現在の世界も。
諦めることをしない戦士達は抗い続ける。
彼らの純粋な戦いは、はたして世界に何をもたらすのだろうか?
神々の神域でぶつかり合う、黄金の炎のようなサイヤ人と薄紅色の炎を纏う絶対神。
両者の正拳突きは、互いの中央でぶつかり合って相殺する。
バックステップして距離を取り、無言で構えるターニッブにザマスは両手を広げた状態で話しかけた。
「…なるほど。第7宇宙の界王神殿が言うわけだ。確かに素晴らしい強さです」
称賛しながら手を叩くザマスは、銀色に光る瞳をターニッブに向けて冷酷に笑った。
「君を倒す様を生き残った者たちに見せつければ、未だ抵抗する地球人やサイヤ人達も素直に負けを認めるだろうか?」
小首を傾げて問いかけてくるザマスの姿は、まるで壊れた人形のように表情が変わらない。
「……」
翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳を鋭く細めるターニッブ。
ザマスは静かに続けた。
「かつて第7宇宙に現れた魔導師バビディは、その魔術によって地球人達の瞼の裏に孫悟空と魔人ブウの対決を映し出した。人間達が絶望するように…」
ターニッブは静かに拳を握って告げる。
「…その試みは失敗しただろう?」
「何故、そう思う?」
ターニッブの問いかけに人形のような作り笑いから、心底楽しげな笑みに変えてザマスは問いかけた。
孫悟空と魔人ブウの戦いをターニッブは知らない。
それでも、ターニッブは確信を持って告げる。
「悟空が闘う姿を見て絶望を感じる人間はいない。格闘家ならば、あいつの闘う姿を見て奮起するはずだ」
「…どれほど相手と力の差があろうと、か?」
楽しそうなザマスの笑みに向かって、ターニッブも静かに頷く。
「ああ、どんなに力の差があろうとも。指先一本にでも闘志を示せるのなら、格闘家にとって真の敗北はない!」
「ならば示してみよ。神たる我の前に敗北する貴様の姿を見ても、人間が絶望しないと言う証を!!」
瞬間だった。
ザマスは自分の世界に生きる全てのものに、界王神界で起こっている映像を脳裏に見せつけ始めたのだーー。
人間たちの戸惑う声を耳にして笑みを深めるザマスの前に、ターニッブは静かに告げる。
「たとえ世界が絶望に包まれても、俺は信じる。真の強さを求めて、拳の道を進むのみ!!」
黄金の炎を猛らせて、ターニッブが拳を握って強烈な踏み込みの音を立てながらザマスに駆ける。
「この期に及んで、頑固を通り越して天晴れと言えるほどの信念よ。だが、そうでなければ私の敵足り得ぬ!」
強烈な右の拳を左に捌き、ザマスの強烈な右の掌底が顎に放たれる。
しかし掌底を放つ腕が伸びきる前にターニッブの左肘が顎の前に置かれており、受ける。
一瞬、睨み合う両者。
同時にバックステップして左ストレートをぶつけ合った後、高速移動で姿を消しながら両者は天と地を三度駆け回る。
互いに譲らぬという意志を示すように、逃げを打たぬ両者。
真っ向から力と力、技と技を互いにぶつけ合っている。
「波動拳!!」
「聖なる逆鱗!!」
互いに放たれる青い光弾と赤い光弾。
中央で爆発して煙を噴き上げるも、ターニッブは空中で回転しながら宙を舞う。
「竜巻!! 旋風脚ぅうう!!!」
青い光の風を纏い、コマのように回転しながら放たれる旋風脚。
目の前に現れたターニッブに、ザマスは咄嗟に両腕を交差させてガードする。
重い連続の蹴りが叩き込まれる。
「ぬぅ!?」
ーー この威力! ガードしている腕が折れてもおかしくない!! なんという重い打撃だ!! ーー
連続回転蹴りを受け切ると、ザマスは右手刀から光の刃を抜き放ってターニッブに袈裟懸けに斬りつける。
「セイヤァ!!」
ターニッブが右拳を握って光の刃を受け止める瞬間、蒼い光が弾けて斬撃を無効化し、拳で手刀を脇に受け流す。
「! これは!?」
「ーー風の拳・心眼。お前の攻撃、全て受け止めよう」
「神の刃を受け流すとは敵ながら見事!! ならば、これはどうだ!!」
放たれる右正拳突きを咄嗟に瞬間移動で後方へ逃げ、距離を取るとザマスは両手を広げて真紅の光の球を頭上に掲げる。
「裁きの刃!!」
瞬間、光の球は空間を避けるように縦に伸びると光刃を次々と生み出して、ターニッブに雨あられと降り注ぐ。
放った拳を引っ込め、左拳を握って前に出すと自分に放たれた赤黒い光刃に向かってターニッブは、瞳を見開きながら風を足下から巻き上げる。
ーー心眼。
カッと蒼い光が拳から弾けると同時、無数の刃が次々と相殺され無効化されていく。
だがザマスは裁きの刃を放ちながら、ターニッブの目の前に高速移動で現れる。
両手を大きく広げた後、目の前にボールを抱えるように構える。
その中央に雷の球が現れ、巨大な十字架のように光を放つ。
「絶対の雷!!」
光刃を全て無効化しつつあるターニッブの目の前に、強烈な紫電の雷が放たれる。
避ける術はない。
「別の性質の技を同時にお前の“心眼”で防ぎきれるか!?」
目の前に迫る雷に、ターニッブは己の拳に雷を纏わせる。
「電刃錬気!!」
青い風が金色の雷光に変化し、ターニッブの拳に纏わる。
心眼で光刃を無効化した先に現れた神の雷を前に、両手を前方に突き出しながら叫んだ。
「雷光波動拳!!!」
雷光を纏う波動拳が放たれ、神の雷を吸収しながら巨大になった光線がザマスの目の前まで瞬く間に迫る。
正に電光石火の速度。
ーー 通常の波動拳よりも弾速が速い!? これは!! ーー
咄嗟に右手刀に薄紅色の光を纏わせて胸の前に出し、光を脇に受け流すザマス。
ターニッブは正面に突っ込んで来ている。
一息を吐いて休ませるつもりも、距離を取らせて仕切り直させるつもりもない。
愚直にがむしゃらに、真っ直ぐに突っ込んで正拳突きを繰り出してくる。
ーー 退くな! 退けば勢いに飲まれる!! ーー
ザマスをしてそう思わせる勢い。
拳を握り、目の前の戦士に応戦する。
互いの意地と意地をぶつけ合うかのように、両者は足を止めて真っ向から拳をぶつけ合う。
轟音を合図に嵐のような打ち合いが始まった。
ーーーー
彼らから離れたところで、黄金の炎を身に纏う超サイヤ人と薄紅色の神気を纏うザマスを見比べながら、キビトが問いかける。
「か、界王神様! ターニッブ殿は、勝てるのでしょうか!?」
「…分かりません。ですが悟空さん達が居ない今、彼に頼るしかないんです!!」
真剣な表情で告げる界王神に、キビトも厳つい顔を鋭く引き締める。
ザマスは、神々の長である全王すらも世界から排除した。
“この世界”でザマスに敵うものは居ない。
「ーーフン。全王をも弾いた絶対の神を相手に、勝てぬ闘いを独りで挑む、か。とんだ馬鹿が居たものだな」
金色の髪を靡かせて笑う超17号の前に、ゴワスが歩み寄って来た。
「本当にそう思うか?」
「ーーザマスの師か」
自分の視線をザマスとターニッブの二人に固定したまま、超17号はゴワスに返す。
「教えてくれ。お前達は、この世界をどうするつもりなのだ? ザマスが世界を管理し、お前達が世界を整えるというのならば、世界を破壊するつもりはないのか?」
問いかけるゴワスに、超17号は笑んだまま、告げる。
「逆に聞くが、世界を破壊するつもりなら全王に刃向かおうと思うのか?」
「では、この闘いの意味はなんだ!?」
思わず叫ぶゴワスに、超17号は笑みを引っ込めて冷ややかに見やる。
「俺達の支配する世界に服従して生きるか、それとも逆らって滅びるか。選ばせてやろうと言う話だ」
歯を食いしばって睨みつけるゴワスに、超17号は淡々と長い金の髪を靡かせて続ける。
「問答無用で滅ぼそうとする全王よりは、余程マシだと思うがな?」
「……全王様は偉大なお方だ。ザマスやお前達がどれほど望もうと、あのお方と同格にはなれん」
「根拠のない強がりをーー」
嘲笑する超17号に、ゴワスが静かに告げる。
「お前達が作り出せるのは常世ーー。時の流れが止まった偽りの世界。生まれ育ち、老い衰え、死ぬ。こういう時の流れまでは、お前達の世界では作り出せない。以前の世界に外観だけよく似せた箱庭でしかない。それがお前達の限界なのだ!!」
ゴワスの言葉に超17号は笑みを消すと告げた。
「限界か。確かに、俺は神ではない。神になろうとしたところで、人は神にはなれない。世界の意思と融合したザマスとて界王という神から更に逸脱した存在には成ったが。それでも全王には成り得ない」
「そうだ。お前達の望む“生きる世界”そのものが、全王様がいなければ成り立たないものなのだ。あの方を排除した時点でお前達は”生きること”を放棄するしかない。残る道は“永遠不変の空間”だけだ」
言い切るゴワスに対し、超17号は淡々と告げる。
「だが、それがどうした?」
「………良いのか、それで?」
「良いも悪いもない。全王という存在そのものを俺たちは認められない。奴が作り出した神とやらの正義もな。世界の意思は既にお前達、神を嫌っている。滅ぼされるくらいならば、生きることを放棄してでも不滅となろうとする。その結果が、今の俺たちだ」
超17号はゴワスから視線を外し、ターニッブと激闘を繰り広げているザマスに目を向ける。
「既にこの世界は、天使どもから見放され全王からも不要と判断されている。それでも滅びることを受け入れられないのが、生きたもの達の意思。生きることに理由など要らない。生きる可能性があるのならば最後までそこに縋る。それが命の正しい在り方ではないのか?」
「その在り方はお前達自身によって否定されてしまうのだ。滅びを拒否するあまり、時の流れが無くなった命の意味さえ変わる。お前達が作り上げたこの世界ではな」
「では、このまま全王の裁きの下に滅びるか? それともお前が本来居るべき過去の世界に戻るか? 俺はどちらでも構わないが」
既に、この世界の判決は済んでいる。
トランクスの未来世界という存在は、全王によって消されている。
代わりに残されたのはザマスが作り上げた、消される前と全く変わらない違う世界。
世界の意思と融合したザマスやそこから作り出された超17号達の存在が世界を残しているだけで、全王からの干渉の無い世界は既に時の流れが止まっている。
やがて“生きる者(変化するもの)たち”は誰も居なくなるだろう。
ただ“在るというだけ(永遠不変)のもの”になるのだ。
超17号から見て、ターニッブのしていることなど意味はない。
ザマスを倒したところで、世界は既に滅びている。
ドラゴンボール無き世界は、元に戻ることなく無に帰すのみだ。
「逆に問う。この闘いに意味があると思うか? 既に“滅びた世界の神”よ」
超17号の問いかけに、ゴワスは静かに黒い瞳を超17号の目に向ける。
「今、生きている未来世界の地球人達とトランクスも。やがてはザマスの世界に取り込まれる。此処にあり続けるとは、そういうことだ。ザマスを倒せば、世界は全王に消された状態に戻る。生きているものがいる世界など、既に存在しない。ザマスの言いそうなことを言うならば、既に世界は神界(ヴァルハラ)と化した、か」
ゴワスをして何も言えない。
既に、滅ぼされた世界の代わりに、永遠不変の世界が広がっている。
ザマスを倒すことで全王が消す前の未来世界が戻るならば良いが、そうではない。
倒せば“無”の世界になるのだ。
「どちらにせよ。未来時空の世界では“生きているものは、生きてはいけない”ということだ。その事実を知りながらもザマスと闘う行為に、俺は意味があるとは思えんな」
猛る黄金の炎を纏う超サイヤ人を冷たいアイスブルーの瞳で見つめ、冷笑を浮かべながら超17号は告げた。
彼の言葉を否定する力は、もはやゴワスには無かった。
ーーーー
ーー廃墟と化した北の都。
孫悟空・ゼノ、ゴクウブラック、ターレスと言った超サイヤ人が並び立つ中、白銀の髪をリーゼントにしたスーパーベビー2と、七つの龍の球を胸に植え込んだ超一星龍が対峙していた。
「フン、どうやらターニッブは元居た過去の世界に弾かれたわけでは無いようだな。俺としたことが、少々焦ったわ……」
身をゆっくりと起こし、遠き地によりザマスから送られてくる映像と宿敵の気に、ニヤリと龍人は笑う。
「だがーーよくも、俺とターニッブの戦いを邪魔してくれたな。孫悟空!!」
ターニッブと激戦を繰り広げた末に倒された邪悪龍・一星龍は再び立ち上がり、蒼黒い雷のようなオーラを身に纏って怒りの咆哮を上げる。
赤と黒の服を着た同じ顔の二人の人物を睨みつける。
「…ターニッブの気が、界王神界に? ザマスの仕業か」
黄金の炎のような気を感じ、黒い道着のズボンに赤い羽織を上着にして青い帯を腰で締めた超サイヤ人、孫悟空・ゼノは鋭い翡翠の瞳で呟く。
「ザマスのヤツめ、ターニッブを使って更なる高みに至るつもりか。こんな所で油を売っていられんな」
構えを取るゼノとブラックの脳裏に突如、界王神界でザマスと激闘を繰り広げるターニッブの姿が映される。
二人は同時に目を見開いた。
「!? 見えているか、ブラック?」
「…ああ。コレは、ザマスとターニッブの戦いか。なんと猛々しい…! しかし、何故ザマスの奴は、界王神界の映像を私たちに見せている?」
ゼノの呼びかけに応えながら、ザマスの思考を読もうと思案するブラック。
彼に応えたのは、超サイヤ人ターレスとの打ち合いを中断し、一星龍の隣に降り立ったベビーだ。
「なんだ? 同じザマスのくせに、お前達は奴の思考を読めんのか?」
「…奴は私であり、私でないザマスだ。世界の意思などというふざけた存在と融合し、堕落した神の考えなど知らんわ」
即座に言い返すブラックにベビーはニヤリとする。
「ザマスには、どう足掻いても勝てない」
ベビーの言葉にターレスがゼノとブラックの二人から離れた位置に降り立ち、腕を組んだまま問いかける。
「どういう意味だ、ベビー? 今のターニッブに勝てるヤツが居ると思うのか?」
脳裏に現れる真・超サイヤ人の力強さは類稀なるもの。
それでもベビーの余裕は変わらない。
「確かに、あのサイヤ人は強い。だが、一人でザマスを倒せると思ってしまったのが、ヤツの敗因だ。これから奴は絶望をその身に叩き込まれて敗北する。その映像を生きている人間どもに見せつけて、俺たちの支配を受け入れるようにするのが目的だ」
「…ほう?」
ターレスが冷酷で残忍な笑みを浮かべ、ブラックが訝し気に瞳を細める。
ゼノは鋭い翡翠の瞳でベビーを睨みつけた。
三人の同じタイプの顔を持つサイヤ人に向かって、ベビーはニヤリと笑いかける。
「お前達、諦めの悪いサイヤ人共には口で言うよりも見せた方が早いだろう? 地球人共の気力も根こそぎ奪えるだろうしな。我らの世界の一部となるか、足掻いて無へと帰るのか。これは、そういう話だ」
ベビーの言葉に、ブラックの灰色の瞳が怒りを露わにして見開かれる。
「まさか、ザマスめーー! 全王様に、この世界を消させたと言うのか!!」
ベビーがニヤリと笑って返す。
「そういうことだ。俺たち亡霊にとって、この世界は最も都合の良い世界と化したわけだな」
「お、おのれ…! 世界を管理する神が、命の価値を、星の美しさを、自然の尊さを変えるとは。貴様らぁあああああっ!!!」
ブラックの身に纏わる薄紅色の炎のようなオーラに、金色のスパークが生じる。
怒りがブラックの力を引き上げている。
「許さんぞ、咎人ども…! 神の裁きを受けるがいい!!」
怒りに震えるブラックを前にベビーはニヤリとすると、右手を天にかざした。
「出でよ! 我が兄弟よ!!」
常世の霧によって構成された雲から、二人の異形が姿を現わす。
ハッチヒャックベビーとジャネンバベビー。
それぞれ怨念と悪の気が集まり、実体化した存在だ。
ベビーと同じ気を彼らは放っている。
「ジャネンバだと? ブウが飼っていた奴を惑星の意思の力で模したのか?」
ターレスがジャネンバベビーを見ながら告げると、ベビーがニヤリと返す。
「これは別次元の俺の可能性達だ。ツフル人の科学者ドクターライチーが作り出した、サイヤ人への怨念の塊ハッチヒャック。地獄の悪の気の集合体ジャネンバ。どちらも強力でありながら知能を持たない。肉体とするには打ってつけだった」
ニヤリと同時にハッチヒャックベビーとジャネンバベビーが笑う。
ブラックがフンと吐き捨てながら、構える。
「一度倒した雑魚など、私の敵になると思うのか?」
侮蔑の笑みを浮かべるブラックに、ハッチヒャックベビーとジャネンバベビーがニヤリと返す。
「貴様らを足止めするには十分だ」
「…足止めだと? 何が目的だ」
ゼノの問いに返したのは、一星龍の強烈な右ストレートだった。
咄嗟に両手で受け止めるも痺れる。
「…! 貴様!?」
目を見開くゼノを睨みつける真紅の瞳。
そのまま、後方へ弾き飛ばされる。
「! ゼノ!!」
ブラックが思わず目をそちらに向けた隙を突いて、ジャネンバベビーが目の前に踏み込んで来ている。
「! しま!?」
強烈なハイキックに首を後方へ仰け反らせながら吹っ飛ぶブラック。
二人が叩きつけられたビルは、積み木のように跡形もなく音を立てて崩れ落ちて行った。
そちらを見ずにターレスは一星龍と三人のベビーを睨みつける。
「次から次へと虫ケラみたいに増えやがる…! くたばり損ない共が!!」
超サイヤ人のオーラを滾らせ、ターレスが冷徹な翡翠の瞳を向ける。
「…一星龍、兄弟達よ。ここは任せるぞ」
「ああ、生き残った地球人共も。さっさと奴隷にしてやるのだな」
いやらしい笑みを浮かべる二人のベビーと、淡々と告げる一星龍。
「分かっている、ザマスの計略どおりに事が運べば。抵抗する気力すら起きまい」
気を纏い、その場から去ろうとするベビーを見てターレスが叫ぶ。
「逃げられると思うのか!?」
ベビーに向けて駆けるターレス。
彼の眼前には、二体のベビーの分身が現れた。
「やらせるか!」
「無駄だ、サイヤ人!」
紅の刃を振り下ろすジャネンバベビーと手の甲の水晶体を輝かせるハッチヒャックベビー。
「邪魔するなぁ、死人どもがぁああっ!!」
袈裟懸けに振り下ろされた剣を右拳で受け流した後、拳を解いて掌で正拳突きを掴み止めるターレス。
二人のベビーが目を見開くと同時、右拳を掴み止めた姿勢のままターレスの掌から紫の光が迸る。
「くたばれ!!」
強烈なエネルギー波が放たれ、ハッチヒャックベビーは光柱の中に消えて行く。
「! ぐぁあああっ!?」
振り返りざま、ターレスの左手から紫のエネルギー波が背後を取っていたジャネンバベビーに放たれた。
咄嗟に剣を横に構えて受けるジャネンバベビーだが、ターレスの笑みは止まない。
「その程度の力で、俺を止められると思うのか!?」
放たれた光が一気に倍以上に膨れ上がり、爆発する。
「ぐぉおおおっ!?」
再び光柱が天に突き立ち、ジャネンバベビーが消えて行った。
二つの光柱を見据えてニヤリと冷徹に笑うターレス。
しかし光柱は、漆黒の光に真ん中から縦に割かれて、中から二人のベビーが現れる。
漆黒に近い紫の気を身に纏って、悠然と歩いて来る。
「…神の気って奴か。ザマスと同じ色の気だな」
翡翠の瞳を鋭く細めるターレスの前に、一星龍が立ちはだかる。
「お前が、俺の相手をしてくれるのか? 邪悪龍の長とやら」
「相手? ターニッブならまだしも、お前如きが俺の相手になれると思うのか?」
「ククク、言ってくれるじゃねえか。薄汚い化け物風情が」
両者は同時に気を纏い、拳を握って中央でぶつかり合う。
「…なるほど。ターニッブを真・超サイヤ人にさせただけのことはある」
「フン。惑星の意思だった頃の残りカス程度の力を吸収して満足している貴様と俺達では、レベルが違って当然なのだ!!」
「なら貴様も取り込んでやろう…! 俺の力で叩き伏せた後でなぁ!!」
気を引き上げてぶつかり合う両者。
一星龍の巨大な右拳を下に屈んで避け、返しに右のボディブローを放つも分厚い左掌に受け止められる。
構わずターレスは右拳から金色の気を迸らせ、光を炸裂させて放つ。
「! 貴様!?」
「王子の技だが、サイヤ人の俺には使いやすくてね!」
光が爆発して、2メートルを優に越える一星龍の巨体が後方に仰け反る。
クルクルと巨体と思えない身軽さで身体を丸めて回転しながら後方に着地すると、一星龍が右掌を広げてターレスにかざす。
「ドラゴンサンダー!!」
放たれた雷光を左右にステップしながらジグザグにかわしてターレスは右手指を二本立てた後、左肩の前において前方に向かって突き出す。
「消えてろ、一星龍!」
緑色の光が指先から光弾となって放たれた。
咄嗟に両腕をクロスさせて受ける一星龍。
しかし重厚な肉体が一瞬、片足が浮くほどの衝撃を受けて体勢が崩れる。
拳を握って懐に飛び込むターレスを待っていたのは、真空の刃が渦巻く壁だった。
「なんだと!?」
「烈風真空斬!!」
両腕をクロスさせた姿勢で叫ぶ一星龍。
目に映らないほどに極小規模の竜巻を肉体の周囲に瞬間的に発生させ、ターレスを後方に吹き飛ばす。
天高く舞い上がるターレスに両腕を突き出し、一星龍は叫んだ。
「旋風回転刃!!」
ターレスの眼前に極小規模の強烈な竜巻が発生し、彼の全身を真空の刃が襲いかかった。
全身をズタズタに切り裂かれる。
「フン、他愛もない」
ニヤリと笑う一星龍の背後から、強烈な螺旋を描いたビーム砲が腹を貫いた。
「な、何ぃ!?」
腹に空いた大穴を見て目を見開く一星龍が振り返った先には、冷酷な笑みを浮かべたターレスが、金色の気を纏いながらニヤリと笑っていた。
切り裂かれた映像のターレスは、残像としてそのまま消えて行く。
「……魔貫光殺砲。カカロットの仲間やセルとブウが使う技だ。なかなかの威力だろ?」
ターレスは翡翠の瞳を残虐に歪めて笑みを深める。
「フン、孫悟空の仲間の技などを覚えたくらいで、良い気になるなよ!!」
腹に空いた大穴部分はピンク色のスライム状に変わり、粘土細工のように穴を塞いで、元の重厚な鎧のような白い肉体に変化する。
「全ての邪悪龍を取り込んだ今の俺に、技の多彩さで敵うと思うのか、バカめ!!」
一星龍の言葉にターレスは笑みを返す。
「ククク。そいつは、どうだろうな?」
人差し指を立て気を集中して指先を相手に向け、赤く細い光を放つ。
「ぬ?」
光はアッサリと一星龍の頬を裂きながら、後方にあったビルを貫通して破壊した。
ーーデスビーム。
ターレスは不敵に笑いながら続ける。
「宇宙の帝王ーーフリーザの技だ。上手いもんだろ?」
言いながら次々と光を放つターレス。
紙一重で体を左右に見切って避ける一星龍。
「指先から気を放ったくらいで調子に乗るなよ。そのくらい、俺にもできる!」
ーー秒殺魔光弾。
緑色の小さい光弾が、ターレスの放った光にも劣らぬスピードで飛んでくる。
更に貫通力も威力も桁が違う。
咄嗟に左掌を前に突き出して三連続の光弾を掴み止めるも、翡翠の瞳は鋭く細められる。
「クク、少しは効いたぜーー!」
左手を突き出した構えから連続でエネルギー波を放つ。
「舐めるなよ、バーニングスピン!!」
真紅の炎を身に纏い、摂氏六千度を超える劫火を纏って回転しながら突っ込んでくる。
炎の竜巻と化して体当たりしてくる一星龍は、ターレスの放った連続光線を全て弾き飛ばして突っ込む。
「はぁあああっ!!」
ターレスも腰だめに拳を置いて気を高め、身に纏うオーラを紫色の球状に変えて両拳を前に突き出して体当たりを仕掛ける。
ーーノヴァストライク。
真紅の竜巻と紫色の光線と化した両者が、轟音と共に空中でぶつかり合った。
ターレスが得た力で“可能性を取り込んで技を覚える”ことは可能だ。
だが使いこなすとなれば勝手が違う。
一星龍は、完全に他の邪悪龍の技と能力を取り込んで自分のモノにしている。
その自分の技に食い下がるターレスに彼は違和感を覚え始めていた。
「ただのサイヤ人だったはずの貴様が、可能性を取り込む力を得たとは言え、何故これほどまでに使いこなせている!?」
拳を繰り出しあいながら、問いかける一星龍にターレスはニヤリと返す。
「貴様のような化け物を脅かせれるとはな。血の滲む思いをさせられただけのことはあるぜ」
「ほざけぇええ!! フリーザやセルのような下等生物に、邪悪龍の技が破れてなるモノか!!」
「なら、次は下等な技の融合ってヤツを見せてやる!!」
右手を顔の横に置き、左手を重ねて左脚を曲げて野球の投手のように掲げる。
「ベジータのギャリック砲か! そんなものが俺に効くと思うのか!!」
「残念、不正解だーー!」
そう言うとターレスは両手を突き出して光を放った。
明るい朱色の光線は螺旋の光を身に纏って放たれている。
「ベジータのギャリック砲の構えから、ピッコロの魔貫光殺砲を撃てるだと!?」
しかも光線の大きさはギャリック砲並み。
ターレスの光は油断していた一星龍の胴体を見事に撃ち抜いて、魔貫光殺砲よりも大きい穴を開ける。
「ぐぉおお!?」
思わず前かがみになって穴を両手で塞ごうとしてしまう一星龍。
その目の前にターレスが踏み込んでいる。
真紅の瞳に笑いかけると一星龍が反応して、右ストレートをターレスの顔目掛けて放った。
ターレスは軽く首を左に倒して躱すと、強烈な左拳を一星龍のボディに叩き込む。
「ギャリック光殺砲。波動を応用して下等な二つの技を融合したーー! なかなか、効くだろ?」
一星龍の身体はくの字に曲がり、顎がターレスの目の前に下がる。
そこを見事に右ストレートで撃ち抜いた。
「がはぁっ!?」
ターレスは両腕を大きく天に掲げた後、前方に向かって突き出して青い渦を巻く光の球を作り上げる。
その光はまるで銀河の星々の輝きを再現するかのように美しい。
「貴様! その技は!?」
目を見開く一星龍に向かってターレスがニヤリと告げた。
「終わりだ、一星龍」
強烈な光の球を練り上げるターレスに驚愕するも一瞬。
一星龍はすぐさま、右手の五指から光弾をターレス目掛けて放った。
「させるかぁ!!」
機関銃のように次々と速射で光弾が放たれる。
完全に動きを捉えて放たれているため、避けることなどできない。
一星龍の放った光弾は、見事にターレスの鎧ごと胸板を撃ち貫いたのだ。
「やった!!」
笑みを浮かべる一星龍だがターレスは、一星龍の予測を更に上回った。
胸を撃ち抜かれたターレスは、陽炎のように消えて行ったのだ。
「こ、これは!?」
残像拳だと気付いた時には、既に遅い。
気配を感じて振り返ると、両手を突き出した状態で銀河のような青い光の渦を生み出したターレスが、“翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳”で笑みを浮かべて其処に居たのだ。
「ビックバンーーかめはめ波ぁあああ!!!」
放たれる光はあまりにも強大で、世界の全てを飲み込むほどの一撃だった。
「ぐわぁああああっ!!!」
光の奔流に飲み込まれて影となって消えて行く一星龍。
漆黒の曇天を打ち貫いたターレスの光は、全てを浄化するように雲を消し飛ばしていった。
瓦礫から立ち上がりながらゼノとブラックが足を震わせるほどに、とんでもない一撃だった。
「な、なんだ? 今の技はーー!?」
「どういうことだ? 何故、ターレスにアレほどの力が?」
呆然とする二人の孫悟空の肉体を持つ神の頭上で青い空が太陽と共に姿を見せる中、一星龍が爆発した地点から拳大ほどのオレンジ色の球が幾つか飛んで来た。
咄嗟にゼノは、目の前に来た球を掴み止める。
「こ、これはーー! ドラゴンボール…!!」
震えるゼノの声に、ブラックも目を見開いて、ゼノの掌にある拳大の球を見つめる。
四つの星が入ったオレンジ色の球が、そこにあった。
「これは悟飯老のーー! では、あの一星龍というのは!?」
銀色の瞳を見開くブラックの前にゆっくりと白い人型の龍が爆発した光の向こうから現れた。
額にヒビの入った青色の一星球を埋め込んだ状態で。
「何故、気付かなかったんだ…! コイツはドラゴンボールを…!! だが、何故だ!?」
ゼノが目を見開きながら問いかける中、ボロボロになった一星龍はニヤリと笑ってターレスを見据えた。
「驚かしやがって…! だが、フュージョンした孫悟空やベジータほどの威力は無いようだな」
黄金の炎を纏ったターレスはチッと吐き捨てる。
「フン。超サイヤ人4になったカカロット達が倒せないわけだ。呆れたタフさだぜ」
そう言いながら真の力を納めて通常の超サイヤ人に戻る。
構えを取りながらターレスはゼノに向かって叫んだ。
「この世界のカカロット! ボサッと突っ立ってないで敵に備えろ!!」
「な、何だって?」
目を見開くゼノの前に二人のベビーが立ち上がって来た。
ブラックも瞳を鋭く細める。
「コイツ等、変異しているだとーー!」
ジャネンバベビーとハッチヒャックベビーの姿が、ターレスに倒される前とは別の姿に変わる。
ジャネンバの角がより太くなり、ハッチヒャックの肩はプロテクターのように横に伸びた。
「ククク、第二ラウンドと行こうか? 孫悟空」
「野蛮な猿のサイヤ人ーー。我らツフル人の恨みを知るがいい!!」
強烈な漆黒のオーラを身に纏い、先程の10倍以上のパワーを持って二人のベビーが立ちはだかる。
強大な敵を前にブラックが薄紅色のオーラを纏って構える。
だが隣のゼノはジッと四星球を見つめたまま動かない。
「どうした、ゼノ? 敵の強大さに恐れをなしたか?」
反応のないゼノを訝し気にブラックが向くと、ゼノの翡翠の瞳が鋭く細められていた。
「…諦めるのは、まだ早いみてえだな」
「………」
「ブラック、オレはこの闘いに必ず勝つ!!」
黄金の炎を身に纏い、真・超サイヤ人となって孫悟空・ゼノは二人のベビーに叫んだ。
対するブラックは燃えるゼノとは正反対のように、冷徹に銀色の瞳を細めてツフルの王を見据えた。
「当たり前だ。神たる私が、人間どもに何時までも良い気にさせる訳があるまい!!」
薄紅色のオーラを滾らせて、ブラックは右手に光の大鎌を生み出した。
二人の孫悟空に対し、二人のベビーがニヤリと笑って迎え撃つ。
いよいよ、雌雄を決する戦いが始まろうとしていた。
次回は、明日の午前7時です。
よろしくお願いいたします(≧▽≦)