未来世界の地球での激闘。
しかし、どれだけ激しい闘いも終わりは来るもの。
最後に勝利を掴み取るのは、ただーー強き者のみ。
神々の住まう世界ーー界王神界。
水色のような美しい空には様々な光の色がにじんでいる。
その中心で、黄金の龍と薄紅の光がぶつかり合っていた。
「「うぉおおおおっ!!」」
「ハァアァアアアアッ!!」
ベジットとザマス。
崩壊する世界を飲み込むほどに強大な二つのパワーが、更なる上を目指さんと互いに押し合っている。
妥協などない。
やがて二つのパワーは拮抗した状態で臨界点を迎えて爆発する。
超新星が現れたような強大な爆発を目の当たりにして、シンもキビトも最早声もなかった。
それほどの戦いを見ながらも、ザマスの悲しいまでの覚悟をゴワスは悲痛な表情で見上げている。
「何故なのだ。何故、己の過ちを知りながらーー。それを認めていながら。何故、私たちと手を取り合おうとせんのだ、ザマスよ!!」
その言葉に応えたのは、ターニッブと拳を交えている超17号だった。
「笑わせるな、神」
「な、なんと?」
「過ちだと? ザマスの行いが、過ちなどと何故お前が言える? アイツや世界をあそこまで追い詰めたのは他でもない。何の考えや疑問も持たずに全王の言葉にこびへつらっていたお前達、神が原因だろうが」
冷たいアイスブルーの瞳を前に、ゴワスは何も言い返せずに押し黙る。
超17号は爆発から全身をボロボロにして吹き飛ばされる二人の真・超サイヤ人。
ベジットとザマスを見上げながら、ゆっくりと呟くように告げた。
「だからアイツは、覚悟したのだ。お前達に相談しようとも何も変わらないからこそ、自分がどんなに変わったとしても世界を正しいものに戻すとな」
超17号の言葉に応えるように、血塗れとなったザマスが静かにベジットを見て笑っている。
(そうだーー。私は、世界を正しいものに戻すと決めたのだ。世界は誰に支配されるものでもないーー。人間はおろか神や、全王にも。命は、そこにあるだけで美しいのだから)
そう思っていた。
だからこそ、自分はブラックを裏切り、惑星サイヤの意思と融合を果たした。
それでもーー世界の意思となった己でも、全王の呪縛から逃れたと思えたのは一瞬だった。
自分が生み出した世界では、自分が最も愛した命の価値が変わっていく。
それを理解した。
「ベジットよ、貴様は私のやり方を過ちと言ったな? それは、私の選んだ道までは否定せぬということか?」
だから問いかけた。
目の前にいるーー世界の意思と融合したわけでもない。
可能性を次々と取り込んでいる訳でもない。
不死でもない。
たった二人の戦士が合体しただけの、それだけで自分に届かせるーー正に“最強の男”に。
満身創痍でありながら、表情が鋭いまま静かにこちらを睨みつけるようなベジットに。
「「そいつを決めるのはアンタだろ? 俺がとかく言うことじゃねえ」」
ベジットは、いつもの笑みすら浮かべずに真剣な表情で淡々と返した。
「ーーフッ、フハハハハハ!! そうか、そうだな」
ザマスは自嘲気味になった後、愉快気に声を上げて笑いーー構えを取る。
「感謝するぞ、ベジット。私はーー私の選んだ道までは誤ってはいなかったのだ。私が道を選んだからこそ、一星龍や17号と出会え、こうしてターニッブやお前と戦えたのだからな」
黄金の炎のようなオーラを更に噴き上げて、ザマスは笑う。
その胸の内には、白い龍と金髪の青年がいる。
「そうだーー私の選んだ道までは、何人であろうと否定させてなるものか! この道を選んだからこそ、私には得たものがあるのだから!!」
極限にまで気を高めながら、ザマスは両手を大きく回した後に前方に突き出す。
その一撃は、界王神の弟子となって得た究極の神技。
「「そうだ。それでこそ、俺が倒すに値する強敵(とも)だ!!」」
熱い瞳と魂、そして声にベジットが歓喜の声を上げる。
彼も嬉しかった。
これほどの強敵を相手にできる幸運を、彼は知らなかった。
本気を出すまでもなく、どんな敵であろうと勝てていた自分。
惑星サイヤで闘った偽者の自分とゴジータが羨ましかった。
「「それでこそーー誇り高き真の超サイヤ人だ! サイヤ!! そしてザマス!!!」」
激しいスパークを纏いながら黄金のオーラを奮い立たせて、両手を大きく広げて前で組み右腰にそのまま置いて構える。
神の御業に挑むのは、文字通り最強の一撃。
「勝負だ、ベジットォオオオオオオ!!!」
ーー激烈神王砲。
超かめはめ波や真空波動拳に見た目は似ているが、中身は強烈にして純粋な神の気の塊の一撃。
これにベジットも同時に放つ。
「「ファイナル! かめはめ波ぁああああっ!!!」」
青い神の気と赤いサイヤパワーを取り込んで、黄金の炎が更に噴き上がる。
文字通りの全力の一撃が、再びぶつかり合った。
両者の一撃は、押し合うことさえ許されない。
ぶつかり合った一瞬で互いの放った技が、そのまま相手に届く。
「! これほどか、ベジット!!」
「「面白い。神の御業ーー見せてもらう!!」」
目の前に迫る光を前に、両者は避けようともせずに真っ向から受け止めるのだった。
「ザマスぅううう!!!」
「悟空さん、ベジータさぁああん!!!」
光が全てを飲み込む中、ゴワスとシンが絶叫する。
「ーー孫悟空さん。ベジータさん。あなた方の勝利を祈っております」
キビトが静かに声を上げる中、ターニッブが超17号を見据えている。
超17号もまた、ターニッブを見返している。
「俺の拳を試すか」
「ーー来い!!」
金の髪をなびかせて超17号が叫ぶと同時、一足飛びでターニッブが懐に入りこむ。
左正拳突きを顔に放つターニッブ。
超17号は目の前に迫る拳を紙一重で右に避け、左ボディを打ち抜く。
折り畳んだ右腕が超17号の拳を防いでいる。
返しの右中段回し蹴りを左腕で受けるも、重い打撃に表情を歪ませる超17号。
動きが止まった超17号にターニッブが踏み込みながら左正拳突き、右正拳突き、右中段回し蹴りから左上段後ろ回し蹴りに繋げる。
左正拳突きを咄嗟に上げた右腕で防ぐも、ガードした腕が痛みと重みに痺れる。
動きが止まり、次に来る右正拳突きはガードの隙間からねじ込まれ、顔が後方に吹き飛ぶ。
意識が半分飛んだ超17号に強烈な右の中段回し蹴りが放たれ、腹の中の空気が全て外に出る。
「ガハァッ!?」
前のめりになった長身の顔を狙って、ターニッブの上段後ろ回し蹴りが放たれ、まともに刈る。
「チィッ!」
接近戦は不利と悟るや超17号はバックステップしながら舞空術を使い、そのまま後ろ向きに飛ぶ。
漆黒のオーラを纏いながら、両手を前に突き出して合わせると灰色の電撃の球を生み出した。
「喰らえ! 電撃地獄玉!!」
強烈な灰色の電撃を纏った漆黒の気弾を前にターニッブが左手を前に出し、気弾に手の拳骨を当てるようにぶつける。
「風の拳・心眼」
衝撃波と青い波動がターニッブから立ち上る度に超17号の放った気弾が小さくなり、五度目の衝撃波が発生すると完全に消える。
ターニッブの黒い瞳は、左に素早く走る。
高速移動でスライドしながら、漆黒の電撃をクロスさせた両腕から発生させて腰だめに構える超17号の姿がある。
(これは? 先程の一撃とは違う?)
ターニッブが目を見開くと同時、超17号は両腕をハンマー投げのように横薙ぎに振り切った。
緑色の光の球を核にした、扇状に渦を巻いた電撃の刃がターニッブに放たれる。
「超電圧爆裂斬!!」
見切ることに長けたターニッブでも、絶えず変化する電圧の波までは見切れない。
心眼で防げないと悟ると両腕をクロスさせて歯を食いしばり、耐えようとする。
電圧の波が触れた瞬間、ターニッブの肉体が電気にしびれて棒立ちになった。
「ぐあああっ!?」
目を見張るターニッブ。
その技はターニッブやジュードが使う電刃波動拳と同質の技だ。
「終わりだ、ターニッブ!!」
無防備な状態のターニッブの目の前に超17号が現れて、赤い光の球を腹の前にかざした右手から生み出し、後方へ吹き飛ばした。
光に飲み込まれ、爆発するターニッブ。
界王神が目を見張る中、煙の向こうからファイティングポーズを取ったターニッブが満身創痍の肉体で肩で息をしながら立っている。
「たった一撃で、ターニッブ殿をここまで追い詰めるとは。何という戦士」
「ドクター・ゲロ。ビビディのような魔導師でもない、単なる地球人が、なんという化け物を生み出したんだ」
ゴワスとシンが唸る中、超17号がニヤリと笑う。
「手こずらせてくれたな、ターニッブ。だが、お前もここまでだ」
「これほどの一撃を持っていたとは。流石だな」
大ダメージを負っても爽やかに笑い、真剣な表情に戻るターニッブに、超17号は満足そうに前に一歩、踏み出す。
「次の一撃でーー終わらせてやる」
あくまで余裕を崩さないターニッブに対し、全力の一撃を練り上げる。
もはや、避けることは叶うまい。
そして、この一撃に耐えられるだけの体力もない。
満身創痍の肉体で、この距離を詰めるダッシュ力などあるわけがない。
パワーレーダーが、ハッキリとターニッブの状態を現している。
確実に遠距離から仕留める。
「この一撃でーー決めてやる! 電撃地獄玉ぁああ!!」
超17号が選んだのは確実な勝利。
孫悟空と対等というだけのことはある。
真・超サイヤ人になったザマスとも戦えるだけの実力。
それほどの男を相手に自分は確実に勝利できる。
「どうだ、孫悟空!? コレが俺の実力だ!! お前が勝てない男を相手に、俺は勝てるんだ!!」
記憶に浮かぶのは、赤い猿の体毛を持つ剥き出しの上半身に黒く長い髪、金色に黒の瞳孔がある孫悟空。
そして、自分を消そうとした合体戦士、孫悟空・デュオ。
「ざまぁみろ、孫悟空!!!」
彼らと同じ顔をしたターニッブに向けて、電撃地獄玉は放たれた。
「ターニッブさん!!」
目を見開いて絶叫するシンの耳にターニッブの声が届いた。
「指先一本にでも闘志を灯せるならば、格闘家にとって真の敗北はない。真っ直ぐに相手を見ないものに、俺は負けない」
その言葉を最後に、ターニッブの足底から青い光が弾ける。
電撃地獄玉が放たれたと同時にターニッブは、それをかいくぐって超17号の眼前に現れた。
「! 貴様ぁあああっ!!」
避けられたと悟った超17号が右拳を振りかぶるよりも早く、ターニッブが宙を舞った。
「竜巻旋風脚!!」
重く速い連続飛び回し蹴りが超17号の顔を一瞬で蹴りたぐり、ダメージで左脇に身体が流れるより早くターニッブが着地して、顎を飛び上がりながら昇る右の拳で刈る。
「昇龍拳!!」
天頂高く打ち上げられ、仰け反る超17号。
背中から地面に叩きつけられ、目を見開いて立ち上がると青白い雷光を放つ両手を腰だめにたわめたターニッブと目が合う。
「お、おのれ……っ! 波動拳など吸収してやる!!」
両腕を広げて大の字になるように身体を広げて薄い光の幕を張る超17号に対し、ターニッブは静かに告げた。
「……電刃波動拳!!」
黄金の雷を纏う光の光線が超17号の光にぶち当たる。
吸収すると笑っていた超17号は、目を見開いた。
ドレインフィールドと呼ばれる光のバリアが、透過されるように波動拳が自分に迫ってくる。
(吸収できない!? 何故だ!?)
見開く目の中、鳩尾の辺りにまともに気功波が当たり、後方に弾け飛ぶ。
「…こ、れ、は!?」
先程、自分が放った超電圧爆裂斬と同じだと理解した頃には、超17号の意識は本人の意思を無視するように薄れ、糸が切れた操り人形のように前のめりに崩折れた。
「スーパーパワーを手に入れた、この俺がぁああ!!」
地面にうつ伏せになりながら、叫んだのを最後に超17号は白目を剥いて気絶した。
「鋭い刃ほど折れやすい。油断が過ぎたようだな」
波動拳の構えを解き、ターニッブは仁王立ちして超17号に語りかけるのだった。
ーーーー
廃墟の未来都市の上空で、戦士達は静かに睨み合っていた。
真・超サイヤ人となったターレス。
超サイヤ人4の孫悟空ゼノ。
超サイヤ人ロゼのゴクウブラック。
三人の前に相対するのは、一星球を額から生やした白い龍人。
邪悪龍の長、一星龍。
「フン、ザマスのヤツめ。自分一柱(ひとり)のみで世界を背負うつもりか? 馬鹿馬鹿しい!!」
不快そうに、苛立つように一星龍は告げる。
「俺を役立たずとでも言いたいのか。世界を背負うには邪悪龍の長たる俺では力不足だと!? ふざけるなよ、ザマス!!」
その言葉にターレスは訝しむように瞳を細め、ゼノは鋭い金色の瞳で射抜くように見据える。
ただ一人、超サイヤ人ロゼとなったブラックだけが動揺を露わにした灰色の瞳を見開いていた。
「……一星龍、ザマスは。私であり私でない奴は。己の所業をーー誤ちと認めたと?」
一星龍は赤い瞳で三人ーーそれぞれが別の進化を遂げた超サイヤ人達を睨み返す。
「勘違いするなよ、ブラック。確かに、奴は貴様の思想と言葉に賛同し、行動を起こした。だが、自分だけの視点しかない貴様と違い奴は惑星の意思ーーいや、世界の意思と融合することで視野を広げたのだ。その上で己の取るべき選択をした」
ゼノが目を細め、ブラックが見開いた瞳を揺らす。
「その行動を。奴がーーザマスが歩んだ道を誤りなどとは言わせん。たとえ貴様らが、同じ「ザマス」であってもだぞ!! ゼノ、貴様のような孫悟空の力を借りねば無力で非力な偽善の神にも! ブラック、己の所業を見返すことすらやめた自堕落な独善の神にも!! 無論、こうなるまで世界を放っておいたーー全王をはじめとした役立たずな神どもにもなぁ!!!」
青黒い雷を全身に纏い、一星龍が牙を剥く。
そのパワーは正に天井知らず。
最大パワーが一気に引き上がる。
強大な力を放つ白き龍にゼノが冷や汗を流し、ブラックが戦慄する中ーー生粋のサイヤ人がニヤリと笑う。
「…フン。神と人間を皆殺しにした連中が今更、正義面をするのか? ……くだらねえ」
黄金の炎のようなオーラを纏い、翡翠に黒の瞳孔が現れた眼で邪悪龍の長を睨みつけながらターレスは冷酷に吐き捨てた。
「貴様ら怨霊が語る道など、どうでもいい。俺の力の前に跪いて命乞いでもしていろ。それが似合いだ」
「ほざけ、サイヤ人!!」
ターレスの言葉に一星龍が叫び返すや否や、両者は同時に高速移動で姿を消す。
一瞬後、強烈な白い光が衝撃と共に廃墟の街のど真ん中で発生。
光の球の中には、黄金の炎のようなオーラを纏うターレスと、青黒い雷を纏う一星龍が互いに向かって右拳をぶつけ合っている。
「真・超サイヤ人ーー。いかに優れた力を引き出せると言っても、この俺を倒すなどできん!!」
「……そいつは今に分かるさ」
押し合っていた拳を互いに引くと、拳と蹴りを次々と繰り出し合う両者。
高速移動を行いながら、ラッシュを繰り出し合う。
一星龍の右ストレートを首を捻って左に見切り、返しの右ストレートを交差させるように放つ。
正面に来た拳を左手で掴み止め、すかさず腕を引きながら左膝蹴りを放つ一星龍。
脇腹を狙った一撃はターレスの右膝に防がれた。
「チッ、しつこい猿め!!」
舌打ちしながら一星龍はバックステップして右の廻し蹴りを放つも、ターレスの右腕に止められている。
「どうした邪悪龍? お前のパワーはその程度のものか? もう少し、この俺を楽しませてみろっ!!」
「ほざけ!!」
ターレスの右腕と邪悪龍の右腕がぶつかり、鍔迫り合いのように互いに向かって押し合う。
体の大きさでは一星龍の方が上だというのに、ターレスのパワーは体格差をものともせず、互角に渡り合う。
両者、コメカミに皺を寄せて力む。
「フン、頼もしい限りじゃないか。実を食べるしか能がなかった男が!」
「…貴様がゴツゴツしているだけだ。ナマズめ!」
「ナマズ? この俺をナマズだと? 調子に乗るなよ、猿が!!」
一星龍が目から怪光線を放つ。
咄嗟に首を捻りながら、踏ん張っていた両足を自身の左に滑らせてかわすターレス。
間髪入れず、一星龍が拳と蹴りを次々と放ってくる。
「そう来るか!」
手数と攻撃の重みにターレスが舌打ちしながら両腕を顔の横に上げて、ガード態勢のまま後ろに下がる。
息をつく暇も与えないとばかりに襲い来る一星龍の連撃を左右の腕で脇に逸らしながら、ターレスはフットワークを刻んで一星龍を中心に円を描くように動く。
真っ直ぐに下がれば、一星龍に下がった分を踏み込まれて調子に乗せること間違いないからだ。
(ガードの上からでもヤツの攻撃は響く。空振りさせろ!)
頭の中で自分に指示の声を出しながら、上下に散らされる拳をスウェーバックやダッキングで避ける。
上半身を反らすスウェーや頭を下に屈みこむダッキングの弱点は一つ。
顔面を狙っていた一星龍の拳は、即座に踏ん張っていたが故に動かなかったボディへ。
「!」
鈍い音と共に衝撃波が波紋のように走り、拳は腹の手前で止まっている。
両手で一星龍の巨大な拳を掴み止めているターレス。
「ぬぅ!?」
唸る一星龍に向かって笑みだけを返すと、ターレスの纏うオーラが一気に跳ね上がった。
「!? これは!!?」
「そろそろ終わりにしようや? 遊びはな」
先程までとは桁違いのパワーがターレスから放たれ、後方に弾かれる一星龍。
弾かれる勢いよりも速くターレスが一星龍に突進。
目の前に現れたターレスに一星龍は咄嗟に拳を顔に向けて放とうとするも、左手で手首の辺りを払われて横に流されたと同時。
「ぐぅお!?」
呻き声を上げながら自分の腹部に衝撃。
見れば、ターレスの右膝がまともに一星龍の腹を打ち貫いている。
うめき声を上げながら上半身が倒れて前屈みになると同時、ターレスは両腕を頭の上で組んで一星龍の背中に向けて叩きつけた。
「ぐわぁあああっ!」
強烈な一撃は一星龍の肉体を地面に向けて急降下させる。
地面にぶつかる寸前で一星龍が舞空術を使い、間一髪で衝突を防ぐもその腹に向かってターレスの飛び蹴りが炸裂する。
「グハァッ!」
肺に溜まった空気を吐き出しながら背中で地面を滑ると、一星龍は立ち上がる。
「お、の、れ!!!」
だが目の前にはターレスが空を飛んできていた。
「余計な真似はさせんぞ。貴様は反撃させたら厄介だからな。このまま叩き潰す!!」
言うや目の前で急停止するターレス。
反射的に一星龍は顔面に右ストレートを放つも、ターレスは読んでいたように右に見切りながら膝蹴りを一星龍に叩き込む。
「ぐぅ、コイツ!?」
構わずに一星龍は拳を繰り出すも、ターレスは紙一重で避けながら左右の拳を腹に叩き込む。
一つ打たれれば三つか四つを必ず返し、腹を打ち抜く。
徐々に、だが確実に一星龍の巨体が後ろに引き摺られるように下がっていく。
ターレスが拳を一つ打ち込む度に一星龍の動きが鈍くなっていく。
(コイツ、先程までとは動きが違う!? まさか!?)
「今頃気付いたか? そう、俺は貴様の動きを観察していたのさ。ゼノやブラックと共闘しながら、貴様がどう判断し動くのかをな」
真紅の目を見開き、一星龍は叫ぶ。
「おのれぇえ!!」
しかし鈍った拳は空を切り、重い拳が執拗に一星龍の腹を打ち抜く。
思わず両手で腹をかばいながら下がる一星龍に、ついにターレスが黄金のオーラを爆発させた。
下がった顔にまともに入る右フック、左ボディ、左ローリングソバット。
後方に吹き飛ぶのを両手で地面を叩きつけ、爪で引っ掻きながら止まる一星龍の前に左手を無造作に突き出して無数の光弾を放ってくるターレス。
咄嗟に両腕で顔を庇いガードするも、光の威力は凄まじく、後ろに引き摺られるように下がる。
「ぬ、ぐぅうう!」
耐え切った一星龍の右から超サイヤ人4ゼノが踏み込んできた。
「しまーーっ!?」
目を見開く一星龍に構わず、ゼノの金色のオーラを纏った拳が腹を打ち抜く。
「グハァッ!?」
前のめりになったところを更にゼノが蹴り上げる。
天高く舞う一星龍の目の前には超サイヤ人ロゼのブラックが、両腕を頭の上に組んで振り下ろしてきた。
両足と片手を地面について着地する一星龍に、ゼノとブラックは追撃のかめはめ波を放つ。
「かめはめ波!!」
「終わりだ!!」
ゼノの両掌から青い光が、ブラックの両掌から薄紅色の光線が放たれ、地面に着地した一星龍を爆発と共に弾き飛ばした。
「な、舐めるなぁ!!」
転がる一星龍だがすぐに立ち上がり、額の一星球の前に赤い光の球を生み出すと両手で掴むように構えて右腰においてたわめる。
同時にターレスが両腕を頭上に掲げて赤い光の球を生み出していた。
「暗黒10倍ーーかめはめ波ぁああ!!」
「カラミティーーキルドライバー」
同時に赤い光線を放つ両者。
互いの中央でぶつかり合う真紅の光は、一星龍が押されている。
(クソ! 気の練りが不十分だと言うのか!?)
「手こずらせてくれたな、邪悪龍よ」
目を見開く一星龍に、ターレスがニヤリと笑う。
その両脇にはゼノとブラックが並んでいる。
「悪いが、これで決めさせてもらうぜ。一星龍!!」
「貴様は危険だ。確実に仕留めさせてもらう!!」
二人は同時に黄金の炎のようなオーラを纏い、ゼノは剥き出しの上半身に再生した服が纏わり、黒髪が逆立って黄金に変わる。
ブラックも薄紅色の髪が黄金に変化し、二人の瞳は翡翠に黒の瞳孔が現れたものになる。
「邪悪龍よ、貴様はこれで終わりだ」
三人の真・超サイヤ人の顕現に、一星龍が恐怖に目を見開いていた。
「お、お、の、れ!?」
ゼノとブラックが、それぞれかめはめ波を練り上げる。
三人同時に放たれれば、流石の一星龍も消し飛ばされるであろう。
「死ねぇえええっ!!」
ターレスが叫ぶと同時に、左右から二人のかめはめ波が放たれ、一気に一星龍の目の前まで押し切る。
「く、くそ! 孫悟空め!! まだだ、まだ負けてなるものか!! ザマスの結末を見届け、もう一度ーーターニッブと闘うまで!! 俺は、俺はーー!!」
叫ぶ一星龍だが、無情にもターレス達の放った光にかめはめ波を吹き飛ばされる。
それでも一星龍は直に手でターレス達の光を押し返そうとする。
「もう、一度ーーターニッブと」
「「「行けぇえええっ!!!」」」
三人の声が重なり、真・超サイヤ人の倍加の力が発動されて、一星龍は光の濁流に飲み込まれていく。
「ーーもう一度、ターニッブ、と、闘い、たかった」
光の爆発と共に、強大な溝が廃墟の街を吹き飛ばして漆黒の荒野に生まれている。
力を使い切ったように三人のサイヤ人は黒髪黒目に戻ると、その場に倒れこんだ。
「手こずらせやがって、バケモノめ…!」
「……」
悪態を吐くターレスとは別に、ゼノは消えていった一星龍をジッと見据えていた。
「ゼノよ、界王神界に行くぞ」
そんなゼノに向かって、こちらも相当に消耗しながらブラックが言った。
互いに肩で息をしながら、黒目で見合う。
「神として、何よりザマスとして。孫悟空達だけに任せるわけには行かぬ」
ゼノは何も言わずにブラックを見返す。
「…なんだか知らねえが、カカロット。お前、コイツの言う事を真に受けてるんじゃないだろうな?」
これにターレスが横から割って入った。
「ブラックの野郎は、貴様の肉体を奪って好き放題にこの世界を荒らしやがったんだぞ? コイツが来なければ未来の世界とやらは、ここまで荒れず。世界の意思ザマスとやらも生まれなかった。自分のやった事を尻拭いも出来ない奴の為に手を貸すなんぞ、サイヤ人としてーーいや、それ以前の話だ」
「黙れ、これは私たちザマスの話だ! 人間風情が割って入るな!!」
「……そろそろ、目障りな神も消すとするか?」
「無礼な言葉遣いだな、サイヤ人」
ターレスがゆっくりと立ち上がり、肩で息をしているのを深呼吸して整える。
ブラックも静かに構えを取り、呼吸を整えている。
一触即発、と言う状況でゼノが口を開いた。
「ターレス。すまないが、バーダックや悟飯と合流して、時の界王神様の下まで、地球人達や動物達を守ってやってくれ」
「…こんな野郎に手を貸すって言うのか? お人好しもいい加減にしやがれ」
睨み付けてくるターレスにゼノは苦笑を返す。
「悪いが、頼んだぜ。ターレス」
「……とことん、サイヤ人として気に入らねえ野郎だ」
それだけを吐き捨てるとターレスは、ゼノとブラックから背を向け、肩当てとマントを羽織って告げた。
「好きにしやがれ。俺は俺の仲間を回収するだけだ」
「ああ、それで構わない。ブルマ達を頼む」
笑みを浮かべているゼノに嫌そうな顔を返し、ターレスはザンギャやヤジロベー、ブルマ達の下に向かった。
それを見送った後、ゼノは笑みを消してブラックに向き直る。
「行くぞ、ブラック」
静かにブラックは首を縦に振った。
二人は同時に額に指を当て、瞬間移動で界王神界へと向かった。
こうして、地球での脅威はヒルデガーンを残すのみとなったのである。
次回は、明日の午前7時です。
よろしくお願いいたします。