惑星プラントと呼ばれ、かつてのサイヤ人によって惑星ベジータと名を変えられた先住民族。
優れた科学力を持ち、代わりに貧弱で短身痩躯な肉体しか持たなかった彼らだったが見下していたサイヤ人への恨みは根深く。
マシンミュータントと呼ばれる機械生命体ベビーにツフル王の因子を埋め込んでいた。
時を越え、世界を超えて、サイヤ人とツフル人の争いは続いている。
界王神界と呼ばれる神域。
天上知らずの黄金の気をぶつけ合わすのは、究極の合体サイヤ人ベジットと、世界の意思と融合し、サイヤ人の肉体を得たザマス。
極大のパワーのぶつかり合いは、絶対神の編んだ理にヒビを入れ、綻ばせていく。
究極の人造人間超17号は、それを忌々しげに確認した後。
目の前の白い道着の黒髪黒目のサイヤ人を見つめた。
「ザマスや一星龍のように俺を変えられると思うのか? ターニッブ」
「………」
ジッと真っ直ぐな黒瞳を向け、右拳を顎の横に、左拳を腰に置いて斜に構えるターニッブ。
構わず超17号は続けた。
「奴らだけではないな。お前と闘う事で変わったのは。孫悟空にベジータ、ブロリー、ターレス、バーダック。変わった奴らの拳には、お前の風の拳が宿っている。心の力をーー想いを拳に乗せる力がな」
握り締める。
まるで憎い仇を見るような瞳で、超17号はターニッブを睨みつける。
「そうやって、お前の拳は怨霊を変えていった。マイナスパワーの塊だった一星龍や己の正義に凝り固まったザマスをも。だがなターニッブ、少なくとも俺は変わらんぞ」
「………」
「俺は人間を嫌い、虐殺したこの世界の人造人間17号と18号を取り込んだ存在だ。人間の心を知らず。故に心の力に揺らぐことはない」
言い切る超17号に対し、ターニッブは静かに波動を足から噴き上げながら拳を構える。
その圧倒的な気に、超17号の目が見開かれた。
「ーーこの力。ターニッブ、貴様は通常の黒髪黒目の状態で真・超サイヤ人の基本戦闘力を引き出せると!? 孫悟空達でさえ、超サイヤ人にならなければ引き出せない己のフルパワーを!?」
ターニッブは、変身すらせずに己の限界を極める。
積み重ねた研鑽と修練が、彼を極みへと立たせるのだ。
「俺には、この拳だけが全てだ」
頑丈そうな拳を握り、静かにターニッブは語る。
「俺は、超サイヤ人を否定してきた。こんな力など望んでいなかった。俺はただ、格闘家としての強さを求め生きてきた。全てを破壊し、滅ぼしてなお高まる力など俺には要らない」
「ふん、サイヤ人が力を手にする事を嫌うとはな。臆病な男だ」
嘲笑する超17号をターニッブは真っ直ぐに見つめて頷く。
「そうだ、俺は弱かった。自分の中にある強大な力に怯えて逃げようとした。格闘家を辞めようとさえ思った」
黒い瞳に静かだが熱い炎が宿る。
声にも熱がこもるーー。
まるで凍て付いた氷を溶かすように。
「だがーー」
放たれる闘志は前に立つものを奮い立たせ、強者へと変える。
「そんな俺に喝を入れてくれた、強き宿敵(とも)がいた」
脳裏によぎるは、ナメック星をも覆うほどに強大な力と意志を持つ、逞しい金剛の如き肉体の帝王。
「俺がどんなに迷っても笑いかけてくれた、炎のような熱い親友(とも)がいた」
長い黒髪にM字の額を持つ赤い道着のサイヤ人の笑みと声が、自分を見失いそうになったターニッブを引き戻す。
「どんなに怯えて挫けても、ヤケになって己の命を省みなくても。俺の無事だけをただただ、ひたすらに祈ってくれる方々が居る」
惑星サイヤの若き王、白い巫女服に身を包んだ長く艶やかな黒髪の美女が、その瞳をターニッブに向けている。
「どれほど離れていても、どんなに苦しんでいても、俺は一人じゃない。だから俺は闘う。自分とーー自分自身と」
脳裏では惑星ジュエルで出会った山吹色の道着のサイヤ人が、ターニッブに拳を構える。
「超サイヤ人も、己の力の一部に過ぎないと。正面から向き合い、気付かせてくれた心友(とも)に恥じぬ為に。俺を待ってくれるーー未だ見ぬ強い奴に会うために!!」
拳を握り、腰だめに構える。
電刃練気。
渦巻く蒼銀の波動を足元から噴き立たせて全身に纏うターニッブの両手足に、真・超サイヤ人のーー黄金色をした雷が走る。
「17号、この拳を試すか!!」
繰り出された右正拳突きを、超17号の赤いルビーのような紅玉が埋め込まれた右掌が掴み止める。
凄まじい衝撃波が飛び散り、漆黒の熱い瞳と冷徹なアイスブルーの瞳が睨み合う。
超17号の掌からは、灰色と黒が入り混じった色ーー地獄でしか生成されぬ雷を纏っていた。
「…いいだろう。真っ向から貴様を叩き潰し、絶望を与えてやる、ターニッブ」
拳を突き放して距離を開けるや否や、両者は同時に地を蹴り、相手に向かって拳を振りかぶった。
両者の拳が交差して相手の横面を捉える。
鈍い音と衝撃をまき散らしながら、後方へ仰け反る二つの顔。
(なんだと!? コイツ、何という重い打撃だ!?)
拳の威力に超17号の瞳が見開かれている。
(ザマスや一星龍は、こんな重い拳を受けていたのか!)
対峙するターニッブの黒瞳は静かに超17号を見据え、仰け反った首を元の位置に戻して、真っ直ぐに突っ込んでくる。
一切後ろに下がる気が無い、と言わんばかりの動きに、超17号は忌々し気に表情を歪めた。
「真っ向勝負で俺に勝つつもりか!? 舐めるなよ、ターニッブ!!!」
冷徹にして冷酷だった超17号が、咆哮して拳を握り、真っ向から返している。
そんな超17号の様子を見たザマスは、ターニッブに顔を向けて笑いかけた。
「知らぬ間に冷酷で残忍な人造人間が、ターニッブの拳に影響されている、か。ーー厄介な奴だ」
「「気付いた時には、すっかり首ったけ。それが俺とお前の友ーーターニッブさ」」
「フ、違いない」
ザマスは自分の向かいに立つ強敵ーーベジットに笑い返した。
互いに強烈な力を纏い激しい戦いを繰り広げながら、まるで親友のように絶対の神と究極の戦士は笑い合う。
「「なあ、ザマス。アンタはもう、人間ゼロ計画なんて下らないものに興味が無いんじゃねえか?」」
サイヤ人の肉体となり、見た目も自分とほとんど変わらない真・超サイヤ人に向かってベジットは問いかけた。
真なるサイヤ人の肉体と絶対の神の魂を持つ男ーーザマスに向かって。
「……」
ザマスは笑みを引っ込ませて、ベジットを穏やかな眼差しで見据える。
「「ターニッブに出会っちまった。毛嫌いする人間の中にアイツが居たのが、アンタの敗因だ。違うか?」」
これにザマスは、ベジットから顔を背けて笑った。
「気付いていたのかもしれぬ。私は私の過ちに。気付いていながら、気付かぬふりをしていたのかもな。それを否応なく気付かせるーーお前やターニッブのような存在が、私には邪魔だった」
「「ザマス、今からでも遅かねえ。世界を元に戻してくれねえか?」」
ベジットの真剣な頼みに、ザマスは再び向き直ると首を横に振る。
「無理だ。いま、我が理を消せば世界は全王に消された無の世界に帰る。生きている人間はおろか、今を生きるすべての生命が無に帰すだろう。世界の意思となった我は滅びを望まぬ。だがーーかと言って生きとし生ける命達が狂うことも我は望んでおらぬ」
悲哀と自嘲を孕んだ笑みを浮かべてザマスは告げる。
「「……ザマス、様」」
戦闘中であり、倒すべき相手であるにも関わらず、ベジットの眼が気づかわしげにザマスに向かって見開かれた。
「なあ、ベジット。何が、いけなかったのだろう? 人間に期待した事が悪かったのだろうか? 許せなかった事が過ちであったのだろうか? 世界を愛したが故に、私は世界を狂わせてしまったーー。これでは、己が考え一つで世界を生み出し、滅ぼす全王と何も変わらん」
強大な力を放ち、圧倒的な存在と化してもザマスは嘆いていた。
望んでいたはずだ。
この肉体にも力にも後悔はない。
全王から消される世界を守れたのだ、悔いはない。
だがーー
「私は、世界を守れたと、思っていた。世界の意思と融合し、世界を存続させることができるなら。不変のものでもいいとーーだが、結果はコレだ」
「「…アンタは、やり方を間違えてんだ。だけどよ、やり直せるさ。神様だから、やり直せねえなんて。そんな事ねえよ」」
「人間ならば、それで良い。だが神に間違いは許されぬ」
ザマスは真のサイヤ人となった己を見下ろし、真っ直ぐにベジットを見据えて構える。
「そして、神は自らを殺めることを許されておらぬ。理を破壊した後、人間や生けるものたちの命を救う勝算はあるのか?」
「「時の界王神様の街に呼んでもらう予定だ。どのみち、この世界は復活できねえからな」」
「そうか、安心した。これで心置きなくーー我は悪として逝ける!!」
黄金の炎のようなオーラを纏い、ザマスは気をさらに高める。
「究極の合体戦士ベジットよ。我が意地を、我が意思を、我が嘆きを、我が強さを!! 我の全てを貴様に叩きつけてくれる!!!」
「「ーー諦めんなよ、神様。俺たち人間が諦めてねえのに、アンタが諦めてどうするんだ!!!」」
ベジットの熱い咆哮と黄金の闘気が、界王神界に燃え盛っている。
「「悪いがアンタを悪で終わらせる気はサラサラねえよ。アンタは、生きてその力で色々と償わなきゃならない。もう言葉で止まれねえんなら、俺の拳で止めてやる!」」
絶対の神ザマスを止めるため、真・超サイヤ人ベジットは遂に、己のフルパワーを引き出した。
その力の前に、界王神達は絶句する。
既に想像を絶する戦いが繰り広げられて来たというのに、まだ上があると言うのだから。
「「さあ、決着をつけようぜ。神様」」
おそらく、現存する破壊神を含めた全ての神々を黙らせる圧倒的な力を放ちながら、ベジットは静かに拳を振りかぶって突っ込んだ。
これにザマスも不敵な笑みを浮かべて拳を握り、ベジットに向かって駆ける。
デタラメなパワーとパワーが、互いを打ち倒さんと天井知らずに上がっていく。
「「龍ぅう拳ぇえん!!」」
「神・烈・演・舞!!」
三度、強力な右拳が互いの真ん中で激突した。
ーーーー
未来世界の地球にて。
ベビーと“ベビーの世界のブルマ”の前にトランクス達とバーダック、悟飯、ガーキンが向き合っている。
「…ベビー様」
「狼狽えるな、ブルマ」
界王神界での戦いとやり取りにブルマが不穏なものを感じたようにベビーに振り返ると、彼は分かっていると言わんばかりに応えた。
「ザマスなど最初からアテにはしていない。俺だ、俺こそがーー世界を統べる王に相応しいのだ」
「……ベビー様」
邪悪な笑みを浮かべたベビーにブルマは黙礼を返す。
その眼の前では、界王神界の出来事を見せられているトランクス達がいた。
「ーーどういうことなんだ? ザマスは、世界を。人間を含めたすべての生きるものを守ろうとしているっていうのか?」
「ターニッブの拳が、ザマスや奴と融合した世界の意思を本当に変えた。だけど、もう遅いってことなのか」
困惑したトランクスの疑問の声に応えるように悟飯が呟く。
「信じらんねえが、怨霊の塊だった惑星のーーいや、世界の意思が。世界を守ろうとしていたっていうのか?」
ガーキンが訝しげに言う傍でバーダックが口を開いた。
「まあ、なんだかよくわかんねえけどよ。とりあえず目の前のコイツをぶっ倒しゃ解決ってことでいいのか?」
「お祖父さん」
「カカロットと王子とターニッブに任せときゃあっちは大丈夫だ」
「そうですね」
バーダックが肩を鳴らしながら告げると、悟飯も力強く頷く。
彼らの隣でガーキンが首を鳴らしながら頷いた。
「ヘッ、わかりやすいぜ! とりあえずベビーをぶっ倒しゃ俺たちの役目は終わりってことか! トランクス! 気合入れるぜ!」
「はい! ガーキンさん!」
トランクスも明るい表情になりながら構えを取る。
後ろにいる地球人たちは、困惑した表情のまま彼らを見ていた。
「ベビー様、さすがにこの四人を同時に相手取るのはベビー様でもーー!」
「フン、狼狽えるなと言ったはずだブルマ。こいつらには守らねばならんやつらがいる。ここに何十人とな!」
「なるほど。さすがはベビー様」
自分が生み出したブルマに応えながらベビーは笑う。
これにバーダックが鋭い黒眼を向けながら構える。
「おい、ツフル王。テメエ、何企んでやがる」
バーダックの問いかけに答えるように笑うと、右手を開いて光を生み出しベビーは叫んだ。
「惑星の意思の力で召喚してやろう。出でよ! 幻魔人ヒルデガーン!!」
その言葉に悟飯の眼が見開かれて叫んだ。
「まずいっ! お祖父さん! トランクスさん! みんなを地上に!!」
悟飯の叫びとほとんど同時に巨大な爆発が発生。
地下通路がふっ飛ばされ、崩れていく。
阿鼻叫喚の声を上げる地球人たちを必死につかまえて、悟飯、トランクス、ガーキン、バーダックが地上に向けて高速移動で抜け出した。
曇天の空の下にある廃墟の街。
先程まで悟飯達が居た地下通路の上に、巨大な右の拳が現れていた。
その地上に移動した悟飯達は、まず互いの無事を確認する。
「全員無事ですかっ!?」
「大丈夫です! だけど、悟飯さん! あの右手はいったい?」
「幻魔人……! 別の世界で、父さんが倒した化け物です! トランクスさんとガーキンさんは避難した人達を守り切ってください! ヤツは俺が倒します!!」
トランクスに応えながら悟飯はベビー達の方を向く。
「待てよ悟飯! 俺たちだって戦えるぜ!」
「ヤツの恐ろしいところは、人間を養分にするところなんです! 他にも注意点はありますがーーソレはこれから俺が戦うことで証明します!!」
「そんなに危険な相手を、悟飯さん一人で?!」
ガーキンに応えながら巨大な右拳に構える悟飯を、トランクスが心配そうに見つめる。
――グゥアァアアアアアアッ!!
廃墟の街にビルよりも高い背丈の人間の頭骸骨によく似た顔をした尻尾のある化け物が、未来世界の地球人たちを見下していた。
「な、なんて大きさだ……!」
「こ、これが幻魔人!」
トランクスの言葉にマイも見上げて震えあがる。
その巨体もそうだが、全身から恐ろしい気を放っていた。
「ほぅ。ずいぶんとバカでかいバケモンを連れてきやがったじゃねえか。ツフル王」
「ククク、野蛮なサイヤ人の猿共。軟弱な地球人とともにヒルデガーンの餌になるがいい!」
バーダックが鋭い顔に愉快そうな笑みを浮かべて構えると、悟飯が声をかけてきた。
「お祖父さん、幻魔人は俺が倒します。おじいさんはベビーを」
「ほぅ? わざわざ、お前が倒すって宣言する程度には強えってことか? あのバケモン」
「強いというより、厄介なんです。ヤツは。倒し方を知っている俺の方がヤツと戦うには向いています」
バーダックは鋭い瞳で悟飯を見ると、彼も鋭い目つきでバーダックの目を見返してきていた。
その表情にバーダックはニヤリと笑みを浮かべると、悟飯の意見を了承したと返す代わりに体を完全にベビーに向ける。
そんな二人の孫悟空の血縁者に向かって、ベビーはニヤリと笑った。
「孫悟飯。このヒルデガーンはお前の知っているヒルデガーンより相当強化されているぞ? お前一人で果たして倒せるかな」
「俺一人だと? 相変わらず節穴だな」
「なに?」
ベビーの嘲りに対し、失笑を返しながら悟飯は自身の首飾りを握り締める。
「行こう!」
――ああ!
同時、首飾りが光を放つ。
「ふっ!」
気合の声と共に黄金の炎のような悟飯の全身を包み、黄金の髪を天に向かって逆立たせ、翡翠に黒の瞳孔が現れた目が幻魔人に向けられた。
未来悟飯の前髪と現代悟飯の逆立った髪が融合した真・超サイヤ人が覚醒する。
「貴様、その姿は……! 孫悟空? いや、違う……!」
「これが俺の可能性を統合した姿だ。覚悟しろ、ベビー。まずは、そのデカブツを叩き潰してやる」
二人の孫悟飯が融合した姿を見せつけ、鋭く低い声で語る真・超サイヤ人に、ベビーが忌々し気に表情を歪める。
その横で静かにバーダックが拳を握り締めた。
「見せつけてくれるじゃねえか、悟飯。さて、次は俺の番か?」
「貴様らの余裕、まさか、貴様ら……!」
ベビーの眼が見開かれると同時、そのまさかを肯定するようにバーダックが笑う。
「俺たちが真・超サイヤ人になれるってことを知らなかったのか、ツフル王? ザマァねえな。だが、悟飯が真・超サイヤ人になるなら、俺迄それに変身するのはちっと芸がねえ…!」
「なに? バーダック、貴様、何をするつもりだ?」
余裕の表情のバーダックにベビーの表情が引きつる。
バーダックは静かに気を高め始め、金色のオーラを纏う。
「ツフル王ベビー。テメエには、究極のサイヤ人の姿を見せてやる! うぉおおおおお!」
金色の大猿がバーダックの背後に幻影のように一瞬だけ現れ、気が爆発する。
「まさか!」
光が晴れて姿が現れたとき、バーダックの黒髪は長髪に変わり、瞳は金色に黒の瞳孔が現れたモノに。剥き出しの上半身には赤い猿の体毛が生えていた。
その姿は、ベビーのよく知る超サイヤ人だった。
「超サイヤ人ーー4! き、貴様が……何故だっ!?」
狼狽えるベビーに、超サイヤ人4となったバーダックはニヤリと返す。
「カカロットがテメエを倒したこの姿で、葬ってやるよ。ベビー!」
気を高めて構えるバーダック。
ベビーが冷や汗を顔に浮かべながら呟いた。
「真・超サイヤ人だけじゃない! こいつら……サイヤ人の可能性を取り込んでやがるっ!」
「ベビー様!」
傍らでベビーの身を案じる声を上げるブルマをニヤリと見据え、彼女の首を掴むベビー。
「! ベビー…さま?」
「だが、超サイヤ人4を俺に見せたのは間違いだったな! バーダック!」
突如、ブルマを掴み上げたベビーにバーダックが訝し気な表情を浮かべる。
「? 何のつもりだ?」
するとブルマがベビーの手の中で霧状に変わっていき、ベビーの肉体に取り込まれた。
「うぉおおおおお!」
ブルマを取り込んで高まった気を使い、ベビーは右手から白い光の球を作り上げる。
それを天頂に向かって放り投げた。
「はじけて、混ざれええええ!」
爆発し、曇天で暗い世界を照らすブルーツ波の光の球を生み出した。
「パワーボール、だと?」
ベビーがその光を見据え、金色のオーラを纏うと一瞬で巨大な体格の黄金大猿に変身した。
「ふっふっふっふ! 醜い大猿の姿ではあるが、超サイヤ人4に対抗するにはこれしかない! 黄金の大猿の誕生だあ!」
「フン、バケモンの総進撃か? 面白え。真正面からぶち抜いてやるぜ」
隣のヒルデガーンと見比べてからバーダックはニヤリと笑う。
「やってみろ! サイヤ人!」
ベビーの言葉を合図に両者拳を振りかぶり、オーラを纏って空中を飛んで中央で激突。
ベビーの巨大な右拳にバーダックの拳が突き刺さる。
二つの拳の激突で、衝撃でクレーターが発生。
そのまま拳と蹴りをぶつけ合う両者。
パワーと手数はまったくの互角。
この事実にバーダックはニヤリと笑みを強める。
「デケえ図体の割に、なかなか動くじゃねえか!」
「俺を甘く見たな! このまま叩き潰してやる!」
強烈な大猿の右ストレートを片腕で止めるバーダック。
掌に収まる程度の小さなバーダックに簡単に止められたことに、ベビーは目を見開いた。
「なにっ!?」
「だけどな。超サイヤ人4になった俺を相手にするにゃ、的がデカすぎるぜ!」
宣言と同時に高速移動で消えるバーダック。
「おのれぇっ!」
反応して真後ろに向かって拳を繰り出すベビー。
しかし、高速移動から現れたバーダックは残像。
「なにぃっ!?」
拳がすり抜けていき、驚愕に目を見開くベビー。
「そんな図体じゃ、高速移動も、残像も生み出せねえぜ!」
アッサリとベビーの懐に入り込むバーダック。
凄絶な笑みと共に告げる。
「ーー覚悟はいいか?」
強烈な右ストレートがベビーの脇腹に入る。
鈍い音が辺りに響き渡り、衝撃波がベビーの巨体を貫いて背後のビルを揺らす。
「ゴフォアッ!」
目を見開いて悲鳴を上げるベビーを無視し、一気に強烈な拳と蹴りを叩きつけていくバーダック。
一撃一撃にベビーの巨体が宙に浮かび、炸裂音が鳴り響く度にベビーの顔が苦悶に歪む。
思わずガーキンが拳を握って叫んだ。
「す、すげえ! 体格差をものともしてねえ!」
「超サイヤ人4! なんてスピードとパワーなんだ!」
トランクスとガーキンは抵抗も出来ずに宙に舞い上げられていく大猿の姿に、驚くことしか出来ない。
「うぉらあああっ!!」
バーダックの雄叫びが響き渡る中、強烈な右拳がベビーの顎を跳ね上げる。
「ぐあああ!」
天高く仰け反りながら吹っ飛ぶベビー。
その状態で空中で舞空術を使い、ベビーは宙で停止する。その真紅の眼差しは憎悪によって燃えていた。
「ゆるさんっ! 許さんぞ、サイヤ人! こんな星ぃ! もう要るものかぁああああ!!!」
自分の眼下に広がる世界ごと、バーダックを撃ち貫こうと両手を顔の左横に持ってきて構える。
野球の投手のように左脚を曲げて掲げ、かめはめ波とは反対側に両手を置く。
「不利になったら、星ごとか? 大概ワンパターンだな、テメエら」
これにバーダックは右掌を天に向けて開くと、そこに蒼い光の球を生み出す。
「言いたいことはそれだけか? 星ごと消えてなくなれええええええ! スゥーーパアアアアア!! ギャリック砲ぉおおおおおお!!!」
巨大な両手をバーダックに向けて突き出し、青色の光を放つ大猿ベビー。
「バーダック!」
ガーキンが叫ぶ。
その威力は、かつて地球ごと孫悟空を倒そうとしたベジータや、孫悟飯を倒そうとしたセルの比ではない。
圧倒的な光は、ザマスが守ろうとした世界そのものを吹き飛ばそうとしている。
「消えるのはーーテメエ、だああああああっ!!」
右掌から青白い光線を放つバーダック。
蒼い光が二人の中央でぶつかり、押し合う。
「おおお、んのおおおお、れぇええええええ! まだか! まだ俺に逆らうかあああああああっ!!」
叫ぶベビーに対し、バーダックはワイルドな笑みを浮かべてニヒルに告げた。
「フン。ほぉら、どうした? それで精一杯かよ? 抵抗してみろ」
「き、さ、まっ……!」
バーダックの挑発にベビーの眼が見開かれる。
しかし、光は一向にバーダックを飲み込めない。
それどころか、赤いオーラがバーダックの右掌に集まっていき、青い光線がゆっくりと赤く変わっていく。
色が変わると同時に、光線の勢いがベビーの放った光を飲み込んで行く。
「こ、こんなことがっ!?」
押し返され始めた事実に目を見開いていると、バーダックが失望したように告げた。
「所詮テメエは、この程度だ。雑魚が!」
「ふ、ふざけるな! 俺はっ、全ての世界を牛耳るっ、ツフル王だぞ! 貴様なんぞにっ……!」
「いつまでも寝言ほざいてんじゃねえよ。くたばれ。ハアアアアアアア!!」
完全に赤い光に変わった光線。
もう一押しとばかりにバーダックは光を放っていた右手を大きく振りかぶり、さらに突き出す。
「これで、最後だあああああああっ!!!」
「なぜ、だああああ! なぜええ!? サイヤパワーを、可能性を取り込んだ! この俺がああああああ!!」
赤い光によって黄金の大猿が消えて行く。
残ったのは赤い猿の体毛が生えた超サイヤ人。
彼の勝利を祝福するように青空が雲間から覗いていた。
「ツフル王……。いけ好かねえ野郎だったぜ」
吐き捨てながら通常状態に戻るバーダック。
あれほどの一撃を放ったと言うのに息一つ切らしていない。
そのあまりの強さに、ガーキンとトランクスは呆然としながら彼を見ていた。
バーダックは消えたベビーの方など見向きもせず、自分の右隣で戦う黄金のオーラを纏う孫を見据える。
「ーー悟飯。俺の血を引いているのなら、強くあれ。その程度のバケモンに手こずるな」
ヒルデガーンという巨大な魔人の拳を片手で止めている悟飯に、バーダックは激励とも取れる言葉を投げかけた。
ーーーー
彼らの超バトルを少し離れて見据える四つの人影が、廃墟のビルの屋上に立っていた。
「うわぁ、簡単に黄金大猿ベビーを倒しちゃうなんて。やっぱり、この歴史のサイヤ人達は別格だなぁ!!」
嬉しそうに笑うのは長い白髪をポニーテールにし、丸メガネをかけた紫色の肌の青年。
爽やかに笑っているが、どこか怪しい雰囲気を醸し出している。
刀を腰につけており、黒色の上着に黄色のズボンを身につけている。
服や装備には見たこともない紋章が刻まれている。
「なるほど。歴史の裂け目から俺たちをわざわざ呼んだのは、そういう訳か?」
「全く。私達も暇じゃないのよ?」
青い肌に白い髪、赤い瞳に尖った耳を持った一組の男女。
長身で筋肉質の偉丈夫の男と、痩身だが丸みのある大きな胸と尻を持った美女。
「ゴメンゴメン。二人とも! でもさ、すっごいと思わない? この歴史!! もう最高!!」
「……バーダックに孫悟飯、か。確かにな」
「でしょでしょ!? やっぱり、父さんは僕の想いを分かってくれると思ってたよ!!」
「……調子のいい奴め」
どう見ても親子には見えない二人だが、男は青年の言葉に何も言わない。
むしろ笑みを浮かべている。
「まったく、これだから男ってーー! お兄様が居られなくて良かったわ」
額を押さえながら男と青年に向かって、美女は頭を横に振った。
明らかに、この時代のものではない三人組。
もう一つの人影は、白い拘束服のようなものを上半身に着て、鉄製のマスクを口元に付けた長い黒髪を持った、3メートルを越える身長にバランスの良い筋肉質な肉体。
左頬に傷がある赤に黒い瞳孔が現れた瞳の男。
その尻からは猿のような尾が生えている。
彼らの背後には、先程の戦いでバーダックの光に押し切られた超ベビーが横たえられている。
「父さん、彼らと戦いたいでしょ?」
「ーー無論だ、フュー」
「だけど、今は我慢してね? そっちのサイヤ人もね」
フューと呼ばれた青年は父と囚人に向かって釘を刺すと、自分の右横に向く。
腰の刀を抜き放ち、空間に斬りつける。
するとアッサリと常世の世界に切れ目が入り、向こう側には別の世界が広がっている。
男と女、囚人が裂け目の中に入っていく。
それを見据えた後、寝かされたベビーを抱き上げてフューはバーダック達に向き直って笑った。
「せいぜい、強くなってね~! 君達が、もっともっと強くなってくれたら、いずれ僕達とも交わるだろうから、さ!!」
明るいが不気味な笑い声を残して、フューと呼ばれた青年は消えた。
次回は、明日の午前7時です。
よろしくお願いいたします(≧▽≦)