ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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少々、回想がたりになってます(´・∀・`)

 次回からサイヤ人同士の対決が、あるかなぁ?(´・∀・`)


死者の都を統べる者 ターニッブの過去

 

 褐色の肌の青年・ターレスを客間のベッドに運んだ悟空とベジータそして、ウイス。

 

 彼らを案内したのは目の前にいる巫女・プリカだった。

 

「…申し訳ありません。ジュード王もガーキンも、退避を終えた後は気を失ったようで」

 

「無理もない。アレほどまでに純粋で強大な殺意を前にしては普通のサイヤ人では対抗できないでしょうね」

 

 ウイスがさもありなんとばかりに頷いた後、悟空とベジータに告げた。

 

「申し訳ありません、悟空さんにベジータさん。私は、破壊神の付き人。この惑星の事も気になりますが、そろそろビルス様の元に帰らねば」

 

「分かった! じゃあ、オラは残る! この惑星のゴタゴタが終わったら、瞬間移動でウイスさんやビルス様ん所に一回帰るようにすんぞ!!」

 

 悟空の返答を予期していたようにウイスも頷くと、ベジータを見た。

 

「ウイス様。俺も残らせてください。同じサイヤ人として。何より友として。俺もジュードの惑星が気になります」

 

「…分かりました。ベジータさんも悟空さんも、気の済むまで挑んでみなさい。それと、私から一つ助言しておきます」

 

 その言葉に悟空とベジータが目を見開く。

 

「先のリューベなるサイヤ人。確かに肉体は凄まじい生命エナジーでした。基準から言えば、破壊神の候補に選ばれる程の。しかし、彼の魂は死を厭わない」

 

「…つまり、どういうことだ?」

 

 悟空が首を傾げながら問うと、ウイスも頷いてから答えてきた。

 

「…要は、半分死んでいるのではないか、ということです。死人に時間はありませんからね。真・超サイヤ人になり続けることができるのも、おそらくは」

 

「…死んでた時のオラの超サイヤ人3みてえに奴には時間の流れがねえから、真・超サイヤ人になり続けていられるってことか。確かに、それなら説明は付くけど。でもよ、ウイスさん。あいつは、この世のはずのこの宮殿でも普通に力を使えてたぞ?」

 

 コレにウイスも頷いてから応えた。

 

「…おそらくは真・超サイヤ人に長年なり続けたが故に、高位の神々にも匹敵する存在に成長してしまっているのでしょう。ビルス様が星を破壊する破壊神なら、さしずめ彼はただ強者を求める”闘いの神”と言ったところでしょうかね」

 

 悟空は静かに拳を掌にぶつけた。

 

「…そうか。つまり、奴の強さは奴自身が死者の都って所で真・超サイヤ人になり続けて、築き上げた力そのものって訳か」

 

「強いはずだ。短期間でもただのサイヤ人だったターニッブが、超サイヤ人ブルーのステージに引き上げられる程の力だ。そいつを普段から開放しているのだからな」

 

 ベジータも悟空に頷く。

 

 そんな弟子二人にウイスは淡々と告げた。

 

「…結論から申し上げます。現時点で、悟空さんとベジータさんが、たとえ真・超サイヤ人になってリューベに挑んだとしても。差は永遠に縮まらない。何故なら、真・超サイヤ人で力を無限に引き上げられるのは、あなた方もリューベも同じなのです。おそらく戦いにはなるでしょう。ですが、どれほど食らい付けたとしても悟空さん達の体にタイムリミットが来てお終いでしょう」

 

 ウイスの言葉に悟空は真剣な表情で考える。

 

 ベジータも静かに目を閉じた。

 

「それでも、あなた方のことです。彼に挑むのは変わらないのでしょうね〜」

 

 クスリと笑うウイスに悟空とベジータが不敵な笑みを返した。

 

「…ご武運を。全王様は特に悟空さんの帰りを待っているでしょうから」

 

 それだけを告げ、ウイスは杖の先にある石突で地面を突くと光の円が地面に現れる。

 

 そして光の円に乗ったウイスは、高速で空間を曲げながら加速して去っていった。

 

 ウイスを見送った悟空はプリカに向き直る。

「…さてと! 巫女っちゅう立場のアンタならターニッブとリューベの間に何があったんか、知ってるよな! 死者の都とか、オラやターニッブがなれる真・超サイヤ人について色々教えてくれ」

 

 その言葉にプリカはニコリと笑うと、悟空とベジータを連れて食堂に招いた。

 

「では、こちらへ」

 

 先の玉座の間で、広げられていた料理が其処には温かいまま出されている。

 

「おー! そうだった!! 誘われてたけど組み手を優先してたんだ! 話は飯ぃ、食いながらだったなぁ!!」

 

「はい。ベジータさんも、たんとお食べくださいな」

 

 微笑みながら言うプリカに、ベジータは微かに会釈するとドカリと椅子に座り、食事を始める。

 

 隣では一足早く、悟空が出された料理を片っ端から平らげていた。

 

 そんな二人に微笑み、女従士達に給仕を任せながらプリカは静かな表情で語り出した。

 

ーーーーーー

 

 惑星サイヤの物語。

 

 エイジ551年。

 

 サイヤ人同士の内乱によって異常気象を起こしたサダラに残った方のサイヤ人達はついに己の惑星を見限り、新天地を目指して旅立った。

 

 そんな中、見つけた植物と水、酸素が存在する比較的サダラに近い環境の名もない惑星。

 

 その星には、生物が居ながら文明が栄えたためしがなかった。

 

 土地を調べれば、知的生命体が居なかった訳ではないらしい。

 

 もっとも、栄えたと思われる先住民の文明も謎の滅びを迎えていた。

 

 惑星の中心点に当たる土地に何かを祀るような祭壇のある遺跡があった。

 

 その遺跡の調査をサイヤ人達が行っていると、地下へ続く階段を見つけた。

 

 其処で彼らは、惑星の地下に広がる異世界を見た。

 

 サイヤ人達は、其処を死者の都と呼んだ。

 

 住み始めた頃は何もなかった。

 

 だが、文明が進むに連れ死人が現世に現れては害を為すようになった。

 

 新天地を目指し、やっと見つけた安住の地でも身内での争いをしなければならないのか、と途方に暮れるサイヤ人達の中、彼らを率いて居た当時のサイヤ王が金色の戦士に変身した。

 

 王は瞬く間に全ての悪霊を倒し、自ら悪霊が吹き出てくる死者の都へと降りて行ったという。

 

 そして、其処から何百年にも渡って惑星地下での超サイヤ人と悪霊達の闘いが続いているのだ。

 

 プリカは、惑星サイヤの先代の王の娘だった。

 

 彼女は生まれつき、未来の世界や異なる時空を見る能力があった。

 

 彼女の兄はジュードといい、生まれつき天才の名を欲しいままにする武と知を併せ持った男。

 

 それらを子にもつ先代のサイヤ王は、類なき技と力を持って並居る悪党を倒していった。

 

 あるとき、サイヤ王の下に弟子になりたいという子どもが現れた。

 

 まだ、幼年期を過ぎて居ない小さな少年。

 

「門前で座り込み始めて、もう3日目か…小僧。何故、この拳を学びたい?」

 

 門番のサイヤ人達に追い払われようとしても変わらず少年は其処にいた。

 

 たまたま、実務の移動中に王が門番の前に現れ、問いかけた。

 

 少年は王を強い光の宿る黒い瞳で見返してきた。

 

「強くなるため!!」

 

 真っ直ぐに告げる少年を真っ直ぐに見返し、サイヤ王は何かに気づいたような顔をした後、告げた。

 

「…この王都より少し離れた廃村に人々を襲う悪霊が出るという。其奴を倒せたら、弟子にしてやろう」

 

「分かりました!!」

 

「…貴様の力で勝てる相手ではない。それでも行くか?」

 

「はい!! 俺は、此処より貴方の弟子になると決めた。命を賭しても!!」

 

 小さな少年は、ボロボロに袖が破けた白い道着を着た己の身一つで、悪霊を退治に向かった。

 

「…哀れな。逃げることを知らぬとは。子ども一人が荒野を彷徨う悪霊に出会う確率は低い。倒れたところを兵士に介抱させるようにするか。許せよ」

 

 サイヤ王は少年が去っていった道を静かに見送る。

 

 ふと、気づいた。

 

 その地面には血が流れている。

 

「…これは、まさかあの小僧!?」

 

 サイヤ王が目を見開く。

 

 少年は、肩で息をしながら悪霊に対峙していた。

 

 サイヤ王の宮殿を訪ねる直前に、少年は野宿をしようと廃寺に立ち寄り、本堂に寝た。

 

 其処には、生き霊が住んでいた。

 

「…すまない。貴方の祠と知らず立ち入った俺の不徳。人に危害を加えるようになった貴方は、せめて俺が」

 

 向き合う。

 

 たとえ、命を捨てようとも。

 

 せめて人里から離れさせることができれば、と。

 

 荒野を逃げ惑うしかできない少年は、手傷を負っていたこともあり、すぐさま悪霊に追い付かれた。

 

 念力のようなもので少年は抵抗する間も無く、地面に叩きつけられる。

 

 亡霊は半ば透けた身体で少年の前に浮かぶ。

 

 黒いフードを被った髑髏の眼孔には赤く光を放つ球が浮かんでいる。

 

 亡霊は少年の上に覆い被さると、髑髏の歯を大きく開けて食らいつこうとしてきた。

 

 助かる見込みはないような状況で、それでも少年の目には怯えはなく、挑もうとする意志があった。

 

 その時だった。

 

 薄暗い曇天から黄金の落雷が一筋、降り落ちた。

 

「………っ!?」

 

 髑髏を睨みつけていた少年の目には、この世の何よりも固いと思わせる拳が突きつけられていた。

 

 見れば、拳は物理攻撃を一切無効にする悪霊の顔面を背後から打ち抜いて其処にあった。

 

 あれほど猛威を振るった悪霊は、ゆっくりと塵に帰っていった。

 

 拳の持ち主は濃紺の道着を着た、黒い足袋に草履を履いた出で立ちの逆立つ黄金の髪と翡翠に黒い瞳孔のある目をした青年。

 

 彼は淡々とした表情で少年を見下ろすと構えた拳を退かせて、背を向けて去ろうとする。

 

 そんな彼に、少年は息も絶え絶えになって立ち上がりながら、強い目で問いかけた。

 

「…何故だ!? 何故、滅した!?」

 

「…」

 

 少年の言葉に静かに向き直る男。

 

「貴方ほどの力があれば、霊を悪霊から元の姿に戻してやることもできただろう!? 何故だ!?」

 

 真剣な少年の目を真っ向から見返し、圧倒的な力を持つ男は告げた。

 

「…笑止」

 

 若々しい顔の見た目に反して、低く渋い声。

 

 しかし、その所作に無理はなく堂に入った男の立ち居振る舞いは、見事に洗練されている。

 

「…己の持つ力の全てを賭して闘うが、真の拳士なり。戦闘民族であるサイヤ人は強さを求める。…戦士が己の全力を持って拳を放つことの何がおかしい?」

 

 問いかけに少年は間髪入れず応えた。

 

「…貴方は、正しい。だけど、間違っている!!」

 

 必死に告げる少年を、男はただ静かに見下ろす。

 

「…貴方は、間違っている。絶……った、いに」

 

 前のめりに倒れる少年。

 

 その彼を少し離れたところから見下ろす男。

 

 そんな二人の間に、第三者の声が届いた。

 

「…お主の歩む道は、このような年端も行かぬ子どもにさえ、過ちだと分かるということだ」

 

 その場に現れたのは、多数の兵士を連れて荒野を探っていたサイヤ王だった。

 

「……」

 

 静かに男はサイヤ王を見据える。

 

「去るがいい、超サイヤ人よ。この少年は俺が預かる」

 

「…………その小僧、任せたぞ」

 

 男ーー超サイヤ人は、それだけを告げるとその場から離れていった。

 

 周りの者が王を見れば、彼は淡々と倒れている少年を抱き上げている。

 

「……人では居れず、鬼には成れず。初代サイヤ王・リューベよ。伝え聞く通り、お主は甘い男だ」

 

 微かに悲しげにサイヤ王は告げた。

 

「…そして、小僧よ。お前もまた、哀れだ。何故に王家に関わる? 唯人(ただびと)として生きられぬ? その身に流れる血か? それとも、身に宿す力が故か?」

 

 王は静かに少年の名を呼んだ。

 

「ターニッブよ……!!」

 

ーーーーーー

 

 悟空もベジータも、食事を前にして手が止まっていた。

 

 ジッと真剣な表情でプリカを見据えている。

 

 彼女は美しく儚げに微笑むと告げた。

 

「…こうして、ターニッブは私たちと生活を共に過ごし始めました。お兄様ーージュード王子やガーキンに瞬く間に追い付き、互いに切磋琢磨し合う中になったのです。平和な日々が続きました。けれど、わたくしは予知夢を見ました。お父様が、王子であるお兄様に王位を継承した直後に、あの鬼が。超サイヤ人が、現れる夢を」

 

 段々と笑顔が崩れ、悲しげになるプリカにベジータが何かを言おうとして、横から悟空に制された。

 

「…わたくしは、お父様には告げました。兄が即位すれば、お父様を狙ってあの鬼が来ると!」

 

 けれど…、と呟きながらプリカは告げる。

 

「お父様は、わたくしの話を理解した上で頷いたのです。兄に即位させると!!」

 

 ほとんど泣いているプリカを悟空は静かに、真剣な表情で見据えた。

 

「なるほどなぁ。やっぱオメエ等、王家とあの超サイヤ人は因縁があったんだなぁ。けどよ、プリカ。…その先を、オメエ達とは無関係なオラ達が聞いてもいいんか? 土足で他人の心に踏み込むような真似、オラしたくねえ」

 

「カカロット! 貴様ここまで事情を聞いて、何を言ってやがる!?」

 

「話づれえ事もあんだろ。プリカに無理させてまで、聞く話じゃねえさ。どうせ、リューベとはやり合うんだからなぁ」

 

 これにベジータも不承不承と言った感じで腕を組んで黙る。

 

「…ありがとうございます、悟空さん。ベジータさん。でも、話します。話させてください。私達王家とターニッブ。そして初代サイヤ王・リューベとの因縁を」

 

 二人は静かにお互いを見合うと頷き、プリカを見た。

 

「…ゆっくりで、いいかんな?」

 

「焦ることはない。俺たちは、当分この惑星にいるからな」

 

 二人の言葉に微笑むと、プリカは話を続けた。

 

ーーーーーー

 

 ターニッブとガーキン、そしてジュードは17の頃、サイヤ王からの免許皆伝を言い渡された。

 

「もうお前達に教えることは何もない。後はお前達が、その拳で己の道を開くのだ。ジュードよ、今日からはお前がサイヤの王となれ!!」

 

「ありがたく! 必ずや、貴方よりも偉大な王となることを誓います、父上!!」

 

 力強い王子のーー否、新王の言葉にサイヤ王は満足気に頷いた。

 

「…約束だぞ。ガーキン、そしてターニッブよ、ジュードの補佐をよろしく頼む」

 

 その表情のまま、サイヤ王はガーキンとターニッブに目をやる。

 

「…分かってますって! 俺とターニッブが居れば、余裕ですよ!!」

 

「…微力ながら、精一杯やらせていただきます」

 

 サイヤ王の言葉に皆が頷く。

 

「お! やったな、ジュード!! ターニッブの野郎は、まだ修行の旅には行かねえとよ!!」

 

 ガーキンの揶揄するような声に新王・ジュードは不敵な笑みを浮かべた。

 

「…ああ、助かるぜ。ターニッブは、優秀な部下になる素質があるからな」

 

「どういう意味だ? まるで俺には期待してねえみたいじゃねえか?」

 

「おっと、すまん。口が滑ったようだ」

 

 などと言い合う二人の間を割ってターニッブは問うた。

 

「師匠。貴方は、これからどうされるのですか?」

 

「俺か? 野暮用を済ませるつもりだ」

 

 ニヤリと笑うサイヤ王に三人は首をかしげる。

 

 その日の深夜のことだった。

 

 ターニッブが夜中に飛び起きたのだ。

 

「? どうした、ターニッブ?」

 

「んぁ、なんだあ?」

 

 寝ぼけまなこをこすりながら、起き上がる二人の同門にターニッブは告げた。

 

「師匠が闘っている。おそらくは、超サイヤ人と!!」

 

「「…!?」」

 

 その言葉にジュードとガーキンが目を見開く。

 

 問ひ返す間も無く、寝室を飛び出すターニッブに二人も即座に反応して追いかける。

 

「…こんな夜更けに何処へ行こうというのですか、ターニッブ」

 

「…プリカ様」

 

 ターニッブは静かにプリカを見据える。

 

 見れば彼女は薄着の寝巻きに着替えていた。

 

「…プリカよ、ターニッブは父上が超サイヤ人と闘っているというのだ」

 

「…いきなりな話だが、あの噂の超サイヤ人に関しちゃ無きにしも非ずだろ? それで確認に…」

 

 ジュードとガーキンに向かったプリカは悲しげな表情になる。

 

「…ターニッブ。何故、分かったのです? 貴方には巫女の力も王家の血もないはず」

 

 その言葉に、ジュードが目を見開く。

 

「…プリカ! まさかターニッブの言ってることは、本当なのか!?」

 

「…プリカ姫、何で俺たちに師匠が闘っているのを教えてくれなかったんですか? いや、それよりも師匠は何処だ?」

 

 問いかけるジュードとガーキンだが、ターニッブが先に歩き出す。

 

 それを遮るように正面にプリカは立った。

 

「…プリカ姫。頼みます、そこを退いてください」

 

「ターニッブ。サイヤ王はーー父様は、貴方と超サイヤ人だけは合わせてはならないと仰っておられました。わたくしはサイヤ王家の姫の前に、民の為に祈りを捧げる神殿に仕える巫女です。巫女として、惑星が滅びるかもしれない闘いを起こさせる訳には参りません。父様が、何のために貴方には告げなかったのか、分からない貴方じゃないはずです!!」

 

 涙ながらに告げたプリカを真正面に見て、ターニッブは頭を丁寧に下げた。

 

「…申し訳ありません。俺は行きます。俺が、行かねばならないのです」

 

 それだけを言って、ターニッブはプリカの脇を通り過ぎていく。

 

 これにいつもは淑やかなプリカが、歯ぎしりをした。

 

「…どうして、貴方は」

 

 振り返り、ターニッブの背に叫ぶ。

 

「その先に安らぎなんかない! 灰色の未来が待ってるだけよ!! 貴方はいずれ自分を許せず、自らの命さえ断とうとするわ!! だからーーだから、父様は!!!」

 

 ターニッブは立ち止まると微かに首をプリカに振り返り、告げた。

 

「…俺には、この拳しかない」

 

 ターニッブは静かに歩み出す。

 

 一片の迷いなく。

 

 死者の都へとーー。

 

 其処ではターニッブ達にとって、異次元の戦いが繰り広げられていた。

 

 サイヤ王と超サイヤ人の戦いは凄まじいものだった。

 

 異空間の大気を震わせ、両者の拳が天を裂き、踏み足は地を穿つ。

 

「流石、サイヤ王だぜ!!」

 

「当たり前だ。本気の父に勝てる奴などいない」

 

 ガーキンとジュードが拳を握り、互角の戦いを演じるサイヤ王と超サイヤ人を見ている。

 

 サイヤ王は全開の証。

 

 白銀のオーラを纏い、黒い瞳には更に漆黒の瞳孔が現れ、髪が天に向かって靡いている。

 

「…師匠は、死を覚悟している」

 

 その中、告げられたターニッブの言葉にジュードが目を見開く。

 

「何だと!? 今、王と奴の実力は互角だぞ!!」

 

「師匠は、命を燃やして闘っている。あの気は、生命力を燃やしているんだ」

 

「…先生。まさか、本気で刺し違えるつもりか!?」

 

 ガーキンの叫びの後、白銀と黄金の気が空中で激突した。

 

 ぶつかり合う王と鬼。

 

 徐々に差が出てきた。

 

 黄金のオーラを纏う鬼に押され始める白銀のオーラを纏う王。

 

 殴り蹴り合う。

 

 しかし先までとは違い、徐々に打ち負け始める。

 

(やはり、この力に挑むのは無謀か…!)

 

 肩で息をしながら、王は無限に力を増大させていく鬼を睨み据える。

 

「…サイヤ王よ。よくぞアレを、これ程にまで育ててくれた。しかし、コレより先には奴一人で歩んでもらわねばならん。我が為に死ね!!」

 

「…生憎だが。俺は弟子を貴様の同類にするつもりはないんだ。この命にかけても、此処で貴様を止めてやろう」

 

 互いに構え合う。

 

(…もはや、俺が全力で動けるのは長くあるまい。一撃をかけるしかないか)

 

 自嘲気味に笑う王の前に鬼は、静かに気を高めて腰を落とし、地を踏み抜いた。

 

 見ればその拳に己の気を満ち溢れさせている。

 

「…何の真似だ、超サイヤ人?」

 

「…弱まったうぬを倒した所で意味はない。我が望みは、うぬの真の一撃のみ!!」

 

 サイヤ王は肩で息をし始めた。

 

 数分程度しか全力を出せない。

 

 超サイヤ人・リューベは、それを見抜いていながら尚、真っ向から勝負をしろと構えている。

 

 静かにサイヤ王は笑った。

 

 その時だった。

 

「師匠ーー!!」

 

 闘いが最後の局面を迎えようとしているのを悟り、ターニッブがサイヤ王に向かって叫ぶ。

 

 瞬間、リューベがターニッブを見て動きを止めた。

 

「…!!」

 

 サイヤ王は、その隙を逃さない。

 

 目の前に踏み込み、己の命の炎を燃やしつくす禁断の技を放った。

 

「ふふふ。ターニッブに気を取られるとは、甘いな超サイヤ人!!」

 

 道着の襟首を掴み、強烈な青白い気の球となって辺りを包み込む。

 

ーー 瞬獄殺!! ーー

 

 荒野しかない死者の都の大地を起こし、巨大な岩山を作りながら、尚爆発する。

 

 その威力は、遠目に見ているターニッブ達にも届いた。

 

「な、な、んだ? 地震か!?」

 

「…こ、これが禁技・瞬獄殺か!!」

 

 驚くガーキンと唖然とするジュードの隣でターニッブが叫んだ。

 

「辞めろ、師匠ぉおおおおおっ!!」

 

 ターニッブの声が響く中、吹き溢れる爆風が収まった時、巨大なクレーターの中心で超サイヤ人がサイヤ王のボディをアッパーカットで打ち抜いていた。

 

「…ぐぶっ。ふふ、リューベ、やはり其方は甘いわ」

 

 それが最後のサイヤ王の言葉だった。

 

 串刺しにされたように、四肢から力をなくした王の肉体から超サイヤ人は拳を引き抜いた。

 

 地面に倒れこむサイヤ王の首から超サイヤ人は勾玉のついた針金でできたネックレスを取り上げ、己の首にかける。

 

「…ち、父は超サイヤ人に戦士として挑み、負けた…!」

 

 悔しそうにそれだけを告げるジュード。

 

 光の粒子となって死者の都の空へ吸い込まれていく父の遺体を泣いている妹を抱きしめながら見送る。

 

 真っ先に出て行って、父の仇を取ってやりたかった。

 

 だが、今の彼が挑んだ所で敵う見込みはゼロだと分かっている。

 

 隣でターニッブが静かに告げた。

 

「…何故だ?」

 

 問いかける彼の声が低い。

 

 それに一抹の不安を覚えたガーキンが、彼を見ると。

 

「……ターニッブ? おまえ、どうしたよ!?」

 

 ターニッブの足元から超サイヤ人と同じ、黄金の光が漏れている。

 

「…プリカ。父が何も言わずに超サイヤ人との闘いに挑んだのは、ターニッブが?」

 

「…ええ。彼も宿しているのです。感じませんか、兄様? 王となられた今の貴方ならば」

 

「…確かに。この力は、超サイヤ人…!!」

 

 黒髪は天に逆立ち、黒い瞳は翡翠に黒の瞳孔が浮かぶ目に変わっていた。

 

「何故。自らが間違いだと理解していながら。その道を進むんだ…!?」

 

「………」

 

 ターニッブの言葉を聞いてなお、超サイヤ人・リューベはターニッブに向き直るだけで何も語らない。

 

「答えろぉおおおおおっ!!!」

 

 ガーキンが背中から捕まえていなければ、そのまま殴りかかっていただろう。

 

 静かに超サイヤ人はターニッブを見据えた後、去った。

 

ーーーーーー

 

 話が終わった後、プリカは静かに向かいの二人のサイヤ人を見据えた。

 

「…答えは自分で見つけろ。そして、倒しに来い。わたくしには超サイヤ人が、ターニッブにそう言ったように見えました」

 

 悟空とベジータが、眼を見張っていた。

 

 しばらくして、悟空が感嘆のため息を吐くと同時に明るく語りかける。

 

「なるほどなぁ。プリカ! オメエの父ちゃん、すっげえなぁ! オラ、闘ってみたかったぞ!! それに…ターニッブの強さの秘密、分かったぜ!!」

 

「バカめ! 楽しんでいる場合か。プリカ、初代サイヤ王にして超サイヤ人・リューベとは一体何者だ? サイヤ人は若い期間が長いのは事実だが、何百年も生きられる訳がない」

 

 ベジータの言葉にプリカは頷き、続けた。

 

「…おそらくは、死者の都の力を取り込んで自らを半死半生の状態にしているのではないかと。死者の都の亡霊を狩るために。ですが、何故自らが真の超サイヤ人になったかまでは、もう覚えていないでしょう。ただ闘うためだけに今を生きているのですから」

 

 プリカの表情や言葉は冷たく、悲しみと怒りがないまぜになったような声だった。

 

「…そうかなぁ?」

 

「え? 悟空さん?」

 

 そんなプリカの言葉に疑問を投げかけたのは、孫悟空だった。

 

「なあ、プリカ? オメエの父ちゃんは、リューベに恨み言を言ったんか?」

 

「…それは」

 

「わざわざ、死者の都なんて所まで行ってよ? 一対一で闘ったんだろ? 最後まで退かなかったんだろ? 父ちゃんもリューベもさ? そんな闘いは、心のねえ奴とはできねえさ。自分の全てを絞り出すような闘いはな!!」

 

 明るくニカリッと笑う悟空に、プリカはポカンとした。

 

「…プリカ。アレに勝てないのは誰でも分かる。それでも、王の立場からすれば逃げられないこともある。その誇りや意地を汲んで、リューベはサイヤ王を一撃で葬ったのだろう」

 

 淡々と告げるベジータにプリカは、混乱していた。

 

 あの時の。

 

 消える間際の父の顔は、とても穏やかで優しい笑顔だったから。

 

「こう言っちゃ、なんだけどよ。…なんちゅうか、な。オラァ、何だか羨ましいぞ。オメエの父ちゃん。自分の全力を出した上で、真っ向から負けたんだな」

 

 そう笑いながら、悟空はプリカに告げた。

 

「だからよ、オメエに責任はねえよ? オメエの父ちゃんは、闘いたくてリューベと闘ったんだ。そこにオメエの責任なんか、あるわきゃねえ」

 

「そのとおりだ。一人の戦士として、最高の戦いをした。先代のサイヤ王は、満足して逝った。親としては共感できんが、戦士としてーーサイヤ人としては羨ましい生き方だ」

 

 隣のベジータも全面的に同意して頷く。

 

 キョトンとするプリカ。

 

 二人の地球に住むサイヤ人は、同時に笑ってくれた。

 

「よく頑張ったなぁ、プリカ! 一人でずっと抱えてたんだなぁ!!」

 

「で、でも…。父様は、私の言うことを聞いてくれませんでした…、ターニッブも」

 

「それもさ、二人が選んだこっちゃねえか! オメエはきちんと言うことを言ってるさ!! …だろ?」

 

 ウインクしながら、悟空はプリカの後ろに向かって話しかけた。

 

 そこには、現王のジュードと側近のガーキンが立っている。

 

「…そのとおりだ、悟空。それにベジータ。すまなかったな、プリカ。俺は自分の中で親父の死に向き合うことができず、未だにおまえを一人にしてしまったようだ」

 

「…お兄様…!!」

 

 隣のガーキンは、いつものようにひょうきんな笑顔で告げた。

 

「まったく! 姫様も、ジュードも、それにターニッブも真面目過ぎだっての!! もう少し、この俺を見習って肩の力を抜けよ!」

 

 ニヤリと告げるガーキンにベジータが応えた。

 

「…ガーキン、カカロットのようになりたいのか?」

 

「そいつは、リラックスし過ぎだろ」

 

 肩を落としながら告げるガーキンにベジータは笑った。

 

「くく、分かるなら構わん」

 

「…苦労してんだな、アンタ」

 

 まあな、と告げながら手元の肉にかぶりつく。

 

 ベジータは鋭い目をガーキン達の後方に向けると問うた。

 

「貴様、惑星ベジータのサイヤ人だな?」

 

 通路から出てきた褐色の肌のサイヤ人は、白い道着のズボンと黒いTシャツ、灰色のノースリーブのチョッキを着ている。

 

 発見した時に彼が身につけていたのは、バトルジャケットのパンツと番いにデザインされたグローブとブーツだけだった。

 

「…くく、懐かしいお顔だ。それに…」

 

 目つきを鋭くしながら、隣でスパゲティを平らげている悟空を見る。

 

「気に入らねえ野郎もいやがるか。久しぶりだな、カカロット…」

 

「オメエとは、一応初対面だけどな?」

 

「…何を寝言を言ってやがる? 貴様に殺されたこのターレス様を忘れたのか?」

 

 口元を歪ませ、殺気に全身を沸かせながらターレスはガーキンとジュードの間を割って前に出ると、ドカッとプリカの隣に座る。

 

「…女、酒を注げ」

 

 ターレスが告げると、ジュードとガーキンが気色ばむが、プリカは兄達と女従士達を手で制し、出された金のグラスに赤いワインを注いだ。

 

「…くくく、中々美しい女だ。未来を予知できるというしな。どうだ? 俺の女にならないか?」

 

「オイコラ、姫様に向かってなんて口をきいてやがる?」

 

 ガーキンが珍しく本気の怒りを見せる。

 

 ターレスはそれに取り合わず、悟空を見据えた。

 

「…カカロット。この女を賭けて俺と勝負しようや?」

 

「オメエ、あんまし反省してねえな? オラじゃねえオラにやられても、まぁだ懲りてねぇんか?」

 

「訳の分からんことをほざくな。俺も貴様の戦闘力が気になっていてな。ターニッブの野郎に勝つためにもな」

 

 その言葉に、皆が目を見開く。

 

「…お、オメエ、ターニッブに会ったんか!? 何処でだ!?」

 

「…死者の都とか貴様らが呼んでる所さ」

 

 グイッと金のグラスを一気飲みした後、容器を差し出す。プリカは静かに空になった容器にワインを入れた。

 

「…闘ったんか? アイツと」

 

「ああ。いけ好かねえクソ野郎だったぜ。貴様に輪をかけてな!」

 

「…その様子だと、負けたんか?」

 

 悟空のさして気にもしていない問い方にターレスは少しイラつきながら応えた。

 

「ああ、完膚なきまでに叩きのめされた。気がついたら、あの闘技場に居たがな」

 

 ベジータが静かにプリカを見る。

 

「死者の都は、時や場所を越えることができるという言い伝えがあります。ターニッブは、それを使って惑星間を行き来して修行しているのです」

 

「…カカロットの瞬間移動よりは不便だが、様々な敵と戦いながら移動できるなら。死者の都、か」

 

 ベジータが口許に手を当てながら考えていると、悟空が食事を終えたようだ。

 

「プハー! 食った、食った!!」

 

 腹を二回叩いた後、すぐに立ち上がりターレスを見る。

 

「…よし! やろうぜ、ターレス! ジュード、闘技場を借りっぞ!!」

 

「…あ、ああ。食ってすぐにやるのか?」

 

 呆れ気味なジュードに悟空は明るく笑いながら、ターレスを見下ろす。

 

 するとターレスも立ち上がりながら、告げた。

 

「…バカめ。アレからどれだけ腕を上げたか、知らんが。貴様と俺のパワーとは、天と地程の差があるということを思い出させてやろう!!」

 

 すぐに二人の同じ顔をしたサイヤ人が出て行く。

 

 それを見送った後、ベジータはジュードとガーキンに告げた。

 

「先に食事を終わらせてからだ。もしかしたら、食い終わるまでにカタが付いているかもしれんがな」

 

 プリカもベジータの言葉に頷く。

 

「…そうですね。ターレスさんは、確かにサイヤ人の中では相当な腕をお持ちですが。おそらくは、ガーキンにも匹敵するくらいに」

 

 ガーキンが何気にショックを受けているが、それをフォローするかのようにベジータが告げた。

 

「…それは言い過ぎだ。確かに強くはあるだろうが。カカロットがわざわざ超サイヤ人に変身して戦う程ではあるまい」

 

 ベジータの言葉に、プリカは静かに二人のサイヤ人が向かった闘技場を見据えた。





 では、次回をお楽しみに(´ー`* ))))
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