ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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真の超サイヤ人。

戦えば戦うほどに力を増す無限の戦士の力。

それを人間を滅ぼす神が纏った時、争いは更に激化する。


最凶最悪 真・超サイヤ人 ゴクウブラック

 

最悪の真・超サイヤ人 ゴクウブラック

 常世の霧が漂う未来の世界。

 

 ゴクウブラックの前には、惑星の意思の力で可能性を取り込んだ界王ザマスがいる。

 

「…どうだ、馴染んだか?」

 

「ああ…」

 

 己の肉体ーー胸の辺りを見下ろし、ブラックは拳を握る。

 

「素晴らしいものだ。これほど違和感なく、力を手に入れられるとは。ザマス、お前の言うとおりだ。惑星サイヤを俺の世界で見つけていれば、孫悟空の肉体などに頼ることもなかった」

 

「…今となっては丁度良い。真・超サイヤ人の力を手にいれた孫悟空の肉体を、お前が使うのだ。これ以上の力はあるまい?」

 

「…ああ」

 

 ザマスの言葉に頷きながら、ブラックは拳を握り薄紅色のオーラを身に纏う。

 

「……神の力を纏う超サイヤ人ロゼ。この俺が、真・超サイヤ人に至れば」

 

 黄金の炎を身に纏い、ブラックは黄金の髪を天に逆立てて、黒の瞳孔が現れた翡翠眼をザマスに向ける。

 

 その黄金のオーラに薄紅色の炎が太陽のコロナのように纏わり、渦巻いて疾る。

 

 ロゼの炎がブラックの右目に集まり、翡翠眼は薄紅色に黒の瞳孔が現れた瞳に変わる。

 

「…素晴らしい。先程の孫悟空と同じステージに至るとは、流石だ」

 

「…フフ、神たる俺が、人間如きに至れた領域に来れぬわけがない」

 

 不敵な笑みを浮かべて笑うブラックにザマスも笑みを返す。

 

「…当然か。我らは神なのだからな」

 

 互いに笑い合う両者。

 

 ブラックはザマスに背を向ける。

 

「…もう行くのか?」

 

「ああ。この力、早く試してみたいのだ」

 

「…では、北の都に向かうがいい」

 

 ザマスの言葉に、ブラックが訝しげに見返してくる。

 

「…我は惑星サイヤの力を持つ。この世界が、どんな構造になっているのか既に把握した。北の都に奴らは拠点を移動している」

 

「分かった」

 

 ブラックは、腕を無造作に横に薙いで薄紅色の炎を周囲に放つ。

 

 五つの炎の球が宙に人魂のように浮かび、それを漆黒の霧が渦巻きながら纏わりつく。

 

 五つの炎の球は人の形になり、超サイヤ人ロゼのゴクウブラックの姿を象る。

 

 鎌を使って生み出した分身が、実体を持っている。

 

「…フフ、手数もコレで充分だ。では、俺の分身達よ、共に人間を滅ぼすとしようか」

 

 ブラックの言葉に分身達はニヤリと笑みを返した。

 

 かつて惑星サイヤを救った五人のサイヤ人と同じ力。

 

 真・超サイヤ人に目覚めたブラックは、この力で人間を滅ぼしに向かった。

 

 そして、人類は最悪の末路へと向かうのだ。

 

ーーーー

 

 一方、孫悟空とゼノの瞬間移動により、一行は西の都(廃墟)から北の都のレジスタンスの拠点へと移動した。

 

 薄暗い中で松明の灯りを頼りにする様は、とても原始的ではあるが。

 

 それでも人が生きる活力を表すように思える。

 

 悟空とベジータ、ブロリーが疲れ切った未来の地球人の顔を見て、目を見開いている。

 

「…トランクス。たった、これだけなんか?」

 

「……はい。これだけしか、守れませんでした」

 

 悟空の静かな言葉に、トランクスが歯を食いしばりながら応える。

 

 これにベジータが、ブロリーが黙って拳を固く握る。

 

 静かな怒りの表情に変わる三人の迫力に、界王神達も思わず黙り込んだ。

 

 プリカは、ソッと両手を胸の前に組んで祈るような姿勢になる。

 

 ブロリーがそちらを見れば、布に包まれた何かが横たわっていた。

 

 顔を向ければ、何かを入れたまま寝袋のような黒い革袋が何袋も寝かされている。

 

 中身が何かなど、確認するまでもない。

 

「……やったのは、ブラックって野郎だな?」

 

「はい…!!」

 

 静かな悟空の言葉に対して、必死に歯を噛み締めながら応えるトランクス。

 

 ベジータが思わず手を伸ばしかけた、その時。

 

「ベジータ! 孫くん!!」

 

 聞き慣れた声にそちらを向けば、長い黒髪の女性と共に、白衣を着た青い髪の初老の女が声をかけてきた。

 

「…ブルマ!!」

 

 一も二もなく、ベジータはブルマの手を取る。

 

「…へ? べ、ベジータ?」

 

 目を見開くブルマに構わず、ベジータは鋭い瞳で問いかける。

 

「体は、無事か?」

 

「え、ええ。ゼノくんの、おかげで」

 

「…そうか」

 

 ベジータは静かに呟くと、溜め息を一つ吐く。

 

 手を離す様子のないベジータにブルマが目を見開いている。

 

「…ブルマ! ベジータの奴、変わったろ?」

 

 歯を揃えてニッと笑う悟空に、ブルマは呆然としながらも頷く。

 

「…え、ええ。孫くん、あたしは都合のいい夢を見てるのかしら?」

 

「夢ではない。俺だ、ブルマ。よくトランクスと共に戦った。よく、生き延びた。それでこそ、俺の妻と息子だ」

 

「……ベジータ。あ、あれ? あたし、悲しくないのに涙が…! あれ? あ、あはは、ベジータ」

 

 ベジータは何も言わずにブルマを抱き締めた。

 

「…う、うぁああああ! ベジータ!! 孫くん!! みんな、みんな死んじゃったのよ!!!」

 

 その腕の温もりと逞しさに包まれ、ブルマは声を上げて泣いた。

 

「…分かっている。俺が必ず、ブラックとかいうふざけた奴をぶっ殺してやる!!」

 

「オラもだ。アイツだきゃあ、許せねえ!!」

 

 二人の力強い言葉に、ブルマは声を殺して啜り泣く。

 

 そんな彼らのもとに、レジスタンスの二人組が近づいてきた。

 

「…ブルマさん。その人達が、本物の孫悟空さんとベジータさんですか?」

 

「…あの! 大変なんです! 悟飯さんとピッコロさんとガーキンさんが急に外に飛び出ていって! ブラックが現れたとか!!」

 

「俺たちは、身の安全の為に逃げて悟空さん達に伝えて欲しいって」

 

 その言葉にトランクスが目を見開き、ゼノが苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

「…あれだけ悟飯さんにやられたのに、もう動けるのか」

 

「トランクス、君は界王神様達と共に此処でみんなを守ってくれ。孫悟空、ベジータ、ブロリー! 私に続いてくれ、迎撃するぞ!!」

 

 ゼノの叫びに、三人のサイヤ人が不敵な笑みを浮かべた。

 

「…サイヤ人らしくなってきたじゃねえか、ゼノ!!」

 

「フン! 言っておくがゼノ。ブラックは俺が倒す!!」

 

「血祭りに上げてやろう。ふざけたカカロットの偽物をな!!」

 

 四人のサイヤ人は力強い足取りで、地下通路を北の都に駆けて行った。

 

ーーーーーー

 

 現代の地球。

 

 時空の狭間から溢れ出る瘴気や怨霊の塊をことごとく退けるは、バーダックとターニッブのサイヤ人タッグ。

 

 そして、クリリン達ーー地球の戦士達。

 

「…ま、まだ出てくるのかよ」

 

「クリリン、大丈夫か!?」

 

 肩で息をする小柄な坊主頭の青年に、同じ山吹色の道着を着た長い黒髪の色男が声をかける。

 

 クリリンとヤムチャである。

 

「な、なんとか。でも、そろそろ限界です。ヤムチャさん」

 

 肩で息をするクリリンに、ヤムチャも苦虫を噛んだような顔になる。

 

「…数が多い上にちっとも減らないからな。闘い始めて、半日くらいは経ってるってのに!」

 

「このままじゃ。悟空の親父さんや、ターニッブの足を引っ張っちまう。ちょっとでも、休んでもらいたいのに」

 

 クリリンがちくしょう、と呟きながら二人の超サイヤ人を見る。

 

 そんなクリリンにバーダックが告げた。

 

「馬鹿野郎が! 俺達が居なけりゃ、あっとういう間に突破されんだろうが!!」

 

「…気遣い無用だ。これも修行と思えば、何ということはない!!」

 

 ターニッブもその隣で亡霊から目を離さずに告げる。

 

 そんな二人に天津飯が呟いた。

 

「だが、未来時空に繋がるというこの光ーー悟空達は大丈夫なのか?」

 

「天さん、焦っちゃダメ! 危ない!」

 

「分かってはいる。しかし、俺達に力があれば、バーダックとターニッブを送り届けられるんだ…!!」

 

 不甲斐ないと嘆く天津飯に、バーダックは口の端を吊り上げる。

 

「下らねえ心配してんな。俺の息子だ…! そう簡単には、やられねえさ。それよりも、無茶し過ぎて倒れんじゃねえぞ」

 

「…俺達が不甲斐ないばかりに、お前達に負担をかけてしまうとは。すまん…!!」

 

「そんなに強くなりてえのなら、このゴタゴタが片付いたら一度、其処のターニッブとやり合ってみろよ。もしかしたら、俺の孫やピッコロみてえにテメエも一気に突き抜けるかもしれねえぜ?」

 

「…! 本当か?」

 

 天津飯が孫悟空に瓜二つの白い道着の男を見据えると彼は、静かに真っ直ぐな翡翠の瞳でこちらを見返してくる。

 

「闘うと言うのなら、誰であろうと拒みはしない」

 

「…有難い。俺は、まだまだ強くなりたいからな」

 

 告げる天津飯の隣で、ヤムチャもニヤリと頷く。

 

「なら、俺も修行させてくれよ! 悟空達ばかりに頼りっぱなしってのも癪に障る」

 

「俺も! 修行、いいかな? ターニッブ!!」

 

 次々と参加を表明する地球人たちに、ターニッブは冷静で穏やかな笑みを超サイヤ人の状態で浮かべた。

 

「…受けて立とう!!」

 

 言うと同時、金色のオーラが黄金の炎のように激しいものに変化し、翡翠の瞳に黒の瞳孔が現れる。

 

 金色の髪は更に濃い黄金へと変化した。

 

「…お、おい。これって!?」

 

「見た目はほとんど変わらないが、違う! 先程までの超サイヤ人とは、明らかに違う!!」

 

 ヤムチャが目を見開き、天津飯が声を出す中、サングラスをかけた禿げ頭の老人ーー亀仙人は緩やかに笑みを浮かべる。

 

「こりゃ、凄いわい! 悟空達に勝るとも劣らない戦士とは、本当じゃったか!!」

 

 ただでさえ圧倒的だった超サイヤ人の気が無限に上昇し始めている。

 

 クリリンが思わず呟いた。

 

「は、反則じゃないか? これ…!!」

 

「す、凄い! パワー、どんどん、上がってる!!」

 

 引き上がり始める力に、味方であるはずのZ戦士達の表情が引きつる。

 

 それほどまでに圧倒的な力の顕現だった。

 

「この力、限界がないのか!?」

 

「し、信じられんほどのパワーだったのに、更に引き上げられんのかよ!!」

 

 天津飯とヤムチャの横にバーダックが静かに立って笑う。

 

「よく見とけ。こいつが、超サイヤ人の真の姿だ。この姿なら、どんな奴にも負けねえ…!!」

 

 山吹色の道着のズボンと悟空のブーツを履き、上は青いインナーシャツのみを着けたバーダックは、額の赤いバンダナを締め直すと笑う。

 

「おい、テメエら? この力を見ても強くなりてぇか?」

 

 バーダックの隣でターニッブは拳を振るって、一撃のもとに亡者の群れを消滅させていく。

 

 そのあまりの力に、考える能力のないはずの亡者の群れが進撃を躊躇うほどである。

 

「コイツが、ターニッブの真の力だ。とんでもねえだろ?」

 

 笑いながら告げるバーダックに、Z戦士達のほとんどが声を失う中、亀仙人が笑った。

 

「ほっほっほっ! 確かにのぉ!」

 

「武天老師様、この力を前によく笑えますね?」

 

「クリリンよ、強い力に惑わされるな。それを振るう者の心を知れば、恐るるには及ばんわい」

 

 その言葉に一同は力を振るうターニッブを見る。

 

 漆黒と灰色の亡者の霧が、黄金の炎を全身に纏った戦士の拳によって青い光の粒子へと変わっていく。

 

 震える怨霊の声が、無邪気な赤子のような声に変わり、邪気が消える。

 

 ターニッブは、それを何回と繰り返している。

 

「…浄化しているのか? こんな大量の亡者を!!」

 

「何て奴だ…!! ただ拳で消し飛ばすんじゃないのか!!」

 

 そのあまりの光景に、天津飯とヤムチャが拳を振るわせている。

 

 ターニッブが拳を一つ振れば、無数に湧いていた亡者が蒼い風の波動に当たって浄化されていく。

 

 その数は、千を凌駕している。

 

「よく見とけ。引き上がった力を倒す為ではなく勝つために振るう。アレが、奴の風の拳だ」

 

 鋭い瞳で告げるバーダックに、クリリンは目を見開きながら呟いた。

 

「まるで、悟空の元気玉や超サイヤ人ブルーみたいな色の気だ。それを、あんなにも簡単に拳や脚に纏えるなんて…!!」

 

 繰り出される一撃には、風の波動が纏わって全てを浄化していく。

 

 怨霊は嘆き、苦しみの中で正気を取り戻し、天へと還っていく。

 

「武道ーー天に通ずる! 正に神武不殺の拳、見事なものじゃ。これほどの戦士がおったとはのう。長生きはするもんじゃわい」

 

 亀仙人の言葉にかつては、殺人拳を学んでいた天津飯。

 

 盗賊であったヤムチャも目を見開いた。

 

「あれだけの力がありながら。これほど、真っ当な強さを持てると言うのか!」

 

「…すげぇな。呆れるくらい、大した野郎だぜ…!!」

 

 Z戦士は武道家である。

 

 彼らにとって、一つの理想の顕現に戦士達は心を震わせている。

 

 あの力に及ばなくてもよい。

 

 だが、近づきたいと願う。

 

「修行のやり直しだ、この闘いが終われば」

 

「付き合うぜ、天津飯」

 

「俺も、参加させてもらっていいかな? 天さん、ヤムチャさん」

 

「みんなで修行する! みんなで強くなる!!」

 

 天津飯、ヤムチャ、クリリン、チャオズが、気を練って呼吸を整えながら、かつて心の中に燻っていた炎が再び燃え上がっていた。 

 

「…へっ! 類は友を呼ぶ、か。カカロットによく似てやがる」

 

「ほっほっほっ! これほどのモノを見せられては、ワシらもまだまだ頑張らねばなりますまいて!!」

 

「ならジイさん、一気に押し込むぞ!!」

 

 言うと同時、バーダックもまた己の中の真の力を引き出す。

 

 ターニッブと同じく黄金の炎のような激しいオーラを纏い、翡翠の瞳に黒の瞳孔が現れる。

 

「! バーダックさん。あんたもか!」

 

 更にバーダックの場合は、前髪がさらに天に突き立って一房だけを垂らしたものーー超サイヤ人2のものになっていた。

 

「たりめえだろ? 俺は、カカロットの親父だ!! まだガキ共に負けるほど、耄碌してねえよ!!」

 

 真・超サイヤ人となったバーダックは同じく真・超サイヤ人のターニッブの横に並び立った。

 

 同じ顔をした超サイヤ人達は同時に拳を構える。

 

「行くぜ! ついてこい、ターニッブ!!」

 

「ああ。後ろは任せろ!!」

 

 無限に現れる亡者に対し、無限に力を引き上げる超サイヤ人が二人、真っ向からぶつかっていった。

 

 その光景は、黄金の炎がさらに猛り狂い、亡者の世界を包もうとするかのようだった。

 

ーーーー

 

 圧倒的な力は、二つの顔を持つと言われる。

 

 孫悟空やターニッブのような、正しい心の持ち主が使えば絶望を払う希望の光となる力も。

 

 邪悪な心の持ち主が使えば、全てを滅ぼす絶望の炎と化すのだ。

 

 廃墟と化した北の都に三人の戦士が立っている。

 

 レジスタンスのメンバーが敵に見つかり、それを庇うために戦闘に入らざるを得なくなった。

 

 孫悟飯、ピッコロ、ガーキンの三人である。

 

 彼らの周囲には、五人の黒の道着を来た薄紅色の髪の超サイヤ人がいる。

 

「…あれだけ痛めつけたのに、もう復活できるのか…!!」

 

 悟飯が静かに天を睨みつけながら呟くと、空に浮かぶもう一人の黒髪に黒衣の男は笑みを返してきた。

 

 ゴクウブラックである。

 

「ククク、貴様らのおかげで俺は更なる高みへと至った。そして、新たな力を得たのだ」

 

「フン、分身を創り出せるとはな…! どちらかと言えば、これは魔族の力だ!」

 

 ピッコロが静かに、自分とガーキンの周りを取り囲む超サイヤ人ロゼ達を見つめる。

 

 全員がゴクウブラックと同じ姿をした分身である。

 

「分身なんぞ作り出しやがって…! 蹴散らしてやるぜ!!」

 

「気を付けろ、ガーキン。この分身ども、ブラックに匹敵する力を持っているぞ」

 

 ピッコロの言葉にガーキンが金色の戦士・超サイヤ人に変身しながら告げる。

 

「だからってそんなもん、蹴散らすしかねえだろうが!!」

 

「…確かにな」

 

 ガーキンの力は一気に高まり、今のロゼと同等程度まで引き上がった。

 

 これにピッコロがニヤリと笑う。

 

「真・超サイヤ人ではないようだが…。超サイヤ人の状態ならターニッブと同格のようだな。神の域に達している」

 

「言ったろ? 俺は、アイツのライバルだってな!!」

 

 超サイヤ人の状態でブルーよりも一回り上程度の気を引き出す。

 

 ガーキンもまた、極みへと足を踏み入れた男の一人だった。

 

 これに負けまいとピッコロもターバンとマントを脱ぎ捨て、白銀の炎のような激しいオーラを身に纏う。

 

「……フフ、素晴らしい。神の気を纏わずに超サイヤ人の状態で神の域に達する者。ナメック星人でありながら神と魔と人の気を同時に高めて究極へと至る者。どちらも見事なものだ」

 

 上空から拍手を送るブラックに応ずるように、分身のロゼ達は構えを取り二人に殴りかかった。

 

「ぬぅあ! たたたたたた、ぬぅあたぁ!!」

 

「行くぜ! オラオラオラ、オラァアア!!」

 

 ピッコロもガーキンもそれぞれ、構えを取りながら五対二で殴り合う。

 

 ピッコロは、三方向から来る拳に対して高速移動で的を絞らせずにカウンターを取るように動き。

 

 ガーキンは持ち前の手数の多さで、同時に二体の分身と真っ向から殴り合っている。

 

 分身の超サイヤ人ロゼ達の表情は一様に暗く、何の感情も映し出さない冷たい灰色の瞳をしている。

 

 悟飯は、ピッコロたちと激しい攻防を繰り広げる彼らを見て呟いた。

 

「表情から生気を感じない…! これは、まさか亡者の気を固体化しているのか?」

 

 ブラックは手を叩いて拍手する。

 

「ご明察。よくぞ、見抜いた孫悟飯。褒美にいいものを見せてやろう」

 

「…なに?」

 

 言うと同時、ブラックは右手をかざして時の指輪を光らせる。

 

 その光は悟飯の首飾りについてある勾玉を包み込んだ。

 

「!? 貴様、何を!!」

 

「先程の闘い、お前一人にしてはあまりに強すぎた。その勾玉に居るのだろう? この世界の孫悟飯が」

 

 思わず悟飯は首飾りを握りしめ心の中で語り掛ける。

 

 だが、確かに感じた声が聞こえない。

 

「…貴様。もう一人の俺を、どうした!?」

 

「案ずるな、意識を封じただけだ。俺を倒すことが出来れば、元通りに話せるようになる。倒せれば、な?」

 

 悟飯は知らないが、封印するという力は界王神の力である。

 

 孫悟空と言う肉体は人間のモノだった為、神としての力は失われるはずだったというのに、今のブラックはそれを使えているのだ。

 

 瞳を細めて右手を顔の横に置いて前に突き出し、左の拳を腰に置く構えを悟飯は取る。

 

 父親である孫悟空と同じだが、オーソドックスの悟空に対し、左構えの悟飯。

 

 これにブラックは余裕の笑みを浮かべながら地面に降り立った。

 

「…もう一人の俺が居なければ、お前を倒せないと思うのか?」

 

「逆に問おう。倒せると思うのか?」

 

「…なめんなよ」

 

 言うと同時、悟飯は腰だめに気を高めて白銀のオーラを身に纏って、甘さの消えた鋭い顔つきに変化する。

 

 その状態の悟飯を静かにブラックは見据えて先を促す。

 

「アルティメット…! 界王神による潜在能力の開放か、素晴らしいが。それで終わりではないのだろ?」

 

「……はぁ!!」

 

 気合を入れて黄金の炎を身に纏い、前髪を一房だけ垂らして髪を逆立てた黄金の戦士が姿を現す。

 

 翡翠に黒の瞳孔が現れた目は、苛烈な炎を冷徹な感情で包んでいる。

 

「気が無限に上昇する、か。見事なものだ、真・超サイヤ人」

 

「…どうした、貴様はロゼってのにならないのか?」

 

「ククク、そうだな。我が力、まずは超サイヤ人ロゼで試すとしよう。行くぞ、孫悟飯よ」

 

 言うと同時、ブラックの全身を薄紅色のオーラが纏う。

 

 黒髪が天に突き立ち、薄紅の光を放っている。

 

「さ、始めようではないか? この間の続きだ」

 

「……!」

 

 互いに構えを取りながら、一瞬の静寂。

 

 その後、激しく地を蹴って攻撃を繰り出しあう。

 

「だだだだだだっ!!」

 

「はぁああああっ!!」

 

 互いに拳と蹴りを激しくぶつけ合いながら、交互に両者は顔を仰け反らせる。

 

 悟飯の拳がまともにブラックの顔を射抜けば、ブラックの拳が悟飯の腹を打ち貫く。

 

「…くっ!!」

 

「フフ…!!」

 

 ガードや捌き、見切りなどを駆使しながら、お互いに拳と蹴りを繰り出し合っている。

 

 徐々に打ち合いに差が出てきた。

 

 悟飯の拳が空を切り出し、ブラックの拳がまともに悟飯の肉体に叩き込まれ始めている。

 

「見切られているだと!?」

 

 目を見開く悟飯にブラックが笑う。

 

「強烈で鋭く几帳面と言えるほどに正確な攻撃だ。故に、見抜きやすい」

 

 悟飯の右ストレートを紙一重で首を横に倒して躱しながら、右のボディを叩き込む。

 

「ぐぅ!?」

 

 動きの止まった悟飯の腹に、更に右のサイドキックを叩き込んで吹き飛ばした。

 

「がはぁ!?」

 

 仰け反りながら地面に着地する悟飯の目の前に、ブラックは拳を握って攻撃を仕掛けてきている。

 

(速い! パワーもスピードも、以前とは桁違いに上がっている!!)

 

 拳を返しながらも、相手の力と速度に舌を巻く。

 

 僅か一日も経たない時間で、先程西の都で戦った時とは桁の違う強さになっている。

 

 全体的な力はまだ自分の方が上だが、攻撃が見切られている。

 

 ならば、と真・超サイヤ人の力を引き上げてパワーとスピードを一気に倍にする。

 

 ブラックの右ストレートを倍になった腕力で軽く受け流し、背後に高速移動で現れる悟飯。

 

「もらったぁ!!」

 

 右の回し蹴りをブラックの後頭部に目掛けて放つ。

 

 しかしブラックは、悠然とした態度で頭をその場に下げて、蹴りを避けてみせた。

 

「なんだと!?」

 

 目を見開く悟飯に振り返りながら、ブラックは強烈な返しの右前蹴りを腹に入れて吹き飛ばす。

 

 轟音と煙を立てながら廃墟のビルの壁に叩きつけられる悟飯を、ブラックは静かに蹴り脚を戻しながら見つめる。

 

「どうした? 動きが単調過ぎるぞ、孫悟飯。私とはじめて戦った時のような実践的な動きはどうした?」

 

 勾玉を見据えながら笑うブラック。

 

「父の仇を取るのではなかったのか? それとも、この世界のお前が居なければ何もできない半人前か? それだけの力を持ちながら、随分と滑稽なことだ」

 

 磔になった状態の悟飯は冷徹な瞳でブラックを見返すと、静かに歯を食いしばって怒りに目を見開いた。

 

「……貴様!!」

 

 強烈な黄金のオーラが磔にしていたビルを建物ごと消し飛ばし、更に悟飯の力を引き上げる。

 

 その力は、正に底がない。

 

 だが、そんな悟飯を前にしてブラックは余裕の笑みを絶やしていない。

 

「素晴らしい力だ。すでに私を大きく上回っている。だが、哀しいかな。初対面の時に感じた恐ろしさは、今の貴様からは感じぬな」

 

「……根拠のない強がりを言いやがって」

 

 言うと同時、悟飯はブラックの目の前に高速移動で現れて、軽く拳を握って殴り飛ばす。

 

 それだけで紙のように吹き飛ばされるブラックの背後に、再び高速移動で現れ強烈な右の踵を頭上から振り下ろした。

 

(! 手ごたえがない!?)

 

 目を見開く悟飯の前には、コンクリートの地面が無残に地割れを起こしているだけだ。

 

 その左脇に息遣いを感じ、目だけをそちらに向けると。

 

「フフフ、どうした? 動きが読めるぞ、孫悟飯」

 

 残忍で冷酷な、サイヤ人そのものと言った笑みを浮かべた超サイヤ人ロゼのブラックが、灰色の瞳でこちらを覗いている。 

 

「き、貴様…! 俺の動きを!?」

 

 後方にバックステップして距離を置いた悟飯の前に、ブラックは両手を広げて笑う。

 

「はじめて貴様とやり合った時に思っていた。俺の知る貴様とは、あまりに違った。甘さがなく、油断もせず、臨機応変かつ実戦的な動きを簡単にやって見せた。一言で言えば、センスだ。学者業を続けていた貴様に、最強の界王であったこの俺を上回るセンスがあるはずがない」

 

 悟飯は静かに歯を食いしばる。

 

「心当たりはあった。この時空の孫悟飯ならば。人造人間達との命懸けの戦いを続けてきた奴ならば。センスも孫悟空に匹敵するほどに磨かれているであろう、とな」

 

「…もう一人の俺を封じたのは、その為か!!」

 

「その通りだ。神に歯向かった愚か者よ、貴様は徹底的に甚振り、なぶり尽くして殺してやる」

 

 笑うブラックに悟飯は更に気を引き上げる。

 

(これ以上の気の上昇は、真になっていられる時間と体力を消耗させてしまう。それでも、一か八か…!!)

 

「ん? 更に気を引き上げたか。やはり素晴らしいな、その力…!! お前が何処まで高まるのか見てやってもいいが、残念なことに俺はこれから、貴様らを滅ぼした後で孫悟空とベジータ、ブロリーというメインディッシュを味あわねばならない。あまり時間をかけていられんのだ」

 

「なめんなぁああああ!!!」

 

 一気に気を引き上げてフルパワーにする悟飯。

 

 力は、現時点での真・超サイヤ人の臨界点に達している。

 

 体力のほとんどと引き換えに、そこから更に気を引き上げて左構えのかめはめ波を練り上げる。

 

「…究極(アルティメット)かめはめ波、だったか。確かに、その一撃ならば勝負を着けられるだろう。当たればな」

 

 両手を広げて笑うブラックに、悟飯は全身に汗を掻きながら告げる。

 

「何を笑ってやがる…! いくら、超サイヤ人ロゼでも。コイツを喰らって無事で済むと思うのか…!!」

 

「…いいや。だが、俺には通じない」

 

 笑って告げるブラックに悟飯の目が見開かれる。

 

 ブラックは静かに告げた。

 

「さあ、試しに撃ってみろ。そして絶望を教えてやる…!!」

 

 あまりのブラックの余裕に悟飯は躊躇していた。

 

「…く!」

 

(この余裕。何かある…! だけど、ここまで力を引き上げてしまった以上、真になっていられる時間はもう…!)

 

 一か八か、本当にその賭けに乗るしかない状況に悟飯は舌打ちをしたい気分だった。

 

「フフ、通じぬと悟ってしまったか? だが、撃たなくてもお前は時間切れだ。そうなれば、俺に勝つ見込みはゼロになってしまう…! 試すしかあるまい?」

 

 自分の心を読んで煽るかのように告げてくるブラックを睨みつけ、悟飯は叫んだ。

 

「頼む! ハッタリであってくれ!! 究極(アルティメット)かめはめ波ぁああああ!!!」

 

 両手を前に突き出し、強烈な青い光線を放つ。

 

 その力は、世界そのものを射抜くほどに強烈なもの。

 

 一瞬で光は大気圏外を突き抜いて、宇宙の闇へと飛び立って爆発した。

 

 超新星の爆発のような光で宇宙の闇を照らしながら、悟飯の放った光は消滅する。

 

 圧倒的な力の顕現。

 

 巨大な溝を前方に作りながら、悟飯は両手を突き出した構えのまま、真・超サイヤ人から元の黒髪の状態に戻った。

 

「……く、くそったれめ…!」

 

 珍しく口汚い言葉を発する悟飯の前には、何事もなかったように立つ漆黒の道着を着たブラックが立っていた。

 

 ただし、その逆立った髪は黄金に灰色の瞳は翡翠に黒の瞳孔が現れたものに変化している。

 

 神の気と呼ばれる、ロゼの炎を両の手から溢れさせてブラックは笑う。

 

「…無効化したっていうのか!!」

 

 目を見開く悟飯に向かってブラックは静かに笑う。

 

「どうだ? これぞ神が真に至りし姿だ。真・超サイヤ人となった俺はロゼの気を炎にすることで、神の力をも操れるようになった」

 

 肩で息をしながら、今にも意識を失くしそうな悟飯に向かって真・超サイヤ人となったブラックは笑う。

 

「気が高まり、溢れかえっている…! 素晴らしい力だ…!! この力と我が半身が居れば、俺はこの世界を理想郷へと変えることが出来る…!!」

 

「…り、理想郷だと…!」

 

 半ば失いかける意識を必死に繋ぎ止めながら、ブラックを睨みつける悟飯。

 

 それにブラックは微笑みを浮かべて告げた。

 

「人間ゼロ計画…! この俺の邪魔は、何人にもさせん。さあ、この力を手に入れた記念だ。この間のお返しを、たっぷりとしてやろう…!!」

 

 既に力を失った悟飯を前に、舌なめずりをしながら笑うブラック。

 

 その時だった。

 

「…貴様が、ブラックか」

 

 冷徹な声と共に蒼銀の炎が悟飯の周りを護るように燃え上がり、彼を瞬間移動させた。

 

「! この力は神の気…! まさか!!」

 

 目を見開くブラックの前に、自分と同じ顔をして山吹色の道着を着た、黄金の髪に翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳を持った戦士が立っていた。

 

 悟飯が彼を見上げて目を見開く。

 

「と、父さん…!」

 

 彼の左には、紺色のフィットスーツに白銀の戦闘ジャケットを着た、逆立った黒い髪とМ字の額を持つ男。

 

 右には2メートルを越える長身としなやかな長い手足を持ち、背中まで伸ばした黒髪の男が立っている。

 

 孫悟飯は、彼らの傍らに移動していた。

 

「…ゼノではない。そうか、貴様か」

 

 現れた真・超サイヤ人に向かって、ブラックはニヤリと冷酷にして残忍な笑みを浮かべて告げた。

 

「ごきげんよう、孫悟空」

 

 その言葉に、静かに冷徹な瞳をブラックに向けて孫悟空は低く告げた。

 

「…オメエ、やり過ぎだぜ。俺の体を奪っただけじゃなく、チチと悟天まで殺しやがって…!!」

 

 激しい怒りの炎を身に纏い、孫悟空が天に向かって咆哮する。

 

「俺はーー貴様だけは、絶対に許せねえっ!!!」

 

 




次回もお楽しみに( *´艸`)

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