同じ人間と神から生まれた戦士であるが、その在り方は正反対。
しかし、神ザマスの孫悟空への想いは……。
タイムマシン。
時間軸を移動することができる夢の乗り物だ。
未来の息子の為にと必死にセルの使ってきたタイムマシンを作り上げたブルマは、やつれた顔をむりやり明るくして、出発する悟飯、ターニッブ、バーダック、ターレスを迎えた。
周りにはクリリンを始めとした地球の戦士達や、自分達を瞬間移動で連れてきてくれた父の顔がある。
「悟飯くん、準備は出来てるわよ。時間座標を特定するのは悟飯くんとターレスなら出来るのよね?」
ブルマは二人を見回しながら告げると、ターレスが不遜な笑みを浮かべて応えた。
「当然だ。俺は今、完全に力を自分のものにしている。どんな座標軸だろうと割り出してやるさ。向こうには俺の女も居るのだからな」
物静かでありながら、何処か色気を漂わせるターレスにブルマは微かに呆れた表情になった後、悟飯を向く。
「大丈夫? お父さんと似て、自己中心的な人達ばかりみたいだけど」
「大丈夫です。お祖父さんもターニッブも居ますし。ターレスさんも、今回は協力してくれるでしょうから」
やけに自信ありげな悟飯の言葉にキョトンとした後、ブルマは強い笑みを浮かべて告げた。
「お願いね、悟飯くん。バーダックさん。ターニッブ。おっきい方のトランクスと未来の世界を頼んだわ」
悟飯は「はい」と力強く頷き、ターニッブも誠実に頷く横で、バーダックは不敵にして野性的な笑みを浮かべて応えた。
「心配するな、ブルマ。テメエと王子の息子も、未来世界とやらも。俺と孫の悟飯とターニッブが守り抜いてやらぁ。おまけにターレスも居るんだ。負けやしねえよ」
力強い言葉にブルマは静かに頭を下げた。
悟空が一歩前に出る。
「父ちゃん、悟飯、ターニッブ。未来を頼んだぜ!!」
三人はそれぞれ、悟空に応えた。
「任しとけ、カカロット!」
「行ってきます、父さん!」
「…任せてくれ」
自分の言葉に頷く三人を満足そうに見て笑う悟空。
彼は三人とは別の、もう一人のサイヤ人に顔を向けた。
「…ターレス」
「フンーー」
同じ顔をした二人のサイヤ人は、互いの顔を睨み合う。
「…ブラックやザマスを倒したら、今度はオラ達を倒しに来るんだよな?」
「そういうことだ。せいぜい、首を洗って待っていろ」
冷酷に笑うターレスを前に悟空がニヤリと不敵に笑うと同時、ターレスの顔を目掛け右ストレートを放つ。
ターレスは瞬きすらせずに、強烈な悟空の拳を眼前で掴み止める。
白と灰色のオーラが互いの身を包んで高まる。
「…今のオメエなら、必ず勝てる。だから、そん時を楽しみにしてるぜ」
「ああ。未来から帰ったら真っ先にボロ雑巾にしてやる。カカロットよ」
互いに不敵と邪悪な笑みを交わす。
こうして、悟飯達は悟空達に見送られながら未来に旅立った。
ーーーーーー
強烈な鈍い音を立てて、長い黒髪の男が首を後方へ吹き飛ばしながら、仰け反る。
目の前には黄金の髪を天に逆立たせ、翡翠に黒の瞳孔の瞳を持つ男。
人造人間・超17号と孫悟空・デュオ。
強烈な黄金のオーラを身に纏い、突っ込みながらラッシュを仕掛けるデュオ。
左右の鋭い拳は、超17号のガードの上に炸裂する。
超17号は完全に受けきるも、デュオが次々と目にも映らぬ打撃を連続で放ってくる。
「こいつ、ガードしていても御構い無しか!!」
吐き捨てながら紙一重で捌く超17号に対し、デュオは淡々とした表情で告げた。
「当たり前だ。相手がどんな体勢になろうが関係ない。ダメージが通れば、それでいい」
「舐めるなよ、孫悟空!!」
ラッシュの中、右ストレートを選んで紙一重でかわしながら超17号は強烈な右ストレートのカウンターを放つ。
孫悟空のデータは十二分に取れている。
敵の動きや癖をインプットすれば、予測することなど超17号のメインコンピューターならば問題ない。
「甘い」
しかし、攻撃がデュオに当たる寸前、軽く顔の前に置かれた左掌に拳を掴み止められる。
「なんだと!?」
眼を見開く超17号にデュオは、淡々と口の端だけを歪めて告げた。
「狙いが分かり易すぎる。貴様は相手の動きを読まずにデータとやらを優先して行動する癖があるみたいだな。折角のパワーもスピードも、狙いが読めてしまえば台無しだ」
ふざけるな、と叫びたくなるのを押さえて、超17号はデュオを睨み付ける。
脳内コンピュータで整理され、解析された敵の動きを予測して動いているというのに、それが読みやすいとはどういうことだ、と。
「俺は、神の魂とサイヤの魂が融合した究極の存在。今の俺に計算など通じはしない」
更に気が高まり、白金色の炎に黄金のスパークが纏わる。
デュオの髪は炎のように黄金に輝いて揺らぎ、翡翠に黒の瞳が現れた目は鋭く細められる。
「こ、コイツ? また気が上がりやがった…!!」
目を見開く超17号は、コンピュータで弾き出されたデータを基に孫悟空の動きを読む。
正面から踏み込んでボディに一撃、右足で顎を蹴り上げ、空中に吹き飛んだところを追撃するつもりだと。
強烈な踏み込み音と同時、デュオが右拳を繰り出してくる。
(データ通り、狙いは俺の左ボディ!)
超17号は放たれた拳をギリギリまで引き付けてボディをガードするように腕を構え、右拳でカウンターのストレートを放とうと準備していた。
だが、跳ね上がったのは超17号の顎。
「がっ!?」
見れば、直前までボディに放たれていた拳が、顎に軌道を変えて突き上げられていた。
垂直に伸び上がり、地面から上に引っこ抜かれたような姿勢で吹き飛ぶ。
咄嗟に追撃の右蹴り上げが来ると予測していた超17号は、顎の前に両腕を抱くようにして構える。
振り上がるデュオの右脚。
十字受けの構えは正面からの攻撃には強固。
顎を蹴り抜くことはできない。
だがーー。
「ぐはぁっ!?」
顎に放たれる蹴り上げのフォームから、右の上段回し蹴りに軌道が変わった。
直線的な線の動きが、円の動きに変化するのだ。
(孫悟空の動きじゃない!?)
地面に顔を叩きつけられ、クルクルと縦に体を回転させる超17号。
瞬間、デュオの慣性に矛盾するラッシューー超龍撃拳が放たれた。
無数の拳と蹴りの打撃が超17号の長身瘦躯の肉体に叩き込まれ、しかし連撃は慣性に真っ向から挑むように肉体をデュオに引き付けていく。
拳と蹴りが叩き込まれるたびに顔は仰け反るも、肉体が後方へ吹き飛ばされることはない。
強烈な連続打撃に血を吐く超17号。
その顔面をローリングソバットで蹴り抜いて吹き飛ばす。
此処でようやく超17号の肉体は慣性を思い出したように、大きくアーチを描いて天に舞い上がった。
「はぁ!!」
更にデュオは気合の声を上げながら左手を伸ばし、目に見えない気迫で超17号の背中を撃ち抜く。
悲鳴を上げる暇もなく、超17号は廃墟のビルに叩き込まれた。
「…先程、お前はオレを二人の孫悟空が合体した存在だと言ったが」
音を上げながら崩れる廃墟を静かに見据えて、デュオは続ける。
「一つ付け加えておく。オレは二柱の界王ザマスが合体した存在でもある、と。つまりお前の相手は四つの魂が合体した存在という訳だ」
淡々と告げるデュオの前に、長身瘦躯の超17号は歯軋りをしながら立ち上がって来た。
ダメージがある。
おまけに天井知らずのデュオの気が更に高まっている。
気を吸収しようにも力が肉体に溢れ返っており、これ以上は身体に馴染ませなければ吸収できない。
「心の力。別次元の俺(孫悟空)や奴と闘った男が振るう拳。惑星サイヤを知るゼノの記憶と、神の域に鍛え抜かれたブラックの肉体があってはじめて使える。相手の肉体の防御力に関係なく魂に直接響かせる拳。コイツがあって、真・超サイヤ人は完成する」
ニヤリと笑みを浮かべて、デュオは超17号に告げた。
「無限の気と心の力。この二つを併せ持った今の俺に、できないことなど何もない…!!」
「心の力、だと? 俺の次元の孫悟空でも、相手の防御力に関係なくダメージを与える拳なんか無かった。貴様はいったい、なんだ!?」
目を見開き、恐怖に震える人造人間を前に、デュオは高らかに告げた。
「お前の理解が及ばなくて当然だ。俺は、神。他の知的生命体を超越し、管理する存在(モノ)だ」
冷や汗を流しながら見上げる超17号を、デュオは淡々と見下ろしながら拳を握って構えた。
「この体と力をもってオレは世界を救う。全ての神以外のモノが安心して暮らせる世界を。だからーー超17号、そろそろ目を覚ませ!!」
強烈な咆哮を前に、超17号は目を見開く。
「な、なんだと? 目を覚ます?」
「神に及ばぬ知識はない。……クリリンの命を無駄にするな。地獄から生み出された奴に、人間の心を持ったお前が負けるなんて。オレは許さねえ」
冷淡だったデュオの口から、熱き魂のこもった声が響く。
優しさと強さを兼ね備えた最強のサイヤ人の声が。
途端に超17号の肉体は震えだす。
「だ、黙れ。俺はーー俺は最強の人造人間だ!! 今の俺こそが、最強の姿なんだ!! 俺は、今の俺を望んでるんだ!!!」
頭を振って否定する。
心の中に現れたざわめきに。
「超17号。お前は、ドクターゲロとドクターミューという二つの巨悪に逆らった。それは、お前の中に人の心があるからだ。温かな人間の心が!!」
神としての抑揚のない冷淡な話し方と、人としての熱き情のこもった叫び。
同じ声でありながら正反対の優しさを併せ持つ存在を前に、歯を食いしばって震える超17号。
デュオは神としての話し方で、人の情がこもった声で続ける。
「人の温かさを知ったお前が今更、悪党になれる訳がないのだ。お前は人の心を最初から持っていたのだからな。もう一人の17号よ。そやつの心を理解できぬのならばオレが、お前を切り捨てる!!」
「う、うるさい! うるさい!! 俺は俺だ!! 俺は究極の人造人間だぁああああ!!!!」
頭を左右に振りながら、両手を前に揃えて構える超17号。
その両手の先には、漆黒の雷を放つ光球が生まれていた。
「消してやる…!! 俺をたぶらかし、分裂させようとする者はみんな、消してやるぞ!!!」
「…どうやら、それしかないようだな。いいだろう、心無き者よ。貴様を消してやろう…! それが神の務め」
両手を右腰に置いて腰だめに構え、デュオは漆黒の雷を纏った青白い光の球を作り上げる。
「消え失せろ! 電撃地獄玉ぁああああ!!」
「ブラック・ゴッドかめはめ波ぁあああ!!」
両者の放った光は、片方は巨大な漆黒の光弾と化し。
もう片方は青く野太い光の線となって、互いに向かって押し合う。
「く、地獄の怨霊共の力を得た究極たる俺の力が通じないだと!?」
「怨念など、我という存在には無力」
言うと同時、デュオの手から放たれていた光が一層太くなり、漆黒の球を爆発させて消し飛ばした。
相殺されたのだ。
「な!?」
目を見開いた超17号の目の前に、デュオは瞬間移動で現れる。
「……終わりだ!!」
右手刀を構え、手先から蒼銀の光刃を抜いて超17号の胸元に突き刺した。
「ぐ、あああああ!?」
悲鳴を上げる超17号を冷淡に見下ろし、そのまま縦に斬り上げた。
真っ二つに切り裂かれた超17号の肉体は蒼銀の光に包み込まれて、二人の人影となる。
白と黒のTシャツを重ね着し、オレンジ色のスカーフを首に巻いて青いジーンズを履いた黒髪の青年。
「ば、馬鹿な!?」
ロングコートを着た同じ容姿の青年は、今にも消えそうな意識を繋ぎ止めて、デュオに向かって目を見開く。
「孫悟空。お前は……!」
二人の内、ロングコートを着た17号に向かってデュオはニヤリと不敵に笑いかけると、その腰を抱いた。
「これぞ、神技!!」
気を失う17号に向かって笑いかけ、こちらに凶悪な表情を見せるヘルファイター17号に振り返ると、デュオの笑みは邪悪で冷酷なサイヤ人そのものの笑みとなった。
「よくも最強となった俺の姿を!!」
怒りに身を震わせて拳を繰り出してくるヘルファイターに向かい、冷笑を浮かべてデュオは告げる。
「消え失せろ、人形よ」
拳を握って突き出してきたヘルファイターを右手で掴み止めるデュオ。
そのまま薄紅の光がヘルファイターを包み込み、光の粒子となって消えて行く。
「あ! ああ? な、なんだ!? こんな力、俺は知らないぞ!!」
恐怖に震えあがるヘルファイターに向かって、デュオは残酷な笑みのまま告げた。
「それが、恐怖。心の無いお前が初めて味わう感情だ。神として貴様には滅びと恐怖の慈悲を与えようーー」
「い、いやだ! いやだぁあああああああっ!!!!」
光の粒子となって消えて行くヘルファイターを見据えて、デュオは冷淡な笑みを浮かべたまま告げた。
「お前には、そんな死が相応しい」
ブラックの時のような無慈悲で冷たい笑みと声。
けれど、その左腕は気を失った17号を優しく抱き留めていた。
ゆっくりとデュオの腕の中で17号は目を開く。
「……世話をかけたな、孫悟空。俺を止めてくれて、ありがとう」
そう言うと、青い光の粒子となって、17号の肉体は空へと溶けていく。
ーー お前なら、この世界を救えるさ ーー
そんな優しい声が響く中、デュオは穏やかな表情で光となって消えて行った男を見上げる。
「……魂の束縛は潰えた。お前があるべき平和な世界へと還るがいい」
少し悲しげに笑いながらデュオは、己の中に溶けた男に呼びかけた。
「君が救えなかった男を救えた、か。孫悟空よ、オレは君を超えられただろうか?」
その問いに応える者はいない。
ただ彼が地上に降り立つ時には、彼の仲間とも呼ぶべき人間達が彼に駆け寄っていた。
ーーーー
鈍い打撃音を立てて、真紅の炎を纏った拳が白い人型の龍にぶつかった。
金色の髪をなびかせ、疾風の如き勢いで擦れ違うのは真紅の空手着を身に纏う男。
「…なるほど。口先だけではないようだ」
打撃が炸裂した場所を埃を払うようにはたきながら、龍人はニヤリと笑みを浮かべる。
「…やろう。全く効いてやがらねえ、だと?」
構えを取りながら超サイヤ人となったガーキンは白龍の男ーー超一星龍を見据える。
「動きは中々のものだ。ただの超サイヤ人でありながら、超サイヤ人4とかいう赤い猿にも匹敵している」
「…超サイヤ人4。悟空達が変身した姿か」
「ククク、孫悟空とベジータの仲間ならば俺も遠慮は要らんな。奴らへの恨みを晴らさせてもらうぞ」
「…恨み、ね。ベジータはともかく、悟空とはやり合わなかったんじゃねえのか? 惑星の意思よぉ」
揶揄するようなガーキンの口調に、一星龍は笑みを更に深めた。
「さすが惑星サイヤのサイヤ人だな。少しは楽しめる程度に強い。いや、あらゆる可能性の特異点となった星で育ったのだから当たり前か。もっとも、孫悟空ほどには変身にバリエーションがないようだが」
「…お前も、其処のベビーと同じで、どっかの次元で悟空に倒されたヤツか?」
「そういうことだ。まあ、孫悟空は殺してやったがな」
特に気にするものでも無い、と言わんばかりに告げた一星龍にガーキンの明るい表情が変わった。
「…なんだと?」
「ククク、恐ろしいか? 無理もない、俺は貴様とはレベルが違うのだ!!」
ニヤリと勝ち誇る邪悪龍の長に対し、真紅の武道着を身に纏う男は、怒りに震えていた。
「テメエ、よくも俺のダチを!!」
気を高めるガーキンに一星龍は冷笑を返した。
「あの時の孫悟空やベジータ程度の力しか持たぬ貴様に、この俺が倒せるものかよ!!」
青黒色のオーラを身に纏い、一星龍が力を見せ付ける。
これに傍らで観戦していたベビーが目を見開く。
「…こ、この力。世界の意思の記憶で知っていたが。間近で見るのは初めてだ。コレが、邪悪龍か!!」
「な、なんて冷たく恐ろしい気だ。禍々しくも強大な気!」
トランクスも思わず一星龍を見返す。
そんな中、ガーキンは冷や汗を頰に掻きながらも構えを解かない。
「…ほう? 俺の力を前に逃げんとは。バカなヤツ!!」
「分かってるよ。俺がテメエに勝てないのはな。だけど、それでも退ける訳ねえだろうが!! 守らなきゃなんないモンがあんだからよ!!!」
紅蓮の炎を足から噴き立たせ、ガーキンは吠える。
灼熱の波動を身に纏う男に、ニヤリと一星龍は告げた。
「…よくよく、赤い炎を使う奴は死にたがりのバカが多いようだ。勝てない勝負に挑みたがる!!」
両者、同時にその場から消える。
目にも映らぬ速度で空と地を駆け回り、殴り合う金色の戦士と邪悪龍。
仰け反りながら吹き飛んだのはガーキン。
「ぐあああっ!!」
その背後に高速移動で現れる一星龍。
強烈な肘を背中に落とされ、地面に叩きつけられる。
瓦礫の中に埋まりながら沈むガーキンの前に、一星龍が高速移動で現れて立つ。
「これで分かっただろ? お前と俺ではレベルが違いすぎるということがな!!」
瓦礫を地響きを立てながら押し退けて、ガーキンはうつ伏せの状態から立ち上がる。
「るせえよ。どんだけ差があろうがな、退けない時があんだよ!! 男にはなぁあああああっ!!!」
「馬鹿め!!」
強烈なダッシュからの紅蓮を纏った右上段鎌払い蹴り。
まともに一星龍の野太い首に袈裟切りのようにぶち当たるも、微かに首を揺らす程度の効果しかない。
即座に中段回し蹴り、下段回し蹴り、稲妻のような勢いで放たれる踵落としを放つも、全く微動だにしない一星龍に対し、跳び上がりながら体をコマのように回転させて旋風脚を放った。
「喰らえ、疾風迅雷!! 紅蓮旋風脚ぅうううっ!!!」
最後の一撃を足裏で相手の顔を踏むように放って蹴り飛ばす。
この強烈な蹴りに一星龍も流石に後方へ吹き飛び、ビルの壁面に肉体を叩きつけられるがーー。
「甘いぞぉおおっ!!!」
一星龍は強烈な気を纏ってダッシュ、廃墟のビルを瓦礫の山へと変えながらガーキンに突進する。
返しの強烈な右正拳を脚を地面に戻している内にまともに顔に浴びて、後方へ吹き飛ぶ。
「ガーキンさん!!」
「ぐあ!?」
トランクスの悲鳴にも近い声を聴きながら、ビルの壁に貼り付けにされる。
彼を見つめながら一星龍は首を左右に鳴らして邪悪な笑みを浮かべた。
「なかなか、心地いい蹴りだったぞ? おかげで肩こりが治りそうだーー!!」
血を吐き捨てながら壁から自力で抜け出し、地面に膝を付くと翡翠に燃える瞳でガーキンは顔を上げて、一星龍を睨みつけた。
「その目ーー! まだ、刃向かうつもりか?」
「当たり前だろうが!! お前らはよ、すぐに諦めろって言うけどな? そんな簡単に諦められるような、そんなちっぽけで軽いもんを俺は背負ってんじゃねえんだよっ!!!!」
更に気を高めて立ち上がりながら構えるガーキンに、一星龍は笑う。
「ククク、ハハハハハ!! 孫悟空も同じようなことを言って死におったわ!! まったく、貴様らサイヤ人は本当に度し難い愚か者よ!!!」
目の前に高速移動で現れ、強烈な拳を腹に叩き込まれる。
「ぐぅあ!?」
前のめりになる顔を見下ろして、一星龍は邪悪に笑いながら拳を握る。
「減らず口を、どれだけ叩けるのかな?」
強烈な左右のストレートを横面に浴び、連続で叩き込まれ続ける。
「がっ、ぐっ、がぁあああああっ!!」
全身の骨が砕けてもおかしくない一撃を連打で浴びせ続けられ、ガーキンの肉体は瞬く間に血みどろに変わっていく。
それでもガーキンは退かない。
拳を握り、返す。
どれだけ相手が仰け反らなくても、効果が無くても。
心折れることなく、拳と蹴りを打ち返す。
そんな彼を侮蔑の笑みで笑う一星龍に向かって、ついに観戦していたトランクスの怒りが爆発した。
「やめろーーっ!!」
トランクスが激情のままに咆哮し、背中の剣を抜き放って一星龍に斬りかかろうと飛び出した。
「やらせん」
だが、目の前に白銀のリーゼントの髪をした男が現れて後方に蹴り飛ばされる。
「ぐあぁあああっ!!」
壁に叩き込まれるトランクス。
それを冷酷な笑みで見下ろすのはツフル王・ベビー。
「諦めて俺たちの支配を受けろ、サイヤ人ーー! それが貴様らの唯一生き残る道だ……!!」
「何を…!!」
「それとも、あの真紅の道着を着たバカのように嬲り殺しにされるか?」
ベビーの言葉に思わずガーキンを見ると。
一星龍は正面に立って殴り返すガーキンの攻撃を冷静に紙一重で躱しながらカウンターの膝を叩き込み、顎を右拳で跳ね上げ、強烈な左右の正拳を腹に叩き込んでから右の上段回し蹴りを叩き込んで吹き飛ばした。
地面に背中から叩きつけられ、後方へ引きずられるようにして倒れ込むガーキン。
「ガーキンさん!!!」
トランクスの悲鳴に応えるように、ガーキンは身を起こして告げた。
「そろそろ、ヤバいからよ。早く逃げろ…!!」
「ガーキンさん!!!!」
「ゴチャゴチャ言うなよ! お前が皆んなを守ってやらなきゃいけないだろうが!!」
トランクスが悲鳴じみた声で自分を呼ぶのを遮りながら、一星龍に構えるガーキン。
それをベビーは笑って見据える。
「ハハハハハ! 愚か者め、トランクス等に何を守れると言うのだ? 安心しろ、貴様も含めて優秀なツフル兵に仕立て上げてやろう!! この俺の力で洗脳してなぁ!!」
トランクスが金色のオーラを身に纏い、剣をベビーに向かって横薙ぎに振り切った。
それを片手で掴み止めるベビー。
「ーー馬鹿め!!」
強烈な桃色の光がベビーの逆の掌から木漏れ、トランクスの肉体を後方へ吹っ飛ばした。
「ぐあぁあああ!!」
「! トランクス!!」
地面に倒れ伏したトランクスをニヤリと見下し、ベビーは顔を踏みつける。
「所詮、こんなものだ!!」
その様にガーキンは目を見開く。
そしてーー
「いい加減にしろよ、テメエエエエエエエエ!!!!」
トランクスを踏みつけるベビーに殴りかかった。
無論、そんな隙だらけの行動を一星龍が見逃すはずもない。
「ククク、大した奴らだ。互いに足を引っ張り合うだけとはな!!」
ガーキンの正面に回り込み、一星龍は正拳を繰り出してくる。
「いつまでも、舐めてんじゃねぇ!!」
ガーキンは放たれた拳を下に潜り込むようにしてかいくぐり、全ての気を凝縮させた右拳の一撃を放つ。
「いくぜ!!」
強烈な跳び上がりながらの右アッパーを顎に叩き込んで、仰け反った一星龍に対して更に右アッパーを連続で放つ。
炎のように苛烈で。
休むことを許さない恐ろしい攻め。
「昇龍裂破ぁあああああ!!!」
炎の竜巻と化し、次々と火柱を上げるガーキン。
「ぬぅ!? な、なんだぁ!?」
一星龍の目に映るのは真紅に燃え上がって天を衝く昇龍だった。
最後に一際、強烈な昇龍拳で天高く一星龍を吹き飛ばして背中から地面に叩きつけるガーキン。
その勢いのまま、彼はベビーに向かって両手を腰だめにたわめた。
「うぉおおおっ! 波動バーストォオオ!!!」
蒼い光が生み出され、渦を巻いて両手を突き出すと同時に放たれる。
その光弾は、ベビーを軽く飲み込むほどに強大だった。
「ちぃ! 悟空のかめはめ波擬きなどに!! ファイナルフラッシュ!!!」
両手を広げ、薄紅色の光を中央で合わせて放つベビー。
蒼く強大な弾丸と強烈な薄紅色の光線が両者の中央でぶつかり、押し合う。
「俺達をーーサイヤ人を舐めるなァアアアアっ!!!」
「ーーっ!!? なにぃいいいいい!!!?」
叫ぶ烈火の咆哮。
蒼い光は爆発し、ベビーのファイナルフラッシュを飲み込んだ。
「ぬぅお!?」
衝撃波で後方に吹き飛ぶベビー。
爆煙が立ち上る中、ガーキンの纏う真紅の炎と金色のオーラが、掻き消える。
「ち、畜生…!! 限界、か」
黒髪に戻り、前のめりに倒れたガーキン。
「ガーキンさぁああああんっ!!!」
叫ぶトランクスの目には、無傷でガーキンの前に立って見下す一星龍とベビーの姿があった。
「……フン。無駄な足掻きは終わったようだな」
「中々の戦士だ。貴様を俺の部下に加えれば、相当楽ができそうだな」
邪悪な笑みを浮かべる二人の凶戦士に、トランクスが絶望したような表情で呟く。
「…ダメなのか。これだけ足掻いても、勝てないのか……!!」
トランクスの呟きを耳ざとく聞きつけ、二人の凶戦士は笑う。
「最初から言っているだろう? お前達に万に一つの可能性もない、とな!!」
「さあ、ツフルの民となって永遠に俺にかしずく奴隷となるのだ!! 人間ども!!!」
高笑う二人の存在を前に絶望した表情でトランクスは告げる。
「俺は、何のために……! 悟飯さん、みんな……っ!!」
ベビーはトランクスが無抵抗なのを確認すると、前のめりに倒れたガーキンを見下す。
彼に掌をかざし、右手から銀色の液体のような球を生み出す。
「さあ! ツフル人へと生まれ変わり、この俺のために働いてもらおう!!」
一星龍は、その光景を面白そうに見つめる。
「これがツフル王の能力。卵を植え付ける力、か。面白いモノだーー!!」
笑いながら見つめる一星龍。
勝ち誇るベビー。
くずおれたトランクスと呆然と見つめる未来世界の人間たち。
世界が決定的に終わろうとする時ーー。
「コイツでーーふっ飛ばしてやらぁ!!」
「貴様ら、いつまでもいい気になるなよーー?」
そんな声が聞こえたと同時、蒼い弾丸がジャイロ回転しながら光線と化して、ベビーと一星龍に襲い掛かった。
ベビーが反応して上空へと逃げる中、一星龍は咄嗟に右拳で光線を殴りつける。
光線は地面へと叩きつけられ、爆発した。
「…!! この威力、いったい何者だ!!?」
光を殴りつけた腕が痺れている。
その事実に苛立ちをもって、一星龍は光線を放った人物を睨みつける。
山吹色の道着の上にサイヤ人特有のバトルジャケットを合わせた、バンダナを巻いた黒髪の男が立っていた。
その顏は、紛れもなく孫悟空。
「お前は、孫悟空!?」
目を見開く一星龍の前に、もう一人の山吹色の道着を着た黒髪の男が立っている。
「お前は、孫悟飯!!?」
「そうだ。邪悪龍ーー!!!」
強烈な裏拳をまともに顔で浴び、仰け反る一星龍。
「な、なにぃ!? この威力は、どういうことだ!?」
仰け反った所を更に右足で蹴りつけられ、後方へ吹き飛んだ先にバンダナの男ーー悟空の父・バーダック。
男は赤いグローブを握り締めると、自分の身をきりもみに回転させながらジャンプして、右の拳を吹き飛んできた一星龍の横っ面に叩き込んだ。
「ぬぅお!?」
悲鳴を上げながら、地面に叩きつけられてワンバウンドする一星龍に対し右拳に溜め込んでいた光をぶっ放す。
「くたばれぇええ!!」
光の向こうに飲み込まれて吹き飛ばされる一星龍は、そのままビルの瓦礫の山の下敷きになっていった。
「おのれ!! 生意気な奴らめ!!!」
その光景を見ていたベビーは苛立ちに震えながら、再びファイナルフラッシュの構えを取った。
「高みの見物か? 良い身分だな、ツフル王よ」
「!!?」
真上を見上げたところ、気配を感じさせずに褐色の肌をした黒髪の孫悟空に瓜二つの男が腕を組んで、こちらをニヤリと見下ろしている。
「貴様、ターレスーー!?」
名を呼んだと同時、強烈な膝蹴りがベビーのボディに叩き込まれる。
「ぐふぅ!?」
ベビーの身体が「く」の字になったところを、高速移動で姿を消し、体を丸めてクルクルと回転しながらターレスはオーバーヘッドキックのように右脚で後頭部を蹴り落とした。
蹴り込んだ先には白い空手着を着た、悟空と同じ顔をした男が立っている。
ターレスは男に向かって叫んだ。
「お前の力を見せてみろ、ターニッブ!!」
ベビーが目を見開きながら、ターニッブと呼ばれた男を睨みつけるのと、彼が真っ直ぐな黒い瞳でベビーを見つめ返すのは同時。
「受けて立とうーー!」
拳を腰だめに構えるターニッブに対し、ベビーは右の拳を振りかぶる。
「舐めるんじゃねえ、サイヤ人どもぉおおおお!!!」
突き出された拳をターニッブは紙一重で横に見切り、右の拳をベビーのボディに叩き込んだ。
「真!!」
「ぐぅっ!!」
あまりの拳の重さと強烈さに、ベビーをして一瞬、時間が止まったような感覚を味わっている。
「昇ぉおお龍ぅううう拳ぇえええええええん!!!」
天を衝く昇龍。
正にその名の通りの一撃は、ベビーを空高く吹き飛ばし、天頂で強烈な衝撃を見舞わせる。
「ぐはぁあああっ!!!」
悲鳴を上げて背中から地面に叩きつけられる。
「お、おのれぇ…!! 小賢しい奴らめ!!」
「よ、よくも。この俺にーー!!」
二人の凶戦士が瓦礫の中から見上げた先には、四人の黒髪のサイヤ人が揃っていた。
トランクスが訳も分からず見上げる中、白い道着を着たターニッブと呼ばれた男が頑健な拳を握って告げた。
「さあ、拳で語り合おう!! 強敵(とも)よ!!!!」
では、次回をお楽しみに(*^^*)