですか? ピッコロさん」

 

 呆然とするトランクスにピッコロはニヤリとした後、右手と左手を大きく開き気を高めていく。

 

「更に、この四つの気を同時に高めると…!!」

 

 蒼い光を纏った白銀のオーラがピッコロの全身を纏う。

 

 思わずトランクスは呟いた。

 

「なんてプレッシャーだ。ピッコロさんの気が、強くなりすぎて上限がまるで分からない…!!」

 

 これにピッコロはニヤリと笑い告げる。

 

「…こいつが究極ナメック人の力だ。俺のようなナメック人でも極めると、これほどの域にまで達することができる。戦闘民族サイヤ人の血を引くお前ならばーー! その先を目指せ!!」

 

 鋭い瞳で言われる。

 

 トランクスは静かにピッコロに頭を下げた。

 

「…参りました。そして、稽古ありがとうございます!」

 

 ガーキンがそんな二人を見て呟く。

 

「要は、稽古をつけてやりたかったってことか? ま、話がようやく進むんなら越したことないが。な、悟飯?」

 

 問いかけると、悟飯は静かに瞳を細めてゼノを見つめる。

 

「ガーキンさん。すみませんが、俺も構いませんか?」

 

「へ? お、お前もやんのか?」

 

「…すぐに済ませます」

 

 そう言うと悟飯は静かに超サイヤ人に変身した後、ゼノの前に立つ。

 

「…悟飯。私は」

 

「アンタが何者か、それは言葉では問わない」

 

「……!」

 

 目を見開くゼノに向かって、悟飯は静かに拳を握って前に突き出した。

 

「この拳で問いかける。何故、アンタが父さんの肉体を使っているのか。何故、父さんの気をアンタから感じるのか。その拳で応えてもらう!!」

 

 悟飯の宣言に、ゼノは静かに瞳を鋭く細めて頷いた。 

 

 

 




次回もお楽しみに!
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