ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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圧倒的な力を持って悟飯を下したブラック。

しかし、その前に怒りに燃える最強の戦士が現れた。

勝つのは、孫悟空か。

それともゴクウブラックか。


対決! 孫悟空 対 ゴクウブラック

 常世の霧が満ちた未来の世界。

 

 廃墟と化した北の都に、ピッコロとガーキンが分身のロゼ達を相手に渡り合っている。

 

 三方向から次々と打ち込んでくる敵の打撃を、ピッコロは絶えず左右に細かくステップして的を絞らせずに捌いていく。

 

「…スピードとパワーは本物のブラックにも引けを取らんが。動きが単調すぎる!!」

 

 迂闊に手を出して来た左の分身の右ストレートには、カウンターの膝蹴りを腹に叩き込み。

 

 左右から同時に拳を繰り出して来た分身は、それぞれ片手で掴み止めた後、長い右脚を横に薙ぐように払う中段回し蹴りで吹き飛ばす。

 

 両手を左右の分身にそれぞれ突き出し、目の前に三人目の分身を入れて三方向、それぞれに気弾を放った。

 

 分身のロゼ達が目の前に来た光弾に手刀を作り、光の剣を生み出して弾こうと薙ぐ。

 

「……!?」

 

 だが、剣が光に触れると同時に爆発し、三人の分身達は衝撃に仰け反る。

 

 その目の前に三人の戦士達が踏み込んで来ていた。

 

 超サイヤ人ブルーのベジータ。

 

 伝説の超サイヤ人になったブロリー。

 

 超サイヤ人の悟空ゼノである。

 

 三人の援軍は、分身ロゼを更に後方へ殴り飛ばした。

 

「ベジータ、ブロリー、ゼノ!!」

 

「お! やっと援軍が来てくれたか!!」

 

 ピッコロとガーキンの言葉に、ベジータとブロリーがニヤリと笑う。

 

「待たせたな、ピッコロ。ガーキン!」

 

「人形相手では物足りんが、暇潰しにはなる。まず、カカロットの手並み拝見と行こうか」

 

「戦力は整った。一気に押し返すぞ!!」

 

 頼り甲斐のある三人のサイヤ人に、ピッコロの口元が不敵に歪む。

 

「さっさと偽物を倒し、孫悟空と試合しなければな」

 

「楽しみだ。貴様がどれだけ腕を上げたか。見せてもらうぞ、ピッコロ!!」

 

 楽しそうなベジータの言葉に、ピッコロもニヤリと笑う。

 

「なんなら悟空の前にまず、お前に直接見せてやってもいいぞ。ベジータ」

 

「ほう、そいつはイイ! ならさっさと、この薄汚い偽物どもを倒すぞ!!」

 

 気を高めて告げるベジータにピッコロ、ブロリー、ガーキン、ゼノが呼応し、フルパワーを引き出す。

 

 分身五体を相手に、五人は構えを取った。

 

ーーーー

 

 激戦を繰り広げるベジータ達、五人とは対照的に静かに孫悟空とブラックは睨み合う。

 

「…父さん」

 

 力を使いきり、眠気に苛まれながら悟飯は、傍らに立つ鋭い顔付きの父を見上げる。

 

 全身に漲る黄金の炎に反し、冷徹な眼差しが敵を射抜いている。

 

 父は自分に振り返って鋭いながらも、いつもどおりの優しい笑みを浮かべてくれた。

 

「悟飯、よく頑張ったなぁ。後は、父ちゃんに任しとけ」

 

「…父さん。お願い、します」

 

「オメエの分も、俺が代わってあの野郎に叩き込んでやる!!」

 

 ブラックに向き直る頃には優しさなど微塵もない、冷えた怒りの表情になっていた。

 

「…待たせたな、このクズ野郎」

 

 冷徹な眼差しに低い声で告げる悟空は、西の都で戦った悟飯によく似ている。

 

 ブラックは冷酷な笑みを浮かべて告げた。

 

「クク、あいも変わらず不遜な男だ。神に対する礼儀を弁えぬ不届き者めが!!」

 

 悟空は静かに構えを取る。

 

「…言いてえこたぁ、それだけか? 悪りぃが、オメエの御託はどうでもいいんだ。…構えろよ」

 

「神に対するその姿勢。孫悟空よ。やはり、貴様は滅ぼすべき悪だ!!」

 

 目を見開いて告げるブラックに対し、悟空は身に纏う黄金の炎を爆発させて目の前に現れ顔面に右拳を放つ。

 

 軽々と左手で掴み止めるブラック。

 

 衝撃が大地を伝わり、二人の纏うオーラが揺らぎ睨み合う真の超サイヤ人。

 

 怒りに歯を食いしばって睨み付ける悟空。

 

 冷酷で残忍な笑みを浮かべるブラック。

 

「…何、笑ってやがる? 俺を舐めんのも、いい加減にしろよ…!!」

 

 瞬間、掴み止められた悟空の拳から蒼い神気の炎が立ち上がる。

 

「…ぬう!?」

 

 笑みを浮かべていたブラックが目を見開き、後方に弾き飛ばされる。

 

「アレは、超サイヤ人ブルーの神の気! 父さんは、真・超サイヤ人に変身しながら、ゴッドの気を使えるのか!!」

 

 目を見開く悟飯を他所に、強烈な拳と蹴りをブラックに放つ悟空。

 

 ブラックも攻撃をかいくぐり、鋭い拳打を返す。

 

 悟空の放った左右のストレート。

 

 ブラックは軽く握った右拳で左ストレートを脇に捌いて右ストレートを左に見切りながら、右のクロスカウンターを放つ。

 

 悟空は、顔の前に置いた左掌で軽く掴み止めた。

 

 同時に右の膝蹴りを放ち合って中央でぶつけて衝撃に体を後退させながら脚を戻し、左のハイキックを刀の鍔迫り合いのようにぶつけ合う。

 

 弾かれる両者の脚は、即座に地面に戻され、悟空の右拳に蒼い炎が、ブラックの右拳に薄紅の炎がまとわり、螺旋を描きながら放たれた右ストレートに宿る。

 

 一際、強烈な衝撃が発生した後、拳を突き合わせたままの姿勢で蒼と紅の炎が互いに向かって押し合う。

 

「…言いたかねえが、流石だな。今の俺に、アッサリと付いてくるなんてよ」

 

「当然だ。神である俺に、人間如きの身で敵うわけがあるまい。おとなしく、裁きを受けるがいい!!」

 

 言い放つと同時、ブラックは押し合っていた姿勢から高速移動で悟空の右側に移動する。

 

 押し合いの姿勢でいた悟空は、つっかえ棒が無くなったように前のめりの姿勢になる所を、左の肘を腹の前に置いて身構える。

 

 その肘に右側に移動したブラックから強烈な右の膝蹴りが放たれる。

 

 歯を食いしばって堪える悟空の左頬をブラックの右拳が捉えた。

 

「…く!?」

 

 ブラックの見事な踏み込みからの左ストレートが悟空の顔を跳ね上げた。

 

 続け様に右の拳がボディに突き刺さる。

 

「…ぐぅお!?」

 

 前のめりになる悟空の腹に、追い討ちの爪先が突き刺さる。

 

 強烈なブラックの右中段蹴り。

 

 踏ん張っていた足が宙に浮き、後方へ弾き飛ばされる。

 

「…クククク、孫悟空よ。お前の怒りが、強さが俺を更に引き上げる…!!」

 

 左手を突き出し、速射砲のように薄紅色の炎の弾を次々と撃ち出すブラック。

 

 地面に両手を叩きつけて引っ掻きながら、四つん這いになって後方へ弾き飛ばされる勢いを殺し着地する悟空。

 

 目の前に迫る連続エネルギー弾を睨みつけるや、真っ向から突っ込んだ。

 

「…ん?」

 

「ふ! は! ふ!」

 

 両腕と膝を構えて、弾を弾きながら突っ込んでくる。

 

「つぅおりゃあああ!!」

 

 ブラックの目の前まで踏み込み、大地を踏みしめた悟空は蒼炎を纏う右のストレートを放った。

 

 右腕でガードするブラックの両足が、勢いに押されて後方へ引き下げられる。

 

「ククク、やってくれる」

 

 笑うとブラックは、ガードしていた右手で悟空の右拳を掴み、左のボディを脇腹に叩きつける。

 

 体をくの字に曲げて、下がる悟空の顔を左ストレートで打ち抜いた。

 

 一歩下がる悟空に更に右ストレートを放つブラック。

 

 拳が悟空の頬を射抜いた時、自分の視界も揺れる。

 

「…ぬう!?」

 

 見れば悟空は、ブラックの右ストレートに隠れるようなタイミングとフォームで左のカウンターを放っていた。

 

 互いの拳の威力で首を吹き飛ばしながら、体ごと後ろに下がり、構えを取る。

 

「押し切れんか。流石だな、孫悟空」

 

 冷酷に笑うブラックを見据え、悟空は黄金の炎を身に纏いながら静かに構えを取る。

 

「…なんて強さだ。俺の攻撃が、ほとんど見切られてる。パワーもスピードも、今の俺より一回り上だ」

 

 静かに冷徹な瞳で悟空はブラックを見据える。

 

 真・超サイヤ人となったゴクウブラックの強さは、破壊神ビルスが認めた悟空でも分が悪い。

 

 真っ向勝負の肉弾戦で、打ち負けている。

 

「父さんより、奴の方が上だって言うのか…!!」

 

 半分閉じかかった瞼を無理やり開けて、悟飯がブラックを睨みつける。

 

 対するブラックはニッと笑い、告げた。

 

「ここまで楽しませてくれるとは。しかし孫悟空よ、貴様の力が強ければ強いほど、俺はより高みに至るのだ!!」

 

「…そいつは、スゲエな。なら、真・超サイヤ人になった俺のフルパワー、試してみっか!?」

 

 言うと同時、先程の悟飯のように、一気に黄金の炎を猛らせて気を引き上げる。

 

 ターニッブを除けば、悟空のフルパワーを出させたのはビルスだけだった。

 

「…おおっ! 素晴らしい。コレが、超サイヤ人・孫悟空の全力か!!」

 

 破壊神ビルスをも上回り、天使のウイスをも唸らせる力の顕現にブラックは笑みを浮かべている。

 

「こいつがビルス様も認めてくれた俺のフルパワーだ。この力は、ターニッブとビルス様以外にぶつけた事はねえ。ブラック、オメエが三人目だ」

 

「…愚かな。貴様が強くなればなるほど、俺の真・超サイヤ人も強くなる。差は永遠に縮まらぬわ!!」

 

「そうかい? なら俺とオメエ。どっちがより自分の真・超サイヤ人に向き合えてっか。勝負と行こうぜ!!」

 

「…何を訳の分からんことを。ありもしない希望にすがるとは。所詮、人間無勢か」

 

 侮蔑の混じった笑みを浮かべながら、ブラックも己のフルパワーを引き出す。

 

 今の孫悟空と同等のレベルにパワーを引き上げ、ロゼの神炎を掌から生み出して構えを取る。

 

「行くぞぉ!!」

 

 宣言と同時、悟空が目の前に踏み込んでくる。

 

 ブラックも凄絶な笑みを浮かべながら拳を握って殴り返してきた。

 

「父さん! 真っ向からは無茶だ!!」

 

 悟飯の見立てでは、ブラックの方が全てにおいて悟空よりも一枚上の戦闘力だ。

 

 ブラックの見切りと技に関しては、悟空ですら手に負えていなかった。

 

 いくらフルパワーになったとしても、実力が変わらないのであれば同じことだ。

 

 強烈な乱打戦になるが、此処で悟飯は違和感を覚える。

 

「父さん…? ガードを捨てて…!!」

 

 そう。

 

 孫悟空は、ガードや見切りを捨て。

 

 ただ、全力で拳と蹴りをブラックに叩きつけていく。

 

 ブラックの拳がまともに顔面に入ろうが、蹴りが顎を吹き飛ばそうが、血を吐こうがお構いなしだ。

 

「…! コイツ!!」

 

 ブラックが目を見開きながら、こちらの拳を食らいながら打ち返してくる悟空に忌々しそうに舌打ちをする。

 

「見損なったぞ、孫悟空! こんなゴリ押ししかできんとはな!!」

 

 悟空の攻撃をかいくぐり、左ボディから左のアッパー、右の中段前蹴りのコンビネーションを放って吹き飛ばすブラック。

 

 だが、どれだけ仰け反ろうと。

 

 後方へ下げられようと、血まみれにされようと、孫悟空は構わない。

 

 ただ、獲物を狩るように、鋭い黒の瞳孔が現れた翡翠眼を冷徹にブラックに見据えて突っ込んでくる。

 

(コイツ、どういうつもりだ!? 真・超サイヤ人に変身した興奮状態の為にダメージを感じていないだけで。こちらの攻撃は貴様の体力を確実に削っているんだぞ。何故、こんな無謀な真似を!!)

 

 残りの体力のことなど考えていない。

 

 ただ、ただ、全力でこちらを打ち負かしに来ている。

 

「愚かな、孫悟空よ! そんな拙い攻めで神を倒せると思ったか!!」

 

 これにブラックは冷静に対処しながらも、徐々に。

 

 だが、確実に追い込まれてきていた。

 

「動けば動くほど。攻撃を放てば放つほどに、動きが鋭く、攻撃が重くなるだと…!?」

 

 手がしびれ始めている。

 

 ガードも避けも、見切りもない。

 

 捨て身とも言える悟空の攻撃。

 

 ただ真っ直ぐに踏み込んで拳と蹴りを繰り出してくるだけだ。

 

 しかし、ブラックをして徐々に繰り出す攻撃を当てずらくなるほどに動きが鋭くなり、ガードを仕損じればダメージを負いかねないほどに打撃が強力に変化している。

 

「どうした、ブラック? オメエの力ぁ、こんなもんか!!」

 

 攻撃の速度が更に上がり、見てからではとてもガードが間に合わないレベルへと達する。

 

「父さんの攻撃が、見えない…! これほどのモノなのか。父さんの真・超サイヤ人は!!」

 

 悟飯が目を見開きながら悟空を見据える。

 

 攻撃に特化した悟空のスタイルは、守ることなど考えていない。

 

 だが、ブラックも流石だ。

 

 見切れない悟空の攻撃を、喰らいながらも予測して捌いている。

 

 しかし、悟空はブラックが捌き切れないほどに手数を増やし、ついにクリーンヒットを顔面に叩きつけた。

 

「フ。五発打ち込めば、一発は食らうみてえだな」

 

 不敵な笑みを浮かべる悟空に、ブラックの目が怒りに見開かれた。

 

「神に拳を打ちこむとは…! この無礼者がぁあああ!!」

 

 感情に身を任せた、しかし強烈な拳打をまともに顔で受ける悟空。

 

「父さん!!」

 

 思わず悟飯が悲鳴を上げるほどに強烈な一撃。

 

 だが、悟空は後方へ仰け反った後、「ぺっ」と血を吐き捨てて向き直り笑う。

 

「いいぜ…! らしくなって来たじゃねえか、ブラック!!」

 

 凄みのある笑みを静かに浮かべる悟空に、ブラックが怒りの表情で睨みつける。

 

「貴様…!! 人間の身で神たる俺に向かってその態度。何処まで、俺を不愉快にさせる!!」 

 

「何が神だ? 次から次へと罪のねえ者を殺しやがって…!!」

 

 静かに呟きながら、悟空は拳を握ってブラックを睨み返して殴り返す。

 

「ぐぅお!?」

 

 放たれた拳のあまりの鋭さと強烈さに、まともに受けたブラックは悲鳴を上げて仰け反った。

 

 後方に下がりながら前に向き直るブラックに、悟空の怒りの瞳が向けられている。

 

「オメエのせいで、いったい何人の人間と神が死んだと思ってる?」

 

「…フン。人間は世界を汚す悪だ。そして、それを庇い立てする神もまた、悪! 俺によって滅ぼされねばならない悪なのだ!!」

 

 ニヤリと笑いブラックは悟空を見つめる。

 

 同じ顔と力を放ちながら、文字通り正反対の両者。

 

「孫悟空よ! 貴様は、神によって作られた罪の象徴! それを裁く俺こそが、正に真の正義にして神の体現者なのだ!! 」

 

「…オメエよ。いちいち、御託並べなきゃ殴れねえんか? オメエは神なんかじゃねえ。ただ自分の為だけに人を殺す悪党だ!!」

 

「神の言葉と考えを理解できぬ愚か者よ! 貴様こそ、正に悪そのものだ!!」

 

 叫び合うと同時、拳を互いに向かって振りかぶり打ち抜く。

 

 攻撃が速すぎて避けることも捌くことも間に合わない為、まともに顔で身体で受けながら返す両者。

 

 先程までの高レベルな攻防とは違う、力でねじ伏せる真っ向からの殴り合いへと変わった。

 

「この打ち合い、父さんが不利だ。最初からブラックの攻撃を食らった分、父さんの体力が減ってる…! まともな打撃の勝負だと勝ち目がないから、ガードを捨てて攻撃を特化させることで自分の土俵にブラックを立たせたけど、代償が大きい!! 真・超サイヤ人の変身時間が切れたら、父さんは…!!」

 

 悟飯の言うとおりである。

 

 悟空は最初、駆け引きで相手の出方を見ていた。

 

 ブラックの見切りが自分よりも上だと理解すると同時、悟空は守りを捨てて見切れないほどのスピードで攻撃を次々と繰り出す。

 

 圧倒的なパワーと速度と手数で、ブラックの見切りの技を封じたのだ。

 

 これに対抗するには一度、距離を置いて体勢を整え仕切り直すのが正解だが、ここはブラックの神としての誇りが勝る。

 

 人間如きに打ち負けて、神とは言えぬと真っ向から殴り合いを受けて立った。

 

「孫悟空。人間は神の前に無力であるということを、お前に真っ向から打ち勝つことで証明してやろう!!」

 

 今のブラックは、孫悟空の肉体を奪い、無力な悟空やチチ、悟天を殺し。

 

 界王でありながら、他の神々や師を殺した者。

 

 破壊神との争いを避けて界王神を殺して回った狡猾な男とは思えないほど、正々堂々とした闘い方だった。

 

 ブラックの拳がボディを射抜き、動きが止まる悟空。

 

 これに笑みを浮かべてブラックは追撃の右ストレートを放つも、紙一重で悟空は避け返しの右ストレートでブラックの顔を射抜く。

 

「まだ諦めぬか、人間!!」

 

「…こんなくすぐってぇパンチで、俺が倒せるかよ!!」

 

 更に激しくぶつかり合う両者。

 

 黄金の炎が天井知らずに高まり、気がとことんまで上昇していく。

 

 満身創痍になりながらも、両者の瞳は一向にひるまない。

 

 そんな二人の黄金の戦士達の闘いを悟飯は静かに見据える。

 

「おかしい…! あの正々堂々とした強さ、卑劣なブラックの物と同じとは思えない。アレは、まるで孫悟空ーー父さんじゃないか…!!」

 

 顎が跳ね上がり、血が舞い散り、仰け反る度に顔を突き合わせて殴り合う両者。

 

 打ち負けた方が連打の勢いに飲み込まれて負ける。

 

 これは、そういう闘いだった。

 

 一際、強烈な打撃ーー互いの左ストレートが顔を打ち貫いて、仰け反らせて動きが止まる。

 

 強烈な炸裂音を響かせながら、踏ん張った足を後方に引きずらせながら止まる。

 

 互いに距離が開き、血を流した顔で悟空は冷徹にブラックは冷酷な笑みを浮かべて構えを取る。

 

「…次で決めようぜ、ブラック!!」

 

「望むところ…!!」

 

 孫悟空は自分の胸の前に右拳を置き、蒼き神炎を纏わせる。

 

 対するブラックは、右手刀を胸の前に置いてロゼの炎を纏わせた。

 

 互いの右手には、全てを終わらせるほどの気が込められている。

 

「父さん…!!」

 

 悟飯が目を見開きながら拳を握りしめていると、自分に肩を貸してくれるものが傍らから現れた。

 

「! ガーキンさん!!」

 

「よう、悟飯。体力のほとんどを使い切ってるってのにまだ、意識を保てるなんてな。大したもんだぜ」

 

 ニッと明るく笑いながら真紅の道着を着たサイヤ人が笑いかけてくる。

 

 その横ではピッコロとブロリー、ベジータが腕を組みながら悟空とブラックの戦いを見ていた。

 

「やはり分身とはレベルその物が違うようだな」

 

「…カカロットとあそこまで打ち合えるとは。気に入らん紛い物だ」

 

「まったくだ。だが、ヤツが強ければ強いほど、俺はヤツを許さん…!!」

 

 そんな彼ら三人の横では、肩で息を切らしながら何とか立っている悟空ゼノの姿がある。

 

「ゼノさん…!」

 

「すまない、大丈夫だ…! まさか、分身にあれ程の力があるとはな…!!」

 

 他の戦士達に比べて未だ思い通りに真・超サイヤ人に変身することもできないゼノでは、歴然たる差がある。

 

 それでもゼノは、自分を凌駕する力を持っていたブラックの分身相手に勝利を納めていた。

 

「ブラックの強さも驚いたが…孫悟空、不思議な男だ。あのブラックが、正々堂々と戦うとは…!!」

 

 人間を見下し、滅ぼす対象としか見ていないブラックが、文字通り全力で闘っている。

 

 その姿にゼノは目を見開いている。

 

 とても彼の知るブラックとは思えなかったからだ。

 

「極限まで気を高めてやがる。決まるぞ、次の一撃で!!」

 

「フン、そうこなくちゃ面白くない…!!」

 

「さあ、見せてやれカカロット! 戦闘民族ナンバーワンの貴様の一撃を!!」

 

 ピッコロ、ブロリー、ベジータの言葉に呼応するように、二人の黄金の戦士の気が極みへと達した。

 

 両者、同時に目を見開いて踏み込み、互いの右拳と右手刀を振りかぶる。

 

「貴様だけは、絶対に許さねぇ!!」

 

「神に対し、その命で懺悔しろ!!」

 

 互いに向かって悟空は右ストレートを放つ。

 

 ブラックは右手刀をそのまま貫手のように突き出した。

 

 蒼い炎と薄紅炎が真っ向から再びぶつかり合う。

 

「うおりゃぁああああっ!!」

 

「はぁああああああっ!!」 

 

 互いに叫びながら拳と手刀を突き合わせて押し合う。

 

 地面が凹み、掘り下げられていく。

 

 互いに向かって気を高め、相手を吹き飛ばさんと炎が荒れ狂う。

 

「……っ!?」

 

 その時、悟空の冷徹な瞳が見開かれた。

 

 ブラックの背後に、チチと悟天が見えたのだ。

 

「チチ! 悟天!?」

 

 二人は怯えた表情で自分を見つめている。

 

「惑わされるな、孫悟空! それは幻だぁあああ!!」

 

 ゼノの絶叫。

 

 一瞬のことに悟空の意識は、そちらを向いてしまった。

 

「! 勝負あったな、孫悟空!!」

 

 炎の勢いが止まり、ブラックの瞳が見開かれる。

 

「! しまったぁああ!!」

 

 悟空の右拳を脇に弾いた強烈な右手刀から、光剣が生まれて悟空の腹を貫いた。

 

「ぐぁああ…!!」

 

 咄嗟に後方に下がりながらも片膝を突いてブラックを見上げる悟空。

 

 黄金の炎は掻き消え、黒髪へと戻ってしまう。

 

「…フン、勝負の際中に何を気に取られたか知らんが。所詮は人間風情か!」

 

 ブラックが失望したというような表情で悟空を見下す。

 

 これにベジータが叫んだ。

 

「何を言ってやがる! 汚ねぇ真似しやがって!!」

 

「…なんだと? 真っ向勝負にケチをつけるとは。サイヤ人の王子が聞いて呆れるぞ、ベジータ」

 

 冷酷な笑みを浮かべて返すブラックに、額に筋を浮かばせたピッコロが叫んだ。

 

「だったら、貴様の後ろにいるチチと悟天はなんだ!?」

 

「…何?」

 

 訝し気に眉をひそめながら、背後を振り返るとそこにはこちらを怯えた表情で見つめる悟空の妻・チチと息子の悟天の姿があった。

 

 ただし、その瞳は虚ろであり、よく見れば先程までブラックの分身だったものと同じ、亡者が象った偽者だと分かるだろう。

 

 だが、真剣勝負の最中だった悟空は、咄嗟にそれが偽物だと思えなかったのだ。

 

「これは…! 何の真似だ、ザマス!!」

 

 ブラックが天に向かって吠える。

 

 すると声が降ってきた。

 

「お前のーーすなわち我らの勝利を完全なモノにするための贈り物だ。これでお前は、孫悟空に真っ向から勝利した。お前の強さは、宇宙一となったのだ…!!」

 

「余計なことを…! 誰が頼んだのだ!!」

 

 怒りに天を睨みつけながら返すブラックに、ザマスの声は訝し気に問い返す。

 

「何を怒っている? 孫悟空を殺すことは、我々の目的の一つではなかったか?」

 

「神の力を持って人間の無力さを証明させるための戦いだった! あと少しで、俺は孫悟空に勝てたんだ!! それを、こんな茶番にしおって!! 俺だけでは孫悟空に勝てないと見くびるのか!?」

 

 怒りに震えるブラックに声は静かに告げる。

 

「落ち着け、ブラックよ。孫悟空など、我らの目的の全てではない。孫悟空は、我らの目的の前座に過ぎぬのだ」

 

「………!!」

 

「さあ、とどめを刺してやるがいい」

 

 声にブラックが静かに膝を突いたまま、肩で息をして動けずにこちらを見上げる悟空を振り返る。

 

 ブラックは真・超サイヤ人から元の黒髪に戻って、悟空の黒目を見下ろす。

 

「おい、貴様ら。いつまで好き勝手にほざいてやがる?」

 

 悟空の脇からベジータが、超サイヤ人ブルーに変身してブラックを睨みつけている。

 

「…ベジータ」

 

「カカロットだけが貴様を殺したいんじゃない…! よくも俺の妻と息子を苦しめ、地球をめちゃくちゃにしてくれたな…!!」

 

 両の拳を握り締め、ベジータは気を高めてブラックに叫んだ。

 

「貴様は、サイヤ人の王子ベジータが倒す!!」

 

 

 

 




次回もお楽しみに( *´艸`)
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