楽しめる方は楽しんでください(´ー`* ))))
死者の都。
ただ広いだけの荒野に、二人の超サイヤ人がぶつかり合っていた。
片方はやや筋肉質だが、標準的な体格の男性。
もう片方は、筋肉の塊と言った様相の3メートルを越える白目の男ーー伝説の超サイヤ人・ブロリーだった。
「…しつけえ野郎だ!!」
「ふははは! カカロット! カカロットォオオ!!」
何度めになるか分からない殴り合いが始まる。
巨大な右の拳を右拳で止め、標準的な体格の男性サイヤ人ーーバーダックが、相手を翡翠の瞳で睨み据えた。
巨大な体に似合わぬスピードのブロリー。
体格差を物ともせず、打撃の手数と的確に急所を撃ち抜くバーダック。
殴り合いはバーダックが上だが、タフネスはブロリーが桁違いだった。
「…何度めの訂正だ? 俺はバーダックだっつってんだろ!?」
「…カカロット…!!」
睨み合う両者はそのまま、気を高め合う。
両者の足場が削られていき、二人は舞空術で宙に浮かんだまま、気を高めて行く。
二人を中心にできたひび割れはクレーターとなり、一気に周囲を吹き飛ばしていった。
(…このままじゃ、埒が明かねえ!! 一気に全力でケリを付けに行くか!?)
青白い気を突き出した右拳に溜めて、バーダックが力を放つ。
「…くたばれぇ!!」
「…グウ!?」
気の爆発にブロリーの巨体が弾かれる。
バーダックはそのまま、左手に気を溜めると前方に突き出した。
「これでーー最後だぁああ!!」
強烈な青白い光のドームがブロリーを中心に出来上がり、巨大なキノコ雲を発生させた。
それをやや離れながら、舞空術で見据えるバーダック。
彼の鋭い眼が、己の真後ろに向けられた。
「…カカロット…!!」
そこには気を高めながら、健在するブロリーが居た。
「チッ! まだ力が上がりやがるのか!?」
バーダックがウンザリしたように告げると、ブロリーは気を全身に纏いながら、突っ込んできた。
「…ふははは、カカロットォオオ!!」
これに凄絶な笑みを浮かべて、バーダックも返す。
「いいぜ? テメエと俺、先に根を上げるのはどっちだろうなぁあああ!!」
更に金色のオーラが二人を激しく包み、撃ち合う。
拳と蹴りを応酬し、バーダックとブロリーは互いに場を離れると、奇しくも己の右手に全身の気を溜めていく。
「…カカロット、カカロットォオオ!!」
「チッ、これで終いだ! くたばりやがれぇ!!!」
放たれる両者の一撃。
バーダックは、オーバースロー。
ブロリーはサイドスローでお互いの気を凝縮した一撃を放つ。
青白い光と緑色の光が両者の中央でぶつかり合った。
ーーーーーー
闘技場に来た悟空とターレスは、互いに向き合う。
「そういやオメエ、妙なトゲトゲの赤い実を食べるんだったよな?」
「…神聖樹の実のことか。生憎、貴様にやられてから部下も何もかもなくなってな? 目が覚めた時には貴様にやられる直前よりはマシな戦闘力の己が身のみさ」
「良かったじゃねえか! 実を食うだけで強くなっても面白くもなんともねーぞ!!」
悟空の言葉にターレスは不快な表情になって告げる。
「…俺から全てを奪った貴様にだけは、言われたくはないもんだなぁ!!」
「へへっ! なら、かかって来いよ!! ターニッブと拳ぃ交えたんなら、オメエもなんか掴んでんだろ?」
左手を顔の目線の高さに、右拳を腰に置いて斜に構える悟空。
ターレスも静かに拳を握る。
「…ふふふ、カカロットよ。今度こそ、この俺が殺してやるぞ!!」
「今のオメエには、できねえと思うぞ?」
「ほざけぇええ!!!」
灰色の気を纏い、ターレスが一気に距離を詰めると悟空に殴りかかった。
「ぬ!?」
肉弾戦ならば勝てると思っていたが、ターレスの考えは案の定外れた。
次の瞬間、右拳をまともに左腕で受け止められ、向こうの右拳を顔面に返されたのだ。
左手でつかみ止めるも、肩が衝撃で痺れた。
(チ! この野郎、あの妙な全身を赤く染めるオーラを纏う技を使わずに普通に俺について来やがるとは!!)
腕を上げている。
それも相当なレベルだ。
「…どうした、ターレス!? サイヤ人にしちゃ確かに強えが、こんなもんじゃ、オラの相手は務まらねえぞ!?」
「…ほざけ、カカロット」
悟空の言葉にターレスの低い声が響いて、身に纏う灰色の気が更に上がる。
対峙する悟空も全身に白い気を纏う。
「…くっ! こいつ、これほどのパワーを!?」
そのまま、乱打戦に突入する。
悟空の左右から繰り出される拳と鋭い蹴りは、ターレスをして受けに回るのがやっとだ。
「…チッ!」
ターレスは舌打ちをしながらも悟空からの右ストレートを左に見切り、左のフックを被せるようにして放つ。
しかし、悟空は顎先でこれを見切り、カウンターの膝蹴りをターレスの腹に決めていた。
「…グフう!」
思わず呻き声を上げながら前のめりになるターレスに、更に悟空は手厳しい連打を浴びせる。
「どうしたぁ!? そんな甘い攻撃じゃ、オラは倒せねえぞ!!」
左のストレートを両腕でガードするも、ブロックを破壊されながら、後方へ下がらされるターレス。
続け様に悟空は右のボディアッパー、左中段回し蹴りからの右後ろ回し蹴りを流れるように放つ。
「ぐぁ!?」
まともに左の脇腹に拳を入れられ、宙に浮かされた体に容赦なく左の回し蹴りと右の後ろ回し蹴りが腹と横面にヒット。
「が、はぁ…!!」
きりもみに回転しながら、弾き飛ばされるターレス。
背中から地面に叩きつけられ、土煙を起こす。
「…ふ、ふふ。流石に強いな、カカロットよ!」
ゆっくりと立ち上がりながら、告げるターレスに悟空も目を鋭くする。
「…まだ、なんか試してえみてえだな?」
悟空の言葉にターレスはニヤリとする。
「…カカロットよ。貴様はターニッブの使う技に気づいたか?」
「かめはめ波によく似た、波動拳って技のことか?」
間髪入れずに応える悟空に、ターレスはニヤリとする。
「そう! 波動だ。貴様らや俺の使う気ってヤツと似て非なる存在だ。気が溜めた力を放出するものなら、波動は絶えず動きを変化させている。異なる技を変化させて重ねることも可能だ」
「…何が言いてえんだ?」
「焦るなよ、今から見せてやるさ!!」
言うとターレスは両手を合わせて気を高め、紅にスパークするリング状のエネルギー体を自分の前方に作り上げた。
「そんな技が、今のオラに通じると思ってんのか?」
悟空の言葉にニヤリとしながら、ターレスは更に両手首を左右に合わせて掌を広げると頭上に掲げた後、灰色の気功波を放った。
「カラミティ・キルドライバー!!」
「……こいつは!?」
前方に貼った赤いリング状のエネルギー体の中心を見事に撃ち抜き、ターレスの放った灰色の気功波は、数倍にまで一気に跳ね上がった。
思わず悟空がその場から飛び退く程の威力だったのだ。
闘技場は不思議な力で守られているため、広範囲の爆発はしなかったが、それでも悟空は肝を冷やした。
直撃を浴びていれば、無事だったとは言い難い。
悟空を驚かせることに成功したターレスは、ニヤリとしながら得意げに語る。
「全く性質の異なる二つの技の融合。炎の輪『キルドライバー』と灰色の光『カラミティブラスター』の合わせ技だ。本来ならば、二つの技を同時に放つだけの気量がないとできない技だが。ターニッブの波動拳とやらが、俺にヒントをくれたのさ。いわゆる、技の重ねがけの方法をな」
その言葉に、悟空はニヤリとした。
「…オメエ。意外と抜け目ないとこ、あんじゃねえか。見直したぜ!!」
「…笑わせるな。強くなるために必要なことだ。気に食わない奴の技も利用価値があるなら、利用する。この俺が、全てを跪かせてやるためにもな!!」
「…へへ。じゃ、今度はオラの番だな? オラもさ、その波動って技の利点は分かってた。けど、消費する気が半端じゃねえのが、問題だった」
右手にかめはめ波、左手にかめはめ波。
これを中心で合わせ、反発する力と力を更に赤いオーラが高めていく。
「…ぐくっ、こいつは、思ってた以上にヤバいな!!」
悟空は脂汗を滲ませながら、赤くなった己のかめはめ波を見据える。
中途半端な気の融合や波動では、暴発する。
「ははは、バカめ! 確かにヤバそうな技だが、撃てなければ意味はない!!」
ターレスが勝ち誇る様に告げる。
通常の自分の肉体では、パワーの反動に耐えられない。
「まずは、超サイヤ人で試す!!」
かめはめ波の構えから超サイヤ人に変身する悟空。
「この金色のオーラと髪、これが伝説の超サイヤ人…か」
ターレスが変化した悟空を見据えて静かに告げる。
しかし、赤いかめはめ波は一向に安定しない。
「ぐくく……なら! 超サイヤ人…2だぁあああああ!!」
叫びと共に金色のオーラがスパークし、青白い雷が身に纏う。
髪は更に逆立ち、前髪が少なくなる。
「……なんだと? カカロットから感じる力が更に桁違いに上がった!?」
ターレスが驚きと共に目を見開く。
それでも、悟空のかめはめ波は落ち着かない。
「……チッ、なら……! 最強の超サイヤ人3、だぁあああああああ!!!!」
気柱が天を突き、金色のオーラがさらに激しくなる。
髪が腰のあたりまで伸び、眼窩上隆起が起き眉毛が消え、前髪が更に少なくなる。
翡翠の瞳には黒い瞳孔が現れ、ターレスを睨み付ける。
「化け物め……! 姿が変わる度に戦闘力が桁違いに上がってやがる……!!」
ターレスが思わずという風に述べるも、その後でニヤリと笑った。
「だが、どうやら。その技は撃てそうにないな?」
その言葉通り、悟空は溜めた力を放とうとはしない。
「……なるほど。流石の3でも、溜めるのが限界か。なら……!!」
心を落ち着ける。
瞳を閉じ、そのステージを人間の域から神の領域へ。
蒼銀の炎が悟空を包んでいき、更なる変身をみせる。
「……勿体ぶりやがる。まだ力の底を隠していたのか!!」
苛立ち交じりにターレスが言うのと、悟空がニヤリとするのは同時。
美しい青色の瞳と髪がオーラを纏うことで水色に輝いている。
「超サイヤ人ブルー。穏やかな心と気のコントロールを兼ねることができるコイツなら、どうだ!!」
腰だめにたわめた両手の中で輝く真紅の宝石のような美しい光の球。
全てを破壊することができるであろう、究極の一撃。
界王拳をも使える超サイヤ人ブルーならば、と思ったが。
二つのかめはめ波を凝縮して一つにした時に倍増するエネルギー。
更にそれを安定させるために界王拳をかめはめ波自体に重ね掛けした。
悟空はそれができると思っていた。
実際にできた。
しかし、それを制御する術が超サイヤ人ブルーをしても出来ない。
「……くっ! なんでだ!? この技、撃てると分かってたのに!!」
歯ぎしりしながら、悟空は気を制御していく。
超サイヤ人ブルーでも、気がコントロールできない事実に焦っている。
「くくく、驚かせやがって。どうやら撃てないようだな?」
勝ち誇るターレスの笑みに対し、悟空は歯ぎしりをしながら瞳を鋭くする。
「……仕方ねえ。とっておきに頼ってみるかな?」
「……なに? まだ、何かあるのか!?」
ターレスが驚く瞬間、先ほどまでの超サイヤ人によく似たーーしかし、それよりも更に濃い黄金の気柱が天に向かって伸びた。
同時に、蒼い髪は黄金に変化し、水色の瞳は翡翠に黒の瞳孔が現れる目に変わった。
「こ、これは……超サイヤ人? いや、違う……! 睨まれただけで背筋に悪寒が走るだと……!! 貴様、カカロットなのか? いや、いったい何者だ!?」
ターレスが冷汗交じりに告げると、真の超サイヤ人と化した悟空はニヤリと冷徹な笑みを浮かべた。
「何を焦ってんだ? 俺はカカロットじゃねえ。孫悟空、さ!」
そして改めて灼金に燃え上がる己の気弾をたわめる。
暴走する力を圧倒的に進化する力で抑え込んでいく。
真・超サイヤ人の全ての気力が赤いかめはめ波を安定させていく。
「……ば、バカな……!! こ、こんなことが……!!」
溜めた気だけでも、全てを吹き飛ばすほどの力が場に淀んでいる。
そんなものが放たれれば、どうなるか。
子どもでも分かることだ。
「フフ、名付けるとすれば。10倍かめはめ波ってところか……!!」
真・超サイヤ人と化した悟空は、冷徹な瞳を自分の猛り狂う気弾に向け、余裕の表情で笑う。
今の彼には、赤い毛色をした上半身を持つ長い黒髪に金色の瞳を持ったサイヤ人が見えている。
「俺じゃねえ、俺か。ありがとよ……! この技と真・超サイヤ人があれば、俺はどんなヤツにも負けねえ……!!」
その言葉に頭の中で浮かんでいる、超サイヤ人ゴッドとは根本的に異なる、赤い猿の超サイヤ人の姿へと化した自分が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて告げて来た。
ーー 水臭ぇこと言うんじゃねえ。オメエも俺じゃねえか。オメエが、この先に進んで俺になるのかまでは知らねえがな ーー
そう言って『彼』は背を向ける。
「また会おうぜ……! いつか闘う為によぉ、未来の俺」
ーー ああ。真・超サイヤ人に進化したオメエが超サイヤ人4の俺に、どんな影響をくれるのかな ーー
その言葉と共に超サイヤ人4と名乗った未来の悟空は、頭の中から消えた。
同時に真・超サイヤ人の悟空は現実のターレスを睨みつける。
「……ま、待て! そんな技を撃てば問答無用で全てが消し飛ぶぞ!!」
ニヤリと笑い、悟空は両手首を上下に組んで前方に突き出した。
「ば、バカが…!!」
思わず伏せるターレス。
対して悟空は冷徹で低い声で、告げた。
「10倍……かめはめ波ぁああああああ!!!」
灼金の光線が、世界の全てを撃ち抜いた。
青い空ーー悟空の真上に向かって放たれたその一撃は、如何なるものをも撃ち抜く程。
圧倒的なパワーだった。
伏せていたターレスが、力の余波でその体を浮かせてしまう程に。
呆然とするターレスを見下ろすのは、不敵な笑みを浮かべた黄金の戦士。
「…貴様、その力は…!!」
「本来なら、まだ俺がたどり着くはずのない境地だが。あらゆる可能性を見せる死者の都と無限にパワーが上がる真・超サイヤ人のおかげでできたぜ」
如何なる相手をも一撃で葬る為の技。
他のどんな技よりも必殺に相応しい技だった。
黄金の気を解除し、元どおりの黒髪に戻ると悟空はターレスに告げた。
「続けっか? ターレス」
これに彼は皮肉な笑みを浮かべて応えた。
「…くく、今は貴様に勝ちを譲ってやる。だが、俺はいずれ全てを凌駕する。楽しみにしていろ、カカロットよ」
その言葉に悟空もニカリと明るく笑った。
「へへ、やっぱりオメエ。変わったな!! 昔のオメエなら、実に頼って強い奴に挑むような真似はしなかった。オラ、ちょっとだけ嬉しいぞ!!」
伏せていたターレスに手を差し出す悟空。
「…調子に乗るな」
その手を払い、ターレスは立ち上がりながら、頭の中に流れる声を聞いた。
目の前のサイヤ人や自分と同じ顔をした。
自分を負かしたサイヤ人の声を。
ーー 楽をして手に入る力などない。積み重ねた修練こそが最後の最後に己の身を守る。力やスピードがあった所で、危険を回避する動作ができなければ話にならない!! ーー
「…気に入らねえぜ。どいつもこいつもよ」
己と同じ顔をしたサイヤ人に会うのはこれで二人目だが、気に入らない奴ばかりだと、ターレスは自嘲気味に笑った。
だが、こいつらの強さの秘密が分かれば。
自分は更に高みに至るとターレスは確信していた。
ーーーーーー
死者の都。
未だ続く超サイヤ人同士の闘い。
無限に高まり、ダメージを全く受けないブロリーに対して、バーダックの方は、段々と息切れを始めていた。
「…ちくしょう。しつけえな。パワーがまだ上がりやがるのか」
肩で息をしながら告げるとブロリーはニヤリと笑った。
「…さあて、どうするか? 一撃で奴をノックアウトできなけりゃ、ジリ貧だな」
超サイヤ人と化したバーダックは、ジッとブロリーを見ながら告げる。
「…カカロット…!!」
ニヤリと笑いながらブロリーは告げる。
舌打ち気味にバーダックが吐き捨てると、いつの間にか。
目の前に白い道着を着た、自分と同じ顔をした黒髪のサイヤ人が立っていた。
「…なんだと? 誰だ、テメエ?」
「…カカロット?」
黒髪のサイヤ人は、静かに白いズタ袋を手放して赤いグローブを引き締め、伝説の超サイヤ人ブロリーを睨みつける。
瞬間、ブロリーが黒髪のサイヤ人に向かって気を高めていった。
「おお!! カカロットォオオオオオオ!!!」
静かに黒髪のサイヤ人ーーターニッブは拳を握りしめる。
「お前もその忌むべき力を身に宿すのか。しかし、怒りに飲み込まれるのならば俺の敵ではない!!」
ターニッブは全身に青白い気を纏い、一気にブロリーに向かって駆ける。
ブロリーも、邪悪で凶暴な笑みを浮かべたまま巨大な拳を握って、ターニッブに振り下ろす。
「おい、テメエ!! ただのサイヤ人じゃそいつには勝てねえぞ!!」
まともにブロリーの拳を浴び、後方にのけ反るターニッブ。
だが、それだけだ。
吹き飛びはしない。
「いい拳だ!!」
ターニッブは清々しく微笑みながら、ブロリーの横面に右拳をぶち当てる。
「ぐぉっ!?」
今度はブロリーの巨体が揺れた。
「なんだと!? 俺の攻撃はあの化け物にまるで通じなかったってのに、野郎の拳は効いたってのか!?」
バーダックが叫ぶ中、二人のサイヤ人は足を止めて殴り合う。
両者、ガードもフットワークもない。
純粋に相手の攻撃を受けて返す。
それだけのパンチの交換を繰り広げている。
何度目かのやり取りの後、ブロリーが後方へのけ反りながら足を揺らす。
「どうした!? お前の力はこんなものではないはずだ!! 本気を出せ!!!」
ターニッブが叫びながら拳を構えて告げる。
対するブロリーも気を高めていく。
「うぉおおおお!! 気が高まる! あふれる!!」
気付けばブロリーは、ターニッブをカカロットとは呼ばなくなった。
「そうだ! お前の力を見せてみろ!!」
「……クズがぁ! 簡単には殺さんぞ……!!」
幽鬼のようにブロリーはただカカロットを憎み、その名を呼び続けることしかしなかった。
だというのに、今の彼には心が戻って来つつある。
「俺の名はターニッブ。貴様が倒したいと願うカカロットーー孫悟空は俺のライバルだ!! 俺に勝てないようじゃ、悟空には勝てない!!」
「ほざけぇえええっ!!」
ぶつかり合う。
叫び合う両者。
気が高まり、互いに溢れていく。
「な、……なんてぇ勝負だ!!」
あまりの力と力のぶつかり合いに、少し場を離れていたバーダックは呟いた。
ターニッブとブロリーの殴り合いを見つめながら、思わず拳を強く握りしめる。
しっかりと相手の攻撃を受け止め、重い攻撃を返すターニッブ。
攻撃を食らいながらも、お構いなしに拳を繰り出してくるブロリー。
「……チッ、血が騒ぎやがるぜ……!!」
震える左手を握りしめ、バーダックは熱く燃え滾る瞳で口の端を歪める。
右の拳と拳がぶつかり合う。
互いを中心に天に突き立つ白い光の柱。
「……ターニッブ! 貴様は、俺が殺す!!」
「!!」
ブロリーがそう叫ぶと同時に、強烈な金色のオーラが柱となってブロリーの身に纏い、髪が腰のあたりまで伸び、眉毛が消えた眼窩上縁は見てわかるほどせり上がって、更なる強面に変化する。
「こいつはーー悟空の超サイヤ人3!?」
「タァアアアアアニッブゥウ!!!」
強烈な右ストレートの一撃に、後方へ首を弾き飛ばされるターニッブ。
しかし、彼はすぐさま地面に足を擦り付けて、スタンスを広げて受け止める。
「……ぐぅ!?」
その姿に思わずブロリーの手が止まった。
ターニッブは不敵な笑みを浮かべて心底、楽しそうにブロリーに告げる。
「流石だな。お前もまた強さを求めるか!! お前の名を教えてくれ、我がライバルよ!!」
「……ブロリーだ」
「ブロリー、か。いい名だ!!」
「……うるさい! 無駄口を叩くなァアアアア!!!」
殴りかかるブロリーに対し、ターニッブも瞳を翡翠に変わって瞳孔が黒く現れる。
黄金の気柱が起こり、天に向かって髪が黄金に変化した。
「これがーー悟空が望んだ、俺の全力だ!! さあ、とことん戦おう!!」
気が無限に上昇する自分と同じ質でありながら、ターニッブはその力を完全に使いこなしている。
その事実に、ブロリーは思わず告げた。
「……なんて、ヤツだ!!」
あの時、自分を新惑星ベジータで葬った宿敵と同じ顔をした。
同じ種類の瞳の輝きを持つサイヤ人。
殴り合う。
何度もぶつかり合う。
今度は、ブロリーの巨体が一方的に揺らされる。
超サイヤ人3まで覚醒したブロリーでさえも、今のターニッブは手に余る。
だが、彼の口許にはこれまで刻んだことのない笑みが浮かんでいた。
恐れられていた。
利用されていた。
憎まれていた。
そんな力の全てを出してもなお、打ち破ってくる目の前の超サイヤ人にブロリーは喜んでいた。
「……う、うぉおおおおお!!」
超サイヤ人3が切れた。
エネルギー切れなど起こるはずのない、伝説の超サイヤ人の変身が消えている。
ターニッブの真・超サイヤ人の拳を食らう度に、ブロリーの巨体は元の細身でありながら筋肉質だった肉体に戻っていく。
しかし、そのパワーはどんどんと増していく。
スピードも動きも。
「どうなってやがる? 気がどんどんと高まっているのに、何故奴の肉体はしぼんでるんだ?」
バーダックの言葉に応えるように、ブロリーの姿は伝説の超サイヤ人から通常の金色の超サイヤ人へと変化していった。
そしてーー。
「うぉあああああああっ!!!」
強烈な咆哮と共に。
先のターニッブと同様、黄金の気柱が天に向かって突き立った。
「! こ、こいつは……!!」
バーダックが目を見張る中、ブロリーは圧倒的な黄金の気を纏い、翡翠に黒の瞳孔が現れた目を持って、ターニッブを見据えている。
その姿は、ターニッブが変化した真・超サイヤ人そのものだった。
「……すごいな。ブロリー。お前もまた、己の限界を超えた」
「……」
ブロリーは静かに自分の両手を見下ろした後、高まり続ける気を纏ってターニッブを睨みつける。
お互いに睨み合う二人の真・超サイヤ人。
同時に気が弾け、中央でぶつかり合う拳と拳。
蹴りと蹴り。
無数に交わされる打撃。
互いに右ストレート、左のローキック、右のハイキック、左のストレートを放ち合い防ぎ合う。
同時に弾かれ、両者は後方に着地した。
「……ターニッブ。俺と勝負しろ」
「受けて立とう!!」
お互いに両手を上下に合わせて突き出した後、右の腰に置いて腰だめにたわめる。
ブロリーは緑色の気の塊を。
ターニッブは青白い波動の塊を生み出した。
「……カカロット」
ブロリーの記憶の中にあるのは、息子二人と共に放たれたこの技で、己を太陽に押し込んだ技。
かめはめ波だった。
それを我が身で受けた彼は、独自に己の技として改良した。
理性を取り戻し、無限に力を高めることができる今の姿ーー真・超サイヤ人だからこそたどり着けた最強の一撃だった。
対峙するターニッブのそれもまた究極の一撃。
ターニッブ本来の持つ青白い気の波動と、真・超サイヤ人の黄金の波動。
その二つを重ね合わせて凝縮して放つ、電刃の一撃。
極限まで高められた互いの一撃を。
二人は前方に向かって突き出した。
「うぉおおお!! とっておきだぁあああああ!!!」
「勝負!! 電刃ーー波動拳!!!」
緑色の光線と青白い光線が、互いに向かってぶつかり合った。
押し合う両者の一撃。
「うぉおおおおおおお!! この技だ! この力だ!! これが俺の求めた俺“だけ”の力だ!!!」
ブロリーが叫びながら、気を高めていく。
互角の光。
周りのものを吹き飛ばしながらも、両者の力は未だに収まらない。
二つの気功波は互いの中央で強烈な爆発と共に相殺した。
「まだだぁああああ!!」
瞬間、ブロリーが叫びながら一気に加速して、右の拳を振りかぶる。
同時にターニッブも右の拳を振りかぶった。
ブロリーの全身全霊を込めた一撃。
対するターニッブもまた、右の足を広げ、左手を前に突き出し“必殺”の構えを取る。
「ブロリーよ。これが俺の“必殺”--“勝つための一撃”だ!!」
ブロリーの右の拳に向かって放たれる、ターニッブの右正拳突き。
「…なんだ、これは!?」
打ち込まれた瞬間、ブロリーには風が木の葉を揺らす音が聞こえた。
光の中、一撃に膝が折れる。
力が抜ける。
「…風はただ木の葉を揺らすだけで、その存在を知らしめることができる。相手の全力の一撃を僅かに超える拳。それが、俺の一撃必殺!! 行くぞ!!」
前のめりに倒れるブロリーの腹を、右のボディアッパーが撃ち抜く。
「…ぐぉお!」
巨体が上に跳ね上げられ、その顎に向かって左の跳び上がりながらのアッパーが放たれた。
「真・昇龍拳!!」
遥か曇天の空を撃ち抜く、風を纏いし龍の拳。
ブロリーは悲鳴をあげる間も無く、背中から仰向けに倒れ、超サイヤ人が解除される。
同時にターニッブも真・超サイヤ人から黒髪のサイヤ人に戻る。
「…なんで、とどめを刺さない?」
ブロリーが仰向けに寝転がったまま、憑き物が落ちたような澄んだ声でターニッブに語りかける。
すると彼は清々しい笑みで告げた。
「ブロリー、いい試合だった! また、俺と戦ってくれ!!」
真っ直ぐに言われた言葉に、ブロリーは生まれて初めての感情が湧いてきた。
もう一度、闘いたい。
憎しみや怒りではなく、純粋に闘いたい。
目の前のサイヤ人やカカロットと。
そんなブロリーの心中を察したかのようにターニッブは一つ力強く頷いて、応えた。
「壁は誰にでもある。そんな時は、ぶつかって答えを出すしかない。ブロリー、お前ならば壁を打ち破れるさ」
清々しい笑みとともにザックを下げて、ターニッブは背を向けて去っていった。
しかし、その明るい声と清々しい笑みは、いつまでもブロリーの目と耳に残っていた…。
「…あんな野郎が居たとは。しかも、カカロットを知ってやがるようだな。クク、此処が地獄かどうかは知らねえが中々面白いことになりそうじゃねえか」
去りゆく彼の背を、離れた所からバーダックが見送っていた。
次回もお楽しみに(´∀`*)