ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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絶対神ザマスが生み出した邪悪な戦士達。

彼らとの熾烈な争いは激化する一方であった。

そのとき、惑星サイヤで現代の悟空に力を貸した別次元の地球育ちのサイヤ人の魂が孫悟空・ゼノに向かって語り掛ける……!


別世界からのエール 超サイヤ人4

 未来世界の地球。

 

 ほとんど廃墟と化した街の中、ゼノとブラックが相対するのは二人のツフル人によって作られたマシンミュータントの結晶・ベビー。

 

 赤い剣を構える鬼の姿をしたベビーと。

 

 緑色の水晶を手の甲から生やすベビー。

 

 二人のベビーに構えるのは、二人の孫悟空の肉体と二柱の神ザマスの魂を持つもの。

 

 孫悟空ゼノとゴクウブラック。

 

 四人は、互いに構えながら腰を落とす。

 

 体格的に一番ゴツいハッチヒャックベビーが、黄金の炎を身に纏うゼノに殴りかかった。

 

 左手で止め、返しの右ストレートを放つゼノ。

 

 両者は互いに高速打撃の打ち合いを始めた。

 

 ハッチヒャックの単純なパワーは、過去から来たサイヤ人の中でもブロリーに匹敵、もしくは凌駕するレベルだ。

 

 ゼノが真・超サイヤ人でなければ、あっと言う間に力で押し切られる。

 

 孫悟空とザマスの思考を融合しているものの、この次元の悟空は神の域にまで肉体を鍛えていない。

 

 真・超サイヤ人の力を使っているものの、この力には時間切れのリスクが常に付きまとう。

 

 過去の世界の孫悟空ならば真・超サイヤ人を使いこなしているが故に、頼る必要がない。

 

 破壊神ビルスとも戦える超サイヤ人ブルーがあるし、超サイヤ人の状態でブルーよりも上の力を引き出せるようになっているからだ。

 

 あのレベルに至るには、この世界の孫悟空は未熟。

 

 ハッチヒャックと壮絶な打ち合いを演じながら、ゼノは己の状態を確認して悔しそうにする。

 

( ターニッブの拳は、世界の意思を取り込んだザマスとも渡り合えている。ターニッブはザマスに気の上昇で大きく劣り、不死身であるザマスを倒す術は無いというのに心が折れていない。なんという強い心だ。真の力を限界を超えて使えるのも、あの精神力がそうさせているのだ。それに比べて、オレはーー!)

 

 自分の状態を確認しながら、ゼノは憤りに満ちていた。

 

( 情けねぇ。オレは、過去の孫悟空(俺)に力を借りなきゃ何にもできねえのか!? 世界の意思ザマスの手下に負けてるようじゃヤツには、勝てねぇ!!)

 

 真・超サイヤ人の力を使って、やっとベビーの分身と互角では戦いに勝てない。

 

 ターニッブのように己の力だけで闘いたかった。

 

 真・超サイヤ人に振り回されたり、頼り切って力を引き上げられるのでなく、自らの意思で力を引き上げる。

 

 己の格闘センス一つで、戦う。

 

 その境地に至るには、ゼノには時間が足りない。

 

 自分が変身した真・超サイヤ人に、これまでの自分の常識を遥かに上回る世界を見せつけられているだけだ。

 

( オレは、こんな世界まで来れたのか。修行して強くなり続けたら、オレはこんな世界にまで…!!)

 

 壮絶な殴り合いを行いながらゼノは、己自身に憤りを感じていた。

 

 どうしようもない事だろう。

 

 孫悟空は病に倒れたのだ。

 

 そんなザマスの思考をも飲み込むような怒りが孫悟空の思考が、ゼノの心を支配する。

 

 ハッチヒャックベビーの巨大な右拳を下にかいくぐり、ゼノは右拳のボディを叩きつける。

 

「ガハァッ!?」

 

 前のめりになりながら息を吐くハッチヒャックベビーの右頰に吸い込まれるように左フック。

 

 ガラ空きのボディに右膝蹴り、左ハイキックが次々と叩きこまれる。

 

 強烈な轟音と共にハッチヒャックベビーが仰け反る。

 

「この世界の孫悟空など、俺の敵ではないはず! 真・超サイヤ人とは、これほどまでに厄介なものか!!」

 

 口元をぬぐいながらハッチヒャックベビーが呟くと、ゼノは静かに憤りの眼差しを向ける。

 

「……!」

 

 これにハッチヒャックベビーはニヤリと笑った。

 

「気に入らないようだな、自分の身に纏う力が?」

 

「ああ。この力、もっと早くに目覚めていれば。超サイヤ人に満足せずに、その奥に進んでいれば。オレは、過去の俺やターニッブのように使いこなせてたかもしれない」

 

 超サイヤ人にさえ目覚めていれば、真の姿になることは容易い。

 

「そう思っちまった。はじめてだぜ、こんな気持ちは」

 

 そこに気づけなかった生前の自分にゼノの孫悟空の部分は未練を覚えていた。

 

 ザマスと融合したが故か、見たことのない世界に入れた自分を見たが故か。

 

 ゼノの心にある苛立ちは、更に募る。

 

 ハッチヒャックベビーが、邪悪な笑みを浮かべた。

 

「安心しろ。貴様の真の力は、もう電池切れだ」

 

 その言葉に、ゼノは黒の瞳孔が現れた翡翠眼を静かに鋭くしながら全身から大量の汗を噴き出している己の肉体を見つめた。

 

 ベビーの言うとおり、ゼノの身に纏う黄金の炎のような激しいオーラは静かに勢いを消し、金色の超サイヤ人のオーラに変化する。

 

 黒の瞳孔は消え、ただの翡翠眼となった眼でゼノは肩で息をしながらも静かにベビーを睨みつけた。

 

「…やっとか。これで、今のオレの実力がどのくらいかが分かる」

 

「クク、随分と余裕だな? 真・超サイヤ人でなければ俺にダメージを負わせることさえ難しいというのに。…ムカつく野郎だぁああっ!!」

 

 叫ぶと同時に気を爆発させて、ベビーが一気にゼノの懐に踏み込んで来た。

 

 真の力を使い切ったとは言え、ゼノは孫悟空とザマスが融合した存在。

 

 己の中で引き上げられた世界は、はっきりと眼に映る。

 

 だが、身体が反応してくれない。

 

( 左ボディから左フック、右のハイキックから左ストレートか!)

 

 先読みをしながら、相手の初動に合わせて反応速度を上げるゼノだが左ボディを右腕でガードした瞬間。

 

 鈍い打撃音が響き渡り、ゼノの表情が苦いものに変わり体制が崩れる。

 

 しっかりとガードして受けた一撃だが、全く威力を殺せなかった。

 

「ぐ、う…!?」

 

( まったく情けねえ。真の力を使わなきゃ、こんなにも差があんのか!!)

 

 続け様に放たれた左フックを上半身を後方に反らせる事で避けるゼノ。

 

 反らせた距離は右ハイキックを放つに絶好の間合い。

 

「ぬん!!」

 

 予測どおりに放たれたハイキックに、ゼノが叫んだ。

 

「ここだぁ!!」

 

 自分のあご先に放たれる蹴りを右ハイキックで相手のくるぶしに狙い定めて放つ。

 

 鈍い打撃音が響き渡りベビーの足先が逸れ、ゼノの顔の右の空間を蹴り抜いて止まった。

 

 逸らされたのを確認したベビーはニヤリと笑い、蹴り足を引き戻して踏み込みながら、左ストレートを放つ。

 

「つぅおりゃあああっ!!」

 

 左ストレートに合わせるようにゼノが叫びながら、左軸足一本でジャンプしながらの飛び回し蹴りを放った。

 

 拳と交差するように放たれた蹴りが顔面に決まる。

 

 ニッと蹴りを受けたまま笑うハッチヒャックベビーにゼノは瞳を鋭くした後、左右のストレートをハッチヒャックのボディに叩きつける。

 

 棒立ちでまともに食らうハッチヒャックベビー。

 

 ゼノは続けて左右のストレートを交互に放ち続けながら、ハッチヒャックの巨体を後方に引き摺らせつつ、強烈な左の下段・中段・上段廻し蹴りを連続で決める。

 

 最後の上段廻し蹴りが首の付け根に直撃した姿勢でニヤリとベビーは笑った。

 

「うっ!?」

 

 瞳が合い、思わず目を見開くゼノの頭をベビーは片手で掴み上げる。

 

「…無駄な抵抗は終わりか? サイヤ人」

 

「ぐ、あぁあ……っ!」

 

 宙吊りにされたゼノは、両手でベビーの左腕を掴んで引き剥がそうとするも動かない。

 

 パッと手を離すベビー。

 

 慣性に従い落下するゼノのがら空きの鳩尾を強烈な右膝蹴りが襲った。

 

「く、あっ!?」

 

 目を見開いて宙で硬直するゼノの眼前に左掌が突き出され、緑色の強大な気弾が放たれる。

 

「ぐぁあああっ!?」

 

 まともに喰らいながら気弾にゼノの肉体は後方へ運ばれ、地面に叩きつけられると同時に爆発する。

 

 圧倒的な一撃は地形を簡単に変えてしまった。

 

「フン、他愛もない」

 

 ニヤリと笑うハッチヒャックベビーの前に、赤い羽織をボロボロにして黒髪になったゼノが立ち上がってきた。

 

 満身創痍の肉体に、息も絶え絶えと言った様子。

 

「クク。流石にしぶといな、サイヤ人。だが、これで終わりだ」

 

 静かにベビーは水晶体のついた両腕を胸の前で折り畳んでクロスさせる。

 

 光が収束されて行き、水晶体が輝き始める。

 

 肉体は限界を迎え、倒れてもおかしくなき怪我を負い、それでもゼノはハッチヒャックベビーを睨みつける。

 

「まだだ、私はまだ闘える!!」

 

 諦めてたまるか、受け入れてたまるか。

 

 最後の最後まで足掻いてやる。

 

 そんな闘争心が、ゼノの黒い瞳から吹き出ている。

 

「フン、肉体はとうに限界を迎えているというのに。大した諦めの悪さだ」

 

 ニヤリとしながら、ハッチヒャックベビーはゆっくりと気を高める。

 

 リベンジャーカノン。

 

 この技の弱点は、放つまでに必ず一定の時間がかかるということだ。

 

 ベビーに寄生される前の本能のみのハッチヒャックでは持ち前のパワーを使ってイタズラに技を放つしかなかったが、ベビーという知性を得たことでハッチヒャックは完全体へと至った。

 

 放たれれば、今のゼノなど跡形も残るまい。

 

 それでもゼノは逃げずに構える。

 

 両掌を相手に向け、手首を上下に合わせて組む。

 

 続いて右腰に両手を置いて、体を捻りながら青白く光る気を溜め始める。

 

「負けて、負けてたまるか。貴様らのような力でしか物事を見ない奴等に負けてたまるか。他人を虐げて何も感じない奴等に負けてーー負けてたまるかぁあ!!」

 

 白い気を吹き上がらせ、ゼノの作り上げた光の球が大きくなる。

 

「ゼノ兄ちゃん!!」

 

「逃げてよ、ゼノお兄ちゃん!!」

 

 その時、ゼノの耳に少年と少女の声が届いた。

 

 声のした方を見れば、ブルマやプリカと共に幼い兄妹が必死にゼノを見つめている。

 

「ハル、マキ! 何故、こんな危険な場所に!?」

 

 目を見開くゼノに未来世界のブルマが語りかける。

 

「地球のどこに居たって、危険なのに変わりないわよ。それなら、この子達の希望どおりにするのが私たちの役目でしょ?」

 

「ゼノ様。今の貴方ならば、聞こえるはずです。サイヤ人の可能性ーー別次元の貴方の声を!!」

 

 プリカに叫ばれ、ゼノの頭に痛みが走る。

 

 脳裏に浮かぶのは、赤い体毛と尾を持った長い黒髪の超サイヤ人。

 

「こ、これは…? あの時のベジータが引き出した別次元の超サイヤ人か?」

 

 痛む頭に顔をしかめながら、ゼノが呟く。

 

 これにヤジロベーが声を張り上げた。

 

「何しとるぎゃ、孫!? 目の前、見んしゃい!!」

 

 その声に応えるようにハッチヒャックベビーは水晶体に溜めた強力な緑色の光弾をゼノに向けて放った。

 

「さらばだ、サイヤ人! リベンジャーカノン!!」

 

 頭痛に苛まれたゼノを緑色の光が包み込んでいく。

 

「ゼノ、ゼノ兄ちゃぁあああんっ!!」

 

 ハルが声を張り上げブルマ達が呆然と見守る中、光弾はゼノに直撃する。

 

 否。

 

 光弾は、ゼノの眼前で宙に浮かんで止まっている。

 

「何だと?」

 

 白目のゼノの肉体から赤みがかった金色のオーラが吹き上がっている。

 

「こ、この力ーーまさか!?」

 

ーーーー

 

 漆黒の闇の中、孫悟空ゼノは向き合っていた。

 

 自分よりも肌が浅黒くなり、青い道着に山吹色のズボンを白い帯で締めた孫悟空と。

 

「…孫悟空なのか? キミは?」

 

「ああ! オラ、孫悟空だ! オメエ、オラと融合した昔のオラに会ったろ? アイツが言ってた未来のオラさ!」

 

 明るく笑いながら、青い道着の孫悟空は笑う。

 

「オメエにも力、貸したくなっちまった。今のオメエじゃ、どう逆立ちしてもベビーを倒せねえ。けどよ、ザマス様と融合したオメエなら、尻尾が無くてもなれるはずだ」

 

「…そう、か! キミは、別の未来のーー!」

 

「行くぜ、ゼノ。これ以上、アイツらのいいようにさせんじゃねえ!!」

 

 それだけを告げて青い道着の孫悟空は白い光の球になると、ゼノの胸の中に吸い込まれていった。

 

ーーーー

 

 爆発し白い光が辺りを包み込む中。

 

ーーゴァアアアッ!!

 

 人ならざる異形の鳴き声が響き渡る。

 

 見れば、金色の体毛を持った大猿がハッチヒャックベビーに向けて咆哮していた。

 

「間違いない、俺の(ベビーの居る)世界の孫悟空の可能性を取り込んだというのか! ゼノめ!!」

 

 忌々しそうに叫ぶハッチヒャックベビーの前に、金色の大猿は光を纏って人型に縮みながら進化する。

 

 赤い体毛を持った剥き出しの上半身。

 

 黒い道着のズボンの後ろから赤い尾が揺れている。

 

 長く伸びた黒髪に赤い隈取りをしたような目、その瞳は金色に黒の瞳孔が現れている。

 

「こ、この尋常ではない気の膨れ上がり方は…!」

 

 超サイヤ人ロゼのブラックが目を見開いてゼノを見、超サイヤ人のターレスが静かに笑みを浮かべる。

 

「…超サイヤ人4、か。これで、ゼノの基本戦闘力のレベルは一気に跳ね上がった」

 

 ニヤリと対面する一星龍に向かってターレスは笑いかけた。

 

「ターレス!!」

 

 自分を呼ぶ声に目を向けると涙目になったザンギャが、こちらに声を張り上げながら駆けて来ていた。

 

 そちらに向き直り、青い肌の美女を逞しい腕で抱き止める。

 

「…待たせたな、ザンギャ。しばらく見ない間に、一段と美しくなった」

 

「…バカ! さっさと薄汚い化け物を片付けて、二人きりになりましょう?」

 

 重なり合おうとする男と女の影だが、唇が触れ合う寸前でターレスの腕が前方に突き出される。

 

 その掌に強烈な光弾が、ぶち当たり爆発した。

 

 頰を赤らめ潤んだ瞳で不満げに見上げてくるザンギャを見ず、ターレスは冷酷な笑みを浮かべて光弾を放ってきた相手に笑いかけた。

 

「貴様らも、そろそろ年貢の納め時だな?」

 

 言いながら、ザンギャの細い腰に回していた腕を外して一歩前に出る。

 

「…悪いが、お楽しみは後回しだ」

 

「待ってるから、早くしてね」

 

「ククッ、分かっているーー」

 

 ゆっくりと構えを取りながら告げるターレスを、物欲しそうにザンギャは見つめている。

 

 そんな二人にヤジロベーは顔を赤らめながら片手で目を覆った。

 

「なんだぎゃー、こっぱずかしいでしょ〜!」

 

「ククッ、俺の仲間になるんなら見慣れといて貰わねえとなぁ…」

 

 そんなヤジロベーの声に余裕の笑みを返して、ターレスは金色のオーラを身に纏う。

 

 これに一星龍がニヤリと笑った。

 

「笑わせるな。赤毛猿の孫悟空など、この俺の敵にすらならんわ!!」

 

 青黒い気を纏って拳を構える一星龍に対し、ターレスも金色の気を纏って殴りかかった。

 

 ターレス達のぶつかり合いを尻目にジャネンバベビーの斬撃を光の大鎌で止めたブラックは、静かに超サイヤ人4と呼ばれたゼノを見つめる。

 

( なんだ、あの変身は? 超サイヤ人神の気を纏わず、真・超サイヤ人の力を引き出さずに、何故これ程までのパワーアップができる?)

 

 ブラックの困惑など無視するように超サイヤ人4の悟空ゼノはハッチヒャックベビーに向かって野生的な笑みを浮かべた。

 

「どうした、ベビー? 貴様には懐かしい姿だろ? 超サイヤ人4になった今のオレの身体には、チンケな技じゃ傷ひとつ付けられねぇぞ」

 

 冷徹で好戦的な低い声。

 

 真・超サイヤ人の時よりも更に野生的な口調。

 

「孫悟空…! 忌々しい赤い猿になりやがったか!!」

 

 言うと強烈な気弾を放つベビー。

 

 しかし、赤い体毛の胸板が光弾を真っ向から受け止めて消し飛ばす。

 

「…っ! 相変わらずの、化け物が!!」

 

「貴様はーーもう終わりだ。……ベビー」

 

「終わりだと? 終わるのは貴様だ、サイヤ人!!」

 

 共に拳を握りしめてぶつけ合う。

 

 相殺する両者の右ストレート。

 

 蹴りをぶつけ合い、乱打戦に突入する。

 

 タフネスとパワーを誇るハッチヒャックベビーに対し、超サイヤ人4は互角以上に渡り合っている。

 

 大柄な肉体のハッチヒャックに対し、標準的な体格で小回りの効くゼノは手数で一気にベビーを押し込んで行く。

 

「ば、ばかな!? これだけの手数を出せる上に、パワーも打たれ強さも俺と互角だというのか!?」

 

「当たり前だろう…? コイツは究極の超サイヤ人だ。貴様なんかーー5秒で倒す!!」

 

 打ち合いながら、気を一気に爆発させるゼノ。

 

 その勢いにベビーが目を見開く。

 

「なぁ!?」

 

 打ち合いながら、ベビーの右ストレートを左に見切って脇腹に左拳を叩きつける。

 

 動きが止まったハッチヒャックベビーの巨体に左右のストレートから、左ローキック、右ハイキックと、あらゆる拳蹴打が嵐のように叩き込まれた。

 

「が、はぁ…!?」

 

 仰け反りながら後方に引き下がるベビー。

 

 その横面に強烈なゼノの右ストレートが決まり、吹き飛んだところを間髪いれずに赤い光線が放たれた。

 

「10倍かめはめ波ぁああっ!!」

 

 ベビーは空中で停止し、目の前の光線に対しバリアを張って受け切ろうとする。

 

「こ、こんなもの…!!」

 

 しかし、光の幕はアッサリとベビーの希望を砕くように赤い光線に打ち破られて飛び散った。

 

「こ、こんな、バカなぁああっ!?」

 

 絶叫を上げながら、ハッチヒャックベビーは一瞬で空を射抜いた赤い光の中に消えていった。

 

 それを見送り、かめはめ波を放った姿勢から、ゆっくりと体を起こして超サイヤ人4悟空ゼノが呟いた。

 

「キッチリ5秒だーー。二度と化けて出て来るんじゃねえぞ」

 

 鋭い表情で呟きながら、ゼノの金色の瞳は消し飛んだハッチヒャックを睨みつけていた。

 

「ぜ、ゼノお兄ちゃん、カッコイイ…!」

 

「う、うん…!」

 

 マキとハルが思わず呟くと超サイヤ人4はゆっくりと彼等に振り返り、ニッと笑った。

 

ーーーー

 

 ターレスと変わらずに戦う一星龍とは違い、ハッチヒャックベビーが倒されたことにジャネンバベビーは焦りを露わにしていた。

 

( ハッチヒャックのパワーとタフネスを得た俺でも、超サイヤ人4には敵わないというのか。お、の、れ、、、!)

 

 ジャネンバベビーの前に立つ超サイヤ人ロゼとなったブラックも、超サイヤ人4のパワーに目を見開いた一人だ。

 

「ゼノのヤツめ、他次元の孫悟空を取り込んだというのか。これでヤツは、一気に超サイヤ人の可能性を制覇しやがった」

 

 理屈でなく感じる。

 

 おそらくは、ブラックの中にある孫悟空が教えてくれたのだろう。

 

 ゼノの身に何があったのかを。

 

( 単純な身体能力や基本戦闘力は神(ゴッド)の気を纏うロゼよりも上だ。孫悟空の可能性には、俺の未だ知らぬ変身があるというのか?)

 

 鋭い灰色の瞳を細めながら、ブラックは静かに呟いた。

 

「次元が変わっても孫悟空というサイヤ人が、とてつもない戦闘力の持ち主であることに変わりない、か。

 フ、それでこそ私が選んだ最強の戦士ーー! 怨念や悪の気の集合体などが実体をいくら持とうとも、孫悟空の敵ではないーー!!」

 

 そのつぶやきを聞きとがめたベビーは目を鋭くし、表情を険しくして鬼の牙をむき出しにする。

 

「笑わせるな! ただのサイヤ人の肉体など、俺の前には無力だということを教えてやる!!」

 

「ーーやってみるがいい。汚らわしい邪念の塊めが」

 

 赤い刀身を持った剣を抜き、斬りかかるジャネンバベビーに対し、ブラックは大鎌を振りかぶって斬り返す。

 

 互いの斬撃は、世界に線を描くように放たれて消える。

 

 ビルが、街が、山が、雲が。

 

 ブラックとベビーの得物が振るわれる度に斬り裂かれていく。

 

( チ! この大鎌、威力はあるが無用に星を切り刻む。ヤツの持つ剣も同質ーー、早めに決着を付けなければ!!)

 

 互いの斬撃が、目標物の遥か後方をも斬り裂いてしまうことにブラックは焦りの表情を浮かべていた。

 

 拮抗していた戦局はゼノの覚醒で一気に傾きつつある。

 

 決定打にするには、一刻も速く目の前のベビーの分身体を倒すしかない。

 

「私の完全なる勝利のためにーー散れ!!」

 

 薄紅色の緩やかな炎のようなオーラを身に纏い、ブラックは超サイヤ人ロゼの力を燃え上がらせた。

 




次回は、明日の午前7時です。

よろしくお願いいたします(≧▽≦)
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