ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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 最下級戦士であるが故に、力を求めた彼は惑星の記憶から真超サイヤ人を手に入れた。

 あらゆる可能性を取り込む力を得たサイヤ人は、己を遥かに上回る二人のサイヤ人を相手に拳をぶつける。

 倒すべき相手を見つけたが故にーー。



覚醒! 真・超サイヤ人 壊し屋ターレス!!

 精神と時の部屋。

 

 地球の神が住まう神殿にある時の流れが現界とは異なる空も大地も真っ白な世界。

 

 強烈な打撃音が響き渡り、モノトーンのバトルジャケットに白い道着のズボンを履いたサイヤ人ターレスが後方に仰け反る。

 

 口元を腕でぬぐいながら、睨みつけた先には山吹色の道着を着た自分と同じ顔のサイヤ人と紺色のフィットスーツに白色のバトルジャケットを着たサイヤ人が構えている。

 

 三人とも本来の黒髪黒目はなりを潜め、逆立つ髪は黄金に燃え、翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳をしている。

 

「…どうした、ターレス? 俺たち二人を相手に打ち勝てなきゃ、ブラックやザマスは倒せねえぞ!!」

 

「貴様の全力はそんなものか!! 貴様には惑星サイヤの力もあるはずだ。真・超サイヤ人と併用すれば、デタラメな力を得るはず。さっさと使いこなせ!!」

 

 ウイスの修行を受ける時でさえ、此処までのコンビネーションは見せなかった悟空とベジータが、共通の倒すべき相手が現れたことで阿吽の呼吸を会得している。

 

「…ぬん!!」

 

 ターレスは肩で息をしながらも気を高めて戦闘力を引き上げる。

 

 自分の身にまとわる黄金の炎のような激しいオーラを見下ろし、二人を睨みつけた。

 

「調子に乗るなよ、カカロットに王子様よ!!」

 

 一気に倍近くパワーを上げたターレスに悟空が拳を合わせる。

 

 強烈なパワーを誇るターレスの拳と痺れる自分の腕を見下ろし、悟空はニヤリと笑みを返した。

 

「…やるじゃねえか」

 

「吐かせ!!」

 

 即座に拳と蹴りをぶつけ合う両者。

 

 パワーのターレスに対し、悟空は手数で攻める。

 

 まともに拳を合わせれば不利と悟るや、悟空は紙一重で攻撃を見切り、必ず数発を返す。

 

(コイツ! 俺の拳を見切って打ち終わりに攻撃を返してきやがる!! しかも一発一発が速く、硬い!!)

 

 まるで炸裂弾のように叩きつけられる悟空の拳。

 

 ターレスも上がったパワーで拳を悟空の顔にぶつけるも、まったく怯むどころか笑みを浮かべて殴り返してくる悟空に舌打ちする。

 

「こ、の! しつこい野郎だ!!」

 

「…おい、カカロット一人にかまけるなよ!!」

 

「ぬう!?」

 

 背後を振り返り見れば、ベジータが拳を握りこんで打ち込んでくる。

 

 こちらも悟空に負けず劣らずに拳が硬く速く、手数も多い。

 

「…チッ!」

 

 受ければ不利と悟ったターレスは、前後からの攻撃を紙一重で避けていく。

 

 惑星の意思の力(可能性を取り込む能力)か、ターレスの動きは彼が今までしたことのない動きを自分のモノのようにしてみせている。

 

 ターレス自身は余裕がないため、それに気づけていないが、悟空とベジータの動きを真綿に水を透かすように吸収しているのだ。

 

 それでも、悟空とベジータの本気の打ち込みはターレスから笑みを浮かべる余裕を奪っている。

 

「…手数だけじゃねえ。コイツ等、パワーもスピードも上がりやがるのか!!」

 

 悟空とベジータの同時の拳を避けながら、ターレスは舌打ちする。

 

「どうしたぁ、こんなモンで打ち負けてたらブラックは倒せねえぞ!!」

 

「俺たちを超えて見せろ、ターレス!! その上でブラックとザマスを倒せ!!!」

 

 真っ向からぶつかってくる二人のサイヤ人にターレスも冷静な声で返した。

 

「お前達と俺のパワーでは、天と地ほどの差があるのだということを教えてやるぞ!!!」

 

 三つの黄金の炎は、更に激しく燃え上がりながらぶつかった。

 

 これを遠巻きに見ながら、他のメンバーも拳を交えている。

 

 バーダックとブロリーにフリーザとセルだ。

 

 彼らはそれぞれコンビを組みながら、凄まじい組み手を展開していた。

 

「向こうは孫悟空とベジータという二人を相手に闘っている。なかなか、ハードだな」

 

「まあ、こちらはコンビネーションで来られても対応できますからね」

 

 不敵な笑みを浮かべるセルとフリーザにバーダックがニヤリと笑う。

 

「面白れぇ! なら、行くぜ!!」

 

 山吹色の道着のズボンと紺色のインナーの上に自前のバトルジャケットを着たバーダックは、一気にフリーザの前に詰め寄る。

 

「超サイヤ人にも成っていない貴方に、私が倒せるとお思いで?」

 

「試してみろよ、フリーザ!!」

 

 バーダックの右ストレートを左手で掴み止めるフリーザ。

 

 瞬間、フリーザの瞳が大きく見開かれる。

 

「これは…! なるほど、やはりサイヤ人は危険ですね」

 

 笑みを引っ込めて鋭く瞳を細めるフリーザに黒髪のまま、バーダックはニヤリとする。

 

「今頃、サイヤ人の恐ろしさを理解しても遅せえ!!」

 

 続け様に左右のストレートを連続で放ち、右の上段回し蹴りを放つバーダック。

 

 フリーザは左右の手を顔の前にあげて、次々と繰り出されるストレートを脇に流しながら、空にジャンプして回し蹴りを避ける。

 

 追いかけようとするバーダックの前に緑色の異形ーーセルが現れた。

 

「!?」

 

「2対2であることを忘れてもらっては困る!!」

 

 冷淡な笑みから繰り出される拳を横面に放たれる。

 

 咄嗟の事で対応できないバーダックを庇ったのは分厚い筋肉の掌だった。

 

「ーーぬ!?」

 

 セルが目を見開いた先には、三メートルを越える長身と分厚い筋肉の塊となった白目の超サイヤ人がいた。

 

「お前こそ忘れるな…! この俺をなぁ!!」

 

「フフン、伝説の超サイヤ人だったか? 面白い!!」

 

 セルの頭ほどもある拳が、強烈な勢いで打ち付けられる。

 

 右腕で受け止めるもそのパワーに目を見張るセル。

 

「こいつは…! 孫悟空やベジータよりも上のパワーだと!?」

 

「フハハハハハ! どうした、化け物!! お前の力を見せてみろ!!!」

 

「舐めるなよ…! サイヤ人如きが!!」

 

 ニヤリと笑みを返し、セルも拳を握って打ち返す。

 

 その場で高速移動をしながら拳と蹴りを交える両者。

 

 セルの金色の気に青いスパークが疾り始める。

 

「…覚悟は良いか? 全てにおいてパーフェクトな私の力を見せてやろう!!」

 

 これにブロリーがニヤリと笑みを浮かべて己に金色の気を纏わせる。

 

「ククク、見せてみろぉ!!」

 

 互いに拳を振りかぶってぶつけ合う。

 

 強烈な一撃は、真っ白い大地にクレーターを創り出して掘り下げていく。 

 

 その向こうでは最後のコンビであるピッコロと悟飯が共にゆっくりと自分の向かいに立って拳を握る白い道着のサイヤ人を見据えている。

 

「俺達、二人を同時に相手取るつもりか? 面白い!!」

 

「ここまでのレベルになれば人数は問題じゃないとは言え、無茶をするね。ターニッブ」

 

 二人からの言葉にサイヤ人ターニッブも鋭い黒の目を見開く。

 

 拳を握って腰を落とし、構える。

 

「武の真髄は、常に一対一とは限らない。多対一であったとしても、一対一の強さを変わらずに保ち殴り合えるか。これも修行だ!!」

 

 ハッキリとした瞳で告げるターニッブにピッコロもニヤリと笑う。

 

「流石、孫悟空やベジータ達が認めるサイヤ人だ!! では、思い切り楽しませてもらうぞ!!!」

 

「君と戦うのは、俺にとって父さんと拳を交えるのと同じくらいの意味を持つ。二対一でも遠慮はしない!!」

 

 白銀のオーラと黄金のオーラを身に纏う師弟に対し、ターニッブも青白い波動を足先から渦巻かせながら黄金の戦士、真・超サイヤ人に変身する。

 

 究極ナメック人と真・超サイヤ人のコンビを前に、たゆたう風の如き拳を握ってターニッブは叫んだ。

 

「さあ、全力で来い! 友よ!!」

 

 三人は同時に高速移動で姿を消す。

 

 ピッコロが牙を剥き出しにして吠えながら拳と蹴りを繰り出した。

 

「ぬぅおおお! たたたたたあ、ぬぅあたぁ!!!」

 

「フッ、ハッ、セイッ!!」

 

 ターニッブは強烈な肘打ちを放って拳を受け止める。

 

 回し蹴りで互いの蹴りを相殺し合い、右正拳は互いの中央でぶつかった。

 

「ぬぅお!?」

 

 ピッコロが目を見開きながら後方に吹き飛ぶ。

 

「なんて重い拳と蹴りをしてやがる…! これが、カタッツが宿敵と認めた男か!! はじめてだな。この身に喰らってみたいと思った拳は!!!」

 

 着地と同時、高速移動で姿を消すピッコロ。

 

 その後方から凄まじい黄金のオーラを燃やしながら一直線にターニッブに突っ込んでくるのは孫悟飯。

 

 同時に繰り出される拳と拳。

 

 狂おしい笑みを浮かべて、孫悟飯はターニッブを前にする。

 

「ターニッブ! 俺の全力、受け止めてくれぇええええ!!!」

 

「受けて立とう! 悟飯!!!」

 

 互いの拳が互いの頬を打ち貫くも、笑みは弱まるどころか強くなるばかり。

 

 交互にピッコロ、悟飯、ターニッブの顔が跳ねあがる。

 

 真っ向からぶつかり合う三人の姿は、果てなき白の世界でなお輝き続けている。

 

「野郎…! 相変わらず、見せつけてくれるじゃねえか。ターニッブよぉ!!」

 

 フリーザの拳を打ち払いながら地面に着地してニヤリと笑うバーダック。

 

「バーダック」

 

 その隣に伝説の超サイヤ人に変身したブロリーが並び立って静かにバーダックの名を告げた後。

 

「行くぞぉおおおお!!!」

 

 叫びながらブロリーの巨大な筋肉の肉体が黄金の炎を纏って爆発した。

 

 天高く立ち昇る光柱。

 

 三メートルを越える身長は元の二メートルを少し越える程度になり、筋肉の塊だった肉体は余計なモノが削ぎ落された無駄のない引き締まった肉体へと変化する。

 

 髪は黄金に燃え上がり、現れた瞳は翡翠に黒の瞳孔が現れたモノ。

 

 真・超サイヤ人に変身したブロリーにバーダックもニィと笑みを浮かべて叫び返した。

 

「いいぜ。マジで、やってやらぁああああああっ!!!」

 

 大猿が天に向かって吠えるような咆哮を上げて、バーダックの全身に黄金のオーラが燃え盛る。

 

 天を衝き、地を穿つその力。

 

 黒髪は逆立って黄金に燃え上がり、黒の瞳孔が現れた翡翠眼に変化した。

 

 この変身にフリーザが真紅の瞳を静かに鋭く細める。

 

「セルさんーー!」

 

「ーーいいだろう!」

 

 同時、ゴールデンフリーザとパーフェクトセルが全力の力を引き出した。

 

 もはや、加減や様子見など一切ない。

 

 そんな周りの戦士達をチラリと見て、悟空は蒼銀の炎を掌から生み出すと同時、自分の身に纏わる黄金のオーラに真紅の光を混ぜる。

 

 ターレスの瞳には、半透明の幻影が二つ浮かんで見えた。

 

 左に水銀の髪を天に突き立てた孫悟空。

 

 右に紅の体毛を持った上半身に黒髪の孫悟空。

 

 そして二人を背負うのは、黄金の髪を逆立てた孫悟空。

 

 三つの孫悟空が一つに重なったとき、悟空の気が爆ぜる。

 

「! この力は。ザマスを退け、ブラックを押し込んだ時の力か…!!」

 

「…そういうこった。今の俺に出来ねえことは何にもねえ…!! ターレス、受けてみろ!!」

 

 一気に突っ込んでくる悟空にターレスも拳を握って殴り返す。

 

 反応速度と身体能力は超サイヤ人4。

 

 神の見切りと勘を持った超サイヤ人ブルー。

 

 そして、無限に高まり強くなる真・超サイヤ人。

 

 三つの孫悟空を合わせた文字通りのフルパワー。

 

 ターレスの右ストレートはあっさりと空を切り、ボディに右拳、顎に左拳、のけ反った所を背後から右の飛び後ろ回し蹴りで弾き飛ばされ、更に吹き飛んだところを高速移動で姿を消して先回りした悟空の右拳の打ち下ろしで地面に叩きつけられる。

 

 たった数瞬の攻防だったが、今の悟空の力は桁が違う。

 

 真紅の光も蒼銀の炎も黄金のオーラが飲み込んで一つにしていく。

 

 高まり溢れる気が、力が、孫悟空から立ち上る。

 

 ベジータが静かに瞳を鋭く細めて見つめる中、ターレスがゆっくりと立ち上がった。

 

「……可能性を統合した力。これほどとはな!!」

 

「まだだ…! 俺の真・超サイヤ人は、まだまだ先に居る。だが、俺は必ずその境地に立ってやる…!! 俺は、俺のままで真・超サイヤ人を超えてみせる!!」

 

「ク、ククク。貴様の一番のライバルは自分の中に居る真・超サイヤ人ってわけか。強えはずだ…!! 貴様の目指す者は果てしない最強の自分なんだからなぁ!!!」

 

 震える拳で笑いながら悟空のパワーに引き上げられるようにターレスの気が一気に高まる。

 

 これに真超サイヤ人のベジータがニヤリと笑った。

 

「ようやく力に振り回されるのではなく、自分のモノにしたか…!!」

 

 言うとベジータも己の中の超サイヤ人ブルーと超サイヤ人4の力を高め、一気に開放する。

 

「はぁああああああっ!!!」

 

 幻影のような二つの蒼銀と真紅の超サイヤ人がベジータに重なり、黄金のオーラが猛り狂う。

 

 これにニヤリと悟空が笑う。

 

「ベジータ…!」

 

「…いくぞ、カカロット。ターレスよ、これが今の俺達の全力だ!!」

 

 低く落ち着いた声で語るベジータにターレスが鋭い瞳を細める。

 

 慢心も油断も一切ない。

 

 強さと自信と誇りに硬い一本の芯が通ったようなベジータの声に悟空と見比べてターレスは笑う。

 

「コイツは良い。強くなけりゃ、この俺が潰す甲斐がねぇ……!! いくぞ、カカロットに王子ぃ!!!」

 

 激しく、更なる力を引き立たせる。

 

 戦士達は互いに互いの限界を超えていく。

 

 その力の上昇に限界などあり得ないと思わせる程にーー。

 

ーー神の神殿ーー

 

 精神と時の部屋での出来事を神殿内にある水晶で観察しながら、地球の神デンデは瞳を細める。

 

「これほどの戦士が一堂に会し、更に腕を磨かなければ倒せない程の敵が未来世界にーー!」

 

 漆黒の肌を持つ付き人ミスターポポがデンデを見つめて呟いた。

 

「神さま。これから、どうなる?」

 

「分かりません。でも、悟空さん達には何か考えがあると思いますーー」

 

 その時、第三者の声が二人にかかった。

 

「ほお? それはどういったモノかな? 地球の神よ」

 

「!! 貴方は!!」

 

 デンデが振り返った先には紫色の肌をした細い目の猫人間ーー破壊神ビルスが長身に水色の肌をした付き人ウイスを伴って立っていた。

 

「お前達、何かとんでもないことをしてないか?」

 

 思わぬ人物の登場にデンデは一歩下がってしまう。

 

 それを見とがめ、ビルスが前に出ようとするのを付き人のウイスが止める。

 

「ビルス様、先に界王神様達がどちらに居られるのかを聞いた方がよいのでは?」

 

「そ、それはーー!」

 

「やはり、知っておられるのですね? 地球の神さま」

 

 俯くデンデにウイスは、静かに告げる。

 

「悟空さん達が何故、精神と時の部屋であれ程激しい修行をしているのか。界王神様達がこの世界から居なくなったことと何か関係があるのでは?」

 

「……」

 

 口元を引き結び、真剣な表情で考え込むデンデにビルスが目を向ける。

 

「地球の神、僕達にバレているのに隠そうとする理由は何だ?」

 

「…闘っているからです。多くの人間と神の運命を懸けて」

 

 ハッキリと自分を恐れながらも告げるデンデにビルスは目を細める。

 

 彼らの後ろから桃色の肌をした象によく似た顔の人間とウイスとよく似た風体の幼い少女が現れた。

 

「どういうことだ? これに第10宇宙の界王神が関わっているのか?」

 

「ウイス? どういうことですかぁ?」

 

 二人に向かってウイスは静かに告げる。

 

「少し待ってくださいね、姉上。ラムーシ様、どうやら私とビルス様の勘が当たったようです」

 

「どういうことだ? ウイス。ビルス」

 

 象顔の破壊神はどうやら第10宇宙の存在らしい。

 

 ラムーシと呼ばれた男は長い鼻を振り上げながら、問いかける。

 

 これにビルスが静かにデンデを見やって告げる。

 

「教えてくれないかな? 悟空達が修行している理由。界王神の権限を超えてまで奴ら、何をしてる? 知ってるんだろ?」

 

 グッと口元を引き締め、拳を握るデンデをミスターポポが背にかばおうとする。

 

 その時だった。

 

「これはこれは、久しぶりだ。破壊神ビルス」

 

「……お前は?」

 

 ビルスは自分の背後を取ったラムーシよりも濃い桃色の肌をした魔人を見据える。

 

 悟空と同じ山吹色の道着を着た魔人は端正な顔をニヤリと不敵にゆがめてビルスを見据える。

 

「私が吸収した大界王神共が教えてくれたよ。お前は、破壊神ビルスだろ?」

 

「ほぉ? この僕を破壊神ビルスと知りながら、そんな不遜な態度を取れるとはね。余程の自信家か、それとも単なるおバカさんなのかな?」

 

「試してみるか? 破壊の神よ」

 

 ニヤリとビルスは笑みを返し、拳を握る。

 

 瞬間、ウイスが両者の間に割って入った。

 

「はいストップ、ストップ! ビルス様。少し、よろしいですか?」 

 

「何だよ、ウイス」

 

 ウイスはビルスが止まった事を確認した後、桃色の魔人を見据えて問いかける。

 

「貴方は、魔人ブウさんですね」

 

「魔人ブウ? ああ。僕のプリンを独り占めした意地汚いデブか…! って、コイツが!?」

 

 ギョッと眼を大きく見開いて問いかけるビルスにブウは静かに頷いて返す。

 

「そのとおりだ。私はお前の知る魔人ブウであり、違う存在でもある」

 

「なるほど。惑星の意思の力で復活された姿が受肉した、と言ったところでしょうか」

 

 訳知り顔で話すウイスにニヤリと頷く魔人ブウ。

 

 その不遜な態度は、明らかにビルスやウイスを脅威とは見ていない。

 

 当然、ビルスはそれを敏感に感じている。

 

 実力がどれだけのモノかは分からないが、少なくともビルス自身はつまみ食いをしても良いか、位に思わせる程度の力を持っていると判断していた。

 

「第7宇宙と第10宇宙の界王神ならば、未来時空の世界に行ったぞ。別時空の第10宇宙の界王にして界王神の弟子であるザマスの暴走を止めるためにな」

 

 淡々と告げた言葉にビルスが目を大きく見開いた。

 

「な!? ぬぅあんだってぇえええええ!!!?」

 

 ウイスも瞳を鋭く細めた。

 

「地球の神さま、魔人ブウさんの話したこと。本当なのですね? 詳しい話を聞かせていただけますか?」

 

「そ、それは…!」

 

 デンデが戸惑った声を上げる中、ビルスが目を見開いた状態で声を上げる。

 

「おい! 本当なのか!? 別時空だと!? 人間が、時空を超えるって言うのか!!?」

 

「待てビルス。その話、本当ならばゴワス達は…!!」

 

 ラムーシが冷汗を流しながら告げると、魔人ブウはニヤリと笑って頷く。

 

「そうだ。界王神たちも時を越えた。暴走する神ーーザマスを止めるためにな」

 

「…ヤケに詳しいじゃないか」

 

「当然だ。私も戦ったからな」

 

 淡々と告げるブウにビルスが目を見開いた。

 

「おい、お前! 色々と教えてもらうぞ!!」

 

「べつに構わんが、卒倒しないようにしておけよ? 全王様に知られれば、お前達は監督不行き届きで消されるだろうからな」

 

「……そ、そんなにヤバい状況なのか!?」

 

「ああ。シャレにならんぞ、ホントに」

 

 ブウがデンデを見ながら更に告げる。

 

「地球の神は何も言わないのではない。何も言えないのだ。余りにも、様々な時空をかき乱し、全宇宙を巻き込んだ事件だからな」

 

「……聞かせてもらおうじゃないか。それほどの事件ってヤツを」

 

 ビルスが目を鋭く細めながら告げるとブウは周りを見渡して満足したように頷き、語りだした。

 

 ザマスの起こした一連の事件を。

 

 真超サイヤ人となったゴクウブラックの誕生、惑星の意思の力を得て合体した姿を取るザマス。

 

 そしてーーこの世界のザマスと未来時空の孫悟空が融合した戦士…孫悟空・ゼノ。

 

「なんてことだ…! これは、大事件なんてもんじゃないぞ!!」

 

「なるほど。確かに、これは全王様にお知らせしなければならない案件です。ただし、知らせればどうなるか」

 

 ラムーシの言葉にウイスが目を見開きながら呟く。

 

 クスが微笑みながら告げた。

 

「人間を悪と定義してしまった神の掲げる正義と悪とされた人間の闘い。正に正義と悪の戦いですね」

 

「…喜んでる場合じゃないだろぉ!? 地球の神、お前! 何で、こんな大事になる前に止めなかった!!?」

 

 ビルスがデンデに問いかけるとデンデは静かに首を横に振ってこたえる。

 

「既に、別時空のザマスはブラックとなっていました。この案件が分かったのは時空の狭間を行き来することができるターニッブさんやプリカさん達のおかげなんです」

 

 惑星サイヤにあった特異点。

 

 時空の狭間へと繋がる力。

 

 それらを思い返しながらビルスは呟く。

 

「つまりブラックとか言うふざけたヤツが、世界を荒らしているのを悟空の息子たちが見つけちまった訳か」

 

「界王神を皆殺しにして、破壊神と天使を無効化させて人間を皆殺しにする計画。非常に恐ろしいですね」

 

 ウイスも頷く。

 

 そんな折、彼らの背後に声が届く。

 

「ふぅん。そんなことが起こってるんだね~」

 

 呑気で無邪気な声が響き、ウイスがフムと頷いた。

 

「ええ。本当に大変です」

 

「ああ、全くだ! ……へ?」

 

 ビルスも頷きながら、思わず後ろを振り返る。

 

 するとーー。

 

 其処に居るはずのない小さな子どものような背丈の青い肌をした丸い顔の人物が、左右の手を長身の同じ顔をした付き人に繋がれて立っていた。

 

「「「「「ぜ、ぜ、全王様ぁあああああああっ!!!!」」」」

 

 その人物ーー全王の登場に破壊神、天使、魔人、神が関係なく絶叫した。

 

ーー精神と時の部屋ーー

 

 地球時間で言えば、もうじき丸二日になろうという時間の経過。

 

 こちらでは二年の月日が経っている。

 

 周りの戦士達が次々と戦いを終わらせ、前のめりに倒れる中、片膝をついた姿勢で黒髪のベジータは目の前の二人を見やる。

 

 孫悟空とターレスを。

 

 肩で息をする悟空に対し、ターレスは静かに気を高めて睨みつけている。

 

 ターレスのスタミナが減っていない。

 

 真・超サイヤ人に変身して、限界を幾度となく超えてきたターレスは、己が吸収した惑星サイヤの力をも完全に我が物にしたのだ。

 

 真・超サイヤ人は、己の限界を超えた状態で更なる力を引き出させる。

 

 変身して気を引き上げるだけで、相当な体力を消耗するのだ。

 

 そんな変身をしていながら、ターレスは気を引き上げるだけでは体力が減らないようになっていた。

 

 惑星サイヤの力が、真・超サイヤ人の気力消費を受け持ってくれている。

 

 己の中にある力が真・超サイヤ人に取り込まれ、自分だけの力となった事実にターレスは笑う。

 

「礼を言うぜ、カカロットに王子様。おかげで、俺は完全に力を手に入れることができた」

 

 拳を握り、ターレスは冷酷に笑う。

 

「これで俺は、ブラックを潰せる…!!」

 

 ニヤリとするターレスを前に悟空が、拳を握って両の腕をクロスさせた後。

 

「くぁあああっ!!!」

 

 咆哮を上げながら、腰に置いてパワーを引き上げた。

 

「…カカロット?」

 

「今のオメエは俺たちのパワーや技、動きを完璧にマスターできるみてぇだな。なら、この俺の技をオメエに託す。受けてみろ、ターレス!!!」

 

 言うと悟空は最後の一撃を構える。

 

 気を高めて、右腰に両手を置いてたわめる。

 

 その一撃に、神の気を。

 

 サイヤパワーを。

 

 そして真・超サイヤ人の全ての力を込める。

 

「…行くぜ、ターレス!!」

 

 その力を前にターレスも、かつて惑星サイヤの闘技場で赤いかめはめ波を放った悟空を思い返す。

 

 あの時は、赤い猿のような超サイヤ人の力しか使わなかったが。

 

 今は、蒼銀の炎が赤い光に飲まれて強烈な太陽の如き光を放っている。

 

「いいだろう。その技を返してやる。この俺の最高のパワーでなぁ!!」

 

 言うとターレスは両手を胸の前で合わせて左右に開きながら、真紅の炎の輪を作り上げると頭上に掲げる。

 

 その輪の中央に赤い光の球が生まれ、更に激しく光を放つ。

 

「…10倍ゴッド」

 

「カカロットよ、俺は貴様をーー!」

 

 両者、極限に高めた赤い光を、掌を突き出して互いに向けて放った。

 

「かめはめ波ぁああああっ!!!」

 

「超えてやるぅううううっ!!!」

 

 二つの光は互いのど真ん中でぶつかり、爆発した。

 

 その爆発をベジータは静かに見据えた後、ゆっくりと満足そうに笑って立ち上がり、倒れた二人のサイヤ人に向かって歩いて行った。

 

 




次回もお楽しみに(´ー`* ))))
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