ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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その神は、人への不信を抱いていた。

その人間は、人を疑うことを知らなかった。

神と人との出会い方が違えば、おそらくは……。


再戦! 孫悟空ゼノ 対 ゴクウブラック

 廃墟の街に二人の金色の戦士が向かい合う。

 

 同じ顔をし、同じ存在であったものが、異なる選択をしたことで別れた存在。

 

 片方は憎しみ故に滅ぼし、片方は敬愛ゆえに融合した。

 

 両者の心は正反対。

 

 ゴクウゼノとゴクウブラック。

 

「…さて、始めるとしましょ? 私も、孫悟空の肉体とザマスの思考がようやく馴染んで来たところです」

 

 ニヤリとブラックは笑う。

 

「始める前に、神の名に誓え。敗北すれば、私達に手を貸すとな」

 

「…良いだろう。人間ならば、約定など知らぬが。お前は私だ。孫悟空でもあるというのが気に入らないが。神の名の下に、お前との勝負に私が負ければ手を貸そう」

 

「…安心したぜ。まだ、お前にも神の誇りがあったみたいだな」

 

「何を言っている? 私は神。人間のような対等でないものとの約定など交わす意味もない。私と同じ神の魂を持つお前は特別なのだ、ゼノ」

 

 ニヤリと笑うブラックにゼノは金色のオーラを身に纏い翡翠の瞳を鋭く細める。

 

「さっさと始めようぜ? お前の御託は聞き飽きた」

 

 拳を握り構えるゼノを前にブラックは瞳を見開き肩を揺らしながら笑う。

 

「…神の言葉の気高さを理解できぬとは。人間に毒されたか、ゼノ!!」

 

 告げると同時、金色のオーラを身に纏い目の前に踏み込むブラック。

 

 同時、ゼノも拳を握って迎え撃つ。

 

 互いに拳を振りかぶり、相手の顔面に向けて放つ。

 

 両者の右拳は互いの中央で僅かに触れると、交差しながら互いの顔の右横の空間に突き出された。

 

 互いの拳の軌道を互いの拳威が僅かに逸らしたのだ。

 

 冷徹に口元を固く引き結んで見据えるゼノと不敵にして酷薄な笑みを浮かべるブラック。

 

 両者は、その場から右腕をクロスさせたままに左拳を互いの顔目掛け放つ。

 

 互いに拳がぶつかり、出した拳を手元に引き戻してから本格的に拳と蹴りを繰り出し合う。

 

 互いの拳と蹴りが交錯し、次々と嵐のようにぶつかり合いながら、2つの金色の光は幾筋の線を空間に引いていく。

 

ーーーー

 

 離れた場所で二人の孫悟空の闘いを見ながら、サイヤの巫女プリカは瞳を細めた。

 

「この闘い、ゼノ様は不利です」

 

「? どうして? 同じ超サイヤ人なら条件は同じじゃーー!」

 

 横に居るブルマが問いかけるとヤジロベーが応える。

 

「ブラックって野郎の方が気がデカいんだぎゃあ。まともにやり合ってもゼノの方が気もスピードもパワーも劣ってるんじゃ、しょうがねえでしょ~」

 

「確かにね。あのゼノって奴、真・超サイヤ人の時は滅茶苦茶に強かったけど。ただの超サイヤ人だとあんなに弱くなるなんてーー!」

 

 今のゼノの強さだってザンギャから見れば、相当なものだ。

 

 おそらくはボージャックよりも上だろう。

 

 だがそんなゼノよりもブラックの力は、遥かに上だった。

 

「ヘラー一族こそが、宇宙最強だって思ってたのに。とんでもないわね、ホントに」

 

 次元がまるで違う強さを見せているブラックにザンギャはゾッとしていた。

 

ーーーー 

 

 高速移動で何度もぶつかり合う金色の戦士。

 

 衝撃波が周りの廃墟を破壊しながらも、両者の戦いは更に激しさを増している。

 

 ゼノの強烈な右ストレートを軽々と左手で掴み止めるブラック。

 

「どうした、ゼノ? この私を負かすと息巻いた割には超サイヤ人のお前の戦闘力は、この程度か?」

 

「……!」

 

 歯を食いしばって左拳を放つゼノ。

 

 あっさりと右手で腕を掴み止めるブラック。

 

 そのまま押し切ろうとするゼノを前に余裕の表情でブラックはつづけた。

 

「当然だ。同じ孫悟空でも、この私の得た孫悟空の力はお前の肉体を遥かに凌駕する存在。次元が違うのだ!!」

 

 冷酷な笑みを浮かべる超サイヤ人ブラックは、ゼノを真上に蹴り上げる。

 

 天高く吹き飛ぶゼノの真上に高速移動でブラックは現れ、強烈な右の肘を背中に叩きつける。

 

 上空から地面に叩きつけられる寸前、ゼノは舞空術で地面から数センチ浮いた状態で止まり、着地。

 

 冷徹な表情で自分の前にゆっくりと降り立つ自分より格上の相手ーーブラックを見据え、真正面から再び右ストレートを放つ。

 

 先ほどと同じように左手で掴み止めるブラックにゼノは告げた。

 

「その力は、お前の力じゃない。お前にとって孫悟空の肉体は借り物だ。見せてやる、孫悟空とザマスの魂が融合した私の力を!!」

 

 言うと同時、ゼノは拳を掴み止められたままの姿勢で氷上を滑るようにブラックの側面に立つ。

 

「! それは私(ザマス)の動きか!!」

 

 目を見開きながらもブラックは即座に左手で掴んでいたゼノの拳を放し、拳を握りこんで打ち込む。

 

 ブラックの拳は簡単にゼノの頬を捕まえた。

 

「ぐぅっ!!」

 

 後方へのけ反るゼノを更にブラックが畳みかける。

 

 ゼノは先程までの高速移動での回避ではなく、氷上を滑るような摺り足で体勢を維持したままブラックの攻撃を受け流しつつ、回避しようとする。

 

 放たれるブラックの右拳を右手で受け、自分の左手で相手の右手首外側を押して自分の右側面に流しながら身を相手の右側面へと翻し、遠心力を加えた右の肘を放つ。

 

 するとブラックは見事なステップをその場で刻んで、まるで舞を舞うかのように踏み込んだ勢いを消してくるりと身を翻し、ゼノの右肘を顔の前に置いた左手で受ける。

 

 同時、強烈な左膝がゼノの右脇腹に突き刺さっている。

 

「ぐ…!」

 

 前のめりになりながら後方へ下がるゼノの顔に向けてブラックの強烈な左ハイキックが突き刺さり、後方へ吹き飛ばした。

 

 スピードもパワーもブラックの方が上なのだ。

 

 加えてザマスそのものでもあるブラックにとって、ゼノの動きは手に取る様に分かる。

 

 背中から廃墟のビルへと叩き込まれたゼノを見て、ブラックはニヤリと笑い掲げた蹴り脚をゆっくりと地面に戻す。

 

「理解したか? お前では私を倒せないことがな。さあ、大人しく私と共に来るのだ。ゼノよ」

 

 左手をゆっくりとゼノの叩き込まれたビルに向けて差し伸べる。

 

「貴様も神ならば、私と共にその責務を果たせ…!!」

 

 廃墟のビルを金色の炎が吹き飛ばし、中からゆっくりと赤い羽織を靡かせてゴクウゼノが現れた。

 

 口の端から血を流しながらも冷徹な表情でブラックを見据えている。

 

「この美しい世界を己の欲で汚し、滅ぼそうとしている事に気づきもしない人間どもを皆殺しにするのだ!!!」

 

 ゆっくりとこちらに向かってゼノは歩いて来る。

 

 ブラックはゼノの瞳を見つめながら、更に続ける。

 

「孫悟空の魂などに惑わされるな!! お前も私ならば、真の正義のために闘え!!!」

 

 ゼノは何も言わない。

 

 ただ静かに身に纏う金色のオーラを天に向かって噴き上がらせる。

 

 ブラックの言葉を無言で拒絶するかのように。

 

ーーーーー

 

 離れた位置からブルマ達が戸惑ったように見ている。

 

「ブラック…! アイツ、ゼノ君に拘ってる? ゼノ君が自分と同じザマスだから?」

 

「おそらくブラックとなったザマスには、自分の考えを肯定してくれる者が居なかったのでしょう。だから、違う世界の自分に拘っているのだと推測できます」

 

「それじゃ、プリカさん。ブラックは仲間欲しさに異世界に渡って来たってことなの?」

 

 ブルマの問いかけにプリカは首を横に振った。

 

「多分、この世界に来た理由としては”ビルス様がいない”世界であり、悟空さん達のような強者が亡くなられている世界。トランクスさんとブルマさんーー時空を超える罪を犯した人間がいる世界。そして異なる自分が居る世界は、ブラックにとって好都合だったのではないでしょうか」

 

「好都合ってーーー」

 

「自分の考えが正しいと言えるための条件が整った世界。そして、自分の理を完璧に浸透させることができる世界だと」 

 

 プリカは言う。

 

 真実、人間の罪を裁くために神となったのならば、時代や世界を選ぶ必要はない。

 

 孫悟空の肉体を得る必要もないのだと。

 

 ザマスの考えが正しいのであれば、誰もザマスに異を唱えはしない。

 

 けれど、現実は違ったのだ。

 

 誰一人、ザマスの考えに頷くものは居なかった。

 

 だからザマスは、神を滅ぼした。

 

 神を滅ぼせるであろう力を持つ孫悟空の肉体。

 

 神を滅ぼすことができる未来次元の世界。

 

 そして、滅ぼすに値する罪を行った者がいる世界。

 

「…だから、ブラックは私たちの世界に来たっていうの…!」

 

「推測ですが、ブラックの行動を見るにそう思えました。ゼノさんに拘るのも”自分”だから、でしょう。ブラックは”自分”にだけは否定されることを恐れています。たとえ、敵対することになろうとも”自分”のことはある程度は認めているはずです。だからーー」

 

「だから、ゼノ君を仲間にしようとしてるってわけ。何よ、罪深い人間を滅ぼすなんて大言を言ってるけど、要は単なる根暗で独りぼっちなガキの発想じゃないの!」

 

 吐き捨てるブルマにザンギャも冷ややかな視線をブラックに向けて告げる。

 

「ホント、ナルシストって部分ならウチのターレスもそこそこだけど。ブラックって奴のは気持ちが悪いって感情しか浮かばないわね」

 

 ザンギャの隣からヤジロベーが声を上げた。

 

「”自分”以外を認めねえんじゃ、しょうがねえでしょう。ありゃ、自分の中だけで物事を決めちまってんだぎゃあ」

 

「ブルマの言うとおり、ただの根暗なクソガキが孫悟空ってヤツの肉体と力を得てしまった。クソガキなら、殴って躾ければ済む話だけど、あんな強力な力を持っているヤツには無理ね」

 

「今更、力でねじ伏せられた程度で変わるわきゃねえでしょう! ありゃ、完全に性根がねじ曲がっとるんだぎゃあ!!」

 

「確かにね」

 

 ヤジロベーの言葉にブルマとザンギャが頷く中、プリカは幼い兄妹を左右の腕に抱いてジッと闘いを見つめる。

 

 ハルとマキの兄妹はブルマ達の言葉にも目を向けず、ただジッとブラックと戦うゼノを見ていた。

 

ーーーー

 

 拳を握りしめ、左手を顔の横に置いて前に突き出し、右拳を握って腰に置くゼノ。

 

 これにブラックが不快そうな表情になると同時、一気にゼノの懐に跳び込んだ。

 

 右拳を握ってゼノの顔に突き出す。

 

 ブラックの拳はゼノの左手内側によってゼノの右側面に流される。

 

 ゼノは流すと同時にブラックの放った拳の外側を摺り足で移動しながら舞を舞う様に側面に回り込んで拳を握る。

 

 ブラックは、当然その動きを読んでおり自分の右ボディに放たれる拳を左手で受け止め、踏み込んだ足を摺り足の軸に利用してコンパスのように体勢をゼノの正面に向かい合うように立ち、止めた拳を払って左拳を握った。 

 

 絶妙なタイミングと勢いで放たれた左ストレート。

 

「! がっ!?」

 

 だが、ゼノの顔を捉えるはずだった左ストレートは空を切る。

 

 代わりにブラックの顎が跳ね上がった。

 

 直線的な孫悟空の動きに対し、ザマスの動きは円の動きだ。

 

 側面に回り込むようにして、攻撃を受け流しながら反撃する。

 

 だからブラックは、側面に回り込んできたゼノに対して拳を置いておくだけでカウンターを取れるはずだった。

 

 相手も自分だから読むことはできるかもしれないが、自分の方が反応速度も身体能力も上だ。

 

 万が一、完全にお互いに読み切ったとしても相打ちならば、ブラックの方が有利だ。

 

 そのはずだったのに、ブラックの拳は空を切った。

 

「な、何故だ!?」

 

 スピードもパワーも自分の方が圧倒的に上だと言うのに。

 

 孫悟空の動きも、ザマスの動きも読めると言うのに。

 

 事実、先ほどまでブラックはゼノの動きを上回っていた。 

 

 この時代の孫悟空の肉体をベースにしたゼノの動きなど、大した事はない。

 

 それでもブラックの攻撃は空を切り、ゼノの拳が打ち込まれた。

 

「やっと体が温まって来たぜ」

 

 後方へのけ反ったブラックに対し、不敵な笑みで笑いかけるゼノ。

 

 首を鳴らしながら、拳を握って構える。

 

 これにブラックは鋭く瞳を細めると、同時。

 

 両者はその場から高速移動で姿を消す。

 

 ぶつかり合っては離れ、離れてはまたぶつかり合う。

 

 天と地を所狭しと駆け回る両者の攻防。

 

 拳と蹴りがぶつかり合い、衝撃波で廃墟のビルが崩れていく。

 

 しかし後方にのけ反ったのはブラック。

 

「お、おのれ…!!」

 

 拳を握って殴りこむブラックに対し、ゼノは静かに前に出した左手で拳を受けるやまるで接地した部分を軸にしてコンパスで円を描くように相手の側面に体勢を変えないまま移動する。

 

 ブラックも心得たもので、出した拳を引っ込めながら軸足を左右それぞれに移動させながら円を描くように自分も摺り足で移動しながら拳を握って放つ。

 

 圧倒的なスピードとパワーで敵を押し込む直線的な悟空の拳と、相手の攻撃を見切って円の動きから攻撃をするザマスの拳。

 

 ブラックもまた悟空の肉体を使いこなせるようになって、それぞれの動きを咄嗟に出せるようになっている。

 

 だがーー。

 

 合わせたゼノの拳は、ブラックの拳を軸にして手首を曲げ、流れるように手首の内側に入り込むと蛇のように腕に纏わりつき、気が付けばゼノの脇に抱えられるようにして挟まれて、そのまますれ違いざまに後方へ投げ飛ばされた。

 

 自分の踏み込んだ勢いと拳を放った勢いをそのまま利用して、ゼノは拳を打ち込むと同時、手首を和らげた。

 

 剛の拳に対し、柔の投げを見舞ったのだ。

 

 咄嗟にブラックは投げ飛ばされた勢いを気を高めて両足を地面にこすりつけて制止させて振り返る。

 

 その目の前にゼノが踏み込んで来ている。

 

「なんだと!?」

 

 強烈な膝蹴りがまともにブラックの顔面に入り、首が後方へのけ反る。

 

 高速移動で背後に回ったゼノは、右上段回し蹴りでブラックの背中を天高く蹴り上げる。

 

 強烈なラッシュが繰り出された。

 

 目の前に迫る右拳をブラックは咄嗟に掴み止めようと左手を前に出す。

 

 瞬間だった。

 

 拳が掌に接触する寸前にゼノは拳を解いてブラックの手首をつかんだ。

 

「!?」

 

 正面から拳が来ると踏ん張っていたブラックの腕がくいっと簡単に腕を円の動きで上に持ち上げられ、同時に左拳が腹に突き刺さっている。

 

「ぐぅお!?」

 

 前のめりになるブラックの心臓の前に先ほど自分の腕を持ち上げたゼノの右手が突き出され、至近距離から拳打を放たれる。

 

 拳が肉体にのめり込んで凹み、強烈な痛みにブラックの動きが止まると同時、ゼノが気を高めて叫んだ。

 

「うぉおおおりゃぁああああっ!!!」

 

 瞬間、炎のような激しい連撃がブラックの全身に叩き込まれる。

 

 超龍撃拳ーー孫悟空の連撃である。

 

 右ストレートを始動に使い、あらゆる拳と蹴りを全身に叩き込む。

 

 叩き込まれた方は、慣性の法則に反比例して拳に吸い寄せられるように肉体がその場から動かない。

 

 止めの右上段蹴りが胸に決まったことで、ブラックの肉体は慣性の法則を思い出したように後方へアーチを描いて吹き飛ぶ。

 

 頭で考えていない。

 

 今の攻防。

 

 瞬間的にゼノは、自分ができることを相手の構えを見ただけで判断し、敵の動きを予測したうえで叩き込んだのだ。

 

 孫悟空がブラックとまともに戦っても勝てないと判断し、フルパワーの特攻で自分の土俵に上げたのに対して、ゼノは相手の土俵の上で孫悟空の動きを取り入れて打ち勝った。

 

 肉弾戦でゼノは、ブラックに対して圧倒的な優位を手にしたのだ。

 

 これまでブラックは、孫悟空の動きを完全に取り込めていなかった。

 

 だから、悟空の動きとザマスの動きを完全に使えるゼノに優位に立たれていた。

 

 だが、今のブラックは悟空とザマスの技を完全に使えるようになっていた。

 

 これに対抗するため、ゼノが出したのが孫悟空の思考とザマスの思考の完全な融合である。

 

 ザマスならば何ができ、孫悟空ならば何ができるか、今のゼノは相手の動きを見ただけでそれを頭の中に思い描き実行できる。

 

 正に戦闘センスの塊そのものだ。

 

 ブラックは背中から地面に叩きつけられた。

 

ーーーー

 

 プリカが目を見開いてゼノにつぶやく。

 

「し、信じられない…! 自分を圧倒的に凌駕する戦闘力の相手に対して、真っ向から闘って優位に立つなんて…! 彼には恐れという感情が無いの?」

 

 その言葉にブルマがニコリと歳に似合わぬ美しい笑みを浮かべて告げた。

 

「…当たり前じゃない。どんなにヤバい状況だって何とかしてみせる。それが、孫君ーー孫悟空なんだから!!」

 

 ヤジロベーがそれに頷く。

 

「どんなにヤバくなっても逃げりゃあしねえ。逃げりゃあいいのによぉ、孫のバッキャロ」

 

「……なるほどね。確かに、あの時のターレスに似てる」

 

 ザンギャの方はゼノの姿に自分の想い人を重ねていた。

 

 あの時、自分が止めようとするも決して止まらなかった孫悟空というサイヤ人との闘いを望んだターレスを。

 

 そして皆が見つめる中、ついにゼノとブラックの決着の時が来た。

 

ーーーー

 

 一際、強大な爆発。

 

「……おのれ。おのれぇええええっ!!!」

 

 絶叫と共に金色のオーラが天高く昇り、薄紅色の緩やかな炎と化した。

 

 瞬間、ブラックの戦闘力が一気に高まる。

 

 金色の髪は薄紅色に、翡翠の瞳は灰色に変化した。

 

 超サイヤ人ロゼーーブラックの意地と誇りが、再び彼をこの姿へと変化させたのだ。

 

「! フ、フフフフハハハハハ!!!」

 

 ブラックは己が超サイヤ人ロゼに変身できたことに気付き高笑い始めた。

 

 これで誰にも自分は負けるはずがないと確信したのだ。

 

ーーーー

 

 ヤジロベーが思い切り叫ぶ。

 

「嘘だぁ!! まぁだ、あんにゃろの体力は戻ってねえぎゃあ!! なんで変身できてんでしょう!!!」

 

「知るわけないわよ!! ブラックのヤツ、一気に気を高めた!!」

 

 ザンギャが叫ぶ横でジッとプリカはブラックを見据えた。

 

「ーー超サイヤ人の感情の源。純粋な怒りと悲しみが、ブラックに力を…!! ゼノ様!!!」

 

 超サイヤ人ロゼに対して構えを取るゼノに対して、プリカが制止の声を上げる。

 

「無理よ、孫君!! 超サイヤ人のままじゃ、ソイツにはブラックには勝てない!! 逃げて、孫君!!!」

 

 隣のブルマも必死に叫ぶ中、静かに幼い兄妹はゼノを見据えている。

 

「兄ちゃん…!」

 

「ゼノお兄ちゃん」

 

 二人は静かにつぶやいた。

 

「「ブラックにーー勝って!!」」

 

ーーーー

 

 超サイヤ人ロゼ。

 

 超サイヤ人ゴッドの力を持ったサイヤ人の超サイヤ人が神の魂を持つことにより変身できる姿。

 

 その圧倒的な力は破壊神のレベルにまで手が届くと言われている。

 

 それほどの力を人類抹殺のためだけに使う男ーーゴクウブラック。

 

「…ゼノよ、これが神の力だ。この力を前にして、まだ私に刃向かうのか?」

 

 ゼノは静かに金色のオーラを身に纏い、腰を落として構えを取る。

 

 一歩も退くことなく、ゼノは真っ直ぐに告げた。

 

「私は、貴様だけは絶対に許さない」

 

「このーー愚か者がぁああああ!!!」

 

 再び、同時に高速移動で姿を消す両者。

 

 姿は見えず、衝撃波が辺りに次々と響き渡る中、後方へのけ反ったゼノが姿を現す。

 

「…く!!」

 

 首をねじ切らんばかりに後方へ吹き飛ばしながらも、肉体はブラックを向き、見開かれた翡翠の瞳はブラックを睨みつけている。

 

 その正面にブラックが右手から光刃を生み出して唐竹に振り下ろした。

 

 ゼノはそれを両手で白刃取りをしてみせた。

 

 一際吹き荒れる薄紅と金色のオーラ。

 

「貴様が! 貴様が私に勝つなど!! 無理なんだぁあああああああ!!!!」

 

「……ぐぅっ!! 無理だと、分かっていても…!! やらなければ、成らない時が…!!!」

 

 目の前に迫る刃に歯を食いしばって耐えるゼノ。

 

 自分が一気に優位に立ったことで笑うブラック。

 

 同時、ゼノの耳に声が聞こえた。

 

ーー ブラックに勝って!! ーー

 

 ゼノの目が見開かれ、翡翠に黒の瞳孔が現れる。

 

 同時、金色の髪がより濃い黄金へと変化して身に纏うオーラが激しい炎のように吹き荒れるものになる。

 

「無理だと分かっていても! やんなきゃ成んねえ時だって!! あるんだぁああああああ!!!」

 

 黄金のオーラが天高く突き上がり光の柱となる。

 

 同時、白刃取りをしていたゼノの両手から溢れんばかりの蒼銀の光が放たれる。

 

 薄紅色の光刃は蒼銀の光によって相殺ーー掻き消えた。

 

「ーーな!? バカな!!」

 

 ロゼ(神)の刃がブルー(人)の光に消されたことに狼狽えるブラック。

 

 その隙をゼノは見逃さない。

 

 拳を握りしめ、ブラックの作り出したモノと同じ色の炎を纏わせる。

 

 そうーー超サイヤ人ロゼの炎を。

 

「貴様のーー負けだぁああああああ!!!」

 

 大地を踏みしめ、強烈な神の炎を纏う龍の拳がブラックの顔面を射抜いた。

 

「ぐわぁあああああああっ!!!」

 

 悲鳴を上げながら後方へ吹き飛ぶブラック。

 

 ゼノの振り切った拳から金色の龍が軌跡を描いて現れ、ブラックを廃墟のビルへと叩き込んで爆発した。

 

ーーーー

 

 ヤジロベーが思わず叫ぶ。

 

「孫! やったぎゃあ!!!」

 

「す、凄い! 絶対、負けると思ったのに!!」

 

 ザンギャも頷きながら思わず拳を握る。

 

 ブルマがニヤリと笑って叫んだ。

 

「やったわね、孫君!!!」

 

 そんな彼女らを置いてプリカは静かに瞳を鋭く細めた。

 

「いいえ、まだです!!」

 

 プリカの叫びと同時、猛り狂う黄金の爆発の中から薄紅色の炎が割いて現れる。

 

ーーーー

 

 立ち上がるブラック。

 

 超サイヤ人ロゼ。

 

 満身創痍でありながら、それでも闘うことを止めようとしない。

 

「ゼノーー! 貴様だけは、貴様にだけは、負けてなるモノか…!! 孫悟空にも! ザマスとしても!! 貴様だけには、負けてなるモノかあああああ!!!」

 

 強烈な気が猛り狂う。

 

 これにゼノは口許だけを緩ませてクールに笑った。

 

「…タフな野郎だ。これ以上は、オレもマズイってのによ…!!」

 

 真・超サイヤ人に変身したゼノもまた、己の肉体の悲鳴を感じている。

 

 フルパワーで戦えるのも、後数分だろう。

 

 天高く舞い上がり、ブラックは両手を前方に突き出してから右腰に置いてたわめる。

 

「避けれるものならば、避けてみろ!! 貴様は無事でも、貴様の後ろでこちらを覗き見る薄汚い人間どもは粉々だぁあああ!!!」

 

「…野郎。気付いてやがったか…! ……しょうがねえな」

 

 舌打ちしながら呟くゼノ。

 

 ゆっくりと両の拳を握ると右に薄紅色の炎を左に蒼銀色の炎を纏わせる。

 

 一際強く握りこむと炎が散り、黄金のオーラに吸収された。

 

 これにニヤリとゼノは笑い、ブラックを見上げる。

 

「ーー決めようぜ、ブラック!!」

 

 両手首を上下に合わせて突き出した後、右腰においてたわめる。

 

 蒼白に光り輝く宝石のような球を練り上げるゴクウゼノ。

 

 対するブラックは、薄紅と紫が入り混じった禍々しくも美しい光玉を練り上げている。

 

 お互いの気が高まる瞬間だったーー。

 

 ブラックの頭上から黄金の雷が降り注いだのだ。

 

 黄金の雷はブラックの肉体に纏わりつき、薄紅色のオーラを黄金に染めた。

 

 その事実にゼノは目を見開く。

 

 ブラックの薄紅色の髪が黄金に燃え、灰色の瞳は黒の瞳孔が現れた翡翠眼に変わる。

 

「真・超サイヤ人…!! だけど、なんでだ? ブラックは、サイヤ人の魂を持ってねえ。ザマスの力が無けりゃオレのように真・超サイヤ人に変身できねえはずだ…!! ……まさか」

 

 瞳を細めてゼノは真・超サイヤ人に変身したブラックを見据える。

 

 ブラックの練り上げていた光の球は強烈な蒼と黒に限りなく近い紫の光を放つものへ変化している。

 

ーーーー

 

 この現象にブルマがプリカを振り向いた。

 

「プリカさん、これって!!」

 

「…悟空さん? どうして、ブラックに殺された時空のあなたが。この世界に? ブラックに?」

 

 目を見開きながら、プリカがつぶやくのを聞いてブルマは全てを悟った。

 

 同時、ブラックを振り仰いで絶叫する。

 

「な、何やってんのよ! 孫君のバァカァアアアアアア!!!」

 

ーーーー

 

 ゼノは静かに口許を緩めてクールに笑って告げた。

 

「どうやら、間違いないみたいだな。どういうつもりか知らねえが、ソイツに手を貸すんなら容赦しねえ。遠慮なくぶっ倒させてもらうぞ!!!」

 

 愉快気なゼノに反比例するように不快そうにブラックは告げる。

 

「何を訳の分からんことを…! これで終わりだ、ゼノ!!」 

 

 どうやらブラックは自分が真・超サイヤ人に変身したことを自覚していないようだった。

 

 これにニヤリとゼノも返す。

 

「…気にすんなよ。だけど、これで貴様に負けれねえ理由が一個増えたぜ。俺(孫悟空)もなぁ!!」

 

 極大にまで高められる両者の力。

 

 無限に上昇する力を爆発する寸前まで溜めて、両者はついに目を見開いた。

 

「この美しき世界のために、薄汚い人間どもと共に滅びろ!! ゼノォオオオオ!!!!」

 

「勝つのは、オレだぁあああああ!!!」

 

 放たれる両者の極大の光。

 

 蒼と蒼の光線が互いの中央でぶつかり合った。

 

「「かめはめ波ぁああああああっ!!!」」

 

 神の気を吸収して放たれた両者の渾身の一撃は、強烈な力の余波を生みながらぶつかり合う。

 

 両者の光は全くの互角。

 

 寸分たがわず、お互いの力が完全に押し合って止まっている。

 

「…くそ。ブラックが超サイヤ人ロゼのままなら、勝てたんだけどなぁ…!!」

 

 言いながらも笑みを浮かべているゼノ。

 

 対するブラックは憎しみの表情でゼノを睨みつけている。

 

 ザマスでもありながら、自分を完全に否定したゼノという存在をブラックは憎んでいる。

 

 この世界のザマスは、惑星サイヤの力を得ることで考えを改めた。

 

 しかし、自分の考えを否定はしなかった。

 

 否定したのはーーゼノだけだ。

 

「ゼノ、貴様だけは私のこの手で倒す!!」

 

ーー どうした? オメエの力ぁ、こんなもんか? オラの体奪っといて、そんな程度の力じゃあアイツにゃ勝てねえぜ ーー

 

 そんな声が、ブラックの頭の中に響いた。

 

 思わず目の前のゼノを睨みつける。

 

「孫悟空…! 貴様さえ、貴様さえ居なければ…!!」

 

ーー へっ。そんなんじゃ、オメエはあっちのザマス様やオラに勝てねえよ ーー

 

「黙れェえええ!! 孫悟空! ゼノとなった私をたぶらかした貴様だけは、絶対に許さんぞぉおおお!!!」

 

 力が一気に噴き上がる。

 

 光がさらに増した。

 

ーー そうだ。やりゃあできんじゃねえか ーー

 

 ゼノに向かってブラックの光が押し込まれていく。

 

ーー 悪りぃな、ブルマ。オラも知りてぇんだよ。オラ達が、どんだけ強くなれんのか…! ゼノや別の世界のオラを見てっとよ。ジッとしてらんねぇんだ。コイツがとんでもねえ悪党でも、オラは知りてえ! ーー

 

 ゼノは自分に押し込まれる力を感じ、その分だけ力を引き上げる。

 

「…へっ。やっぱ、そういうことかよ。なら尚の事、オレは負けねえ!!」

 

 押し込まれていた光を押し返すゼノ。

 

 光で押し潰そうとするブラック。

 

 両者は一歩も譲らない。

 

「私の勝ちだ、孫悟空ぅうううう!!!」

 

「貴様の負けだ、孫悟空ぅううう!!!」

 

 一際、強大な爆発が巻き起こり、二つのかめはめ波は相殺した。

 

 強大な力と力のぶつかり合いは、両者の黄金の炎をかき消す。

 

 黒髪に戻り、力の全てを使い果たして片膝を付くゼノ。

 

 ブラックに至っては、空を飛ぶこともままならずに地面に着地し片膝を付いた。

 

 互いに肩で息をしながら、睨み合う。

 

 強烈な脱力感と眠気が両者を襲うも、ゼノは気合いでねじ伏せて立ち上がる。

 

「どうした!? オレ達の勝負は、此処からだろうがぁああああ!!!」

 

 燃え滾るサイヤの魂がゼノの喉から咆哮する。

 

 同時にブラックも立ち上がった。

 

「舐めるなぁあああ!!!」

 

 互いに相手に向かって駆け、拳を握って顔面に放り込む。

 

 交互にのけ反る両者の顏。

 

 意地と気合がぶつかり合い、満身創痍の両者の肉体を更に動かす。

 

 一撃を放つ度に、打撃を受ける度に揺れる互いの膝と脚。

 

 押せば倒れるような肉体を立たせているのは、強烈なまでの戦士の意地と神の誇り。

 

 互いの右ストレートが顔を射抜き、顔を後ろにのけ反らせた後、前のめりになって踏ん張る。

 

 互いに肩で息をしながら、ゼノとブラックは互いの顔を睨みつける。

 

「はぁっ…はぁっ…! な!?」

 

 ゼノが目を見開く先。

 

 ブラックが天に逆立つ黄金の髪に翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳へと変化した。

 

「き、貴様の……、負けだ!!」

 

 右拳を握るブラックにゼノも目を見開いて黄金の逆立つ髪に翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳に変わる。

 

「ーーいいや。オレが、勝つ!!」 

 

 ゼノも右の拳を握った。

 

 最後の一撃を互いに振りかぶり、同時に踏み込む。

 

「「うぉおおおおおおおおっ!!!」」

 

 鈍い音が鳴り響き、互いの肉体が後方へ吹き飛んだ。

 

 背中から地面に叩きつけられる両者。

 

 仰向けになったまま、ゼノとブラックは黒髪黒目に戻る。

 

 同時、互いの力の余波が爆発して土煙を吹き上げた。

 

 ブルマ達が目を見開く中、ゆっくりと土煙の中で身を起こし立ち上がる人影が一つ。

 

「……はぁっ、はぁっ」

 

 満身創痍でありながらも、地面に両足を叩きつけるようにして立っているのは漆黒の道着に赤い羽織、水色の帯を腰に巻いた孫悟空。

 

 ゴクウゼノだった。

 

 ブルマ、プリカ、ヤジロベー、ザンギャ、ハルとマキの兄妹が手放しで歓声を上げる。

 

 そんな中、静かにゼノは告げた。

 

「終わりだ、ブラック。私のーー勝ちだ」

 

 告げられたゴクウブラックは、仰向けに倒れた姿勢のままゼノを睨みつける。

 

「お、おのれ…! ゼノ…!!」

 

 忌々し気に吐き捨てるブラックを見下してゼノは告げた。

 

「約束だ。私に手を貸してもらうぞ、ブラック」

 

「……っ!!」

 

 表情を歪めるブラックだが、瞳を細めると応えた。

 

「良いだろう。この場は私に勝った貴様の言うとおりにしてやるさ。もっとも、ザマスを倒した後は決着を付けてやるがな」

 

「…望むところだ。私も、お前に勝った気がしてないんでな」

 

 ゼノもまた再戦をハッキリと告げる。

 

 お互いにこの勝負の決着に納得がいっていないのだ。

 

 そんな彼ら二人の戦士の前に、何処からか手を叩く音。

 

 拍手が鳴り響く。

 

 ゼノとブラックが同時に手を叩く音の方に目をやると、長身に細身の肉体をもった長い黒髪の男が立っていた。

 

「ーーいい闘いだった。俺が究極の存在であることを証明するには、丁度良い敵だと認めよう。ゴクウゼノにゴクウブラック」

 

 目を見開くゼノとブラックの前に男は静かに名乗った。

 

「俺は、究極の人造人間・超17号だ。お前達を倒し、俺こそが史上最強の存在であると証明してやる。真・超サイヤ人どもーー!!」

 

 激しい闘いを終え、満身創痍となって決着のついたゼノとブラック。

 

 彼らの前に現れたのは、未来時空とはまた別の未来の存在。

 

 はたして、彼らは世界を守り抜くことができるのだろうか?

 





次回もお楽しみに(*^^*)

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