惑星サイヤの王都。
ジュード王が納める都の地下に、常世とは異なる世界が広がっていた。
夢か。
現かもわからぬその場所で。
今、濃紺の道着を着た黄金の髪の男が、道着の上着を荒縄で前に締めくくり、両足には黒い足袋とわらじ草履を履いている。
首からは金属の糸に通された緑色の勾玉が一つ。
黄金の髪を天に向かって揺らしながら、翡翠に漆黒の瞳孔がある瞳は空を見上げた。
「……我が耳に猛者の咆哮届けり。為れば、真の拳士か。我に敵う者か……!!」
鬼の如き咆哮と気を放ちながら、男は”死者の都”にて吠えた。
彼こそ”真の超サイヤ人”そのものであった。
ーーーーーー
悟空達とジュード王達の戦いを見ていたエリート兵達はそのレベルの高さに驚いていた。
「し、信じられん。あの二人のサイヤ人。ジュード王達の攻撃を食らって平然としている」
「それよりも、あれは何だ? 金色の戦士になったぞ!?」
ざわめき立つ周りの声を尻目に。
天に向かって逆立つ金色の髪と眉。
翡翠の瞳。
身に纏う漲る金色のオーラ。
「…これが、超サイヤ人か?」
ガーキンが静かに二人の様子を見て呟く。
王ジュードも隣で冷汗を流していた。
「何という奴らだ…! 気が何処までも高まっていく」
構えを取りながら言うサイヤ人の二人に超サイヤ人達は笑いかける。
「これが、超サイヤ人だ。さあ、始めようぜ?」
「貴様らのライバルだというターニッブは、この力を前にしても臆さず真正面から闘って来た。あの男のライバルだというなら、貴様らにも強くあってもらいたいものだ」
悟空の言葉にベジータが続く。
これにジュード王は静かに笑った。
「安心しろ。その姿に少し、トラウマを刺激されただけだ。その程度の戦闘力の上昇ならば恐れるには足らん」
「ほう? 面白いことを言うじゃないか、ジュード」
「うろたえて怯える王が見たいか? ベジータ」
「……フン」
ジュード王のトラウマという言葉に微かに眉根を寄せながらも、ベジータは不敵な笑みを浮かべる。
悟空は静かにガーキンとジュード王に向かって言った。
「さあ、ガーキン! ジュード!! オメエ等も超サイヤ人に目覚めてもらうぞ……!」
「おいおい、いきなり成れって言われてできると思うのかよ!?」
ガーキンの抗議の声に悟空は続ける。
「オメエ、ターニッブのライバルなんだろ? アイツのライバルなら、そんくらいはやってもらわなきゃな」
不穏な笑みを浮かべて低い声で告げる悟空にガーキンは目を見開く。
「ちょーー! 話通じねえのかよ!?」
「オメエもサイヤ人なら諦めろ! 言葉よりも拳で語った方が早ぇぞ」
この会話にジュード王が高笑いを始めた。
「くははは! いいだろう!! 惑星サイヤの王にしてナンバーワンの天才の称号を持つこのジュードの実力、見せつけてくれる!!」
「そんな簡単に見ただけでできるなら、誰も苦労しねえだろうがよ」
不満げにつぶやくガーキンの前に悟空が超スピードで踏み込んで来た。
「! クッ!?」
ボディをまともに撃ち抜く右の拳。
ガーキンは思わず肺に溜めていた空気を吐き出し、前のめりになると顎を蹴り上げられる。
後方へのけ反りながら吹っ飛ぶガーキンの背後に高速移動し、右足を大きく振りかぶる悟空
「うぉりゃぁああああっ!!」
気合と共に強烈なローリングソバットで、ガーキンを闘技場の壁にまで蹴り飛ばした。
悲鳴を上げる暇もなく、ガーキンは背中から壁に叩きつけられる。
「! ガーキン!!」
「何処を見ている、サイヤ王!!」
ジュード王が前を向くと目の前に金色の戦士と化したベジータが立っていた。
「貴様の相手は、この俺だ!!」
右の拳を叩きつけてくるベジータに、ジュード王は左掌で掴みとめる。
(…何という重く早い一撃だ。先ほどまでとは比べ物にならない! これが、超サイヤ人か!!)
目を見開くジュード王に情け容赦のないベジータの連撃が放たれる。
踏み込みながらの左のひじ打ち。
右のローキック。
左の中段回し蹴りからの後ろ上段回し蹴り。
「ぐはっ!」
顎を左のひじ打ちで跳ね上げられ、右のローキックで左足の太ももを打たれ、左のミドルキックをがら空きの右の脇腹に入れられてうずくまりながら後ろに下がるジュード王。
その顎を更にベジータの左後ろ回し蹴りが蹴り上げて後方へ弾き飛ばした。
壁に叩きつけられ、磔にされる。
「……」
静かにベジータは掲げていた左脚を下ろしてジッとジュード王を見据えた。
ジュード王は、土煙の向こうから壁から伝い出て歩いてきた。
「超サイヤ人……!! お、の、れ………っ!!!」
ジュード王の視界の中には、ベジータではなく別の男が写っている。
その男は、無慈悲に自分たちの師匠を斃した。
先代の王を。
ジュード王の父君を。
だが、その仇を取るのは己ではない。
己の力では、その男は斃せない。
できるのは、身に宿る力のせいで誰よりも孤独な人生を歩むことになる。
自分の弟のような青年。
「よくも……!! よくもよくも……!! よくもぉおおおお!!!!」
全てを託され、背負わされた宿命の青年。
無力な自分には王の役割を継ぐことしかできなかった。
力のない自分の存在が、父を死なせてしまい。
彼を孤独にした。
あの時、ジュードが超サイヤ人を倒せていれば。
その光景を。
血を流しながら倒れ、死者の都に光の粒子となって取り込まれていった父の姿を思い返して。
ジュードの中で何かが切れた。
「うぉおおおおおおあああああああっ!!!」
強烈な磁場が発生し、力の爆発が起こる。
それを見てベジータは静かに笑った。
「そうだーー。それでいい。自分の無力さ、非力さに怒れ。それでこそ、サイヤの王だ!!」
超サイヤ人と化したベジットと瓜二つのサイヤ人を見据えて、ベジータは心の底から喜んでいた。
第六宇宙のサイヤ人キャベ以上の才能と力。
そして彼と同等に積み重ねた修練とおそらくキャベが未だ経験したことが無い程に流した涙と血の量。
それをベジータはジュード王から感じていた。
力強くも悲しい拳を。
「…ベジータ。俺は……?」
ジュード王は目のまえに居る男が自分の仇ではないことを思い出し、正気に戻る。
そんな彼を前にベジータは告げた。
「ジュードよ、それが全ての超サイヤ人の基本となる姿だ。貴様が倒さねばらならん相手は、その極みの一つにあると知れ」
「……気付いていたのか?」
問いかけるジュードにベジータは不敵な笑みを浮かべた。
「甘く見るな。俺はサイヤ人の王子ベジータ様だぞ?」
「ククク、そうだな」
親友のように二人の金色の戦士は笑い合った。
一方で悟空に磔にされたガーキンもまた、静かに立ち上がっていた。
「マジかよ。ジュードの野郎、アッサリとなりやがった」
「当たりめぇだ。超サイヤ人は、ある程度、体が鍛え抜かれていれば後は怒りを切っ掛けにして目覚める。オメエら位に鍛えてたらできるさ。さあ、思い切り怒るんだ! ガーキン!!」
「……って言われてもよぉ!」
困惑するガーキンに悟空が頭を掻く。
「しょうがねえなぁ……っ! えっとぉ、やい! このラディッツにそっくりのマヌケやろう!!」
「……へ?」
唐突に言われたーーレベルが低く、棒読みな悟空の悪口にポカンとするガーキン。
「お、オメエの顔を見てっとイライラしてくっぜ…! さ、さっさと全力出さねえと、ぶっ殺しちまうぞ!!」
「悟空…? それ、何の真似だ?」
思わずあきれ顔になるガーキンに悟空はあれっと首を傾げながら言う。
「オメエ、なんで怒らねえんだ?」
「……いや。待て待て。その流れで怒れって言われてもよ。ていうか、怒らせようとしてたのか」
ガックリと肩を落とし、疲れた顔になるガーキンに悟空は困った顔になる。
「参ったなぁ。オラも今、怒ってねえからこれ以上の悪口、思い浮かばねえぞ」
「……気を遣ってもらってなんだけど。お前、挑発ヘタクソだな」
力が抜けたような顔のガーキンに言われ、悟空が「はははっ」と明るく笑いながら右手で頭をかく。
その時だった。
晴れていた青空がいきなり曇りだした。
陽光が分厚い暗雲に遮られ、薄闇が世界に満ちる。
悟空とベジータの二人が、尋常でない気配に静かに互いを見合う。
「おい、ベジータ。こいつは」
「ああ、来るぞ!!」
二人の言葉の直後だった。
分厚い雲から黄金の落雷が起こる。
それは闘技場のど真ん中に降って来た。
雷の中から一人の黄金の気を纏った翡翠に黒の瞳孔が現れた目の超サイヤ人が姿を現す。
見た目は悟空やベジータのように青年の姿をしているが、その身に纏う雰囲気が彼を年齢不詳にさせている。
「ガーキン、ジュード! みんなを下がらせろ!!」
「何者だ、貴様!!!」
悟空がガーキンとジュードに叫ぶ横で、ベジータが鋭く詰問する。
超サイヤ人は静かに悟空とベジータを睨み据えた。
この二人をして、睨まれただけで肌に棘が刺さるような感覚がある。
「……」
静かに超サイヤ人は腰を落として拳を握り、悟空とベジータの二人に向かって構えた。
悟空は呆然としているジュードを見て告げる。
「何してんだ!? みんなを連れて早く逃げろ!!」
「……バカな。何故だ? 死者の都から、何故貴様が出てくる?」
ジュードの言葉に悟空が訝し気に見る。
「答えろ、超サイヤ人!! 何故、貴様が此処にいる!!?」
ジュードの言葉が静まり返った闘技場に響く。
たった一人、場に現れただけだ。
だが、その圧倒的な重圧に皆が凍り付いていた。
静かに超サイヤ人は声を上げる。
「我こそは”真の超サイヤ人”……!! うぬらの無力さ、その体で知れぃ!!」
纏う気を更に高めて、咆哮する超サイヤ人。
ベジータが静かにつぶやく。
「会話にならんな。それにしても……!!」
「ああ。見た目はオラ達のフュージョンした姿。ゴジータにそっくりだな……!」
「惑星サイヤ。色々と面倒なところのようだ……!!」
悟空達二人が超サイヤ人に対して構えを取る。
その間にジュードや兵士達を連れてガーキンが闘技場から去って行くのを横目で確認する。
ふと悟空が何かに気付いた表情になってベジータに問いかけた。
「なあ、ベジータ? オラ達、ポタラでの合体じゃなくてフュージョンしたことあったか?」
「こんな時に何を訳の分からん話をしていやがる!? 地獄で閻魔の野郎が囚われた時にしただろうが!!」
イラついたようなベジータの声に悟空は超サイヤ人を見たまま、告げた。
「…それ、いつの話だ? オラも記憶にあんだけどよ。オラ達死んでたよな?」
「ジャネンバの時だろ!! バビディが連れていたデブの魔人ブウを貴様が超サイヤ人3でぶっ倒した後のーーっ!?」
言っていて、ベジータも気付いた。
自分達は魔人ブウを倒す為に蘇った。
あの時、超サイヤ人3を見せた悟空はデブのブウを倒してはいない。
そもそも、デブのブウを倒してしまえば今、仲間に居るミスターブウがいない。
更に言うとゴテンクスにフュージョンを教える必要もないし、悟飯は老界王神に力を与えられる必要もない。
ベジットも存在しなくなるはずだ。
「…ジャネンバ。そうだ、鬼の兄ちゃんが地獄に集められた悪の気で変わったアレだ。でもよ、オラ達はそんな奴と闘ったか?」
「…どうなってやがる? 体験した事のない記憶が、知りえないはずの記憶が何故、頭の中に湧いて来やがる!?」
二人ともに焦っていた。
知らないはずの記憶。
見たことのない敵との闘いと勝利が、頭の中に湧いて来たのだ。
強烈な目眩と記憶の量に頭が割れそうな程の痛みが起こっている。
「…死者の都の気に当てられたか」
目の前の超サイヤ人が、静かに低い声で告げて来た。
「…死者の都? 気に当てられた? どうゆうことだ?」
問いかける悟空に静かに超サイヤ人は語る。
「…うぬ等であって、うぬ等ではない者の記憶。数多に分かれし世界の記憶。集う場こそが死者の都なり」
「訳の分からんことをゴチャゴチャと述べやがって! 貴様の仕業なのか、この頭の中に無理やり入り込んでくるような景色は!?」
叫ぶベジータに超サイヤ人は告げた。
「…語るに及ばず。亡霊の慟哭など、聞くに能わず。去ねぃ!!」
瞬間、怒号と共に超サイヤ人は地面を踏み抜いた。
地面が揺れるもすぐに納まる。
「! ベジータ。オラ今ので、頭痛が消えたぞ!」
「垂れ流されていた光景も消えた。おい! なんなんだ、今のは!?」
問いかけるベジータに応えず、超サイヤ人は拳を握り、殺気を纏い始めた。
「…とりあえず、サンキューな。オメエ、意外と良いやつなんか?」
自分達が立つ事もままならない程、頭の痛みに苛まれていたのを超サイヤ人は治してくれた。
悟空は、そう解釈していた。
「オメエ、オラ達やターニッブと同じで。強い奴を見ると闘いたくなるんだな? 分かるぜ、オメエの目を見りゃあな!!」
ベジータも静かに金色のオーラを身に纏い、構える。
「…そのまま頭痛で動けない俺たちを襲っておけば、このベジータ様に勝てたかも知れなかったものを。甘い奴だ、バカめ!!」
ベジータは腰だめに気をためると一気に開放した。
「真の超サイヤ人だと? この俺を倒してから、そんなセリフは吐きやがれ!!」
「行くぞ! オラが相手だ!!」
同時に左右から悟空とベジータが挑みかかった。
ーーーーーー
王宮にて食事を楽しんでいたウイスもまた、その手を止める。
「…この圧倒的な気配。まるで世界そのものを喰らうかのように強大な気ですね。それも無限に高まっている」
向かいの席に座る巫女・プリカは白い肌を真っ青にして震えていた。
「…そんな。どうして、超サイヤ人が? 死者の都から彼が出てくるなんて……!?」
これにウイスが告げる。
「おそらくですが、強大な力に惹きつけられたのでしょう。悟空さんとベジータさんという、ね」
その時、ウイスの杖に通信が入ってきた。
彼は静かにその通信をオンにして見ると、紫色の猫のような姿をした人物ーー否、神がいた。
「コレは、ビルスさま。お昼寝中ではなかったのですか?」
「…ちょっと不愉快な気を感じてね。悟空が僕に少しだけ見せた”真・超サイヤ人”てヤツの気に似てるけれど違う。禍々しくて不吉な気だ」
猫の仕草で顔を洗いながら、ビルスは静かに瞳を鋭く細める。
「お寝坊なビルス様が起きるなんて。どうやら、シャレでは済まない方が居るようですね」
ウイスもまた、ゆっくりと席を立つとプリカに告げた。
「案内してくれませんか? プリカさん。闘技場とやらに」
「は、はい。ウイス殿、どうか…!」
「様子を見るだけです。手荒な事をするつもりはありませんよ。今の所は」
そう言うウイスの顔を見上げ、プリカは静かに頷くと闘技場へと彼を連れて行く。
ーーーーーーーー
「かめはめ波!!」
「ギャリック砲!!」
悟空のかめはめ波とベジータのギャリック砲が、同時に超サイヤ人に対して放たれた。
「……滅!!」
対する超サイヤ人は腰だめに構えた両の拳を前方に掌に解いて突き出し、右手を上に左手を下にして手首を合わせ掌を相手に向ける。
放たれたのは悟空のかめはめ波とそっくりの気功波。
ぶつかり合う3つの光は相殺し、宙で消えた。
二人の地球から来た超サイヤ人は、自らを”真の超サイヤ人”と称する男に押されていた。
「…チ、化け物め! ダメージは負わない。痛みは感じない。おまけに気は無限に増大するだと? …ふざけやがって!!」
吐き捨てるベジータの隣に悟空は立つ。
「…よぉし。オラがブチかましてやる!!」
悟空は一気に踏み込み、拳を振りかぶる。
対する超サイヤ人もまた、強烈な足音と共に踏み込んで来た。
ぶつかり合う右の拳と拳。
そのまま、乱打戦になる。
拳と蹴りが霞のように消えるスピードで殴り、蹴る。
(こいつ、闘い方もターニッブやジュード、ガーキンに似てんなぁ! 一体ぇ、どういうこった?)
拳や蹴りの連携技を打ち合いながら、悟空は表情の変わらない超サイヤ人を見据える。
お互いに右のハイキックを繰り出しあい、ぶつけ合う。
「…はぁあ!」
だが、合わせた超サイヤ人の蹴り足の下に悟空のつま先がするりと現れ、剣の巻き技の様に絡めて上に跳ね上げた。
足を頭上に跳ね上げられてなお、超サイヤ人はバランスが崩れない。
「今だ、ベジータ!!」
悟空は相棒に告げると人差し指と中指を揃えて立て、額に付ける。
瞬間移動ーー。
一瞬で悟空は気を限界まで高め、両手を突き出した姿勢でいるベジータの左隣に移動した。
「喰らえ、ファイナルフラァアアアッシュ!!」
その悟空が一瞬前まで立っていた位置を撃ち抜く様にベジータが金色の気功波を放った。
ギャリック砲よりも消費する気力は多いが、比例して破壊力もでかい。
だが超サイヤ人は、片足を爪先立ちにすると天高く掲げた右足の膝を曲げて体に引き寄せ、そのままの姿勢で地面を滑らかにすべる。
「なんだと!?」
まるで陽炎の様に気功波は体を擦り抜け、そのままの勢いで超サイヤ人はベジータの眼前に来ると頑丈な拳を握りしめて振り下ろした。
「…ちっ!」
振り下ろされる右の拳を左腕で受け止め、ベジータは右のストレートを超サイヤ人の顔面に返す。
乾いた音と共にベジータの拳は超サイヤ人の左掌に受け止められた。
至近距離で睨み合うベジータと超サイヤ人。
「隙ありぃ! でぇりゃあぁあ!!」
悟空が超サイヤ人の背後に瞬間移動した後、左足の中断飛び回し蹴りを放った。
鈍い音が響くと同時に、蹴り足はベジータの拳を離した超サイヤ人の左腕にて止められていた。
即座に超スピードで離れて、構え仕切り直す二人。
(オラ達の攻撃が、見切られてるっていうのか!?)
(ただでさえ、無限に上昇する戦闘力だというのに。こいつ動きも普通じゃない!!)
基本戦闘力も相当なレベルにあるとベジータは感じていた。
「…何、探ってんだ?」
悟空が静かに問いかける。
超サイヤ人は応えず、ただ静かに悟空を見返して来た。
「…カカロット。俺にやらせろ」
ベジータの声に悟空はニヤリとする。
「よっしゃ、任せるぜ!!」
「…ふん」
金色の髪が黒髪に戻り、悟空は一歩下がってベジータを見る。
対するベジータは、超サイヤ人に向き合うと気を高め始めた。
「はぁぁあっ! 行くぞ、化け物!!」
気合いの声が響くと同時に蒼銀の炎が金色に輝くベジータを包み込む。
蒼銀の炎は火の粉になり、解けていくと蒼いオーラと蒼銀の髪をした超サイヤ人が姿を現した。
「どうだ!? コレが超サイヤ人ゴッドの力を持ったサイヤ人の超サイヤ人。超サイヤ人ブルーだ!!」
神の気を纏い、ベジータは高らかに宣言する。
だが、超サイヤ人は表情を変える事はない。
ただ、静かに拳を握り構えるのみだ。
「…チッ、眉一つ動かさんとはな!!」
吐き捨てるベジータに超サイヤ人は静かに告げた。
「…その力、神威(カムイ)に値せず」
「…何? ならば試してみろ!! ゴッドの力を得た超サイヤ人の実力をなぁああ!!」
ベジータが真正面から突っ込むと超サイヤ人も拳を握り、受けて立った。
ぶつかり合う右の拳と拳。
黄金と蒼銀のオーラが激しく燃え盛り、互いの体を照らし出す。
「バカな、超サイヤ人ブルーで押し切れないだと!?」
目を見開くベジータに超サイヤ人は静かに告げた。
「…我が拳、神をも屠る。神威とて恐るるに足らぬ」
言葉と同時に一気に超サイヤ人の気が爆発した。
「…うぉあああっ!?」
後方へ弾き飛ばされるベジータ。
しかし、彼は見事に後方で着地を決めた。
「…バカな、何という気だ!?」
天が割れ、地を穿つ。
圧倒的なまでのパワーだった。
「…ターニッブが超サイヤ人を忌み嫌ったんは、オメエの所為だな? オメエ一体、アイツに何をした!?」
冷や汗を頰にかきながら、悟空は鋭い目で詰問した。
圧倒的なまでの殺意。
破壊衝動。
その全てを放ちながらも無駄口を叩かない。
口の端を歪めることさえしない超サイヤ人。
「…語るべき故などない」
高まり続ける超サイヤ人の気。
コレにベジータも静かに目を閉じ、気を一気に集中させて高めた。
「ならば、コレならどうだぁああ!! 超サイヤ人ブルーのギャリック砲だぁあああ!!!」
全力の気を全て高めて両手に込め、掌を突き出して放つ。
「スーパーギャリック砲ぉおおおおおっ!!!」
森羅万象・全てのものを消し飛ばせるほどの一撃。
しかし、超サイヤ人は微動だにせず、これを真正面から受けた。
蒼銀の光線の中に消えた超サイヤ人。
ベジータは肩で息をしながらも、睨み据える。
「…分かっちゃいたが、頭にくるぜ。ダメージなし、か!!」
「ああ。真・超サイヤ人の厄介な所は、変身してる間は攻撃が全く効かねえってことだ。もちろん、高まり続ける気や戦闘力もマズイけどな」
「…時間切れはどうした!? 奴め、一向に弱まる気配がないぞ!!」
ベジータの言葉どおり、敵の超サイヤ人は一向に弱まらず気が高まり続けている。
「ウイスさんの話なら、あの力は普通のサイヤ人が使うと理性が飛んじまうはずなんだがなぁ」
確かに身に纏う殺意や破壊衝動は凄まじいが、それ以上の確たる意思を悟空もベジータも感じていた。
何処か呑気な悟空にベジータは苛立ちを隠せない。
「貴様ぁ!! 何でそんなに余裕があるんだ!?」
「い!? いやぁ…、何となく悪りぃヤツじゃ無さそうなんだよな」
怒鳴られ、悟空がびっくりしながらも超サイヤ人の方を目を丸くして見る。
「…これだけ殺気を向けられているのにか?」
「へへっ、オラにも良く分かんねえけどよ。ベジータ、オメエはあいつが悪いヤツに見えっか?」
明るく笑いながら問いかけてくる悟空にベジータは静かに告げた。
「知らん! 分かるのは、そこそこの危機に陥りつつあるってことだけだ!!」
「…確かにな。さあて、どうすっかな?」
表情を軽い笑みから真剣なものにすると悟空も超サイヤ人を睨み据える。
だが突如、超サイヤ人は悟空達に背を向けた。
「…どういうつもりだ、貴様!?」
ベジータが問いかけるも応えずに、彼はこう叫んだ。
「我が名は、リューベ!! 真なる超サイヤ人なり!!!」
そのまま片足で爪先立ちになると、逆の脚の膝を曲げて体に寄せた姿勢のまま、その場から去っていった。
「…我に敵う者、いずこ」
黄金の炎が飛び散り、静けさを取り戻す世界。
超サイヤ人ブルーとなったベジータは静かに悟空を見た。
「…なんだ、あれは? 人間とやり合っている気がしなかったぞ」
「ああ…。ターニッブとあいつの関係、気になるな」
真剣な表情で悟空も頷く。
「何より……! 得意げな奴がエネルギー切れになった所を真・超サイヤ人で決める俺の作戦が……!!」
「まあ。この惑星にいりゃあ、またやり合えるさ!」
忌々し気なベジータに軽く悟空が言うと、闘技場の入口から巫女・プリカを連れて破壊神の付き人ウイスが現れた。
「どうやら、追い返せたようですね。流石は悟空さんとベジータさんです」
淡々と告げるウイスにプリカが目を見開く。
「し、信じられない……! あの超サイヤ人と正面から戦って生き残るなんて……!!」
思わずと言う風につぶやく巫女を悟空がニカリと明るく笑いかけた。
「へへっ、見直したろ?」
「調子に乗っている場合か。現時点では奴には勝てんぞ」
「まあな……! けど、アイツは世界を滅ぼすような悪党ーーフリーザやセルみてえな奴らじゃねえさ。純粋にただ強い奴と戦いたい、そんだけだと思うぜ」
ベジータの苦言に対しても平然と悟空は告げる。
呆れたような表情になるベジータだが、目を見開いた。
「? カカロット?」
「ん? どうした、ベジータ?」
ベジータの見ている方を見て悟空もそちらを向くと、先ほどまで超サイヤ人・リューベが立っていた場所に一人の褐色の肌をした青年のサイヤ人が裸で倒れていた。
その顏を見てベジータは悟空を見据える。
「……気に食わない面が増えたな?」
「へぇ~? オラみてえな顔したサイヤ人って、いっぺぇ居るんだなぁ!!」
言いながら悟空は褐色の肌の青年に近寄る。
その青年に触れた時、悟空の頭の中に記憶が走った。
「……っ!?」
巨大な木が自分たちを見下し、その木になる不思議な実が地球の養分を食らっていく。
ーー カカロット! 跪いて命乞いをすれば、助けてやるぞ!! ーー
褐色の肌の青年は赤いスカウターを付け、フリーザ軍の戦闘服を着ている。
最期は元気玉で倒されたサイヤ人の男。
褐色の肌の男は静かに目を見開き、悟空の顔を見て目を見開いた。
「き、貴様は……カカロット……?」
「オメエは、ターレスだな」
悟空の言葉に男ーーターレスは怒りの表情に一瞬なるも、すぐに力を失い気絶した。
「こりゃ、ちょっと面倒なことになりそうだな」
悟空が静かに腕の中で眠る同じ顔のサイヤ人を見下ろす。
ベジータは悟空の言葉に心の中で頷いた後、静かに天を見上げた。
リューベが現れる前と同じく、明るい青空がそこには広がっている。
ーーーーーー
死者の都。
薄暗い曇天の空。
見渡す限りの濃い霧。
それ以外には何もない、ただ広いだけの荒野の世界。
その中に今、一人の男が立っていた。
「……何処だ、ここは? 俺は惑星プラントに居たんじゃなかったのか?」
周囲を見渡しながら言う。
左の頬に十字の傷を持った鋭い目つきの黒髪黒目の青年。
左右に非対称に伸びた独特なヘアースタイル。
その額には赤いバンダナを巻いている。
体には下半身に黒いフィットネスの長ズボンを履き、赤い布を巻いたバトルブーツを履いている。
上半身は素肌の上に緑色を基調にしたフリーザ軍の旧型バトルジャケットを身に付けている。
「……カカロット……! カカロット……!!」
声のする方を振り返れば、そこには三メートルを越える巨大な筋肉質の体を持った金髪に白目の大男が金色のオーラを纏って立っていた。
「テメエ。そんな格好(ナリ)してるが、サイヤ人だな?」
青年を見下し、今にも襲い掛からんと拳を握っている。
これに対して青年はシニカルに口を歪めて笑う。
「なるほど、俺とやろうってのか? サイヤ人同士、話が早いぜ!!」
赤い革のグローブを握りしめ黒髪の青年は大男に向けて拳を構える。
「カカロット……!! 殺してやるぞ、カカロットォオオオオオオ!!」
「そいつは、俺の息子だよ」
淡々と告げた後、黒髪の青年は腰だめに拳を握り金色の気を纏った。
髪は天を向き、金色に黒い瞳は翡翠に変化する。
「俺の名はーーバーダックだ!!」
二人の超サイヤ人が、互いに向かって拳を振りかぶり合った。
次回もよろしく(´ー`* ))))