一方、ザマスの下にも争いの火種が舞い降りていた。
薄暗い廃墟の街を、黄金を超えて白金となった輝きが照らし出す。
神々しささえも感じる白金色の光に、幼い妹マキは手を胸の前で祈るように組んでいた。
「ゼノお兄ちゃん、神様みたい……!」
「う、うん。ブラックと合体しちゃったけど。兄ちゃん、大丈夫かな?」
兄はジッと二人が合体して一人となった孫悟空・デュオを見つめている。
彼の肩を後ろから抱いたのはブルマだった。
「信じるしかないわ。ゼノ君をーー」
見つめる彼女らの向こうで、デュオと超17号が睨み合っている。
ーーーー
超17号がデュオを見下ろしながら、告げた。
「ゼノとブラックと言う二人の孫悟空が合体してデュオ、か。奇遇だな、俺も人造人間とヘルファイターと言う二人の17号が合体したマシンミュータントだ」
「……」
冷酷な笑みを浮かべる超17号に対し、デュオはポーカーフェイスのまま相手を見つめる。
「それにしても、俺を哀れだと言ったな? 笑わせるな。俺は人間の心を捨てることで甘さを無くし、最強の存在に生まれ変わったのだ」
両手を広げ、ニヤリとする超17号。
デュオは淡々と告げた。
「…本当にそうか?」
「なんだと?」
聞かれた当の超17号は、苛立ちを露わにした表情で問い返す。
「…お前が本当に人間の心を捨てたんなら、クリリンを義兄(あに)とは呼ばないだろ?」
真剣な表情で低く静かに問いかけるデュオの声に、超17号は目を見開いて叫んだ。
「……黙れ。俺は、生まれ変わった。最強の存在になるために、妻も子も。姉も義兄も。家族を捨てたんだ!!」
「捨てたんなら、何故こだわってるんだ? 最強であることに」
デュオの問いは、鋭い刃のように超17号の心を斬りつけていた。
忌々しげに表情を歪める人造人間に構えを取り、真の超サイヤ人は告げた。
「お前は捨てられねえ。人間味を捨てるほど、お前は弱かねえだろ。17号」
「…黙れ。貴様に、何が分かる!?」
目を見開く超17号に、デュオはニヤリと笑って告げた。
「さあな?」
両者は同時に立っていた場所から気を弾かせて、中央で肘と肘をぶつけ合う。
白い光がぶつかり合った肘の間で弾け、周囲に衝撃波が広がっていく。
「…あ、あわわわっ! ちょい、孫!! おみやぁ、俺が逃げてねえうちになんてことすんでしょう!!!」
丸い体で地面を転がりながら、ヤジロベーの悲鳴が響いていた。
冷徹な真・超サイヤ人の瞳と冷淡な超17号の瞳が、至近距離で睨み合う。
互いに秒間、数十発の打撃を応酬しながら、白金と漆黒の線を幾筋も世界に描きながら移動。
超17号が高速移動で姿をかき消せば、デュオも負けじと高速移動で追いかける。
不気味に音だけが響き、衝撃波が辺りに吹き荒れる。
一際、強烈な拳と拳がぶつけ合った姿勢で動きを止めて、現れるデュオと超17号。
「…なるほど。今の貴様のパワーは俺の時空の孫悟空ーー超サイヤ人4に匹敵しているようだ。これが真の超サイヤ人という訳か」
冷静に告げる超17号に、デュオは淡々と告げた。
「果たしてパワーだけかな? 今の俺はゼノとブラックという二人の孫悟空の合体だ。つまりーー」
気が一気に引き上がり、超17号を簡単に弾き飛ばした。
目を見開く超17号を前に、冷徹な無表情から口元だけを歪めてデュオは笑う。
「…元の一人の時に比べて、二分の一のスピードで気が引き上がっていくのさ。無限になぁ!!」
「な!?」
つい数瞬前とは桁違いの気を放ちながら、自分に拳を打ち込んでくるデュオに超17号は目を見開く。
基本戦闘力が、自分の時空の孫悟空ーーすなわち超サイヤ人4に匹敵している上に、其処から更に無限に気を引き上げていくのだ。
それも尋常な膨れ上がり方ではない。
冷淡な人造人間の表情が、明らかに恐怖に歪んだ。
「2倍、いや3倍…! こいつ、コレが孫悟空か!?」
「どうするよ、17号? 今の俺に、出来ねえことなんか何にもねえぜ」
低く冷たい声でデュオはニヤリと笑った。
「…舐めるなよ。孫悟空!!」
拳を握って殴り返してくる超17号にデュオも応戦する。
互いに拳と拳をぶつけ合いながら、天高くに上昇。
高速移動で左右へ散りながら、ぶつかり合う両者の肉体。
逆立つ黄金の髪に翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳のデュオと、長い黒髪をオールバックにした長身痩躯の超17号。
螺旋を描きながら、両者は天頂から稲妻の如く地面に降り立ち、拳と蹴りを次々と繰り出し合う。
(こいつ、気だけじゃない! 上がったパワーやスピードもどんどんと馴染んでやがる!?)
目を見開きながら忌々しげに睨みつける超17号に、デュオは笑いかける。
「どうしたよ? お前の力は、こんなもんか? もっと本気を出せ!!」
「ソン、ゴクウゥウウウウ!!!」
互いに拳と拳を振りかぶり、中央でぶつけ合う。
両者の凄まじい一撃は、地面を掘り起こしてクレーターを作り上げながら爆発した。
強烈な超17号の右ハイキックを左腕で受け止めると同時に、右ストレートを打ち抜くデュオ。
身を翻して脇に見切り、返しの左ストレートを放つ17号。
クロスカウンター気味に放たれた一撃は、顔の前に置かれたデュオの左掌に掴み止められる。
「…貴様」
「実力が拮抗しているみたいだな? お互い、まともに当てられねえとは」
不敵な笑みで告げるデュオを、超17号は睨みつける。
「拮抗だと? 笑わせるなよ、孫悟空。究極にして最強の存在である俺が、誰かに並び立たれるなどということがあってたまるか!!」
放たれる右ストレートをデュオは左に見切って、右のストレートを交差するように顔に放つ。
超17号が、避けようと首を捻ると同時。
デュオの足元がまるで氷上を滑るように地を移動し、首を捻った超17号の顔の正面に拳が移動する。
咄嗟に左手を顔の前に置いて受け止める超17号。
上がり切ったパワーに受け止めた掌が痺れ、吸収するエネルギーよりも敵のパワーの上昇の方が速い。
(無限に高まり続ける気に溢れんばかりの力ーー! コイツが、真・超サイヤ人か!!)
相手のエネルギーを吸収しながらパワーを引き上げて超17号は凌いでいるが、このままではリミットに達する可能性があると焦り始めていた。
既に右肩の筋肉が頭のように膨れ上がり、はち切れそうになっている。
「まだパワーを引き上げられるというのか、このバケモノめが!!」
「…俺がバケモノ? 違う、俺は真のサイヤ人だ!!」
悪態を吐く超17号に向かって、デュオの宣言が響いた。
ーーーーーー
圧倒的な力と力のぶつかり合いは、ザンギャとプリカのような戦闘力を探れる者だけでなく。
一般人のブルマや子どものハルとマキにさえも何となく感じられる。
二人の闘いにブルマは目を見開いて呟いた。
「…人造人間? だけど、なんで?」
マキが呆然と、激しい闘いを繰り広げるデュオと超17号を見つめる。
「泣いてる? あの悪い人、泣いてるように見える」
「…うん。俺にも、そう見える」
妹の言葉に頷く兄のハルを見下ろして、ザンギャは肩をすくめる。
「どこが? 殺意満面じゃない、あの顔」
「……いいえ。ハル君やマキちゃんの言うとおりです。彼は世界の意思から作り出されているはずなのに。強い悲しみと憎しみを感じます。ーー自分自身を憎んで?」
ザンギャが目を丸くする横でブルマが告げた。
「…あいつは、この未来世界を滅茶苦茶にした人造人間。あいつのせいで、この世界は荒廃してしまったわ。だけどアイツは、トランクスが倒したはずよ。それにあんな人間らしい感情なんか無かったのに」
「…分からない。サイヤの意思は既に世界。全宇宙を包んでしまった。なのに、どうして生き残った人間を排除しないの? それだけじゃない。ザマスに作り出されたはずの人造人間が、どうして自分の感情を?」
プリカの瞳から見ても、これはおかしい。
かつてベジットを生み出した惑星の意思は、あの圧倒的な存在を完璧に操っていた。
それに対して今回は、ザマスの意思よりも自己の意思を優先している。
「全宇宙を取り込んだはずのザマスの力は、一惑星の力を遥かに凌駕しているはずなのに。ザマスは、敢えて支配をしていない?」
だが何のために。
そんな胸の内の声を聞きながら、プリカは超絶バトルを繰り広げる二人の戦士。
孫悟空・デュオと超17号を見つめた。
ーーーーーー
未来世界の地球。
灰色の雲と廃墟のビル街に覆われた黄昏の地球を、絶対の神となったザマスは見下ろしていた。
「悲しい光景だ。常世の世界を作り上げる為とはいえ、一度は滅ぼさねばならないとはな」
「己の業の深さを、ようやく理解したか? ザマス」
水晶から見える世界を覗き見るザマスに、黄緑色の肌をした老界王神・ゴワスが告げる。
これに微笑みを返しながらザマスは応えた。
「業ですか、確かに神々や人間の犯した罪を償うことを考えれば当然、業と言えるかもしれませんね。世界を浄化するために」
「……お前以外の神を全て滅ぼし、お前に都合の良い世界を作り上げ、破壊神と界王神の役割を別の姿で生み出したお前の分身にさせる、か。なんと恐ろしい」
怖気を隠そうともせずに告げるゴワスに、ザマスは微笑みを返した。
「別に私は、恐ろしいとは思いませんが? 我が心、我が魂の全てが世界と融合し、罪深き人間と神の一部となって管理されるのです。それこそ、岩や土と言った存在にまで我が存在する。この意に反する存在は自動的に消去される」
「全王様を待たずして世界を作り替えるつもりか」
「既に世界はブラックによって、第7宇宙の地球以外の全ての知的生命体が死に絶えている。知的生命体の魂を取り込み力に変える我が惑星の意志にとって、これほど都合の良い世界はありません」
両手を広げ、白金色のオーラを纏いながらザマスは力を引き上げていく。
まるで真・超サイヤ人のように気が無限に増大していく。
その姿にゴワスは畏怖に震えた。
「こ、これは……! この力は!!」
神としての次元が違う存在に変身したのだ。
世界そのものを包み込むほどに圧倒的な力の顕現。
「一星龍。ベビー。そして超17号」
力が満ち溢れた己の肉体を見下ろし、ザマスは笑った。
「奴らの可能性を取り込んだことで、私の基本戦闘力はいよいよ、惑星の意志が肉体としたベジットをも凌駕する存在に至った。サイヤ人達を現代の世界に弾き、最早私を止められる者は存在しない」
冷たいアイスブルーの瞳でゴワスを見つめ、ザマスは明後日の方を向いた。
ゴワスの瞳が見開かれ、恐怖に震える。
「ぜ、全王様……!」
そこには第7宇宙の界王神シンと付き人のキビトを伴った、青い肌の少年のような見た目の神がいた。
シンもキビトも畏れのあまり平伏し、ゴワスも自然と彼を前に膝をついている。
全王ーー全ての存在の王と言われる、全知全能の神である。
「これはこれは。ようこそ、我が神域へ。無能な神の長ーー全王よ」
その神を前に絶対神の名を自称する男ーーザマスは高らかに笑った。
「ーー君がザマス君? 僕のこと、呼んだ?」
全王は無表情のまま、静かにザマスに問いかけた。
ーーーー
話は少しさかのぼる。
界王神シンと付き人のキビトは、別時空の全王の館へと出向いていた。
「これはこれは、第7宇宙の界王神のシン様と付き人のキビトさん。お久し振りですね」
にこやかに彼らに向けて話すのは、全宇宙の中でも最強と名高い大神官である。
彼の存在にシンはひれ伏す。
「大神官様、やはりご無事でしたか」
優しげに頷く少年の姿をした遙か高位の神に、キビトは己の分を弁えながらも叫んだ。
「大神官様! 全12の宇宙の神と人間が皆殺しにされているのをご存じなのですか!?」
「キビト!」
「お答えください! 何故、ブラックなる者の暴挙を看過なされた!? 何故、ブラックの行為を裁いてくださらなかったのですか!!」
「やめなさい、キビト!!」
今にも掴みかかりそうなキビトを必死の形相で押さえるシン。
大神官はそれを気にする風でもなく、微笑みながら告げた。
「我々は中立の存在。戦うことは許されておりません故、ただ見届けるのみなのです」
これにキビトが押し黙ると、シンが横から告げた。
「大神官様、キビトの非礼をお詫びした上で私からも無礼を承知でお尋ねします。なぜ、全王様にもお伝えしなかったのですか?」
「ブラックなる者の言葉にも正しさを感じたから、ですよ」
大神官の言葉に思わず目を見開くシンとキビト。
「人間の醜さを彼は理解し、その全てを滅ぼそうとした。人間が居なければ世界は美しい。確かに、そのとおりですからね」
目を細めながら大神官は告げる。
「かつて宇宙は全部で18ありました。そのうち6つの宇宙が全王様に滅ぼされた。いずれも人間レベルが低かったためです」
「宇宙が滅ぼされる原因は人間にある、と?」
「そう。そして人間を管理する神々にも責任が所在するということです」
淡々と告げる大神官にシンは眦を鋭くする。
「もっとも、これは一側面を見た場合です。人間もまた神に近しい知的生命体となったことで、良きにも悪しきにも進化する。ですが、全王様にブラックのことをお伝えすれば、間違いなく世界は宇宙ごと消滅されるでしょう。既にこの世界は、手遅れなんです」
「惑星の意志と融合したザマスのことも、ご存じなのですね」
「もちろん。彼の力ならば、確かに全王様に消された後でも、取り込んだ宇宙を自分の分身として復活させることが可能でしょうね」
他人事のように告げる大神官に、シンは悲しげな表情に変わった。
既に未来世界の宇宙は、天使の長である大神官にさえも見捨てられているのだ。
「大神官様、全王様にお目通りさせていただけませんか?」
「かまいませんが、別時空の貴方が全王様の前に出れば事情を説明しなければなりません。全てを説明し終われば。あなた方はーー」
淡々と事実を述べる大神官に、シンも静かな表情で告げた。
「まだ滅びてはいない。諦めていない人間がいるんです。人間が諦めないのに神である私が諦めるわけにはいきません。たとえ、全王様や貴方が世界を見捨てたとしても!!」
そう強く告げたシンの前に、幼い少年のような姿の神ーー全王が現れた。
「! ぜ、全王様!?」
焦るシンとキビトの隣で大神官がニコリと迎える。
「これは全王様。いかがなされましたか?」
「あのね、大神官。話、聞いてたのね。ねえ、シン」
語りかけられ、覚悟を決めていたはずのシンは全身に冷や汗をかいて震えながらも、必死に歯を食いしばり、拳を握って全王を向いた。
「……なんでしょうか?」
震える小柄な界王神を背にかばいながら、キビトが前に出ようとする。
それを遮るように全王は静かに告げた。
「行こっか? ザマスが用があるなら僕に来いってムカつくこと言ってたんでしょ?」
「……え? え、ええ」
それだけを告げると、全王は無表情にシンの右手を掴んだ。
「で、では第7宇宙の界王神界に向かいます!」
「うん! 大神官、後は頼んだね」
全王の言葉に微笑みを返しながら頷く大神官を見た後、キビトと共にシンはザマスの待っている第7宇宙の界王神界に、全王を伴って瞬間移動したのであった。
ーーーー
全王を前にして震え上がる神々とは別に、絶対神ザマスは微笑みかけた。
「これはこれは、ようこそ無知にして無能なる神。全王よ」
「君、僕にケンカ売ってる? 消されたいの?」
首をかしげながら無邪気に問いかける全王に震え上がるゴワスとシン、キビト。
そんな中、ザマスだけはやはり淡々としていた。
「笑わせるな、全王。私を消す? 貴様ごとき無能が世界と一体となった我を消せると思うのか?」
「全宇宙ごと消しちゃえばいいんでしょ?」
言うと同時、両手から蒼銀の光の玉を作り出して、全王は告げた。
「消えちゃえーー!」
蒼銀の光が界王神界に行き渡り、世界へと広がっていく。
「ザマスゥウウウウウ!!!」
ゴワスの絶叫が響く中、キビトが無駄と知りながらも呆然としているシンをかばった。
光がすべてを飲み込んでいく。
そんな中、ザマスの背中に光輪が浮かび上がり、白金の光が蒼銀の光に食われる世界の中、一点のみ存在する。
光がすべてを消したとき、全王は目を細めた。
「……ふぅん。そういうことか」
光の中に消えたはずのゴワスも、シンもキビトも目を見開いている。
何もない空間に白金色の光の球が三つ、それがゴワス達を滅びから守っていた。
目の前には冷徹なアイスブルーの瞳を持った絶対神ザマスが立っている。
「見るがいい、全王よ。滅ぼすしか能のない貴様と作り出すことの出来る我の力の違いを!!」
両手を広げて、絶対神は己の身に纏う白金色の光を解き放った。
すると虹色のオーロラのような光だけを放つ何もない空間が漆黒の闇に染まり、無数の輝きを放つ星々が点在するようになる。
それだけではない。
ゴワス達の足元に先程まであった地面が復活したのだ。
空も、星も、海も、気も。
すべてが元通りに戻っていく。
滅ぼされた世界は滅ぼされたことを認識することもなく、淡々と元通りに復活した。
「…どうだ、全王よ。貴様にも滅ぼせぬ世界。これが常世の理だ」
周囲を見回しながら全王は静かに笑った。
「面白いね、君。世界の意思そのものになったんだ。じゃあ、何度目で滅びるのかな?」
「ククク。本当に愚かだな、全王よ。貴様が何度滅ぼそうと我が居る限り世界は滅びぬ。永遠の時を我と共に刻むのだ」
勝ち誇った笑みを浮かべるザマスに全王も告げた。
「滅びない存在は生きてない。そんなつまらないモノは消すだけだよーー」
「やってみろ! 絶対の神である我!! ザマスが貴様の無能を思い知らせてくれる!!!!」
強烈なパワーを引き上げて。
遥か遠き神の域。
界王神界にて、絶対の神と全知全能なる神による、消滅と再生の戦いが始まった。
ーーーー
一方、そんな次元の戦いなど認識できるはずもない人間。
トランクスとガーキンのチームは一旦、西の都に拠点を移していた。
ブルマが提案したブラックとの和解など、彼らの頭の中には無い。
とはいえ地球から遥かに離れた界王神界に打って出ることも出来ない今、敵に動きを悟られぬように拠点を移動させることしかない。
「すみません。ガーキンさんにもこちらに来て頂いて」
自分たちと行動を共にすることを選んでくれた真紅の道着のサイヤ人の戦士に、トランクスは頭を下げる。
彼はおどけた表情で鋭い人相を明るくして告げた。
「構わねえよ、プリカ様の命令でもあるし、向こうには悟空と神様の魂が合体したゼノも居るんだしな。それに俺も個人的にお前らの方が心配なんでね」
まるで大したことのないように告げるガーキンに、トランクスは本当に申し訳なさそうに頭を下げる。
自分たちの感情を優先した行動だったが、ガーキンはその意図を支持してくれている。
それが申し訳ないと同時に有難く、トランクスは何も言えない。
「そんなに何でもかんでも背負い込むなよ。お前だけが全ての責任を負わなきゃいけないわけじゃないんだからよ。ぶっ潰れちまうぞ」
「でも。俺の力じゃザマスは倒せない。それも分かってるんです。母さんの言うとおりブラックと協力できるならするべきじゃないか、そういう気持ちもある。でも俺には納得できない!!」
血を吐くようにトランクスは告げた。
「あいつは、母さんを殺そうとした。大勢の人間が俺の目の前でアイツに殺された!! そんな奴と手を組もうなんて、俺には!!!」
「間違ってねえよ、トランクス。そいつは、当たり前の感情だ」
「…ガーキンさん」
責められるのを承知で叫んだトランクスを、ガーキンは淡々と返す。
漆黒の瞳にはブラックへの怒りがはっきりと目に見えていた。
「あんな奴は、生かしておいたらいけねえ。俺も同感だ。たとえ奴の力が必要だったとしても、アイツが心を入れ替えるわけがねえ。それこそゼノみたいに悟空の魂と融合でもしない限り、俺は信じられないね」
「…ええ」
「信用できない味方は敵よりも質が悪い。お前の判断は間違ってねえよ、トランクス」
肩をポンと叩いて、ガーキンは彫りの深い顔をニッと歪めて笑った。
その言葉にトランクスは微笑みを返す。
そんな彼らをマイが静かに見守っていると、二人は同時に振り返った。
「! これは、ゼノさんとブラックが合体したのか!?」
「おいおい、ゼノの奴は何を考えて…っ!」
言葉の途中でガーキンは表情を鋭いものに変えるとトランクスに顔を向けた。
「トランクス、お前はみんなを連れて此処を離れろ!!」
それだけを告げてガーキンは一気に通路を駆け抜け、地上へと上がっていった。
「! ガーキンさん!?」
追いかけようとするマイの肩をトランクスが掴み止める。
マイがトランクスを振り返ると、彼は目を見開いて冷や汗を流しながら呟いた。
「なんだ? この邪悪な気は…!!」
その言葉にレジスタンスの面々は皆、絶望したような表情で呆然とした。
地上に駆け上ったガーキンの前に、二人の人間が姿を現した。
一人はリーゼントにした白銀の髪を持つ筋肉質の男。
もう一人は白い鎧のような体躯を持ち、胴体に七つの球を持った人型の龍。
「敵さんのお出ましってわけか…!」
ニヤリと笑うガーキンに白龍は邪悪な声で居丈高に告げた。
「ほう? サイヤ人か。お前如きが俺の邪魔をするつもりか?」
白龍の隣に立つリーゼントの男も笑う。
「サイヤ人ーー! 俺たちツフル人の贄になりに来たか…!!」
ガーキンは拳を握り、深紅の炎を足元から噴き立たせながら金色のオーラを纏う。
やや後方に伸びていた髪が天に向かって突き立ち、金色に変化した。
「かかって来やがれ、バケモノども! 別次元の悟空にやられた三下が、俺に勝てるわけねえだろ!!」
そんな真紅の青年に向かって、白き邪悪龍がゆっくりと一歩前に出た。
「では、楽しませてもらおうか? 惑星サイヤから来た戦士よ。邪悪龍の長たる一星龍が相手をしてやる」
「何が邪悪龍だ? 俺はサイヤの神龍ーー見せてやるぜ。この俺のーー炎の拳をなぁ!!」
青みがかった紫のオーラを纏う邪悪龍の長に向かって、真紅の炎を纏った超サイヤ人が挑みかかった。
次回も、お楽しみに(´ー`* ))))