ドラゴンボールZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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邪悪龍の長が倒れ、ツフル王が倒れ、究極の人造人間も倒れた。

それでも尚、抗う神を前に戦士ベジットと格闘家ターニッブが向かい合う。

はたして、彼らの未来は……!


決着の時 友垣

 神々の住まう世界ーー界王神界。

 

 既に崩壊する次元の中、ドラゴンボールの光によって移動されていく世界。

 

 第7宇宙の界王神シンと付き人キビトは互いに笑みを浮かべていた。

 

「やった! これで星々も世界も人間も生き残れる!!」

 

「よくぞーー、よくぞやってくれた。孫悟飯さん!」

 

 二人が満面の笑みになって喜ぶ中、一人だけ静かにザマスの方を見つめるのは第10宇宙の界王神ゴワスだ。

 

「ベジットーー。孫悟空殿とベジータ殿がポタラで合体した姿。世界の意思と融合したザマスを真正面から打ち倒すとは、なんという…!」

 

 全王すらも弾けるレベルまで存在を引き上げたザマスが、真っ向勝負とはいえ負けた。

 

 信じられない強さだ。

 

「ゴワス様! 一先ず、時の界王神様が作った次元に避難しましょう!! ザマスは、この次元と共に滅びるのですから!!」

 

「……シン殿。この年寄りの最後のワガママを聞いてはいただけぬだろうか?」

 

「? なんでしょう?」

 

「私は、ザマスの最期を見届けてからそちらに向かおう」

 

 ゴワスの言葉にシンとキビトが目を見開いた。

 

「何を言ってるんですか、ゴワス様!?」

 

「いけません! 界王神たるゴワス様が世界を滅ぼした大罪人と滅びを共にしようなど!!」

 

「そうです! 何より、ゼノさんになったザマスさんはどうされるのですか!? 界王神として彼を育て上げるのがゴワス様の役目です!!」

 

 二人からの必死の剣幕を聞いてゴワスは穏やかな笑みで告げた。

 

「私のザマスーーゼノは、私などより遥かに界王神に相応しい。人間と神、双方の立場や心を理解し、悪を制する正しい心と力を持ってくれた。今のあやつに私から教えることなど、何もありはしません」

 

 そう応えたのち、ゴワスはベジットに敗れたザマスを見つめる。

 

「別の世界と言え、ザマスは私の弟子。何より、ザマスの言葉と行動に嘘や偽りは無かった。ならばせめて私だけでも、愚かな弟子の末路を直接見届けねばなりません」

 

「「ゴワス様ーー!?」」

 

 叫ぶ第7宇宙の界王神と付き人の身体を、神龍の光が包み込む。

 

「ま、待ってください、神龍!!」

 

 そんなシンの言葉を無視して、ドラゴンボールの光は彼とキビトを転送した。

 

 一人残ったゴワスは穏やかに微笑むと呟いた。

 

「ありがとうーー。ドラゴンボール」

 

ーーーー

 

 超ベジットは満身創痍の肉体でありながらも力強い金のオーラを纏い、余裕のある笑みを浮かべている。

 

 それは、彼の矜持だ。

 

 どれだけ追い詰められようとも、決して余裕の笑みを消さない。

 

 誇り高いベジータのプライドか。

 

 曲がらない孫悟空の頑固な意志か。

 

 二人の合体であるベジットには、弱気な態度や姿など許されないと言わぬばかりに胸を張り、強者に振る舞う。

 

 小物がやれば滑稽にしか見えない行いが様になる。

 

 真に実力のある男の強気な態度や発言は、ある種の美しささえ感じられるものだ。

 

 そんな事を思いゆっくりと瞳を開け、ベジットを見上げながら立ち上がるザマス。

 

 斬られた肉体は既に完治しており、体力も回復しているというのに、ザマスは穏やかな笑みで告げた。

 

「参った。私の完敗だ」

 

 瞬間、ベジットの笑みが消えて、超サイヤ人から黒髪に戻りながら真剣な表情で話しかける。

 

「「……ザマス様よぉ」」

 

「言うな、ベジット。お前は、真正面から世界の意思と融合しあらゆる可能性を取り込んだ私に、勝った。それが全てだ」

 

 ベジットが告げようとする言葉を遮り、ザマスは語る。

 

 ゆっくりと滅んで無へと還る世界を見つめて。

 

「何たる僥倖か。最後の最後に貴様のような全てを超えた戦士と心行くまで戦え、このような静かな気持ちで世界と共に終わりを迎えられるとはーー」

 

「「させねえよーー」」

 

 真剣な黒い瞳がザマスを見つめ、真っ直ぐに告げる。

 

「「アンタを、このまま死なせやしねえ」」

 

「ベジットよ。勿体無いが気持ちだけ貰っておこう」

 

 対峙するザマスは、笑みを消しながらも穏やかな表情でベジットから視線を逸らさずにいる。

 

「私は、十分生きたさ。世界の全てを終わらせたのだ。その償いはせねばならん」

 

「「死ぬ事が償いになるなんて思うなよ…!!」」

 

 静かながらも怒りを噛み殺したような声をベジットは上げる。

 

 いや、激情を露わにしてベジットは叫んだ。

 

「「アンタのしたことで、平和に生きてた人間や神がどれだけ傷付いたと思ってる!? どれだけ、死んだと思ってんだ!!?」」

 

 その迫力は、界王神達を金縛りにするほどのもの。

 

 ターニッブは真剣な表情で黒い瞳をザマスとベジットに向けて見上げる。

 

「「その償いが、このまま自分を滅ぼして終いだと!? ふざけんのも、いい加減にしろ!!!」」

 

 その時だ。

 

 脇からベジットに向けて気弾が二発、放たれる。

 

 ベジットは簡単に左手を掲げて、振り返りもせずに別方向から放たれた気弾を弾いた。

 

 界王神達が目を見開いて驚く中、ベジットが目をやると、肩で息を切らしながらも手をベジットに向けてかざす一星龍と、黒髪に戻った超17号だった。

 

「ドラゴンボールに頼り切り、マイナスパワーの権化たる俺を生み出しておきながら、ザマスに説教か? ふざけているのは貴様だ、ベジット!!!」

 

「…いい加減にしろ、孫悟空。自分が正義だとでも言うつもりか? ザマスのように刃向かわず、全王や神のやり方に疑問すら持てず、機嫌取りしかしなかった貴様らが」

 

 二人もまた激戦を終えた肉体を引き摺りながら、残り少ない気を使ってベジットに挑もうとしている。

 

「「そいつは、俺も分かってるさ。疑問を持たずに全ちゃんや神様達のやる事を見てきたのも、ドラゴンボールに頼って事態を収拾しようとして来たのもな。だがよ」」

 

 ベジットも告げながら、一星龍と超17号に構えを取る。

 

「「ソレとコレとは話が別だ。このままザマス様を死なせて終わりなんぞ、俺は認めねえ!!」」

 

 叫ぶベジットに、一星龍と超17号が顔を見合わせる。

 

 ベジットは不敵な笑みを浮かべて二人に続けた。

 

「「このままザマス様を死なせていいのか? 認められねえだろ、お前達も?」」

 

「だからって、俺達に貴様と手を組めと言うのか?」

 

「「ああ。今だけ、な」」

 

 一星龍に臆面なくベジットが応えると、超17号と一星龍の二人はジッと彼を見つめる。

 

 静かでありながら熱く黒い瞳が、ベジットの内心を語るかのように揺らいでいる。

 

 先に口を開いたのは、超17号だった。

 

「ーー確かに、貴様と手を組まねばザマスは止まらないだろうな」

 

「フンーー。まさか邪悪龍のこの俺が、孫悟空やベジータと共闘することになろうとは、な」

 

 満身創痍の三人が、ゆっくりとザマスに向き直る。

 

 ザマスは笑みを浮かべていた。

 

「まったく、お前達は。どうしようもないバカな奴等だ」

 

 侮蔑や嘲りでなく、ザマスは穏やかな笑みを三人に浮かべていた。

 

「バカだと? このまま、お前をーー友を見殺しにするのが賢いと言うつもりか?」

 

「フン、笑わせるなよザマス! 俺たちがお前と共に世界を背負うのには力不足と判断したことを後悔させてやる!!」

 

「「そういうことだ、ザマス様。いや、ザマス。このままアンタを死なせはしねえ!!」」

 

 超17号、一星龍、ベジットが叫びながら気を纏う。

 

 本来ならば、彼ら三人が組めば、世界の意思と融合したザマスでも簡単に抑えられる。

 

 彼らが満身創痍かつ体力や気力が限界でなければ。

 

「……友か。不思議なものだな。神を裏切り、世界を手にした挙句、滅ぼした私に友が出来るとはな」

 

 自嘲するザマスを前にベジット達三人の側へ、白い道着を着た黒髪のサイヤ人が舞空術で並び立つ。

 

「ザマス。俺は、お前とまた闘いたい。だからーー」

 

 友であるが故にベジットとターニッブ、一星龍と超17号の四人がザマスに構える。

 

 倒すのでなく、勝つために。

 

 友が死ぬのを止めるために。

 

「愚かだな、人間よ。私は多くの人や神を手にかけた。確かに、この道を選んだが故に私は、お前達という友が出来たーーそれは認める」

 

 だがな、とザマスは続ける。

 

「ソレが、どうした!? 今更、今更! 世界を滅ぼした私が許されるものか!! 許されて良い訳がないのだ! たとえ友と共に生きたいと感じたとしても。己の望んだ世界の為に多くの神や人を犠牲にした私が! 今更ーー許されるものか!! 滅ぶ以外に許されてなるものか!!!」

 

 薄紅色の神のオーラを身に纏い、ザマスが叫ぶ。

 

「「勘違いすんなよ、ザマス。滅ぶことが罪を償う事にはならねえよ」」

 

 ベジットが静かに拳を握る。

 

「許されない? 罪悪を感じていると言うのか? 下らんぞ、ザマス! 貴様は間違ってなどいない!!」

 

「ーーそういうことだ。お前は間違っていない。全王に刃向かい、世界の意思を体現しただけだ」

 

 一星龍と超17号の言葉にザマスが笑う。

 

「ソレは選んだ道の話だ。だが結果はどうだ? 私が世界を滅ぼした事実は変わらない。ゴワス様の忠告を無視して全王に刃向かい、世界を隔離した結果がコレだ。その償いはせねばならん」

 

 何も罪を犯していない者も殺めた。

 

 何かの罪を犯す前に生まれたばかりの存在も。

 

 子を失い、悲しみ嘆く母や、怒りに震える父も踏みにじってきた。

 

 己の行いこそが正しいと、疑う事すらしなかった。

 

 世界の意思と融合した未来次元のザマスは人も神も殺めてはいない。

 

 ブラックが主犯であり、殺めたのもブラックだ。

 

 それでもザマスは、ブラックの行いを全部肯定した。

 

 ブラックが何を考えて、何を感じて神や人を滅ぼしたのかは、世界の意思と融合するまでもなく理解していた。

 

「結果が間違いであったなら、神たる私が償わずに誰が償う!? 我が身の滅びを持って死した者たちの、そして遺された者たちへの償いとするのだ!!」

 

 言うや否や、ザマスの背後から紫に光る鳥のようなーー十字架のような影が浮かび上がり、雷撃を四人の戦士に向けて放ってきた。

 

「絶対の雷ーー! 我が力で動けなくなったものから強制的に場から退去させよう。私を友と呼んだ者を死なせるわけには行かぬからな」

 

 無数に枝分かれし、不規則に地面を削る雷撃を前に、四人は高速移動で避けていく。

 

 ザマスの言葉に一星龍が叫んだ。

 

「調子に乗るなよ、ザマス! 何もかも、貴様の思い通りになどさせん!! 邪悪龍達よ、今一度この俺に力を貸せぇええ!!」

 

 この言葉にどこからか、オレンジ色の光を放ちながら六つの球が現れて、一星龍の胸に吸い込まれていく。

 

 背中の角が無数に生え、額にあった一星球が消えると、胸の辺りから下腹部にかけて七つの青いドラゴンボールが現れる。

 

「これが邪悪龍の長たる俺の力だ、ザマス!!」

 

 強力な気を纏い、体力と傷が全回復する超一星龍。

 

 それを横目に見てニヤリと超17号が笑うと、再び長い黒髪を金色に染め上げる。

 

「「便利なもんだ。世界の意思から生み出された奴等は回復手段も豊富ってコトか」」

 

「ああ。しかし、俺たちには鍛え抜かれたサイヤの技と身体がある!!」

 

「「フン、言ってくれるじゃねえか。ターニッブ!!」」

 

 黒髪黒目の通常のサイヤ人でも白い気を高めるベジットと、青い波動を身に纏うターニッブ。

 

 流石に力は超一星龍と超17号に劣るものの、気迫だけは負けていない。

 

 ザマスが消える事を良しとしない彼らを前に、絶対の神は告げた。

 

「この時空の寿命は後五分と言ったところ。貴様らをこの世界と共に死なせるつもりはない。かと言って、素直に時の界王神のドラゴンボールに引っ張られるつもりもないようだ。……ならば」

 

 静かにザマスは己の顔の前に両腕を曲げて交差させる。

 

 すると両脇に合体ザマスの姿をした存在が一人ずつ、現れる。

 

「「コイツはーー四身の拳か!?」」

 

 ベジットの言葉に目を向けたまま三人に増えたザマスは交差させた腕を解くと、左右の腕を両耳に付けたポタラの前に持ってくる。

 

 同時、左右のザマスから更に一人ずつ現れ、計五人のザマスがベジット達と相対する。

 

「この期に及んで分身か! 小賢しいぞ、ザマス!!」

 

「……まやかしなど、俺に通じると思うのか?」

 

 叫ぶ一星龍と静かに問う超17号を前に、ザマスは不敵な笑みを浮かべた。

 

「お前達を相手取るは、我が分身。されど、侮るなよ。こやつらは我自身と何ら変わらぬ!!」

 

 中央に居たザマスは一歩下がり、四人の分身ザマスを前に出す。

 

 分身達は、かつてブラックに与えた気の分身とは比べるべくもなくザマスの言葉通りに瞳に意思の光を持ち、本物と変わらない薄紅色のオーラを纏ってベジット、一星龍、ターニッブ、超17号に襲いかかる。

 

 分身ザマスの右拳を真正面から右拳で受け止めるのはベジット。

 

 白銀の光が両者の間に走り、火花が散る。

 

 互いのパワーは五分と五分、ならばと拳と蹴りを繰り出してラッシュで主導権を握ろうとするベジットに、ザマスも拳と蹴りを打ち返してくる。

 

「「チッ! 体力さえ回復できれば超サイヤ人で一気に押し切れんだけどな」」

 

「悪いが、回復させる訳には行かん。真正面からでは流石の私も分が悪いのでな!!」

 

 押し返せずに互角の勝負になるーーその事実に、ベジットは笑みを崩さないようにしながらも、愚痴のようなセリフを吐いていた。

 

 隣では、一星龍がザマスの拳を打ち返している。

 

「…グゥッ! 流石だな、拳威で私が押されるか!!」

 

「当たり前だ。俺は七匹の邪悪龍の力と心を持つ。お前一人に負けるものか! 大人しくしろ、ザマス!!」

 

「…断る。私は、我が所業の責を全て背負う。世界の意思と共に。それは、唯一神である私にしかなし得ないことなのだ!!」

 

 一星龍に拳を押し返され、ザマスの体勢が揺らぐも、背に白銀の光を背負うと神通力とも呼べる神の能力で目に見えぬ壁を作り出し、拳を振り切ろうとした超一星龍を宙で捕らえる。

 

「「自分に酔って完結するのも、いい加減にしろ!!」」

 

 動けない一星龍の背後から、ベジットが声を張り上げる。

 

「「貴様は何も分かっていない! 貴様が奪ったモノ、貴様が殺した人間や神、その重さを!! 無念を分からせるためにもーー! このまま楽に貴様を死なせて! たまるかぁああああっ!!!」

 

 白い光を纏い、パワーを引き上げるベジットだが、超サイヤ人には変身出来ない。

 

 ベジットの隣では、裁きの刃を脚に纏わせて蹴り込んでくるザマスに、青い風の波動を拳に纏わせて弾くターニッブがいた。

 

 彼もまた、ベジットに負けぬ熱い意思を瞳に宿して語りかける。

 

「ザマスーー! 自分の命を軽んじるお前は、他人の命も軽く見る。命の重さは口で語ることが出来るほど安くない!! お前が死んだところで、お前が奪ったモノは返ってこない。命の重さを知らないお前が自己陶酔のまま死を選んでも、殺された遺族に与えられる感情は一時の気休めだけだ!!!」

 

 分身ザマスの前蹴りを右拳で受け、右上段回し蹴りを返すターニッブ。

 

 隣では、ベジットがザマスの拳打を左右の腕で捌きながら、横面に右のカウンターを決めて叫んだ。

 

「「お前が本当に、犯した罪の重さや命の重さを知ってるならな、償うために死ぬだの生きるだのゴチャゴチャ言わねえんだよ!! 何も言わずに黙って償うために生きるんだ!!! 本当に償うつもりがあるのなら、黙って自分が奪ったモノよりも遥かに多くのモノを救ってみろ!!! 世界の意思と融合した絶対の神ならーー誇り高きサイヤの神なら、それぐらい出来て当たり前だろうが!!!」」

 

 ベジットの拳で後方へ仰け反る分身ザマス。

 

 その背後で、超17号が分身ザマスと殴り合っている。

 

 長い手足で強烈な右ストレートやミドルキックを放ち、攻め立てる超17号だが、その内の一つを脇に流される。

 

(これは、ターニッブの風の拳・心眼!?)

 

 自分の攻撃をあっさりと無効化された超17号は、分身ザマスの薄紅色の光を放つ右手刀をまともに腹に食らう。

 

「「17号!?」」

 

 目を見開くベジットの前で超17号は血を吐きながら、自分に刺さった右貫手を両手で持つ。

 

 ザマスは右腕一本で頭上に超17号を掲げて叫んだ。

 

「さらばだ、温かき人の心を知るーー人造人間よ!!」

 

「……ザマスぅう!?」

 

 空間がねじ曲がり、超17号の肉体が無防備に宙に浮かんで晒される。

 

「ザマス、貴様ぁあ!!」

 

 叫ぶ超17号を穏やかな笑みを浮かべて、ザマスは告げた。

 

「ーー生きろよ、17号。人の欲と心を知るものよ」

 

 ドラゴンボールの移送の光が超17号を包み込む。

 

 ダメージと体勢から抗うことが出来ず、超17号は一星龍を睨みつけるように見つめて告げた。

 

「…あとは任せたぞ…一、星、龍!!」

 

 言いながら、自分の両手で掴んだ分身ザマスの腕に灰色の雷を流し始める。

 

「道連れに分身を一体、戦闘不能にさせてもらうぞ!! 喰らえ、電撃地獄玉ぁあ!!」

 

「ーーっ!?」

 

 分身ザマスは、超17号の至近距離で放った強烈な光の中へと跡形もなく消えていった。

 

「……これで、俺のノルマは達成したぞ。孫悟空、一星龍、ターニッブ」

 

 その言葉を最後に、究極の人造人間は時の界王神が作り上げた新たな時空へと強制的に転移させられた。

 

 その様を見て、超一星龍がザマスに叫んだ。

 

「ザマス、貴様ぁああ!!」

 

 額に皺を浮かべて怒りながら一星龍が気を纏い、金縛りを神の気を使わずに自力で解くと、目の前の分身ザマスに拳を繰り出す。

 

 分身ザマスは静かに笑みを浮かべて、左掌で右拳を掴み止める。

 

「ーー何故、四対四にしたか分かるか? お前達にコンビネーションを組まれたら流石に分が悪いからだ。一騎打ちで且つ体力を回復する手段のないサイヤ人達を追い詰めるには、コレが一番効率が良い。一星龍よ、お前さえ送れば後はどうとでもなる」

 

「クク、この俺を最後の脅威と見たか。その判断は正しいが、俺に勝てるとは思わないことだ!!」

 

「…たしかに、まともに戦えば私が不利だ。だがな、一星龍よ」

 

 重い拳を打ち込むも、薄紅の光が弾けてザマスの手に受け切られる。

 

「ターニッブの心眼か!」

 

「あらゆる技を手に入れた私だ。真・超サイヤ人でなくとも、このくらいは朝飯前だ」

 

「流石だな。だが真・超サイヤ人のターニッブほど、その状態の貴様が強いのかな? 試してやろう!!」

 

 秒殺魔光弾。

 

 五本の指先を相手に向け、機関銃のように連続で貫通力のある光弾を放つ。

 

 全てを見切るのは至難。

 

 受けを間違えば、まともにダメージを食らう光弾の連続射撃にザマスはニヤリと笑みを返すと、片脚を膝を曲げて抱え上げ、軸足をつま先立ちにして高速移動を行う。

 

「ーー阿修羅閃空」

 

「!?」

 

 はじめての動きに一星龍が目を見開きながら、左右にジグザグに移動してくるザマスに撃ちまくるも。

 

「なんだと、実体が捉えられぬ!?」

 

 弾幕を擦り抜けて高速移動で近づいてくるザマスに驚愕する一星龍。

 

 彼に向かってベジットが叫ぶ。

 

「「そいつ(阿修羅閃空)を見切るのは初見じゃ無理だ!! 下がれ、一星龍!!」」

 

「俺に命令するな、孫悟空!!」

 

 一星龍はベジットの言葉を無視して、その場に足を踏ん張り、拳を握って迎え撃とうとする。

 

「……一星龍よ、お前の弱点を敢えて言うならば。高すぎる実力故に、技の本質を見極めず迎え撃とうとするところだ。だから、予想外の展開に狼狽えることになる」

 

 真紅の瞳を見据えて、黒い瞳孔が現れた銀色の眼が光る。

 

「一瞬千撃!! 瞬獄殺!!!」

 

 近づいてきたザマスに拳打を見舞おうと繰り出すも、目の前まで迫る動きを捉えられず、逆にザマスの手が一星龍の野太い首に触れる。

 

 瞬間、血のように紅い雷が一星龍の視界を完全に奪って白い闇に変わると、全身に刹那の拍子で無数の打撃が叩き込まれた。

 

「ぐわぁあああっ!!?」

 

 白い闇が晴れ、視界が戻る頃には、全身に無数の打撃痕を植え付けられた一星龍が棒立ちになっている。

 

「悪く思うな、コレが勝利だ」

 

 ベジットとターニッブが苦い顔で棒立ちになった一星龍を見る。

 

 真紅の瞳は完全に白目を剥いている。

 

 その白く逞しい肉体は、ドラゴンボールの移送の光に包まれていく。

 

「「一星龍!!」」

 

「…あの一星龍を一瞬で戦闘不能に追い込むとは。ザマスの放った瞬獄殺はリューベに勝るとも劣らない…!」

 

 ベジットが叫ぶ横でターニッブが唸る。

 

 いくら瞬獄殺や阿修羅閃空が初見だったとはいえ、あのタフな一星龍が戦闘不能になるなど本来ならあり得ない。

 

 どんな強靭な肉体も魂も、全てを喰らい尽くす。

 

 これが敵を倒すためだけに編み出された禁技たる所以。

 

「さらばだ、一星龍。次こそはターニッブに勝てるさ。我が最大なる理解者にして肯定者よ」

 

 転送される寸前、一星龍の白眼に真紅の瞳が戻る。

 

 彼は分厚い掌でザマスの胸倉を掴んだ。

 

「…まさか、こんな技があるとはな。返礼だザマス。邪悪龍の雷を味わうがいい!!」

 

「! 貴様、まだ!?」

 

「ドラゴォン、サンダァアアアアアッ!!」

 

 青黒い雷光がほとばしり、分身ザマスの肉体を飲み込んでいく。

 

 その様を満足気に見据え、後方で腕を組んでこちらを見る本物のザマスを一瞥した後、ベジットとターニッブを睨み付けた。

 

「この俺が、最後に貸しを作ってやる。必ずザマスを連れて来い!!」

 

 言うや否や、一星龍は胸の前でボールを抱えるような構えを取ると、紅い光球を作り上げる。

 

 その光球は、一星龍の胸に埋め込まれた七つのドラゴンボールから紅い光を浴びて、更に強化されていく。

 

「「一星龍、お前…!!」」

 

「凄まじいパワーだ」

 

 ベジットが目を見開き、ターニッブが声を上げるのをニヤリと邪悪な笑みで応えたのち、彼らと闘う分身ザマスに向けて紅い光を放った。

 

「喰らえ、コレが邪悪龍達のマイナスパワーを凝縮したパワーボールだ!!」

 

 漆黒の雷を纏いながら放たれた紅い光球に、二人の分身ザマスが両手を広げて前方に突き出し、かめはめ波や波動拳に酷似した青い光線を放つ。

 

「「激烈、神王砲!!」」

 

 分身ザマス二人が放った光は紅い光球にぶつかり、押し合う。

 

「無駄だ、一星龍よ。私を倒すより転移の方が速い」

 

「……どうかな?」

 

 ザマスの言葉にニヤリと返し、一星龍は背中の角から青黒い雷を発生させて両手から放つ。

 

「ドラゴンサンダァアアアアアッ!!!」

 

 雷光はパワーボールに向かって放たれると、ボールは一気に増大してザマス達の光を飲み込んでいく。

 

「ま、まさか!?」

 

「コレが、邪悪龍の長だと!!」

 

 二人の分身ザマスが驚愕の表情のまま、赤い光球に飲み込まれて爆発する。

 

 咄嗟にターニッブの腕を掴み、ベジットは瞬間移動で一星龍の攻撃の余波から離れていた。

 

 紅い瞳で仁王立ちしたまま、一星龍は告げる。

 

「…孫悟空、ベジータ、ターニッブ。後は任せたぞ!!」

 

 邪悪龍は最後までふてぶてしく笑いながら、この次元を後にして消える。

 

 残された戦士は黒髪のサイヤ人二人ーーベジットとターニッブ。

 

 対するは緑の肌に白銀の逆立つ髪を持つ神ーーザマス。

 

「「一星龍の野郎、やりやがった…!」」

 

「ああ、俺も負けていられない…!!」

 

 自分を助けてくれたベジットに頭を下げてから、ターニッブはザマスに拳を握る。

 

 体力も気力も限界、圧倒的だった二人のパワーは見る影もない。

 

 それでも変わらない二人の瞳。

 

 熱い闘志も、口元の笑みも。

 

「「残り三分ってところか。決着をつけようぜ!!」」

 

 息一つ乱さずに、ベジットとターニッブがザマスに向けて構える。

 

「……来るがいい!!」

 

 ザマスが叫ぶと同時、ターニッブとベジットが動く。

 

 懐に踏み込もうとするターニッブに白い紋章の光を背に生み出し、見えない壁で吹き飛ばす。

 

「真・超サイヤ人でないお前では、私の神の力の前には踏み込めない」

 

「ぐぁ!?」

 

 踏み込んできた以上の勢いで後方に弾け飛ぶターニッブの影から、ベジットが踏み込んでくる。

 

「「つぅおりゃぁあああっ!!」」

 

 左拳を握り込んでストレートを繰り出してくる。

 

 今度も神の力と呼ばれる見えない壁が発動するも、何かが破れるような乾いた音と共にベジットが踏み込んで拳を放ってくる。

 

 見れば、ザマスの背にあった光輪が弾け飛んでいた。

 

「やはり貴様には効かないか。デタラメな奴め」

 

 顔に放たれたベジットの左ストレートを右手で掴み止めるザマス。

 

「「まだまだ、コレからさ。俺の本気はな!!」」

 

「……面白い、見せてみよ。究極の戦士・ベジットよ!!」

 

 白い気を全身から噴き上がらせるベジットに対し、ザマスはどこか禍々しい薄紅色のオーラを纏う。

 

 掴み止めた拳を引いて左の裏拳を返すザマスに対し、ベジットは顔の前に右拳を置いて受け止める。

 

 至近距離で睨み合う両者。

 

 同時に一歩下がり、止めた互いの拳を離して右ストレートを打ち合う。

 

 綺麗に交差した両者の腕は、互いの顔に拳を放り込んで首を後方へ吹き飛ばした。

 

 両者の目は互いにしっかりと結んで火花を散らし、すぐさま仰け反った首と上半身を元の位置に戻すと、高速移動を繰り返しながら秒間百は下らない打撃の応酬を繰り広げる。

 

 互いの左肘打ち、右上段回し蹴り、左ストレートを真正面からぶつけ合い相殺すると、バックステップして距離を取る。

 

「「チッ! 埒が開かねえ!」」

 

 吐き捨てるベジットの横から、ターニッブがザマスに向かって踏み込む。

 

 左右の右正拳突きをガードの上からザマスに叩き込み、轟音を辺りに響かせる。

 

「…ぬぅ」

 

 思わずうめくザマスの懐に、ターニッブが右拳に青い風の波動を纏わせて突き上げてきた。

 

「昇龍拳!!」

 

 正面からの攻撃に両腕を顔の前に上げて防いだザマスの、ガードに使った右腕と左腕の間を真下から割る様に突き上げる。

 

 顎を跳ね上げて、後方に吹き飛ぶザマス。

 

「ベジット、今だぁあ!!!」

 

「「--よっしゃぁっ!!」」

 

 気を高めてベジットは両腕を左右に広げた後、前方に突き出して手首を合わせ黄金の気を練る。そのまま自分の右腰に腰だめに構えて今度は青い気を練り始めた。

 

 同時、ターニッブも昇龍拳から着地して両手を腰だめにたわめて青い波動を練る。

 

「「こいつでトドメだ!」」

 

「これが、俺の全力だ!!」

 

 両者、同時に同じ構えで気を練ってから、前方に両の掌を突き出して光を放つ。

 

「「ファイナルゥウ! かめはめ波ぁあああっ!!!」」

 

「はぁああああ! ーーーー波動拳っ!!!」

 

 二人の放った光は、螺旋を描いて一つの強烈な光線となってザマスに迫る。

 

 とっさにザマスは両腕を交差し背中の光輪を復活させて受けようとするも、白い光の壁は一瞬だけ光線をしのいだ後あっけなく飛び散り、抵抗する間もなくザマスを飲み込む。

 

「なんとーー! この土壇場で、ここまでの力を引き出すことが!!」

 

 ベジットとターニッブが放った光は無の空間にあって尚、己の存在を主張するように世界を撃ち抜いていった。

 

 二人は、ゆっくりと構えを解いて光に消えたザマスを見つめる。

 

「「出てこい。今の俺達の攻撃では、お前を倒し切れないのは分かっている」」

 

「……」

 

 確かにダメージは通るだろうが。それでも不死身であり痛みを感じる間もなく再生するザマスにとっては、大した問題ではない。

 

 ベジットもターニッブも油断せずに周りを見渡しながら呟く。

 

「「ヤロウ。気配を消して何を企んでる?」」

 

「分からない。だが、ザマスの狙いは俺たちを別の時空へと飛ばすことのはずだ。何か仕掛けて来るに違いない」

 

 そう呟いたターニッブの背後に、漆黒の界王神の服と赤い帯を腰で締めたザマスの姿が現れる。

 

 振り返って構えを取るターニッブに対し、ザマスはゆっくりと左手をターニッブにかざす。

 

「!? これは!!?」

 

「「どうした!? ターニッブ!!?」」

 

 瞬間、自分の体が動かなくなることにターニッブは目を見開いた。

 

「神の力の一つだ。今のお前では、ひとたまりもあるまい。さあ、大人しく時空を越えろ」

 

 聞き分けの無い子どもを諭すようにザマスは淡々と告げる。

 

 これにベジットが動く。

 

「「ーーさせるかよ!!」」

 

 ベジットがこちらに攻撃をしかけようと拳を握り、一瞬で距離を潰して打ち込んでくるも。

 

 乾いた音と共にザマスの左掌に右拳は掴み止められている。

 

「無駄だ。我が金縛りの効果は、私が意識を失うまで続く。お前が私の意識を断つよりも早く、ドラゴンボールがターニッブを飛ばすさ」

 

「「ザマス! 貴様ぁああっ!!!」」

 

 牙を剥き出して吠えるベジットを見た後、ザマスはターニッブを静かな表情で見据える。

 

「貴様のような人間に会えたこと、嬉しかったぞ。貴様の答えは、すぐそこまで来ている。焦るなよ、ターニッブ」

 

「……ザマス!!」

 

 目を見開くターニッブの身体を、ドラゴンボールの移送の光が包み始めた。

 

「ありがとう。そして、さらばだ。ターニッブ」

 

 ベジットが歯軋りしながらザマスを睨みつけるも、攻撃は繰り出さない。

 

 ザマスとターニッブの別れを邪魔しないように。

 

 光がターニッブを完全に包み込むと、ターニッブは姿を消し始める。

 

 未熟な自分の腕では友を止めるに届かなかった。

 

 ならば託すしかない。

 

「……悟空、ベジータ。俺たちの新しい友をーー頼む! 心友(とも)よ!!」

 

 その言葉を最後にターニッブの姿が完全に消え、時空転移された。

 

「「……ザマスよぉ。お前、本当に消えちまってもいいのかよ? お前が望んだ未来なら、もうあるだろ」」

 

 消えたターニッブの姿を見送り、ベジットは静かにザマスに語りかける。

 

 別れを邪魔しなかったのは、既にザマスには力では勝てないからだ。

 

 倒すのでなく、勝つために。

 

 しかし、今の自分にザマスに勝つだけの拳が振るえるかはベジットをしてーー悟空とベジータをして分からなかった。

 

 負ける気は微塵もないが、仮に万が一ザマスの望み通りに事が運んでザマスだけ滅びることになれば、二度とターニッブとザマスは話ができない。

 

 同じターニッブという友を持つ身として、それだけは避けたかった。

 

「感謝するぞ、ベジットよ。やはり、お前はターニッブの友だな。そして、私もまたターニッブの友。このような出会いでなければ、私とお前は友となれたかもな」

 

「「……バカヤロウ」」

 

 かすかに震える声は怒りか、それとも。

 

「私とて、このような気持ちになるとは思わなかった。人間と友になりたいなどと。かつての私なら不届きなものだと怒り狂ったはずだーー。最後くらい礼を言わせてくれ」

 

「「バカヤロウ!! いちいち下らねえ御託なんぞ並べやがって! 俺と貴様は、もう強敵(とも)だろうが!!」」

 

 静かに語るザマスを遮り、ベジットが叫ぶ。

 

 思わず唖然とするザマスにベジットが続ける。

 

「「そんな風に悟ったような、何もかも分かってるって面は俺の前ではやめろ!! 何も決まっていない。何も分かっていない。だからーー足掻くんだ!! 神だからってもよ、分からないことがあっていいだろ!!」」

 

 感情の昂りと共にベジットの気が高まり始める。

 

「それがーー人間の。いや命の輝き、か。なるほど」

 

 笑みを浮かべてザマスは、構えを取る。

 

「ーーもはや時はない。最後の一撃だ、ベジットよ。貴様の拳が我を討つか、それとも届かずに飛ばされるか。決着をつけよう」

 

「「上等だーー!!」」

 

 ベジットはゆっくりと呼吸を整えて、金色の気を拳に纏わせる。

 

 黄金の龍気が、その拳に宿り始めた。

 

「「文字通り、全身全霊の一撃ーー龍拳だ。行くぞ、ザマス!!」」

 

 白い気を極限まで高めて、ベジットはザマスに向けて疾駆する。

 

 右ストレートを放つとベジットが黄金龍に変わり、顎門を開いてザマスに襲いかかった。

 

 薄紅色のオーラを纏うザマスも両手を開いて、自身の顔面に放たれた右拳を挟み止める。

 

 黄金龍が猛々しく吠えながら、ザマスの目の前で牙を剥いている。

 

 その奥に見える黒髪黒目の男ーーベジットを睨み付け、ザマスは笑った。

 

「最後の最後までーー手を焼かせてくれる!!」

 

「「うぉりゃあああっ!!!」」

 

 拳が、ザマスの顔に近づいていく。

 

 両手を使って挟み止めた拳が、更に押し込まれていく。

 

「ぐ……っ! ベジットぉお!!」

 

 鼻先にまで近づいた拳にザマスが目を剥き出して叫ぶと、ベジットも吠え返した。

 

「「これが、俺のフルパワーだぁあああっ!!!」」

 

 金色の光が髪から漏れ、翡翠に瞳が変わる。

 

(こいつ! まだ、超サイヤ人になれるだけの力が!?)

 

 気が一気に爆発し、ザマスの横頰にベジットの右拳が決まった。

 

「こ、こんなーーバカなぁあ!?」

 

 一瞬で遥か後方へ弾かれ、無の空間をクルクルと回転しながら吹っ飛ぶ。

 

 そんなザマスを見て、ベジットはニヤリと笑い肩で息をしながら黒髪に戻る。

 

「「コイツが、意地ってヤツだ。神様」」

 

 あのベジットが、指先一本すら動かすのも億劫なほどに消耗している。

 

 最後の最後、本当に絞り切った力だった。

 

「見事だーー」

 

 前方で横たわったまま、宙に浮かんでいたザマスからの言葉だった。

 

「孫悟空、ベジータよ。思えば私は、ただの一度たりとてあなた方には勝てなかったな」

 

 倒れていたザマスの肉体は、瞬間移動で目の前に立って現れる。

 

「「ザマス、様…!」」

 

 向かい合うポタラを両耳につけた合体戦士二人。

 

 既に立っているのがやっとのベジットと、先程のダメージさえ完治したザマス。

 

 それでもベジットの力は、ドラゴンボールの移送の光を跳ね退けるほどのもの。ザマスが無言でベジットを見つめ、ベジットは静かに語る。

 

「「アンタを必ず、生かす。それが俺の役割だ。どうするよ? 俺を倒さなきゃ、アンタは独りで滅べないぜ」」

 

 ザマスは、これにニヤリと笑うと銀色の瞳を一瞬、輝かせる。

 

「「な!?」」

 

 ガラスが割れるような音が耳の近くから聞こえて、合体が解かれた。

 

「しまーーっ!?」

 

「お、おのれ!!」

 

 ポタラが壊され、ベジットから悟空とベジータに分離させられる。

 

「先にも言ったが。私を友と呼んだ者を、このまま死なせる訳には行かぬ」

 

 瞬間だった。

 

 ベジットならば耐えられた移送の光は、体力が尽きている悟空とベジータを包み込んだのだ。

 

「ち、ちくしょう! ザマス様!! アンタ、ホントにこれでいいんか!? このまま滅びて、いいんかよ!!」

 

「ザマス! 貴様が本当に罪を償うって言うなら、こんなところで滅びるのは許さんからな!!!」

 

 移送の光の中、叫ぶ二人のサイヤ人に微笑み、ザマスは告げる。

 

「もっと早く、お前達に出会えていれば。お前達を認めていれば。私はーー」

 

 ザマスの声が、姿が遠ざかっていく。

 

 これに悟空とベジータが叫んだ。

 

「ち、くしょぉおおおおっ!!」

 

「ーークソッタレェエエッ!!」

 

 声は、光が消える瞬間まで、ザマスの耳に届いていた。

 

 ザマスは、ゆっくりと周囲を見渡す。

 

 無の空間となった世界を。

 

「さらばだ。我が、掛け替え無き友垣よ…!!」




次回は明日の午前7時です。

よろしくお願いいたします。
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