そのマイナスエネルギーによって生まれた邪悪龍の長。
彼の者の強さは、真・超サイヤ人に目覚めたサイヤ人達でも簡単に倒せるレベルではない。
そんな圧倒的な強者を前に、強さとは何かを誰よりも己に問いかける不抜の格闘家が奮い立った。
地下通路に避難した悟飯とバーダックは、救出したガーキンとトランクスに現代の世界から持ってきた仙豆を与えていた。
スナックを噛むような咀嚼音が響き、飲み込まれる。
弱り切っていたトランクスの瞳が、気力と体力が全快の状態で見開かれた。
「貴重な仙豆をありがとうございます、悟飯さん」
「構いませんよ、トランクスさん。間に合って良かった」
ホッと一息をつく悟飯の横で、バーダックに仙豆を与えられたガーキンは目を見開いている。
「す、スゲエ。本当に傷が治っちまった!」
「だろ? 他にもいろんな便利なモノがある。地球ってなぁ中々、興味深い所だぜ!」
ニヤリと笑うバーダックの言葉に深く頷くガーキン。
彼らの元にレジスタンスと民間人の生き残りが近寄ってきた。
「トランクス! 良かった!!」
「…マイ。お前達も無事で良かった!」
抱き締め合って互いの無事を喜ぶ二人に、ガーキンがニッと笑う。
「お前ら、過去から来てくれたんなら解決策はあんのか? 言っとくがザマスのヤツは桁外れに強いし、おまけに一星龍やベビー、究極の人造人間なんてのもいやがる。数はともかく、戦力は桁違いだぜ」
ガーキンの言葉に皆が、山吹色の道義を着た似た顔立ちの二人ーーバーダックと孫悟飯を見つめる。
「ええ。俺は過去の世界の全王様から力を借りています」
鋭い顔立ちの悟飯は右拳を握って目の前に掲げると、ゆっくりと掌を上に向けて開き、青い光の球を浮かべた。
「な、なんだ? この圧倒的な重圧は?」
「すげえ、なんてパワーだ」
トランクスとガーキンが目を見開く中、悟飯は静かに語る。
「…全てを消滅させる力。俺が使うには、一度が限界みたいですが。それでも、コイツならザマスを消せる」
絶対の確信を持って頷く悟飯に、ガーキンは頼もしげに頷いた。
「よっしゃ。敵の親玉であるザマスさえ倒せば、作り出された存在は因果律を保てずに消えちまうはずだ。いいぞ。希望が出てきたぜ!!」
「凄いですよ、悟飯さん!!」
トランクスやマイ、レジスタンスの面々が喜ぶ中、悟飯は険しい表情で呟いた。
「俺が、この未来を変えてみせる!!」
その言葉にバーダックが一瞬、目を見開いた後に肩を揺らしながら笑った。
「く、クク、やっぱりテメエは俺の孫だぜ。悟飯!」
「…そう言われると、嬉しいですね」
互いに笑みを交わして、祖父と孫は覚悟を決めた表情に変わった。
ーーーーーー
一方、激闘を繰り広げるターニッブと一星龍は。
廃墟の街を縦横無尽に飛び交いながら、拳と蹴りをぶつけ合っている。
強烈かつ鈍い打撃音を立てて、一星龍の丸太のような腕にターニッブの右拳が炸裂する。
歯を食いしばった一星龍の返しは強烈な右フック。
首を後方へ仰け反らしながら、距離を開けながら空で体勢を整えて両手を腰にたわめて構えるターニッブ。
「ドラゴン……サンダァアアアアッ!!!」
無数に振り落ちる落雷の雨を、左右にジグザグにステップするようにして避ける。
近づいて来る敵に向かって踏み込み、一星龍が右ストレートを放つ。
だが、その巨大な拳の下をかいくぐって踏み込み、ゼロ距離射程でターニッブは両手を突き出した。
「電刃ーー波動ぉおお拳ぇええええんっ!!」
放たれた青い光線は一星龍の肉体を丸呑みにして、遥か後方の廃墟ビルの群れまで吹き飛ばす。
「ぬぉおおおっ!?」
悲鳴を上げながら廃墟ビルをへし折りながら叩き込まれ、爆発する一星龍。
しかし、すぐさま倒壊するビルの瓦礫を簡単に押しのけて、立ち上がる。
「…フン、中々の威力」
真紅の瞳の先には、黄金のオーラを纏ったターニッブが構えている。
油断や慢心がない姿と強烈な意思を宿した瞳に、一星龍は素直に頷いた。
「コイツは確かに、凄まじい強さだ!!」
牙を剥き出しにして一星龍は笑う。
「見違えたぞ、サイヤ人! この俺様と真っ向から殴り合えるとはな。なかなか、癖になる拳だ!!」
拳をぶつけ合いながら、ターニッブは瞳を細める。
「波動拳の類は一切通用しない……! だが、肉弾戦ならばどうだ!?」
気を同レベルに引き上げてもなお、押し切れぬ強さ。
右正拳突きをぶつけ合い、相殺。
即座、ターニッブの左フックが一星龍の頬を掠める。
微かに、一星龍の頬から青い血が流れた。
(……いける!)
ふてぶてしく、禍々しい肉体にかすり傷とは言え、傷を負わせたことにターニッブは清々しい笑みを浮かべた。
「く、くくく。楽しい! 楽しいぞ、ターニッブ!!」
一星龍は笑っていた。
「うぉおおおおっ!!!」
気がつけば、叫んでいた。
心が求めるままに、拳を握って突き出した。
まともに喰らい、後方へ顔を仰け反らせながら、ターニッブの黒の瞳孔が現れた翡翠眼は燃えている。
「はじめてだぞ! この俺様が! 一星龍が、此処まで楽しいと感じたのは!!!」
吠え滾る白き龍は、赤い瞳を鋭くして青黒いオーラを全身に纏わせて吠える。
これにターニッブも腰を落とし、ガードを下げて拳を握り、黄金の炎を滾らせる。
「お前の本気に、俺もこの拳で応えよう。一星龍!!」
両者は相手に向かって真っ向から駆け寄り、拳を握ってぶつけ合うのだった。
激しい拳の激突は大気を揺らし、曇天を青空が覗くほどに吹き飛ばしていく。
ターレスと戦いながら、ベビーは静かに横目で、ターニッブとの闘いを楽しむ一星龍の様子を窺う。
「一星龍。時間切れを待たずに真っ向から殴り倒す気か、バカめ。そのような手間をかけずともタイムアップさえ狙えば確実な勝利を得られるものを」
不快げに吐き捨てるベビーの前に、金色の戦士と化したターレスが現れる。
「余所見をしていて、いいのかな?」
目の前に現れた敵に、頭ではなく肉体が反応してベビーは拳を繰り出した。
「うぉおおおおっ!!」
目の前に迫る拳を軽々と掴み止めるターレス。
瞬間、強烈な右膝がベビーの腹を打ち貫いた。
「ぐぅお!?」
「どうした、ツフル王? サイヤ人を従えた優秀な民族の王が、この程度か? ククク」
強烈な右の廻し蹴りがベビーの側頭部にぶち当たり、後方に吹っ飛ばされる。
しかしベビーは見事に後方で体を丸めて体勢を整え、着地してみせた。
「調子に乗るなよ、ターレス…っ!!」
「そのセリフは、そのまま丁重にお返しする」
金と銀の光の筋を描きながら、両者は秒間数百発の打撃を応酬している。
二つの超パワーが廃墟の街を震わせている。
ーーーーーー
一方、身体を休めていたゼノとブラックにも、超パワーの激突が感じられた。
「なんだ、このとてつもないパワーとパワーの激突は?」
ブラックの瞳が鋭く細められ、ゼノは目を見開いている。
「このとてつもない戦闘力は、ターニッブか? しかし何故、彼が此処に?」
「……ターニッブだと?」
ゼノの言葉にブラックがそちらを向いた後、目を見開いて一星龍と戦う黄金の炎を感じ取る。
「こ、これが。孫悟空が認めたというサイヤ人か!!」
圧倒的なパワーと純粋に高められた気の純度を感じ取り、ブラックは拳を震えさせる。
これほどの存在が、孫悟空達以外のサイヤ人にまだ居たとは思っていなかった。
強大なサイヤ人の力は、否応なくゼノとブラックに取り込まれた純粋な戦士の魂を揺さぶる。
胸の奥から湧き上がるのは、サイヤ人としての魂か?
戦士としての誇りか?
神としての矜持か?
それぞれ違う次元の孫悟空を取り込んだ二人のザマスは、同時に気を開放した。
「フン!!」
「ハァッ!!」
青白いオーラを纏うゼノ。
漆黒に近い紫のオーラを纏うブラック。
二つの強大なパワーの顕現に、ヤジロベーとザンギャが目を見開いた。
「どっひゃぁ! ゼノ! ブラック! おみゃあら、どうして体力が全快してんでしょぉ!?」
「な!? 傷は癒えていたけど、スタミナまで回復するなんて!?」
圧倒的な気を纏う二人の黒髪のサイヤ人にブルマが不敵な笑みを浮かべ、プリカが静かに激戦が繰り広げられている廃墟の街に目を向ける。
「頼んだわよ、ゼノ君!」
「ーーターニッブ」
ゼノ、ブラック共に、同時に額に二本の指を当てて構える。
「ーー行くぞ、ブラック」
「私に指図するつもりか、ゼノ」
赤と黒の服を着た両者は同時に瞬間移動で、その場から激戦が繰り広げられる都へと移動した。
ーーーーーー
ゼノ達だけではない。
その黄金の気と力強い魂の輝きに、世界の意思と同化したザマスもジッと、廃墟の都で戦うサイヤ人・ターニッブを見据えている。
「ーーこれが、リューベを倒した男」
瞳を静かに細め、惑星サイヤの意思だった頃の記憶を思い起こす。
どれほど力を具現化しても。
どんな姿や可能性を取り込んでも。
まるで歯が立たなかった男、真のサイヤ人・リューベ。
彼を真っ向から打ち破り、リューベ自身が己の教えを継がせた男。
白い道着を着た黄金の髪の戦士。
「人間の有り余る欲から生み出され、破壊することのみを望んできた邪悪龍。その長である一星龍が、これほどまでに純粋に闘いにのめり込むとは」
響き渡る両者の拳の衝突音。
広がる光の波紋は全てを倒壊させていく。
黄金の髪の戦士は自分よりも遥かに体格が上の一星龍に真っ向から殴り合い、互角に噛み合っている。
敵をいたぶることに快感を覚え、物を破壊することを何よりの目的とした究極の生命体が、たった一人のサイヤ人を相手に全力を賭している。
それも真っ向から打ち倒そうとしている様は、どうだ?
「……神にすら出来ぬこと。心を与えたと言うのか? ターニッブの振るう拳が一星龍に戦士の誇りと心を?」
目を見開きながら呟くザマス。
その周りではシンもまた、地球で行われている真・超サイヤ人と邪悪龍の長の一騎打ちを見ている。
「ターニッブさん! もはや、貴方が最後の希望!! 一星龍に打ち勝ち、ザマスを止めることができるのは、貴方しかいない!!」
「ですが界王神様、真・超サイヤ人には制限時間があります。ターニッブ殿が一星龍に勝てたとしても、此処まで来れるとは」
キビトの言葉にシンは歯を食いしばった後、ジッと地球の映像を見ているザマスをふり返った。
「ザマス! お前が誇り高き神を名乗るならば正々堂々、ターニッブさんと戦ったらどうだ!?」
ザマスは視線だけをシンに向けて口の端を薄く歪めて微笑んだ。
「そこまでの価値が、あの男にあるのならば」
「………! ならば見極めるがいい。人の辿り着いた究極の境地ーー風の拳を!!」
ゴワスとキビトが険しい表情で、超17号が淡々と冷徹な表情でシンとザマスの二人を見合う。
「いいでしょう。たかが人間が我が同胞たる一星龍に勝てるとは、とても思えませんがね」
微笑むザマス。
怒りに歯を食いしばるシン。
静かにゴワスは呟いた。
「世界の行く末を守るのは、人間だと言うのか」
神々が見守る中、ターニッブと一星龍は更に気を高めていく。
ーーーーー
ぶつかり合う。
黄金の闘気と蒼黒の殺意。
邪悪龍の強大な拳が超サイヤ人の顔を打ち貫けば。
「ぐぅ…っ! セイヤァ!!」
即座に超サイヤ人の重い右正拳が邪悪龍の腹を打ち貫く。
「ヌゥ…! この、小僧がぁ!!」
交互に顔が仰け反るも、すぐに額をぶつけ合いながら拳を振りかぶり、蹴りを繰り出す両者。
打つも打たれも、一向に構わぬ打ち合い。
交互に弾け飛ぶ両者の首。
鈍い音が地鳴りのように辺りに響き、鈍重にして苛烈な打ち合いの激しさを物語る。
「ぐぅ…ッ! 真・超サイヤ人でも。風の拳を使ってもなお、押し切れないか。流石だな、一星龍!!」
「……フンッ、虫唾が走るわぁあああ!! 貴様如き、サイヤ人が邪悪龍の長であるこの俺に、勝とうなどとはなぁああああっ!!!」
更に激しいぶつかり合い。
同時、一星龍の胸に埋められた七つの龍の球が光り始める。
「!? これは!!?」
「喜べ、ターニッブ!! 貴様には、この俺の!! 邪悪龍たちの真の一撃を食らわせてやろう!!!」
強烈なボディを腹に打たれ、前のめりになったターニッブ。
下がった顎を強烈な右フックが撃ち抜く。
たまらず、たたらを踏んで後方に仰け反るターニッブの前に、真紅の光の球が浮き上がっている。
「邪悪龍たちよ、この俺に力をくれぇえええ!!」
強烈な力と光の顕現に、ターニッブが思わず構える。
強大な真紅の光球が目の前に顕現し、全てを討ち滅ぼそうと猛り狂う。
「見るがいい、これが人間どもの欲に生み出されたドラゴンボールの! マイナスエネルギーのパワーボールだぁあああ!!!」
両手に抱えるほどの大きさに凝縮されているが、威力は桁が違う。
余波だけでビルが倒壊し、全てが滅んでいくのが分かる。
圧倒的な力に、黄金の炎を身に纏う超サイヤ人・ターニッブも体をひねり、両手を右腰に置いてたわめて光を練り始める。
キラキラと宝石のように煌めく、青白い光の球を練り上げていく。
「フン、性懲りも無く波動拳か!!」
「ああ。俺には、この拳しかない!!」
「ならば、愚直なまでのその一撃を真っ向から下してやるわ!! 喰らえぇええっ!!」
抱えていた紅い光の球を両手で突き出すように放つ一星龍。
対するターニッブもまた、練り上げた最強の一撃を両手を前方に突き出して放った。
「真空ぅうう波動ぉおお拳ぇえええんっ!!!」
付与は一切ない。
ただ、純粋に無限に高まる気を練り上げて作られた波動拳。
電刃を浴びず、防御の無効化もない。
ただ、強力で強大な、単純にして最強の一撃。
青い光線と紅い光弾は、真っ向から互いにぶつかり合った。
「ぬぅうっ! ターニッブ、貴様!!」
全くの互角の一撃に一星龍とターニッブ、共に動きが止まる。
周りの地面を砕き、瓦礫を空へと舞い上げながら力を開放する両者。
「さすがだ。威力だけを高めた波動の技ーー真空波動拳でも押し切れないとは」
「舐めるなよ、ターニッブ! 俺の力は七匹の邪悪龍の力を合わせたものだ!! 貴様ごときに負けるものか!!」
「…一星龍よ、お前は確かに強い。だが、俺の拳は俺一人で作り上げたものじゃない!! お前と同じく、多くの友と出会い磨かれた拳だ!!」
一歩、前に出るターニッブに一星龍が目を見開く。
(こいつ、この強烈な波動の押し合いの中、一歩前に出てくるだと? 正気か!?)
力と力の押し合いで発生する力場。
ターニッブはそれを意に介さずに前に出てくる。
その分だけ、一星龍にもターニッブにも力場の余波が体躯を刻んでいく。
「ぬ、ぬぅ!?」
ターニッブの狙いに気付き、一星龍が冷汗を流している。
(まさか、こいつ。俺と相打ちを狙っているのか!?)
真っ直ぐな瞳は一星龍から決して逸らされることはない。
その瞳に迷いはなく。
その気迫に衰えはない。
このまま至近距離で相殺すれば、双方共に無事では済まない。
「無駄なことを!! この俺に、そんな小細工が通じると思うのか!? 至近距離でパワーを相殺させたところで、貴様だけが大ダメージを負うだけのことだ!!!」
笑みを浮かべながら告げる一星龍。
だがターニッブの静かな瞳は変わらない。
翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳は、ただその奥に熱き魂の炎を燃やすのみ。
「ただーー前に!!」
「お、おい!?」
構わず踏み込んでくるターニッブに、一星龍の表情が焦る。
確かにダメージを負ったところで、五星龍のスライム形態ならば回復した状態で再生できる。
だが、万が一跡形もなく消し飛んでしまえば、その限りではない。
(この俺の全力のパワーボールと全くの互角。その二つが同時に爆発すれば、俺とて無事で済むとは限らん!)
迷いと焦りの表情に変わっていく一星龍に対し、真っ直ぐに踏み込んでくるターニッブ。
相反する強大な力と力が爆発寸前の状態に高まりつつある。
どちらかが力を緩めるか、押し切るしか、回避する術はない。
だが、押し切るのは不可能だと互いに理解している。
「正気か!? タァアアアニッブゥウウウウウッ!!!」
波動と光が辺りに吹き荒れ、両者の肉体を刻んでいく。
爆発すれば、間違いなく大ダメージは免れない。
下手をすれば両者共に消し飛ぶ。
「付き合いきれるかぁああ!!!」
更に前に進んでくるターニッブに一星龍はマイナスエネルギーボールを爆発させて、バックステップする。
瞬間、真空波動拳が野太い光の線となって一気に街を消し飛ばしながら、大気圏外へと一直線に放たれる。
「! なんだと? 奴め、これほどの力を秘めていたのか!?」
ベビーが思わず、その威力に振り返れば。
対峙する超サイヤ人・ターレスが両腕を組んだまま、ニヤリと冷酷に笑う。
「フン。俺たちサイヤ人を甘く見たのが、貴様らの敗因だ…!!」
言いながら自らの肩当てが付いたマントを脱ぎ捨て、ノースリーブのベルトタイプに鎧を変える。
拳を握り、更に気を高めるターレスにベビーも冷や汗を流し始めた。
「き、貴様…! まだ気が上がりやがるのか!?」
「俺たちサイヤ人に、限界なんてねえんだよ…! 覚えとくんだな」
両拳を握り腰を落として構えを取るターレスに対し、ベビーも拳を目の高さに置いて構える。
「舐めるなよ…ッ! サイヤ人!!」
薄紅色のオーラを纏って一気に気を高めるベビー。
それを余裕の表情で笑みを浮かべて迎えるターレス。
しかし、次の瞬間にターレスの瞳が見開かれた。
「! ターニッブ!!」
ベビーが焦った様子のターレスを見て振り返り、逆に笑みを浮かべる。
「それでこそ、邪悪龍の長だ!! 一星龍!!!」
二人の視線の先には、真空波動拳を放ち終えた姿勢のターニッブと。
その左側を滑空して拳を握っている一星龍が見えた。
「終わりだ、タァアアアニッブゥウウウウウ!!!」
確実な勝利の瞬間を確信して拳を繰り出す一星龍。
ターレスがフォローに回ろうとするも、その前にベビーが回り込む。
「! 貴様!!」
「ククク、猿が! 貴様らの思いどおりになどさせるものか!!」
放たれた拳を掴み止めながら、ターレスは拳を返しつつターニッブを見る。
同時、一星龍の強烈な拳がターニッブに放たれた。
「「「-----っ!?」」」
三者三様に目を見開く。
ターニッブの静かな瞳が一星龍の目を捉えている。
巨大な拳は、紙一重でかいくぐられて真下に踏み込まれている。
そしてーー。
(コイツ!? この! この状況で!! この俺の動きを見極めていたというのか!? この俺の拳を一切恐れずに踏み込んだと言うのか!!?)
一星龍の目が見開かれると同時、強烈な右ボディブローがまともにカウンターで入る。
辺りに響くのは鈍い轟音。
「真ーーー!」
「……あ、ぐぅ!? き、きさま…ッ! ターニッブ…ッ!!」
静かな瞳孔が現れた翡翠眼と見開かれた真紅の瞳が真正面で一瞬、睨み合う。
その顎を、見事な昇り龍となった左拳が捉えた。
「昇ぉおおお龍ぅうううう拳ぇえええんっ!!!」
天頂高く飛び上がるターニッブ。
その数倍は吹き飛ばされながら、一星龍は悲鳴を上げた。
「ぐわあぁあああああああっ!!!」
ターニッブがくるりと回転しながら着地した数瞬後、放物線を描いて一星龍は背中から地面に叩きつけられた。
ベビーが思わず目を見開いたまま呟く。
「バカな!? あの波動拳とやらは、全身全霊の一撃だったはず。それを放っておきながら、一切気を緩めずに一星龍の動きを追っていたと言うのか!?」
「…ク、クククク。流石だ、ターニッブ。それでこそ、このターレスが殺すに値する男!!」
ターレスは冷徹な笑みを浮かべて喜ぶ。
仰向けに倒れた一星龍は、すぐさま立ち上がってくる。
だが。
「ぐーーー!?」
力が全身から抜け、膝を付いてうつ伏せに倒れ込んだ。
まるきり、指一本動かせないほどに、先程の一撃は一星龍にダメージを叩き込んでいたのだ。
「この俺が? この俺が!? 一星龍が!!? たった一撃で!!!?」
震えながら一星龍は、目の前で静かに立つ黄金の戦士を見上げる。
黄金に燃え上がる炎のようなオーラを身に纏う真の超サイヤ人を。
「な、何者なんだ。お前は…ッ!」
静かにターニッブは応えた。
「俺はターニッブ。ただのサイヤ人だ」
強い意志を灯した瞳を持って。
その言葉を告げる。
「さあ立て! 此処からが本当の勝負だ…!!」
止めを刺しにくるのではなく、構えを取って相手の戦う意志を促す。
この行為に、一星龍は目を見開いた。
「…! お前……!!」
ターニッブは続ける。
「お前の拳からは、邪悪さだけではない。嘆きを感じた。そして誇り高い強さを! だからこそ、俺も此処までの強さになれた。お前が居たからだ、一星龍…!!」
静かな言葉は、確かな熱を持って一星龍の耳に届いている。
だが一星龍には何かを言うことが出来なかった。
闘えば死ぬか、生きるか。
自分とそれ以外の戦いは、そう言うもののはずだ。
なのにーー。
「ターニッブ…! お前は、俺を…!! 誰からも忌み嫌われる邪悪龍の、この俺を…!!」
震えが走る。
全身に力が満ちていく。
使い切っていたはずの力が、再び一星龍の全身にみなぎっていく。
「そうだ、それでいい。共に強さを高めよう、宿敵(とも)よ!!」
「ーーうぉおおおお!!!」
一気に先程以上に膨れ上がった気に、ターレスが舌打ちをする。
「バカが! わざわざ相手に闘う理由を与えやがって!!」
目の前に現れた拳を軽々と掴み止め、ターレスは翡翠の瞳で銀髪のリーゼントの巨漢を睨みつける。
巨漢ーーベビーはニヤリと笑って告げた。
「フン。だが、その馬鹿さ加減でこちらは助かった。あのまま一星龍が倒されていたら、一気にこちらが不利になっていたところだ」
「……フン」
秒間数百は下らない打撃の応酬を繰り広げて、所狭しと空を飛び回るターレスとベビー。
その真下の地面でターニッブは静かに腰を落とし、右拳を握り締める。
黄金の炎が吹き上がる足下から青い光の渦が風となって巻き上がる。
噴き上がる炎と巻き上がる風が、共に力を示すように高まっていく。
「一星龍よ、これが俺の一撃必殺だ!!」
「ーーフン。ならば、この俺の最強の一撃を持って葬ってやる!! ターニッブよ!!」
青黒い雷を纏ったオーラを全身から溢れさせ、一星龍がターニッブに向かって突っ込む。
その強大な拳に向かってターニッブもまた右正拳突きを放った。
「風の拳・不滅!!」
両者の拳がぶつかった瞬間、白い光が二人の拳の間から生まれて世界に満ちた。
音が消え、光で視界が奪われる中、静かにたゆたう風が世界に満ちる。
「ぐわぁあああっ!!」
背中から地面に叩きつけられたのは一星龍。
ターニッブは右正拳を突き出した姿勢で止まっている。
仰向けに倒れ込んだまま、一星龍はターニッブを睨み上げた。
「き、貴様…! 貴様は、逃がさんぞ!! 過去の世界などに逃がすものか!! この俺の手で貴様は倒す!!」
黄金の炎が掻き消え、通常の超サイヤ人に戻るターニッブ。
無限に上昇していた気が落ち着き、黄金の髪はそれよりも薄い金色に翡翠の瞳から瞳孔は消える。
「……」
静かに一星龍を見下すターニッブ。
彼らから少し離れたところに、紅と黒の道着を着た同じ顔をした二人組が瞬間移動で現れる。
「こ、これはーー!」
「なるほど、素晴らしい強さだ」
孫悟空・ゼノとゴクウブラックだ。
白い道着を着た超サイヤ人・ターニッブは、ゼノとブラックを見据える。
「お前達が、別の世界の悟空か?」
真っ直ぐな問いかけにゼノが頷こうとして、手が震えているのが分かる。
「…!?」
胸の奥から熱い炎が生まれている。
強烈な意志。
この男と、今すぐに闘いたいと。
そしてそれは、孫悟空と融合したブラックも。
「フ、フハハ! 素晴らしい。君がターニッブか! なるほど、この強さ。私の孫悟空が君と闘いたがっている」
「…お前がブラック? だが、聞いていたのと少し違うな」
訝し気にしながらも構えを取るターニッブに、ブラックはニヤリと冷酷な笑みを浮かべながら薄紅色の超サイヤ人に変身した。
超サイヤ人ゴッドのパワーを持ったサイヤ人の超サイヤ人が、神の魂を持つことで変異することができる。
超サイヤ人ロゼに。
「気にするな。そんな些細なことは私と君が闘うのに何の障害にもならん」
「…フ、確かに。ならば、受けて立とう!!」
赤いグローブを握り締め、金色の気を纏うターニッブ。
その力は、超サイヤ人ロゼとなったブラックよりも一回り上だ。
「孫悟空と互角とされる君の力、見せてもらいましょう。私が最強となるためにもね」
だが、ブラックが拳を握るよりも先に、超サイヤ人に変身したゼノがターニッブの前に躍り出た。
「ターニッブ! 私と、ーーいやオレと戦ってくれ!! オレは強くならなきゃならない!!」
静かにターニッブはゼノを見据えた後、ブラックにも告げる。
「ならば、二人同時に来い! 闘うのであれば、俺は相手は選ばない!!」
その言葉にゼノ、ブラック共に気を一気に高める。
仰向けに倒れたままの一星龍は、その光景を見ながら叫ぶ。
「待て! 貴様、俺との勝負はまだ着いていないぞ!! ターニッブ!! 邪魔をするな、雑魚共!!」
だが、三人の同じ顔をした超サイヤ人はお互い以外は目に入っていない。
闘いが始まろうとした時だった。
「待て! ザマス!!」
一星龍が天に向かって声を張り上げる。
同時、ターニッブの肉体を蒼い光が覆い始めた。
世界の理で脅威と認識された真・超サイヤ人が切れたことで、次元から元の世界に弾かれようとしている。
「! これは、孫悟空達と同じか!?」
「おのれ! 世界の意思め!! 私の半身を奪うだけでなく、何処まで邪魔をするつもりだ!!」
ターニッブは淡々と己の身に纏う光を見つめる。
一星龍が叫んだ。
「その男は俺が倒す!! 世界の意思よ、邪魔をするなぁあああ!!!!」
彼の慟哭にも似た絶叫が響く中、あれほどの強さを示したターニッブというサイヤ人は世界から消えたのだった。
次回は、明日の午前7時にあげます。
よろしくお願いいたします(≧▽≦)