ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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追い詰められたブラックは、己の可能性を引き出して新たな能力に目覚める。

苦戦するベジータを前に。

孫悟空ゼノがゴクウブラックに立ち向かおうとする。

そんな彼らの前に意外な助っ人ヤジロベーが現れたのだった。




激突! 神域の力を持った戦士達!!

 世界の廃墟にて。

 

 黄金の戦士達が睨み合う中、現れたのは小太りの侍。

 

 彼の名はヤジロベー。

 

 かつて孫悟空の仲間としてカリン塔に住み着いた男である。

 

 彼はしばらく腕を組んで如意棒を持った超サイヤ人の孫悟空に頷いた後、隣にいる黒髪の孫悟空に目をゴシゴシと擦り始めた。

 

「あんれ? 孫! おみゃあ、いつの間に二人になったんでしょ~!?」

 

 如意棒を投げ渡した後、彼は驚愕の表情になってゼノと悟空を見比べる。

 

「ははっ! ヤジロベーでも分かんねぇか! やっぱ、ゼノとオラは似てんだなぁ!!」

 

「…何故、そんなに嬉しそうなんだ? 君は」

 

 底抜けに明るく笑いながら、自分の肩を叩いて来る悟空に、孫悟空・ゼノは戸惑ったような表情で問いかける。

 

 その後、ゼノは静かにヤジロベーに向き合った。

 

「それにしても、無事だったんだな。人造人間に殺されてしまったと思っていた。久し振りに会えて嬉しいぞ」

 

 穏やかで優しい笑みを浮かべるゼノに、ヤジロベーの目が見開かれる。

 

「……おみゃあ、孫だぎゃあ? 雰囲気は、ちょい違うけんど孫悟空に間違げぇねえ。あんれ? でも、そっちのおみゃあも間違いなく、孫だぎゃあ? どうなってんでしょ~!?」

 

「おい! 勝手に行動するな! 亡者に食われても知らんぞ!!」

 

 頭を抱えて騒ぐヤジロベーの後ろから、次々と人影が姿を現す。

 

 悟空はこれに軽く手を上げて告げた。

 

「よ! ターレス! オメエ、フリーザ達だけじゃなくてヤジロベーも仲間にしたんか!?」

 

「げ! カカロット!? それにベジータ王子にブロリーもか!! ガーキン、貴様なんでこんな連中と一緒に居やがる!?」

 

 気安く語り掛ける悟空と、彼から離れた位置にいるベジータとブロリーにターレスは心底嫌そうな表情になった後、ガーキンを見つけて問いかけた。

 

 ガーキンは肩を竦めて首を横に振りながら応える。

 

「なんで悟空達と合流すんのに、いちいちお前に許可もらわなきゃなんねぇんだよ」

 

「……それよりもターレス。今、俺達を見て「げっ!」と言わなかったか?」

 

 ガーキンの隣でブロリーが静かに口の端を歪めながら、金色のオーラを身に纏い問いかける。

 

 翡翠の瞳は笑ってなどいない。

 

 これにフリーザが目を見開いた。

 

「伝説の超サイヤ人さんですか…! 孫悟空さんとベジータさんの前にまず、貴方から血祭りにして差し上げましょうか?」

 

「……ほぉ? そうこなくちゃ、面白くない!!」

 

 ニタリと笑うブロリーに、フリーザもゴールデンフリーザに変身して構える。

 

 そんなフリーザを手で制しながらターレスが告げた。

 

「おい、ブロリー。この俺が「げっ!」なんて品のない言葉を吐いただと? 身に覚えがねえな…! それよりも、なんで未来世界とやらに来ている? プリカから聞いたが、ここは貴様らとは違う次元の世界なんだろ?」

 

 セルとブウの二人が並び立つ後ろでザンギャも静かに、状況を見守っているようだ。

 

 どのようにでも対応できるように構えている。

 

「どうでもいいじゃありませんか、ターレスさん! 孫悟空さんが目の前にいるんですよ!? 叩き潰して差し上げましょう!!」

 

 そんな彼らの問いかけに割って入りながら、灼金のオーラを身に纏ったフリーザが拳を握って、今にも殴りかかろうとしている。

 

 彼を止めたのは、友人であるセルだった。

 

「おい、フリーザよ。どちらの孫悟空を倒すのだ?」

 

「これは、簡単な問いかけですね。セルさん。偽者のブラックとかいうのなんて、眼中にありませんよ。私は本物の孫悟空を叩き潰しーー」

 

「だから、どちらの孫悟空を倒すのだと聞いている」

 

「……え?」

 

「奴等を数えてみろ」

 

 セルの言葉に思わず問い返した後、フリーザは悟空一行を見直す。

 

「何を言って…。孫悟空さん、ベジータさん、ブロリーさんに、ナメック星人さん、孫悟空さんの息子さんに、ガーキンさんに、孫悟空さんでしょ。ですから、私が孫悟空さんを…! ……あれ?」

 

 名指しで呼びかけながら、フリーザも気付いて首を傾げる。

 

 ブウも横で目を見開いている。

 

「おい、孫悟空。お前、いつから魔術による分裂を覚えたのだ?」

 

「いつかはやると思っていたが、残像拳などではない四身の拳のような分身まで覚えたか。しかし、服装まで変えるとは中々、本格的だな」

 

 隣で真面目な表情で告げるセルに向かって、山吹色の道着に「悟」の文字を左胸と背中に付けた孫悟空が手を横に振って告げる。

 

「おいおい! さすがにオラ、オメエ達みてえな真似はできねえよ」

 

「フリーザにセル、か。ターレスって奴が復活させたんだな?」

 

 もう一人の赤い羽織を着た黒い道着の両耳に緑色のイヤリングをした孫悟空が、如意棒を右手に持ったまま鋭く目を細める。

 

「ん? そっちのカカロットは、俺やブウのことを知らんのか」 

 

「ふふん、興味深いな。ブラックやギニューとは違って、この気は孫悟空の気だ。違う奴ーーブラックとよく似た気も混じっているようだが」

 

 ターレスとブウの言葉にゼノは微かに瞳を細める。

 

 この時、ベジータが叫んだ。

 

「おい! 今は、そんなどうでもよいことを話している場合じゃないはずだ!! ターレス! フリーザ共と手を組んでいるのなら、先にブラックを倒すのに協力しろ!!」

 

 これにターレスとフリーザが目をブラックに向ける。

 

「…ふん、確かにな。こんな偽者野郎にうろつかれては、面倒極まりない」

 

「まあ、確かにね。目障り以外の何ものでもない…!!」

 

 そんな彼らにブラックは静かに口許を吊り上げた。

 

「なんだ、最期の馴れ合いはもう良いのか? お前達、人間がいくら束になろうとも最早、俺に勝てる道理はないと言うのになぁ!!」

 

 黄金の炎を身に纏い、黄金の髪を天に向かって逆立て、黒の瞳孔が現れた翡翠眼を鋭く細めて笑うブラック。

 

 右手に持ったロゼの気を具現化した刀を悟空達に向けてかざし、ターレス達を見下ろしてブラックは告げた。

 

「お前達など、もはや物の数ではない。それを教えてやろう」

 

 刀身に黒に近い紫色の炎が纏わる。

 

 これにベジータが叫んだ。

 

「おい、ターレス! あの炎に当たると問答無用で消滅だ!! 気を付けろ!!」

 

「…フン。要は当たらなければいいんだろ?」

 

 言うや否や、皆が一斉にブラックに構えを取る。

 

 ブラックは右手に持った刀を横薙ぎに払った。

 

 扇状に薄紅色の波動が走り、黒炎の柱が立っている。

 

 地面が炎によって空間ごと削られ、波動によって街が吹き飛ぶ。

 

 ブラックの一撃は、広範囲にわたって攻撃できるようだった。

 

「…おい、王子。アレにどうやって近づけってんだ?」

 

「なるほど。確かに厄介だな」

 

 ターレスの問いかけにベジータも頷く。

 

 紙一重で見切りながら攻めようにも、攻撃判定が発生するのが速く、範囲もかなり広い。

 

 その場で無造作に振るだけで、問答無用で消される。

 

 深刻な表情に変わる戦士達の中、悟空が明るく告げた。

 

「なぁに、打つ手はあるさ。な、ゼノ!」

 

「…ああ。任せて貰おう」

 

 言うと棍を回しながら、ゼノはブラックに構えると瞬間移動する。

 

「馬鹿め、触れれば消す我が炎に真っ向から来るか!?」

 

 ゼノの頭上に刀を振り下ろそうとするブラックだが、赤い棍が斬撃を防ぐ。

 

「…むっ!?」

 

 目を見開くブラックを、ゼノは頭上に構えた如意棒を薙いで吹き飛ばした。

 

 華麗に後方に着地するブラックをゼノが見据える。

 

「…なるほど。神気を纏わせて、黒炎を防いでいるのか。斬撃は棍で防ぐことができるし、振り切られねば波動は発生しない」

 

「なるほど、半分は悟空なだけはある。発想が俺たちには追いつかん。加えてザマス様でもあるゼノは、ブラックの刃を無効化できるって寸法か」

 

 セルの言葉にピッコロも頷く。

 

 戦士達が見守る中、ブラックは刀を両手持ちにして上段に構える。

 

 対するゼノは、棍の先を10センチ程余らせながら右手で掴んでブラックの左手に向け、斜めに構える。

 

 左手は棍の下端をしっかりと掴んでいる。

 

 両者、摺り足で地面を擦りながら同時に踏み込む。

 

 頭上から唐竹に振り下ろされる刃を棍を下から振り上げて微かに脇に弾き、左逆手側の棍先で突きを放つ。

 

 鳩尾に放たれる突きをブラックは見事に柄を腹の前に置いて受け、手首を横に捻って流すと、腕を畳んだまま刀を頭上に振り上げて唐竹に下ろす。

 

 逆手突きを流されたと見るや、ゼノも振り下ろされる刀の腹に向かって逆手で打ち込み、自分の右側に斬撃を受け流す。

 

 両者、同時にゼノがそのまま突きを。

 

 ブラックが下段から斬り上げを放ち、互いに手許でぶつかり止まる。

 

「伸びろ! 如意棒!!」

 

「ぬ!?」

 

 互いに相殺した一撃。

 

 だが、ゼノは構えた棍の穂先を伸ばす。

 

 ゼノの気合の言葉と共に伸びる棍は、下段から斬り上げた姿勢で止まるブラックを後方へ吹き飛ばす。

 

 咄嗟に瞬間移動で脇に避けるブラック。

 

 その後方でビル街を突き破る如意棒が見えた。

 

「…戻れ、如意棒」

 

 避けられたのを悟り、ゼノも如意棒を元の長さに戻して右手で回転させながら構えを取る。

 

 これにブラックも刀を八双に構えて目を鋭く細めた。  

 

「…なるほど。まさか、孫悟空に棍の技法があるとはな」

 

「ブラック。所詮、お前は孫悟空の肉体を借りているに過ぎん。他人の技ばかり使ったところで付け焼き刃だ」

 

「ならば、俺の剣技について来れるか!? ゼノ!!」

 

 甲高い金属音を立てながら、互いの武器を弾き、後方へステップして構える。

 

 動から静への動きが、一瞬で勝敗を分かつ戦い。

 

 ゼノも如意棒の長さを調節し、ブラックの刀と同じくらいにして正眼に構える。

 

「…やるな。どっちも隙がない」

 

「フン、殴り合いとはまた違った戦い方だな」

 

 ガーキンが唸り、ブロリーが微かに感心したような声を上げる。

 

 脇構えのブラックと正眼に構えるゼノは、互いにジリッジリッと摺り足で近寄る。

 

 間合いに入った瞬間、ブラックの胴薙ぎが放たれる。

 

 薄紅色の斬閃が走る中、ゼノは見事にブラックの頭上に跳び上がって唐竹に如意棒を振り下ろした。

 

 即座に刀を頭上に戻して寝かせ、受けるブラック。

 

 着地しようとするゼノの足元を掬うように払われる刃。

 

 下段に如意棒を構えて受けるゼノ。

 

 ブラックは棍を刀で巻き上げながら、頭上に払って胴薙ぎを放つ。

 

 頭上に棍を払われたゼノは咄嗟にバックステップして胴薙ぎをやり過ごし、再び唐竹に打ち込む。

 

 ブラックも唐竹に打ち込んできた。

 

 中央で真紅の棍と薄紅の刀がぶつかり合う。

 

「やるな、ゼノ。剣技においても俺に食らいつくか!」

 

「…私もザマスだ。この程度は造作ない」

 

「フン。真・超サイヤ人や超サイヤ人ゴッドの気を纏える訳でもないのに、よくやる」

 

 キリキリッと力を込めながら、互いを睨み合う超サイヤ人、二人。

 

「…ただの超サイヤ人でも、神に挑めるほどに気を高めることができる。孫悟空が私に実感させてくれたのだ」

 

 瞳を細めるブラックに、ゼノは真剣な表情のまま告げた。

 

「…お前はまだ、使いこなせんようだな。真の超サイヤ人を。だから、先程の孫悟空やベジータに及ばない私に手こずる」

 

「…フン。世界によって高められた我が神の力があれば、貴様ごときを消すなど造作ないことよ」

 

「…ならば、私は私の中の超サイヤ人をーー孫悟空を高めてみせる。貴様を倒すために!!」

 

「できるものなら、やってみろ」

 

 ブラックは冷酷に笑むと合わせていた刀で一閃。

 

 ゼノを後方に吹き飛ばす。

 

「はぁあああっ!!」

 

 更に気合いの声を上げながら、刀を斜め頭上に振り上げてから袈裟懸けの斬撃を放つ。

 

 棍を横にして受けるゼノ。

 

 二撃、三撃と放たれる斬撃に手が痺れる。

 

 ゼノの表情が険しくなるのを見てブラックはニヤリとすると更に袈裟懸けを放ってくるも、ゼノは刃が当たる瞬間に棍を脇に避けて斬撃を避けつつ、ブラックの脇に踏み込んで棍を振り上げる。

 

「つぅおりゃあああっ!!」

 

 風切り音と共に振り下ろされた如意棒は、ガラスが割れるような音と共に見事にブラックの刀身を半ばからへし折った。

 

「…スゲエぞ、ゼノ!!」

 

「なんて野郎だ。ブラックの鋭い斬撃を見切り、刀身の脆い部分に打撃を加えてへし折りやがった」

 

 半ばで折れた刀身を見据えブラックはフン、と吐き捨てると刀を地面に放り捨てる。

 

 その後、静かに右手を地面にかざすと新しい刀を地面から生やし、柄を手に取って構える。

 

「なかなかの余興だ…!」

 

「…やはり、ブラックの心を折らねばならんか」

 

 拳を握って喜ぶ悟空と唸るベジータを置いて静かに構えるゼノとブラック。

 

 観戦する悟空達の隣でブロリーが静かに拳を握ってターレス達に構えを取る。

 

「? ブロリー?」

 

 悟空が目を見開く中、静かにターレス達を見ると彼らもこちらに構えを取っている。

 

「…どうやら、あちらのカカロットだけでブラックとか言う野郎は充分のようだからな。俺達の決着を付けようぜ、カカロットにベジータ王子!!」

 

 マントを翻して笑うターレスに、悟空も不敵な笑みを浮かべた。

 

「へっ、オメエ達がオラ達の相手っちゅう訳か!! 丁度いいぜ、オラも見てるだけじゃ退屈してたんだ!!」

 

 金色のフリーザが真・超サイヤ人のベジータに構えを取る。

 

「私の相手は、貴方ですか? ベジータさん」

 

「…フン。あの時、とどめはカカロットに譲っちまったからな。今度こそ、俺があの世に送ってやるぞ! フリーザ!!!」

 

 セルが静かに、神の気と呼ばれる緑色と金という二色が混じったオーラを身に纏って、悟飯を指差した。

 

「指名できるのか? ならば、孫悟飯よ。私と闘ってもらおうか?」

 

「…もう一人の俺抜きでも、お前一人なら何とかなりそうだな。セル!!」

 

 悟飯は黄金の気を纏い、黄金の頭髪と翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳に変身する。

 

「なら、俺は貴様を指名するぜ。悟飯と俺を吸収してくれやがった魔人ブウ! 貴様には、たっぷりと借りを返してやる!!」

 

「ピッコロか…。なるほど、私が取り込んだ頃のお前とは次元が違うようだ…!!」

 

 牙を剥き出しにして叫ぶピッコロに対し、鋭い笑みで迎えるアルティメットブウ。  

 

 言いながらブウは右手をかざして空間に裂け目を生み出す。

 

「グギガガガガガ!!!」

 

 圧倒的な鬼気を纏い、全てを嘲り笑うかのような邪悪な赤い鬼が姿を現した。

 

 これに悟空とベジータが目を見開く。

 

「ベジータ! コイツは!!」

 

「ああ、間違いない。ジャネンバだ!!」

 

 二人の言葉にブウが静かに笑いながら告げた。

 

「そう、ジャネンバと言う。私の飼っているペットの一つだ。私やセル達の修行相手だったのだが、コイツも力を持て余していてな。コイツの相手は誰がしてくれるのかな?」

 

 真・超サイヤ人となった悟飯が目を見開き、究極ナメック星人のピッコロも冷や汗を流している。

 

「まだ、こんな奴が居たって言うのか…!!」

 

「…魔人ブウめ。余計な知恵を持ってやがる上にバビディのような魔術も使えるのか…! こんな奴を小間使いのように使えるとは」

 

 その鬼を前にブロリーがニヤリと笑う。

 

「ガーキン。ここは譲れ」

 

「…お前らな。下手すりゃ未来世界の危機だってのに、よく身内でやり合えるな」

 

 翡翠の瞳で批判するように見上げてくるガーキンに、2メートルを越える身長のブロリーはニヤリと笑う。

 

「ゼノが負けたなら、その時は俺達がヤツを倒す番。…ただ、それだけのことだぁ!!」

 

 黄金の闘気を纏い、金色の髪は更に濃い黄金へと変化する。

 

 翡翠の瞳には黒の瞳孔が現れ、ブロリーは伝説の超サイヤ人の時と同じように気を無限に上昇させ始める。

 

 かつて悪魔と自称した男は、その時の凶暴性をそのままにした笑みを浮かべて、地獄に行く悪の塊が変化した鬼を見据える。

 

「さあ来い、化け物! 此処がお前の死に場所だぁ!!!」

 

「ギガガガガァアアアアア!!!」

 

 周囲で突如、始められる強烈な力と力のぶつかり合いに、ゼノとブラックが互いに手を止める。

 

 ブラックは嫌悪感を丸出しにした表情でゼノに告げる。

 

「…フン。自分達の世界の危機だと言うのに、俺を倒すことではなく己の闘いたいという欲を優先させるとは。見ろ、ゼノよ! これが人間というものだ!! こんな醜い自分勝手な連中の為に、それだけの力を無駄にすると言うのか!!!」

 

 ゼノは静かに彼らを見据えた後、ブラックに顔を向けて構える。

 

「……フ」

 

 そして不敵に一つ笑みを浮かべた。

 

「何がおかしい!?」

 

「…仮に。私がお前よりも遥かに弱ければ、孫悟空達はあんな真似をしない。それにな、孫悟空と一つになったから分かることだが…! 私は、お前のように破壊神様ではなく、界王神様達を狙うような卑怯な真似はせん……! 少なくとも、他の神々の考えを理解しようとするだろう…!!」 

 

「理解? 卑怯だと? 目的のために勝利を優先することの何が卑怯だ!?」

 

 不快気に吐き捨てるブラックにゼノも正眼に構えていた如意棒を片手に持って脇に垂らし、正面に向かって立つ。

 

「貴様らサイヤ人どもの言う誇りなどが、何になる!? 世界を平和にすると言う目的のために勝利を重ねる俺の、何が卑怯だ!!? 人間などに期待し。その言葉に、在り方に、思いに騙され!! 何度裏切られれば、気が済むんだ!? 貴様はぁああああ!!!」

 

 怒りに目を見開いて叫ぶブラックに、ゼノは静かに告げる。

 

「…その、裏切られたという思いは、お前一人のモノだ。お前が人に自分ひとりで期待して希望や願いを託し、人がその通りに育たなかったと、裏切られたと叫ぶ。お前は人間を見ちゃいない。人間というものが、どんな存在かということも理解せず、勝手に理想を抱き、期待して裏切られたって叫んでる。そんなものが、正義などであってたまるか!!」

 

 力強く言い切るゼノにブラックの瞳が鋭く細まり、声が震えた。

 

「…お前は…っ!! 私だろうが!! なんで、分からんのだ!!!? なんで、私の想いが! 正義が!! 理解できんのだ!!? ゼノよ!!!?」

 

 胸を左手で掴み、ブラックは必死にゼノに向かって叫ぶ。

 

 対峙するゼノは静かに、金色のオーラを黄金の炎のように激しいモノに変化させる。

 

 気が無限に上昇を始め、翡翠の瞳に黒の瞳孔が現れる。

 

 天に向かって逆立つ髪は、金色から黄金へと変化した。

 

「…どうせ言っても分からん。御託はもうたくさんだ。時間が勿体ない、さっさとかかって来い」

 

 言いながらゼノは如意棒を八双に構え、続ける。

 

「俺は、貴様だけは絶対に許さねえ…!!」

 

 その構えと表情にブラックは憎悪に表情を歪ませた。

 

「…孫悟空。貴様さえ、貴様さえ、居なければ…!! 私が! 私に否定される等ということが、起こるわけがないんだ!! たとえ、神が否定しようと!! たとえ、世の全てが私を否定しようとも、【私】だけは!!!! それを、それを貴様……!! 許さんぞ、孫悟空ぅううううううう!!!!!」

 

 圧倒的な黄金の炎を身に纏うブラックに、ベジータの瞳が見開かれる。

 

「! 奴め、カカロットとやり合った時のーー真・超サイヤ人の力を引き出しやがった!!?」

 

「…これほどですか。なるほど、肉体が孫悟空さんなだけはありますね」

 

 ゴールデンフリーザも静かに瞳を細めて睨みつける中、ゼノは淡々とした表情のまま冷徹な怒りを瞳に宿す。

 

「…そんなチャチな。自分勝手な想いで、一体何人殺しやがった!? この、クズ野郎ぉおおお!!!」

 

 静かだった瞳は、怒りに身を焦がし激情を露わにする。

 

 途端、ゼノの纏う炎もブラックに負けず劣らぬレベルに引き上がった。

 

 これにターレスが目を見開く。

 

「…これほどの力をアッサリと引き上げやがった。あの、カカロット…!!」

 

「アイツもオラだ、出来ねえわけねえさ。さて、そんじゃオラ達も始めっか? ターレス」

 

 不敵な態度の悟空にターレスも静かに表情を険しくする。

 

 真剣な表情のターレスに悟空も真剣な黒い瞳を向けたまま、更に鋭い笑みを浮かべる。

 

「カカロット…! 俺は、貴様が憎かった。だが、今は素直に凄いヤツだと思っている…!!」

 

「……」

 

「神精樹の実を手に入れた俺は、下級戦士では有り得ない実力になった。この力があれば、どんなものにも負けるわけがないと思っていた。そんな俺を、貴様は倒した…! 地獄とやらで気付いた時は、気が狂うほどに憎かったぜ!!」

 

 羽織るマントと肩当てを外して鎧をベルトタイプのノースリーブにしながら、ターレスは金色のオーラを纏って超サイヤ人に変身する。

 

 これに悟空は黒髪のまま静かに左手を顔の横に置いて前に突き出し、右の拳を腰に置いて構える。

 

「だがよ。貴様が倒したフリーザやセル、ブウは。ハッキリ言って俺が相手にできるような奴らじゃなかった。それを貴様は修行とやらを重ねることで勝ってきたんだってな…! この俺にすら劣っていた貴様が、あんな化け物共と闘って勝ってくるなんてよぉ…!!」

 

 金色のオーラが黄金の炎のような激しいモノに変化し、ターレスは真・超サイヤ人を開放する。

 

 無限に上昇する力を見下ろした後、ターレスは静かな表情で悟空を見据える。

 

「! ターレス! 真・超サイヤ人になったら貴方、体力が!! それに時間も!!」

 

「ザンギャ、手を出すなぁ!!」

 

 止めようとするザンギャに背を向けたまま、ターレスは叫ぶ。

 

 孫悟空を睨みつけたまま。

 

 今のターレスの瞳には、孫悟空以外には誰も映っていない。

 

「でも! ターレス!!」

 

「…やめんときんしゃい」

 

「! 何よ、アンタ!!」

 

 目の前にぬっと現れた小太りの侍ーーヤジロベーにザンギャが目を見開く。

 

 すると彼は静かに悟空とターレスに向かって顔を向けた。

 

「ああいう顔をした男を止める言葉は、ねえでしょ~! ありゃあ、覚悟を決めた顔でねえが!! 止めるなんて馬~鹿こくでね~!!」

 

「な、何が覚悟よ!? 命の方が大事に決まってるでしょ!!?」

 

 目を見開くザンギャにヤジロベーは静かにターレスを見ろと目で訴える。

 

「あぎゃぁな顔した戦士(男)をおみゃあは、止められるだか? ありゃあ、自分の限界を試したいってヤツの顏だぎゃよ」

 

 ヤジロベーの言葉にザンギャは歯軋りした後、告げる。

 

「アンタなんかに! アンタみたいな、臆病な生き物にターレスの何が分かるって言うのよ!?」

 

「分~かるだぎゃあ。ああ言う顔したヤツが、ターレスってヤツの目の前に立ってるでしょ~! 何度も何度も、見て来ただぎゃあよ。逃げりゃあいいのに、逃げねえ。そんな大馬鹿野郎だぎゃあ…!!」

 

 深く息を吐いて告げるヤジロベーに、ザンギャも目を見開いてターレスと対峙する彼と瓜二つのサイヤ人・孫悟空を見据える。

 

「いい表情じゃねえか、ターレス。今のオメエなら、自分の真・超サイヤ人を使いこなせっかもな」

 

 静かに告げると悟空も気を高め、黄金の炎を身に纏って真・超サイヤ人に変身した。

 

 全く同じ顔をした超サイヤ人が互いに睨み合う。

 

「…分かるぜ。試してえんだろ、オメエも。自分が何処まで強くなれんのかを!!」

 

「チッ。やはり貴様は、いけ好かねえ。そうやって、何もかも見透かしたような顔してんのがな…!!」

 

「そうかい? 俺はオメエの事、見直したぜ。やっぱ、オメエも戦闘民族サイヤ人なんだな」

 

 ニヤリと笑いながら告げる悟空に、ターレスは目を見開いて問いかける。

 

「貴様…、地球人じゃなかったのか?」

 

「ああ。あの時と違ってよ、サイヤ人の誇りってヤツは俺も持ってんだ。あくまで地球育ちのサイヤ人だけどな」

 

 冷徹で鋭い表情でありながら、茶目っ気のあるウインクをしてくる悟空にターレスは口元を緩ませたかと思うと。

 

「ククク、ハハハハハ!! そうか、あの時の貴様と違って妙に親近感が湧くと思っていた。貴様、サイヤ人であることを認めていたのか!!」

 

「悪りぃことをするオメエ等みてえな連中を認めてる訳じゃねえ。けどよ、強ぇヤツと闘いてぇって気持ちは俺にもある。サイヤ人の血がな!!」

 

 ニッと不敵に笑う悟空にターレスも冷酷な笑みを浮かべて物静かな声で告げた。

 

「そいつはいい。ならカカロット、俺と貴様。どちらの真・超サイヤ人が上か、決めようぜ…!」

 

「ああ。俺もオメエの真・超サイヤ人が何処までのレベルになんのか興味があんだ」

 

 互いに黄金の炎を猛らせると同時、その場から消えて中央で拳と拳をぶつけあう。

 

 強大なクレーターを生みながら、悟空とターレスーー二人の真・超サイヤ人は互いに笑みを浮かべ合った。

 

「オメエの本気を見してもらうぞ! 来い、ターレス!!」

 

「本気で行くぞ、カカロットォオオオオオオ!!」

 

 二人の激突を合図に、未来世界で激戦が始まった。

 

 




次回もお楽しみに!(^^)!
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