彼を見たとき、ゼノとなった未来の悟空は何を思うのか……?
熱き正義の魂が出会う時、新たな強者の産声が上がる……!
界王神界で肉体を休めていたブラックは、地球に現れた孫悟空の戦いを見ていた。
神域と呼ばれ、銀河から遠く離れたこの地にまで、孫悟空とザマスのエネルギーは届いていたのだ。
ブラックは黒い瞳を細めながら呟く。
「…孫悟空め。超サイヤ人ブルーのみならず、孫悟飯が成った真・超サイヤ人にまで変身できるのか。惑星の意思に乗っ取られているとはいえ、私の力を複製して強化されたザマスをたった一人で退けるとは。やはり、超サイヤ人ゴッドを超えた超サイヤ人ロゼにしかなれない今のままでは奴に勝てん」
先の孫悟空の戦いを見て感じた率直な意見だ。
やはり、さらなる飛躍のために真・超サイヤ人とやらが必要なのは間違いない。
「…その為には、ゼノと合体するしかあるまい。ザマスであり孫悟空でもあるヤツと俺の相性は抜群のはず。合体すれば、無敵。その力で、不死身となったもう一人の俺も惑星の意思から助けてやらねばな」
独りごちると、眉間に指を二本当てて気を探る。
「…やはり、トランクスやゼノの気は感じられない。気配を消したか。微かな動物の気を感じる。瞬間移動には、この生物を利用させて貰おう」
一瞬でブラックは、界王神界から地球に戻る。
目の前には木陰に隠れようとする鹿の親子が居た。
「…驚かせてすまない。俺はすぐに立ち去ろう」
穏やかな表情で親鹿を撫でると鹿はブラックの指を舐め返してきた。
これにブラックは、人間や神には見せなかった優しい笑みで礼を述べ、空に飛んで都を目指す。
「…待っているがいい、ゼノ! 世界の救済を行う為に俺自らが、合体の相手としてお前を迎えてやろう!!」
左耳のポタラを指で弾いてから、漆黒のオーラを身に纏ってブラックは翔けた。
ーーーーーー
廃墟の街並みの外れ。
その地下で、ターレス一味は臙脂色の着物を着た小太りの侍と出会った。
自分の食事を終えて、侍の食事がひと段落するまで待ってからターレスは声をかけた。
「…それで、話なんだがな? ブラックとか言う俺やカカロットに顔が似た、ふざけた奴についてだ」
「アグアグアグアグ! おみゃあさん!! 孫の親戚だぎゃあか!? あのベジータに似た服、着てるでしょー? ガツガツ」
ターレスが話しかけるも、先ほどから小太りの侍は自分の腹に飯を納めていく。
「…そ、孫ってのはカカロットの事だよな?」
その余りに下品かつ貪欲な食べ方にターレスが若干引き気味に問いかけた後、真剣な表情になって居座りなおし名乗る。
「俺はサイヤ人、ターレス。カカロットとは顔が似てる同族というだけの赤の他人だ……って! 他人の話を聞くときは、モノを食うのをやめろ!!」
コメカミに怒りマークを浮かばせながら、ターレスが怒鳴るとピタリと手を止め、無精髭を生やした侍は笑いかけてきた。
「…なーるほど〜! おみゃあさん! 確かに孫とは違ぎゃわいなぁ!! あいつは、飯だの〜気にしねえ!!」
「……いや。流石のカカロットも、お前ほどには下品ではないぞ?」
「気ぃにせんでちょーよー! 持ちつ持たれつ、お互げえ様でしょー?」
ターレスは、独特な侍の雰囲気にペースを完全に乱されている。
「いつまで、無駄話をしてるつもりだい?」
そんなターレスをウンザリと言わんばかりにフリーザが隣から告げて来た。
言われたターレスは、苦虫を噛み潰したように表情を歪めてフリーザを振り返る。
「そうは言うが、奴が何を話しているのか分かるか?」
「……まあ、変わった言葉使いだね。だけど、彼の性格だか言葉だかに飲まれてる場合じゃないよ? ブラックの情報を聞くんだろ?」
「…ああ」
心底、疲れたような表情のターレスに「任せろ」と後ろに下げ、桃色の肌の魔人・ブウが侍に笑いかける。
「やあ、ヤジロベー。お前がまだ生きていたとは驚きだ。とっくにブラックに殺されたと思っていたよ」
「バクバクバク、おみゃあ、誰ぎゃー? 懐かしい道着着てんみゃぁ?」
侍ーーヤジロベーは骨つき肉を齧りつきながら、問いかける。
「私は魔人ブウ。私が吸収した連中で君を知っているものがいてね。孫悟空の息子達もいる」
「バクバクバクッ! ほんで? また飯を出してちょーよー!」
「それは構わないが、先に話を聞かせてくれ。ブラックという孫悟空に良く似た黒い道着の男を知らないかな?」
「…ああ。ありゃあ、孫に外面が似てるだけの偽者だぎゃー。本者とは似〜ても似つかねえ! あんな陰気で粘着質で厭な奴は見たことねえぎゃー!!」
そんな言葉を発した後、ヤジロベーはジッと肉を齧り終えて残った骨を見つめてからブウを見る。
「…お代わりは、幾つかな? 好きなだけ食べるといい」
「ホント!? いやぁ、おみゃあさん! メチャグチャ良い奴だ〜!! じゃ、後50本!!」
感激の涙を流したと思いきや、図々しく告げるヤジロベーにターレスとフリーザが思わず叫ぶ。
「「まだ、食べるのか!?」」
あまりの食べっぷりにザンギャが口許を抑える。
「…なんだか、気持ち悪くなってきたわ」
これにセルが背中をさすってやりながら告げる。
「まあ、女性には少々キツイだろう。あいも変わらぬ大食漢だ」
一味の中では何気に一番の気配りができる紳士でもあるセルに、手で礼を言いながらザンギャは問いかける。
「…知り合いなの?」
「顔はね。実際に会ったのはコレが初めてだ。まあ、ブウに任せよう」
「…そうね。正直、あまり近づきたくないわ」
嫌悪感を見せながらヤジロベーを見るザンギャ。
その視線を気にもせず、口いっぱいに肉をほうばりながらヤジロベーは告げる。
「…っていう訳なんでしょ〜!!」
「ふむふむ。要するにお前は数年前にブラックを一目見て危険な奴だと察知し、地下通路を逃げている内にレジスタンスという連中の世話になっていた。タダ飯を食わせてくれる有難い連中だったが、昼寝をしていると逸れてしまう。一度、地下から出て外の様子を見ながら探そうとしたが亡者に襲われた為、隠れたと?」
「そぉのとぉりでしょ〜!」
上機嫌に笑いながら食べるヤジロベーにターレスは声を上げた。
「要は、何も知らんのだろうがぁああああ!!!」
「コラコラ、ターレス! まだ餌をやってる最中だ。あまり怒鳴るな、可哀想だろう?」
「……貴様のペット扱いの方が、余程酷いだろ」
告げるターレスにブウはニヤリと笑い、ヤジロベーに向かって言う。
「ヤジロベー。どうだ? 俺たちと来ないか? このターレスは宇宙を気ままに流離い、美味いものと酒、美しい女を愛でる。こんな穴倉にいるより、お前も楽しいぞ?」
「…ブウさん? こんなゴミみたいなのを連れて、どうするつもりで?」
「ゴミなどと。子豚みたいで可愛いではないか」
呆れたフリーザの声も気にしないで頷くブウに、ターレスはせせら笑う。
「…馬鹿め、ブウよ。カカロットの仲間は皆、地球を守ることに命をかけるバカどもだ。勧誘など成功するはずがあるまい」
自信満々に告げるターレスにブウは、ニヤリとする。
「ならば、ヤジロベーが私に付いてくると言ったら、黙って頷くのだろうな?」
「…無論だ。カカロットの仲間を引き抜ければ、奴への嫌がらせには丁度良い! できたら、な!!」
強調するターレスに一つ頷くと、ブウはヤジロベーに向き直る。
「…リーダーからの許しは出た。どうだ? ヤジロベー」
「おみゃあさん。俺を連れて行って、どうするつもりだぎゃあ?」
「これでも、私は地球の戦士には敬意を払っている。別次元とはいえ、この魔人ブウと戦った孫悟空の仲間だ。こんな穴倉に居させるには偲びない」
「おみゃあ! どえりゃあ、優しい奴だぎゃー!! 美味い飯に酒に女!! 僕、君に付いていきますー!!」
咽び泣くヤジロベーの肩を叩いてやりながら、ブウはターレスを振り返り、ニヤリとする。
「……な、なんて即物的な奴だ。アッサリ地球を捨てやがった」
「言い忘れていたが、ターレス。ヤジロベーは、孫悟空の仲間の中で最も俗な人間だ」
「…それを、何故今になって言う?」
「…忘れていた」
本気で忘れていたらしく、呆然としながら告げるセルにターレスも真っ白になる。
「…本気で、こんな足手まといを連れて行くつもりですか、ブウさん!?」
「楽しいぞ、この男は! 居るだけで笑わせてくれる奴など、そうはない!!」
「…ちょっとターレス! フリーザに協力して、ブウを説得してよ!! こんな下品な男を仲間にするなんて!!」
「んだら、よろしく頼むわ〜! どえりゃあ、ベッピンさんでしょ〜!!」
ヤジロベーを連れて行くことに大反対のフリーザとザンギャであるが、ブウもヤジロベーも気にもしていない。
騒がしい仲間にターレスは力なく笑うだけだった。
「…口は災いの元だな、ターレス」
「…ああ。思い知ったぜ」
いつもは辛辣なセルも、今回だけはターレスに同情的であった。
そんな騒がしい騒動も、ピタリと収まる。
「…この力、まさか!?」
「…孫悟空、か。本者だな」
「惑星サイヤを出てまだ数ヶ月だというのに。流石だ」
フリーザが、セルが、ブウが、一様に同じ方向に顔を向けたのだ。
ザンギャが意味が分からず、ターレスを振り返ると。
彼も呆然とした表情で、冷や汗を流しながらフリーザ達と同じ方向に顔を向けている。
「惑星の意思の力が逃げた? これが、奴の。今のカカロットの真の力なのか!?」
同じ力を身に宿すターレスだからこそ、今の悟空の力を本能的に理解できていた。
ーーーーーー
レジスタンスの地下アジト。
真・超サイヤ人になった孫悟空の圧倒的な気に、悟飯とピッコロにガーキンは笑う。
「父さん! やっぱり、父さんは凄い!!」
「…孫悟空め。真・超サイヤ人に変身してから、更に超サイヤ人ブルーの気を使いやがった。相変わらず、驚かせやがる」
「戦っていたのは、ザマスってのに取り憑いた惑星の意思だな。それを一方的に。……相変わらず、とんでもねーな。悟空!!
笑い合って盛り上がる三人の横で、あまりに桁外れなパワーにトランクスは呆然としていた。
「…今のとんでもない気が、悟空さん? 違う。じ、次元が違い過ぎる…!!」
つい先程は、ブラックを一方的に打ち負かした悟飯の強さに震えたが、孫悟空の気はそれよりも更にーー。
「…いったい、何があったんですか? 皆さん、十年前とはあまりにも、違い過ぎる!!」
驚きに目を丸めて告げるトランクスにピッコロがニヤリと笑う。
「…全てが解決したら、話してやる。今は先にやることがあるだろ? ブラックを倒して、この世界を平和にするってことがな」
「……は、はい」
ピッコロの冷静な言葉に、興奮していたトランクスも落ち着きを取り戻す。
そんな中、ゼノはゆっくりと立ち上がり、孫悟空の気が現れた方を向いた。
「…ゼノさん? どうしました?」
悟飯が問いかけると、ゼノは悟飯に顔を向けて告げる。
「…孫悟空に、会いたい。私は、彼に会わなければならない。会って謝りたい」
「ゼノさん。父さんに謝りたいという気持ちは分かります。だけど貴方は今、レジスタンスの主力です。迂闊に此処を離れてブラックにレジスタンスの皆さんが襲撃されたら、どうするんですか?」
「……悟飯」
目を見開くゼノに悟飯は告げる。
「誰かに甘えてはいけません。此処には、ドラゴンボールは無いんです。失敗は許されません」
「…すまない、悟飯。だがーー!!」
そんな二人の間を紅の道着を着た男、ガーキンが割って入った。
「いいじゃねえか、悟飯! 行かせてやれよ!!」
「…ガーキンさん」
悟飯が目を見開くと、ガーキンの後ろからピッコロも頷いてきた。
「…行かせてやれ。トランクス、ゼノを悟空達に説明するのについて行ってやれ」
悟飯とトランクスに告げた後、ピッコロはゼノに向き直り告げる。
「孫悟空に会って、直接感じてみろ。そうすれば、お前の中の孫悟空が完全に目覚めるはずだ」
ピッコロの言葉に、ゼノは静かに頷いた。
「…トランクス、来てくれるか?」
「勿論です。父さんや悟空さんに、ゼノさんの事を紹介しますよ!!」
頷きあう二人にブルマが微笑みかける。
「…孫君にベジータ、か。合流したら、こっちに来てね」
「気をつけて行くんだよ、二人とも!!」
ブルマに続いたマイの言葉にトランクスは頷いた後、ゼノを見る。
彼は悟空やブラックと同じように、人差し指と中指の二本を立て、額に付ける。
「…行くぞ、トランクス」
「はい!」
トランクスはゼノの肩に捕まると、そのまま瞬間移動で姿を消した。
「…ピッコロさん。何故? 父さんとゼノさんが出会えば、間違いなく闘います。そうなれば、惑星の意思やブラックは此処を攻めてくるかもしれません」
悟飯の問いかけにピッコロは、淡々と告げる。
「…俺たちが守ればいい。悟飯よ、慎重なのは大事だが、それ以上に自信と覚悟も大事だ」
「あんだけの力持ってんのに、お前もゼノも何を悩んでんだ? 敵が来たら、ぶっ放しゃあいいんだよ!!」
「…クク、そういうことだ」
ガーキンの励ましの声にピッコロもニヤリと頷いた。
悟飯は静かに二人に微笑むと、孫悟空の気を感じた方を向く。
「…父さん」
ターニッブと出会い、彼との修行で得た力。
燃えるような熱い黒瞳が、孫悟空に向けられていた。
ーーーーーー
未来世界に来て、いきなりの激戦を終えた悟空はブロリー、ベジータとプリカに顔を向ける。
「…アレがザマス、か。ゴワス様やオラ達の界王神様が言ってたのと、なんか変わってんな?」
「…惑星の意思に乗っ取られてるんだろうな。ジュードもそうだった」
「…チ、厄介な奴を厄介な力が取り込みやがった」
悟空、ブロリー、ベジータの言葉にプリカも頷く。
「…不死身の界王ザマスの肉体に、あらゆる次元から可能性を取り込む惑星サイヤの意思が宿った非常に危険な存在です。惑星の意思は、ターレスさんに力の大半を取り込まれているからザマスの強化された可能性を具現化させて肉体にしていますが。そのザマスの可能性が、あのベジットにも匹敵するだなんて」
改めて言われ、三人のサイヤ人も苦虫を噛み潰したような表情になる。
「…やっぱ、とんでもねぇな。不死身な上に自分の体を霊体にしたり、次元を移動しちまうんだからな。強いのもそうだけど、倒せねえってのが一番問題だ」
「力押しだけで勝てる相手ではない、か。だが、その力もベジットに匹敵する能力だというならーー! やはり力を使いこなせん内に決めるべき、か」
「…チ! 界王神どもの話を聞いておかずに、とっとと来れば良かったんだ!! そうすれば、こんなややこしい事態になる前にブラックとザマスか、惑星の意思のどちらかを潰せたものを!!」
ベジータの憤りに悟空は両手を前に突き出し掌を広げて、落ち着けとジェスチャーする。
「まあまあ、界王神様だって悪気はねーんだからよ。ベジータ」
「…そのせいで事態が悪化してるってのにか!? ちくしょう、こんな所でくっちゃべってる場合か! さっさとトランクスやブルマを探すぞ!!」
言うや否や、悟空とブロリーを引き連れて行こうとするベジータであった。
そんな彼らの前に、薄い靄が発生する。
「…ベジータ、ブロリー。気ぃつけろ! こいつは、死者の気だ!!」
「…チ! 既に地球以外の全ての人が死に絶えているのなら、今回の死者の都は…!!」
「…前回の比ではない。一惑星の歴史など比べ物にならんぞ。文字通り全宇宙の死者が、この地球に集まるのだとしたらな!!」
三人のサイヤ人は、髪を逆立て金色に輝かせる。
彼らは超サイヤ人になったのだ。
「…さあて、一気に力を引き上げっぞ!!」
悟空の言葉にブロリーとベジータもニヤリと笑う。
三人の超サイヤ人は、一気に力を神の次元にまで引き上げた。
先程の超サイヤ人ブルーを僅かに上回るくらいの気を三人とも身に纏っている。
「…す、凄い…! ターニッブのように、あなた方も?」
「負けらんねえんだ。真に目覚めてから、余計にそう思うようになった。ターニッブにだけは、負けらんねえ!!」
誰よりも認めているからこそ、孫悟空はターニッブにだけは負けたくない。
これに同じ領域の力を放つベジータとブロリーも笑う。
「…カカロットめ。また言ってやがる」
「クククク、次はどっちが勝つんだろうなぁ?」
「…なんだ、楽しそうだな? ブロリー」
「ああ、楽しみだ。お前も、そうだろ? ベジータ」
「……フン。まあな」
「…フヒヒヒ!」
常世の霧が地球全体を覆い尽くす中、三人はゆっくり拳を握った。
しかし、一向に亡者が現れる気配はない。
ただ、常世の理が地上を覆い尽くしただけだ。
「…亡者が出てこんな。惑星の意思め、何を企んでやがるんだ?」
「…分からねえ。流石に多次元の可能性を取り込むようなヤツの考えるこたあ、理解できねえよ」
「……フン。カカロット、ベジータ。代わりに面白い客が現れたぞ」
ベジータと悟空の会話にブロリーがニヤリと笑って割り込む。
二人はブロリーが見る方を向くと其処には、青い髪をした赤いスカーフの青年と、孫悟空と同じ顔をした、漆黒の道着の上に赤い羽織を着た男が瞬間移動で現れた。
これにベジータが目を見開く。
「…トランクス、だと!? それに奴は!!」
「ああ。多分、間違いねえ。この次元のオラの肉体を復活させ、オラの魂と融合した界王ーーザマス様だ」
二人の反応にトランクスも驚愕し、ゼノも訝し気に眉を上げる。
「父さん。それに悟空さん…! いったい、どうして?」
「…孫悟空。私の魂がザマスと君の融合だと、何故知っている?」
二人からの問いかけに、プリカが静かに口を開いた。
「ご説明します。わたしは、惑星サイヤの巫女・プリカです」
「惑星サイヤ…? ガーキンさんと同じ星のサイヤ人ですか?」
「はい…! わたしは、悟空さん達に惑星サイヤに住んでいた自我ーー惑星の意思にして怨霊の塊を倒すべく協力してもらいました。今回も、そのお力を借りに来たのですが、その矢先に界王神様が現れたのです」
プリカの説明にゼノの目が見開かれた後、自嘲気味に笑って孫悟空を見る。
「なるほど。ゴワス様か…! では、孫悟空よ。君は私を倒しに来たのか?」
その問いかけにトランクスが目を見開いてゼノを振り返る。
「ゼノさん!?」
「時空を越えることは、基本的には許されない。界王神ゴワス様の許可があったから私は時を越えられた。だが越えた世界で干渉すること自体、本来許されはしない…!」
「それは、ブラックが俺達の世界に来たからで!!」
「ブラックも、私だ」
「……!!」
苦笑のように、悟ったように笑うゼノ。
孫悟空と同じ肉体でありながら、本来の明るい笑顔とはまるで正反対のモノ。
「孫悟空よ。君が私を裁いてくれるのならば、私は喜んでこの身を差し出そう…! それで君の名を護れるのならば…!!」
「ザマス様ーーいや。ゼノ、だったな。オメエは、ホントにそれでいいんか?」
「…どういうことだ?」
「オメエもオラなんだろ? なら、悔しくねえんか?」
その声にゼノの目が見開かれる。
孫悟空は真っ直ぐにゼノの中にあるザマスを、孫悟空を見つめてきている。
「オラ、惑星サイヤであらゆる次元のオラの記憶を体験した。オメエの記憶もだ!!」
「…!!」
拳を握り、悟空は熱く吠える。
「オメエ、悔しかったろ? 心臓病で死んじまってよ。何も出来ずにあの世から見てるだけでよ。みんなが、殺されちまうのを黙って見なきゃなんなかった…!!」
ゼノの心の内で、何かが叫ぶ。
ーー 闘いてぇ! オラも、みんなと一緒に闘いてぇ!! みんなを、守りてぇ!! ーー
思わず左の拳で胸元を抑える。
それでも納まることはない。
想いが溢れてくる。
「ザマス様、オラは闘いてぇんだ。名前なんか、どうだっていい…! オラは、皆を護るために闘いてぇ!!」
対面する悟空が紡ぐ言葉に呼応するように、ゼノの心の中にも同じ声が響いていく。
「…ぐ、孫、悟空…!! あなたは……!! そうまでして地球を…!! 世界を……!!」
目の前の超サイヤ人・孫悟空が叫ぶ。
その身に金色のオーラを纏い、一気に噴き上がらせる。
「次元が違おうと、関係ねえ。オラは、オラだ!!」
胸の内の孫悟空が叫ぶ。
同時にゼノの身を金色のオーラが纏い、一気に噴き上がらせる。
ーー やっとこ、皆を守るために闘えんだ。オラ、今度こそ皆を護って見せる!! ーー
あまりの熱さに押さえられない。
界王ザマスの理性を持ってしても、抑えが効かない孫悟空の魂の炎。
二人の孫悟空が同時にザマスの魂に告げた。
「ーー オラは、地球育ちのサイヤ人! 孫、悟空だぁああああっ!!!! ーー」
その熱い魂に呼応するようにザマスの魂も輝き始める。
再び、二つの魂は一つの色に変わる。
「うぉおおおおおっ!!!」
ゼノの口から、腹の底からの咆哮が出る。
それは、正に独りの戦士の魂の咆哮だった。
逆立っていた黒髪は金色に変化し、瞳は翡翠に染まる。
「……二人のカカロット、か」
ベジータが静かに対峙する二人の超サイヤ人・孫悟空を見る。
ブロリーも腕を組みながら瞳を細める。
「…ベジータ、プリカ。仮に惑星の意思がこの世界を常世に変えて、亡者を出さない理由があるとすれば。どんなことが考えられる?」
二人の対峙する姿を見ながらも、ブロリーは冷静な声で現状の分析を始めていた。
「? そうだな。亡者を出すことが無意味だと気付いた、とかじゃないか?」
「…ターニッブとバーダックさんが、合流してこないこと。関係あるかもしれませんね」
プリカの言葉にベジータが目を見開く。
「なるほど。元の地球に現れているのか…! だが、それでもこの世界に一体も現れないのは」
「それだけ、暴れてるんだろうなぁ。奴らが……!!」
ニヤリと笑うブロリーにベジータも笑みを返す。
「楽しそうにしてやがるじゃないか。アイツ等も」
そんなベジータにトランクスが近づいて来る。
「父さん。こちらの方は? 父さんや悟空さんにも匹敵する超サイヤ人のようですが…!」
「そう言えば、お前は初めて会うんだったな。コイツはブロリー。俺とブルマの家に住む居候のサイヤ人だ」
「え?」
見上げるトランクスに、2メートルを越える長身の超サイヤ人ブロリーがニッと笑ってくる。
「トランクス。それよりも、何故お前がゼノを知っている?」
「え? はい。実はーー」
ベジータの問いかけに、トランクスは簡単にゼノとの出会いと経緯を説明した。
これにベジータが目を細めてゼノを見る。
「そうか。奴はブルマの恩人か…!」
「……父さん?」
自分の知る孤高で寂しそうな男とはまるで違う、穏やかさと優しさを兼ね備えた表情にトランクスが思わず目を疑う。
そんなトランクスの心境など無関係に二人の孫悟空は、互いに構えを取った。
「アンタの力、見してもらうぜ。ゼノさん!!」
「…ああ。俺もお前の力を見たいと思ってた…!!」
二人は同じ構えを取りながら、拳を繰り出しあった。
「つぅおりゃぁああっ!!」
「でぇりゃぁあああっ!!」
二つの拳はまともにぶつかり、二人の中央で爆発した。
次回もお楽しみに!(^^)!