ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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ブラックとの仲違いを起こしたザマス。

現代で未来へ向かうための手段を探る悟空達。

絶望の世界で抗うトランクスと悟空ゼノ。

彼らの向かう先は、いずこへーー?


新たなる絶望 引き寄せられし者たち

 精神と時の部屋の扉がゆっくりと開かれた。

 

 白い光と世界から、孫悟空とベジータ、孫悟飯とピッコロ、ターニッブとターレス、ブロリーとバーダック、そしてフリーザとセルが現れる。

 

 十人は服装はボロボロながらも、きちんと風呂に入って身なりを整えて出てきた。

 

 フリーザやセルも傷や汚れを落としている。

 

「…なるほど。大分、強くなったみたいだね。基本の状態で次元そのものが違う」

 

 十人の戦士達に向けて瞳を鋭く細め、破壊神ビルスは呟いた。

 

 悟空はビルスに向かい合うと、ニッと不敵に笑う。

 

「ビルス様、どうしたんだ? ウイスさんも。それにそっちの二人は、ビルス様やウイスさんに服装とか似てんな。どっかの宇宙の破壊神様と天使さんか?」

 

 悟空の言葉に象そのものの長い鼻を丸めて、第10宇宙の破壊神ラムーシが頷いた。

 

「いかにも。惑星サイヤでは見事な戦いを見せてくれたな。孫悟空にターニッブと言ったか」

 

 ターニッブがペコリと一礼すれば、横で悟空がニッと笑ってラムーシに親指を立てて返した後、首をかしげた。

 

「…でもよ、第10宇宙の破壊神様がなんで? あ! ゴワス様や界王神様達の件か!!」

 

「そうだ。やはりゴワスは、此処に来ていたのだな。して、孫悟空よ。ゴワスが別時空の未来に行っているのは、其処な魔人から聞いておるが。彼奴等、帰って来れるのであろうな?」

 

 ラムーシの言葉にブウがニヤリと返すのを見て、悟空は頷いた。

 

「…時の指輪っちゅうんがあっから、帰っては来れるはずだけど。その辺は、オラより破壊神様達の方が詳しいんじゃねえのか?」

 

「…ふむ。言い方が悪かったな。ゴワス達は何故、戻って来ないのか。心当たりはあるか?」

 

「多分、ザマスのせいだろうな。ブラックになったザマス。未来で惑星サイヤの意思と融合したザマス。そして未来のオラと融合してゼノになり、地球のみんなの為に戦うオラ達の世界のザマス様。ゴワス様は、ザマス様を放っておけねえんだ」

 

「…ザマス。あの若造がーー人間嫌いな界王が人間と融合したと? その人間が未来のお前だと言うのか。なるほど」

 

 ラムーシが頷きながら、己の宇宙の天使クスを見る。

 

「…どういたす? 弟子も弟子なら師も師であるぞ。嘆かわしい」

 

「ゴワス様は、真の正義の為に戦うザマス様ーーゼノ様の力になろうと、悪となった別時空のザマス達に挑まれているわけです。嘆かわしくありません」

 

「…全王様を無視していなければな」

 

 溜め息を三度吐くラムーシの隣からビルスが声を上げた。

 

「お前ら、僕たち神に相談せずに何を勝手にヤバイ敵に手を出してんだ。下手すりゃ、宇宙ごと消滅もんだぞ」

 

 ジト目で恨みがましく告げるビルスに、悟空が右手で後ろ頭を掻きながら言う。

 

「…そんなこと言ってもよ。時間が無かったんだから仕方ねえじゃ無えか」

 

「息子と妻の危機だ。いくらアンタの言葉でも、聞けん」

 

「だいたい其処まで俺たちに注文付けんなら、アンタ等も別時空とやらに注意しとけって話だろが。俺たち人間に問題を見つけられてりゃ、世話ねえぜ。 ビルス様よぉ」

 

 悟空の左右から、ベジータとバーダックも声を上げて来たのを見て、ビルスが目を見開いた。

 

「あのなぁ! 普通、神である僕等が気付けないのを人間が先に気付いた時点で、お前らが特別なんだよぉ!! なんだよ、別時空の存在って!? 何万年も生きてるが、そんなんはじめて聞いたぞ、おい!!!」

 

「ビルス様の仰る通り。悟空さん達は、私達にさえも予測できない事態に遭われる率が高いですねぇ。全王様やお父様が気に入られるのは、その辺りでしょうか」

 

 楽しげなウイスを尻目に、ビルスが息を一つ吐いて悟空を真剣な表情で見る。

 

「それで、何とかなるのか? 正直に言うが、この案件は既に破壊神や界王神でも手に負えん領域なんだが」

 

 嘘のないビルスの言葉に、悟空が歯を揃えて驚く。

 

「いいっ!? ビルス様でも向こうのザマスを倒せねえんか!?」

 

 コレにラムーシが首を横に振った後、話しかけてきた。

 

「私やビルスのような破壊神には、星を破壊する役割が与えられると同時に、時空を渡ってはならないと言う厳しい掟がある。ゴワス達の安全を考えるならば、我々が出張れば良いのだが。事は未来時空の話。破壊神たる我々は手出しできぬ」

 

「時空を渡って行けるのは秩序を守る界王神なのです。破壊の力を持つ破壊神は時空を変えてしまう可能性があるので掟が作られたのです」

 

 クスもそれに続いて説明する。

 

 コレにフリーザが肩を竦めた。

 

「破壊神の方々を手玉に取るなんて、中々やりますね。あの超サイヤ人擬きと界王とやら」

 

「フフン、中々面白い状況だ。未来時空に行けぬのが残念だよ」

 

「未来時空のザマス達が何をするのか、確かに気になるな。あの世界にも全王様は居られるはずだが…。…全王様か、そうだったな」

 

 セルの言葉の後にブウも頷いた後、何かを思い出したように溜め息を吐いた。

 

「ん? どうした、ブウ?」

 

 ターレスが何気無しに聞いてみると、彼は静かに目で神殿の奥を示した。

 

 奥の廊下から地球の神デンデの手を握って、青い肌の少年のような存在が現れる。

 

 コレにターレスとフリーザ、セルを除く戦士の皆が反応した。

 

「「「全王様ぁあっ!!?」」」

 

 破壊神達が肩を並べて長い溜め息を吐く。

 

「誰だ、あのすっとぼけたガキみてえなヤツは」

 

「全王? 聞いたことがないね。ビルスーー様達が借りてきた猫みたいに大人しいのを見るに、何かありそうだけどね」

 

 皆の反応に思わず首を傾げるターレスとフリーザに、ブウが声をかけた。

 

「あの方は、全12の宇宙を束ねる全王様だ。界王神や破壊神達を総べる正真正銘、神々の頂点に君臨されておられる方でな。あの方より上は無い。私の中の界王神達の記憶では幾つかの宇宙は全王様によって消されている」

 

「……貴様ら。それ以上余計な事を言うなよ?」

 

 セルの言葉に、ターレスとフリーザが気をつけをしたまま口元をひき結んで頷いた。

 

「あー! 全ちゃん!!」

 

「全王さーー全ちゃん、どうしたんだ?」

 

 悟空と言い直したターニッブの呼び方に思わず周りが石化する中、全王は幼い子どもが友人に会えたように無邪気に笑う。

 

「悟空〜、ターニッブ〜!」

 

 デンデの顔を見上げて笑いかけてから手を離すと全王はふよふよ、と宙を飛んで悟空とターニッブの手をそれぞれ握る。

 

 にこやかに笑って二人のサイヤ人を見上げて来た。

 

「二人が闘ってるエネルギーを感じたからね、見に来たの。そしたらね、他の人も強いの見たの! ベジータ君達もみんな、凄いんだね!!」

 

「そりゃ、みんなオラ達の仲間で最強を目指すライバルだかんなぁ! まあ、ターレス達は仲間じゃねえけんど」

 

 はしゃぐ全王を前に悟空が笑いながら答えていると、ターニッブが声をかけた。

 

「全ちゃん。すまないが、今は行くところがあるんだ。悟空達との組み手は、またーー」

 

「ターニッブ。君たちは未来時空に行くの?」

 

 首を傾げて無邪気に問いかける全王に破壊神達の表情が凍る中、アッサリとターニッブは告げた。

 

「ああ。俺より強い奴に、会いに行く」

 

 爆弾をアッサリと投下するターニッブに白くなる神々と魔人。

 

 しかし、続く全王の言葉は更にヤバかった。

 

「…見たいなぁ。今の君達より向こうの世界にいる犯人は強いのかなぁ?」

 

「全王様、それはいけません。未来時空に全王様を連れて行けば下手をすれば、あちらの全王様と鉢合わせしてしまいます。そうなれば最悪、互いに消滅の技を繰り出し合ってしまうかもしれない」

 

 付き人すらも汗を掻いて凍る中、冷静にウイスが意見を述べると全王は俯く。

 

「…見たいなぁ、ターニッブ達の戦い」

 

 寂しそうに告げる全王に、ターニッブは膝を曲げて目線を合わせ、頷く。

 

「全ちゃん。俺と悟空が居る限り、何度でも君に見せられる。戦いという最高の形で俺たちの修行の成果を」

 

「……うん、そうだね。ならね、ターニッブ」

 

 全王は自分の右手に蒼銀の光の玉を創り出した。

 

「…これはね、全部を消す力なんだ。君にあげる、君なら使いこなせるから」

 

 人間にはあまりに過ぎた力を渡そうとする全王に破壊神達が絶句する中、笑顔で言う全王を前にターニッブは首を横に振った。

 

 取っておきの宝物を見せたつもりだった全王は、ターニッブを不思議そうに見上げる。

 

「全ちゃん、俺はサイヤ人であり格闘家だ。この拳で問いかけたいんだ。己の限界を。俺には、鍛え抜かれた肉体と技があればいい。過ぎた力は必要ない」

 

「…でもね、ターニッブ。君が今から闘うのは不死身であり不滅の存在だよ。君や悟空がいくら強くなっても倒せないよ? それでも要らないの? 本当ならね、僕が消さなきゃいけないほどの存在なんだよ?」

 

「…全ちゃん。この拳はリューベとの約束の証だ。俺の目指す一撃必殺は、倒すのではなく勝つための拳!! 信じてくれ、必ず俺はこの拳で勝つ!!」

 

 漆黒の瞳は何よりも強い意志を示している。

 

「…ん〜!」

 

 しかし、いつもならば分かったと告げる全王が、今回は悩んだような声を上げる。

 

 コレに悟空が声を上げた。

 

「全ちゃん! なら、その力をオラの息子の悟飯に託してくんねえかな?」

 

「…父さん?」

 

 名指しで言われた悟飯は、キョトンとした表情で悟空と全王を見比べる。

 

 全王は静かに悟空と悟飯を見上げた。

 

「オラはザマスのせいで、あの世界に行けねえらしいんだけどよ。悟飯は行けるみてえなんだ。万が一、ターニッブが倒せねえ状況になっても、悟飯ならその力を有効に使えるはずだ」

 

 悟空の説明に全王は悟飯を見上げて、ジッと値踏みするように見据える。

 

「…似てるね、悟空に」

 

「だろ? 悟飯はオラより、しっかりしてっけどな!」 

 

 笑いながら告げた後、悟空はバーダックを見つめる。

 

「…父ちゃんは、やってくんねえだろ?」

 

「ああ。消滅の力なんざ、要らねえな。この拳で充分だ」

 

「…はは、やっぱ父ちゃんはオラの父ちゃんだ!」

 

 ニヤリと笑って拳を握る実父に悟空は嬉しげに笑った後、息子の悟飯を真剣な瞳で見据える。

 

 息子が頷いたのを確認して、全王を見ると彼は悟飯にニコリと笑いかけてから、蒼銀の光球を受け取らせた。

 

 光球は、悟飯の胸の辺りに吸い込まれて消えた。

 

「…悟飯。未来の世界を頼んだぜ!!」

 

「父さん…。分かりました。大丈夫です、もう一人の僕とお祖父さん達なら出来ます!!」

 

「…っと。そうだった、悟飯。ちょっとだけ、未来のオメエと話せっかな?」

 

 頼もしげに息子を見ていた悟空は、ふと思い出したように笑い、悟飯に問うた。

 

 これに悟飯はニコリと嬉しげに笑い応える。

 

「…分かりました」

 

 そして、悟飯の肉体を胸元に吊っていた勾玉の光が包み込んで、姿が変わる。

 

 左目に斜めに走った傷と短く切り揃えた髪。

 

 飯と書かれた山吹色の道着を着た悟飯に。

 

 未来時空の悟飯は悟空の顔を見た瞬間、目を見開いた。

 

「…お、お父さん」

 

 彼の中では、幼い頃に二度と会えなくなった大好きな父親の姿。

 

 ゼノとの組み手では、郷愁のような念を抱いて声を上げたが、今は無意識に幼い頃の声が出ていた。

 

「なんだ、悟飯? 情けねえ面して。いってえ、どうしたんだぁ?」

 

 明るく軽い調子で告げる父親の姿に、悟飯は涙を流して歩み寄る。

 

 そんな悟飯を、悟空は何も言わずにニッと笑って抱きしめるのだ。

 

「…よっ! オメエたぁ、こっち来てからはじめて話すよな? オラ、オメエのこたぁ、惑星サイヤで見たから知ってっぞ!! よく頑張ったなぁ、悟飯?」

 

「…う、うぁああっ! お、父さん。お父さぁああああんっ!!!」

 

 父親の胸の中、遥かに大きかった記憶の中とは違い、ほとんど同じ背丈に並んだ息子は泣き虫の頃のように大泣きしていた。

 

「…よ〜しよし、泣いていいぞ。オメエ、ずっと我慢してきたかんなぁ。男だから泣いちゃダメなんてこたぁ無え。思っ切り父ちゃんが胸貸してやっぞ!!」

 

「…すみません、お父さん。守れませんでした、みんなを。お父さん…っ!!」

 

「んなこたぁねえ。オメエは立派に闘った。恥じる事も悔いる事も無え。トランクスが、みんなの仇を討ってくれたじゃねえか? な、悟飯」

 

 背中をさすりながら笑う悟空に、悟飯は泣きながら頷く。

 

 バーダックが静かに悟空の横に並ぶと未来時空の悟飯の頭を撫で付けながら、ピッコロを見る。

 

「…おい、テメエも来い」

 

「まったく、親子三代。甘い奴らだ」

 

 言いながら、ピッコロも穏やかな表情で悟飯の肩に手を置いた。

 

 瞬間、ボロボロな服装だった悟飯とバーダック、ターニッブと悟空の服装が、ピッコロの魔術で一新した。

 

 温かい父親の腕と厳しくも優しい師の掌、そして父によく似た祖父の掌に、悟飯は自らの腹の底から力が湧いてくるのを感じている。

 

 奮い立つ闘志。

 

 涙と共に流れる迷い。

 

 孫悟飯は、幼い少年の表情から独りの戦士に変わっていった。

 

 それを感じ取り、バーダックとピッコロはニヤリと笑うと悟飯から掌を離す。

 

 嗚咽はゆっくりと治まり、静かに悟飯は悟空の腕を抱き締め返した。

 

「よし! さあ、行け! オメエが未来を守んだぞ!!」

 

「…ありがとう、父さん。ピッコロさん、お祖父さん。みんな。俺、頑張るよ!!」

 

 強い口調で未来時空の悟飯は、頼り甲斐のある笑顔を悟空達に見せた。

 

 こうして、全王から力を預かった悟飯を筆頭に、戦闘服と山吹色の道着を組み合わせたバーダック。

 

 ブウによって戦闘服とマントを新調させたターレス、そして黒のインナーに白い空手着をピッコロに直してもらったターニッブを連れて、悟空は西の都に瞬間移動した。

 

 彼らを見送る全王や破壊神、魔人や天使。

 

 サイヤ人やフリーザとセルが肩を並べる中、孫悟飯一行は未来時空へと旅立ったのだ。

 

ーーーーーー

 

 全王は静かに悟空達の去った方向を見ている。

 

「…全王様。よろしければ、何故人間に貴方の力を貸し与えようとなされたのか、お教え願います」

 

 ウイスの不敬とも言える発言にビルスが目を見開く中、全王は不満気な無表情で呟いた。

 

「…僕なら、消せるのに。悟空もターニッブも。誰も僕を頼らないんだね」

 

 その言葉にビルスが目を見開きながら、悟飯に力を授けて下さり、ありがとうございましたと悟空の代弁かつ弁解をしようと口を開こうとするが、それよりも先にデンデが声を上げた。

 

「彼らは誰かを頼りません。彼らは、自分の力だけで困難に挑もうとするんです。一見、無謀に見えるかもしれないですが。そんな彼らだから、人々に希望を与えてくれるのです」

 

 全幅の信頼を寄せた笑顔をデンデは見せる中、全王は不満気な無表情からニコリと笑うとデンデ達に告げた。

 

「みんな、強そうなのね。悟空が戻って来たらね。みんなの試合、見たいのね!!」

 

 これにデンデが困った表情になる中、ブロリーとベジータが声を上げた。

 

「フハハハ! さすが、全王様だ。そうこなくちゃ、面白くない!!」

 

「全王様、サイヤ人の王子ベジータの闘いを約束どおり御覧に入れましょう!!」

 

 盛り上がるサイヤ人達にフリーザ、セル、ブウもニヤリとする中、ピッコロが告げた。

 

「その前に、飯と着替えを済ませろ。だらしないぞ、サイヤ人ども!!」

 

 ピッコロの一喝にベジータはフムと頷いて自分のボロボロな服装を見下ろした後、同じくボロボロなブロリーを見据えて呟いた。

 

「確かに。この姿はマズイ」

 

「…うむ」

 

 ベジータとブロリーは着替えをピッコロに用意してもらいながら、食事を始めるのだった。

 

ーーーーーー

 

 未来時空の界王神界にて。

 

 先程まで同士であったブラックを叩き潰して独りとなったザマスの背を、ゴワスは静かに見据えながら告げた。

 

「…ザマス。これから、どうするつもりだ?」

 

 静かなゴワスの問いかけにザマスは穏やかな声で返す。

 

「そうですね。ブラックが抜けた以上、それを余りある補充をせねばなりますまい。特異点とも呼ばれる我が惑星サイヤの力でね」

 

 ニヤリとしながら、合体ザマスの姿を取った彼は右手を天に掲げて告げた。

 

「…まずは、お前に来てもらおうか」

 

 言うと同時、紫色の雷が天からザマスの掌へと堕ちて爆発した。

 

 煙が立ち上り、目の前には黒いフィットスーツを着た筋肉質な大柄の男が、白銀の髪をリーゼントのように靡かせて逆立っている。

 

「…フン。まさか、まだ俺に用事とはな。惑星の意思よ」

 

「まあ、そう言うな。今となれば、お前も我が同士ではないか。ベビーよ」

 

 ザマスは笑みを浮かべながらベビーに語りかけると、彼はニヤリと邪悪に笑いながら返す。

 

「…まあ良いだろう。それで? ブラックの穴を補うのに俺を呼んだのか?」

 

 邪悪な気配をしたベビーという男は、その実力も圧倒的だとゴワスは見抜いていた。

 

(こやつ、ブラックと同等か。それ以上の力を持っておるというのか!? 信じられん、一体ザマスはこれほどの強者をどうやって従えておる!!)

 

 ベビーから放たれる重圧は神の気ではないが、高位の神々に匹敵していると界王神ゴワスの勘が告げている。

 

 戦慄するゴワスを他所に、ザマスはベビーに問いかけた。

 

「何か、妙案はないか? ベビーよ」

 

「…フン。俺の別の可能性より、強力な連中か。心当たりがないこともない」

 

「…ほう?」

 

 ベビーから送られる映像を頭に浮かべて、ザマスはニヤリと笑った。

 

「…素晴らしい。これほどの連中が、まだ居たか。孫悟空は次々と強者を引き寄せるようだな」

 

「クク、あの忌々しいサイヤ人を殺せる日がやっと巡って来たか」

 

 ベビーが腕を組んで見守る中、ザマスが天に向かって両手を広げる。

 

 紫色の雷が二つ、天から地面に堕ちて爆発した。

 

 漆黒と紫色の気を纏い、二人の人間の姿を象る。

 

 紙のように白く鎧のように硬そうな肉体の胸元には、青い七つの球が浮かび上がっている。

 

 全身に黒い角を生やし、頭頂部には左右に分かれた大きな角が生えている。

 

 真紅の瞳はザマスを静かに値踏みするように見据えて居た。

 

 ザマスは感動に震えながら、現れた人間の形をした白龍を見据える。

 

「…素晴らしい。戦闘力だけならば、合体した我の力を上回っている。名を聞かせてくれ、罪深き人間を裁くために生み出された美しき龍よ」

 

「…俺の名は一星龍。ドラゴンボールのマイナスエネルギーから生まれた、全ての邪悪龍の頂点に立つものだ。絶対神ザマスよ」

 

「…邪悪龍? 増長した人間を裁く神の代行であろう? これからは正義と秩序と名乗るが良い。否、一星龍よ。貴様を我が世界の破壊神に命ずる。そしてベビーよ、お前が界王神だ」

 

 ザマスの宣言にベビーがフンと笑う。

 

「世界の王にして神ーー界王神か。良いだろう。貴様の常世をツフル人のみの世界にしてくれる!!」

 

「クハハハハ! 俺を破壊神にだと? それはいい! 何とも話の分かる面白い神がいたものだ!!」

 

 笑う邪悪龍の長にニヤリと返し、ザマスはこちらを冷たく見つめる長い黒髪の男に向き直る。

 

 長身痩躯だが筋肉質の肉体は、青いジーンズと黒のフィットシャツに山吹色のスカーフを着けている。

 

 前髪を簾程度に残して、ほとんどオールバックにした、端正な顔立ちのアイスブルーに黒の瞳孔を持つ瞳の青年。

 

「…どうでもいい。貴様らがどんな世界にしようとも、俺は俺が最強であることを証明するだけだ」

 

 冷たく無機質な声で告げる彼に、ザマスはニヤリとする。

 

「…欲の無い奴だ。お前ほどの力があれば、宇宙最強などよりも余程価値のあるモノを手に入れられように」

 

「神だの、王だのに興味はない。俺は無限に強くなるという真・超サイヤ人どもを皆殺しにするだけだ」

 

「…ふふ。差し詰め、貴様はサイヤ人どもの死神と言ったところか。人に造られし究極の存在、超17号よ」

 

 ザマスの言葉に超17号は肩をクールに竦めてみせた。

 

「…いちいち、芝居がかった言い方しかせん奴だな」

 

「癖でね。神とは己の発する言葉に酔うことを許されているのだよ」

 

「…自己陶酔することが神だと? つまらんな」

 

 冷たく嘲り笑う超17号にザマスはニヤリと返す。

 

「何、自己満足とは結局、全ての知的生命体が行きつく真理だ。神だの、王だの、史上最強だのなどと言うものは所詮、自己満足に過ぎん」

 

 高笑うザマスに、超17号は笑みを引っ込めて瞳を冷たく細めた。

 

「…ああ言えば、こう言うヤツだ」

 

 不快げに吐き捨てる超17号をベビーが止める。

 

「やめておけ。味方同士でやり合って戦力を削ることもあるまい? 俺たちは兄弟なんだからな」

 

 ニヤリと告げるベビーを興味なさげに一瞥し、超17号は両腕を組んで黙る。

 

 超一星龍が彼らを見据えた後、ザマスに告げた。

 

「さて、今後の我々の方針は破壊神となった邪悪龍のこの俺が世界を滅ぼした上でーー」

 

「ーー絶対神であるザマスが世界を新しく作り、界王神である俺がツフル人へと知的生命体どもを変えて管理すれば良いのだな」

 

 ベビーが引き継いだ言葉にザマスはニヤリと笑った。

 

「そういうことだ。刃向かう者は全て打ち倒すのみ…! さあ、行くがいい!! 我が同胞たちよ!!!」

 

 ザマスの言葉に、三人の邪悪な超戦士は強烈な気を纏って、地球へと向かうのだった。

 

ーーーーー

 

 未来時空の地球。

 

 レジスタンスのアジトでは、漆黒の道着に赤い帯を巻いた孫悟空ーーブラックが寝かされている。

 

 彼の傷の具合を見るのは、カリンから秘伝の薬を持たされていたヤジロベーだった。

 

「孫! おみゃあ、ホントに分かっとるだかぁ? こんな奴の傷を治しても、意味ないでしょー!!」

 

 ヤジロベーの言葉に、彼の後ろに立ってブラックの様子を見ている、赤い羽織を着た黒い道着の孫悟空ーーゼノが応えた。

 

「ああ、私のしていることは自己満足だろう。だが、それでも無抵抗の人間を殺すことだけは、私には出来ん」

 

 孫悟空の姿でありながら落ち着いた雰囲気のゼノに、ヤジロベーは目を細めながら呟く。

 

「おみゃあ、やっぱ孫だぎゃあ。どんなに変わっちまっても孫悟空は、孫悟空だぁ」

 

「…悪いな」

 

 微かに微笑んで告げるゼノの横でザンギャが声をかける。

 

「そう思うんなら、トランクス達の言うとおりにした方がいいんじゃない? そのブラックって奴は説得できないでしょ」

 

「……」

 

 静かに黙って倒れているブラックを見つめるゼノ。

 

 トランクスは結局ゼノの言葉に納得できず、マイなどのレジスタンスのメンバーもほとんどがトランクスについて行ってしまった。

 

 残されたのはブルマとヤジロベーにザンギャ。

 

 そしてガーキンをトランクスに同行させたサイヤの巫女プリカと、ハルとマキの兄妹である。

 

「…ハル、マキ。お前達はトランクス達と一緒に行ってほしかったんだがな」

 

「だって、ゼノ兄ちゃんが哀しそうだったから」

 

 ハルの言葉にゼノは苦笑して告げる。

 

「そんなことで、私に付き合わなくていい。トランクス達の方が正論なのだからな」

 

「…それに、ゼノ兄ちゃんの言ってることも分かるから」

 

 気を失い、無抵抗のブラックをジッと見つめて、ハルがつぶやく。

 

 複雑そうな表情をしている彼を、ゼノは静かに見つめる。

 

 許せない気持ち、憎い気持ち、孫悟空という人間と融合した今のゼノには、ハルの想いが痛いほどに理解できる。

 

 その上で、彼はブラックを治すと言った自分に賛同してくれたことも。

 

「ーー孫!」

 

 ヤジロベーの言葉にゼノが反応して前を見ると、ブラックが目を開いていた。

 

「…此処は。貴様らは、ゼノと人間どもーー!!」

 

 体を起き上がらせようとするブラックだが、力が入らずに動けない。

 

「やめておけ。傷は治っても、体力は戻っていない」

 

「……ゼノ。この私を、薄汚い人間どもに触れさせたと言うのか…!!」

 

 怒りの表情に変わるブラックを、ザンギャが呆れたような表情で見据える。

 

「よく言うよ、子どもに面倒見てもらっておいて。こういうのを恩知らずって言うんでしょうね。あんな男のためによくタオルを交換したわね」

 

 ハルとマキの頭をこれ見よがしに撫でてやりながら嘲笑するザンギャに、ブラックが鋭く睨みつける。

 

「…ふざけた人間どもめ。肉体さえ万全であれば、ゼノ共々あの世に送ってやったものを」

 

 ゼノが静かにブラックに向かって拳を握る。

 

「…ブラック。その傷は、ザマスか?」

 

「フン。人間ゼロ計画は、やはり私だけで進めるべき計画だったようだ。それを再認識できただけでも良しとするか…!!」

 

 静かに笑うブラックにゼノも瞳を細める。

 

「…なるほど、そうか」

 

 これにブルマが疑問の表情でゼノを見上げる。

 

「どういうこと?」

 

「? ゼノ様。なるほどとは?」

 

 プリカも続いて問いかけるのに対し、ゼノは淡々とした表情で応えた。

 

「おそらくだが、この世界のザマスは惑星の力を得たことで考えを変えたのだろう。それが、ブラックの望むものとは違うものだった」

 

「……フン。私とザマスの考えを読んだか。流石は、元は私達と同じ存在だな」

 

 満足そうに笑うブラックにザンギャが肩を竦める。

 

「何なのよ、この自己陶酔してばかりのナルシストは」

 

「やっぱ、気持ち悪りぃぎゃ」

 

 ザンギャとヤジロベーが、ハルとマキの兄妹をブラックから離しながら告げる。

 

 ブルマも呆れた表情になりながら、告げる。

 

「それで? 今のアンタ独りでザマスは倒せるわけ?」

 

「……なんだと?」

 

 ブルマの言葉にゼノに向けていた笑みを引っ込めて、ブラックは鋭く見つめる。

 

 プリカも静かにブラックに目を合わせて告げる。

 

「界王である貴方ならば、分かるはずです。あなたの仲間が、どれほど危険な力に魅入られてしまったのかを」

 

「……世界を喰らうと言っていたが。神に仕えし巫女よ、ザマスは本当にそのような力を得たというのか」

 

「死者の都と呼ばれた亜空間を作り上げ、多次元世界の可能性を引き寄せる力を持つ惑星の意思ならば、出来ると考えた方がよいかもしれません」

 

 プリカの言葉にブラックが真剣な表情に変わる。

 

 これにブルマが声を上げた。

 

「あんたの目的は人類の全滅。だけど、世界までは滅ぼそうとは思っていないんでしょ? ならーー」

 

「ならば、人間を先に滅ぼしてからザマスを始末することもできるな?」

 

「……!!」

 

 邪悪な笑みを浮かべて告げるブラックに、ブルマが悔しそうな表情になる。

 

「それが、できないことはアンタが一番、分かってるでしょ…!!」

 

「……どうかな。貴様らは僅かな希望にすがって私を今殺せないが、私は平気で人間を滅ぼせるぞ。傷が癒えればすぐにでもな」

 

「……!! やっぱり、あんたはとんでもない悪党ってわけね。ゼノ君と同じだなんて、とんでもないわ」

 

「フフン。悪である人間の定義で私を悪と呼ぶか。やはり愚かな人間よ」

 

 笑って告げながら立ち上がろうとするブラックに、ゼノが静かに告げた。

 

「ブラックよ」

 

「…なんだ、ゼノ? 今更、命乞いか?」

 

 邪悪な笑みを浮かべて笑うブラックを前にして、ゼノは静かに告げた。

 

「私と超サイヤ人になって闘え。私が勝てば、しばらくの間は言うことを聞いてもらおう」

 

「……貴様、真・超サイヤ人を使わずに私に勝てると思っているのか」

 

「さあな。やってみなければ分からない。俺は真・超サイヤ人になれるほどには体力が回復していない。それはお前も同じだ。超サイヤ人ロゼになれるほど、お前も体力は戻っていまい」

 

 互いに睨み合う。

 

「真・超サイヤ人に頼らない私の力がどれだけのモノか、貴様の身で試すがいい」

 

「…フン。いいだろう」

 

 二人は静かにブルマたちから離れて、地下アジトを地上に向かって昇っていった。

 

 再び、二人の孫悟空が高速移動で誰もいない廃墟の街へと姿を現す。

 

 互いに睨み合いながら、拳を握って構える。

 

「ゼノ…! ザマスでもあり、孫悟空でもある私の可能性よ。貴様を倒し、その真の力を取り込んでくれる!!」

 

「…ブラック。私の歩んだかもしれない可能性よ。今日こそ、貴様との決着をつける!!」

 

 両者は同時に金色の戦士。

 

 超サイヤ人に変身した。 

 

 

 

 




次回もお楽しみに(*^^*)
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