ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

55 / 116
互角の戦いを繰り広げていた悟空とブラック。

しかし、ザマスの介入で悟空が膝を付く。

彼のピンチを救ったのは、誇り高き戦闘民族の王子だった。


ブラックの誤算 ベジータの実力

 地面に片膝を着いて呼吸を整えながら貫かれた腹の出血を気で抑える悟空の前に、ゼノが瞬間移動で現れて掴み、悟飯の下に連れて行った。

 

「…無事か、孫悟空」

 

「父さん!」

 

 二人の顔を見上げ、悟空は目を見開きながら問いかける。

 

「ゼノ、悟飯。オメエら、その体は?」

 

 先程までボロボロになっていたはずの二人の体は、激戦がなかったように完治している。

 

 ゼノは左腰の布袋から一つの豆を取り出して、悟飯に手渡した。

 

「…先程、君から預かっていた仙豆だ」

 

「食べられますか、父さん」

 

 悟飯から仙豆を口に運ばれ、悟空は詫びの言葉を言いながら豆を噛む。

 

「す、すまねぇ…!」

 

 コリコリッと硬いスナックを噛むような音を立てながら咀嚼して飲み込むと、満身創痍だった肉体の傷は一瞬で完治した。

 

 ゆっくりと立ち上がり、悟空は悟飯を見る。

 

「悪かったなぁ、悟飯。オメエの仇ぃ、取れなくてよ」

 

「いいえ、謝らないでください。父さんは、負けてませんから」

 

「…サンキュー、悟飯!」

 

 まっすぐに告げてくれた息子に、悟空は穏やかで優しい笑みを浮かべた。

 

ーーーー 

 

 超サイヤ人ブルー。

 

 金色と水銀の光が合わさったような生命力溢れるオーラを身に纏いベジータは、ブラックを見据える。

 

「…超サイヤ人ブルーか。戦闘民族が神の気を纏う見事な変身だが、ベジータよ。先程の孫悟空との戦いを見ていなかったのか? 真・超サイヤ人の状態で神の気を使えねば俺には勝てんぞ」

 

「それを決めるのは、俺だ。貴様が俺の真の力を見せるにふさわしいか、試してやる!!」

 

 不遜なベジータの物言いに無表情だったブラックは、静かに向き直り冷酷に笑う。

 

「…フフ。王子といっても、やはり神に対する無礼は孫悟空と変わらんな。野蛮な戦闘民族のサイヤ人め」

 

「カカロットも言っていたが、貴様は神などではない。それを自称するだけの器の小さい悪党だ!!」

 

 告げると同時、一気に間合いに踏み込むベジータ。

 

 ブラックは咄嗟に両腕を上げてガードの体勢を取る。

 

 強烈な右ストレートにブラックはガード体勢のまま後方へ弾け飛ぶ。

 

 宙を吹き飛ぶブラック。

 

 その場から高速移動で消え、ブラックの目の前に姿を現すベジータ。

 

「どうした!? さっきカカロットの真・超サイヤ人を相手に互角に殴り合った力を見せてみろ!! それとも、もうエネルギー切れか!?」

 

 強烈な拳と蹴りを叩き込みながら、ベジータは問いかける。

 

 ブラックは紙一重で捌きながらも防戦一方だった。

 

 ベジータの左右のストレートを両腕で顔の前から脇に弾き、右の後ろ回し中段蹴りを右の肘で受けるも受けきれずに後方へ弾け飛ぶ。

 

「…おのれ!」

 

 着地しながらガードした腕がしびれるのを確認して、ブラックが舌打ちをする。

 

 そして気を高め、薄紅色のオーラを身に纏った。

 

「いいだろう。お前にも神の力を見せてやろう…!!」

 

 髪が天を突いて靡く薄紅色に、瞳は黒から灰色に変化する。

 

 超サイヤ人ロゼとなったブラックは、静かに右手から光の剣を生み出して構える。

 

「どうした? 真・超サイヤ人にならんのか?」

 

「…超サイヤ人ブルーのお前など、俺が真・超サイヤ人に変身するまでもない」

 

 不敵な笑みを浮かべるブラックに、ベジータも笑みを返す。

 

「そうか。ならば、引きずり出してやろう!!」

 

 言うと同時、圧倒的なスピードで攻め込むベジータにブラックも拳を返す。

 

 だがーー。

 

「なんだと!?」

 

 目を見開いたのはブラックだった。

 

 先程の孫悟空と同じように攻撃を見極めて返そうとして、ベジータの動きが自分の予測を遥かに凌駕していることに気付く。

 

 ベジータに強烈な左ボディを叩き込まれ、身体がくの字になった所を思い切り右の上段回し蹴りで顎を吹き飛ばされて、仰け反りながら下がる。

 

「どういうことだ!? 何故、超サイヤ人ブルーで、これほどの強さを!?」

 

 明らかにロゼの自分を凌駕する力に驚くブラックにベジータは笑う。

 

「気付いていなかったのか? 俺もカカロットも、ブルーの状態で既にビルス様に挑めるほどの力を持っているんだよ!! だから、さっきの貴様の真・超サイヤ人に違和感を覚えた。思ったとおり、ロゼの貴様は俺たちほどのレベルには無い。それなのに真・超サイヤ人ではカカロットと真っ向勝負ができた。そのからくり、こうして貴様と拳を交えて理解したぞ…!!」

 

「…なんだと?」

 

 訝し気にするブラックにベジータは告げた。

 

「貴様が得たカカロットの肉体が、真・超サイヤ人となった本物のカカロットと闘ったことで共鳴したんだ。だから先程の貴様は、本物のカカロットに匹敵する強さを持っていた。しかし、今は力を引き出せんようだな? 当然だ、あの力は俺やカカロット、ブロリーやバーダックが死に物狂いで手に入れた領域だ。昨日今日、真・超サイヤ人に目覚めた程度の紛い物に、踏み込まれてたまるか!!」

 

 青い炎のオーラを噴き立たせてベジータは叫ぶ。

 

「真・超サイヤ人の貴様を超サイヤ人ブルーのままで倒し、この俺が誇り高きサイヤ人の王子であることを証明してやろう!!」

 

 真正面から突っ込んでくるベジータだが、その超スピードはブラック自身、先程まで自分が同等以上のレベルの孫悟空を相手に反応していたとは思えないほどに速い。

 

(攻撃は見えている! なのに、体が反応しないだと!?)

 

 右手刀を横薙ぎで払うも、あっさりとベジータの左拳で受け止められる。

 

 即座にブラックは左拳を放ち、右の回し蹴りを上段で放つも全て見切られて右ストレートを返される。

 

 更にベジータの右拳が三連打、ボディに叩き込まれブラックは思わず血を吐いた。

 

「ガハァッ!?」

 

 たたらを踏んで後ろに下がるブラックを、残忍なサイヤ人そのものの笑みを浮かべてベジータは見据える。

 

「どうした? このまま何の抵抗もできずに死ぬか?」

 

 口の端から血を流し、ゆっくりとブラックはベジータに向き直る。

 

「…フン。そんなに見たければ見せてやろう。神である俺の真の力を!!」

 

 灰色の瞳が翡翠に黒の瞳孔が現れたモノに変化する。

 

 同時、薄紅色の髪は黄金に変化し、炎を思わせる程に激しいオーラを身に纏う。

 

 これに観戦している悟空とピッコロが目を鋭く細める。

 

「! 真・超サイヤ人か…!!」

 

「さて、ベジータのヤツめ。どうするか?」

 

 戦士達が見守る中、ベジータはゆっくりと拳を握って構える。

 

「そうだ…! それでいいんだ…!!」

 

「…愚かなサイヤ人め。神の力、その身に刻み込むがいい!!」

 

 ゆっくりと構えあう両者。

 

 薄紅色の光の剣を右手に構えて、ブラックは上段から斬りかかる。

 

 右拳にオーラを纏わせて真っ向から受けるベジータ。

 

 炸裂する両者の力は、地面を砕いて割る。

 

 受けられたと悟るや剣を光の粒子に変えて散らし、拳を握ってブラックはそのまま殴りかかる。

 

 その拳をベジータは瞬き一つせずに左手で掴み止めた。

 

「カカロットと最強の界王の動きが合わさった貴様の強さ、見せてみろ!! 神の力が人間を上回るなら、純粋なカカロットの強さよりも貴様が上のはずだろうが!!」

 

「神に指図するとは。図に乗るな、人間!!」

 

 右の上段回し蹴りを放った後、左の後ろ中段回し蹴りを放つブラック。

 

 ベジータは背後に上体を反らして右のハイキックを避け、続けざまに放たれた左のミドルキックを右肘で受ける。

 

 再び顔に放たれる右のハイキックに自ら後方に下がりながら、ベジータも右のハイキックで受ける。

 

 鍔迫り合いのように互いに脚を押し合った後、離れ右の拳を振りかぶる。

 

「どうした? 先程カカロットと戦った時のように一気に気を引き上げてみろ!!」

 

「何、これは……!!」

 

 拳をぶつけ合いながら、ブラックは目を見開く。

 

 真・超サイヤ人の気が僅かずつしか上がっていない。

 

 ベジータはしばらく拳を押し合いながらブラックを窺い、ニヤリと笑う。

 

「どうやら、できないようだな。無様なもんだ!!」

 

「なんだと? 舐めるなよ、ベジータ!!」

 

 言うや高速移動で姿を消すブラック。

 

 ベジータも同時に高速移動を使って追いかける。

 

「空だ!!」

 

 ピッコロの叫びと同時、ベジータとブラックは互いの左ストレートを右拳で脇に流しながら現れる。

 

 二人が現れたのは空。

 

 ぶつかり合いながら消え、現れては強烈な衝撃波を発生させてぶつかる二つの光。

 

 ブルー(蒼銀)と真(黄金)の光。

 

「ぬぅ!?」

 

 目を見開きながら後方へのけ反って現れたのはブラック。

 

 目の前にはベジータが拳を握って突っ込んできている。

 

「舐めるなぁ!!」

 

 叫び返し、ブラックも拳を握る。

 

 のけ反る両者の顔。

 

 激しい音を立てて殴り合うベジータとブラック。

 

 ベジータの攻撃を受け流しながら拳を返すブラック。

 

 受け流されても構わずに攻撃を繰り出すベジータ。

 

 空で激しい攻防が繰り広げられる。

 

 互いの拳を止めながら、打ち込む。

 

「馬鹿な! 真・超サイヤ人でも先程の孫悟空よりもレベルの低いベジータの動きについていけないだと!?」

 

 超サイヤ人ブルーのベジータは、先程闘った孫悟空の真・超サイヤ人よりもスピードもパワーも一回り低く、気も爆発的な上昇をしていない。

 

 ならばブラックの敵ではないはずだ。

 

 少なくとも、フルパワーの特攻を仕掛けられるまではブラックは孫悟空に対して優勢だった。

 

 だが、現実にベジータの攻撃を防ぎ切れない事実にブラックは目を見開いた。

 

「…ふん、俺の言った仮説は正解のようだな。カカロットに引っ張られなければ、自分の真・超サイヤ人の力を引き出せんとは。所詮、貴様は紛い物だ!!」

 

「神を甘く見るな、ベジータ!!」

 

 叫びながら、気を高めるブラック。

 

 気が高まり、動きもパワーも上がる。

 

 スピードもパワーも上がった状態で、左右の拳を叩きつけてくるブラック。

 

「っち!!」

 

 舌打ちしながら、ガードを上げて攻撃を受けるベジータ。

 

 左右の拳を両腕で受け流すも威力に痺れ、反応が鈍る。

 

「…どうだ? これぞ、神の力だ!!」

 

「引き上げ方が分かったか。中々のセンスだ、だが。その程度の気の引き上げが、どうした?」

 

 痺れる腕を無理やり握り込み、ブラックのアゴをショートアッパーで跳ね上げる。

 

 後方に仰け反ったブラックのボディにすかさず、左のストレートを叩き込む。

 

「…なんだと!? 力を引き上げても通用せんだと!?」

 

 ブラックは、引き上げた力を使って攻撃した。

 

 それでもベジータは眉ひとつ動かさずに攻撃を返してきたのだ。

 

 呆然とするブラックにベジータは痺れる拳を握り締めながら、蒼銀の気を高める。

 

「分かるか? 貴様の攻撃など、このベジータ様には通じんということだ!!」

 

「…こんな、馬鹿な!!」

 

 目を見開くブラックに、ベジータはまるで地球を攻めて来た頃のような冷酷な笑みを浮かべた。

 

 ピッコロはニヤリとしながら、ベジータを見る。

 

「…ベジータめ、大した役者だ」

 

 これにブロリーが続く。

 

「フン。カカロットの偽物の気は既にベジータを上回っている。さっきの攻撃も、受け流した腕が痺れるほどの威力だった。だがーー!」

 

 ガーキンが頷きながら、ブラックを見据える。

 

「ベジータは気迫と覚悟で痺れを無理やり押さえ込んだ。闘ってるブラックからすれば、引き上がった力を込みにしてもベジータと差がないように思う」

 

 悟空が静かに続けた。

 

「…流石だ、ベジータ。これでブラックは、今のレベル以上に気を上げなきゃならなくなる。つまり、真・超サイヤ人の力に頼る…!!」

 

 これに悟飯とゼノも目を見開く。

 

「そうなれば、さっきの僕のように気を使い果たして時間切れになってしまう。体力も気力も根こそぎ尽きた状態になる…!」

 

「……なるほど。真っ向から闘って倒すだけでなく、こういう戦い方もあるのか」

 

 真・超サイヤ人を極めるとは、欠点をも理解している必要があるとベジータは考えている。

 

 先の悟空のように気を引き上げて特攻を仕掛けるのも、手段の一つだ。

 

 だがベジータは、敢えてそれを使わない。

 

 悟空やターニッブが、真・超サイヤ人に頼らない為に力を真っ向から引き出して戦うのとは真逆。

 

 ベジータは、真・超サイヤ人を切り札にしている。

 

 確実に勝つ状況を作り上げ、勝利を不動のものにする為にベジータは、超サイヤ人ブルーの状態でブラックの攻撃を凌いでみせているのだ。

 

「…どうした? その程度の戦闘力の引き上げで、この俺に敵うと思うのか? さっさと気を引き上げろ。上昇するまで待っててやる」

 

「おのれ、何処までも神を軽んじるか!!」

 

 ニヤリと不遜に見える表情で笑うベジータに、気を引き上げて殴りかかるブラック。

 

 強烈な右の拳をベジータは左手で掴み止める。

 

 一瞬の静止、その後に嵐のように殴り合う両者。

 

 この光景にピッコロとガーキンが頷いた。

 

「…しかし、ブラックが引き上げられる力のレベルを見誤ればベジータは一気に押し切られる。奇しくもさっき、悟空が真・超サイヤ人でブラックを相手に証明したからな」

 

「パワーを引き上げるタイミング。変身が切れる瞬間を狙う、か。超サイヤ人ブルーのベジータなら、受けに回ればそう簡単に敵の攻撃にクリーンヒットはしねえだろうが。リスクが無いわけじゃねえな」

 

 二人の言葉に悟空が続ける。

 

「…ああ、リスクが無えどころか、めちゃくちゃ高けぇけどよ。ベジータなら絶対にやり切るさ。な、ブロリー?」

 

「…当たり前だ。ヤツは俺たちサイヤ人の王子・ベジータなのだからな」

 

 ブロリーが頷き、悟飯とゼノが見守る中、ベジータはブラックと殴り合いを続けている。

 

 足を絶えず動かし、ベジータは殴り込む。

 

 一気に踏み込んで腕を折り畳み、ショートストレートを数発当てて相手の反撃を紙一重で流し、右の中段回し蹴りで切りながら、後方に下がる。

 

 対するブラックはベジータに踏み込みを敢えてやらせた上で、絶妙なタイミングで右の拳を小さく横に振る。

 

 ショートフック気味のストレートをベジータの連打の一つに合わせて放つ。

 

 流されたと見るや、後方に下がろうとするベジータに左のストレートを放り込もうとして、中段回し蹴りが繰り出されたので拳を出せずに間合いを切られる。

 

(やはりリーチは俺が有利か。ベジータめ、踏み込まなければ俺に攻撃を当てられん。俺は、そこを狙えば良い)

 

 互いに攻撃を当てられない、こう着状態に陥っていた。

 

「…どうした? さっきのように気を引き上げんのか?」

 

「フン、貴様の狙いは分かったぞ。俺に力を使い切らせて弱った所を攻めたいのだろう? だが、俺もまた真・超サイヤ人を手にした時に惑星サイヤによって学習させられているのだ。この力の欠点をな」

 

 ニヤリと返すブラックにベジータの目が鋭く細まる。

 

「…残念だったな、ベジータ。今の俺は、このままでも体力が消耗しないんだよ」

 

「なんだと!? デタラメを言うな!!」

 

「何故、デタラメだと思う? 惑星サイヤで貴様も出会っただろう? 何百年という月日をこの状態で維持したサイヤ人と」

 

 ブラックの言葉にベジータが目を見開く。

 

 頭を過ぎるのは、濃紺の道着を纏うゴジータに瓜二つの超サイヤ人。

 

 拳を極めし者とターニッブが読んだ唯一人のサイヤ人。

 

「…リューベの事か。貴様如きが、リューベと同じ位置に居ると? 笑わせやがる」

 

 言いながらもベジータのこめかみには血管が浮き上がっている。

 

 リューベは、悟空やベジータ、ブロリーが目指すサイヤ人の極みの一人。

 

 それと同じ位置にブラックという粗悪な紛い物が立つなど、ベジータには我慢できない。

 

「…笑うのは自由だが、先程から不思議に思っているのではないか? 俺は孫悟飯、孫悟空を相手にした後で更に貴様と闘っているのだぞ。真・超サイヤ人でな」

 

「…惑星サイヤの力を貴様も手に入れてやがるんだな」

 

「よくぞ正解を言い当てた。褒美に神の手による死を与えてやろう」

 

 両手で拍手しながら笑うブラックに、ベジータが静かな表情から激昂した。

 

「なら、俺の最高の一撃に耐えられるか!? 行くぞ、ブラック!! リューベと同じ位置に居ると言うんなら、コイツを破ってみやがれ!!!」

 

 大きく両手を広げ、大の字になるような構えで気を高めながら、左右の手を前方に伸ばして合わせる。

 

 ブラックはこれにニヤリと笑うと黄金の気を纏いながら両手を腰だめにたわめて、薄紅の光球を作り出す。

 

「…やってみるがいい。この一撃にて決めてやろう。この超ブラックかめはめ波でな!!」

 

「ならば、行くぞ!! でやぁあああ!!!」

 

「…さらばだ、人間!!」

 

 ブラックの両手が前方に突き出され、野太い薄紅の光線となってベジータに放たれる。

 

 ベジータは金色の光線を放ち、ブラックのかめはめ波を迎え撃った。

 

 二人の超サイヤ人の中央でぶつかる光。

 

「馬鹿な! 何故、真っ向から行った!? ベジータのヤツめ!!」

 

「…ピッコロ。余計な心配だぜ」

 

「…なんだと? 悟空、お前」

 

 明らかにベジータの放った技はブラックの光に押されているというのに。

 

 悟空とブロリー、ガーキンは平然としている。

 

「…父さん。いくら、ベジータさんが真・超サイヤ人になれると言っても、アレだけ気を引き上げたブラックを相手に真っ向からは」

 

「…何か狙いがある、そうなんだな? 孫悟空」

 

 悟飯とゼノの視線に悟空はニヤリと笑い、ブロリーが言い放つ。

 

「さあ、見せろベジータ!! 神を名乗る雑魚に、お前の真の力を!!!」

 

 悟空達の声援に、ベジータがニヤリと不敵な笑みになる。

 

 これにブラックが目を見開き、忌々しげに吐き捨てた。

 

「何を笑う? 貴様如き、人間が不愉快な笑いだ!!」

 

「…クク、ブラックさんよ。貴様は確かに強い。だが、残念だったな」

 

 訝しげに目を見張るブラックを、ベジータの鋭い笑みが迎える。

 

 ベジータの超サイヤ人ブルーのオーラは、緩やかに黄金の炎のような激しいモノに変化して行く。

 

 黄金に輝く髪と翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳に変化したベジータは、告げた。

 

「…貴様には、サイヤ人の可能性を引き込むことは出来なかったようだ」

 

「…サイヤ人の、可能性、だと!?」

 

「くたばれ、ファイナルシャイン・アタァアアック!!」

 

 ベジータの金色の光は、ブルーのオーラを思わせる青と生命力に満ち溢れた緑が混じった光に変わり、一気にブラックの光線を押し切った。

 

「一瞬で2倍、3倍…! いやもっと、だとぉお!!」

 

 絶叫が響く中、ベジータは淡々とブラックに光を撃ち込んだ。

 

 強烈な光が全てを照らし、漆黒の雲を焼き払う。

 

 これにピッコロが目を見開いた。

 

「…何だ、今の技は。ベジータの奴、一気に桁違いの技を撃ちやがった!!」

 

「…僕の究極(アルティメット)かめはめ波以上の威力だ。それを最初から気を練らずに、いきなり撃った。アレは、ファイナルフラッシュとは全く違う技だ!!」

 

 真・超サイヤ人のブラックは、咄嗟に薄紅の炎を前方でクロスさせた両腕から放ち、立っている。

 

 そんなブラックに悟飯達が目を見開く中、ベジータは構えを解いてニヤリと冷徹に見据えた。

 

 ブラックは真・超サイヤ人のまま、クロスガードしていた両腕を解いてから、手にある薄紅の炎を滾らせる。

 

「ベジータ、貴様…!! なんだ、今の技は!?」

 

 忌々しげに睨みつけるブラックだが、ダメージは相当なものだ。

 

 相棒のザマスから亡者の気を受け取っていなければ、とっくにエネルギーが切れているだろう。

 

 その事実を認識してブラックは怒りに身を震わせる。

 

「フン、神を名乗るヤツが何を取り乱してやがる」

 

「…今の技は、貴様の技ではあるまい!? あまりにも威力も技の完成度も違い過ぎる!!!」

 

 吠えつけるブラックに、ベジータは静かな表情で見据えた。

 

「俺の技だ。ただし、今の俺よりも先の未来の俺の技だがな」

 

 ニヤリと笑うベジータの黄金のオーラに真紅の光が交わる。

 

「なんだ、この気は!? 超サイヤ人ブルーじゃない、だと!? ベジータ、貴様…!!」

 

 呆然とするブラック。

 

 ピッコロと悟飯が目を見開く。

 

「…超サイヤ人ブルーじゃない!? なんだ、この気は!? ベジータのヤツ、別の超サイヤ人の力を!?」

 

「…見える。ベジータさんの後ろに、赤い猿の体毛を持つベジータさんが。なんだ、あの超サイヤ人は!?」

 

 今のベジータの背後に浮かぶ幻影に、悟飯は目を見開いている。

 

 黒い髪に赤い体毛を持つ上半身の超サイヤ人。

 

 ゼノも目を見開く中、悟空がニヤリと笑って不敵な笑みで告げる。

 

「よく見とけよ。悟飯、ゼノ。こいつが超サイヤ人4だ。尻尾のない今のオラやベジータには、直接こいつに変身できねえが。真・超サイヤ人なら、力を引き出して使えんのさ!!」

 

「…超サイヤ人4、だって? 君は一体、どんな修行を重ねてきたんだ?」

 

「オメエも成ってたかもしんねえぞ? 半分はオラなんだかんよ!」

 

 ポカンとするゼノに、明るく笑って告げる悟空。

 

「悟飯、オメエもだ!!」

 

「…父さん!!」

 

 目を見開く悟飯に悟空が力強い笑みで頷いてやった後、ベジータを見据える。

 

 ぶつかり合う黄金と黄金。

 

 今のベジータは、無限に上昇する気を撒き散らしながら、圧倒的なパワーと身体能力でねじ伏せていく。

 

「なんだ、これは? 先ほどまでと、明らかに動きもパワーも反応速度まで違っているだと!?」

 

 ブラックの左右のストレートを見切って懐に踏み込み、ベジータは強烈な左中段蹴りを食らわせてブラックを吹き飛ばすと、高速移動でその場から消える。

 

「砕け散りーーやがれぇええっ!!」

 

 吹き飛ぶブラックの目の前に現れて、振り上げた右の拳を力任せに殴りつけた。

 

「ぐわぁあああ!!」

 

 悲鳴をあげながら、地面に叩きつけられる。

 

(なんだ、この人が変わったような荒々しいスタイルは。反応速度も桁が違う。まるで、体が勝手に反応しているかのような野生的な動き)

 

 ガードを固めて下りながら、ブラックは目を見開く。

 

 見切れないほどに攻撃を速めた孫悟空とは明らかに違う強化方法だ。

 

 動きそのものが、違うのである。

 

(でありながら、的確に急所を攻める攻撃。侮れん!!)

 

 嵐のようなラッシュをバックステップしてやり過ごし、ブラックはベジータを見据える。

 

「圧倒的な身体能力だ。これが、超サイヤ人4か!!」

 

「…そういうことだ。超サイヤ人ロゼさんよ」

 

 無限に上昇する気を纏う真・超サイヤ人でありながら、基本的な身体能力が高まる超サイヤ人4を併用しているベジータにブラックは冷や汗を流す。

 

「…俺の身体の孫悟空すらも知らぬ変身が、まだあったというのか。おのれ、サイヤ人め」

 

 ブラックは冷や汗を拭いながら、左手を顔の横に上げて右の拳を腰に置いて構える。

 

 孫悟空の構えだ。

 

 これにベジータは静かな表情で拳を握り、腰に置いて構える。

 

「カカロットのーーサイヤ人の誇りを汚し、ブルマとトランクスを苦しめた貴様は、この程度では済まさんぞ」

 

 黄金の炎と真紅の光を合わせたオーラを纏い、ベジータは黒い瞳孔が現れた翡翠の眼を見開いた。

 

「覚悟はいいか、偽者野郎!!」

 

 先ほど、孫悟空と互角に戦えた力を引き出せれば、一方的にやられることはない。

 

 だが、確かにベジータの言うとおり、ブラックは真・超サイヤ人の力を引き上げることができないでいる。

 

「…おのれ。どうすれば、先程の力を使える。あの力さえあれば、俺は何者にも負けぬはずだ!!」

 

「俺はカカロットやターニッブのように、相手の最強の姿を打ち倒すなんて真似はせんぞ。力を使いこなせんまま、この俺に倒されろ!!」

 

 ベジータは一気にブラックの目の前に移動すると強烈なボディブローを腹に見舞う。

 

「うぐぉ…!? おのれ、これほどまでに!?」

 

 前のめりになって動きが止まるブラックを、ベジータはさらに後ろ回し蹴りで吹き飛ばす。

 

 地べたに四つん這いになって着地するブラックを見下ろし、ベジータは拳を握りしめた。

 

「貴様が見ている真・超サイヤ人と、俺たちが目指す真・超サイヤ人はレベルが違うんだよ!!」

 

 立ち上がるブラックにベジータは右掌を相手に向けて突き出し、宣言した。

 

「貴様の変身している真・超サイヤ人は、俺たちサイヤ人の誇りそのものだ! 貴様のような偽者が変身できて良いモノじゃない!! 俺たちは、貴様のような偽者を絶対に許すわけにはいかんのだ!!!」

 

 これに悟空とブロリーがベジータに向けて叫ぶ。

 

「ベジータ! オラに遠慮するこたぁねえ!! 今のオメエのパワーで、決めちまえ!!!」

 

「さっさと血祭りに上げろ!! それともベジータ、俺が代わりにやってやろうか?」

 

 ベジータも不敵な笑みで告げる。

 

「黙れ、貴様らに遠慮も譲りもせん。こいつは、サイヤ人の王子である俺が倒す!!」

 

 これにブラックが忌々しげに睨みつける。

 

「おのれ、サイヤ人どもめ!!」

 

 これにベジータの後ろで腕を組んでいたピッコロが、拳を握りしめて白銀の気を纏う。

 

「諦めるんだな。貴様には、万に一つも勝ち目はない。悟空や悟飯を退けても、ベジータにブロリー、ガーキンに。このピッコロ様がいるのだからな!!」

 

 これに呼応するように、ピッコロと同じくらいに背の高い超サイヤ人ーーブロリーが気を引き上げる。

 

「…せいぜい、地獄で悔いて詫びるがいい。カカロットの肉体を乗っ取ったお前自身の浅はかさをな!!」

 

 隣ではガーキンがフットワークを華麗に刻んで構えている。

 

「遠慮すんなよ。逃げるんなら、逃げてもいいぜ? 俺たちは、逃がしゃしねえけどなぁ!!!」

 

 ベジータの後ろに控えている戦士達も侮れないレベルにあることを確認し、ブラックは歯軋りしている。

 

「…孫悟空との戦いで引き出された力を何故使えんのだ。あの力を使えれば、永久に変身していられる俺が勝つのが必定だというのに…!! これでは、宝の持ち腐れだ」

 

 嘆くブラックを静かに見据え、悟空と悟飯が告げた。

 

「オメエの負けだ、ブラック。此処にいる皆、オメエなんかにゃ負けねえくれぇに強いんだ。あの世で、オメエが殺したもの達に、詫びに行けぇ!!」

 

「…残念だ。こうなれば、お前も終わりだな。父さんと母さん、弟を殺したお前だけは是非、俺のこの手で殺したかった…!!」

 

 そんな彼らの言葉を聞いて、ブラックが狂ったように高笑いを始めた。

 

「…く、ははは! 笑わせるなよ、愚かな人間ども。詫びろ? 悔いろ? 終わりだと? 神たる俺に敗北はない。神たる俺に誤りはなく、人間であるお前達は、存在そのものが罪の塊なのだ!!」

 

 どれほどの傷を負ってもブラックの纏うオーラは陰りを見せない。

 

 悟空やベジータ達でさえ、これほどの長時間にわたって真・超サイヤ人にはなっていられないのだ。

 

 これにベジータは静かに怒りの表情で告げた。

 

「…ブラック。貴様、殺した連中の魂を使って真・超サイヤ人を維持してやがるな?」

 

 ベジータのセリフに、この場にいる皆の怒気が膨れ上がってブラックに向けられる。

 

 そんな視線を受けてもブラックは淡々とした笑みで告げる。

 

「フフ、戦闘民族の猿にしては中々の洞察力だ。この力は我が半身たるザマスと惑星の意志から貰ったものでな。常世の真理が俺の肉体を支配しているのさ。どれだけ打たれても死なず、どれだけ気を高めても尽きることない肉体を俺は手に入れたのだ!!」

 

「…そいつはよかったな。だが、ブラックさんよ。今の中途半端な実力じゃ、この俺には勝てんし。この場からも逃げられんぞ。自分に酔うのは結構だが、現実を認識してから話すんだな」

 

 淡々と告げるベジータに慢心はない。

 

 だが、ブラックは笑みを絶やさない。

 

「…こうなれば見せてやろう。常世に満ちた人間どもの魂を取り込み、更なる神の高みを!!」

 

 言うや、ブラックは薄紅の炎を右手から生み出し、燃やし始める。

 

 その炎の中に、世界を薄暗く満たす霧と雲が吸収されていく。

 

「ベジータよ、神の力を思い知るがいい」

 

 やがて薄紅と紫の炎は、漆黒に見えるほどに濃い紫へと変じた。

 

 ゼノの瞳が鋭く細まり、脳裏にはじめてブラックと戦った時の気の色が浮かび上がる。

 

 あの時も、ブラックは漆黒に見えるほどに濃い紫の気を纏っていた。

 

「…黒炎とはな。神とやらが聞いて呆れるぜ。大したドス黒さじゃないか? ブラック!!」

 

「ベジータよ、この漆黒を思わせるほどの炎こそ。神の力だということだ!!」

 

 何気なく振るわれるブラックの腕。

 

 放たれる黒炎の弾にベジータは咄嗟に、その場から高速移動で消える。

 

 地面に着弾した炎は、空間ごと地面を削ってみせた。

 

「…避けたか、大した勘だな」

 

「今の技、ビルス様に匹敵している。コレが、世界の力を手に入れた神か!!」

 

 ブラックはニヤリと笑うと右掌を足元の地面に差し出す。

 

 ブラックの右足下から、黒い柄に薄紅色のガラスのような抜き身を持つ刀が現れた。

 

 ブラックが柄を右手で掴めば、ガラスのような透明な刀身が薄紅色に輝き出し、超サイヤ人ロゼのブラックが振るっていた光刃へと変わる。

 

「誇り高き戦闘民族の王子ベジータよ。絶対の刃と滅びの炎。二つの力を得た俺に平伏すがいい!!」

 

 高笑うブラックにベジータが冷徹な瞳で構えを取る。

 

 そんなベジータの隣から、一人の超サイヤ人がブラックに向けて足を踏み出した。

 

「…いい加減にしろ、ブラック。貴様、人々を滅ぼすだけでなく。その魂までも利用するというのか」

 

 黒い道着に明るい水色の帯を締め、赤い羽織を上に着た孫悟空。

 

 ポタラを両耳に付け、時の指輪を嵌めた界王神。

 

 孫悟空・ゼノが、ブラックの前に立ったのだ。

 

「汚らわしい人間が、絶対の神である俺の糧となったのだ。これほどに、有効な手はあるまい?」

 

 ニヤリと笑う真・超サイヤ人のブラックに超サイヤ人のゼノは構えを取る。

 

「……孫悟空、ベジータ。君達には悪いが、やはりコイツだけは私が倒す!!」

 

 真・超サイヤ人のベジータは、淡々とした表情でゼノを見つめている。

 

「孫! おみゃあの持ちモンだぎゃあ!! 受け取りんさい!!」

 

 ゼノに向かって誰かの声が鳴り響き、真紅の棍が空を切りながら投げつけられる。

 

 ゼノはそれを見事に右手で掴むと、片手で身の丈はある棍を振り回し、地面に突いて構える。

 

「…これは、如意棒? それに君は、ヤジロベーか!」

 

「お? ホントじゃねえか! よっ、ヤジロベー!!」

 

 ゼノの隣から悟空も声をかける。

 

 ドヤ顔で腕を組んでいる小太りの侍は、二人の悟空やベジータ達を見回して頷いた。

 

「…奇跡ってなぁ、こういうもんでしょー。おみゃぁら、皆んなを助けてちょーよー!!」

 

 彼の言葉に悟空はニッと笑うと親指を突き立てた。

 

 

 




次回もお楽しみに(´ー`* ))))
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。